NATOは地域防衛組織であり、アジアへの拡大は意図していない2025年02月16日 20:00

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【桃源寸評】

 「ただし、日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドとの関係強化は継続
」と、ルッテ事務総長。其処(日本・韓国)は紛れも無く"アジア"である。

 ルッテの云うアジアとは何処を指すのか。

 中国と協力すれば、NATO、二枚舌を使わずに済むのでは。
 
【寸評 完】

【概要】

 中国の王毅外交部長(共産党中央政治局委員)は、北大西洋条約機構(NATO)が理性的かつ実務的な姿勢を取り、中国に対する客観的かつ正確な認識を持ち、前向きで責任ある政策を追求することを望むと表明した。

 王外交部長は、ミュンヘン安全保障会議の傍らで、NATO事務総長のマーク・ルッテと2月14日に会談し、この発言を行った。

 王外交部長は、中国が平和と安定を維持する力であると強調した。中国は国連安全保障理事会常任理事国の中で最大の平和維持要員の提供国であり、国連平和維持活動(PKO)への資金拠出でも第2位であると指摘した。また、平和と安全の問題に関して、中国は主要国の中で最も優れた実績を持つと述べた。

 現在の地政学的な対立が激化する中、王外交部長はNATOに対し、地域的な防衛組織としての本来の役割を堅持し、世界および地域の平和に建設的に貢献するよう求めた。

 ルッテ事務総長は、中国を偉大な国家であり、著しい発展を遂げた国と認識していると述べた。また、NATOは地域防衛組織であり、アジアへの拡大を意図しておらず、今後もその方針を維持すると強調した。その上で、NATOは中国との対話と意思疎通を強化し、相互理解と信頼を深めることを望んでいると述べた。

 両者はウクライナ危機についても意見を交換した。ルッテ事務総長は、NATOが中国の影響力と役割を重視しており、中国がロシア・ウクライナ紛争の平和的解決を促進する上で重要な役割を果たすことを期待していると述べた。

 これに対し、王外交部長は中国の原則と立場を説明し、中国は引き続き全ての関係国と協力し、政治的解決を促進するために建設的な役割を果たし、ヨーロッパにおけるバランスの取れた、効果的で持続可能な安全保障枠組みの構築に努めると表明した。

【詳細】

 中国の王毅外交部長(共産党中央政治局委員)は、2025年2月14日、ドイツ・ミュンヘンで開催されたミュンヘン安全保障会議(Munich Security Conference)の場で、北大西洋条約機構(NATO)のマーク・ルッテ事務総長と会談し、中国に対するNATOの姿勢について意見を交わした。王外交部長は、NATOが理性的かつ実務的な姿勢を持ち、中国に対する客観的かつ正確な認識を形成し、前向きで責任ある政策を採用することを望むと述べた。

 王毅外交部長の主張

 王外交部長は、まず中国が国際社会において平和と安定の維持に貢献する「積極的な力(force for maintaining peace and stability)」であることを強調した。その具体例として、中国が国連安全保障理事会(UNSC)の常任理事国の中で最も多くの平和維持要員を派遣していること、さらに国連平和維持活動(PKO)への資金拠出額で第2位の規模を誇ることを挙げた。これは、中国が国際的な安全保障の枠組みの中で積極的な役割を果たし、単なる地域大国ではなく、グローバルな安定を支える存在であることを示していると主張した。

 さらに、王外交部長は、中国が「主要国の中で最も優れた実績を持つ」と述べ、過去数十年間において戦争を引き起こしていないことや、軍事同盟を形成せず、覇権主義を追求しない姿勢を強調した。これは、中国が従来から主張している「平和的発展」の立場を再確認するものであり、西側諸国が中国を「脅威」と見なすことは誤った認識であると指摘した。

 NATOに対する要求

 王外交部長は、現在進行中の地政学的対立の激化を背景に、NATOが本来の「地域防衛組織(regional defensive organization)」としての役割を維持し、世界および地域の平和と安定に建設的に貢献するよう求めた。これは、NATOが近年、インド太平洋地域への関与を強めていることを念頭に置いた発言であると考えられる。中国はNATOがアジア地域に軍事的影響を拡大しようとすることに懸念を抱いており、その動きを牽制する狙いがあるとみられる。

 また、中国側としては、NATOの対中認識が対決姿勢に基づくものではなく、協力や対話に基づくものとなるよう促した。王外交部長は、NATOが中国を「脅威」ではなく「協力相手」として認識することが国際社会の安定に資すると考えており、NATOの政策に対し慎重な対応を求めた。

 ルッテ事務総長の対応

 NATOのマーク・ルッテ事務総長は、中国を「偉大な国家(great nation)」であり、「顕著な発展成果(remarkable development achievements)」を達成した国であると評価した。これは、中国の経済的・軍事的影響力の増大を認識し、一定の敬意を表明する発言であると考えられる。

 ルッテ事務総長は、NATOはあくまで「地域防衛組織」であり、「アジアへの拡大を意図しておらず、今後もその方針を維持する」と明言した。この発言は、中国が懸念するNATOのインド太平洋地域への関与について、中国側を安心させる意図があったとみられる。しかし、NATOは近年、オーストラリア、日本、韓国、ニュージーランドといったインド太平洋のパートナー国との関係を強化しており、今後も協力が続くことは確実である。そのため、この発言が中国の懸念を完全に払拭するものとは言い難い。

 また、ルッテ事務総長は、NATOとしては中国との「対話と意思疎通(dialogue and communication)」を強化し、相互理解と信頼を深める意向を示した。これは、NATOとしても中国との緊張を回避し、対話のチャンネルを維持する姿勢を示したものといえる。

 ウクライナ危機に関する議論

 会談では、ウクライナ危機についても意見が交わされた。ルッテ事務総長は、「NATOは中国の影響力と役割を重視しており、中国がロシア・ウクライナ紛争の平和的解決を促進する上で重要な役割を果たすことを期待している」と述べた。これは、特にロシアとの関係が深い中国が、紛争の外交的解決に向けて影響力を行使できると考えているためである。

 王外交部長はこれに対し、中国の原則と立場を説明した。中国は、ウクライナ危機の政治的解決を促進するために「建設的な役割(constructive role)」を果たす意向を再確認した。また、中国は「バランスの取れた、効果的で持続可能な安全保障枠組み(balanced, effective, and sustainable security framework)」の構築を目指すと強調した。これは、欧米が主導する現在の安全保障体制に対し、中国がより多国間的で公平な枠組みの形成を求めていることを示している。

 今回の会談の意義

 今回の王外交部長とルッテ事務総長の会談は、中国とNATOの間で対話を維持する重要性を示すものである。NATOはインド太平洋地域での活動を強化しており、中国はその動きに懸念を抱いている。一方で、NATO側は中国を脅威とみなすのではなく、対話を通じた相互理解を深めることを重視する姿勢を示した。しかし、ウクライナ危機をめぐる両者の立場には依然として隔たりがあり、中国がNATOの期待にどこまで応えるかは不透明である。

 この会談は、中国とNATOの関係が対立に向かうのか、それとも一定の協力関係を築くのかを左右する重要な局面の一つと位置付けられる。

【要点】

 王毅外交部長とマーク・ルッテNATO事務総長の会談(2025年2月14日)

 王毅外交部長の主張

 1.中国の平和貢献を強調

 ・国連安保理常任理事国で最も多くの平和維持要員を派遣
 ・国連PKOへの資金拠出額で世界第2位

 2.軍事的拡張を否定

 ・「主要国の中で最も優れた実績」=過去数十年にわたり戦争を起こしていない
 ・軍事同盟を結ばず、覇権主義を追求しない

 3.NATOに対する要求

 ・「地域防衛組織」としての本来の役割を守るべき
 ・中国を脅威ではなく協力相手と認識すべき

 4.NATOのアジア関与を牽制

 ・ルッテNATO事務総長の対応
 ・中国を「偉大な国家」と評価
 ・「顕著な発展成果を達成」と発言

 5.NATOの基本姿勢

 ・「NATOは地域防衛組織であり、アジアへの拡大は意図していない」と明言
 ・ただし、日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドとの関係強化は継続

 6.中国との対話を重視

 ・相互理解と信頼を深めるための「対話と意思疎通」の強化を提案

 ウクライナ危機に関する議論

 ・ルッテ事務総長:「中国はロシア・ウクライナ紛争の平和的解決に重要な役割を果たせる」
 ・王毅外交部長:「中国は政治的解決を促進し、バランスの取れた安全保障枠組みを構築すべき」

 会談の意義

 ・NATOのインド太平洋戦略と中国の警戒が交錯
 ・NATOは対立回避を示唆しつつ、アジアのパートナーシップを維持
 ・ウクライナ問題での立場の違いは依然として大きい
 ・中国とNATOの関係が対立か協力かの分岐点となる可能性 

【引用・参照・底本】

Chinese FM calls for positive, responsible policy from NATO toward China GT 2025.02.16
https://www.globaltimes.cn/page/202502/1328496.shtml

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