CNNのロシア影響力説は誤り ― 2024年09月18日 13:39
【概要】
イタリアで行われた反NATO・反ロシア代理戦争ポスターに対する反応を取り上げている。CNNはこれらのポスターを「ロシアの影響力」を示すものとして報じたが、実際には、ポスターは代理戦争の終結を求めるものであり、ロシア寄りのプロパガンダとは一線を画している。これらは市民の言論の自由に基づいたものであり、過剰な影響力を持つわけではないと述べている。
イタリアの一部自治体がポスターを撤去した一方で、他の地域では掲示が許可されていることに触れ、ウクライナ政府がこれに対して抗議したことも言及されている。
この記事は、CNNやウクライナが過度にこの問題を誇張することが逆効果であり、反戦メッセージの拡散を助長する可能性があると指摘している。ポスターがイタリアの対ウクライナ政策に直接的な影響を与える可能性は低いものの、支持者を増やすことはあり得るとしている。
【詳細】
イタリアにおける反NATO・反ロシア代理戦争を訴えるポスターに対する報道や反応が、過剰に誇張されていると指摘している。
まず、CNNは「イタリア中に親ロシアのポスターが掲示されている」との見出しで報道し、ロシアの影響力を危惧する論調を展開したが、記事はその見方を批判している。ポスター自体は無害であり、ただウクライナにおける代理戦争の終結を求めるメッセージを掲げているだけである。一部のイタリアの自治体、特にローマでは、市の名前や公式のシンボルを使用したことを理由に撤去を命じたが、他の場所では引き続き掲示が許されている。
ウクライナ政府もこれらのポスターに対して抗議し、検閲を要求したが、記事はこれが行き過ぎた反応であると指摘している。
さらに、このポスターキャンペーンを組織しているのは、COVID-19のロックダウン時に結成された地元の活動家グループに関連する人物であり、彼らはロシアの影響下にあるわけではなく、イタリア国内で異端的な見解を持つ人々を代表しているとされている。これにより、CNNが示唆するようなロシアの影響力工作の証拠ではなく、むしろ市民の憲法で保障された言論の自由の行使であると説明されている。
記事では、このポスターがイタリアの対ウクライナ政策に直接影響を与えることはほぼないとしつつも、完全に無視することも誤りだと指摘している。通常、国の政策が大きく変わるのは、選挙の結果や大規模な抗議行動による場合であるが、イタリアではこの問題をめぐる抗議が経済に深刻な影響を及ぼす可能性は低いと見られている。それでも、こうした活動家による公的な影響キャンペーンが支持を集めることで、一部の政治家がその意見を反映させ、場合によっては政権が揺らぐ可能性もあると示唆されている。
また、CNNやウクライナ政府がこの問題を過度に取り上げることで、かえって活動家たちの反代理戦争のメッセージが広がる結果になることを批判している。CNNが示唆するロシアの影響力に対する恐怖を煽ることが、実際には活動家たちの主張を大きく伝える手助けになっているという指摘もある。
最後に、この記事は、これらの活動家たちが「ロシアから資金提供を受けている」との陰謀論が持ち上がる可能性があるものの、そうした主張を鵜呑みにすべきではないと警告している。活動家たちは単に自分たちの政治的意見を平和的に表明しているに過ぎず、これに反対する人々こそが、自分たちの主張に自信が持てないからこそ、過剰に反応しているのだと結論付けている。
【要点】
・イタリアで掲示された反NATO・反ロシア代理戦争ポスターに対するメディアの報道が誇張されていると主張。
・CNNはこれらのポスターを「親ロシアの影響力」と報道したが、実際にはポスターは代理戦争の終結を訴える無害な内容。
・一部自治体(特にローマ)はポスターを撤去したが、他の自治体では掲示が許可されている。
・ウクライナ政府はこれに抗議し、検閲を要求。
・ポスターキャンペーンはロシアの影響ではなく、COVID-19ロックダウン時に結成された地元活動家が組織したもの。
・言論の自由の範囲内で行われており、CNNのロシア影響力説は誤り。
・ポスターがイタリアの対ウクライナ政策に直接影響を与える可能性は低いが、完全に無視するのも誤り。
・公的な影響キャンペーンが支持を得れば、政治家が声を上げ、政権に影響を与える可能性もある。
・CNNやウクライナがポスターを過剰に取り上げることで、かえって反代理戦争のメッセージが広がる。
・最後に、活動家が「ロシアから資金提供を受けている」との陰謀論が出る可能性があるが、それを鵜呑みにすべきではないと警告。
【引用・参照・底本】
The Media Is Exaggerating The Impact Of Anti-Proxy War Posters In Italy Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.17
https://korybko.substack.com/p/the-media-is-exaggerating-the-impact?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=149008775&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
イタリアで行われた反NATO・反ロシア代理戦争ポスターに対する反応を取り上げている。CNNはこれらのポスターを「ロシアの影響力」を示すものとして報じたが、実際には、ポスターは代理戦争の終結を求めるものであり、ロシア寄りのプロパガンダとは一線を画している。これらは市民の言論の自由に基づいたものであり、過剰な影響力を持つわけではないと述べている。
イタリアの一部自治体がポスターを撤去した一方で、他の地域では掲示が許可されていることに触れ、ウクライナ政府がこれに対して抗議したことも言及されている。
この記事は、CNNやウクライナが過度にこの問題を誇張することが逆効果であり、反戦メッセージの拡散を助長する可能性があると指摘している。ポスターがイタリアの対ウクライナ政策に直接的な影響を与える可能性は低いものの、支持者を増やすことはあり得るとしている。
【詳細】
イタリアにおける反NATO・反ロシア代理戦争を訴えるポスターに対する報道や反応が、過剰に誇張されていると指摘している。
まず、CNNは「イタリア中に親ロシアのポスターが掲示されている」との見出しで報道し、ロシアの影響力を危惧する論調を展開したが、記事はその見方を批判している。ポスター自体は無害であり、ただウクライナにおける代理戦争の終結を求めるメッセージを掲げているだけである。一部のイタリアの自治体、特にローマでは、市の名前や公式のシンボルを使用したことを理由に撤去を命じたが、他の場所では引き続き掲示が許されている。
ウクライナ政府もこれらのポスターに対して抗議し、検閲を要求したが、記事はこれが行き過ぎた反応であると指摘している。
さらに、このポスターキャンペーンを組織しているのは、COVID-19のロックダウン時に結成された地元の活動家グループに関連する人物であり、彼らはロシアの影響下にあるわけではなく、イタリア国内で異端的な見解を持つ人々を代表しているとされている。これにより、CNNが示唆するようなロシアの影響力工作の証拠ではなく、むしろ市民の憲法で保障された言論の自由の行使であると説明されている。
記事では、このポスターがイタリアの対ウクライナ政策に直接影響を与えることはほぼないとしつつも、完全に無視することも誤りだと指摘している。通常、国の政策が大きく変わるのは、選挙の結果や大規模な抗議行動による場合であるが、イタリアではこの問題をめぐる抗議が経済に深刻な影響を及ぼす可能性は低いと見られている。それでも、こうした活動家による公的な影響キャンペーンが支持を集めることで、一部の政治家がその意見を反映させ、場合によっては政権が揺らぐ可能性もあると示唆されている。
また、CNNやウクライナ政府がこの問題を過度に取り上げることで、かえって活動家たちの反代理戦争のメッセージが広がる結果になることを批判している。CNNが示唆するロシアの影響力に対する恐怖を煽ることが、実際には活動家たちの主張を大きく伝える手助けになっているという指摘もある。
最後に、この記事は、これらの活動家たちが「ロシアから資金提供を受けている」との陰謀論が持ち上がる可能性があるものの、そうした主張を鵜呑みにすべきではないと警告している。活動家たちは単に自分たちの政治的意見を平和的に表明しているに過ぎず、これに反対する人々こそが、自分たちの主張に自信が持てないからこそ、過剰に反応しているのだと結論付けている。
【要点】
・イタリアで掲示された反NATO・反ロシア代理戦争ポスターに対するメディアの報道が誇張されていると主張。
・CNNはこれらのポスターを「親ロシアの影響力」と報道したが、実際にはポスターは代理戦争の終結を訴える無害な内容。
・一部自治体(特にローマ)はポスターを撤去したが、他の自治体では掲示が許可されている。
・ウクライナ政府はこれに抗議し、検閲を要求。
・ポスターキャンペーンはロシアの影響ではなく、COVID-19ロックダウン時に結成された地元活動家が組織したもの。
・言論の自由の範囲内で行われており、CNNのロシア影響力説は誤り。
・ポスターがイタリアの対ウクライナ政策に直接影響を与える可能性は低いが、完全に無視するのも誤り。
・公的な影響キャンペーンが支持を得れば、政治家が声を上げ、政権に影響を与える可能性もある。
・CNNやウクライナがポスターを過剰に取り上げることで、かえって反代理戦争のメッセージが広がる。
・最後に、活動家が「ロシアから資金提供を受けている」との陰謀論が出る可能性があるが、それを鵜呑みにすべきではないと警告。
【引用・参照・底本】
The Media Is Exaggerating The Impact Of Anti-Proxy War Posters In Italy Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.17
https://korybko.substack.com/p/the-media-is-exaggerating-the-impact?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=149008775&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
Fedの利下げ ― 2024年09月18日 15:25
【概要】
アメリカ連邦準備制度(Fed)が2024年9月18日に予定している利下げが、アジア諸国に与える影響について説明している。アメリカの利下げは、アジアの輸出依存経済にとって、すぐに予測できない影響を及ぼす可能性があるとされている。
利下げによってドルが弱まると、アジアの通貨は相対的に強くなり、輸入品の価格が下がり消費者物価が安定する一方で、輸出競争力が低下し、アメリカ市場での製品が高くなり、需要が減少する恐れがある。
特に中国や日本、韓国などの輸出依存度が高い国では、ドル安による輸出の減少が経済成長に悪影響を与える可能性があると指摘されている。また、インドネシアやマレーシア、インドなどの新興市場も、資本流出が安定する一方で、通貨の強さがインフレを悪化させるリスクを抱えている。
総じて、アジア諸国の中央銀行は、成長刺激を狙う利下げに踏み切るか、リスクを避けて様子を見るか、難しい選択を迫られることになるだろうと論じられている。
【詳細】
アメリカ連邦準備制度理事会(Fed)が2024年9月18日に予定している利下げが、アジア諸国の経済に与える影響を詳細に論じている。アメリカ国内の金融政策変更が、アジアの輸出依存経済や資本不足に苦しむ新興市場にどのような影響を与えるか、以下の観点から詳しく説明されている。
1. アメリカの利下げの背景とそのグローバルな影響
Fedが利下げを実施するのは、アメリカ国内でインフレ抑制のための積極的な利上げ政策が一段落し、経済成長を再び刺激するためとされている。しかし、この政策変更はアメリカだけでなく、グローバル経済にも波及効果をもたらす。特にアジアでは、アメリカ経済と強く結びついているため、直接的な影響が避けられない。
2. ドルの価値とアジア通貨への影響
Fedの利下げにより、ドルの価値が下がると予想されている。ドル安になると、アジアの通貨が相対的に強くなり、輸入品のコストが下がる。これにより、アジア諸国ではエネルギーや食料品といった主要輸入品の価格が下がり、インフレが抑制される効果が期待されまする。これは、現在インフレに苦しむアジア経済にとって一時的な救いとなる可能性がある。
3. 輸出競争力への悪影響
一方で、アジア諸国は輸出依存度が非常に高い経済構造を持っている。日本、中国、韓国のような輸出大国にとって、ドル安は米国市場での自国製品の価格が高騰することを意味する。これは、アメリカ消費者の購買力を低下させ、アジア製品の需要減少につながる恐れがある。特にアメリカは保護主義的な政策を強化しており、関税の引き上げも加わるため、アジアの輸出にさらなる圧力がかかると予想される。
4. 中国経済の脆弱性
中国は特に複雑な状況に直面している。中国経済は現在、低成長、デフレ圧力、不動産市場の危機など多くの課題を抱えている。Fedの利下げは、アメリカ資産の利回り優位性を弱め、中国からの資本流出が減少する可能性があるが、同時に人民元の価値が上昇し、中国製品の競争力を低下させるリスクもある。さらに、アメリカ経済が減速すれば、中国の輸出がさらに打撃を受ける可能性があり、中国の経済成長は一層鈍化するかもしれない。
5. 新興アジア市場の影響
インドネシア、マレーシア、インドといった新興市場においてもFedの利下げは影響を与える。これらの国々はインフレが依然として懸念材料であり、中央銀行は利下げに慎重な姿勢を見せている。しかし、アメリカの金利が低下すると、これまでアメリカの高金利を求めて流出していた資本が安定する可能性があるため、これらの国々の通貨が強化され、輸入コストが下がる効果が期待される。ただし、通貨の強化はインフレリスクを再び高める可能性もあり、インフレ管理と経済成長促進の間で難しいバランスが求められる状況となる。
6. アジア中央銀行の選択肢
Fedの利下げに対して、アジア各国の中央銀行は異なる戦略を取る可能性がある。一部の国は、アメリカと同様に利下げを行うことで経済成長を刺激しようとするかもしれない。しかし、その結果として、不動産市場のバブルや金融市場の過剰なリスクテイクが発生する危険性がある。特に中国では不動産市場がすでに不安定な状況にあるため、このリスクは深刻である。
一方で、他の国々は、アメリカの利下げの影響を見極めるために、しばらくは政策金利を据え置くかもしれない。特に新興国では、インフレリスクが高まる中で通貨安を防ぐための対応が必要となる可能性があるため、慎重な対応が求められている。
7. 結論
Fedの利下げがアメリカ経済にとどまらず、アジア全体に広がる波及効果を持つことを指摘している。特にアジアの輸出依存経済は、米ドルの価値が低下することで輸出競争力を失い、国内の成長に打撃を受ける可能性が高い。また、各国の中央銀行がどのような対応を取るかによって、アジア全体の経済が大きく左右されると論じている。
【要点】
・Fedの利下げの背景: 2024年9月18日、アメリカ連邦準備制度(Fed)はインフレ抑制を目的とした引き締め政策を終え、成長刺激のために利下げを予定している。
・ドル安の影響: Fedの利下げによりドルが弱まり、アジアの通貨が相対的に強くなることで、輸入コストが低下し、インフレ抑制効果が期待される。
・輸出競争力の低下: ドル安によってアメリカ市場でアジア製品の価格が上昇し、輸出依存度の高い中国、日本、韓国などの経済に悪影響を及ぼす可能性がある。
・中国経済への影響: 中国は低成長や不動産危機に直面しており、Fedの利下げが資本流出の抑制には寄与するが、人民元の上昇によって輸出競争力が低下し、さらなる成長鈍化のリスクがある。
・新興市場のリスク: インドネシア、マレーシア、インドなどの新興市場では、資本流出の安定が期待される一方、通貨の強化がインフレリスクを高める可能性があり、政策決定が難しくなる。
・アジア中央銀行の対応: 各国の中央銀行は、成長刺激のために利下げを行うか、リスク回避のために政策金利を据え置くかの難しい選択を迫られている。
・不動産バブルのリスク: 利下げによってアジアの不動産市場でバブルが発生するリスクがあり、特に中国では既に不安定な不動産市場がさらに脆弱になる恐れがある。
結論: Fedの利下げはアジア全体に波及し、輸出依存経済の成長に不確実性をもたらす一方、インフレ抑制や資本流出安定の一時的な救いとなるが、経済全体には複雑な影響が広がる。
【参考】
☞ 通貨が強くなる(自国通貨が他国通貨に対して価値が上がる)と、通常は輸入品の価格が下がるため、インフレ抑制につながることが多い。しかし、インフレが悪化するリスクがあるのは、次のような理由からである。
1.輸出が減少する: 通貨高になると、自国の輸出品が他国にとって高価になり、輸出が減少する可能性がある。輸出が減ると、国内の製造業や雇用が打撃を受け、経済成長が鈍化する。これが消費者の購買力を低下させ、需要と供給のバランスが崩れることで、インフレが発生する場合がある。
2.資本流入の過剰: 通貨が強くなると、海外からの投資が増える可能性がある。この結果、国内の資本市場が過熱し、不動産や株式などの資産価格が急騰し、バブルを引き起こすことがありまする。こうしたバブルは、経済全体のコスト上昇を招き、インフレを加速させるリスクがある。
3.金融緩和の影響: 通貨高の圧力を抑えるために中央銀行が利下げや金融緩和を行う場合、過剰な資金供給が行われ、結果的にインフレを招く可能性がある。安い借入コストにより、消費や投資が過剰に刺激され、物価が上昇するリスクがある。
これらの要因が重なると、通貨の強さにもかかわらず、国内ではインフレが進行するという複雑な状況が発生する可能性がある。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
US rate cut no cure-all for Asia’s woes and ills ASIA TIMES 2024.09.17
https://asiatimes.com/2024/09/us-rate-cut-no-cure-all-for-asias-woes-and-ills/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=c3257fd082-DAILY_17_9_2024&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-c3257fd082-16242795&mc_cid=c3257fd082&mc_eid=69a7d1ef3c
アメリカ連邦準備制度(Fed)が2024年9月18日に予定している利下げが、アジア諸国に与える影響について説明している。アメリカの利下げは、アジアの輸出依存経済にとって、すぐに予測できない影響を及ぼす可能性があるとされている。
利下げによってドルが弱まると、アジアの通貨は相対的に強くなり、輸入品の価格が下がり消費者物価が安定する一方で、輸出競争力が低下し、アメリカ市場での製品が高くなり、需要が減少する恐れがある。
特に中国や日本、韓国などの輸出依存度が高い国では、ドル安による輸出の減少が経済成長に悪影響を与える可能性があると指摘されている。また、インドネシアやマレーシア、インドなどの新興市場も、資本流出が安定する一方で、通貨の強さがインフレを悪化させるリスクを抱えている。
総じて、アジア諸国の中央銀行は、成長刺激を狙う利下げに踏み切るか、リスクを避けて様子を見るか、難しい選択を迫られることになるだろうと論じられている。
【詳細】
アメリカ連邦準備制度理事会(Fed)が2024年9月18日に予定している利下げが、アジア諸国の経済に与える影響を詳細に論じている。アメリカ国内の金融政策変更が、アジアの輸出依存経済や資本不足に苦しむ新興市場にどのような影響を与えるか、以下の観点から詳しく説明されている。
1. アメリカの利下げの背景とそのグローバルな影響
Fedが利下げを実施するのは、アメリカ国内でインフレ抑制のための積極的な利上げ政策が一段落し、経済成長を再び刺激するためとされている。しかし、この政策変更はアメリカだけでなく、グローバル経済にも波及効果をもたらす。特にアジアでは、アメリカ経済と強く結びついているため、直接的な影響が避けられない。
2. ドルの価値とアジア通貨への影響
Fedの利下げにより、ドルの価値が下がると予想されている。ドル安になると、アジアの通貨が相対的に強くなり、輸入品のコストが下がる。これにより、アジア諸国ではエネルギーや食料品といった主要輸入品の価格が下がり、インフレが抑制される効果が期待されまする。これは、現在インフレに苦しむアジア経済にとって一時的な救いとなる可能性がある。
3. 輸出競争力への悪影響
一方で、アジア諸国は輸出依存度が非常に高い経済構造を持っている。日本、中国、韓国のような輸出大国にとって、ドル安は米国市場での自国製品の価格が高騰することを意味する。これは、アメリカ消費者の購買力を低下させ、アジア製品の需要減少につながる恐れがある。特にアメリカは保護主義的な政策を強化しており、関税の引き上げも加わるため、アジアの輸出にさらなる圧力がかかると予想される。
4. 中国経済の脆弱性
中国は特に複雑な状況に直面している。中国経済は現在、低成長、デフレ圧力、不動産市場の危機など多くの課題を抱えている。Fedの利下げは、アメリカ資産の利回り優位性を弱め、中国からの資本流出が減少する可能性があるが、同時に人民元の価値が上昇し、中国製品の競争力を低下させるリスクもある。さらに、アメリカ経済が減速すれば、中国の輸出がさらに打撃を受ける可能性があり、中国の経済成長は一層鈍化するかもしれない。
5. 新興アジア市場の影響
インドネシア、マレーシア、インドといった新興市場においてもFedの利下げは影響を与える。これらの国々はインフレが依然として懸念材料であり、中央銀行は利下げに慎重な姿勢を見せている。しかし、アメリカの金利が低下すると、これまでアメリカの高金利を求めて流出していた資本が安定する可能性があるため、これらの国々の通貨が強化され、輸入コストが下がる効果が期待される。ただし、通貨の強化はインフレリスクを再び高める可能性もあり、インフレ管理と経済成長促進の間で難しいバランスが求められる状況となる。
6. アジア中央銀行の選択肢
Fedの利下げに対して、アジア各国の中央銀行は異なる戦略を取る可能性がある。一部の国は、アメリカと同様に利下げを行うことで経済成長を刺激しようとするかもしれない。しかし、その結果として、不動産市場のバブルや金融市場の過剰なリスクテイクが発生する危険性がある。特に中国では不動産市場がすでに不安定な状況にあるため、このリスクは深刻である。
一方で、他の国々は、アメリカの利下げの影響を見極めるために、しばらくは政策金利を据え置くかもしれない。特に新興国では、インフレリスクが高まる中で通貨安を防ぐための対応が必要となる可能性があるため、慎重な対応が求められている。
7. 結論
Fedの利下げがアメリカ経済にとどまらず、アジア全体に広がる波及効果を持つことを指摘している。特にアジアの輸出依存経済は、米ドルの価値が低下することで輸出競争力を失い、国内の成長に打撃を受ける可能性が高い。また、各国の中央銀行がどのような対応を取るかによって、アジア全体の経済が大きく左右されると論じている。
【要点】
・Fedの利下げの背景: 2024年9月18日、アメリカ連邦準備制度(Fed)はインフレ抑制を目的とした引き締め政策を終え、成長刺激のために利下げを予定している。
・ドル安の影響: Fedの利下げによりドルが弱まり、アジアの通貨が相対的に強くなることで、輸入コストが低下し、インフレ抑制効果が期待される。
・輸出競争力の低下: ドル安によってアメリカ市場でアジア製品の価格が上昇し、輸出依存度の高い中国、日本、韓国などの経済に悪影響を及ぼす可能性がある。
・中国経済への影響: 中国は低成長や不動産危機に直面しており、Fedの利下げが資本流出の抑制には寄与するが、人民元の上昇によって輸出競争力が低下し、さらなる成長鈍化のリスクがある。
・新興市場のリスク: インドネシア、マレーシア、インドなどの新興市場では、資本流出の安定が期待される一方、通貨の強化がインフレリスクを高める可能性があり、政策決定が難しくなる。
・アジア中央銀行の対応: 各国の中央銀行は、成長刺激のために利下げを行うか、リスク回避のために政策金利を据え置くかの難しい選択を迫られている。
・不動産バブルのリスク: 利下げによってアジアの不動産市場でバブルが発生するリスクがあり、特に中国では既に不安定な不動産市場がさらに脆弱になる恐れがある。
結論: Fedの利下げはアジア全体に波及し、輸出依存経済の成長に不確実性をもたらす一方、インフレ抑制や資本流出安定の一時的な救いとなるが、経済全体には複雑な影響が広がる。
【参考】
☞ 通貨が強くなる(自国通貨が他国通貨に対して価値が上がる)と、通常は輸入品の価格が下がるため、インフレ抑制につながることが多い。しかし、インフレが悪化するリスクがあるのは、次のような理由からである。
1.輸出が減少する: 通貨高になると、自国の輸出品が他国にとって高価になり、輸出が減少する可能性がある。輸出が減ると、国内の製造業や雇用が打撃を受け、経済成長が鈍化する。これが消費者の購買力を低下させ、需要と供給のバランスが崩れることで、インフレが発生する場合がある。
2.資本流入の過剰: 通貨が強くなると、海外からの投資が増える可能性がある。この結果、国内の資本市場が過熱し、不動産や株式などの資産価格が急騰し、バブルを引き起こすことがありまする。こうしたバブルは、経済全体のコスト上昇を招き、インフレを加速させるリスクがある。
3.金融緩和の影響: 通貨高の圧力を抑えるために中央銀行が利下げや金融緩和を行う場合、過剰な資金供給が行われ、結果的にインフレを招く可能性がある。安い借入コストにより、消費や投資が過剰に刺激され、物価が上昇するリスクがある。
これらの要因が重なると、通貨の強さにもかかわらず、国内ではインフレが進行するという複雑な状況が発生する可能性がある。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
US rate cut no cure-all for Asia’s woes and ills ASIA TIMES 2024.09.17
https://asiatimes.com/2024/09/us-rate-cut-no-cure-all-for-asias-woes-and-ills/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=c3257fd082-DAILY_17_9_2024&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-c3257fd082-16242795&mc_cid=c3257fd082&mc_eid=69a7d1ef3c
BRICS:新しい金融秩序の構築 ― 2024年09月18日 16:07
【概要】
BRICSは、近い将来にドルを中心とした国際金融システムに代わるものを発表するかもしれないとの憶測がある。特に、金や商品に裏打ちされた通貨の導入が議論されており、これはドルの支配に対抗するものとなる可能性がある。
この動きの背景には、1944年のブレトン・ウッズ協定で始まったドル中心の国際金融システムの終焉がある。ブレトン・ウッズ協定により、米ドルは金に固定され、他国の通貨はドルにペッグされていたが、1971年にアメリカが金本位制を離脱し、以降はアメリカの財政規律が緩み、膨大な国債発行が続いた。現在では、アメリカの国債発行額は35兆ドルを超え、その返済が最大の国家予算項目となっている。
BRICS諸国はすでにG7を経済規模で上回り、世界経済の35%を占める。BRICSの一部では、欧州通貨単位(ECU)やジョン・メイナード・ケインズが提唱したバンコールのようなモデルを参考に、複数通貨による決済システムや、資源に裏打ちされた共通通貨を検討している。
中国はmBridgeというブロックチェーンを用いた金融プラットフォームを開発しており、これは複数の通貨での即時取引を可能にするもので、BRICS全体の金融取引における効率化を目指している。
現在、BRICSには9カ国が加盟しており、40カ国以上が加入を希望しているものの、金融システムの複雑さなどから新規加盟を一時停止している。
【詳細】
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は、ドルを中心とした国際金融システムに代わる新しい金融秩序の構築を目指しており、特に金や商品に裏打ちされた通貨を導入する可能性が議論されています。この背景には、1944年のブレトン・ウッズ協定によって確立されたアメリカ主導の国際金融体制が崩壊しつつあるという認識がある。
ブレトン・ウッズ協定とドル支配
ブレトン・ウッズ協定は、第二次世界大戦後に国際金融システムを安定させるために締結され、米ドルを金に固定し、他の国々の通貨をドルにペッグ(固定)する仕組みが導入された。このシステムにより、世界中で貿易や金融取引が米ドルを基軸通貨として行われ、ドルを持つ国々はアメリカ中央銀行に対してそのドルを金と交換する権利を有していた。しかし、アメリカが貿易赤字を抱えた1971年、リチャード・ニクソン大統領はドルと金の交換を停止し、ドルの金本位制は終了した。これによってアメリカは金の制約から解放され、財政赤字を抱えることになった。
ドル依存からの脱却
ブレトン・ウッズ体制の崩壊以降、アメリカは巨額の債務を抱えるようになり、現在ではアメリカの国債は35兆ドルを超えている。この状況に対し、BRICS諸国を含む多くの国々は、ドル依存からの脱却を模索している。BRICS諸国は、世界経済において大きなシェアを占めており、特に中国は世界の工業生産の約30%を担い、アメリカの二倍近い規模を誇っている。BRICSはその経済力を背景に、新しい金融システムを構築することで、ドル中心の国際金融システムに代わる仕組みを提案している。
BRICS通貨構想と既存のモデル
BRICSが構築しようとしている新しい金融システムは、いくつかのモデルに基づいている。一つは、欧州通貨単位(ECU)のモデルである。ECUは1979年に設立され、ドルとの金のペッグが終了した後、ヨーロッパの通貨の安定化を図るために使用された。これにより、各国の通貨を共通の計算単位で評価し、安定した取引が可能となった。
もう一つのモデルは、ジョン・メイナード・ケインズが提案した「バンコール」である。これは、石油や小麦などのコモディティに裏打ちされた国際通貨単位を導入し、各国通貨の変動に影響されない安定した通貨システムを目指すものでしあった。ケインズの提案には、貿易赤字や黒字を抱える国に対して罰則を課すことで、貿易のバランスを維持する仕組みも含まれていたが、当時はアメリカによって拒否された。しかし、今日の世界的な貿易不均衡、特にアメリカと中国の間の巨額の貿易赤字を考えると、ケインズの見解は再び注目されている。
mBridgeプロジェクトとブロックチェーン技術
BRICSは、共通通貨の導入がすぐに実現する可能性は低いものの、中国を中心に、ブロックチェーン技術を活用した「mBridge」というプラットフォームを開発している。このシステムは、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を使用して、複数の国の通貨での金融取引を瞬時に行うことを可能にするものである。これにより、国際貿易のコストを削減し、銀行などの仲介者を排除して、直接取引を行うことができる。たとえば、タイの企業がシンガポールの取引先にタイバーツで商品を売ることができ、取引は即座に完了する。このようなシステムは、ドルを介さない取引を促進し、ドル依存の解消に貢献する可能性がある。
BRICSの今後の展望
現在、BRICSには9カ国が加盟しており、さらに40以上の国々が加盟を希望している。特にエジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦が新たに加わっている。しかし、BRICSは最近、新規加盟の一時停止を発表しており、その理由としては、新しい金融システムの構築に伴う複雑さや世界的な影響が考えられる。
BRICSは、金や天然資源(石油、鉱物、金属など)に裏打ちされた通貨単位を導入する可能性を検討しており、このグループは世界の自然資源の大部分を支配しているため、世界の価格を左右する力を持っている。特に、BRICS諸国が過去2年間にわたり金を大量に購入していることは、将来的な通貨システムの再編に向けた準備であると考えられている。
結論
BRICSが目指すドルからの脱却は、単なる経済的な動きにとどまらず、1944年に始まったアメリカ主導の国際金融システムに挑戦するものである。新しい金融システムの構築には時間がかかる可能性があるが、その方向性はすでに明確であり、ドル中心の体制から多極的な金融システムへの移行が進む中で、BRICSは重要な役割を果たすことが予想される。
【要点】
・BRICSの通貨導入の可能性:BRICSは金や商品に裏打ちされた通貨を導入し、ドル中心の国際金融システムに代わる仕組みを構築する可能性がある。
・ブレトン・ウッズ協定の崩壊:1944年のブレトン・ウッズ協定により、ドルが基軸通貨となったが、1971年にアメリカが金本位制を離脱し、財政赤字が拡大した。
・アメリカの国債問題:現在、アメリカの国債は35兆ドルを超え、返済が国家予算の最大項目になっている。これにより、ドルの支配力が弱まり、他国がドルからの脱却を模索。
・BRICSの経済力:BRICS諸国は世界経済の35%を占め、G7を上回る規模となっている。特に中国は世界の工業生産の30%を占め、ドル依存から脱却するための経済基盤が整っている。
・ECUとバンコールのモデル:BRICSは欧州通貨単位(ECU)やケインズの提唱したバンコールを参考に、共通通貨や複数通貨の決済システムを検討。
・mBridgeプロジェクト:中国が主導するブロックチェーン技術を活用した「mBridge」プラットフォームは、複数の国の通貨での取引を即時に行い、仲介者を排除してコストを削減する。
・新規加盟の一時停止:BRICSは現在9カ国が加盟しており、40以上の国が加入を希望しているが、新しい金融システムの複雑さから新規加盟を一時停止している。
・金の購入と通貨再編の準備:BRICS諸国は過去2年間にわたり金を大量に購入しており、将来的な通貨システム再編に向けた準備を進めている。
・多極的な金融システムへの移行:BRICSはドル中心の体制から、多極的な金融システムへの移行を進めており、その重要性が増している。
【参考】
☞ バンコール(Bancor)は、経済学者ジョン・メイナード・ケインズが1944年のブレトン・ウッズ会議で提唱した超国家的な通貨単位である。バンコールは、貿易不均衡を是正し、安定した国際金融システムを構築するために考案されたが、最終的に導入されなかった。
バンコールの主な特徴
1.通貨の裏付け:バンコールは金ではなく、一連の主要な商品(石油や小麦など)に裏打ちされる想定であった。これにより、通貨の価値が国際的な実物資産に基づくため、国ごとの通貨価値の変動を減少させようとした。
2.超国家的な単位:バンコールは各国の通貨とは別のグローバルな単位として使われ、貿易や金融取引で共通の決済手段を提供する予定であった。
3.貿易不均衡の是正:バンコール制度では、貿易赤字や黒字が続く国に罰則を課すことで、貿易のバランスを取ろうとした。これにより、特定の国が貿易黒字を溜め込むことを防ぎ、世界的な経済の安定を図ることを目指していた。
4.米国の反対:アメリカはバンコールを「複雑で自由貿易に障害を与える」として拒否し、代わりにドルを基軸通貨とするブレトン・ウッズ体制が採用された。
バンコールは、現在も国際通貨体制の見直しや、貿易不均衡の解消を目指す議論の中で言及されることがある。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
BRIC by BRIC, de-dollarization only a matter of time ASIA TIMES 2024.09.17
https://asiatimes.com/2024/09/bric-by-bric-de-dollarization-only-a-matter-of-time/
BRICSは、近い将来にドルを中心とした国際金融システムに代わるものを発表するかもしれないとの憶測がある。特に、金や商品に裏打ちされた通貨の導入が議論されており、これはドルの支配に対抗するものとなる可能性がある。
この動きの背景には、1944年のブレトン・ウッズ協定で始まったドル中心の国際金融システムの終焉がある。ブレトン・ウッズ協定により、米ドルは金に固定され、他国の通貨はドルにペッグされていたが、1971年にアメリカが金本位制を離脱し、以降はアメリカの財政規律が緩み、膨大な国債発行が続いた。現在では、アメリカの国債発行額は35兆ドルを超え、その返済が最大の国家予算項目となっている。
BRICS諸国はすでにG7を経済規模で上回り、世界経済の35%を占める。BRICSの一部では、欧州通貨単位(ECU)やジョン・メイナード・ケインズが提唱したバンコールのようなモデルを参考に、複数通貨による決済システムや、資源に裏打ちされた共通通貨を検討している。
中国はmBridgeというブロックチェーンを用いた金融プラットフォームを開発しており、これは複数の通貨での即時取引を可能にするもので、BRICS全体の金融取引における効率化を目指している。
現在、BRICSには9カ国が加盟しており、40カ国以上が加入を希望しているものの、金融システムの複雑さなどから新規加盟を一時停止している。
【詳細】
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は、ドルを中心とした国際金融システムに代わる新しい金融秩序の構築を目指しており、特に金や商品に裏打ちされた通貨を導入する可能性が議論されています。この背景には、1944年のブレトン・ウッズ協定によって確立されたアメリカ主導の国際金融体制が崩壊しつつあるという認識がある。
ブレトン・ウッズ協定とドル支配
ブレトン・ウッズ協定は、第二次世界大戦後に国際金融システムを安定させるために締結され、米ドルを金に固定し、他の国々の通貨をドルにペッグ(固定)する仕組みが導入された。このシステムにより、世界中で貿易や金融取引が米ドルを基軸通貨として行われ、ドルを持つ国々はアメリカ中央銀行に対してそのドルを金と交換する権利を有していた。しかし、アメリカが貿易赤字を抱えた1971年、リチャード・ニクソン大統領はドルと金の交換を停止し、ドルの金本位制は終了した。これによってアメリカは金の制約から解放され、財政赤字を抱えることになった。
ドル依存からの脱却
ブレトン・ウッズ体制の崩壊以降、アメリカは巨額の債務を抱えるようになり、現在ではアメリカの国債は35兆ドルを超えている。この状況に対し、BRICS諸国を含む多くの国々は、ドル依存からの脱却を模索している。BRICS諸国は、世界経済において大きなシェアを占めており、特に中国は世界の工業生産の約30%を担い、アメリカの二倍近い規模を誇っている。BRICSはその経済力を背景に、新しい金融システムを構築することで、ドル中心の国際金融システムに代わる仕組みを提案している。
BRICS通貨構想と既存のモデル
BRICSが構築しようとしている新しい金融システムは、いくつかのモデルに基づいている。一つは、欧州通貨単位(ECU)のモデルである。ECUは1979年に設立され、ドルとの金のペッグが終了した後、ヨーロッパの通貨の安定化を図るために使用された。これにより、各国の通貨を共通の計算単位で評価し、安定した取引が可能となった。
もう一つのモデルは、ジョン・メイナード・ケインズが提案した「バンコール」である。これは、石油や小麦などのコモディティに裏打ちされた国際通貨単位を導入し、各国通貨の変動に影響されない安定した通貨システムを目指すものでしあった。ケインズの提案には、貿易赤字や黒字を抱える国に対して罰則を課すことで、貿易のバランスを維持する仕組みも含まれていたが、当時はアメリカによって拒否された。しかし、今日の世界的な貿易不均衡、特にアメリカと中国の間の巨額の貿易赤字を考えると、ケインズの見解は再び注目されている。
mBridgeプロジェクトとブロックチェーン技術
BRICSは、共通通貨の導入がすぐに実現する可能性は低いものの、中国を中心に、ブロックチェーン技術を活用した「mBridge」というプラットフォームを開発している。このシステムは、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を使用して、複数の国の通貨での金融取引を瞬時に行うことを可能にするものである。これにより、国際貿易のコストを削減し、銀行などの仲介者を排除して、直接取引を行うことができる。たとえば、タイの企業がシンガポールの取引先にタイバーツで商品を売ることができ、取引は即座に完了する。このようなシステムは、ドルを介さない取引を促進し、ドル依存の解消に貢献する可能性がある。
BRICSの今後の展望
現在、BRICSには9カ国が加盟しており、さらに40以上の国々が加盟を希望している。特にエジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦が新たに加わっている。しかし、BRICSは最近、新規加盟の一時停止を発表しており、その理由としては、新しい金融システムの構築に伴う複雑さや世界的な影響が考えられる。
BRICSは、金や天然資源(石油、鉱物、金属など)に裏打ちされた通貨単位を導入する可能性を検討しており、このグループは世界の自然資源の大部分を支配しているため、世界の価格を左右する力を持っている。特に、BRICS諸国が過去2年間にわたり金を大量に購入していることは、将来的な通貨システムの再編に向けた準備であると考えられている。
結論
BRICSが目指すドルからの脱却は、単なる経済的な動きにとどまらず、1944年に始まったアメリカ主導の国際金融システムに挑戦するものである。新しい金融システムの構築には時間がかかる可能性があるが、その方向性はすでに明確であり、ドル中心の体制から多極的な金融システムへの移行が進む中で、BRICSは重要な役割を果たすことが予想される。
【要点】
・BRICSの通貨導入の可能性:BRICSは金や商品に裏打ちされた通貨を導入し、ドル中心の国際金融システムに代わる仕組みを構築する可能性がある。
・ブレトン・ウッズ協定の崩壊:1944年のブレトン・ウッズ協定により、ドルが基軸通貨となったが、1971年にアメリカが金本位制を離脱し、財政赤字が拡大した。
・アメリカの国債問題:現在、アメリカの国債は35兆ドルを超え、返済が国家予算の最大項目になっている。これにより、ドルの支配力が弱まり、他国がドルからの脱却を模索。
・BRICSの経済力:BRICS諸国は世界経済の35%を占め、G7を上回る規模となっている。特に中国は世界の工業生産の30%を占め、ドル依存から脱却するための経済基盤が整っている。
・ECUとバンコールのモデル:BRICSは欧州通貨単位(ECU)やケインズの提唱したバンコールを参考に、共通通貨や複数通貨の決済システムを検討。
・mBridgeプロジェクト:中国が主導するブロックチェーン技術を活用した「mBridge」プラットフォームは、複数の国の通貨での取引を即時に行い、仲介者を排除してコストを削減する。
・新規加盟の一時停止:BRICSは現在9カ国が加盟しており、40以上の国が加入を希望しているが、新しい金融システムの複雑さから新規加盟を一時停止している。
・金の購入と通貨再編の準備:BRICS諸国は過去2年間にわたり金を大量に購入しており、将来的な通貨システム再編に向けた準備を進めている。
・多極的な金融システムへの移行:BRICSはドル中心の体制から、多極的な金融システムへの移行を進めており、その重要性が増している。
【参考】
☞ バンコール(Bancor)は、経済学者ジョン・メイナード・ケインズが1944年のブレトン・ウッズ会議で提唱した超国家的な通貨単位である。バンコールは、貿易不均衡を是正し、安定した国際金融システムを構築するために考案されたが、最終的に導入されなかった。
バンコールの主な特徴
1.通貨の裏付け:バンコールは金ではなく、一連の主要な商品(石油や小麦など)に裏打ちされる想定であった。これにより、通貨の価値が国際的な実物資産に基づくため、国ごとの通貨価値の変動を減少させようとした。
2.超国家的な単位:バンコールは各国の通貨とは別のグローバルな単位として使われ、貿易や金融取引で共通の決済手段を提供する予定であった。
3.貿易不均衡の是正:バンコール制度では、貿易赤字や黒字が続く国に罰則を課すことで、貿易のバランスを取ろうとした。これにより、特定の国が貿易黒字を溜め込むことを防ぎ、世界的な経済の安定を図ることを目指していた。
4.米国の反対:アメリカはバンコールを「複雑で自由貿易に障害を与える」として拒否し、代わりにドルを基軸通貨とするブレトン・ウッズ体制が採用された。
バンコールは、現在も国際通貨体制の見直しや、貿易不均衡の解消を目指す議論の中で言及されることがある。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
BRIC by BRIC, de-dollarization only a matter of time ASIA TIMES 2024.09.17
https://asiatimes.com/2024/09/bric-by-bric-de-dollarization-only-a-matter-of-time/
Nippon SteelがアメリカのUS Steelを買収 ― 2024年09月18日 16:34
【概要】
日本のNippon SteelがアメリカのUS Steelを買収しようとしていることに対して、アメリカの主要な政治家たちが反対している状況を説明している。特にジョー・バイデン、カマラ・ハリス、ドナルド・トランプ、J.D.ヴァンスなどが、この取引がアメリカの産業や安全保障に悪影響を与える可能性があると主張していることが強調されている。彼らは選挙戦において、アメリカ国内の支持を集めるために強い反対意見を表明している。
しかし、このようなアメリカ側のナショナリスティックな発言は、日本の信頼を損なっていると日本側は見ている。日本の石破茂元防衛大臣や河野太郎デジタル担当大臣は、アメリカの発言や行動が同盟国に不安をもたらしていると懸念を示している。
さらに、記事では、日本の自民党総裁選挙の主要候補者として石破茂や河野太郎などが挙げられ、彼らが日米同盟の重要性を強調しながらも、日本の防衛能力を強化し、アジア太平洋地域での自立した安全保障体制の構築が必要だと主張していることが紹介されている。
また、日本国内では憲法第9条の改正に対する支持が増加しており、多くの国民が防衛力の現実的な役割を認識し始めている。記事は、日本がより自主的な国防体制を確立し、国際的な脅威に対処するために動いている状況を詳述している。
【詳細】
日本のNippon Steelによる米国US Steelの買収提案が、米国の政治家たちの反発を招き、日本と米国の関係に影響を与えている状況を詳細に解説している。米国では2024年の選挙を控え、ジョー・バイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領、ドナルド・トランプ元大統領、J.D.ヴァンス上院議員などが、日本企業による米国の主要企業買収に対して強い反対を表明している。
米国政治家の発言
バイデン大統領やハリス副大統領は、US Steelが「歴史的な米国企業」であり、米国の労働者によって運営され続けるべきだと強調している。彼らは、アメリカの製鉄業界が国内に所有され、管理されることが国家の利益にかなうと主張している。トランプ元大統領はさらに強硬な姿勢を見せ、「日本がUS Steelを買収することを即座に阻止する」と述べている。J.D.ヴァンス上院議員も、米国の防衛産業基盤が「外国に売り渡される」と批判している。
さらに、米国上院銀行委員会の委員長であるシェロッド・ブラウンは、日本企業の中国政府との関係を疑問視し、この買収が米国の国家安全保障や経済にリスクをもたらす可能性があると懸念を示している。
日本側の反応
米国の政治家たちの反発に対して、日本側では失望が広がっている。元防衛大臣である石破茂は、米国の発言が同盟国である日本との信頼を損なう可能性があると懸念している。彼は、最近の米国が同盟国に対して取引や脅威を押し付ける傾向が強まっていると指摘し、公正な対応が求められると主張している。また、河野太郎デジタル担当大臣は、米国が市場経済の原則を守ると信じてきたが、この買収に経済的または安全保障上の脅威はないと述べている。
日米同盟と日本の防衛政策
記事はさらに、日米同盟に対する日本の政治家の見解や、日本の今後の防衛政策についても触れている。河野は、米国の政治が不安定な状態になるとき、日本は「重層的な防衛」へのさらなる保証が必要だと述べている。これは、アジア太平洋地域やヨーロッパの他の同盟国との協力、財政的に強化された国内の防衛産業、そして長距離ミサイルや無人機、原子力潜水艦の導入を含むものである。
石破は、日米同盟の重要性を認めつつも、日本がすべての米国の要求に応える必要はないと強調し、自国の防衛力を増強する必要があるとしている。また、彼はウクライナの状況に触れ、「今日のウクライナは明日の東アジアになるかもしれない」と警鐘を鳴らし、中国の侵略に対する抑止力を強化することが急務だと述べている。
自民党総裁選と防衛政策
石破茂や河野太郎を含む9人の自民党総裁選候補者が、防衛政策や憲法改正を巡る議論を展開している。特に、石破や河野、さらには高市早苗経済安全保障担当相などが、安全保障の観点から日米同盟の強化と同時に、アジア太平洋地域における日本の自立した防衛力の確立を目指している。
高市早苗は、中国が日本の尖閣諸島付近に設置したブイの撤去や、「自由で開かれたインド太平洋」の推進、さらには日本への核兵器持ち込みの議論を支持しており、他の候補者に比べて最も強硬な姿勢をとっている。彼女は首相に選ばれた場合、靖国神社を訪問することも約束しており、これは中国や韓国との外交的な摩擦を引き起こす可能性がある。
憲法第9条と防衛力強化の議論
この記事はまた、日本の憲法第9条、特に「戦争放棄」を謳った第2項に対する世論の変化についても詳述している。日本国民の間で防衛力の強化を支持する声が増えており、5月に実施された読売新聞の調査によると、53%の人々が第9条第2項の改正を支持しており、これは過去最高の数字である。
一方で、75%の人々は憲法第9条の第1項、つまり戦争放棄そのものには賛成しており、日本国民は国際関係の現実を直視しつつも、決して「戦争支持」には向かっていないことがわかる。
結論
総じて、この記事は、米国の選挙期間中におけるナショナリズム的な言説が、日本との信頼関係に亀裂をもたらしていること、そして日本国内で防衛力強化や憲法改正の議論が進んでいることを描いている。特に日米同盟の未来に対する日本の政治家たちの見解が多様であり、日本がより自立した防衛政策を模索している現状を示している。
【要点】
・日本のNippon SteelによるUS Steelの買収提案に対し、米国の政治家(バイデン、ハリス、トランプ、J.D.ヴァンス)が強く反発。
・バイデンとハリスは、US Steelが米国内で運営されるべきと主張。
・トランプは即座に買収を阻止すると表明。
・J.D.ヴァンスは、米国の防衛産業基盤が「外国に売られた」と批判。
・米上院銀行委員長のシェロッド・ブラウンは、日本企業の中国政府との関係を懸念。
・日本の石破茂元防衛大臣は、米国の発言が日本との信頼関係を損なうと指摘。
・河野太郎デジタル担当大臣は、買収に経済的・安全保障上の脅威はないと述べる。
・日本では日米同盟の重要性が強調される一方、防衛政策において自立を求める声が高まる。
・石破は、中国の脅威に対する抑止力強化を提唱し、ウクライナ情勢を東アジアに当てはめた警告を発する。
・自民党総裁選候補者は、防衛力強化や憲法改正について議論。高市早苗は最も強硬な防衛政策を主張。
・憲法第9条の改正を支持する日本国民が増加しており、防衛力強化の世論が高まっている。
・米国の政治的発言が日米関係に悪影響を与え、日本は自国の防衛力を強化しようとしている。
【引用・参照・底本】
Japan’s faith in US eroded by impolitic election rhetoric ASIA TIMES 2024.09.16
https://asiatimes.com/2024/09/japans-faith-in-us-eroded-by-impolitic-election-rhetoric/
日本のNippon SteelがアメリカのUS Steelを買収しようとしていることに対して、アメリカの主要な政治家たちが反対している状況を説明している。特にジョー・バイデン、カマラ・ハリス、ドナルド・トランプ、J.D.ヴァンスなどが、この取引がアメリカの産業や安全保障に悪影響を与える可能性があると主張していることが強調されている。彼らは選挙戦において、アメリカ国内の支持を集めるために強い反対意見を表明している。
しかし、このようなアメリカ側のナショナリスティックな発言は、日本の信頼を損なっていると日本側は見ている。日本の石破茂元防衛大臣や河野太郎デジタル担当大臣は、アメリカの発言や行動が同盟国に不安をもたらしていると懸念を示している。
さらに、記事では、日本の自民党総裁選挙の主要候補者として石破茂や河野太郎などが挙げられ、彼らが日米同盟の重要性を強調しながらも、日本の防衛能力を強化し、アジア太平洋地域での自立した安全保障体制の構築が必要だと主張していることが紹介されている。
また、日本国内では憲法第9条の改正に対する支持が増加しており、多くの国民が防衛力の現実的な役割を認識し始めている。記事は、日本がより自主的な国防体制を確立し、国際的な脅威に対処するために動いている状況を詳述している。
【詳細】
日本のNippon Steelによる米国US Steelの買収提案が、米国の政治家たちの反発を招き、日本と米国の関係に影響を与えている状況を詳細に解説している。米国では2024年の選挙を控え、ジョー・バイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領、ドナルド・トランプ元大統領、J.D.ヴァンス上院議員などが、日本企業による米国の主要企業買収に対して強い反対を表明している。
米国政治家の発言
バイデン大統領やハリス副大統領は、US Steelが「歴史的な米国企業」であり、米国の労働者によって運営され続けるべきだと強調している。彼らは、アメリカの製鉄業界が国内に所有され、管理されることが国家の利益にかなうと主張している。トランプ元大統領はさらに強硬な姿勢を見せ、「日本がUS Steelを買収することを即座に阻止する」と述べている。J.D.ヴァンス上院議員も、米国の防衛産業基盤が「外国に売り渡される」と批判している。
さらに、米国上院銀行委員会の委員長であるシェロッド・ブラウンは、日本企業の中国政府との関係を疑問視し、この買収が米国の国家安全保障や経済にリスクをもたらす可能性があると懸念を示している。
日本側の反応
米国の政治家たちの反発に対して、日本側では失望が広がっている。元防衛大臣である石破茂は、米国の発言が同盟国である日本との信頼を損なう可能性があると懸念している。彼は、最近の米国が同盟国に対して取引や脅威を押し付ける傾向が強まっていると指摘し、公正な対応が求められると主張している。また、河野太郎デジタル担当大臣は、米国が市場経済の原則を守ると信じてきたが、この買収に経済的または安全保障上の脅威はないと述べている。
日米同盟と日本の防衛政策
記事はさらに、日米同盟に対する日本の政治家の見解や、日本の今後の防衛政策についても触れている。河野は、米国の政治が不安定な状態になるとき、日本は「重層的な防衛」へのさらなる保証が必要だと述べている。これは、アジア太平洋地域やヨーロッパの他の同盟国との協力、財政的に強化された国内の防衛産業、そして長距離ミサイルや無人機、原子力潜水艦の導入を含むものである。
石破は、日米同盟の重要性を認めつつも、日本がすべての米国の要求に応える必要はないと強調し、自国の防衛力を増強する必要があるとしている。また、彼はウクライナの状況に触れ、「今日のウクライナは明日の東アジアになるかもしれない」と警鐘を鳴らし、中国の侵略に対する抑止力を強化することが急務だと述べている。
自民党総裁選と防衛政策
石破茂や河野太郎を含む9人の自民党総裁選候補者が、防衛政策や憲法改正を巡る議論を展開している。特に、石破や河野、さらには高市早苗経済安全保障担当相などが、安全保障の観点から日米同盟の強化と同時に、アジア太平洋地域における日本の自立した防衛力の確立を目指している。
高市早苗は、中国が日本の尖閣諸島付近に設置したブイの撤去や、「自由で開かれたインド太平洋」の推進、さらには日本への核兵器持ち込みの議論を支持しており、他の候補者に比べて最も強硬な姿勢をとっている。彼女は首相に選ばれた場合、靖国神社を訪問することも約束しており、これは中国や韓国との外交的な摩擦を引き起こす可能性がある。
憲法第9条と防衛力強化の議論
この記事はまた、日本の憲法第9条、特に「戦争放棄」を謳った第2項に対する世論の変化についても詳述している。日本国民の間で防衛力の強化を支持する声が増えており、5月に実施された読売新聞の調査によると、53%の人々が第9条第2項の改正を支持しており、これは過去最高の数字である。
一方で、75%の人々は憲法第9条の第1項、つまり戦争放棄そのものには賛成しており、日本国民は国際関係の現実を直視しつつも、決して「戦争支持」には向かっていないことがわかる。
結論
総じて、この記事は、米国の選挙期間中におけるナショナリズム的な言説が、日本との信頼関係に亀裂をもたらしていること、そして日本国内で防衛力強化や憲法改正の議論が進んでいることを描いている。特に日米同盟の未来に対する日本の政治家たちの見解が多様であり、日本がより自立した防衛政策を模索している現状を示している。
【要点】
・日本のNippon SteelによるUS Steelの買収提案に対し、米国の政治家(バイデン、ハリス、トランプ、J.D.ヴァンス)が強く反発。
・バイデンとハリスは、US Steelが米国内で運営されるべきと主張。
・トランプは即座に買収を阻止すると表明。
・J.D.ヴァンスは、米国の防衛産業基盤が「外国に売られた」と批判。
・米上院銀行委員長のシェロッド・ブラウンは、日本企業の中国政府との関係を懸念。
・日本の石破茂元防衛大臣は、米国の発言が日本との信頼関係を損なうと指摘。
・河野太郎デジタル担当大臣は、買収に経済的・安全保障上の脅威はないと述べる。
・日本では日米同盟の重要性が強調される一方、防衛政策において自立を求める声が高まる。
・石破は、中国の脅威に対する抑止力強化を提唱し、ウクライナ情勢を東アジアに当てはめた警告を発する。
・自民党総裁選候補者は、防衛力強化や憲法改正について議論。高市早苗は最も強硬な防衛政策を主張。
・憲法第9条の改正を支持する日本国民が増加しており、防衛力強化の世論が高まっている。
・米国の政治的発言が日米関係に悪影響を与え、日本は自国の防衛力を強化しようとしている。
【引用・参照・底本】
Japan’s faith in US eroded by impolitic election rhetoric ASIA TIMES 2024.09.16
https://asiatimes.com/2024/09/japans-faith-in-us-eroded-by-impolitic-election-rhetoric/
AUKUSに対する中国の反対 ― 2024年09月18日 17:03
【概要】
AUKUSに対する中国の反対は、いくつかの重要な懸念に根ざしている。
1.核戦略の複雑さ:AUKUS潜水艦は核弾頭を搭載しないが、中国の海上核抑止力を危険にさらす可能性がある。中国の核搭載可能な潜水艦は海南島を拠点とし、南シナ海で活動している。AUKUS潜水艦の速力、ステルス性、耐久性の向上などの能力の向上により、これらの中国潜水艦を監視し、潜在的に追跡することが可能となり、潜水艦の脆弱性が高まる可能性がある。
2.直接的な軍事的脅威:トマホークミサイルで武装する可能性のあるAUKUS潜水艦は、特に南シナ海の中国の軍事基地やインフラを標的にする可能性がある。また、中国の重要な海上補給路を混乱させる可能性もある。極端なシナリオでは、これらの潜水艦が中国の都市への直接攻撃に使用される懸念があるかもしれない。
3.地域的な軍事バランス:AUKUSの下でオーストラリアがバージニア級潜水艦を取得すると、米国とその同盟国が運用する原子力潜水艦の総数が増加し、地域の軍事バランスが崩れる可能性がある。これは、中国にとって長期的な戦略的不利につながる可能性があり、この地域における米国と同盟国の軍事的プレゼンスの増加によってさらに悪化する可能性がある。
これらの要因が総合的になれば、AUKUSは中国の戦略的計算と軍事態勢に大きな影響を与える可能性があることを示唆している。
【詳細】
AUKUS(オーストラリア、イギリス、アメリカの安全保障協定)が中国にとってなぜ深刻な懸念材料であるかについての詳しい説明である。
1. 中国の核戦略への影響
・核潜水艦の監視リスク: AUKUS協定の下で配備される潜水艦は核兵器を搭載しないものの、その高い機動性とステルス性能により、中国の海上核抑止力を脅かす可能性があります。中国の核ミサイル潜水艦は海南島に基地を置き、南シナ海の深海に迅速に移動することで発見されにくくなっています。AUKUSの潜水艦がこれらの潜水艦の動きをより正確に追跡する能力を持つことで、これらの中国潜水艦の位置や動きが明らかになりやすくなる恐れがあります。
・海上核戦力の脆弱性: AUKUSの潜水艦による監視が進むことで、中国の核ミサイル潜水艦の音響信号(音での識別情報)が把握され、発見されるリスクが高まる。これは、将来的に中国の核抑止力を削ぐ可能性がある。
2. 中国への直接的な軍事的脅威
・軍事基地やインフラへの攻撃: AUKUSの潜水艦はトマホーク巡航ミサイルを搭載する可能性があり、これを利用して中国の南シナ海や沿岸部の軍事基地や重要インフラを攻撃することができる。このような攻撃能力は、中国の軍事的な脆弱性を突くものである。
・海上輸送路への脅威: AUKUSの潜水艦は長距離を潜水したまま移動できるため、インド洋や東アジアの重要な輸送路を脅かす可能性がある。中国はこれらの輸送路に依存しており、戦争の際には資源供給が遮断されるリスクがある。
・都市への直接攻撃の可能性: 現時点では考えにくいかもしれないが、中国は最悪のシナリオとして、AUKUSの潜水艦が都市に対して直接攻撃を行う可能性も考慮しているかもしれない。軍事戦略は通常、最も悪いケースを想定して策定されるためである。
3. 地域的な軍事バランスの変化
・米国および同盟国の潜水艦の増加: オーストラリアがアメリカからヴァージニア級潜水艦を購入することで、米国とその同盟国の核動力潜水艦の数が増加する。これにより、2040年以降、長期的に見てアメリカとその同盟国の海中軍事力が強化され、中国に対する戦略的優位性が高まる。
・米国軍の地域的プレゼンスの強化: AUKUSの計画により、2027年から西オーストラリアにおいて英国と米国の核動力潜水艦が回転配備される予定である。これにより、米国とその同盟国の軍事力が地域で増強され、中国の相対的な潜水艦戦力が弱まる可能性がある。
これらの要因により、中国はAUKUSを戦略的な脅威と見なし、その影響を最小限に抑えよう とする強い動機を持っている。
【要点】
AUKUSが中国にとって深刻な懸念である理由を箇条書きで説明する。
1.核戦略への影響
・監視リスク: AUKUSの潜水艦は、中国の海上核ミサイル潜水艦の動きを監視する能力がある。
・脆弱性の増加: AUKUS潜水艦の高いステルス性能と機動性により、中国の核ミサイル潜水艦が発見されやすくなる。
2.直接的な軍事脅威
・軍事基地への攻撃: AUKUS潜水艦は、トマホークミサイルで中国の軍事基地やインフラを攻撃可能。
・海上輸送路への脅威: 長距離を潜水したまま移動できるため、中国の重要な輸送路を脅かす 可能性がある。
・都市攻撃の可能性: 最悪のシナリオとして、AUKUS潜水艦が都市に対する攻撃に使われる可能性も考慮されている。
3.地域的な軍事バランスの変化
・潜水艦の増加: オーストラリアによるヴァージニア級潜水艦の購入で、米国とその同盟国の潜水艦数が増加。
・軍事力の強化: AUKUS計画により、西オーストラリアで米国と英国の潜水艦が回転配備され、地域での軍事力が強化される。
これらの要因が、中国にとってAUKUSが深刻な軍事的脅威である理由である。
【引用・参照・底本】
Why China is so very vexed about AUKUS ASIA TIMES 2024.09.17
https://asiatimes.com/2024/09/why-china-is-so-very-vexed-about-aukus/
AUKUSに対する中国の反対は、いくつかの重要な懸念に根ざしている。
1.核戦略の複雑さ:AUKUS潜水艦は核弾頭を搭載しないが、中国の海上核抑止力を危険にさらす可能性がある。中国の核搭載可能な潜水艦は海南島を拠点とし、南シナ海で活動している。AUKUS潜水艦の速力、ステルス性、耐久性の向上などの能力の向上により、これらの中国潜水艦を監視し、潜在的に追跡することが可能となり、潜水艦の脆弱性が高まる可能性がある。
2.直接的な軍事的脅威:トマホークミサイルで武装する可能性のあるAUKUS潜水艦は、特に南シナ海の中国の軍事基地やインフラを標的にする可能性がある。また、中国の重要な海上補給路を混乱させる可能性もある。極端なシナリオでは、これらの潜水艦が中国の都市への直接攻撃に使用される懸念があるかもしれない。
3.地域的な軍事バランス:AUKUSの下でオーストラリアがバージニア級潜水艦を取得すると、米国とその同盟国が運用する原子力潜水艦の総数が増加し、地域の軍事バランスが崩れる可能性がある。これは、中国にとって長期的な戦略的不利につながる可能性があり、この地域における米国と同盟国の軍事的プレゼンスの増加によってさらに悪化する可能性がある。
これらの要因が総合的になれば、AUKUSは中国の戦略的計算と軍事態勢に大きな影響を与える可能性があることを示唆している。
【詳細】
AUKUS(オーストラリア、イギリス、アメリカの安全保障協定)が中国にとってなぜ深刻な懸念材料であるかについての詳しい説明である。
1. 中国の核戦略への影響
・核潜水艦の監視リスク: AUKUS協定の下で配備される潜水艦は核兵器を搭載しないものの、その高い機動性とステルス性能により、中国の海上核抑止力を脅かす可能性があります。中国の核ミサイル潜水艦は海南島に基地を置き、南シナ海の深海に迅速に移動することで発見されにくくなっています。AUKUSの潜水艦がこれらの潜水艦の動きをより正確に追跡する能力を持つことで、これらの中国潜水艦の位置や動きが明らかになりやすくなる恐れがあります。
・海上核戦力の脆弱性: AUKUSの潜水艦による監視が進むことで、中国の核ミサイル潜水艦の音響信号(音での識別情報)が把握され、発見されるリスクが高まる。これは、将来的に中国の核抑止力を削ぐ可能性がある。
2. 中国への直接的な軍事的脅威
・軍事基地やインフラへの攻撃: AUKUSの潜水艦はトマホーク巡航ミサイルを搭載する可能性があり、これを利用して中国の南シナ海や沿岸部の軍事基地や重要インフラを攻撃することができる。このような攻撃能力は、中国の軍事的な脆弱性を突くものである。
・海上輸送路への脅威: AUKUSの潜水艦は長距離を潜水したまま移動できるため、インド洋や東アジアの重要な輸送路を脅かす可能性がある。中国はこれらの輸送路に依存しており、戦争の際には資源供給が遮断されるリスクがある。
・都市への直接攻撃の可能性: 現時点では考えにくいかもしれないが、中国は最悪のシナリオとして、AUKUSの潜水艦が都市に対して直接攻撃を行う可能性も考慮しているかもしれない。軍事戦略は通常、最も悪いケースを想定して策定されるためである。
3. 地域的な軍事バランスの変化
・米国および同盟国の潜水艦の増加: オーストラリアがアメリカからヴァージニア級潜水艦を購入することで、米国とその同盟国の核動力潜水艦の数が増加する。これにより、2040年以降、長期的に見てアメリカとその同盟国の海中軍事力が強化され、中国に対する戦略的優位性が高まる。
・米国軍の地域的プレゼンスの強化: AUKUSの計画により、2027年から西オーストラリアにおいて英国と米国の核動力潜水艦が回転配備される予定である。これにより、米国とその同盟国の軍事力が地域で増強され、中国の相対的な潜水艦戦力が弱まる可能性がある。
これらの要因により、中国はAUKUSを戦略的な脅威と見なし、その影響を最小限に抑えよう とする強い動機を持っている。
【要点】
AUKUSが中国にとって深刻な懸念である理由を箇条書きで説明する。
1.核戦略への影響
・監視リスク: AUKUSの潜水艦は、中国の海上核ミサイル潜水艦の動きを監視する能力がある。
・脆弱性の増加: AUKUS潜水艦の高いステルス性能と機動性により、中国の核ミサイル潜水艦が発見されやすくなる。
2.直接的な軍事脅威
・軍事基地への攻撃: AUKUS潜水艦は、トマホークミサイルで中国の軍事基地やインフラを攻撃可能。
・海上輸送路への脅威: 長距離を潜水したまま移動できるため、中国の重要な輸送路を脅かす 可能性がある。
・都市攻撃の可能性: 最悪のシナリオとして、AUKUS潜水艦が都市に対する攻撃に使われる可能性も考慮されている。
3.地域的な軍事バランスの変化
・潜水艦の増加: オーストラリアによるヴァージニア級潜水艦の購入で、米国とその同盟国の潜水艦数が増加。
・軍事力の強化: AUKUS計画により、西オーストラリアで米国と英国の潜水艦が回転配備され、地域での軍事力が強化される。
これらの要因が、中国にとってAUKUSが深刻な軍事的脅威である理由である。
【引用・参照・底本】
Why China is so very vexed about AUKUS ASIA TIMES 2024.09.17
https://asiatimes.com/2024/09/why-china-is-so-very-vexed-about-aukus/