中国:社会消費品小売総額:約5,153億米ドル、前年同月比で5.1%増加2025年05月20日 20:50

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【概要】

 中国国家統計局(NBS)が2025年5月19日に発表した最新データによると、同年4月における中国の社会消費品小売総額は3兆7,170億元(約5,153億ドル)に達し、前年同月比で5.1%増加した。この成長は、政府が推進する消費財買い替え政策の効果によるものである。

 小売販売の内訳では、商品小売額が3兆3,007億元で前年同月比5.1%増、飲食業収入は4,167億元で5.2%増となった。中でも、必需品および一部の高付加価値商品の販売が好調で、一定規模以上の企業における穀物・食用油・食品類の小売販売は14.0%増、スポーツ・娯楽用品は23.3%増を記録した。

 地域別では、都市部の小売総額が3兆2,376億元で5.2%増、農村部は4,798億元で4.7%増加した。

 NBSの報道官であるFu Linghui氏は記者会見において、「大規模な設備更新および消費財買い替えを推進する行動計画の実施が、消費とサービス消費を促進し、経済を強力に下支えしている」と述べた。

 特に家電および音響・映像機器の小売販売は38.8%増と顕著な伸びを示し、文具・事務用品が33.5%増、家具が26.9%増、通信機器が19.9%増と続いた。

 この消費財買い替え政策は2024年3月に始まり、電子機器や家電製品などの旧型製品を新型製品に買い替えることを消費者に促すことにより、支出拡大と経済成長を図るものである。2024年1月には、この政策の対象範囲を拡大する複数の施策も発表された。

 2025年1月から4月までの累計で見ると、社会消費品小売総額は16兆1,845億元となり、前年同期比4.7%の増加となった。このうち、オンライン小売額は4兆7,419億元で7.7%増、物品のオンライン小売額は3兆9,265億元で5.8%増を記録し、総小売額の24.3%を占めた。

 Fu氏は、「情報技術の急速な発展および物流ネットワークの継続的な整備により、オンライン小売やマーケットプレイス型小売といった新しい小売形態が、その利便性と効率性により消費者に広く受け入れられている」と述べた。

 また、サービス関連の小売についても、2025年1月から4月までの期間で前年同期比5.1%の成長を記録した。観光や旅行に関連するサービス消費が特に急増しており、休日の旅行需要の高まりが住民の観光、交通、通信などの支出を押し上げている。Fu氏は、「1月から4月にかけて、交通、通信・情報、観光、コンサルティング、リースなどのサービスにおいては、いずれも二桁成長を維持している」と補足した。

【詳細】 

 1. 全体の小売売上高の概況

 2025年4月の中国全体の社会消費品小売総額は3兆7,170億元(約5,153億米ドル)となり、前年同月比で5.1%の増加となった。これは、前月(3月)の成長率と比較しても安定した伸びであり、消費活動の持続的回復傾向を示すものである。

 この小売総額には、都市部と農村部の販売が含まれており、都市部が3兆2,376億元(+5.2%)、**農村部が4,798億元(+4.7%)**といずれもプラス成長であった。都市部の成長率が若干高いことから、消費の中心は依然として都市部に集中していることが窺える。

 2. 商品小売とサービス消費の内訳

 (1)商品小売(実物商品)

 商品販売総額は3兆3,007億元であり、前年同月比5.1%の増加である。必需品と一部のアップグレード商品が特に顕著な伸びを示している。

 ・穀物・食用油・食品類:14.0%増

 ・スポーツ・娯楽用品:23.3%増
  
 これらは健康志向や余暇活動の拡大、イベント・スポーツ人気の高まりが背景にあると考えられる。

 (2)飲食業(ケータリング)

 飲食サービス業の収入は4,167億元で、前年同月比5.2%の成長を記録している。外食機会の増加や、観光業の回復に伴う外食需要の増加が寄与している。

 (3)サービス小売(非実物商品):

 1月から4月の期間におけるサービス消費の小売売上は前年比5.1%増。特に旅行、交通、通信、観光、コンサルティング、リースなどの分野がいずれも二桁成長を見せている。

 3. 消費財買い替え政策の影響

 2024年3月に始動した消費財買い替え(以旧換新)政策が、小売市場に大きな影響を与えている。これは、老朽化した家電製品や電子機器などの旧モデルを新製品に買い替えることを奨励する政策であり、環境保護や品質向上の面でも効果を狙っている。

 ・家電・音響映像機器:+38.8%

 ・文化・事務用品:+33.5%

 ・家具:+26.9%

 ・通信機器:+19.9%

 これらの急成長は、買い替え促進策により消費者の購買意欲が刺激されたことの結果である。政府は2024年1月にこの政策の適用範囲を拡大するための追加施策を打ち出しており、より広範な商品カテゴリーが対象となっている。

 4. オンライン小売の成長

 2025年1月から4月のオンライン小売総額は4兆7,419億元(+7.7%)であり、そのうち物品のオンライン販売は3兆9,265億元(+5.8%)に達した。オンライン小売は社会消費品小売総額の24.3%**を占めるに至っている。

 このような成長の背景には、以下の要素がある。

 ・情報通信技術(ICT)の進展

 ・Eコマースプラットフォームの普及

 ・ロジスティクス(物流)インフラの整備

 ・モバイル決済の利便性向上

 NBSのFu Linghui報道官は、「新小売(ニューリテール)」という言葉でこの傾向を説明しており、効率性と利便性を兼ね備えた購買体験が現代消費者に受け入れられていると指摘している。

 5. 今後の課題と展望

 Fu氏は、現在の成長が安定しているとはいえ、「消費成長の勢いをさらに強化する必要がある」と述べている。これは以下のような要因を指すものである:

 ・一部地域における消費の停滞

 ・低所得層の消費余力の制約

 ・若年層の貯蓄志向の高まり

 ・不動産市場の不安定性が家計支出に与える影響

 したがって、今後は消費促進策の継続的な実施と精度向上が必要とされる。特に、地方都市や農村部での消費拡大、若者層・中所得層をターゲットとした買い替え・補助政策などが課題として残されている。

 総括

 2025年4月の中国の小売統計は、政策効果と経済回復の兆しを示す重要なデータである。消費財買い替え政策とオンライン小売の拡大が成長の主因となっており、観光・サービス分野の回復も顕著である。今後は、これらの動向をいかに持続・拡大させるかが、政府と市場の重要な課題となるであろう。

【要点】

  1.小売総額の概要

 ・2025年4月の社会消費品小売総額は**3兆7,170億元(約5,153億米ドル)**で、前年同月比5.1%増。

 ・都市部:3兆2,376億元(+5.2%)

 ・農村部:4,798億元(+4.7%)

 2.商品別の売上動向

 ・商品小売総額:3兆3,007億元(+5.1%)

 ・飲食サービス業収入:4,167億元(+5.2%)

 ・必需品と高付加価値商品が好調

  ✓穀物・食用油・食品類:+14.0%

  ✓スポーツ・娯楽用品:+23.3%

 3.消費財買い替え政策の影響(以旧換新)

 ・2024年3月に開始された政府主導の消費刺激策

 ・旧型の家電・電子機器を新型製品に買い替えることを促進

 ・特定品目の小売売上が大幅に増加

  ✓家電・音響映像機器:+38.8%

  ✓文化・事務用品:+33.5%

  ✓家具:+26.9%

  ✓通信機器:+19.9%

 4.累計(1~4月)の小売動向

 ・総小売額:16兆1,845億元(+4.7%)

 ・オンライン小売額:4兆7,419億元(+7.7%)

  ✓うち物品販売:3兆9,265億元(+5.8%)

  ✓総小売額に占める割合:24.3%

 5.オンライン小売の成長要因

 ・情報技術の進展と物流インフラの整備

 ・モバイル決済・電子商取引の普及

 ・効率性と利便性を備えた**新小売(ニューリテール)**の定着

 6.サービス消費の回復

 ・1~4月のサービス小売は前年同期比5.1%増

 ・特に旅行・交通・通信・観光・リース・コンサルティングなどの分野が二桁成長

 ・旅行需要の回復と連休・観光シーズンの影響が顕著

 7.政府見解と今後の課題

 ・国家統計局のFu Linghui報道官による見解:

  ✓現在の成長は政策効果の表れである

  ✓消費成長の勢いをさらに強化する必要がある

 ・課題

  ✓地方部での消費拡大

  ✓中低所得層・若年層の支出促進

  ✓政策の持続的な実施と精度向上

 総括

 ・2025年4月の小売成績は消費財買い替え政策とオンライン販売の効果が明確に表れた結果である。

 ・サービス業の回復も経済全体の持ち直しを示しており、今後の消費活性化に向けた政策継続が鍵となる。

【桃源寸評】

 中国が風邪をひけば、他国は病に臥す —— 世界経済における中国の存在感

 かつて、「アメリカがくしゃみをすれば、世界が風邪をひく」と言われた時代があった。20世紀の冷戦期からポスト冷戦期にかけて、米国の経済政策、金利動向、株価変動が全世界の市場を揺さぶった事例は枚挙に暇がない。

 しかし、21世紀も四半世紀を過ぎようとする現在、その重心は静かに、だが確実に東へと移りつつある。今や「中国が風邪をひけば、他国は病に臥す」という表現が、単なる比喩を超えて現実の経済構造を言い当てるようになってきた。

 中国は名目GDPにおいて米国に次ぐ世界第2位の経済大国であり、製造業では世界最大の規模を誇る。かつての「世界の工場」は、今や「世界の市場」としての顔も持ち、膨大な内需と旺盛な消費力を武器に、多国籍企業の戦略的最重要市場としてその地位を確立している。こうした構造の変化は、中国経済の一時的な減速が単に国内問題にとどまらず、グローバルな供給網、資源市場、金融市場にまで深刻な影響を及ぼすことを意味している。

 たとえば、2020年の新型コロナウイルス流行初期、中国における都市封鎖は自動車、電子機器、医療品など各国の製造業に即座に供給停止の連鎖を引き起こした。2021年以降の不動産市場の不安定化は、鉄鋼・セメント・資材を輸出する国々にとって直接的な需要減退を意味し、南米や東南アジア諸国の経済に影を落とした。さらに、消費の停滞は世界的なブランドや高級品市場の売上にも打撃を与え、アップルやナイキの決算報告には中国市場の不振が繰り返し言及されるようになった。

 このように、中国の経済変調は、一次産品依存の新興国にとっては外貨収入の減少を意味し、先進国の輸出産業にとっては収益源の喪失を意味する。単なる「風邪」で済ませられる範囲を超え、各国にとっては「病に臥す」ほどの深刻な打撃となり得る構造がすでに出来上がっているのである。

 とはいえ、中国経済が抱える課題も複雑である。不動産依存からの脱却、地方債務問題、消費の回復鈍化、人口減少と高齢化、地政学的リスク。これらが重なる中で、安定した成長路線を維持することは容易ではない。だが、仮に中国が本格的に長期低迷に陥るならば、その影響は単に「くしゃみ」や「風邪」にとどまらず、世界経済全体が慢性疾患を抱えるような構図になる危険もある。

 ゆえに、現代のグローバル経済においては、「中国抜きでの安定」はもはや幻想に過ぎない。各国は中国の経済動向を注視しつつ、自国の対中依存度の見直しと同時に、多元的な経済関係の構築を急ぐべき時にあるかも知れない。

 米国が遠のく背景と化している現在、更なる中国も含めて世界経済は多極化へと向かうは必然であろう。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

China's retail sales grow 5.1% in April, boosted by the government's consumer goods trade-in initiative GT 2025.05.19
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334371.shtml

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