ロシア:新たなシリア政権との協力を探る2024年12月11日 16:47

Microsoft Designerで作成
【概要】

 ロシアが資金提供するメディアのシリアの政権交代に関する報道は、従来の予想を覆すものとなっている。これらのメディアは以前、シリアの政権交代が未曽有のテロリスト危機を引き起こす可能性があると警告していたが、現在では落ち着いた態度を示している。この変化は、ロシアがシリアでの影響力を維持するために状況を慎重に見極めようとしていることを示唆している。

 RTは、シリア・アラブ軍(SAA)の崩壊とバッシャール・アル=アサド大統領のダマスカスからの逃亡に関連する興味深い2つの意見記事を掲載した。1つ目の記事はモスクワの高等経済学院の講師であるムラッド・サディグザデ氏によるもので、「なぜシリアは急速に崩壊したのか、そして次に何が起きるのか?」という問いに答えている。彼は外国の干渉に触れた後、シリア国内の問題に焦点を当てた。特に、アサド政権が軍事的解決策に依存し、国内外での政治的対話を無視したことが戦略的な失敗であったと指摘している。

 2つ目の記事は、Gazeta.ruの政治アナリストであるヴィタリー・リュムシン氏の記事を転載したもので、「アサドの崩壊は予想されていたが、誰も見て見ぬふりをしていた」という内容である。彼は、シリアが人道的および経済的危機に直面し、住民の90%が貧困に苦しむ中で、アサド政権が腐敗し、効果的な解決策を提供できなかったと述べている。また、軍の士気低下や国際的な支援の不足も、アサド政権の崩壊を早めた要因として挙げている。

 さらに注目すべき点として、RTやTASSが「政権」という言葉を使用し始めたことが挙げられる。この用語の使用はこれまで避けられていたが、現在ではアサド政権を「腐敗した体制」として批判的に描写している。また、HTS(ハヤート・タハリール・アル=シャム)の指導者を「武装反対派指導者」と表現し、従来のテロリストとしての評価を抑えた報道を行っている。

 TASSは、シリアの新たな旗の下で大使館が通常通り運営されていることを報じ、新政権の代表者を公式な外交使節として認めていることを示唆している。これには、ロシアがシリアにおける軍事拠点を維持しつつ、新たなシリア軍の再編に協力する可能性が影響しているとみられる。

 これらの報道から、ロシア政府がシリアにおける最悪のシナリオを回避し、外交的解決を模索する方針を示唆していることが明らかである。この方針は、ロシアが影響力を維持しながら、新たなシリア政権との協力を探るための慎重な対応といえる。

【詳細】

 ロシアが資金提供するメディアのシリアの政権交代に関する報道内容とその背景について、以下にさらに詳しく説明する。

 1. 背景と文脈

 シリアにおけるバッシャール・アル=アサド政権は、内戦を通じて10年以上にわたり権力を維持してきた。しかし、2024年に入ると、政権は急激に崩壊した。これには、国内外の要因が複合的に作用しており、以下のポイントが挙げられる。

 ・国内要因: 長年の内戦により、シリア経済は壊滅的な打撃を受け、国民の90%が貧困状態に陥り、電力不足や食料価格の高騰が深刻化した。これにより、政府に対する支持が大幅に低下した。

 ・国際要因: 米国とクルド勢力による油田支配、西側諸国の制裁、イランの影響力低下、そしてロシアの支援の限界などが、政権をさらに追い詰めた。

 2. ロシアメディアの報道姿勢の変化

 ロシアが資金提供するメディア(RTやTASSなど)は、これまでアサド政権を一貫して支持してきたが、政権崩壊後の報道には顕著な変化が見られる。この変化は、以下の特徴を持つ。

 ・アサド政権への批判

  ⇨ RTは、モスクワの中東研究センター長であるムラッド・サディグザデ氏の寄稿記事を掲載し、アサド政権が政治的対話を怠り、軍事的解決に依存した戦略的失敗を指摘した。

  ⇨ また、Gazeta.ruのヴィタリー・リュムシン氏の記事では、アサド政権を「腐敗し機能不全」と厳しく批判し、経済危機や軍の士気低下が崩壊の主要因とされた。
「政権(regime)」という表現を使用するなど、これまでの支持的な姿勢から大きな転換を示している。

 ・新政権への融和的姿勢

  ⇨ TASSは、新政権下でシリア大使館が通常通り運営されていることを報じ、ロシアが新政権を事実上受け入れている可能性を示唆している。

  ⇨ また、HTS(ハヤート・タハリール・アル=シャム)の指導者を「武装反対派指導者」と表現し、従来の「テロリスト」というラベルを控える報道を行っている。

 ・戦略的関与の模索

  ⇨ ロシアは新しい軍事技術協力やシリア軍の再編支援を通じて、新政権との関係を構築しようとしている可能性がある。この方針は、ロシアの中東における影響力維持を目的としていると考えられる。

 3. ロシア政府の狙い

 ロシア政府がこのような対応を取る背景には、いくつかの戦略的狙いがある。

 ・影響力の維持: 政権交代後も、シリアにおけるロシアの軍事基地(ラタキアのフメイミム空軍基地など)を確保し、中東地域での地位を維持する意図がある。
外交的柔軟性: ロシアは、新政権をすぐに敵視するのではなく、関係を模索することで、最悪のシナリオ(テロリストの台頭や完全な無秩序)を回避しようとしている。

 ・国際的信用の保持: ロシアは、国連安全保障理事会決議2254(シリア紛争解決のための政治的枠組み)を支持し、建設的な解決策を模索する姿勢を示すことで、国際社会における外交的信用を維持しようとしている。

 4. 今後の展望

 ロシアのメディアが強調する新政権との協力の可能性には、いくつかの条件が伴う。

 ・非テロリスト勢力との協力: HTSなどテロリスト指定された勢力が、武装解除や体制変更を通じて国際的に受け入れられる存在になることが求められる。

 ・国連決議2254の履行: 憲法改正を含む政治的プロセスの実現が、新政権の安定とロシアの関与拡大の鍵となる。

 5. 結論

 ロシアが資金提供するメディアのシリア政権交代に関する報道は、単なる情報提供にとどまらず、ロシア政府の戦略的意図を反映している。この報道方針の転換は、シリアにおける影響力を維持しながら、外交的解決を模索するロシアの姿勢を明確に示している。このようなアプローチが最終的に成功するかどうかは、ロシアの外交的柔軟性と新政権の安定性にかかっている。

【要点】 

 シリア政権交代に関するロシアメディアの報道と背景

 背景

 ・国内要因: 長年の内戦により経済が壊滅、国民の貧困化、電力不足や食料価格高騰で政権支持低下。

 ・国際要因: 米国とクルド勢力の油田支配、西側制裁、イランの影響力低下、ロシアの支援限界が影響。

 ロシアメディアの報道変化

 1.アサド政権への批判

 ・政治的対話の欠如や腐敗を非難。

 ・経済危機や軍士気低下を崩壊の原因と指摘。

 ・政権(regime)」という否定的表現を使用。

 2.新政権への融和的姿勢

 ・新政権下での大使館運営を報道し、新体制を事実上容認。

 ・HTS指導者への「テロリスト」の表現を控える。

 3.戦略的関与の模索

 ・新政権との軍事技術協力や軍再編支援を示唆。

 ロシア政府の狙い

 ・中東での影響力維持: 軍事基地の確保と地域的地位の維持を目指す。

 ・外交的柔軟性: 新政権と関係構築を模索し、無秩序状態を回避。

 ・国際的信用の保持: 国連決議2254を支持し、建設的な解決を主張。

 今後の展望

 ・非テロリスト勢力との協力: HTSの武装解除や体制変更が必要。

 ・政治的プロセスの進展: 憲法改正を含む枠組み実現が安定の鍵。

 結論

 ・ロシアメディアの報道は政府の戦略を反映し、影響力維持と外交的解決を目指す姿勢を示している。

 ・成否は新政権の安定性とロシアの柔軟な外交戦略に依存。

【参考】

 ☞ 国連決議2254(United Nations Security Council Resolution 2254)は、2015年12月18日に国連安全保障理事会で採択されたシリア紛争解決を目指す枠組みを示した決議である。この決議は全会一致で採択され、シリア内戦を平和的に解決するための政治プロセスを規定している。

主な内容

1.包括的停戦の要求

 ・シリア全土での停戦を求め、暴力の即時停止を目指す。ただし、ISIL(イスラム国)やアルヌスラ戦線(現ハヤト・タハリール・アル=シャーム、HTS)などの国際的に指定されたテロ組織は停戦の対象外とされる。

 2.政治的移行の枠組み

 ・シリアの全政党や勢力による包摂的な政治プロセスを求める。
 ・シリア国民が主導する形で、信頼できる、包摂的、かつ非宗派的な統治を構築する。

 3.選挙の実施

 ・国連の監視下で公正かつ自由な選挙を実施し、新しい政府を確立する。
 ・選挙はシリア憲法に基づき、全てのシリア国民が参加できる形で行われるべきとする。

 4.憲法改正

 ・シリアの新憲法を制定するプロセスを支持し、国民の意見を反映するべきと規定。

 5.人道支援の拡大

 ・紛争の影響を受けたシリア市民に対する人道支援を迅速かつ妨害なく提供する必要性を強調。

 6.テロとの戦い

 ・国際社会がシリア内のテロ活動を抑制し、テロリストに対する措置を強化することを求める。

 意義と課題

 1.意義

 ・シリア紛争解決に向けた国際的な共通認識を示し、平和構築への道筋を提供する。
 ・包括的な停戦や政治プロセスを通じてシリアの安定を目指す。

 2.課題

 ・停戦合意の履行が進まず、紛争当事者間の不信が深い。
 ・外部勢力(ロシア、米国、トルコ、イランなど)の利害対立が進展を阻害。
 ・憲法改正や自由選挙を巡る議論で具体的進展が見られない。

 現状

 国連決議2254は依然としてシリア問題の解決における公式な基盤とされているが、進展は乏しい。アサド政権は政治的譲歩に消極的であり、反体制派勢力や外部勢力間の対立が残るため、実現には時間を要する状況である。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

What’s Publicly Financed Russian Media Saying About Syria’s Regime Change?
Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.11
https://korybko.substack.com/p/whats-publicly-financed-russian-media?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152950281&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

ロシア・インドの軍事協力の深化2024年12月11日 17:40

Microsoft Designerで作成
【概要】

 ロシアとインドの防衛関係は、時代の変化に伴い進化を続けている。記事では、両国の軍事技術的協力が変化しているものの、それが戦略的パートナーシップを損なうものではなく、外国の影響、特にアメリカや中国の影響によるものでもないことを強調している。この変化は、多極化する国際情勢に適応する自然な発展である。

 2024年12月にインドのラージナート・シン国防相がロシアを訪問したことは、両国の長年にわたる戦略的関係が進化していることを示している。2024年3月に指摘されたように、両国の関係は従来の軍事中心の枠組みを超え、インドがロシアとの貿易赤字を是正するために輸出を拡大しようとする方向に移行している。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の最新の国際兵器移転に関する報告書でも、インドが以前よりロシアからの武器輸入を減少させていることが述べられている。

 それにもかかわらず、ロシアはインドの「Make In India」政策を支援し、軍事装備の国内生産において主要なパートナーとなる見込みである。ロシア製カラシニコフAK-203ライフルやブラモス超音速巡航ミサイルのインド国内生産と輸出可能性は、こうした協力の具体例である。一方で、ロシアは一部の装備を自国で生産し続けており、例えば多用途ステルス誘導ミサイルフリゲート艦の7隻目をインドに引き渡すためにシン国防相が訪問した。このシリーズの8隻目は2025年にロシアで完成予定であり、9隻目と10隻目はインドで建造される計画である。現在、両国間では200以上の防衛プロジェクトが進行中である。

 さらに、インドによるロシア製品の購入は増加傾向にあり、ロシアの高官によれば、過去6か月間でインドがロシア製武器と装備の輸出に占める割合は15%増加した。この数字は、ロシアがインドに提供する予定のVoronezhシリーズ長距離レーダーシステムの契約が締結されれば、さらに増加する見込みである。このシステムは約40億ドルと見積もられ、弾道ミサイルや航空機を最大8,000キロメートルの距離で追跡可能であり、インドの軍事力を一層強化する。

 また、ロシアはインドにS-400防空システムの最後の2バッテリーを2025年中に納入する予定であり、これによってインドは中国やパキスタンなど隣国からの脅威に対応できる世界水準の防空システムを構築することになる。インドは2024年10月のカザンで開催されたBRICSサミット直前に中国との問題を一時的に解決したものの、国家安全保障の責務を軽視することなく、あらゆる可能性に備える姿勢を維持している。

 ロシアの中国およびパキスタンとの戦略的関係は、インドとの関係を犠牲にするものではない。これらの国々は、ロシアがインドを支援する一方で、自国とも関係を深めることを認めている。ロシアの意図は、インドの抑止力を強化することであり、中国やパキスタンに対する攻撃を促すものではない。

 これらの事実は、ロシアがインドの安全を確保し、中国やパキスタンとの関係を維持しながらも、これらの関係がインドとの戦略的関係を損なわないことを示している。また、ロシア、インド、中国、パキスタンが共通の利益として多極化の促進を目指している一方で、それぞれが異なる立場や関係を持っているという現代の国際関係の複雑さを浮き彫りにしている。

 最後に、両国の防衛関係の進化について、西側メディアがラージナート・シン国防相の訪問に先立って報じた「インドがロシア製武器から離れる」という主張は、SIPRIの報告書を遅れて文脈を無視して取り上げたものにすぎない。この変化は、戦略的パートナーシップを損なうものではなく、自然な発展であり、多極化の流れに沿ったものである。

【詳細】

 ロシアとインドの防衛関係について、さらなる詳細を以下に説明する。

 背景と歴史的文脈

 ロシアとインドの防衛協力は、冷戦期にソ連とインドの戦略的パートナーシップとして始まった。特に、インドが1960年代から軍事装備をソ連から輸入するようになって以来、この関係は深化した。ソ連崩壊後も、ロシアはインドにとって最大の武器供給国としての地位を維持してきた。両国の防衛関係は、単なる供給者と購入者の関係を超え、共同開発や技術移転を含む包括的な協力体制に進化している。

 最近の進化の背景

 近年、インドは国防装備の輸入依存を減らし、自国での生産を強化する「Make In India」政策を推進している。この政策のもとで、ロシアは重要なパートナーとみなされており、武器の共同生産や技術移転が加速している。例えば、AK-203ライフルやブラモス超音速巡航ミサイルのインド国内生産は、こうした政策の一環である。また、これらの製品は輸出可能な設計となっており、インドの軍事産業の国際的な地位向上に寄与している。

 具体的なプロジェクトと進展

 1.多用途フリゲート艦の建造

 ロシアがインド向けに建造した多用途ステルス誘導ミサイルフリゲート艦の7隻目が最近引き渡され、8隻目は2025年に完成予定である。これに続いて、9隻目と10隻目はインド国内で建造される予定であり、インドの造船技術向上にもつながる。このプロジェクトは両国の技術共有を象徴するものである。

 2.Voronezh長距離レーダーシステム

 ロシアは、最大8,000キロメートルの範囲で弾道ミサイルや航空機を追跡可能なVoronezhシリーズ長距離レーダーシステムをインドに提供する契約を進めている。このシステムは約40億ドルの価値があり、インドの防空能力を大幅に強化する。特に、このレーダーシステムはS-400防空システムと組み合わせることで、インドの空域防衛能力を飛躍的に向上させる。

 3.S-400防空システムの配備

 インドは2018年にS-400防空システムを5基購入する契約を締結し、そのうち3基がすでに納入されている。残りの2基は2025年中に引き渡される予定である。これにより、インドは中国やパキスタンからの空中脅威に対する防衛を一層強化することが可能になる。

 4.共同開発プロジェクトの進行状況
両国は200以上の防衛プロジェクトを進行中であり、これには高性能戦闘機や新型潜水艦の共同開発も含まれる。これらのプロジェクトは、インドの軍事産業基盤を強化し、同国の防衛自主性を高めるものとして位置づけられている。

 戦略的文脈

 インドがロシアとの防衛協力を深化させる一方で、中国およびパキスタンとの緊張が継続している。インドの防衛政策は、これらの隣国からの潜在的脅威に備えることを目的としている。例えば、S-400やVoronezhシステムは、インドの西部(パキスタン方面)と東部(中国方面)の両方に配備される見込みである。

 一方で、ロシアは中国およびパキスタンとも戦略的関係を維持している。このことは、ロシアが多極的な世界秩序の構築を目指し、各国とバランスの取れた関係を追求していることを示している。ロシアはインドに武器を供給する一方で、中国やパキスタンへの安全保障上の脅威を増大させる意図はなく、むしろ地域の抑止力を高めるために協力している。

 西側メディアの見解と誤解

 一部の西側メディアは、インドがロシア製兵器から距離を置き、アメリカや他国製の兵器にシフトしているとの見解を示している。しかし、これはSIPRIの報告を文脈を無視して取り上げたものであり、実態とは異なる。インドがロシア製兵器の輸入を減少させている理由は、自国での生産能力を向上させる政策に基づいている。この変化は、ロシアとインドの戦略的パートナーシップの弱体化ではなく、新しい形態への進化を示している。

 結論

 ロシアとインドの防衛関係は、単なる兵器の輸出入の枠を超え、共同開発や技術移転を伴う包括的な協力体制へと進化している。この変化は、多極化する国際秩序の中で、両国が自国の安全保障と経済的利益を追求する自然な過程である。この関係の進化は、インドの防衛自主性の強化とロシアの国際的影響力の維持に寄与し、両国の戦略的利益を調和させるものである。

【要点】 

 ロシアとインドの防衛協力に関する要点

 1.歴史的背景

 ・冷戦期からソ連との戦略的パートナーシップが始まり、ロシアが最大の武器供給国として継続的に関与。
 ・ソ連崩壊後も共同開発や技術移転を含む協力体制に発展。

 2.近年の「Make In India」政策

 ・インドは武器の輸入依存を減らし、国内生産を推進。
 ・ロシアはAK-203ライフルやブラモス巡航ミサイルの共同生産を支援。

 3.具体的なプロジェクト

 ・フリゲート艦建造:7隻目を納入済み、9・10隻目はインド国内で建造予定。
 ・Voronezhレーダー:約40億ドルの長距離防空レーダーを提供中。
 ・S-400防空システム:5基中3基を納入済み、残り2基は2025年配備予定。
 ・共同開発:戦闘機・潜水艦など200以上のプロジェクトを進行中。

 4.戦略的意義

 ・中国・パキスタンへの抑止力強化が目的。
 ・両国の協力は地域の安全保障とバランス維持に寄与。

 5.西側メディアの見解と実態

 ・西側メディアはインドの武器調達がロシアから離れていると主張。
 ・実態はインドの国内生産強化を反映したものであり、協力は継続中。

 6.意義と結論

 ・両国の関係は進化しており、インドの防衛自主性向上とロシアの影響力維持に貢献。
 ・防衛協力は地域の安定と多極化する世界秩序の中で重要な役割を果たしている。

【引用・参照・底本】

Russian-Indian Defense Ties Are Evolving With The Times Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.10
https://korybko.substack.com/p/russian-indian-defense-ties-are-evolving?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152882066&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

トランプの:ロシア非難:現地状況を単純化、正確性を欠く2024年12月11日 18:02

Microsoft Designerで作成
【概要】

 アメリカの元大統領ドナルド・トランプが投稿したシリアとロシアに関する発言を検証し、現地の状況を詳述している。トランプの発言では、ロシアがウクライナでの軍事作戦に注力しているため、シリアでの進展を止めることができなくなったとし、ロシアがシリアから撤退しつつあるとの見解を示している。また、ロシアがウクライナ戦争で60万人以上の兵士を失ったとの主張も含まれているが、これはプロパガンダとして批判されている。

 ロシアのシリア政策に関するトランプの見解に一部の正確性があるとしつつも、全体として偏った解釈が含まれていると指摘している。具体的には、ロシアがシリアでの対テロ作戦を後回しにしていることは事実だが、それを「無能」と表現するのは不正確であると述べている。実際には、シリア政府軍(SAA)が戦わずして主要都市を放棄している現状では、ロシアが空軍をウクライナからシリアに振り向けても効果が限定的であったとの分析がなされている。

 また、記事はロシアが2015年末にシリアに軍事介入した目的を説明している。これは、テロリストがロシアへの脅威を及ぼす可能性のある「不安定のブラックホール」の形成を防ぐためであり、アサド政権を永続的に支える意図はなかったとされている。この介入には国連安保理決議2254号に基づくシリアの政治改革の推進が含まれており、ロシアはその一環として新憲法案を起草したが、アサド大統領が拒否した経緯がある。

 現在の危機については、アサド大統領とSAAの無抵抗が問題を悪化させたと強調されている。アサドは事実上、ロシアとイランを利用して自身の権力を維持しようとしたものの、必要な改革を行わなかったため、結果的にシリアの混乱を招いたと批判されている。また、ロシアがシリアからの段階的撤退を計画している可能性についても言及されており、その場合、ロシアのアフリカにおけるPMC(民間軍事会社)の軍事ロジスティクスに影響を及ぼす可能性があると述べている。

 結論として、今回の危機はシリア政府、特にアサド政権の責任であり、ロシアやイランの関与をもってしても回避できなかったとされている。トランプの主張するようにロシアがシリアを見捨てたという見解は過度に単純化されており、現地の複雑な状況を反映していないと指摘されている。

【詳細】

 トランプ氏がシリアとロシアに関する投稿で提示した見解を詳細に検討し、シリアにおける最新の出来事について背景と分析を提供している。以下に、さらに詳しい内容を説明する。

 1. トランプ氏の投稿の要約と批判

 トランプ氏は、シリアでの混乱がロシアの無力さによるものであると主張している。彼の投稿では、ロシアがウクライナ戦争に注力しているため、シリアでの「テロリストの行進」を止める能力を失ったとしている。また、ロシアの損失として「60万人以上の死傷者」を挙げているが、これは信頼性のないプロパガンダ的な数字であると批判されている。

 さらに、トランプ氏はアサド政権が崩壊したと主張し、アサドがシリアを離れたとも述べている。彼は、ロシアがアサドを見捨て、シリアに関与する意義を失ったと結論付けている。しかし、この記事はトランプ氏のこのような主張を否定的に評価し、彼の見解が現地の実態を正確に反映していないと指摘している。

 2. ロシアのシリア介入の背景

 ロシアは2015年、シリア内戦に軍事介入した。この介入の主目的は、シリアが「不安定のブラックホール」と化し、そこから過激派がロシアを脅かす可能性を防ぐことにあった。ロシアは、アサド政権を永続的に維持することが目的ではなく、むしろ国連安保理決議2254号に基づく政治改革を推進しようとした。これには、シリア憲法の改正と国連監視下での選挙実施が含まれていた。

ロシアはアサド政権を支援する一方で、アサドに対して改革を受け入れるよう促した。ロシアはさらにシリア向けに新しい憲法草案を作成したが、アサドはこれを拒否した。この記事は、この時点でのアサドの決定が後の危機に繋がったと指摘している。

 3. 現在のシリアの状況

 シリアでは、シリア政府軍(SAA)がテロリストの攻勢に対しほとんど抵抗せずに主要都市を放棄した。この無抵抗が大規模な混乱を招き、アサド政権は実質的に崩壊したとされている。さらに、アサド大統領は自国を離れ、ロシアに避難したとの報道がある。彼は国民に向けて声明を出すこともなく首都を離れた。

 SAAは、ロシアの軍事支援を受けながらも、この数年間で戦闘能力を失い、以前より弱体化しているとされる。ロシアは、シリア政府軍が戦う意志を持たなければ、空軍による支援を続ける意味がないと判断した可能性がある。つまり、ロシアは無制限にリソースを提供する義務がないと考えたのである。

 4. ロシアの将来の動向

 ロシアがシリアから段階的に撤退する可能性について言及している。ロシアがシリアに維持している軍事基地は、アフリカにおける民間軍事会社(PMC)のロジスティクス拠点として利用されている可能性があり、撤退がこれらの作戦に影響を及ぼす可能性がある。しかし、ロシアは代替拠点として北アフリカ(リビア)や北東アフリカ(スーダン)を利用する可能性も示唆されている。

 また、ロシアがシリア沿岸部に独立した「沿岸国家」を支援する可能性も以前に議論されていたが、現状ではその地域もテロリストによって支配されつつある。このような状況では、ロシア軍の駐留が安全面でさらに厳しい状況に直面することが予想される。

 5. イランとヒズボラへの影響

 ロシアと同様に、イランとその同盟勢力であるヒズボラもシリアにおいて多大なリソースを投入してきた。しかし、イランはイスラエルとの戦闘によっても消耗しており、現在のシリアでの影響力を維持することは困難であるとみられている。イランの撤退が起これば、これはイランにとって大きな打撃となる。

 6. 結論

 シリアでの混乱がロシアやイランの直接的な失敗ではなく、アサド政権自身の責任であると結論付けている。アサドは、必要な政治改革を拒否し、外部の支援に依存する一方で、持続可能な防衛体制を構築しなかったと批判されている。また、SAAの無抵抗はシリアの主権と国家の崩壊を加速させたとされる。

 最終的に、トランプ氏がロシアを非難したことは、現地の複雑な状況を過度に単純化しており、正確性に欠けるとされている。

【要点】 

 1.トランプ氏の投稿内容

 ・トランプ氏はシリアの混乱をロシアの無力さに起因すると主張。
 ・ロシアはウクライナ戦争に注力し、シリアでの「テロリストの行進」を止められないと指摘。
 ・トランプ氏はロシアの死傷者数として「60万人以上」と言及したが、信頼性のない数字とされる。
 ・アサド政権が崩壊し、アサドがシリアを離れたとの主張。

 2.ロシアのシリア介入

 ・ロシアは2015年からシリア内戦に介入、アサド政権の支援を目的としていた。
 ・ロシアの目標は、シリアの安定化と過激派の抑制。
 ・ロシアはアサド政権に対して改革を促進するよう働きかけたが、アサドはこれを拒否。

 3.シリアの現在の状況

 ・シリア政府軍(SAA)はテロリストにほとんど抵抗せず、主要都市を放棄。
 ・アサド政権は実質的に崩壊し、アサドはシリアを離れたという報道がある。
 ・SAAは戦闘能力を失い、ロシアの支援にもかかわらず弱体化。

 4.ロシアの将来の動向

 ・ロシアはシリアからの段階的撤退を視野に入れている可能性がある。
 ・ロシアはシリア沿岸部の基地を維持しつつ、代替拠点として北アフリカを利用する可能性がある。

 5.イランとヒズボラの影響

 ・イランとヒズボラもシリアにリソースを投入していたが、現在はイスラエルとの戦闘によって消耗。
 ・イランの撤退が起これば、シリアにおける影響力が弱まる可能性がある。

 6.結論

 ・トランプ氏の主張はシリアの複雑な状況を過度に単純化していると批判。
 ・シリアの混乱はアサド政権の拒否的態度と無抵抗に起因する。
 ・ロシアやイランの失敗ではなく、アサド政権自身の責任が大きいとされる。

【引用・参照・底本】

Trump Isn’t Telling The Whole Truth About Russia & Syria Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.09
https://korybko.substack.com/p/trump-isnt-telling-the-whole-truth?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152829485&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

ポーランド与党のジレンマ2024年12月11日 18:47

Microsoft Designerで作成
【概要】

 ポーランドの野党は、与党連立政権に対し、ウクライナとの関係において愛国的な立場を証明するよう挑戦した。これには、バンデラの美化を禁止する新しい法案を通すかどうかという選択が含まれ、その結果が政治的に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 ポーランドの与党連立政権は、かつての保守的なナショナリズムを支持していた野党と比較して、ウクライナに対してはより強硬な立場を取るようになっている。その理由は、2025年の大統領選挙を見据え、愛国的な感情を利用して現職の保守的なナショナリストを退け、自らの候補者を勝たせようとする狙いがあるためだ。

 野党は、バンデラの美化をナチズム、ファシズム、共産主義の美化と同様に違法とする法案を提出することによって、与党がそのナショナリストとしての立場を証明するように仕向けている。しかし、与党は議会を支配していないため、この法案が通るためには、与党連立の一部の議員が支持する必要がある。

 与党がこの法案を支持する理由としては、愛国的な立場を強調することが、来年の大統領選挙に向けて自らの支持基盤を固めることになるからだ。また、法案を通過させることによって、ウクライナに対してヴォウィン遺族の遺骨を掘り起こし適切に埋葬することを要求する際の強力な立場を取ることができる。この要求を通すことで、ウクライナのEU加盟交渉を進めるための圧力をかけることができるとも考えられる。

 一方で、与党がこの法案に反対する可能性もある。それは、ウクライナとの関係が悪化することを恐れているためだ。もしこの法案が可決されると、ウクライナとの関係が破綻し、ドイツがポーランドの影響力をさらに強化する可能性がある。また、EUから再度圧力を受けることも懸念される。特に、ウクライナ難民が自由な言論としてバンデラを賛美することが人権問題として取り上げられ、ポーランドに対するEUの批判が強まる恐れがある。

 したがって、与党の決断は、ウクライナとの関係悪化やEUからの圧力を冒してでも、自らの支持基盤を固める価値があるかどうかという点にかかっている。この法案の可否が与党にとって重要な政治的ジレンマであることは明白であり、野党はその立場をうまく利用している。

 もし与党が法案を支持すれば、野党はその功績を自らに帰することができ、逆に反対すれば、与党が愛国的な立場を取る意図がないことを明らかにすることができる。このため、与党がどちらの決断を下しても、その結果は野党にとって有利に働く。

 この問題が現在浮上した背景には、来年の大統領選挙があるが、選挙目的であっても、この政策が実現することは重要であり、そうでなければ実現しない可能性もある。

【詳細】

 ポーランドの野党が与党連立政権に対し挑戦している背景には、来年の大統領選挙を見据えた政治的戦略がある。野党は、与党が愛国的な立場を証明するために「バンデラの美化禁止」を盛り込んだ法案を通すかどうかを試すことを提案した。この法案が可決されると、バンデラ(ウクライナの民族主義者であり、ポーランドに対して暴力的な行為を行ったとされる人物)の美化が、ナチズム、ファシズム、共産主義の美化と同じように違法となり、その結果はポーランドのウクライナに対する立場や国内政治に大きな影響を与えることになる。

 与党の立場と背景

 ポーランドの与党連立政権は、保守的なナショナリズムを掲げていた前政権(野党)とは異なり、ウクライナに対してかなり強硬な姿勢を取るようになっている。これは、2025年の大統領選挙に向けて、愛国的な感情を活用することを狙った戦略の一環である。現大統領は保守的なナショナリズムを基盤にしていたが、次期大統領候補としてリベラル・グローバリスト(自由主義的かつ国際的な立場を取る政治勢力)が台頭してきている。これに対抗するためには、ウクライナとの関係を利用して、愛国的な立場を強調することが必要だと考えられている。

 このような背景から、与党はウクライナに対して、政治的にも愛国的なシグナルを送ることが重要だと認識している。しかし、同時にウクライナとの関係が損なわれるリスクも存在するため、そのバランスを取る必要がある。

 野党の挑戦とその意味

 野党は、与党に対し、ナショナリズムを示すためにバンデラの美化を禁止する法案を通すよう要求している。この法案は、ウクライナにとっては非常に敏感な問題であり、バンデラを賛美する行為を違法化することは、ウクライナに対して強いメッセージを送ることになる。バンデラは、ウクライナ独立のために戦った英雄として支持される一方で、ポーランドに対しては彼の率いたウクライナ民族主義者たちが第二次世界大戦中にポーランド人に対して行った暴力的な行為が大きな問題となっている。したがって、この法案はポーランド国内でのウクライナの扱いに関する重要な政治的な議論を引き起こす。

 野党がこの法案を提出した目的は、与党がナショナリズムを掲げる一方で、ウクライナとの関係を損なう可能性があることを利用し、その矛盾を浮き彫りにすることにある。与党がこの法案を支持すれば、愛国的な立場を強調できる一方で、ウクライナとの関係が危険に晒される可能性がある。逆に、与党が反対すれば、ウクライナとの関係を守りつつも、ナショナリズムを掲げるという立場に信憑性が欠けることを野党が強調できる。

 法案支持の理由

 与党がこの法案を支持する理由としては、次の点が挙げられる。

 1.愛国的な支持基盤の強化

 来年の大統領選挙に向けて、愛国的な立場を強調することが必要であり、バンデラの美化禁止法案を通すことはその一環として有効だと考えられている。特にポーランド国内で愛国的な感情が強く、バンデラに対する批判的な感情も多いことから、この法案が通過すれば与党はその支持を得られると見込まれる。

 2.ウクライナへの圧力

 ポーランドはウクライナに対し、ヴォウィン遺族の遺骨を適切に埋葬するよう求めており、この法案を通すことでウクライナに対する圧力を強化できる。これにより、ポーランドはウクライナのEU加盟交渉における強い立場を維持することができる。

 法案反対の理由

 一方、与党がこの法案に反対する理由としては、以下の点が挙げられる。

 1.ウクライナとの関係悪化のリスク

 この法案を通過させると、ポーランドとウクライナとの関係が悪化する可能性が高い。ウクライナはバンデラを民族的な英雄として扱っており、この法案が可決されるとポーランドとウクライナの間で深刻な対立が生じる可能性がある。

 2.EUからの圧力

 EUは人権問題に敏感であり、ポーランドがこの法案を通すことによって、ウクライナ難民の自由な言論としてバンデラを賛美する行為を制限することが人権侵害として取り上げられる可能性がある。このため、EUからの圧力が再び強まる恐れがある。

 結論

 ポーランドの与党は、来年の大統領選挙を見据えて、愛国的な立場を強調したいと考えている一方で、ウクライナとの関係悪化やEUからの圧力を避けたいというジレンマに直面している。野党はその矛盾を突いており、与党にとってこの法案の賛否は重要な政治的決断となる。この法案の通過がポーランド国内で愛国的な支持を得る一方で、国際関係には大きな影響を与えることになるため、与党がどのような決断を下すかは注目される。

【要点】 

 ・背景

 ポーランドの野党は、与党連立政権に対し、バンデラ(ウクライナ民族主義者)の美化禁止法案を通すよう挑戦している。この法案は、バンデラの美化をナチズム、ファシズム、共産主義の美化と同様に違法にする内容。

 ・与党の立場

 与党連立政権は、2025年の大統領選挙に向けて愛国的な立場を強調しようとしている。ウクライナとの関係に対して強硬姿勢を取ることで、保守的な支持を得ようとしている。

 ・野党の挑戦

 野党は、この法案を通すことで与党がナショナリズムを掲げる一方でウクライナとの関係が悪化する矛盾を突こうとしている。与党が法案を支持すれば、愛国的立場を証明できるが、ウクライナとの関係が危険に晒される可能性がある。

 ・法案支持の理由

 1.愛国的な支持基盤の強化:大統領選挙に向けて愛国的な感情を活用できる。
 2.ウクライナへの圧力:ヴォウィン遺族の遺骨問題を進展させ、ポーランドのEU内での影響力を維持できる。

 ・法案反対の理由

 1.ウクライナとの関係悪化:法案通過でポーランドとウクライナの関係が悪化する恐れがある。
 2.EUからの圧力:EUから人権問題として批判を受ける可能性がある。

 結論

 与党は、愛国的な立場とウクライナとの関係をどうバランスさせるかが重要な判断となる。野党は、与党がこの法案を通すか反対するかで、どちらにせよ政治的に有利な立場を取ることができる。

【引用・参照・底本】

The Polish Opposition Just Challenged The Ruling Coalition To Prove Its Nationalist Credentials Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.09
https://korybko.substack.com/p/the-polish-opposition-just-challenged?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152826924&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

バイデン:「根本的な正義の行為」と称賛2024年12月11日 19:13

Ainovaで作成
【桃源寸評】

 <勝てば官軍負ければ賊軍>と云うが、シリアの石油を泥棒しながら、居座るだけの米軍ではないのか。
 米国はいずれにしても、賊軍ではないのか。大体にして、勝敗の埒外にいるのである。

 バイデン、吹聴のチャンスを見る目はまだ"健康"のようだ。
 米国に正義を語る資格無し。

【寸評 完】

【概要】

 バイデン大統領は2024年12月8日、元シリア大統領バシャール・アル=アサド政権がアル=カイダと関係のある武装勢力によって倒されたことを「根本的な正義の行為」と称賛した。また、米国がシリアで実施した多数の空爆についても言及した。バイデン大統領は、アサド政権を支援してきたロシア、イラン、ヒズボラが、米国がイスラエルやウクライナへの支援を行った結果、防衛することができなかったと述べた。

 米国は、アサド政権に対して経済制裁やシリア東部での軍事駐留を通じて圧力をかけてきたことを挙げ、バイデン大統領はこの方針が過去4年間にわたり一貫して取られてきたことを強調した。また、米国はイスラエルの自由行動を支持し、イランのシリア内でのネットワークに対する空爆も行ってきた。

 さらに、バイデン大統領はアサド政権の崩壊が新しいシリア政府に対する機会を提供するとし、その支援を約束した。ただし、アサド政権を倒した反乱グループの一部にはテロ行為や人権侵害の過去があることも認めた。主導的な役割を果たしたのは、アル=ヌスラ戦線と他のイスラム主義グループが統合して結成された「ハヤト・タフリール・アル=シャム(HTS)」であり、この組織は米国によってテロリスト組織に指定されている。

【詳細】

 バイデン大統領は2024年12月8日に、シリアの元大統領バシャール・アル=アサド政権の崩壊を「根本的な正義の行為」と表現した。これは、シリア内戦における反政府勢力の勝利を指し、その結果としてアサド政権が倒れたことを祝う発言であった。バイデン大統領は、この出来事が米国の支援の成果であり、特にウクライナとイスラエルへの支援が、シリアでのアサド政権支持国(ロシア、イラン、ヒズボラ)を弱体化させる要因となったと強調した。

 米国の政策

 バイデン大統領は、アサド政権に対して米国が実施してきたさまざまな圧力政策を紹介した。特に注目すべきは以下の3つの方針である。

 1.経済制裁: バイデン政権は、アサド政権に対して厳しい経済制裁を課し、政権の資金源や外部からの支援を制限し続けた。制裁はアサド政権が内戦を終結させるための政治的解決に向けて真剣に取り組むまで続ける方針を示していた。

 2.シリア東部での軍事駐留: 米国はシリア東部に軍を駐留させ、ISIS(イスラム国)への対策や地域のパートナーの支援を行ってきた。この軍事的存在は、米国がシリア内戦での影響力を維持するための重要な手段であった。

 3.イスラエルの支援: バイデン大統領は、イスラエルの「自由な行動」を支持すると述べ、特にシリアにおけるイランの支援ネットワークに対するイスラエルの空爆を支持した。イスラエルはシリア内でのイランの影響力拡大を阻止するため、何年にもわたり空爆を繰り返しており、これがアサド政権に対する圧力となった。

 米国の空爆とシリア内の状況

 バイデン大統領は、米国がシリア東部で実施した空爆についても言及した。この空爆は、米国の中央軍(CENTCOM)によるもので、75のISISターゲットに対する「数十回の空爆」が行われたと報じられている。空爆にはB-52爆撃機も使用され、米国は「シリアにおけるISISと協力する団体に対して責任を追及する」と警告した。バイデン大統領は、シリアのテロ組織に対して、米国が断固とした姿勢を取ることを再確認した。

 反政府勢力とその背景

 アサド政権を打倒した反政府勢力の中でも、特に「ハヤト・タフリール・アル=シャム(HTS)」が注目される。HTSは2017年にアル=ヌスラ戦線(アル=カイダ系)と他のイスラム主義グループが合併して形成された組織であり、米国はこの組織をテロリスト組織に指定している。HTSのリーダーであるアブ・ムハンマド・アル=ジュラニは、アル=ヌスラ戦線のリーダーとしても知られ、最近では西側の支持を得ようとする姿勢を見せている。ジュラニは、西側のメディアインタビューに応じるなどして「穏健派」を装うような発言をしているが、米国はその行動を注視しており、その行動が今後どう変化するかを評価すると述べている。

 バイデン大統領の展望

 バイデン大統領は、アサド政権が倒れたことにより、シリアに新たな政府が樹立されるチャンスが生まれると述べ、そのプロセスを支持すると表明した。しかし、反政府勢力が過去に行ったテロ行為や人権侵害についても認識しており、その行動が今後どのように展開するかを注視する必要があると警告した。バイデン大統領は、反政府勢力のリーダーたちが「正しいことを言っている」と評価しつつも、彼らの言葉だけでなく、行動を評価する必要があると強調した。

 このように、バイデン大統領の発言と行動は、シリア内戦の後の政権交代や新しいシリア政府に向けた米国の支援の方向性を示しているが、反政府勢力の過去の行動や現在の態度については慎重な評価が求められる。

【要点】 

 1.バイデン大統領の発言

 ・アサド政権の崩壊を「根本的な正義の行為」と称賛。
 ・アサド政権の支援国(ロシア、イラン、ヒズボラ)は、米国のイスラエルおよびウクライナ支援によって防衛できなかった。

 2.米国の政策

 ・経済制裁

  ⇨ アサド政権への厳しい経済制裁を維持し、内戦終結のための政治的プロセスを促進。

 ・シリア東部での軍事駐留

  ⇨ 米軍はISIS対策としてシリア東部に駐留し、地域パートナーを支援。

 ・イスラエルの支援

  ⇨ イスラエルの行動を支持し、特にシリア内のイランの支援ネットワークへの空爆を支援。

 3.米国の空爆

 ・米国はシリア東部で75のISISターゲットに対して「数十回の空爆」を実施。
 ・米国は、ISISと協力する団体に対して責任を追及すると警告。

 4.反政府勢力の役割

 ・ハヤト・タフリール・アル=シャム(HTS)

  ⇨ アル=ヌスラ戦線と他のグループが合併して形成したテロリスト組織。
  ⇨ 米国はHTSをテロ組織に指定し、そのリーダーに10百万ドルの懸賞金をかけている。

 5.バイデン大統領の展望

 ・アサド政権崩壊後、シリアに新政府が樹立されるチャンスが生まれたと表明。
 ・反政府勢力に対しては、言葉だけでなく行動を評価する必要があると警告。

【引用・参照・底本】

Biden Says Fall of Assad Is a ‘Fundamental Act of Justice’ANTIWAR.com 2024.12.08
https://news.antiwar.com/2024/12/08/biden-says-fall-of-assad-is-a-fundamental-act-of-justice/