イスラエルのイランへの空爆 ― 2025年06月14日 17:42
【概要】
イスラエルのイランへの空爆後、イスラエル当局者がトランプがイランを欺いたと自慢した。これは、トランプが核合意がなされない場合、「彼らが知っているどんなものよりもはるかに悪いこと」をイランに警告し、金曜日が60日間の最後通告の61日目であることを指摘した彼の投稿によって裏付けられた。トランプが以前はイスラエルの攻撃に警告していたにもかかわらず、その後のイスラエルへの熱狂的な支持と、彼の政権が米国は攻撃に関与していないと主張していることは、多くの人々にイスラエル当局者の発言が真実であると納得させた。これにより、トランプとネタニヤフの対立は策略の一部であったように思われた。
同様に、ウクライナが6月初旬にロシアに攻撃を行う直前に、トランプはウクライナとの停戦に合意しない場合、「悪いこと…本当に悪いこと」がロシアに起こるかもしれないと警告していた。ホワイトハウスはトランプが事前に知っていたことを否定したが、イスラエル当局者が自慢したような二重外交の後、プーチンはトランプをこれまで以上に疑っているかもしれない。
しかし、プーチンがネタニヤフおよびペゼシュキアンとの電話会談の公式記録では、イスラエルの行動を非難しつつも、ロシアのイラン核問題の政治的解決への支持を再確認し、緊張緩和を促進し続けると述べた。彼の外務省の声明も同様で、「当事者に自制を求める」と述べ、ロシアの国連代表は「英国がキプロスの基地で、作戦に関与したイスラエル機をかくまった」と主張した。
ロシアの行動から判断すると、ロシアが独自の二重外交を行っていない限り、プーチンらはトランプがイランを騙したとは考えていないようだ。むしろ、保守評論家のグレン・ベックと元IDF報道官のジョナサン・コンリカスが共有する見解、すなわち「61日目に作戦を実行する計画を立てることは欺瞞的ではない」という見解を共有しているように見える。言い換えれば、トランプは真に合意を望んでおり、そのため60日目以前のイスラエルのイラン攻撃には反対していたが、それ以降は止めようとはしなかったということである。
この解釈は、ネタニヤフが当初の計画が作戦上の理由で4月下旬から延期されたと主張した理由を説明できる。また、もしトランプがネタニヤフが期限が過ぎる前に攻撃し、トランプが真に望んでいた合意を台無しにするのを恐れていたとすれば、彼とネタニヤフの間に実際に対立があった可能性にも寄与するかもしれない。イスラエル当局者の自慢は、イランを扇動して地域の米軍施設を攻撃させ、米国の戦争への直接関与を誘発するための心理作戦である可能性もある。
トランプとそのチームはイスラエルの主張を否定しなかったが(おそらくイスラエルの攻撃が成功したためで、もし成功しなかったら否定したかもしれない)、緊張を制御するために確認もしなかった。最終的に、トランプが本当に二重外交でイランを欺いたかどうかを知る方法はないが、ロシアがこの説明に同意していることを示唆しておらず、代わりに相互の自制と外交の重要性を再確認していることは重要である。
【詳細】
アンドリュー・コリブコは2025年6月14日付の記事で、ドナルド・トランプがイランとの外交において欺瞞的な戦略を用いたのか、それとも本当に合意を求めていたのかという問いを掘り下げている。
主な論点は以下の通りである。
イスラエルの攻撃とトランプの言動
・イスラエルの主張: 2025年6月13日早朝のイスラエルのイランへの空爆後、イスラエル当局は、トランプが二重外交でイランを欺き、不意を突いたと公言した。
・トランプの投稿: トランプ自身も、核合意が成立しない場合、「彼らが知るどんなものよりも悪いもの」をイランに与えると脅していたことを投稿で再確認し、攻撃当日が60日間の最後通告の61日目であったことを指摘した。
・トランプの態度の変化: 以前はイスラエルの攻撃に警告を発していたトランプが、攻撃後にイスラエルを熱烈に支持したこと、そして米政権が攻撃への関与を否定したことが、多くの人々にイスラエル当局の主張が真実であると信じ込ませた。これにより、トランプとイスラエル首相ネタニヤフの間の「亀裂」は、実は策略であったという見方が強まった。
ウクライナとロシアの状況との類似性
・ウクライナの攻撃: 6月初旬のウクライナによるロシアへの攻撃も、トランプが停戦に合意しなければロシアに「本当に悪いこと」が起こりうると警告した数日後に発生した。
・プーチンの疑念: ホワイトハウスはトランプがウクライナの攻撃を事前に知っていたことを否定したが、イスラエルが自慢した二重外交の事例を受け、プーチンがトランプをこれまで以上に疑っている可能性があると指摘された。
ロシアの反応と異なる解釈
・ロシアの公式見解: ロシア大統領プーチンとイラン大統領ペゼシュキアン、ネタニヤフ首相との電話会談の公式声明では、プーチンはイスラエルの行動を非難しつつも、イラン核問題の政治的解決への支持を再確認し、緊張緩和を促進し続けると述べた。ロシア外務省も同様の声明を出し、関係当事者に自制を求めた。
・ロシアの国連代表の主張: ロシアの国連代表は、英国がキプロスの基地でイスラエル機をかくまったと主張した。
・ロシアの解釈: ロシアの公式な反応は、トランプがイランを欺いたという見方とは異なるように見える。むしろ、ロシアは、トランプが真に合意を望んでおり、そのため60日目以前のイスラエルの攻撃には反対していたが、期限後は攻撃を止めなかった、という保守評論家グレン・ベックらの見方を共有しているように見える。つまり、「61日目に突入する計画を立てるのは欺瞞ではない」という考えである。
ネタニヤフの主張と心理作戦の可能性
・計画延期の理由: ネタニヤフが当初の計画が4月下旬から「作戦上の理由」で延期されたと主張したことは、トランプが合意成立を望んでいたために、ネタニヤフが期限前に攻撃して合意を台無しにするのを恐れた可能性を示唆している。
・心理作戦の可能性: イスラエル当局者の「自慢」は、イランを刺激して地域の米軍施設を攻撃させ、米国を戦争に直接引き込むための心理作戦である可能性も指摘されている。
結論の不確実性
・トランプ政権の対応: トランプとそのチームはイスラエルの主張を否定しなかったが(攻撃が成功したためか、あるいは失敗した場合とは異なる対応をしたかもしれない)、エスカレーションを制御するために確認もしなかった。
・不明確な真意: 最終的に、トランプが本当に二重外交でイランを欺いたのかどうかを知る術はない。しかし、ロシアがこの欺瞞説に同意する兆候を見せず、代わりに相互の自制と外交の重要性を強調していることは重要であると記事は結んでいる。
・トランプの意図が明確ではない複雑な状況を描写し、複数の解釈の可能性を提示している。
【要点】
アンドリュー・コリブコは2025年6月14日付の記事で、トランプがイランとの外交において欺瞞的な戦略を用いたのか、それとも真に合意を望んでいたのかについて考察している。
トランプの外交戦略とイスラエルの攻撃
・イスラエル当局の主張: イスラエルがイランを空爆した後、イスラエル当局はトランプが**「二重外交」**でイランを欺き、奇襲攻撃を仕掛けたと公言した。
・トランプの投稿: トランプ自身も、核合意が成立しない場合、イランに「彼らが知るどんなものよりも悪いもの」を与えると警告していたことを投稿で再確認した。また、攻撃当日が彼の60日間の最後通告の61日目であったことを指摘した。
・トランプの態度の変化: 以前はイスラエルの攻撃に警告していたにもかかわらず、トランプが攻撃後にイスラエルを熱狂的に支持したこと、そして米政権が攻撃への関与を否定したことが、多くの人々にイスラエル当局の主張が真実であると信じ込ませた。このため、トランプとネタニヤフの間の「亀裂」は策略だったと見られた。
ウクライナとロシアの状況との類似性
・ウクライナの攻撃: 6月初旬のウクライナによるロシアへの攻撃も、トランプが停戦に合意しなければロシアに「本当に悪いこと」が起こりうると警告した数日後に発生した。
・プーチンの疑念: ホワイトハウスはトランプがウクライナの攻撃を事前に知っていたことを否定したが、イスラエルが自慢した二重外交の事例を受け、プーチンがトランプをこれまで以上に疑っている可能性が示唆された。
ロシアの反応と異なる解釈
・ロシアの公式見解: ロシア大統領プーチンは、イラン大統領ペゼシュキアンおよびネタニヤフ首相との電話会談で、イスラエルの行動を非難しつつも、イラン核問題の政治的解決への支持を再確認し、緊張緩和を促進し続けると述べた。ロシア外務省も同様の声明を出し、関係当事者に自制を求めた。
・ロシアの国連代表の主張: ロシアの国連代表は、英国がキプロスの基地でイスラエル機をかくまったと主張した。
・ロシアの解釈: ロシアの行動から判断すると、ロシアはトランプがイランを欺いたとは考えていないようだ。むしろ、彼らは保守評論家のグレン・ベックらの見解、つまり「61日目に作戦を実行する計画を立てることは欺瞞的ではない」という見方を共有しているように見える。これは、トランプが真に合意を望んでおり、そのため60日目以前のイスラエルの攻撃には反対していたが、期限後は止めなかったという解釈である。
ネタニヤフの主張と心理作戦の可能性
・計画延期の理由: ネタニヤフが当初の計画が4月下旬から「作戦上の理由」で延期されたと主張したことは、トランプが合意成立を望んでいたために、ネタニヤフが期限前に攻撃し、合意を台無しにするのを恐れた可能性を示唆している。
・心理作戦の可能性: イスラエル当局者の「自慢」は、イランを刺激して地域の米軍施設を攻撃させ、米国を戦争に直接引き込むための心理作戦である可能性も指摘されている。
結論の不確実性
・トランプ政権の対応: トランプとそのチームはイスラエルの主張を否定しなかったが、エスカレーションを制御するために確認もしなかった。
・真意の不明確さ: 最終的に、トランプが本当に二重外交でイランを欺いたのかどうかを知る術はない。しかし、ロシアがこの欺瞞説に同意する兆候を見せず、代わりに相互の自制と外交の重要性を強調していることは重要であると記事は締めくくっている。
【桃源寸評】🌍
アンドリュー・コリブコ氏の記事は、しばしば複数の情報源からの断片的な情報や発言を組み合わせて、独自の解釈や推論を導き出すスタイルをとっている。そのため、読者によっては「甘い推測の上に論陣を張っている」と感じられることがある。
彼がよく用いる手法としては、以下のような点が挙げられる。
・政府関係者や報道の引用: 今回の記事でもイスラエル当局者の「自慢」やトランプのSNS投稿、プーチンの発言などが引用されている。これらの情報自体は事実であっても、その背後にある意図や全体像を読み解く際に、筆者の解釈が強く反映される傾向にある。
・可能性の提示: 「~の可能性がある」「~のように見える」「~かもしれない」といった表現を多用し、複数の解釈やシナリオを提示する。これは分析の幅を広げる一方で、確固たる証拠に基づかない推測を多く含んでいると受け取られることもある。
・裏の意図の推測: 公式発表とは異なる「裏の意図」や「策略」が存在すると示唆することがよくある。今回の記事では、トランプとネタニヤフの対立が「策略」であった可能性や、イスラエル当局の「自慢」が心理作戦である可能性などが挙げられている。
・特定の視点からの分析: コリブコ氏はロシアを拠点とする政治アナリストであり、ロシアの視点や、西側諸国の主流メディアとは異なる視点から国際情勢を分析することが多い。そのため、特定の国や勢力に有利な解釈や、既存の認識を覆すような主張を行うことがある。
こうした分析スタイルは、一面的な情報に偏らず多角的な視点を提供すると評価される一方で、根拠の乏しい憶測や陰謀論めいた論調に陥りがちであると批判されることもある。
今回の記事も、トランプの行動の真意を巡って複数の可能性を提示しており、読者が最終的な判断を下すことを促しているが、その提示された可能性自体が筆者の推測に基づいている、と見ることもできるだろう。
国際社会は彼の様なスィーツの様な見方はしない。少なくとも米国のplausible deniablityであり、どう言い訳しようが、事実は、米国とイスラエルそして西側の一部が実行した見るだろう。
「プルーシブル・デナイアビリティ(Plausible Deniability:もっともらしい否認)」の概念は、国際政治における複雑な状況を理解する上で重要である。
国際社会の一般的な見方
多くのアナリストや国家は、公式な否定声明(デナイアビリティ)があったとしても、行動の裏にある事実関係や相関関係に注目する。今回のケースで言えば、以下の点が国際社会の一般的な見方となるだろう。
・米国の関与: トランプ大統領が以前からイランに厳しい姿勢を示し、最終通告の期限直後にイスラエルが攻撃したという時間的符合は、米国が攻撃を黙認、あるいは事前に承認していたということは、米国が「我々は関与していない」と主張しても、その言動の全体像から、国際社会はそれを額面通りには受け取らない可能性が高い。
・イスラエルとの連携: 米国とイスラエルは長年の同盟国であり、軍事・情報面で緊密な連携がある。イスラエルがこれほど大規模な攻撃を単独で、しかも米国の完全な不関与の下で行ったと考えるのは非現実的であると見なされる。
・西側諸国の関与の可能性: ロシアが「英国がキプロスの基地でイスラエル機をかくまった」と主張しているように、もしこの情報が事実であれば、一部の西側諸国が間接的にこの作戦に関与した、あるいは支援したと見なされる可能性も出てくる。これは、攻撃の背後に単なるイスラエルだけではない広範な支援があったことを示唆することになる。
「プルーシブル・デナイアビリティ」の視点
まさに「プルーシブル・デナイアビリティ」とは、国家が自らの行動に対する直接的な責任を回避するために、あえて第三者に行動を実行させたり、証拠を曖昧にしたりする戦略である。
・米国が直接攻撃しなかったとしても、イスラエルによる攻撃を事前に把握し、それを黙認または奨励していた場合、米国は「もっともらしい否認」を主張できる。しかし、国際社会、特に敵対的な関係にある国々は、そのような否認の裏にある真の意図を深く読み解こうとする。
・コリブコ氏が提示するような「トランプは本当に合意を望んでいた」という解釈は、米国の否認を補強する一種の「ソフトな否認」として機能する可能性もある。しかし、現実の国際政治においては、このような「善意」に基づいた解釈は、しばしば実利的な計算や戦略的な意図の前に後退する。
したがって、多くの国々は、公式な言葉の裏に隠された真の力学、すなわち米国とイスラエル、そして場合によっては一部の西側諸国の連携による「既成事実」として、今回の事態を見ている可能性が高い。
尤もだからと言って、米国の基地をイランが攻撃すれば、<藪をつついて蛇を出す>ことになる、故報復は悔しくとも、イスラエルに止めておくべきだ。
イランの報復戦略とリスク
イランが悔しい思いをしているとしても、米国の基地を直接攻撃した場合、それは「レッドライン」を越える行為と見なされ、米国の直接的な軍事介入を招く可能性が極めて高い。
・米国の軍事力: 米国は中東地域に強大な軍事力を展開しており、その基地が攻撃されれば、非常に強力な報復を受けることは避けられない。これは、イランが望む以上の甚大な被害につながる可能性がある。
・地域紛争の拡大: イランが米軍基地を攻撃すれば、限定的なイスラエルとイランの対立から、米国とイランの直接対決、さらには中東全体を巻き込む大規模な地域紛争へとエスカレートする恐れがある。これは、周辺国にも多大な影響を与え、国際社会も望まない事態である。
・国際的孤立: 米国への直接攻撃は、イランの国際的な孤立をさらに深め、経済制裁の強化や、これまで以上に厳しい国際社会からの非難を招くことになる。
イスラエルへの報復に留める選択肢
したがって、イランが報復を行う場合でも、その対象をイスラエルに限定することは、賢明な戦略的判断と言える。
・メッセージの限定性: イスラエルへの報復に留めることで、イランは「我々はエスカレーションを望んでいないが、攻撃には反撃する」というメッセージを国際社会に送ることができる。
・米国の介入回避: 米国が直接攻撃されていない限り、米国の介入は外交的圧力や限定的な支援に留まる可能性があり、直接的な軍事衝突のリスクは低減される。
・国際社会の支持: 過度なエスカレーションを避けることで、イランが置かれている状況に対する国際的な理解や同情を得る余地も生まれる。
現段階でのイランの判断は、彼らの戦略的目標と、さらなるリスクをいかに避けるかというバランスにかかっている。悔しさを飲み込み、より戦略的な選択をすることが、イランにとって最善の道である可能性は十分にある。
アンドリュー・コリブコ氏の記事が「目眩まし」のようで無責任に感じられる。
彼の記事のスタイルは、複数の情報源や発言を引用しながらも、明確な結論を出さずに多くの可能性を提示し、読者に解釈を委ねる傾向がある。今回の場合も、トランプの行動が「欺瞞だったのか、本当に合意を望んだのか」という核心の部分について、複数のシナリオを並列に提示するにとどまっている。
「目眩まし」と感じられる理由
・断定を避ける曖昧さ: コリブコ氏は、「~の可能性がある」「~のように見える」「~かもしれない」といった推測の言葉を多用する。これにより、多角的な視点を提供しているようにも見えるが、同時にどの解釈が最も確からしいのかを明言しないため、読者は混乱し、結局何が言いたいのか掴みにくいと感じるかもしれない。
・「裏の意図」の示唆: 彼の分析は、しばしば公式な声明の裏に隠された「真の意図」や「策略」が存在すると示唆する。これは一見すると深掘りした分析に見えるが、確固たる証拠がない場合は、単なる憶測や陰謀論の域を出ないこともある。
・責任の回避: 結論を明確にせず、可能性だけを提示することで、もし将来的に事態が提示されたシナリオとは異なる方向に進んだとしても、筆者自身が特定の主張の責任を負うことを回避しているようにも見える。
「無責任」と感じられる理由
・判断の棚上げ: 国際情勢に関する分析記事は、読者が現状を理解し、今後の展開を予測する上で一定の指針を提供することが期待される。しかし、コリブコ氏の記事のように最終的な判断を読者に丸投げする形は、分析者としての責任を果たしていないと感じられる場合がある。
・情報の羅列に終始する印象: 様々な情報を集め、それらを関連付けているものの、最終的に「結局、真相は分からない」という形で終わるため、読者にとっては消化不良感が残り、「情報がただ羅列されているだけ」という印象を与える可能性もある。
このような分析スタイルは、特定の視点から現状を攪乱し、混乱を助長する意図がある、あるいは単に筆者の分析能力の限界を示していると受け取られることもある。特に、事態が緊迫している国際情勢においては、あいまいな言説は不必要な憶測を呼び、事態をより複雑に見せる「目眩まし」の効果をもたらす可能性がある。
歴史的行動の結果を鑑みない分析は、短期的な事象に目を奪われ、長期的な傾向や戦略的意図を見落とす危険性がある。読者が記事からより深い洞察を得るためには、過去の行動パターンとの比較や、その行動が現在の状況に与える影響の分析が不可欠であるという点においてこそ、近未来の洞察が可能となる。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
Did Trump Really Deceive Iran With Duplicitous Diplomacy? Andrew Korybko's Newsletter 2025.06.14
https://korybko.substack.com/p/did-trump-really-deceive-iran-with?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=165924754&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
イスラエルのイランへの空爆後、イスラエル当局者がトランプがイランを欺いたと自慢した。これは、トランプが核合意がなされない場合、「彼らが知っているどんなものよりもはるかに悪いこと」をイランに警告し、金曜日が60日間の最後通告の61日目であることを指摘した彼の投稿によって裏付けられた。トランプが以前はイスラエルの攻撃に警告していたにもかかわらず、その後のイスラエルへの熱狂的な支持と、彼の政権が米国は攻撃に関与していないと主張していることは、多くの人々にイスラエル当局者の発言が真実であると納得させた。これにより、トランプとネタニヤフの対立は策略の一部であったように思われた。
同様に、ウクライナが6月初旬にロシアに攻撃を行う直前に、トランプはウクライナとの停戦に合意しない場合、「悪いこと…本当に悪いこと」がロシアに起こるかもしれないと警告していた。ホワイトハウスはトランプが事前に知っていたことを否定したが、イスラエル当局者が自慢したような二重外交の後、プーチンはトランプをこれまで以上に疑っているかもしれない。
しかし、プーチンがネタニヤフおよびペゼシュキアンとの電話会談の公式記録では、イスラエルの行動を非難しつつも、ロシアのイラン核問題の政治的解決への支持を再確認し、緊張緩和を促進し続けると述べた。彼の外務省の声明も同様で、「当事者に自制を求める」と述べ、ロシアの国連代表は「英国がキプロスの基地で、作戦に関与したイスラエル機をかくまった」と主張した。
ロシアの行動から判断すると、ロシアが独自の二重外交を行っていない限り、プーチンらはトランプがイランを騙したとは考えていないようだ。むしろ、保守評論家のグレン・ベックと元IDF報道官のジョナサン・コンリカスが共有する見解、すなわち「61日目に作戦を実行する計画を立てることは欺瞞的ではない」という見解を共有しているように見える。言い換えれば、トランプは真に合意を望んでおり、そのため60日目以前のイスラエルのイラン攻撃には反対していたが、それ以降は止めようとはしなかったということである。
この解釈は、ネタニヤフが当初の計画が作戦上の理由で4月下旬から延期されたと主張した理由を説明できる。また、もしトランプがネタニヤフが期限が過ぎる前に攻撃し、トランプが真に望んでいた合意を台無しにするのを恐れていたとすれば、彼とネタニヤフの間に実際に対立があった可能性にも寄与するかもしれない。イスラエル当局者の自慢は、イランを扇動して地域の米軍施設を攻撃させ、米国の戦争への直接関与を誘発するための心理作戦である可能性もある。
トランプとそのチームはイスラエルの主張を否定しなかったが(おそらくイスラエルの攻撃が成功したためで、もし成功しなかったら否定したかもしれない)、緊張を制御するために確認もしなかった。最終的に、トランプが本当に二重外交でイランを欺いたかどうかを知る方法はないが、ロシアがこの説明に同意していることを示唆しておらず、代わりに相互の自制と外交の重要性を再確認していることは重要である。
【詳細】
アンドリュー・コリブコは2025年6月14日付の記事で、ドナルド・トランプがイランとの外交において欺瞞的な戦略を用いたのか、それとも本当に合意を求めていたのかという問いを掘り下げている。
主な論点は以下の通りである。
イスラエルの攻撃とトランプの言動
・イスラエルの主張: 2025年6月13日早朝のイスラエルのイランへの空爆後、イスラエル当局は、トランプが二重外交でイランを欺き、不意を突いたと公言した。
・トランプの投稿: トランプ自身も、核合意が成立しない場合、「彼らが知るどんなものよりも悪いもの」をイランに与えると脅していたことを投稿で再確認し、攻撃当日が60日間の最後通告の61日目であったことを指摘した。
・トランプの態度の変化: 以前はイスラエルの攻撃に警告を発していたトランプが、攻撃後にイスラエルを熱烈に支持したこと、そして米政権が攻撃への関与を否定したことが、多くの人々にイスラエル当局の主張が真実であると信じ込ませた。これにより、トランプとイスラエル首相ネタニヤフの間の「亀裂」は、実は策略であったという見方が強まった。
ウクライナとロシアの状況との類似性
・ウクライナの攻撃: 6月初旬のウクライナによるロシアへの攻撃も、トランプが停戦に合意しなければロシアに「本当に悪いこと」が起こりうると警告した数日後に発生した。
・プーチンの疑念: ホワイトハウスはトランプがウクライナの攻撃を事前に知っていたことを否定したが、イスラエルが自慢した二重外交の事例を受け、プーチンがトランプをこれまで以上に疑っている可能性があると指摘された。
ロシアの反応と異なる解釈
・ロシアの公式見解: ロシア大統領プーチンとイラン大統領ペゼシュキアン、ネタニヤフ首相との電話会談の公式声明では、プーチンはイスラエルの行動を非難しつつも、イラン核問題の政治的解決への支持を再確認し、緊張緩和を促進し続けると述べた。ロシア外務省も同様の声明を出し、関係当事者に自制を求めた。
・ロシアの国連代表の主張: ロシアの国連代表は、英国がキプロスの基地でイスラエル機をかくまったと主張した。
・ロシアの解釈: ロシアの公式な反応は、トランプがイランを欺いたという見方とは異なるように見える。むしろ、ロシアは、トランプが真に合意を望んでおり、そのため60日目以前のイスラエルの攻撃には反対していたが、期限後は攻撃を止めなかった、という保守評論家グレン・ベックらの見方を共有しているように見える。つまり、「61日目に突入する計画を立てるのは欺瞞ではない」という考えである。
ネタニヤフの主張と心理作戦の可能性
・計画延期の理由: ネタニヤフが当初の計画が4月下旬から「作戦上の理由」で延期されたと主張したことは、トランプが合意成立を望んでいたために、ネタニヤフが期限前に攻撃して合意を台無しにするのを恐れた可能性を示唆している。
・心理作戦の可能性: イスラエル当局者の「自慢」は、イランを刺激して地域の米軍施設を攻撃させ、米国を戦争に直接引き込むための心理作戦である可能性も指摘されている。
結論の不確実性
・トランプ政権の対応: トランプとそのチームはイスラエルの主張を否定しなかったが(攻撃が成功したためか、あるいは失敗した場合とは異なる対応をしたかもしれない)、エスカレーションを制御するために確認もしなかった。
・不明確な真意: 最終的に、トランプが本当に二重外交でイランを欺いたのかどうかを知る術はない。しかし、ロシアがこの欺瞞説に同意する兆候を見せず、代わりに相互の自制と外交の重要性を強調していることは重要であると記事は結んでいる。
・トランプの意図が明確ではない複雑な状況を描写し、複数の解釈の可能性を提示している。
【要点】
アンドリュー・コリブコは2025年6月14日付の記事で、トランプがイランとの外交において欺瞞的な戦略を用いたのか、それとも真に合意を望んでいたのかについて考察している。
トランプの外交戦略とイスラエルの攻撃
・イスラエル当局の主張: イスラエルがイランを空爆した後、イスラエル当局はトランプが**「二重外交」**でイランを欺き、奇襲攻撃を仕掛けたと公言した。
・トランプの投稿: トランプ自身も、核合意が成立しない場合、イランに「彼らが知るどんなものよりも悪いもの」を与えると警告していたことを投稿で再確認した。また、攻撃当日が彼の60日間の最後通告の61日目であったことを指摘した。
・トランプの態度の変化: 以前はイスラエルの攻撃に警告していたにもかかわらず、トランプが攻撃後にイスラエルを熱狂的に支持したこと、そして米政権が攻撃への関与を否定したことが、多くの人々にイスラエル当局の主張が真実であると信じ込ませた。このため、トランプとネタニヤフの間の「亀裂」は策略だったと見られた。
ウクライナとロシアの状況との類似性
・ウクライナの攻撃: 6月初旬のウクライナによるロシアへの攻撃も、トランプが停戦に合意しなければロシアに「本当に悪いこと」が起こりうると警告した数日後に発生した。
・プーチンの疑念: ホワイトハウスはトランプがウクライナの攻撃を事前に知っていたことを否定したが、イスラエルが自慢した二重外交の事例を受け、プーチンがトランプをこれまで以上に疑っている可能性が示唆された。
ロシアの反応と異なる解釈
・ロシアの公式見解: ロシア大統領プーチンは、イラン大統領ペゼシュキアンおよびネタニヤフ首相との電話会談で、イスラエルの行動を非難しつつも、イラン核問題の政治的解決への支持を再確認し、緊張緩和を促進し続けると述べた。ロシア外務省も同様の声明を出し、関係当事者に自制を求めた。
・ロシアの国連代表の主張: ロシアの国連代表は、英国がキプロスの基地でイスラエル機をかくまったと主張した。
・ロシアの解釈: ロシアの行動から判断すると、ロシアはトランプがイランを欺いたとは考えていないようだ。むしろ、彼らは保守評論家のグレン・ベックらの見解、つまり「61日目に作戦を実行する計画を立てることは欺瞞的ではない」という見方を共有しているように見える。これは、トランプが真に合意を望んでおり、そのため60日目以前のイスラエルの攻撃には反対していたが、期限後は止めなかったという解釈である。
ネタニヤフの主張と心理作戦の可能性
・計画延期の理由: ネタニヤフが当初の計画が4月下旬から「作戦上の理由」で延期されたと主張したことは、トランプが合意成立を望んでいたために、ネタニヤフが期限前に攻撃し、合意を台無しにするのを恐れた可能性を示唆している。
・心理作戦の可能性: イスラエル当局者の「自慢」は、イランを刺激して地域の米軍施設を攻撃させ、米国を戦争に直接引き込むための心理作戦である可能性も指摘されている。
結論の不確実性
・トランプ政権の対応: トランプとそのチームはイスラエルの主張を否定しなかったが、エスカレーションを制御するために確認もしなかった。
・真意の不明確さ: 最終的に、トランプが本当に二重外交でイランを欺いたのかどうかを知る術はない。しかし、ロシアがこの欺瞞説に同意する兆候を見せず、代わりに相互の自制と外交の重要性を強調していることは重要であると記事は締めくくっている。
【桃源寸評】🌍
アンドリュー・コリブコ氏の記事は、しばしば複数の情報源からの断片的な情報や発言を組み合わせて、独自の解釈や推論を導き出すスタイルをとっている。そのため、読者によっては「甘い推測の上に論陣を張っている」と感じられることがある。
彼がよく用いる手法としては、以下のような点が挙げられる。
・政府関係者や報道の引用: 今回の記事でもイスラエル当局者の「自慢」やトランプのSNS投稿、プーチンの発言などが引用されている。これらの情報自体は事実であっても、その背後にある意図や全体像を読み解く際に、筆者の解釈が強く反映される傾向にある。
・可能性の提示: 「~の可能性がある」「~のように見える」「~かもしれない」といった表現を多用し、複数の解釈やシナリオを提示する。これは分析の幅を広げる一方で、確固たる証拠に基づかない推測を多く含んでいると受け取られることもある。
・裏の意図の推測: 公式発表とは異なる「裏の意図」や「策略」が存在すると示唆することがよくある。今回の記事では、トランプとネタニヤフの対立が「策略」であった可能性や、イスラエル当局の「自慢」が心理作戦である可能性などが挙げられている。
・特定の視点からの分析: コリブコ氏はロシアを拠点とする政治アナリストであり、ロシアの視点や、西側諸国の主流メディアとは異なる視点から国際情勢を分析することが多い。そのため、特定の国や勢力に有利な解釈や、既存の認識を覆すような主張を行うことがある。
こうした分析スタイルは、一面的な情報に偏らず多角的な視点を提供すると評価される一方で、根拠の乏しい憶測や陰謀論めいた論調に陥りがちであると批判されることもある。
今回の記事も、トランプの行動の真意を巡って複数の可能性を提示しており、読者が最終的な判断を下すことを促しているが、その提示された可能性自体が筆者の推測に基づいている、と見ることもできるだろう。
国際社会は彼の様なスィーツの様な見方はしない。少なくとも米国のplausible deniablityであり、どう言い訳しようが、事実は、米国とイスラエルそして西側の一部が実行した見るだろう。
「プルーシブル・デナイアビリティ(Plausible Deniability:もっともらしい否認)」の概念は、国際政治における複雑な状況を理解する上で重要である。
国際社会の一般的な見方
多くのアナリストや国家は、公式な否定声明(デナイアビリティ)があったとしても、行動の裏にある事実関係や相関関係に注目する。今回のケースで言えば、以下の点が国際社会の一般的な見方となるだろう。
・米国の関与: トランプ大統領が以前からイランに厳しい姿勢を示し、最終通告の期限直後にイスラエルが攻撃したという時間的符合は、米国が攻撃を黙認、あるいは事前に承認していたということは、米国が「我々は関与していない」と主張しても、その言動の全体像から、国際社会はそれを額面通りには受け取らない可能性が高い。
・イスラエルとの連携: 米国とイスラエルは長年の同盟国であり、軍事・情報面で緊密な連携がある。イスラエルがこれほど大規模な攻撃を単独で、しかも米国の完全な不関与の下で行ったと考えるのは非現実的であると見なされる。
・西側諸国の関与の可能性: ロシアが「英国がキプロスの基地でイスラエル機をかくまった」と主張しているように、もしこの情報が事実であれば、一部の西側諸国が間接的にこの作戦に関与した、あるいは支援したと見なされる可能性も出てくる。これは、攻撃の背後に単なるイスラエルだけではない広範な支援があったことを示唆することになる。
「プルーシブル・デナイアビリティ」の視点
まさに「プルーシブル・デナイアビリティ」とは、国家が自らの行動に対する直接的な責任を回避するために、あえて第三者に行動を実行させたり、証拠を曖昧にしたりする戦略である。
・米国が直接攻撃しなかったとしても、イスラエルによる攻撃を事前に把握し、それを黙認または奨励していた場合、米国は「もっともらしい否認」を主張できる。しかし、国際社会、特に敵対的な関係にある国々は、そのような否認の裏にある真の意図を深く読み解こうとする。
・コリブコ氏が提示するような「トランプは本当に合意を望んでいた」という解釈は、米国の否認を補強する一種の「ソフトな否認」として機能する可能性もある。しかし、現実の国際政治においては、このような「善意」に基づいた解釈は、しばしば実利的な計算や戦略的な意図の前に後退する。
したがって、多くの国々は、公式な言葉の裏に隠された真の力学、すなわち米国とイスラエル、そして場合によっては一部の西側諸国の連携による「既成事実」として、今回の事態を見ている可能性が高い。
尤もだからと言って、米国の基地をイランが攻撃すれば、<藪をつついて蛇を出す>ことになる、故報復は悔しくとも、イスラエルに止めておくべきだ。
イランの報復戦略とリスク
イランが悔しい思いをしているとしても、米国の基地を直接攻撃した場合、それは「レッドライン」を越える行為と見なされ、米国の直接的な軍事介入を招く可能性が極めて高い。
・米国の軍事力: 米国は中東地域に強大な軍事力を展開しており、その基地が攻撃されれば、非常に強力な報復を受けることは避けられない。これは、イランが望む以上の甚大な被害につながる可能性がある。
・地域紛争の拡大: イランが米軍基地を攻撃すれば、限定的なイスラエルとイランの対立から、米国とイランの直接対決、さらには中東全体を巻き込む大規模な地域紛争へとエスカレートする恐れがある。これは、周辺国にも多大な影響を与え、国際社会も望まない事態である。
・国際的孤立: 米国への直接攻撃は、イランの国際的な孤立をさらに深め、経済制裁の強化や、これまで以上に厳しい国際社会からの非難を招くことになる。
イスラエルへの報復に留める選択肢
したがって、イランが報復を行う場合でも、その対象をイスラエルに限定することは、賢明な戦略的判断と言える。
・メッセージの限定性: イスラエルへの報復に留めることで、イランは「我々はエスカレーションを望んでいないが、攻撃には反撃する」というメッセージを国際社会に送ることができる。
・米国の介入回避: 米国が直接攻撃されていない限り、米国の介入は外交的圧力や限定的な支援に留まる可能性があり、直接的な軍事衝突のリスクは低減される。
・国際社会の支持: 過度なエスカレーションを避けることで、イランが置かれている状況に対する国際的な理解や同情を得る余地も生まれる。
現段階でのイランの判断は、彼らの戦略的目標と、さらなるリスクをいかに避けるかというバランスにかかっている。悔しさを飲み込み、より戦略的な選択をすることが、イランにとって最善の道である可能性は十分にある。
アンドリュー・コリブコ氏の記事が「目眩まし」のようで無責任に感じられる。
彼の記事のスタイルは、複数の情報源や発言を引用しながらも、明確な結論を出さずに多くの可能性を提示し、読者に解釈を委ねる傾向がある。今回の場合も、トランプの行動が「欺瞞だったのか、本当に合意を望んだのか」という核心の部分について、複数のシナリオを並列に提示するにとどまっている。
「目眩まし」と感じられる理由
・断定を避ける曖昧さ: コリブコ氏は、「~の可能性がある」「~のように見える」「~かもしれない」といった推測の言葉を多用する。これにより、多角的な視点を提供しているようにも見えるが、同時にどの解釈が最も確からしいのかを明言しないため、読者は混乱し、結局何が言いたいのか掴みにくいと感じるかもしれない。
・「裏の意図」の示唆: 彼の分析は、しばしば公式な声明の裏に隠された「真の意図」や「策略」が存在すると示唆する。これは一見すると深掘りした分析に見えるが、確固たる証拠がない場合は、単なる憶測や陰謀論の域を出ないこともある。
・責任の回避: 結論を明確にせず、可能性だけを提示することで、もし将来的に事態が提示されたシナリオとは異なる方向に進んだとしても、筆者自身が特定の主張の責任を負うことを回避しているようにも見える。
「無責任」と感じられる理由
・判断の棚上げ: 国際情勢に関する分析記事は、読者が現状を理解し、今後の展開を予測する上で一定の指針を提供することが期待される。しかし、コリブコ氏の記事のように最終的な判断を読者に丸投げする形は、分析者としての責任を果たしていないと感じられる場合がある。
・情報の羅列に終始する印象: 様々な情報を集め、それらを関連付けているものの、最終的に「結局、真相は分からない」という形で終わるため、読者にとっては消化不良感が残り、「情報がただ羅列されているだけ」という印象を与える可能性もある。
このような分析スタイルは、特定の視点から現状を攪乱し、混乱を助長する意図がある、あるいは単に筆者の分析能力の限界を示していると受け取られることもある。特に、事態が緊迫している国際情勢においては、あいまいな言説は不必要な憶測を呼び、事態をより複雑に見せる「目眩まし」の効果をもたらす可能性がある。
歴史的行動の結果を鑑みない分析は、短期的な事象に目を奪われ、長期的な傾向や戦略的意図を見落とす危険性がある。読者が記事からより深い洞察を得るためには、過去の行動パターンとの比較や、その行動が現在の状況に与える影響の分析が不可欠であるという点においてこそ、近未来の洞察が可能となる。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
Did Trump Really Deceive Iran With Duplicitous Diplomacy? Andrew Korybko's Newsletter 2025.06.14
https://korybko.substack.com/p/did-trump-really-deceive-iran-with?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=165924754&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
緊迫化する中東情勢 ― 2025年06月14日 19:27
【概要】
中東情勢は緊迫化しており、2025年6月14日にイスラエルとイランの間でミサイル攻撃と爆撃がエスカレートした。
イランは土曜日の朝、イスラエルによる前例のないイラン領土内の軍事・核施設への空爆に対応し、イスラエルに新たなミサイルの波状攻撃を仕掛けた。これにより、地域でのさらなるエスカレーションへの懸念が高まっている。
土曜日未明、イランはイスラエルの核施設を標的とした大規模な金曜日の攻撃に続き、イスラエルへの新たな攻撃を開始した。
イスラエル軍は土曜日、空軍がイラン領内の標的への攻撃を継続していると発表した。
土曜日未明、イランのミサイルがイスラエル中部で住宅付近に着弾し、2人が死亡、19人が負傷したとイスラエルの救急隊が発表した。テルアビブ地域での別のミサイル攻撃で女性1人が死亡し、死者総数は3人となった。
イランでは、金曜日のイスラエルによる攻撃で少なくとも78人が死亡、320人以上が負傷したとイラン国連大使が述べた。土曜日には、イラン国営テレビが、テヘランの住宅団地に対するイスラエルによる攻撃で、子供20人を含む60人が死亡したと報じた。
前日の展開として、イスラエルは金曜日、イランの核計画を標的とし、複数のイラン軍高官、IRGC司令官、核科学者を殺害する大規模なドローンおよびミサイル攻撃をイランに対して開始した。イランは金曜日の夜、イスラエルに対する報復ミサイル攻撃を開始した。
ドナルド・トランプ米大統領は、イランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう強く求めた。エマニュエル・マクロン仏大統領は、イランが中東の不安定化に大きな責任を負っており、不当な核計画を推し進めてきたと述べたが、イスラエルがイランを攻撃した後、自制を促した。
2025年6月14日午前、イランはイスラエル領に新たなミサイル攻撃を実施した。これは、前日に行われたイスラエルによるイラン国内の軍事・核施設への空爆に対する報復である。イスラエル軍は同日、イラン領内の標的への攻撃を継続していると発表した。
イスラエルでは、中部でのミサイル着弾により2人が死亡、19人が負傷した。さらにテルアビブ地域でのミサイル攻撃で女性1人が死亡し、死者数は合計3人となった。
一方、イランでは、イランの国連大使によると、イスラエルによる前日の攻撃で少なくとも78人が死亡、320人以上が負傷した。また、イラン国営テレビは、テヘランの住宅団地へのイスラエルによる攻撃で、子ども20人を含む60人が死亡したと報じた。
前日(6月13日)の経緯として、イスラエルはイランに対し、テヘランの核開発計画を標的とし、複数のイラン軍高官、イスラム革命防衛隊(IRGC)司令官、核科学者を殺害する大規模な無人機・ミサイル攻撃を実施した。これに対し、イランは同日夜、イスラエルへの報復ミサイル攻撃を開始した。
ドナルド・トランプ米大統領は、イランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう促した。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、イランが中東の不安定化に大きな責任を負っており、不当な核開発計画を進めていると述べたが、同時にイスラエルに対し自制を求めた。
【詳細】
2025年6月14日午前、イランはイスラエルに対し新たなミサイル攻撃を行った。これは、前日(6月13日)にイスラエルがイランの核施設や軍事施設に対して行った大規模な空爆への報復である。イスラエル軍も同日、イラン領内の目標への攻撃を継続していることを確認した。
イスラエルでは、イランからのミサイルが中部リション・レジオン近郊の住宅地に命中し、2人が死亡、19人が負傷した。テルアビブ地域でも別のミサイル攻撃により女性1人が死亡し、イスラエル国内の死者数は計3人となった。ミサイル着弾により、住宅4棟が甚大な被害を受けた。イスラエルの救急サービス「マゲン・ダビデ・アドム」によると、負傷者の中には軽傷者も含まれている。
一方、イランでは、イスラエルによる前日の攻撃で甚大な被害が出ており、イランの国連大使は78人が死亡、320人以上が負傷したと述べた。イラン国営テレビは、テヘランの住宅団地へのイスラエルによる攻撃で、子ども20人を含む60人が死亡したと報じた。また、テヘランのメフラバード国際空港では火災が発生したとの情報もある。
前日(6月13日)には、イスラエルが「ライジング・ライオン作戦」と称し、イランの核開発計画を標的とした大規模な無人機およびミサイル攻撃を実施した。この攻撃では、イランのナタンツ核施設、イスファハン核技術センター、ケルマンシャー州の主要ミサイル基地などが標的となり、複数のイラン軍高官、イスラム革命防衛隊(IRGC)司令官、核科学者が殺害された。爆発音はテヘラン各地、軍事基地周辺、高官居住区で報告され、ナタンツ、ホンダブ、ホラマバードなどの核施設も攻撃された。イスラエル国防軍(IDF)とモサドによって実行されたこれらの攻撃は、イランの核施設に損害を与え、トップレベルの軍事指導者を殺害した。
これに対し、イランは同日夜、イスラエルへの報復ミサイル攻撃を開始した。イスラエルは多数の弾道ミサイルと100機以上のドローンによる大規模な攻撃を受け、テルアビブやエルサレムを含むイスラエルの都市や軍事施設が標的となった。イスラエルの防空システムが迎撃を行ったものの、一部のミサイルは突破し、実質的な爆発を引き起こした。
国際社会の反応として、ドナルド・トランプ米大統領は、イランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう促した。彼は、イスラエルによる攻撃が核交渉を「無意味にする」可能性を示唆しつつも、イランが「真剣に交渉する」きっかけになるかもしれないとの見方を示した。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、イランが中東の不安定化に大きな責任を負っており、正当化できない核開発計画を進めていると述べた。彼は、テヘランが核兵器取得の「臨界点」に近づいていると指摘し、ウラン濃縮を民間利用の正当な理由なく、核兵器に必要なレベルに非常に近い水準で継続していることを批判した。同時に、彼はイスラエルに自制を求め、対話の再開と合意形成を呼びかけた。マクロン大統領は、イスラエル・パレスチナ紛争に関する国連会議が、今回のイラン攻撃を受けて延期されたことも明らかにした。
【要点】
2025年6月14日 中東情勢の激化
1.イランによる新たな攻撃
・イランは2025年6月14日午前、イスラエル領に対し新たなミサイル攻撃を実施。
・これは前日(6月13日)のイスラエルによるイラン核・軍事施設への大規模空爆に対する報復措置。
2.イスラエルへの被害
・中部リション・レジオン近郊でミサイル着弾により2人死亡、19人負傷。
・テルアビブ地域でもミサイル攻撃により女性1人死亡。
・イスラエル国内の死者数は計3人。
・住宅4棟が甚大な被害を受けた。
3.イランへの被害(イスラエルによる攻撃)
・イランの国連大使によると、前日(6月13日)のイスラエル攻撃で少なくとも78人死亡、320人以上負傷。
・イラン国営テレビは、テヘランの住宅団地へのイスラエル攻撃で子ども20人を含む60人死亡と報道。
・テヘランのメフラバード国際空港で火災発生との情報も。
4.前日(6月13日)の経緯
(1)イスラエルによる攻撃
・イスラエルは「ライジング・ライオン作戦」と称し、イランの核開発計画を標的とした大規模な無人機・ミサイル攻撃を実施。
・ナタンツ核施設、イスファハン核技術センター、ケルマンシャー州の主要ミサイル基地などが標的。
・複数のイラン軍高官、イスラム革命防衛隊(IRGC)司令官、核科学者が殺害された。
・爆発音はテヘラン各地、軍事基地周辺、高官居住区で報告。
・イスラエル国防軍(IDF)とモサドが実行し、イランの核施設に損害を与え、トップレベルの軍事指導者を殺害。
(2)イランによる報復
・イスラエルの攻撃後、イランは同日夜、イスラエルへの報復ミサイル攻撃を開始。
・多数の弾道ミサイルと100機以上のドローンによる大規模攻撃。
・テルアビブやエルサレムを含むイスラエルの都市や軍事施設が標的。
・イスラエルの防空システムが迎撃したが、一部のミサイルは突破し爆発。
5.国際社会の反応
(1)ドナルド・トランプ米大統領
・イランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう促した。
・イスラエルによる攻撃が核交渉を「無意味にする」可能性を示唆しつつ、イランが「真剣に交渉する」きっかけになる可能性も言及。
(2)エマニュエル・マクロン仏大統領
・イランが中東の不安定化に大きな責任を負っており、正当化できない核開発計画を進めていると指摘。
・イランが核兵器取得の「臨界点」に近づいていると述べ、ウラン濃縮を批判。
・イスラエルに自制を求め、対話の再開と合意形成を呼びかけた。
・イスラエル・パレスチナ紛争に関する国連会議が、今回のイラン攻撃を受けて延期されたと発表。
【桃源寸評】🌍
ドナルド・トランプ氏の発言に見る一方的な圧力と本質的な問題の回避
ドナルド・トランプ氏がイランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう促した発言は、露骨な恫喝に他ならない。このような発言は、対等な外交関係に基づいた解決を求めるものではなく、一方的な力の行使を背景とした威圧である。
この恫喝が問題なのは、現在の紛争の直接的な引き金となったイスラエルによるイランへの先制攻撃について、一切の非を問わず、むしろイラン側のみに責任を押し付けている点である。国際紛争において、一方の当事者、特に先制攻撃を行った側に対して即座の攻撃停止を呼びかけるのが、紛争の拡大を防ぎ、人命の損失を最小限に抑える上で最も道理に適った行動である。しかし、トランプ氏はその当然の「筋」を無視し、イランにのみ一方的な要求を突きつけている。これは、イスラエルの行動を事実上追認し、その責任を曖昧にするものである。
エマニュエル・マクロン仏大統領の発言に見る西側の常套句と責任転嫁
エマニュエル・マクロン仏大統領が、イランが中東の不安定化に大きな責任を負っていると述べた発言もまた、西側諸国が自らの行動の「非」を隠蔽する際に多用する常套句であると捉えることができる。イランの核開発や地域の行動が中東情勢に影響を与えていることは事実として存在するかもしれない。しかし、この発言は、イスラエルによる度重なる攻撃や、米国を筆頭とする西側諸国が中東地域で行ってきた歴史的な介入、あるいは核兵器の不拡散条約(NPT)体制における不均衡など、より複雑な背景や文脈を無視している。
特に、イスラエルがイランの軍事・核施設に対して前例のない攻撃を行った直後に、イランにのみ「地域の不安定化の責任」を負わせる論調は、紛争の根本原因を棚上げし、責任を一方的に転嫁しようとする意図が見て取れる。このような発言は、国際社会における信頼性を損なうものであり、真の平和的解決に向けた建設的な議論を阻害するものである。西側諸国が自らの利害に基づき、特定の国を「悪」と断定することで、自らの行動の正当性を主張しようとする姿勢は、長年にわたり中東情勢の複雑化に寄与してきたとも言える。
結論として、両指導者の発言は、現在の衝突における米国、イスラエル、フランスの責任を巧妙に回避し、イランに一方的な圧力をかけることで、自らの都合の良い形で状況を収束させようとする試みと評価できる。これは国際社会における公平性と正義の原則に反し、紛争の真の解決を遠ざけるものである。
イランの核開発と国際社会の見解を巡る「誤魔化し」の論理
イランの核開発を巡る国際社会、特に米国や西側諸国の見解は、彼らの地政学的利益や安全保障上の懸念、そして歴史的な経緯に強く影響されている。したがって、イラン側の視点から見れば、それらの主張は「自分勝手な誤魔化しの論理」と映るのも当然である。
イラン側は、IAEAへの申告義務違反や査察への協力不足と指摘される点について、以下のような反論や説明を行うことがある。
・核開発の平和的意図: イランは一貫して、核開発はエネルギー生産や医療目的のための平和利用であり、核兵器開発はイスラムの教義に反すると主張している。IAEAの報告書も、イランが核兵器を「保有している」とは明言はしていない。
・不信感の原因は西側にある: イランは、核合意(JCPOA)から一方的に離脱し、制裁を再開した米国こそが不信感と緊張を高めた根本原因であると主張している。核合意は、イランが核開発を制限する代わりに制裁解除を受けるものだったが、米国がこれを破棄したため、イランも合意義務の一部を停止せざるを得なかったと説明している。
・査察への協力不足の背景: 過去の査察協力の不足は、安全保障上の懸念(イスラエルによる核科学者暗殺やサイバー攻撃など)や、西側諸国による一方的な制裁、あるいは主権侵害に対する対抗措置であると主張されることがある。イランは、IAEAの要求が、特定の国の政治的意図に沿った不当なものであると反論することもある。
・周辺国への影響力行使: イランが支援するとされる武装組織は、西側諸国やその同盟国によって「テロ組織」と見なされる一方で、イラン側はこれらを「抵抗の枢軸」として、地域の抑圧に対する正当な防衛者、あるいは地域の安定に貢献する存在と位置づけることがある。地域の不安定化の原因は、むしろ米国やイスラエルの介入主義的な政策にあると主張する。
・異なる政治体制: イランの政治体制が西側諸国と異なることは事実であり、それが対話よりも圧力が選択されやすい一因であるという見方は、まさに西側からの視点である。イラン側から見れば、これは自国の独立と主権を守るための姿勢であり、西側の価値観を押し付けられることへの抵抗であると捉えられる。
イスラエルの核兵器保有と国際社会の沈黙
イスラエルは、核兵器を保有していることを公式に認めも否定もしない「核の曖昧政策(nuclear ambiguity)」を長年維持してきた。しかし、専門家の間では、イスラエルが1960年代には核兵器を開発し、現在では相当数の核弾頭を保有していると広く見られている。
この「核保有」が、なぜイランの核開発疑惑ほどに国際的な非難や軍事攻撃の理由とならないのか、その背景には以下の「誤魔化し」の論理が存在すると考えられる。
1. 核不拡散条約(NPT)の枠外にある存在
・NPT非加盟: イスラエルは、インド、パキスタン、南スーダンと共に、核不拡散条約(NPT)に加盟していない数少ない国の一つである。NPTは、核兵器国と非核兵器国を明確に区別し、非核兵器国には核兵器を製造・取得しない義務を課す。イスラエルがNPTに加盟していないことで、条約上の核不拡散義務から事実上「免れている」かのように扱われている。
・既成事実化: イスラエルの核開発は冷戦期に始まり、その保有は長年の既成事実となっている。国際社会は、その核保有を正面から問題視するよりも、地域の安定を優先するという名目で「黙認」してきた側面が強い。これは、核拡散防止という本来のNPTの目的からすれば、明白な矛盾であり、NPT体制の「構造的な欠陥」の一つと批判されるべき点である。
2. 米国の戦略的利益と「特別な関係」
・米国の庇護: イスラエルは、米国にとって中東地域における最も重要な戦略的同盟国の一つであり、「特別な関係」を築いている。米国は、イスラエルの中東における安全保障上の優位性を維持することを重視しており、その核能力もその優位性の一環として容認してきたと見なせる。
・二重基準の適用: 米国は、イランの核開発には強く反対し、制裁や軍事圧力も辞さない構えを見せる一方で、イスラエルの核保有については沈黙を保っている。この明確な二重基準は、国際的な核不拡散体制の信頼性を損なうものであり、「核拡散」への対応が、各国の地政学的な利害や同盟関係によって恣意的に決定されていることを示唆している。これは、公平性とはかけ離れた「誤魔化し」の論理そのものである。
3. 地域安全保障論の歪曲
・「抑止力」としての容認: イスラエルは、敵対するアラブ諸国やイランに対する「最終的な抑止力」として核兵器の保有が必要であると主張している。しかし、この論理は、中東地域における核軍拡競争を正当化するものであり、かえって地域の不安定性を増大させる危険性を孕んでいる。
・非核地帯化の進展阻害: 中東を非核兵器地帯とする構想は長年議論されてきたが、イスラエルの核保有がその実現を阻む最大の要因となっている。国際社会がイスラエルの核保有を容認し続けることは、地域の核拡散リスクを高めることに繋がる。しかし、西側諸国は、イランの核開発への懸念ばかりを強調し、イスラエルの核兵器がもたらす地域への影響については、意図的に議論を避けているか、その重要性を過小評価している。
結論
イスラエルの核兵器保有が国際社会から強力に非難されず、軍事攻撃の標的とならないのは、NPT体制の限界、米国の戦略的利益と庇護、そして中東地域の地政学的な特殊性といった要因が複合的に作用しているためである。これは、客観的な核不拡散の原則よりも、特定の国の政治的・戦略的利益が優先されるという、国際政治の不公平かつ欺瞞的な側面を明確に示している。
この「二重基準」こそが、イランのような国々が、西側諸国の主張を「自分勝手な誤魔化しの論理」と見なし、国際的な非難にもかかわらず独自の道を模索する理由の一つとなっていると深く理解できないか。
北朝鮮の核・ミサイル開発の経緯は、国際社会、特に米国が掲げる「二重基準」と「弱い者いじめ」の論理が、いかに機能不全に陥り、かえって核拡散を促す結果を招いたかを示す好例だと考えられる。
北朝鮮の核開発:二重基準と「弱い者いじめ」が招いた現実
北朝鮮は、核不拡散条約(NPT)を脱退し、国際社会の度重なる非難や制裁にもかかわらず、核兵器と弾道ミサイルの開発を強行してきた。米国は一貫して北朝鮮の非核化を求めているが、結果として北朝鮮は米国本土を射程に収める可能性のあるICBM(大陸間弾道ミサイル)や核弾頭の開発を進展させてしまった。
この状況は、「二重基準と弱い者いじめの米国の為せる業」という視点から、以下のように分析できる。
1. 「力」の論理への傾倒
・米国は、イスラエルなど一部の同盟国の核保有を事実上容認する一方で、イランや北朝鮮といった「敵対的」と見なす国の核開発には、容赦ない制裁や軍事的な圧力をちらつかせてきた。これは、核不拡散という普遍的な原則よりも、自国の地政学的利益や安全保障上の都合が優先される「力の論理」に他なならない。
・北朝鮮は、この二重基準を目の当たりにし、国際法や対話では自国の安全を確保できないと判断した可能性がある。彼らにとって、リビアのカダフィ政権が核開発を放棄した後に西側から攻撃され崩壊した事例などは、「核を持たなければ攻撃される」という教訓として捉えられたのである。結果として、国際社会の非難や制裁を甘受してでも、自らの生存を保障する唯一の手段として核兵器の保有に突き進む選択をした、と見ることができる。
2. 対話の機会の逸失と硬化
・米国を中心とする国際社会は、北朝鮮の核開発初期段階において、より柔軟な対話や経済支援を通じた解決策を十分に模索せず、強硬な制裁と圧力を主軸とした。これは、北朝鮮を「弱い者」として扱い、一方的に要求を押し付ければ屈服させられるという傲慢な見方に根ざしていた可能性がある。
・しかし、このアプローチは北朝鮮をより頑なにさせ、核・ミサイル開発の加速を招いた。対話の窓が閉ざされたことで、北朝鮮は自力で「脅威」となり得る能力を構築する以外に、国際社会で自らの存在を認めさせる手段はないと判断したのである。結果として、米国が最も避けたいと考えていた「米国本土への核の脅威」という状況が、皮肉にもこの強硬姿勢の「為せる業」として現実のものとなってしまったのである。
3. 核不拡散体制への致命的な打撃
・北朝鮮の核武装は、核不拡散条約(NPT)体制に対する大きな挑戦である。本来、NPTは核兵器の水平拡散を防ぐための重要な枠組みであるが、特定の国への二重基準の適用は、その正当性と実効性を根底から揺るがした。
・北朝鮮は、この二重基準を「堂々と突破」することで、国際社会に対して「核を持つことでしか、米国からの一方的な圧力や体制転覆の脅威から身を守れない」というメッセージを発した。これは、今後、核兵器開発を検討する他の国々に対し、「非難されても、最終的に核を持てば交渉のテーブルにつける」という危険な前例を与えかねないのだ。
結論として、北朝鮮が米国にとって脅威となる核・ミサイル能力を獲得してしまった背景には、米国の掲げる核不拡散の原則における二重基準、そして「弱い者いじめ」ともとれる一方的な圧力外交が深く関与しているのである。
この結果は、国際関係における公平性と対話の重要性を改めて浮き彫りにしている。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
Live: Missiles slam Israeli territory, Iranian military sites bombed as conflict escalates FRANCE24 2025.06.14
https://www.france24.com/en/middle-east/20250614-tehran-retaliates-with-missile-strikes-as-israel-and-iran-launch-tit-for-tat-attacks?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250614&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
中東情勢は緊迫化しており、2025年6月14日にイスラエルとイランの間でミサイル攻撃と爆撃がエスカレートした。
イランは土曜日の朝、イスラエルによる前例のないイラン領土内の軍事・核施設への空爆に対応し、イスラエルに新たなミサイルの波状攻撃を仕掛けた。これにより、地域でのさらなるエスカレーションへの懸念が高まっている。
土曜日未明、イランはイスラエルの核施設を標的とした大規模な金曜日の攻撃に続き、イスラエルへの新たな攻撃を開始した。
イスラエル軍は土曜日、空軍がイラン領内の標的への攻撃を継続していると発表した。
土曜日未明、イランのミサイルがイスラエル中部で住宅付近に着弾し、2人が死亡、19人が負傷したとイスラエルの救急隊が発表した。テルアビブ地域での別のミサイル攻撃で女性1人が死亡し、死者総数は3人となった。
イランでは、金曜日のイスラエルによる攻撃で少なくとも78人が死亡、320人以上が負傷したとイラン国連大使が述べた。土曜日には、イラン国営テレビが、テヘランの住宅団地に対するイスラエルによる攻撃で、子供20人を含む60人が死亡したと報じた。
前日の展開として、イスラエルは金曜日、イランの核計画を標的とし、複数のイラン軍高官、IRGC司令官、核科学者を殺害する大規模なドローンおよびミサイル攻撃をイランに対して開始した。イランは金曜日の夜、イスラエルに対する報復ミサイル攻撃を開始した。
ドナルド・トランプ米大統領は、イランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう強く求めた。エマニュエル・マクロン仏大統領は、イランが中東の不安定化に大きな責任を負っており、不当な核計画を推し進めてきたと述べたが、イスラエルがイランを攻撃した後、自制を促した。
2025年6月14日午前、イランはイスラエル領に新たなミサイル攻撃を実施した。これは、前日に行われたイスラエルによるイラン国内の軍事・核施設への空爆に対する報復である。イスラエル軍は同日、イラン領内の標的への攻撃を継続していると発表した。
イスラエルでは、中部でのミサイル着弾により2人が死亡、19人が負傷した。さらにテルアビブ地域でのミサイル攻撃で女性1人が死亡し、死者数は合計3人となった。
一方、イランでは、イランの国連大使によると、イスラエルによる前日の攻撃で少なくとも78人が死亡、320人以上が負傷した。また、イラン国営テレビは、テヘランの住宅団地へのイスラエルによる攻撃で、子ども20人を含む60人が死亡したと報じた。
前日(6月13日)の経緯として、イスラエルはイランに対し、テヘランの核開発計画を標的とし、複数のイラン軍高官、イスラム革命防衛隊(IRGC)司令官、核科学者を殺害する大規模な無人機・ミサイル攻撃を実施した。これに対し、イランは同日夜、イスラエルへの報復ミサイル攻撃を開始した。
ドナルド・トランプ米大統領は、イランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう促した。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、イランが中東の不安定化に大きな責任を負っており、不当な核開発計画を進めていると述べたが、同時にイスラエルに対し自制を求めた。
【詳細】
2025年6月14日午前、イランはイスラエルに対し新たなミサイル攻撃を行った。これは、前日(6月13日)にイスラエルがイランの核施設や軍事施設に対して行った大規模な空爆への報復である。イスラエル軍も同日、イラン領内の目標への攻撃を継続していることを確認した。
イスラエルでは、イランからのミサイルが中部リション・レジオン近郊の住宅地に命中し、2人が死亡、19人が負傷した。テルアビブ地域でも別のミサイル攻撃により女性1人が死亡し、イスラエル国内の死者数は計3人となった。ミサイル着弾により、住宅4棟が甚大な被害を受けた。イスラエルの救急サービス「マゲン・ダビデ・アドム」によると、負傷者の中には軽傷者も含まれている。
一方、イランでは、イスラエルによる前日の攻撃で甚大な被害が出ており、イランの国連大使は78人が死亡、320人以上が負傷したと述べた。イラン国営テレビは、テヘランの住宅団地へのイスラエルによる攻撃で、子ども20人を含む60人が死亡したと報じた。また、テヘランのメフラバード国際空港では火災が発生したとの情報もある。
前日(6月13日)には、イスラエルが「ライジング・ライオン作戦」と称し、イランの核開発計画を標的とした大規模な無人機およびミサイル攻撃を実施した。この攻撃では、イランのナタンツ核施設、イスファハン核技術センター、ケルマンシャー州の主要ミサイル基地などが標的となり、複数のイラン軍高官、イスラム革命防衛隊(IRGC)司令官、核科学者が殺害された。爆発音はテヘラン各地、軍事基地周辺、高官居住区で報告され、ナタンツ、ホンダブ、ホラマバードなどの核施設も攻撃された。イスラエル国防軍(IDF)とモサドによって実行されたこれらの攻撃は、イランの核施設に損害を与え、トップレベルの軍事指導者を殺害した。
これに対し、イランは同日夜、イスラエルへの報復ミサイル攻撃を開始した。イスラエルは多数の弾道ミサイルと100機以上のドローンによる大規模な攻撃を受け、テルアビブやエルサレムを含むイスラエルの都市や軍事施設が標的となった。イスラエルの防空システムが迎撃を行ったものの、一部のミサイルは突破し、実質的な爆発を引き起こした。
国際社会の反応として、ドナルド・トランプ米大統領は、イランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう促した。彼は、イスラエルによる攻撃が核交渉を「無意味にする」可能性を示唆しつつも、イランが「真剣に交渉する」きっかけになるかもしれないとの見方を示した。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、イランが中東の不安定化に大きな責任を負っており、正当化できない核開発計画を進めていると述べた。彼は、テヘランが核兵器取得の「臨界点」に近づいていると指摘し、ウラン濃縮を民間利用の正当な理由なく、核兵器に必要なレベルに非常に近い水準で継続していることを批判した。同時に、彼はイスラエルに自制を求め、対話の再開と合意形成を呼びかけた。マクロン大統領は、イスラエル・パレスチナ紛争に関する国連会議が、今回のイラン攻撃を受けて延期されたことも明らかにした。
【要点】
2025年6月14日 中東情勢の激化
1.イランによる新たな攻撃
・イランは2025年6月14日午前、イスラエル領に対し新たなミサイル攻撃を実施。
・これは前日(6月13日)のイスラエルによるイラン核・軍事施設への大規模空爆に対する報復措置。
2.イスラエルへの被害
・中部リション・レジオン近郊でミサイル着弾により2人死亡、19人負傷。
・テルアビブ地域でもミサイル攻撃により女性1人死亡。
・イスラエル国内の死者数は計3人。
・住宅4棟が甚大な被害を受けた。
3.イランへの被害(イスラエルによる攻撃)
・イランの国連大使によると、前日(6月13日)のイスラエル攻撃で少なくとも78人死亡、320人以上負傷。
・イラン国営テレビは、テヘランの住宅団地へのイスラエル攻撃で子ども20人を含む60人死亡と報道。
・テヘランのメフラバード国際空港で火災発生との情報も。
4.前日(6月13日)の経緯
(1)イスラエルによる攻撃
・イスラエルは「ライジング・ライオン作戦」と称し、イランの核開発計画を標的とした大規模な無人機・ミサイル攻撃を実施。
・ナタンツ核施設、イスファハン核技術センター、ケルマンシャー州の主要ミサイル基地などが標的。
・複数のイラン軍高官、イスラム革命防衛隊(IRGC)司令官、核科学者が殺害された。
・爆発音はテヘラン各地、軍事基地周辺、高官居住区で報告。
・イスラエル国防軍(IDF)とモサドが実行し、イランの核施設に損害を与え、トップレベルの軍事指導者を殺害。
(2)イランによる報復
・イスラエルの攻撃後、イランは同日夜、イスラエルへの報復ミサイル攻撃を開始。
・多数の弾道ミサイルと100機以上のドローンによる大規模攻撃。
・テルアビブやエルサレムを含むイスラエルの都市や軍事施設が標的。
・イスラエルの防空システムが迎撃したが、一部のミサイルは突破し爆発。
5.国際社会の反応
(1)ドナルド・トランプ米大統領
・イランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう促した。
・イスラエルによる攻撃が核交渉を「無意味にする」可能性を示唆しつつ、イランが「真剣に交渉する」きっかけになる可能性も言及。
(2)エマニュエル・マクロン仏大統領
・イランが中東の不安定化に大きな責任を負っており、正当化できない核開発計画を進めていると指摘。
・イランが核兵器取得の「臨界点」に近づいていると述べ、ウラン濃縮を批判。
・イスラエルに自制を求め、対話の再開と合意形成を呼びかけた。
・イスラエル・パレスチナ紛争に関する国連会議が、今回のイラン攻撃を受けて延期されたと発表。
【桃源寸評】🌍
ドナルド・トランプ氏の発言に見る一方的な圧力と本質的な問題の回避
ドナルド・トランプ氏がイランに対し「何も残らなくなる前に」核合意を結ぶよう促した発言は、露骨な恫喝に他ならない。このような発言は、対等な外交関係に基づいた解決を求めるものではなく、一方的な力の行使を背景とした威圧である。
この恫喝が問題なのは、現在の紛争の直接的な引き金となったイスラエルによるイランへの先制攻撃について、一切の非を問わず、むしろイラン側のみに責任を押し付けている点である。国際紛争において、一方の当事者、特に先制攻撃を行った側に対して即座の攻撃停止を呼びかけるのが、紛争の拡大を防ぎ、人命の損失を最小限に抑える上で最も道理に適った行動である。しかし、トランプ氏はその当然の「筋」を無視し、イランにのみ一方的な要求を突きつけている。これは、イスラエルの行動を事実上追認し、その責任を曖昧にするものである。
エマニュエル・マクロン仏大統領の発言に見る西側の常套句と責任転嫁
エマニュエル・マクロン仏大統領が、イランが中東の不安定化に大きな責任を負っていると述べた発言もまた、西側諸国が自らの行動の「非」を隠蔽する際に多用する常套句であると捉えることができる。イランの核開発や地域の行動が中東情勢に影響を与えていることは事実として存在するかもしれない。しかし、この発言は、イスラエルによる度重なる攻撃や、米国を筆頭とする西側諸国が中東地域で行ってきた歴史的な介入、あるいは核兵器の不拡散条約(NPT)体制における不均衡など、より複雑な背景や文脈を無視している。
特に、イスラエルがイランの軍事・核施設に対して前例のない攻撃を行った直後に、イランにのみ「地域の不安定化の責任」を負わせる論調は、紛争の根本原因を棚上げし、責任を一方的に転嫁しようとする意図が見て取れる。このような発言は、国際社会における信頼性を損なうものであり、真の平和的解決に向けた建設的な議論を阻害するものである。西側諸国が自らの利害に基づき、特定の国を「悪」と断定することで、自らの行動の正当性を主張しようとする姿勢は、長年にわたり中東情勢の複雑化に寄与してきたとも言える。
結論として、両指導者の発言は、現在の衝突における米国、イスラエル、フランスの責任を巧妙に回避し、イランに一方的な圧力をかけることで、自らの都合の良い形で状況を収束させようとする試みと評価できる。これは国際社会における公平性と正義の原則に反し、紛争の真の解決を遠ざけるものである。
イランの核開発と国際社会の見解を巡る「誤魔化し」の論理
イランの核開発を巡る国際社会、特に米国や西側諸国の見解は、彼らの地政学的利益や安全保障上の懸念、そして歴史的な経緯に強く影響されている。したがって、イラン側の視点から見れば、それらの主張は「自分勝手な誤魔化しの論理」と映るのも当然である。
イラン側は、IAEAへの申告義務違反や査察への協力不足と指摘される点について、以下のような反論や説明を行うことがある。
・核開発の平和的意図: イランは一貫して、核開発はエネルギー生産や医療目的のための平和利用であり、核兵器開発はイスラムの教義に反すると主張している。IAEAの報告書も、イランが核兵器を「保有している」とは明言はしていない。
・不信感の原因は西側にある: イランは、核合意(JCPOA)から一方的に離脱し、制裁を再開した米国こそが不信感と緊張を高めた根本原因であると主張している。核合意は、イランが核開発を制限する代わりに制裁解除を受けるものだったが、米国がこれを破棄したため、イランも合意義務の一部を停止せざるを得なかったと説明している。
・査察への協力不足の背景: 過去の査察協力の不足は、安全保障上の懸念(イスラエルによる核科学者暗殺やサイバー攻撃など)や、西側諸国による一方的な制裁、あるいは主権侵害に対する対抗措置であると主張されることがある。イランは、IAEAの要求が、特定の国の政治的意図に沿った不当なものであると反論することもある。
・周辺国への影響力行使: イランが支援するとされる武装組織は、西側諸国やその同盟国によって「テロ組織」と見なされる一方で、イラン側はこれらを「抵抗の枢軸」として、地域の抑圧に対する正当な防衛者、あるいは地域の安定に貢献する存在と位置づけることがある。地域の不安定化の原因は、むしろ米国やイスラエルの介入主義的な政策にあると主張する。
・異なる政治体制: イランの政治体制が西側諸国と異なることは事実であり、それが対話よりも圧力が選択されやすい一因であるという見方は、まさに西側からの視点である。イラン側から見れば、これは自国の独立と主権を守るための姿勢であり、西側の価値観を押し付けられることへの抵抗であると捉えられる。
イスラエルの核兵器保有と国際社会の沈黙
イスラエルは、核兵器を保有していることを公式に認めも否定もしない「核の曖昧政策(nuclear ambiguity)」を長年維持してきた。しかし、専門家の間では、イスラエルが1960年代には核兵器を開発し、現在では相当数の核弾頭を保有していると広く見られている。
この「核保有」が、なぜイランの核開発疑惑ほどに国際的な非難や軍事攻撃の理由とならないのか、その背景には以下の「誤魔化し」の論理が存在すると考えられる。
1. 核不拡散条約(NPT)の枠外にある存在
・NPT非加盟: イスラエルは、インド、パキスタン、南スーダンと共に、核不拡散条約(NPT)に加盟していない数少ない国の一つである。NPTは、核兵器国と非核兵器国を明確に区別し、非核兵器国には核兵器を製造・取得しない義務を課す。イスラエルがNPTに加盟していないことで、条約上の核不拡散義務から事実上「免れている」かのように扱われている。
・既成事実化: イスラエルの核開発は冷戦期に始まり、その保有は長年の既成事実となっている。国際社会は、その核保有を正面から問題視するよりも、地域の安定を優先するという名目で「黙認」してきた側面が強い。これは、核拡散防止という本来のNPTの目的からすれば、明白な矛盾であり、NPT体制の「構造的な欠陥」の一つと批判されるべき点である。
2. 米国の戦略的利益と「特別な関係」
・米国の庇護: イスラエルは、米国にとって中東地域における最も重要な戦略的同盟国の一つであり、「特別な関係」を築いている。米国は、イスラエルの中東における安全保障上の優位性を維持することを重視しており、その核能力もその優位性の一環として容認してきたと見なせる。
・二重基準の適用: 米国は、イランの核開発には強く反対し、制裁や軍事圧力も辞さない構えを見せる一方で、イスラエルの核保有については沈黙を保っている。この明確な二重基準は、国際的な核不拡散体制の信頼性を損なうものであり、「核拡散」への対応が、各国の地政学的な利害や同盟関係によって恣意的に決定されていることを示唆している。これは、公平性とはかけ離れた「誤魔化し」の論理そのものである。
3. 地域安全保障論の歪曲
・「抑止力」としての容認: イスラエルは、敵対するアラブ諸国やイランに対する「最終的な抑止力」として核兵器の保有が必要であると主張している。しかし、この論理は、中東地域における核軍拡競争を正当化するものであり、かえって地域の不安定性を増大させる危険性を孕んでいる。
・非核地帯化の進展阻害: 中東を非核兵器地帯とする構想は長年議論されてきたが、イスラエルの核保有がその実現を阻む最大の要因となっている。国際社会がイスラエルの核保有を容認し続けることは、地域の核拡散リスクを高めることに繋がる。しかし、西側諸国は、イランの核開発への懸念ばかりを強調し、イスラエルの核兵器がもたらす地域への影響については、意図的に議論を避けているか、その重要性を過小評価している。
結論
イスラエルの核兵器保有が国際社会から強力に非難されず、軍事攻撃の標的とならないのは、NPT体制の限界、米国の戦略的利益と庇護、そして中東地域の地政学的な特殊性といった要因が複合的に作用しているためである。これは、客観的な核不拡散の原則よりも、特定の国の政治的・戦略的利益が優先されるという、国際政治の不公平かつ欺瞞的な側面を明確に示している。
この「二重基準」こそが、イランのような国々が、西側諸国の主張を「自分勝手な誤魔化しの論理」と見なし、国際的な非難にもかかわらず独自の道を模索する理由の一つとなっていると深く理解できないか。
北朝鮮の核・ミサイル開発の経緯は、国際社会、特に米国が掲げる「二重基準」と「弱い者いじめ」の論理が、いかに機能不全に陥り、かえって核拡散を促す結果を招いたかを示す好例だと考えられる。
北朝鮮の核開発:二重基準と「弱い者いじめ」が招いた現実
北朝鮮は、核不拡散条約(NPT)を脱退し、国際社会の度重なる非難や制裁にもかかわらず、核兵器と弾道ミサイルの開発を強行してきた。米国は一貫して北朝鮮の非核化を求めているが、結果として北朝鮮は米国本土を射程に収める可能性のあるICBM(大陸間弾道ミサイル)や核弾頭の開発を進展させてしまった。
この状況は、「二重基準と弱い者いじめの米国の為せる業」という視点から、以下のように分析できる。
1. 「力」の論理への傾倒
・米国は、イスラエルなど一部の同盟国の核保有を事実上容認する一方で、イランや北朝鮮といった「敵対的」と見なす国の核開発には、容赦ない制裁や軍事的な圧力をちらつかせてきた。これは、核不拡散という普遍的な原則よりも、自国の地政学的利益や安全保障上の都合が優先される「力の論理」に他なならない。
・北朝鮮は、この二重基準を目の当たりにし、国際法や対話では自国の安全を確保できないと判断した可能性がある。彼らにとって、リビアのカダフィ政権が核開発を放棄した後に西側から攻撃され崩壊した事例などは、「核を持たなければ攻撃される」という教訓として捉えられたのである。結果として、国際社会の非難や制裁を甘受してでも、自らの生存を保障する唯一の手段として核兵器の保有に突き進む選択をした、と見ることができる。
2. 対話の機会の逸失と硬化
・米国を中心とする国際社会は、北朝鮮の核開発初期段階において、より柔軟な対話や経済支援を通じた解決策を十分に模索せず、強硬な制裁と圧力を主軸とした。これは、北朝鮮を「弱い者」として扱い、一方的に要求を押し付ければ屈服させられるという傲慢な見方に根ざしていた可能性がある。
・しかし、このアプローチは北朝鮮をより頑なにさせ、核・ミサイル開発の加速を招いた。対話の窓が閉ざされたことで、北朝鮮は自力で「脅威」となり得る能力を構築する以外に、国際社会で自らの存在を認めさせる手段はないと判断したのである。結果として、米国が最も避けたいと考えていた「米国本土への核の脅威」という状況が、皮肉にもこの強硬姿勢の「為せる業」として現実のものとなってしまったのである。
3. 核不拡散体制への致命的な打撃
・北朝鮮の核武装は、核不拡散条約(NPT)体制に対する大きな挑戦である。本来、NPTは核兵器の水平拡散を防ぐための重要な枠組みであるが、特定の国への二重基準の適用は、その正当性と実効性を根底から揺るがした。
・北朝鮮は、この二重基準を「堂々と突破」することで、国際社会に対して「核を持つことでしか、米国からの一方的な圧力や体制転覆の脅威から身を守れない」というメッセージを発した。これは、今後、核兵器開発を検討する他の国々に対し、「非難されても、最終的に核を持てば交渉のテーブルにつける」という危険な前例を与えかねないのだ。
結論として、北朝鮮が米国にとって脅威となる核・ミサイル能力を獲得してしまった背景には、米国の掲げる核不拡散の原則における二重基準、そして「弱い者いじめ」ともとれる一方的な圧力外交が深く関与しているのである。
この結果は、国際関係における公平性と対話の重要性を改めて浮き彫りにしている。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
Live: Missiles slam Israeli territory, Iranian military sites bombed as conflict escalates FRANCE24 2025.06.14
https://www.france24.com/en/middle-east/20250614-tehran-retaliates-with-missile-strikes-as-israel-and-iran-launch-tit-for-tat-attacks?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250614&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D