地球に衝突可能性ある小惑星に対する防衛策2024年08月29日 15:30

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【概要】

 中国の深宇宙探査プログラムに所属する科学者たちは、地球に衝突する可能性のある小惑星を防ぐための最善の方法として、核兵器の使用を提案している。この提案は、国際法により宇宙空間での核兵器の使用や配備が禁止されていることや、核爆発が宇宙における放射能汚染を引き起こす可能性があることを考慮した上でなされている。

 研究者たちは、現在発見されている小惑星のデータに基づいたリスク評価よりも、実際の衝突リスクがはるかに高い可能性があると述べている。彼らは、地球への小惑星衝突の危険を最小限に抑えるためには、長期的な視点での核兵器を使用した防御技術の研究開発が必要であると強調している。

 特に、7日から1カ月という超狭小な時間枠内で小惑星に核弾頭を発射する迅速な対応能力、長距離飛行後の精密な打撃能力、10年以上宇宙に核弾頭を安全に保管できる長期軌道配備能力が緊急に必要とされている。

 小惑星の検出技術が向上するにつれ、観測される小惑星の数が急増しているが、実際にはまだ発見されていない小惑星が多数存在しており、これらが地球に対する脅威となる可能性があると警告されている。研究者たちは、核兵器以外の方法も検討しているが、衝突までの時間が短い場合には核兵器が唯一の希望であるとしている。

 また、中国が国際条約に基づいて宇宙に核兵器を配備することは難しいため、核兵器以外の技術的な手段の模索も重要であると結論づけている。

【詳細】

 中国の深宇宙探査プログラムにおける科学者たちは、地球に衝突する可能性のある小惑星に対する防衛策として、核兵器の使用が最適であるとする研究結果を発表した。彼らは、このような極限状況で核兵器が唯一の解決策になる場合があると指摘している。しかし、この提案は国際法や宇宙空間での核兵器使用に伴うリスクを考慮した慎重な検討が求められるものである。

 核兵器の使用が提案される理由

 研究チームは、従来のデータに基づく小惑星の衝突リスク評価が過小評価されている可能性が高いと主張している。新たな研究によると、地球に対する小惑星の衝突リスクは、これまでの評価よりもはるかに高い可能性があるとされている。例えば、2013年にロシアで発生した小惑星の衝突事件では、約5,000棟の建物が被害を受け、1,500人以上が負傷した。この小惑星は、地球に接近するまで深宇宙警戒レーダーで検出されず、科学者たちはその存在を全く知らなかったのである。

 研究者たちは、核兵器が特定の状況で小惑星の衝突を防ぐ唯一の手段であると結論付けている。例えば、衝突までの時間が1週間しかない場合、核兵器以外の手段では間に合わない可能性がある。研究では、1メガトンの核弾頭が直径50メートルの炭素質の小惑星に対抗できるとされており、より大きな小惑星やシリコンを主成分とする小惑星には、より強力な核弾頭や複数のミサイルが必要になると述べられている。

 必要とされる技術

 研究チームは、地球を防衛するために以下の技術が緊急に必要とされると指摘している。

 1.迅速な対応能力: 小惑星が地球に衝突するまでの時間が短い場合、数日から1カ月の間に核弾頭を発射する迅速な対応が必要である。これには、即時発射可能な新しい打ち上げシステムの開発が含まれる。

 2.精密な打撃能力: 長距離を飛行した後でも、100メートル以下の誤差で小惑星を精密に攻撃できる能力が求められる。

 3.長期軌道配備能力: 宇宙空間に核弾頭を10年以上安全に保管し、必要に応じて迅速に使用できる長期的な軌道配備能力が求められる。これは、応答時間を短縮するために重要である。

 4.その他の防御手段

 研究者たちは、核兵器以外の防御手段についても検討している。例えば、NASAが2022年に実施したDARTミッションのような「運動衝突法」では、直径140メートル以下の小惑星に対して効果があるが、警告時間が50年に延びた場合でも、直径350メートルまでの小惑星にしか対抗できない。

 また、軌道上にロケットやプラズマエンジン、カタパルトのような装置を設置して小惑星の軌道を変える方法、あるいは太陽光や高出力レーザー兵器を集中させて小惑星の軌道を変える方法なども検討されている。しかし、これらの方法は特定の状況にしか適用できないことがわかっている。

 法的および環境的な課題

 中国は1967年の宇宙条約と包括的核実験禁止条約の署名国であり、これらの条約は宇宙空間での核兵器の配備を禁止している。そのため、核兵器を宇宙空間に配備することは法的に難しい状況にある。また、核爆発は放射性物質による汚染を引き起こす可能性があり、地球だけでなく月や火星、その他の天体にも二次的な被害を与えるリスクがある。

 中国の核戦略の拡大

 2024年7月、中国共産党は戦略的抑止力の能力を加速的に発展させる必要があると述べた大規模な改革計画を発表した。この動きは、中国が核兵器の配備を拡大する可能性があるとの見方を生み出した。現在の推定では、中国軍は約500発の核弾頭を保有しており、これはアメリカやロシアの核兵器庫の約10分の1の規模である。

 研究者たちは、短期間で宇宙に核弾頭を送る能力を中国が備えるのは難しいと予測しており、核兵器だけでなく、他の技術的手段も同時に模索する必要があると結論付けている。

【要点】

 研究結果の概要

 1.核兵器の使用提案

 ・地球に衝突する可能性のある小惑星に対する防衛策として、核兵器が最適。
 ・一部の状況では、核兵器のみが小惑星の衝突を防げる。

 2.核兵器使用の理由

 ・現在の小惑星データに基づくリスク評価よりも実際の衝突リスクが高い可能性。
 ・例:2013年のロシアでの小惑星衝突事件は未検出のまま発生し、広範な被害をもたらした。

 3.必要な技術

 ・迅速な対応能力: 数日から1カ月以内に核弾頭を発射できるシステム。
 ・精密な打撃能力: 100メートル以下の誤差で小惑星を攻撃できる精度。
 ・長期軌道配備能力: 10年以上宇宙空間で核弾頭を安全に保管する能力。

 4.その他の防御手段

 ・運動衝突法: 小惑星を衝突させて軌道を変える方法(NASAのDARTミッション)。
 ・太陽光やレーザー兵器: 集中させて小惑星の軌道を変える方法。
 ・その他の手段: ロケットやプラズマエンジン、カタパルト装置など。

 5.法的および環境的課題

 ・中国は宇宙条約と包括的核実験禁止条約の署名国であり、宇宙での核兵器配備は禁止。
 ・核爆発は放射性物質による汚染を引き起こす可能性。

 6.中国の核戦略の拡大

 ・2024年7月、中国共産党が戦略的抑止力の発展を加速する改革計画を発表。
 ・中国軍は約500発の核弾頭を保有しており、アメリカやロシアに比べて少ない。
 ・短期間で宇宙に核弾頭を送る能力の開発は困難と予測。

 7.結論

 ・核兵器以外の技術的手段も同時に模索する必要がある。

【引用・参照・底本】

The nuclear option: China study urges more weapons R&D to save Earth from asteroid strike scmp 2024.08.28
https://www.scmp.com/news/china/science/article/3275996/nuclear-option-china-study-urges-more-weapons-rd-save-earth-asteroid-strike?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-china&utm_content=20240828&tpcc=enlz-china&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&next_article_id=3276228&article_id_list=3275996,3276228,3276139,3276049,3276140,3276129,3276158,3276101&tc=5

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