中国の中継衛星「Queqiao2号」 ― 2025年05月20日 21:25
【概要】
中国の中継衛星「Queqiao2号」は、月探査ミッションを支援するために安定的に運用されており、今後の各国の月探査にも対応する準備が整っている。中国の深宇宙探査研究所によれば、この衛星は、中国の嫦娥6号ミッションで地球と月の間の通信を支援し、月の裏側からサンプルを回収する任務を果たした。
Queqiao2号は2024年3月に打ち上げられ、「マグパイブリッジ2」とも呼ばれている。搭載されている科学機器は、極端紫外線カメラ、2次元符号化エネルギー中性原子イメージャー、そして地球―月間超長基線干渉計(VLBI)実験システムの3つである。
衛星は軌道上で14ヶ月間安定して運用されており、地球のプラズマ圏や磁気圏層の大規模なイメージングや、地球―月系におけるVLBI実験などの科学任務を遂行している。極端紫外線カメラは、初めて全球の83.4ナノメートルイオン層の画像を捉え、太陽活動がプラズマ圏に与える影響の研究に重要なデータを提供した。
また、VLBI実験システムは上海の65メートル電波望遠鏡と連携し、観測基線を38万キロメートルに拡大。深宇宙の電波源A00235や嫦娥6号の周回機などの観測に成功した。
Queqiao2号は今後の嫦娥7号および嫦娥8号ミッションにおいて重要な役割を果たす予定である。嫦娥7号は2026年頃に月の南極の環境と資源を探査し、嫦娥8号は2028年頃に月資源の現地利用実験を実施する計画である。
【詳細】
中国の中継衛星「Queqiao2号(Queqiao-2)」は、2024年3月に長征8号ロケットによって打ち上げられた。この衛星は月探査ミッションのための通信中継を目的として設計されており、特に月の裏側との通信が困難な問題を解決するための重要な役割を担っている。中国国家宇宙局(CNSA)および中国深宇宙探査研究所によると、Queqiao2号は打ち上げ後に順調に太陽電池パネルとアンテナを展開し、地球と月の間の通信リレー機能を安定して稼働させている。
Queqiao2号は3つの科学搭載機器を備えている。第一に、極端紫外線(EUV)カメラであり、これは波長83.4ナノメートルの領域で地球のイオン層のグローバルイメージングを行うものである。この観測により、太陽風や太陽フレアなどの太陽活動が地球のプラズマ圏に与える影響を詳細に解析できるデータが得られている。第二に、2次元符号化エネルギー中性原子イメージャーが搭載されており、これは宇宙空間に存在する中性原子のエネルギー分布を測定し、地球周辺の磁気圏の状態を把握することを目的としている。第三に、地球―月間の超長基線干渉計(VLBI)実験システムである。このシステムは上海にある直径65メートルの電波望遠鏡と協調して運用され、地球と月の距離約38万キロメートルの長大な観測基線を形成している。このVLBIシステムにより、深宇宙の電波源や月周回機の精密な位置測定が可能となり、通信精度の向上や航法支援に役立っている。
Queqiao2号は2024年5月時点で約14ヶ月にわたり軌道上で安定稼働しており、その間に嫦娥6号の月面サンプルリターンミッションを支援した。嫦娥6号は月の裏側から初めて試料を採取し、地球に持ち帰ることに成功したが、Queqiao2号はこの通信中継を担うことでミッションの成功に貢献した。
さらに、Queqiao2号は今後予定されている嫦娥7号および嫦娥8号ミッションの通信中継および科学観測においても中核的な役割を果たす。嫦娥7号ミッションは2026年頃に月の南極地域の環境調査と資源探査を目的としており、極低温の極域での水氷などの資源分布を調査する計画である。嫦娥8号ミッションは2028年頃に実施され、月資源の現地利用(In-Situ Resource Utilization: ISRU)に関する各種実験を行う予定である。Queqiao2号はこれらのミッションに対し、通信中継の信頼性を確保するだけでなく、科学観測データの収集および解析にも寄与することが期待されている。
以上のように、Queqiao2号は単なる通信衛星に留まらず、多様な科学搭載機器によって地球と月の環境研究、深宇宙観測に貢献し、国際的な月探査プロジェクトにおける重要なインフラとして機能している。
【要点】
・Queqiao2号(Queqiao-2)は中国の月探査用中継衛星で、2024年3月に長征8号ロケットで打ち上げられた。
・月の裏側との通信が困難な問題を解決するため、地球と月の間の通信リレーを担う。
・3つの科学搭載機器を搭載している。
✓極端紫外線(EUV)カメラ:83.4ナノメートルの波長で地球イオン層の全球イメージングを行い、太陽活動の影響を解析。
✓2次元符号化エネルギー中性原子イメージャー:地球周辺の磁気圏に存在する中性原子のエネルギー分布を測定。
✓地球―月間超長基線干渉計(VLBI)実験システム:上海65m電波望遠鏡と連携し、約38万キロメートルの観測基線で深宇宙の電波源や月周回機の精密観測を実施。
・打ち上げ後約14ヶ月間安定して運用され、嫦娥6号の月面サンプルリターンミッションの通信中継を支援。
・嫦娥6号は月の裏側からサンプルを回収し、Queqiao2号の通信リレーにより地球へのデータ送信を成功させた。
・今後の嫦娥7号(2026年頃予定)では月の南極環境と資源の探査を支援。
・嫦娥8号(2028年頃予定)では月資源の現地利用実験を支援する。
・Queqiao2号は通信中継だけでなく、地球と月の環境研究や深宇宙観測にも貢献する多機能衛星である。
【桃源寸評】
スプートニク1号が1957年10月4日にソ連によって打ち上げられたとき、私はまだ幼かったが、そのニュースは強烈な驚きをもって私の心に刻まれた。あの小さな金属の球体が、この広大な地球をぐるぐると回っているという事実は、まるで夢のようであった。夜空のどこかで、人間が作り出したものが無音で軌道を描いているという想像に胸が高鳴ったものである。
その後、ガガーリンが宇宙から見たとされる「地球は青かった」という言葉は、宇宙の神秘と美しさを私たちに強烈に印象付けた。青く輝く地球の姿は、国境も争いも越えた、ひとつの生命のゆりかごとしての惑星の姿を教えてくれた。
そしてアメリカも負けじと、1969年にアポロ11号で人類を月に送り込む快挙を成し遂げた。ニール・アームストロングの「これは人間にとって小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という言葉は、時代を超えて語り継がれている。宇宙競争は単なる国同士の対立を超え、人類の英知と挑戦の象徴となった。
現在、宇宙開発の歴史は新たな段階に入っている。中国は2003年の有人宇宙飛行成功に始まり、独自の宇宙ステーション「天宮」の建設、そして月や火星への探査機の送り込みなど、その進歩は目覚ましく、新たな「歴史的瞬間」を次々と生み出している。
嫦娥(じょうが)シリーズの月探査ミッションで着実に成果を重ね、鵲橋2号という中継衛星を用いて月の裏側と地球をつなぐ通信網を築いている。月の南極を目指す嫦娥7号、月資源の現地利用を試みる嫦娥8号といった計画は、単なる探査にとどまらず、持続可能な宇宙活動を見据えたものである。
かつてスプートニク1号の小さな電波が世界を驚かせたあの日から約70年。人類は宇宙への挑戦を続け、今や複数の国が協力しながら新しい歴史の1ページを刻みつつある。あの「地球は青かった」という言葉の重みを胸に、これからも宇宙は私たちに未知の感動と発見をもたらし続けるであろう。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
China's relay satellite operating smoothly, ready to support global lunar missions GT 2025.05.20
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334458.shtml
中国の中継衛星「Queqiao2号」は、月探査ミッションを支援するために安定的に運用されており、今後の各国の月探査にも対応する準備が整っている。中国の深宇宙探査研究所によれば、この衛星は、中国の嫦娥6号ミッションで地球と月の間の通信を支援し、月の裏側からサンプルを回収する任務を果たした。
Queqiao2号は2024年3月に打ち上げられ、「マグパイブリッジ2」とも呼ばれている。搭載されている科学機器は、極端紫外線カメラ、2次元符号化エネルギー中性原子イメージャー、そして地球―月間超長基線干渉計(VLBI)実験システムの3つである。
衛星は軌道上で14ヶ月間安定して運用されており、地球のプラズマ圏や磁気圏層の大規模なイメージングや、地球―月系におけるVLBI実験などの科学任務を遂行している。極端紫外線カメラは、初めて全球の83.4ナノメートルイオン層の画像を捉え、太陽活動がプラズマ圏に与える影響の研究に重要なデータを提供した。
また、VLBI実験システムは上海の65メートル電波望遠鏡と連携し、観測基線を38万キロメートルに拡大。深宇宙の電波源A00235や嫦娥6号の周回機などの観測に成功した。
Queqiao2号は今後の嫦娥7号および嫦娥8号ミッションにおいて重要な役割を果たす予定である。嫦娥7号は2026年頃に月の南極の環境と資源を探査し、嫦娥8号は2028年頃に月資源の現地利用実験を実施する計画である。
【詳細】
中国の中継衛星「Queqiao2号(Queqiao-2)」は、2024年3月に長征8号ロケットによって打ち上げられた。この衛星は月探査ミッションのための通信中継を目的として設計されており、特に月の裏側との通信が困難な問題を解決するための重要な役割を担っている。中国国家宇宙局(CNSA)および中国深宇宙探査研究所によると、Queqiao2号は打ち上げ後に順調に太陽電池パネルとアンテナを展開し、地球と月の間の通信リレー機能を安定して稼働させている。
Queqiao2号は3つの科学搭載機器を備えている。第一に、極端紫外線(EUV)カメラであり、これは波長83.4ナノメートルの領域で地球のイオン層のグローバルイメージングを行うものである。この観測により、太陽風や太陽フレアなどの太陽活動が地球のプラズマ圏に与える影響を詳細に解析できるデータが得られている。第二に、2次元符号化エネルギー中性原子イメージャーが搭載されており、これは宇宙空間に存在する中性原子のエネルギー分布を測定し、地球周辺の磁気圏の状態を把握することを目的としている。第三に、地球―月間の超長基線干渉計(VLBI)実験システムである。このシステムは上海にある直径65メートルの電波望遠鏡と協調して運用され、地球と月の距離約38万キロメートルの長大な観測基線を形成している。このVLBIシステムにより、深宇宙の電波源や月周回機の精密な位置測定が可能となり、通信精度の向上や航法支援に役立っている。
Queqiao2号は2024年5月時点で約14ヶ月にわたり軌道上で安定稼働しており、その間に嫦娥6号の月面サンプルリターンミッションを支援した。嫦娥6号は月の裏側から初めて試料を採取し、地球に持ち帰ることに成功したが、Queqiao2号はこの通信中継を担うことでミッションの成功に貢献した。
さらに、Queqiao2号は今後予定されている嫦娥7号および嫦娥8号ミッションの通信中継および科学観測においても中核的な役割を果たす。嫦娥7号ミッションは2026年頃に月の南極地域の環境調査と資源探査を目的としており、極低温の極域での水氷などの資源分布を調査する計画である。嫦娥8号ミッションは2028年頃に実施され、月資源の現地利用(In-Situ Resource Utilization: ISRU)に関する各種実験を行う予定である。Queqiao2号はこれらのミッションに対し、通信中継の信頼性を確保するだけでなく、科学観測データの収集および解析にも寄与することが期待されている。
以上のように、Queqiao2号は単なる通信衛星に留まらず、多様な科学搭載機器によって地球と月の環境研究、深宇宙観測に貢献し、国際的な月探査プロジェクトにおける重要なインフラとして機能している。
【要点】
・Queqiao2号(Queqiao-2)は中国の月探査用中継衛星で、2024年3月に長征8号ロケットで打ち上げられた。
・月の裏側との通信が困難な問題を解決するため、地球と月の間の通信リレーを担う。
・3つの科学搭載機器を搭載している。
✓極端紫外線(EUV)カメラ:83.4ナノメートルの波長で地球イオン層の全球イメージングを行い、太陽活動の影響を解析。
✓2次元符号化エネルギー中性原子イメージャー:地球周辺の磁気圏に存在する中性原子のエネルギー分布を測定。
✓地球―月間超長基線干渉計(VLBI)実験システム:上海65m電波望遠鏡と連携し、約38万キロメートルの観測基線で深宇宙の電波源や月周回機の精密観測を実施。
・打ち上げ後約14ヶ月間安定して運用され、嫦娥6号の月面サンプルリターンミッションの通信中継を支援。
・嫦娥6号は月の裏側からサンプルを回収し、Queqiao2号の通信リレーにより地球へのデータ送信を成功させた。
・今後の嫦娥7号(2026年頃予定)では月の南極環境と資源の探査を支援。
・嫦娥8号(2028年頃予定)では月資源の現地利用実験を支援する。
・Queqiao2号は通信中継だけでなく、地球と月の環境研究や深宇宙観測にも貢献する多機能衛星である。
【桃源寸評】
スプートニク1号が1957年10月4日にソ連によって打ち上げられたとき、私はまだ幼かったが、そのニュースは強烈な驚きをもって私の心に刻まれた。あの小さな金属の球体が、この広大な地球をぐるぐると回っているという事実は、まるで夢のようであった。夜空のどこかで、人間が作り出したものが無音で軌道を描いているという想像に胸が高鳴ったものである。
その後、ガガーリンが宇宙から見たとされる「地球は青かった」という言葉は、宇宙の神秘と美しさを私たちに強烈に印象付けた。青く輝く地球の姿は、国境も争いも越えた、ひとつの生命のゆりかごとしての惑星の姿を教えてくれた。
そしてアメリカも負けじと、1969年にアポロ11号で人類を月に送り込む快挙を成し遂げた。ニール・アームストロングの「これは人間にとって小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という言葉は、時代を超えて語り継がれている。宇宙競争は単なる国同士の対立を超え、人類の英知と挑戦の象徴となった。
現在、宇宙開発の歴史は新たな段階に入っている。中国は2003年の有人宇宙飛行成功に始まり、独自の宇宙ステーション「天宮」の建設、そして月や火星への探査機の送り込みなど、その進歩は目覚ましく、新たな「歴史的瞬間」を次々と生み出している。
嫦娥(じょうが)シリーズの月探査ミッションで着実に成果を重ね、鵲橋2号という中継衛星を用いて月の裏側と地球をつなぐ通信網を築いている。月の南極を目指す嫦娥7号、月資源の現地利用を試みる嫦娥8号といった計画は、単なる探査にとどまらず、持続可能な宇宙活動を見据えたものである。
かつてスプートニク1号の小さな電波が世界を驚かせたあの日から約70年。人類は宇宙への挑戦を続け、今や複数の国が協力しながら新しい歴史の1ページを刻みつつある。あの「地球は青かった」という言葉の重みを胸に、これからも宇宙は私たちに未知の感動と発見をもたらし続けるであろう。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
China's relay satellite operating smoothly, ready to support global lunar missions GT 2025.05.20
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334458.shtml