三つの国の協力、成か ― 2023年09月08日 00:05
韓国の大統領であるユン・ソギョル(Yoon Suk-yeol)が、東アジア地域の緊張を緩和するために、韓国、日本、中国の協力を再び促進しようとする計画について述べたものである。
ユン・ソギョル大統領は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議で、韓国、日本、中国の協力を再度促進し、地域の緊張を和らげる努力をする予定だ。これは、最近の米国、日本、韓国のキャンプ・デビッド首脳会議や、日本が海に放射能汚染水を排出したことにより、中国、日本、韓国の三国間の協議が冷却化していると報じられている。
ユン大統領は、三つの国の協力が復活すると、ASEANプラススリー(ASEANと中国、日本、韓国の協力)が強化され、ASEANの中心性が高まると述べた。
韓国は現在、三国間サミットの議長を務めており、三国間協力はこれまで三国に大きな利益をもたらし、アジア経済を指導する重要な意義を持っている。
しかし、日本と韓国の関係には深刻な矛盾があり、米国による「ハネムーン」の状態であり、韓国の国益には合致していないとする意見もある。
三国間協力の再開は、三国間の状況を直ちに変えるものではないが、米国の意図に対抗し、三つの国を対立させる試みは成功しないことを示すシグナルとはなるだろう。
三つの国は歴史的な不和と実際の違いを抱えているが、他のメカニズムを通じてこれらの違いを調整し、有利な要因を増幅させることができる。
三国間の経済・貿易協力は、東北アジアの安定とアジアの繁栄に寄与し、世界経済と貿易を促進する大きな役割を果たす。
三国間協力の再開は、若者の観光、文化、科学技術、スポーツなどの分野での交流を促進し、三つの国の人々の友好を高めることにも役立つ。
東アジア地域における国際関係と協力の動向に関する重要な情報を提供している。
【要点】
中日韓(CJS)三国協力メカニズムを復活させようとする韓国大統領の尹錫悦大統領の取り組みについてのものである。このメカニズムは、歴史紛争、領土に関する意見の相違、米中対立などの多くの要因により、2017年以来停滞している。
このメカニズムは、三国間の歴史的対立、日本の核汚染水の海洋投棄、最近の米国、日本、韓国によるキャンプデービッド・サミットなど、多くの要因により近年行き詰まっている。
尹氏は、三国間協力の再開は三国すべてにとって有益であり、地域の緊張緩和に役立つと信じていると述べた。また、この協力はアジア経済の舵取りにとって非常に重要であると指摘した。
専門家らは、3カ国協議の再開には3カ国すべての誠意と行動が必要になると述べた。また、最近のキャンプデービッド・サミットがこのメカニズムにとって最大の障害となる可能性があり、日本と韓国は誠意を示す必要があるとも述べた。
課題はあるものの、専門家らは三国間協力の再開は地域にとって前向きな展開になると信じている。彼らは、これは北東アジア諸国を互いに戦わせようとする米国の意図が成功しないというシグナルを送ることになるだろうと述べた。また、三国間の経済貿易協力を促進し、北東アジアの安定とアジアの繁栄に有益であるとも述べた。
さらに、三国間協力の再開は、観光、文化、科学技術、スポーツ、その他の分野における若者間の交流も促進するだろう。これは、文化交流の環境を改善し、三国の人々の親善を促進するのに役立つだろう。
中国、日本、韓国の三国間協力の再開が課題と機会の両方を伴う複雑な問題であることを示唆している。しかし、専門家らは、これらの課題を克服し、協力によってもたらされる利益を達成するために協力することが、3カ国すべてにとって最大の利益になると信じている。
・CJS 協力は相互に有益なメカニズムであり、発足以来3か国すべてに多大な利益をもたらしてきた。
・現在の日韓の「蜜月」は米国によって強制されたものであり、両国には多くの根深い矛盾がある。
・アナリストらは、中国封じ込めのために米国と協力することは韓国の国益にならないと考えている。
・CJSメカニズムの再開は、米国や日本との関係強化を目指す韓国の取り組みによってもたらされるリスクを軽減する可能性がある。
・最近のキャンプデービッドサミットは、CJSの協力メカニズムにとって最大の障害となる可能性がある。
・3カ国は誠意を示し、メカニズムを復活させるための具体的な行動を取る必要がある。
・北東アジアの平和と安定にとって、CJSの協力は依然として重要である。
・この協力は北東アジアの経済成長促進に役立つ可能性がある。
・この協力は三国間の関係改善にも役立つ可能性がある。
【桃源寸評】
例によって嫉妬の塊のような米国、日韓を強制的に纏め上げ、対中の要塞化としている。
しかし、一衣帯水の地に在る三国は、三つ巴が二つなっても、結局はまとまるのが自然の理と言うものであろう。二千年以上の交流が高々二百五十年の歴史しかない国に寸断され、籠絡されていたのでは余りにも情けない。
確かに、余りにも日韓は歴史を捨て於て急激な接近を試みているが、日韓各国民の思いは置き去りにできない。
云われるように蜜月かも知れないが、ハネムーンベビーを望むのは無理かもしれない。
引用・参照・底本
「Yoon calls for China-Japan-SK cooperation reboot」 GT 2023.09.06
ユン・ソギョル大統領は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議で、韓国、日本、中国の協力を再度促進し、地域の緊張を和らげる努力をする予定だ。これは、最近の米国、日本、韓国のキャンプ・デビッド首脳会議や、日本が海に放射能汚染水を排出したことにより、中国、日本、韓国の三国間の協議が冷却化していると報じられている。
ユン大統領は、三つの国の協力が復活すると、ASEANプラススリー(ASEANと中国、日本、韓国の協力)が強化され、ASEANの中心性が高まると述べた。
韓国は現在、三国間サミットの議長を務めており、三国間協力はこれまで三国に大きな利益をもたらし、アジア経済を指導する重要な意義を持っている。
しかし、日本と韓国の関係には深刻な矛盾があり、米国による「ハネムーン」の状態であり、韓国の国益には合致していないとする意見もある。
三国間協力の再開は、三国間の状況を直ちに変えるものではないが、米国の意図に対抗し、三つの国を対立させる試みは成功しないことを示すシグナルとはなるだろう。
三つの国は歴史的な不和と実際の違いを抱えているが、他のメカニズムを通じてこれらの違いを調整し、有利な要因を増幅させることができる。
三国間の経済・貿易協力は、東北アジアの安定とアジアの繁栄に寄与し、世界経済と貿易を促進する大きな役割を果たす。
三国間協力の再開は、若者の観光、文化、科学技術、スポーツなどの分野での交流を促進し、三つの国の人々の友好を高めることにも役立つ。
東アジア地域における国際関係と協力の動向に関する重要な情報を提供している。
【要点】
中日韓(CJS)三国協力メカニズムを復活させようとする韓国大統領の尹錫悦大統領の取り組みについてのものである。このメカニズムは、歴史紛争、領土に関する意見の相違、米中対立などの多くの要因により、2017年以来停滞している。
このメカニズムは、三国間の歴史的対立、日本の核汚染水の海洋投棄、最近の米国、日本、韓国によるキャンプデービッド・サミットなど、多くの要因により近年行き詰まっている。
尹氏は、三国間協力の再開は三国すべてにとって有益であり、地域の緊張緩和に役立つと信じていると述べた。また、この協力はアジア経済の舵取りにとって非常に重要であると指摘した。
専門家らは、3カ国協議の再開には3カ国すべての誠意と行動が必要になると述べた。また、最近のキャンプデービッド・サミットがこのメカニズムにとって最大の障害となる可能性があり、日本と韓国は誠意を示す必要があるとも述べた。
課題はあるものの、専門家らは三国間協力の再開は地域にとって前向きな展開になると信じている。彼らは、これは北東アジア諸国を互いに戦わせようとする米国の意図が成功しないというシグナルを送ることになるだろうと述べた。また、三国間の経済貿易協力を促進し、北東アジアの安定とアジアの繁栄に有益であるとも述べた。
さらに、三国間協力の再開は、観光、文化、科学技術、スポーツ、その他の分野における若者間の交流も促進するだろう。これは、文化交流の環境を改善し、三国の人々の親善を促進するのに役立つだろう。
中国、日本、韓国の三国間協力の再開が課題と機会の両方を伴う複雑な問題であることを示唆している。しかし、専門家らは、これらの課題を克服し、協力によってもたらされる利益を達成するために協力することが、3カ国すべてにとって最大の利益になると信じている。
・CJS 協力は相互に有益なメカニズムであり、発足以来3か国すべてに多大な利益をもたらしてきた。
・現在の日韓の「蜜月」は米国によって強制されたものであり、両国には多くの根深い矛盾がある。
・アナリストらは、中国封じ込めのために米国と協力することは韓国の国益にならないと考えている。
・CJSメカニズムの再開は、米国や日本との関係強化を目指す韓国の取り組みによってもたらされるリスクを軽減する可能性がある。
・最近のキャンプデービッドサミットは、CJSの協力メカニズムにとって最大の障害となる可能性がある。
・3カ国は誠意を示し、メカニズムを復活させるための具体的な行動を取る必要がある。
・北東アジアの平和と安定にとって、CJSの協力は依然として重要である。
・この協力は北東アジアの経済成長促進に役立つ可能性がある。
・この協力は三国間の関係改善にも役立つ可能性がある。
【桃源寸評】
例によって嫉妬の塊のような米国、日韓を強制的に纏め上げ、対中の要塞化としている。
しかし、一衣帯水の地に在る三国は、三つ巴が二つなっても、結局はまとまるのが自然の理と言うものであろう。二千年以上の交流が高々二百五十年の歴史しかない国に寸断され、籠絡されていたのでは余りにも情けない。
確かに、余りにも日韓は歴史を捨て於て急激な接近を試みているが、日韓各国民の思いは置き去りにできない。
云われるように蜜月かも知れないが、ハネムーンベビーを望むのは無理かもしれない。
引用・参照・底本
「Yoon calls for China-Japan-SK cooperation reboot」 GT 2023.09.06
EUは米国の植民地 ― 2023年09月08日 15:46
2016年7月に公開されたジェームズ・コーベット(James Corbett)によるビデオのトランスクリプトです。ビデオでは、ミシェル・ショッサドフスキー(Michel Chossudovsky)との対話が行われ、欧州連合(EU)に関する歴史的な背景と、そのEUがアメリカの支配下にあるという主張が探求されている。
2016年7月、イギリスでの「BREXIT」(註1)国民投票の結果を受け、EUに関する疑問が広がっていた。ビデオの目的は、EUの真の起源とその歴史的背景を明らかにし、EU支配に対する世界史的に重要な反帝国主義運動を紹介することである。
第二次世界大戦後、アメリカによるマーシャルプランが実施され、西ヨーロッパにおけるアメリカの経済的影響力が強化された。冷戦の始まりとともに、西ヨーロッパとソ連圏の間に経済的な障壁が設けられ、アイアンカーテン(註2)(経済的障壁)が形成された。欧州共同体(EC)(註3)の創設は、冷戦の一環としてアメリカの間接的なイニシアティブであり、NATO(註4)と一致する傾向があった。
冷戦終結後、旧ソ連圏の国々がEUに加盟し、それによってロシアとの経済関係を制約し、アメリカの支配を強化する方針が取られた。マーストリヒト条約(1992年)(註5)は、ネオリベラル(註6)経済政策をEUに組み込み、各加盟国に内部資源を活用するための通貨政策の制約を課した。ユーロ圏の成立により、ヨーロッパ中央銀行が各加盟国の通貨政策を制御し、借金が増加する状況が生じた。
EUの経済的攻撃とロシア: EUの政策はロシアへの経済的攻撃であり、ロシアが他国との貿易協定を結ぶことを阻止している。EUは制裁措置を取り、加盟国を経済的に困難な状況に追い込んでいる。EUの機関はワシントン・コンセンサス(経済政策の枠組み)(註7)を採用し、IMFや世界銀行のアクションを模倣している。
EUのアメリカ支配とTTIP(註8): EUとアメリカはTTIP(大西洋貿易投資パートナーシップ)に向けた取り組みを行い、これはアメリカの帝国主義的プロジェクトの一環であると主張されている。TTIPはEU加盟国をアメリカの経済支配下に置くことを意味し、ウォールストリートの影響(註9)を受けているとされる。
BREXITと反EU運動: BREXIT投票とEUからの脱退を支持する運動は、EUに対する反帝国主義運動と見なされており、単なる排他的な右翼運動ではないと主張されている。EUに対する異なる視点が存在し、国民国家の経済的および社会的主権を守るための動きと、EUを民主化し、連帯を構築する動きがある。このビデオの議論は、EUに対する異なる視点とその影響について詳細に探求しており、EUとアメリカの経済的な結びつきに焦点を当てている。
【要点】
欧州連合の歴史と起源、および米国およびロシアとの関係について説明している。
講演者のミシェル・チョスドフスキーは、欧州連合はもともとソ連を孤立させるための冷戦プロジェクトとして米国によって設立されたと主張する。また、EUは現在、ロシアを経済的に弱体化させるために米国によって利用されているとも主張している。
チョスドフスキーは、EUの歴史をマーシャル・プラン(註10)まで遡る。マーシャル・プランは、第二次世界大戦後、米国が資金提供したヨーロッパの経済復興プログラムであった。マーシャル・プランは米国製品の市場を創設し、ヨーロッパでの共産主義の蔓延を防ぐために設計されたと主張する。
次に講演者は、1957年に署名され、欧州経済共同体(EEC)を設立したローマ条約(註11)について説明する。チョスドフスキーは、EECはソ連を孤立させる米国の戦略のさらなる一歩であったと主張する。また、EECは自由貿易と経済統合を促進するために設計されており、それが米国企業に利益をもたらすと主張している。
次に講演者は、1992 年に署名され欧州連合(EU)を創設したマーストリヒト条約について説明する。 チョスドフスキーは、マーストリヒト条約は新自由主義経済政策をEUにさらに埋め込み、多くのEU国民に経済緊縮と苦難をもたらしたと主張している。また、マーストリヒト条約によりEU諸国がロシアと貿易することがより困難になったと主張している。
チョスドフスキーはEUとロシアの関係について語る。 同氏は、EUは現在、ロシアを経済的に弱体化させるために米国によって利用されていると主張する。また、EUの対ロシア制裁は一般のロシア国民に損害を与えており、ロシア政府を弱体化させるという望ましい効果は得られていないと主張している。
チョスドフスキーは、EUはソ連を孤立させ他国との貿易を阻止する冷戦プロジェクトとして米国によって創設されたと主張している。また、1992年に署名されたマーストリヒト条約では、EUの協定条項に新自由主義的経済政策の視点が組み込まれたとも述べている。自由市場と規制緩和を重視するこの政策的観点は、多くのEU加盟国の貧困をもたらした。
チョスドフスキー氏はまた、EUは現在、西側諸国の軍事同盟であるNATOと合併しつつあると主張している。この合併は、ロシアを孤立させ、ロシアが強力な経済的・政治的勢力になるのを防ぐという米国の広範な戦略の一環である。
コーベット氏はチョスドフスキー氏の分析に同意し、EUは本質的に「アメリカの植民地」であると付け加えた。米国はNATOの拡大やロシアへの制裁など、自国の利益を促進するためにEUを利用してきたと主張している。
チョスドフスキーは、EUは米国帝国主義の道具であり、ロシアを封じ込め、欧州における米国の利益を促進するために利用されていると主張する。EUは平和と協力のための力ではなく、むしろ紛争と不安定の根源であると信じている。
このビデオは、EU の支配に反対する運動の高まりについて議論して終わる。コーベットは、この運動は「世界史的に重要な反帝国運動」であると主張する。彼は、EUは大衆の動員によってのみ解体できると信じている。
チョスドフスキー氏のEU分析は物議を醸しているが、世界経済におけるEUの役割や米国、ロシアとの関係について重要な疑問を投げかけている。
チョスドフスキーの見解には議論の余地があるが、検討する価値はある。EU は長い歴史を持つ複雑な組織である。情報に基づいて将来について意思決定を行うためには、その起源と目標を理解することが重要である。
・EU は、自由貿易と市場開放を促進することを目的とした新自由主義プロジェクトである。これは多くのヨーロッパ諸国の産業空洞化と不平等の拡大につながった。
・EUは、労働者階級を犠牲にして富裕層や権力者に利益をもたらすことを目的とした「新自由主義プロジェクト」である。
・EUは官僚主義の悪夢だ。7万以上の規制があり、企業の運営が困難になっている。
・EUは非民主的であり、EUが統治する国民に対して説明責任を果たしていない。
・EUは納税者の負担となっている。予算は1兆ユーロを超え、加盟国から資金提供を受けている。
・EUは国家主権と民族自決に対する脅威である。
・EUはアメリカ帝国主義の道具だ。
【桃源寸評】
現在のウクライナ戦争の淵源を垣間見ることのできる短編ではないか。米国の"遣り口"も同時に知れる。
自らの利を謀る米国には知謀者がよくいるものだ。しかし、最近では、<策士策に溺れる>ことが多い。
そう、米国が『China 2049』で深読み(?)しているように、中国の奥の院は、『兵法三十六計』や『孫子』等の兵法の"隠喩"によって動いてると思い込んでいるようだ。其のうえで、米国は中国の百年マラソンに並走する積りらしい。米国は確実に自滅する。
この頃の中国を観察していると、米国の自滅策を"協力"、"ウインウイン"で寧ろ助けようと手を差し伸べている。
が、迷妄なる書物を実体化して、米国は別なルートで、孤独のマラソンを強いられているのかも知れない。
それこそ、「行千里而不勞者、行於無人之地也」(『孫子』金谷治訳注 岩波文庫 76頁)の兵法に陥れられというより、自ら罠に嵌っている。
因って「敵の運命の主宰者」となるのは中国となろう。
余談として、インドもやがて中国並みになると、米国の覇権の嫉妬に悩まされることになる。インドには戦う心を養う兵法の古典はあるのだろうか。
(註1)
BREXIT(ブレグジット)は、「British Exit」の略語で、イギリスが欧州連合(EU)からの脱退を決定し、実行した出来事を指す。
背景: BREXITの背景には、イギリスがEUの一員として加盟国として約45年間過ごした後、EUに対する独自の関心や主権を強調する動きがあった。EUに参加することで、イギリスは経済的な利益や市場アクセスを得た一方、EUの規制や決定に対する制約を受けることに不満が生まれた。
2016年のEU離脱国民投票: 2016年6月23日、イギリスはEU離脱に賛成または反対する国民投票(通称:EU離脱国民投票)を実施した。国民投票の結果、離脱賛成派(「Leave」派)が51.9%の支持を受け、離脱反対派(「Remain」派)を上回った。
離脱手続き: 国民投票の結果を受けて、イギリス政府はEUからの正式な離脱手続きを開始した。これに基づき、2017年に「リスボン条約第50条」を発動し、EUからの脱退プロセスを開始した。離脱プロセスは、交渉、合意、議会の承認などを含む複雑な一連のステップから成る。
BREXIT合意と移行期間: BREXIT合意は、イギリスとEUの間で離脱条件を規定した文書で、2019年に合意に達した。合意には離脱後の移行期間が含まれ、イギリスはEUの規則と関税連合に従いつつ、新しい関係の交渉が進行する期間が設けられた。
2020年の正式離脱: 2020年1月31日、イギリスは正式にEUから離脱し、EUの加盟国としての地位を失った。これにより、EUとの関係は新たな枠組みの下で再構築されることとなった。
新しい関係の交渉: 離脱後、イギリスとEUは新しい貿易関係や協力枠組みを交渉し、合意を目指した。2020年末にはEUとの包括的な協定(EU-UK Trade and Cooperation Agreement)が締結され、新しい関係が確立された。しかし、一部の問題(特にアイルランドとの国境問題)は未解決のままとなった。
BREXITは国際的な注目を集め、イギリス国内でも論争の的となった。離脱にはさまざまな経済、政治、社会的な影響が伴い、イギリスとEUの関係が新たな段階に入りった。今後は、両者の協力や交渉が継続され、新しい関係の詳細が確立されることが期待されている。
(註2)
「アイアンカーテン」(Iron Curtain)は、冷戦時代に使用された言葉で、主に1945年から1989年までの期間における東西冷戦の際の政治的および地理的な分断を指す。この用語は、ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)によって有名になった。
アイアンカーテンは、西ヨーロッパと東ヨーロッパおよびソビエト連邦との間の厳格な政治的および軍事的な障壁を表現するために使用された。この障壁は、東ヨーロッパ諸国や東ドイツ、チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ユーゴスラビアなど、ソビエト連邦およびその支配下の共産主義国家と、西ヨーロッパ諸国との間に存在した。
アイアンカーテンの主要な要素は次のとおり。
軍事的分断: 東側はソビエト連邦の影響下にあり、ソ連が支配するワルシャワ条約機構(註12)に加盟し、西側はアメリカ合衆国を中心とする北大西洋条約機構(NATO)に参加していました。両側は相互に軍事的な脅威と見なし合った。
政治的分断: 東側諸国は共産主義の政権下にあり、言論の自由や選挙の自由が制約されていた。一方、西側諸国は民主主義と市場経済を採用し、政治的多様性が許容されていた。
ベルリンの壁: ドイツのベルリン市内に建設されたベルリンの壁は、東ベルリンと西ベルリンを分断する象徴的な壁であり、東西冷戦の象徴となった。この壁は1961年に建設され、1989年に崩壊した。
情報の遮断: アイアンカーテンの下では、東側と西側の国々は情報の交換や文化的な接触が制限された。西側のメディアや文化が東側にはアクセスできず、逆もまた然りであった。
アイアンカーテンは冷戦の象徴的な要素であり、東西陣営の対立と敵対関係を示すものであった。この分断は冷戦終結後に崩壊し、東ヨーロッパ諸国が共産主義政権から脱却し、民主主義と市場経済を採用する動きが加速した。
(註3)
EC(European Community)は、かつて存在した欧州連合(EU)の前身となる欧州統合の一部であった。ECは、1957年に設立され、その後、EUの一部として発展した。
設立: ECは、1957年にローマ条約(Treaties of Rome)に基づいて設立された。この条約は、欧州経済共同体(EEC)と欧州原子力共同体(EURATOM)の2つの主要なコミュニティを設立した。EECは、市場の統合と経済的な協力を推進することを目的とし、当初の6つの創設メンバーはベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、西ドイツであった。
目的: ECの主な目的は、メンバー国間での経済的な壁を取り扱い、共通市場の構築を促進することであった。これにより、財・サービス・資本・労働力の自由な移動が実現した。カスタムユニオンの設立と共に、関税や貿易の障壁を取り扱い、メンバー国間の貿易を促進した。
発展: ECは、設立後も拡大と発展を続け、新たなメンバー国の加盟が行われた。英国(1973年)、ギリシャ(1981年)、スペインとポルトガル(1986年)などが後に加盟した。ECはまた、政治的な協力と共通外交政策の構築にも取り組んだ。これにより、経済的な一体性に政治的な次元が加わった。
EUへの移行: ECはその後、欧州連合(EU)へと移行した。この移行は1993年のマーストリヒト条約(Maastricht Treaty)によって実現し、EUはより広範な政治的な統合を追求した。EUは単一通貨であるユーロ(Euro)を導入し、共通の外交政策や安全保障政策を開発した。ECからEUへの移行は、ヨーロッパ統合の進化と拡大を示すものであり、現在のEUは政治的・経済的な協力の一大組織として、さまざまな政策分野で協力を推進している。ECはその基盤を提供し、EUの発展に寄与した。
(註4)
NATO(North Atlantic Treaty Organization)は、北大西洋条約機構として知られ、西側諸国による軍事同盟で、冷戦時代から現代にかけて存在している。
設立と目的: NATOは1949年に設立された。その設立には、西側諸国がソビエト連邦および共産主義諸国に対抗するための安全保障協力の必要性が背景にあった。主な目的は、メンバー国の相互防衛と安全保障を確保することで、攻撃された場合、他のメンバー国が集団的自衛権を行使することを規定している。この原則はNATO憲章の第5条に明記されている。
メンバーシップ: NATOの初期メンバーは、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、イタリア、ポルトガル、およびノルウェーであった。その後、さらに多くの国が加盟した。現在、NATOには30の加盟国が含まれており、アルバニア、クロアチア、モンテネグロ、北マケドニアが最新の加盟国である。
活動: NATOの活動は、軍事的な防衛と安全保障を中心に展開されいる。これには、共同訓練、共同演習、軍事作戦の実施、軍備管理、軍事戦略の策定などが含まれる。冷戦時代には、NATOはソ連との対立において西側諸国の統一を確保し、戦略核兵器の配置などの軍事的な対抗措置を取った。
冷戦後: 冷戦の終結後、NATOは新たな役割を模索し、旧東側諸国とのパートナーシップを築きいた。これにより、冷戦時代に存在した軍事的対立が和らいだ。2001年には、NATOはアフガニスタンにおける対テロ作戦「ISAF」を展開し、多国籍軍を派遣した。また、NATOはバルカン半島での紛争解決、安定化、および和平維持活動にも参加している。
ロール・アンド・ミッション: NATOのミッションは、集団的自衛権の確保、安全保障の維持、民主主義と法の支持、国際的な危機対応、紛争予防、軍備管理など、幅広い領域にわたる。また、NATOは国際連合(UN)と協力し、国際的な平和維持任務や紛争解決にも貢献している。NATOは、西側諸国の安全保障と協力を確保するための重要な国際組織であり、冷戦時代から現代にかけて、国際的な安定と平和維持に貢献している。
(註5)
マーストリヒト条約(Maastricht Treaty)は、ヨーロッパ統合の重要な基盤を提供する国際条約で、正式には「ヨーロッパ連合の設立に関する条約」とも呼ばれる。この条約は、1991年にオランダのマーストリヒトで署名され、1993年に発効した。
背景: マーストリヒト条約は、ヨーロッパ共同体(EC)の進化と拡大を反映するものでした。ECは1957年のローマ条約によって設立され、その後、経済統合の一環として共通市場の構築や通貨統合(ユーロの導入)の計画が進行していた。
条約の主要な要点: マーストリヒト条約は、ECを発展させ、欧州連合(EU)の設立につながるものであった。
3つの柱(Pillars): 第1柱は共通市場と経済政策に関連し、第2柱は共通外交・安全保障政策に関連し、第3柱は司法・内務協力に関連している。
ユーロ通貨圏の設立: マーストリヒト条約は、ユーロ通貨圏(通貨統合)の導入を規定し、ユーロの発行を推進した。
共通外交・安全保障政策(CFSP): EUは共通外交政策を確立し、国際的な問題に対する協力を深めた。
ヨーロッパ市民権: EU市民に対する基本的な権利と自由を確保し、市民権を強化した。
発効と影響: マーストリヒト条約は1993年に発効し、EUの形成と発展に重要な役割を果たした。
ユーロ通貨圏は1999年にスタートし、共通通貨ユーロは2002年に導入された。条約の発効により、EUは政治的な一体性を強化し、国際的な協力、共通外交政策、内部市場の発展などで大きな成功を収めた。マーストリヒト条約は、EUの発展において重要なステップであり、ヨーロッパ統合の深化と拡大を推進した。それ以降、EUはさらに多くの国を加盟国として迎え入れ、経済的、政治的な協力を強化している。
(註6)
ネオリベラリズム(Neoliberalism)は、経済学および政治哲学の観点から理解される一連の政治的および経済的なアイデアと政策の体系である。
自由市場経済: ネオリベラリズムは、自由市場経済を重視する。つまり、市場の競争と供給と需要の自然なメカニズムを重視し、政府の干渉を最小限に抑えるべきだと主張する。このアプローチにより、個人の自己利益と競争によって市場が効率的に機能すると信じられている。
小さな政府: ネオリベラリズムは、政府の規模と干渉を削減し、税制を簡素化し、規制を緩和することを提唱する。これにより、市場への介入を最小限に抑え、個人の経済的自由を最大化しようとする。社会保障プログラムや公共サービスの民営化も一般的なネオリベラリズムの政策の一部である。
個人主義と自己責任: ネオリベラリズムは、個人主義と自己責任を重視する。個人は自分自身の成功や失敗に責任を持つべきだと考えられており、個人の自己利益が経済的な成長と社会的な繁栄をもたらすとされている。社会的な不平等や貧困は、個人の能力や努力に起因するものとみなされることがある。
自由貿易: ネオリベラリズムは、国際的な自由貿易を奨励し、貿易の障壁や関税を撤廃することを支持する。これにより、市場へのアクセスが向上し、経済成長が促進されると考えられている。
財政規律: ネオリベラリズムは、財政規律を重視し、政府の支出を制約し、財政赤字を最小限に抑えることを奨励する。これにより、インフレーションや財政危機を回避し、経済の安定を維持しようとする。ネオリベラリズムは、1970年代から1980年代にかけて世界的に台頭し、多くの国で実施された。一部では経済成長と効率性の向上をもたらしたが、一方で社会的な不平等や環境への影響についての批判もある。ネオリベラリズムには賛否両論があり、その影響は国や地域によって異なる。
(註7)
ワシントン・コンセンサス(Washington Consensus)は、1989年に経済学者ジョン・ウィリアムソン(John Williamson)によって提唱された経済政策の枠組みで、新自由主義的な経済政策と改革の一連の原則や方針を指す。この用語は、ワシントンD.C.に本部がある国際金融機関(国際通貨基金(IMF)や世界銀行)での経済政策議論において頻繁に使用されることから名付けられた。
ワシントン・コンセンサスの主要な原則と方針には以下の要点が含まれる。
財政規律(Fiscal Discipline): 財政赤字を抑制し、国の債務を管理することを奨励する。政府支出を制約し、インフレーションを抑えるために財政政策を緊縮化させることが含まれる。
市場指向型経済(Market-Oriented Economic Policies): 市場経済を奨励し、政府の干渉を最小限に抑えることを提唱する。民営化や自由な市場アクセスを推進し、競争を促進する。
開放的な貿易(Open Trade): 国際的な自由貿易を奨励し、貿易障壁や関税を削減・撤廃することを支持する。外国からの投資と貿易を促進し、市場の拡大を図る。
金融自由化(Financial Liberalization): 金融セクターを自由化し、外国からの資本流入と金融サービスの提供を増やすことを目指す。
為替レートの安定(Exchange Rate Stability): 安定した為替レート制度を維持し、急激な通貨の切り下げや切り上げを防ぎ、外国からの投資を引き付けることを支持する。
科学技術の向上(Improvement in Property Rights): 知的財産権や財産権の強化を通じて、イノベーションと投資を奨励する。ワシントン・コンセンサスは、1990年代から2000年代初頭にかけて、多くの発展途上国に対する経済政策の指針として広く採用された。しかし、一部の批評家は、この政策枠組みが貧困削減や不平等の増加などの社会的な問題を引き起こす可能性があると主張した。また、2008年の国際金融危機以降、一部の国はワシントン・コンセンサスからの逸脱を試み、独自の経済政策を採用している。
(註8)
TTIP(Transatlantic Trade and Investment Partnership)は、アメリカ合衆国とヨーロッパ連合(EU)の間で交渉された広範な自由貿易協定の略称である。この協定は、両者の経済関係を深化させ、貿易障壁を撤廃し、経済成長を促進することを目的としている。
目的: TTIPの主要な目的は、アメリカとEU間の貿易および投資関係を強化し、相互の市場へのアクセスを拡大することである。これにより、商品とサービスの交流が増加し、経済成長が促進されると期待された。
主要な要点:
・市場アクセス: TTIPは、商品やサービスの市場アクセスを向上させ、関税を削減・撤廃し、非関税障壁を緩和することを含む。これにより、企業は市場へのアクセスが容易になり、貿易が促進された。
・規制の調和: TTIPは規制の調和を通じて、製品の標準化や規制の一貫性を図った。これにより、企業は製品やサービスを異なる市場に導入しやすくなった。
・投資保護: 協定は外国投資家の権利を保護し、投資家対国家(ISDS)紛争解決メカニズムを設けた。これは、外国企業が不当な取り扱いに対して国を訴える権利を確保するものでった。
批判と議論: TTIPは一部の批評家から環境、労働権、食品安全性、公共サービスの民営化などの懸念を引き起こした。彼らは、協定が企業の利益を優先し、規制を削減しすぎる可能性があると主張した。TTIPの交渉は非常に秘密裏に行われ、透明性に欠けるとの批判もあった。一部の国や地域では、TTIPに反対するデモや運動が盛んになった。
結末: TTIPの交渉は長引き、最終的には中断された。一部の要因には政治的な対立や交渉の複雑さが影響した。代わりに、EUはカナダとのCETA(Comprehensive Economic and Trade Agreement)や、EUと日本とのEPA(経済連携協定)など、他の自由貿易協定に焦点を移した。TTIPは国際的な貿易政策における重要な議題であり、自由貿易と規制のバランス、および民間企業と国家の権利との間での対立を浮き彫りにした。その結果、国際的な自由貿易協定に関する議論と交渉が進行中であり、異なるスタンスや利益を持つ関係者間での対話が継続されている。
(註9)
ウォールストリートの影響は、主にアメリカ合衆国の経済、金融市場、政治、および世界経済に及ぼす影響を指す。ウォールストリートは、ニューヨーク市マンハッタンにある金融機関や証券取引所の集中地であり、アメリカの金融業界の中心である。
金融市場への影響: ウォールストリートは、株式市場、債券市場、外国為替市場など、さまざまな金融市場に影響を及ぼす。ウォールストリートの出来事やトレンドは、これらの市場の動向に影響を与え、市場参加者に影響を与えることがある。
企業と投資銀行への影響: ウォールストリートには多くの大手企業、銀行、証券会社が拠点を置いており、これらの企業は世界的なビジネスおよび金融取引に影響を与えている。ウォールストリートの意思決定や金融政策は、企業の成長戦略や資本調達に影響を及ぼす。
政治への影響: ウォールストリートは政治への多大な影響力を持っており、政治家や政府機関に対してロビー活動や政治献金を通じて影響を行使する。金融規制、税制政策、財政政策などの政策決定に対してウォールストリートの利益が考慮されることがある。
世界経済への影響: ウォールストリートの金融機関や国際的な金融機関(国際通貨基金(IMF)や世界銀行など)は、世界経済に大きな影響を与える。ウォールストリートの金融政策やリーマン・ブラザーズのような金融危機は、世界経済に波及効果をもたらすことがある。
富の分配への影響: ウォールストリートの成功は、個人や企業の富の増加につながることがある。一方で、貧困や不平等が拡大する可能性もあり、富の分配に関する議論を巻き起こすことがある。ウォールストリートの影響は複雑で多面的であり、金融セクターと経済の発展に対するポジティブな面と、不安定性や不平等の増大といったネガティブな面が存在する。ウォールストリートの動向と政策は、国際的な金融システム全体に影響を及ぼし、世界中の人々に影響を与えている。
(註10)
マーシャルプラン(Marshall Plan)は、第二次世界大戦後のヨーロッパの復興を支援するためにアメリカ合衆国が提供した経済的な支援プログラムである。正式には「欧州復興計画」(European Recovery Program)とも呼ばれる。
背景: 第二次世界大戦の終結後、ヨーロッパは壊滅的な状況にあった。戦争による破壊、経済的な混乱、食料不足、避難民の問題などが複合的に影響し、多くのヨーロッパ諸国が困難な復興課題に直面していた。アメリカは冷戦の構図の中でソビエト連邦との対立を考慮し、ヨーロッパに対する経済的支援を通じて安定を促進し、共産主義の拡大を防ぐ狙いがあった。
マーシャルプランの提案: 1947年6月5日、アメリカの国務長官であるジョージ・C・マーシャル(George C. Marshall)がハーバード大学で行った演説で、ヨーロッパの復興支援を提案した。この提案は「マーシャルプラン」として知られるようになった。マーシャルは、ヨーロッパ諸国が自身の復興計画を立て、アメリカからの経済的援助を受け取ることを提案した。
実施: マーシャルプランは1948年から1952年までの期間に実施された。アメリカ政府は約130億ドル(当時の通貨で)を提供し、これにヨーロッパ各国が取り組む自身の復興プロジェクトを支援した。援助は食糧、燃料、原材料、機械装置などの形で提供され、ヨーロッパの産業やインフラの再建を支援した。マーシャルプランはヨーロッパの経済回復に大きく寄与し、多くの国で生産力が向上し、失業率が減少した。
影響: マーシャルプランはヨーロッパ諸国の経済的復興に成功し、西ヨーロッパ諸国が共産主義の拡大を防ぎ、民主主義体制を維持するのに役立った。このプランは冷戦時代の西側諸国とソ連との対立の一環として位置づけられ、西側陣営の結束を強化した。マーシャルプランはアメリカの対外政策の重要な一環であり、ヨーロッパの安定と復興に貢献し、冷戦時代の国際政治に大きな影響を与えた。
(註11)
ローマ条約(Treaty of Rome)は、1957年に署名された2つの主要な国際条約で、ヨーロッパ経済共同体(European Economic Community, EEC)とヨーロッパ原子力共同体(European Atomic Energy Community, Euratom)を設立した。これらの条約は、欧州共同体(European Communities)の基礎を築き、後の欧州連合(EU)の発展の礎となった。
条約の背景: 第二次世界大戦後、ヨーロッパは荒廃し、経済的に困難な時期に直面していた。多くの政治家や指導者は、ヨーロッパ諸国間の協力を通じて経済復興と安定を実現し、将来的な紛争を防ぐ必要性を認識した。
ヨーロッパ経済共同体(EEC): ローマ条約の一部として設立されたEECは、共通市場の創設を目指すものであった。これにより、EECの加盟国間で商品、サービス、労働力、資本の自由な移動が促進され、関税および貿易障壁が撤廃された。
ヨーロッパ原子力共同体(Euratom): Euratomは原子力エネルギーの平和利用を奨励し、研究および原子力材料の供給を調整することを目的とした。この共同体は、核燃料サイクルの安全性と非拡散を管理した。
4つの自由:
ローマ条約に基づくEECは、4つの自由の原則を確立した。
・財貨の自由: 加盟国間での関税撤廃と自由な貿易
・人の自由: 労働力の自由な移動
・サービスの自由: サービスの自由な提供
・資本の自由: 資本の自由な移動
欧州連合への展開: ローマ条約によって設立されたEECとEuratomは、後のヨーロッパ連合(EU)の基盤となった。その後、EUはさらに政治的、経済的な統合を進め、共通通貨であるユーロを導入し、多くの新しい加盟国を受け入れるなど、発展を遂げた。ローマ条約はヨーロッパにおける経済的な一体化と協力の象徴として重要であり、欧州共同体(European Communities)の基盤を築いた。また、ヨーロッパにおける平和と繁栄の維持に貢献し、ヨーロッパ諸国の連帯を強化する一石となった。
(註12)
ワルシャワ条約機構(Warsaw Pact Organization)は、冷戦時代に存在した軍事同盟で、東側諸国(共産主義国家)によって結成された対西側諸国(主にアメリカとその同盟国)に対抗するために結成された。ワルシャワ条約機構は、1955年に設立され、1991年に解散するまで存在した。
設立とメンバー: ワルシャワ条約機構は、1955年にソビエト連邦(現在のロシア)を中心に、東ヨーロッパおよび中央アジアの共産主義国家によって設立された。主要メンバーはソビエト連邦、東ドイツ(東ベルリンを含む)、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア(968年まで)、および後にユーゴスラビアとアルバニアが脱退した。
目的と役割: ワルシャワ条約機構の主な目的は、冷戦時代に西側諸国(主にNATOに参加する国々)に対抗する軍事同盟を形成し、共産主義国家の安全保障を確保することであった。各メンバー国は軍事的な協力、共同防衛、および相互支援を提供し合った。ソビエト連邦が最大の軍事力を提供し、他のメンバー国も軍事力を維持した。
冷戦時代の出来事: ワルシャワ条約機構は、1968年のプラハの春(チェコスロバキアでの改革運動)や、1981年のポーランドでの戒厳令宣言など、冷戦時代にいくつかの重要な出来事に関与した。1980年代には、ソビエト連邦の指導者ミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)が改革と開放政策を推進し、東側諸国の民主化を促した。これにより、ワルシャワ条約機構の存在が緩和された。
解散: 冷戦の終結とベルリンの壁崩壊(1989年)の後、東ヨーロッパ諸国で共産主義政権が崩壊し、ワルシャワ条約機構の存在意義が急速に低下した。1991年、ワルシャワ条約機構は正式に解散し、冷戦時代のシンボルとしての役割を終えた。この出来事は東ヨーロッパの政治的変革と冷戦の終結を象徴的に示すものであった。ワルシャワ条約機構は、冷戦時代における東西陣営の軍事的な対立と緊張を象徴するものであり、その解散は冷戦の終結を象徴する重要な出来事の一つであった。
引用・参照・底本
「Video: Is the European Union a “Colony of America”? Enforcing an “Economic Iron Curtain” with Russia: Michel Chossudovsky and James Corbett」 GlobalReserch 2023.09.06
2016年7月、イギリスでの「BREXIT」(註1)国民投票の結果を受け、EUに関する疑問が広がっていた。ビデオの目的は、EUの真の起源とその歴史的背景を明らかにし、EU支配に対する世界史的に重要な反帝国主義運動を紹介することである。
第二次世界大戦後、アメリカによるマーシャルプランが実施され、西ヨーロッパにおけるアメリカの経済的影響力が強化された。冷戦の始まりとともに、西ヨーロッパとソ連圏の間に経済的な障壁が設けられ、アイアンカーテン(註2)(経済的障壁)が形成された。欧州共同体(EC)(註3)の創設は、冷戦の一環としてアメリカの間接的なイニシアティブであり、NATO(註4)と一致する傾向があった。
冷戦終結後、旧ソ連圏の国々がEUに加盟し、それによってロシアとの経済関係を制約し、アメリカの支配を強化する方針が取られた。マーストリヒト条約(1992年)(註5)は、ネオリベラル(註6)経済政策をEUに組み込み、各加盟国に内部資源を活用するための通貨政策の制約を課した。ユーロ圏の成立により、ヨーロッパ中央銀行が各加盟国の通貨政策を制御し、借金が増加する状況が生じた。
EUの経済的攻撃とロシア: EUの政策はロシアへの経済的攻撃であり、ロシアが他国との貿易協定を結ぶことを阻止している。EUは制裁措置を取り、加盟国を経済的に困難な状況に追い込んでいる。EUの機関はワシントン・コンセンサス(経済政策の枠組み)(註7)を採用し、IMFや世界銀行のアクションを模倣している。
EUのアメリカ支配とTTIP(註8): EUとアメリカはTTIP(大西洋貿易投資パートナーシップ)に向けた取り組みを行い、これはアメリカの帝国主義的プロジェクトの一環であると主張されている。TTIPはEU加盟国をアメリカの経済支配下に置くことを意味し、ウォールストリートの影響(註9)を受けているとされる。
BREXITと反EU運動: BREXIT投票とEUからの脱退を支持する運動は、EUに対する反帝国主義運動と見なされており、単なる排他的な右翼運動ではないと主張されている。EUに対する異なる視点が存在し、国民国家の経済的および社会的主権を守るための動きと、EUを民主化し、連帯を構築する動きがある。このビデオの議論は、EUに対する異なる視点とその影響について詳細に探求しており、EUとアメリカの経済的な結びつきに焦点を当てている。
【要点】
欧州連合の歴史と起源、および米国およびロシアとの関係について説明している。
講演者のミシェル・チョスドフスキーは、欧州連合はもともとソ連を孤立させるための冷戦プロジェクトとして米国によって設立されたと主張する。また、EUは現在、ロシアを経済的に弱体化させるために米国によって利用されているとも主張している。
チョスドフスキーは、EUの歴史をマーシャル・プラン(註10)まで遡る。マーシャル・プランは、第二次世界大戦後、米国が資金提供したヨーロッパの経済復興プログラムであった。マーシャル・プランは米国製品の市場を創設し、ヨーロッパでの共産主義の蔓延を防ぐために設計されたと主張する。
次に講演者は、1957年に署名され、欧州経済共同体(EEC)を設立したローマ条約(註11)について説明する。チョスドフスキーは、EECはソ連を孤立させる米国の戦略のさらなる一歩であったと主張する。また、EECは自由貿易と経済統合を促進するために設計されており、それが米国企業に利益をもたらすと主張している。
次に講演者は、1992 年に署名され欧州連合(EU)を創設したマーストリヒト条約について説明する。 チョスドフスキーは、マーストリヒト条約は新自由主義経済政策をEUにさらに埋め込み、多くのEU国民に経済緊縮と苦難をもたらしたと主張している。また、マーストリヒト条約によりEU諸国がロシアと貿易することがより困難になったと主張している。
チョスドフスキーはEUとロシアの関係について語る。 同氏は、EUは現在、ロシアを経済的に弱体化させるために米国によって利用されていると主張する。また、EUの対ロシア制裁は一般のロシア国民に損害を与えており、ロシア政府を弱体化させるという望ましい効果は得られていないと主張している。
チョスドフスキーは、EUはソ連を孤立させ他国との貿易を阻止する冷戦プロジェクトとして米国によって創設されたと主張している。また、1992年に署名されたマーストリヒト条約では、EUの協定条項に新自由主義的経済政策の視点が組み込まれたとも述べている。自由市場と規制緩和を重視するこの政策的観点は、多くのEU加盟国の貧困をもたらした。
チョスドフスキー氏はまた、EUは現在、西側諸国の軍事同盟であるNATOと合併しつつあると主張している。この合併は、ロシアを孤立させ、ロシアが強力な経済的・政治的勢力になるのを防ぐという米国の広範な戦略の一環である。
コーベット氏はチョスドフスキー氏の分析に同意し、EUは本質的に「アメリカの植民地」であると付け加えた。米国はNATOの拡大やロシアへの制裁など、自国の利益を促進するためにEUを利用してきたと主張している。
チョスドフスキーは、EUは米国帝国主義の道具であり、ロシアを封じ込め、欧州における米国の利益を促進するために利用されていると主張する。EUは平和と協力のための力ではなく、むしろ紛争と不安定の根源であると信じている。
このビデオは、EU の支配に反対する運動の高まりについて議論して終わる。コーベットは、この運動は「世界史的に重要な反帝国運動」であると主張する。彼は、EUは大衆の動員によってのみ解体できると信じている。
チョスドフスキー氏のEU分析は物議を醸しているが、世界経済におけるEUの役割や米国、ロシアとの関係について重要な疑問を投げかけている。
チョスドフスキーの見解には議論の余地があるが、検討する価値はある。EU は長い歴史を持つ複雑な組織である。情報に基づいて将来について意思決定を行うためには、その起源と目標を理解することが重要である。
・EU は、自由貿易と市場開放を促進することを目的とした新自由主義プロジェクトである。これは多くのヨーロッパ諸国の産業空洞化と不平等の拡大につながった。
・EUは、労働者階級を犠牲にして富裕層や権力者に利益をもたらすことを目的とした「新自由主義プロジェクト」である。
・EUは官僚主義の悪夢だ。7万以上の規制があり、企業の運営が困難になっている。
・EUは非民主的であり、EUが統治する国民に対して説明責任を果たしていない。
・EUは納税者の負担となっている。予算は1兆ユーロを超え、加盟国から資金提供を受けている。
・EUは国家主権と民族自決に対する脅威である。
・EUはアメリカ帝国主義の道具だ。
【桃源寸評】
現在のウクライナ戦争の淵源を垣間見ることのできる短編ではないか。米国の"遣り口"も同時に知れる。
自らの利を謀る米国には知謀者がよくいるものだ。しかし、最近では、<策士策に溺れる>ことが多い。
そう、米国が『China 2049』で深読み(?)しているように、中国の奥の院は、『兵法三十六計』や『孫子』等の兵法の"隠喩"によって動いてると思い込んでいるようだ。其のうえで、米国は中国の百年マラソンに並走する積りらしい。米国は確実に自滅する。
この頃の中国を観察していると、米国の自滅策を"協力"、"ウインウイン"で寧ろ助けようと手を差し伸べている。
が、迷妄なる書物を実体化して、米国は別なルートで、孤独のマラソンを強いられているのかも知れない。
それこそ、「行千里而不勞者、行於無人之地也」(『孫子』金谷治訳注 岩波文庫 76頁)の兵法に陥れられというより、自ら罠に嵌っている。
因って「敵の運命の主宰者」となるのは中国となろう。
余談として、インドもやがて中国並みになると、米国の覇権の嫉妬に悩まされることになる。インドには戦う心を養う兵法の古典はあるのだろうか。
(註1)
BREXIT(ブレグジット)は、「British Exit」の略語で、イギリスが欧州連合(EU)からの脱退を決定し、実行した出来事を指す。
背景: BREXITの背景には、イギリスがEUの一員として加盟国として約45年間過ごした後、EUに対する独自の関心や主権を強調する動きがあった。EUに参加することで、イギリスは経済的な利益や市場アクセスを得た一方、EUの規制や決定に対する制約を受けることに不満が生まれた。
2016年のEU離脱国民投票: 2016年6月23日、イギリスはEU離脱に賛成または反対する国民投票(通称:EU離脱国民投票)を実施した。国民投票の結果、離脱賛成派(「Leave」派)が51.9%の支持を受け、離脱反対派(「Remain」派)を上回った。
離脱手続き: 国民投票の結果を受けて、イギリス政府はEUからの正式な離脱手続きを開始した。これに基づき、2017年に「リスボン条約第50条」を発動し、EUからの脱退プロセスを開始した。離脱プロセスは、交渉、合意、議会の承認などを含む複雑な一連のステップから成る。
BREXIT合意と移行期間: BREXIT合意は、イギリスとEUの間で離脱条件を規定した文書で、2019年に合意に達した。合意には離脱後の移行期間が含まれ、イギリスはEUの規則と関税連合に従いつつ、新しい関係の交渉が進行する期間が設けられた。
2020年の正式離脱: 2020年1月31日、イギリスは正式にEUから離脱し、EUの加盟国としての地位を失った。これにより、EUとの関係は新たな枠組みの下で再構築されることとなった。
新しい関係の交渉: 離脱後、イギリスとEUは新しい貿易関係や協力枠組みを交渉し、合意を目指した。2020年末にはEUとの包括的な協定(EU-UK Trade and Cooperation Agreement)が締結され、新しい関係が確立された。しかし、一部の問題(特にアイルランドとの国境問題)は未解決のままとなった。
BREXITは国際的な注目を集め、イギリス国内でも論争の的となった。離脱にはさまざまな経済、政治、社会的な影響が伴い、イギリスとEUの関係が新たな段階に入りった。今後は、両者の協力や交渉が継続され、新しい関係の詳細が確立されることが期待されている。
(註2)
「アイアンカーテン」(Iron Curtain)は、冷戦時代に使用された言葉で、主に1945年から1989年までの期間における東西冷戦の際の政治的および地理的な分断を指す。この用語は、ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)によって有名になった。
アイアンカーテンは、西ヨーロッパと東ヨーロッパおよびソビエト連邦との間の厳格な政治的および軍事的な障壁を表現するために使用された。この障壁は、東ヨーロッパ諸国や東ドイツ、チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ユーゴスラビアなど、ソビエト連邦およびその支配下の共産主義国家と、西ヨーロッパ諸国との間に存在した。
アイアンカーテンの主要な要素は次のとおり。
軍事的分断: 東側はソビエト連邦の影響下にあり、ソ連が支配するワルシャワ条約機構(註12)に加盟し、西側はアメリカ合衆国を中心とする北大西洋条約機構(NATO)に参加していました。両側は相互に軍事的な脅威と見なし合った。
政治的分断: 東側諸国は共産主義の政権下にあり、言論の自由や選挙の自由が制約されていた。一方、西側諸国は民主主義と市場経済を採用し、政治的多様性が許容されていた。
ベルリンの壁: ドイツのベルリン市内に建設されたベルリンの壁は、東ベルリンと西ベルリンを分断する象徴的な壁であり、東西冷戦の象徴となった。この壁は1961年に建設され、1989年に崩壊した。
情報の遮断: アイアンカーテンの下では、東側と西側の国々は情報の交換や文化的な接触が制限された。西側のメディアや文化が東側にはアクセスできず、逆もまた然りであった。
アイアンカーテンは冷戦の象徴的な要素であり、東西陣営の対立と敵対関係を示すものであった。この分断は冷戦終結後に崩壊し、東ヨーロッパ諸国が共産主義政権から脱却し、民主主義と市場経済を採用する動きが加速した。
(註3)
EC(European Community)は、かつて存在した欧州連合(EU)の前身となる欧州統合の一部であった。ECは、1957年に設立され、その後、EUの一部として発展した。
設立: ECは、1957年にローマ条約(Treaties of Rome)に基づいて設立された。この条約は、欧州経済共同体(EEC)と欧州原子力共同体(EURATOM)の2つの主要なコミュニティを設立した。EECは、市場の統合と経済的な協力を推進することを目的とし、当初の6つの創設メンバーはベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、西ドイツであった。
目的: ECの主な目的は、メンバー国間での経済的な壁を取り扱い、共通市場の構築を促進することであった。これにより、財・サービス・資本・労働力の自由な移動が実現した。カスタムユニオンの設立と共に、関税や貿易の障壁を取り扱い、メンバー国間の貿易を促進した。
発展: ECは、設立後も拡大と発展を続け、新たなメンバー国の加盟が行われた。英国(1973年)、ギリシャ(1981年)、スペインとポルトガル(1986年)などが後に加盟した。ECはまた、政治的な協力と共通外交政策の構築にも取り組んだ。これにより、経済的な一体性に政治的な次元が加わった。
EUへの移行: ECはその後、欧州連合(EU)へと移行した。この移行は1993年のマーストリヒト条約(Maastricht Treaty)によって実現し、EUはより広範な政治的な統合を追求した。EUは単一通貨であるユーロ(Euro)を導入し、共通の外交政策や安全保障政策を開発した。ECからEUへの移行は、ヨーロッパ統合の進化と拡大を示すものであり、現在のEUは政治的・経済的な協力の一大組織として、さまざまな政策分野で協力を推進している。ECはその基盤を提供し、EUの発展に寄与した。
(註4)
NATO(North Atlantic Treaty Organization)は、北大西洋条約機構として知られ、西側諸国による軍事同盟で、冷戦時代から現代にかけて存在している。
設立と目的: NATOは1949年に設立された。その設立には、西側諸国がソビエト連邦および共産主義諸国に対抗するための安全保障協力の必要性が背景にあった。主な目的は、メンバー国の相互防衛と安全保障を確保することで、攻撃された場合、他のメンバー国が集団的自衛権を行使することを規定している。この原則はNATO憲章の第5条に明記されている。
メンバーシップ: NATOの初期メンバーは、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、ノルウェー、デンマーク、アイスランド、イタリア、ポルトガル、およびノルウェーであった。その後、さらに多くの国が加盟した。現在、NATOには30の加盟国が含まれており、アルバニア、クロアチア、モンテネグロ、北マケドニアが最新の加盟国である。
活動: NATOの活動は、軍事的な防衛と安全保障を中心に展開されいる。これには、共同訓練、共同演習、軍事作戦の実施、軍備管理、軍事戦略の策定などが含まれる。冷戦時代には、NATOはソ連との対立において西側諸国の統一を確保し、戦略核兵器の配置などの軍事的な対抗措置を取った。
冷戦後: 冷戦の終結後、NATOは新たな役割を模索し、旧東側諸国とのパートナーシップを築きいた。これにより、冷戦時代に存在した軍事的対立が和らいだ。2001年には、NATOはアフガニスタンにおける対テロ作戦「ISAF」を展開し、多国籍軍を派遣した。また、NATOはバルカン半島での紛争解決、安定化、および和平維持活動にも参加している。
ロール・アンド・ミッション: NATOのミッションは、集団的自衛権の確保、安全保障の維持、民主主義と法の支持、国際的な危機対応、紛争予防、軍備管理など、幅広い領域にわたる。また、NATOは国際連合(UN)と協力し、国際的な平和維持任務や紛争解決にも貢献している。NATOは、西側諸国の安全保障と協力を確保するための重要な国際組織であり、冷戦時代から現代にかけて、国際的な安定と平和維持に貢献している。
(註5)
マーストリヒト条約(Maastricht Treaty)は、ヨーロッパ統合の重要な基盤を提供する国際条約で、正式には「ヨーロッパ連合の設立に関する条約」とも呼ばれる。この条約は、1991年にオランダのマーストリヒトで署名され、1993年に発効した。
背景: マーストリヒト条約は、ヨーロッパ共同体(EC)の進化と拡大を反映するものでした。ECは1957年のローマ条約によって設立され、その後、経済統合の一環として共通市場の構築や通貨統合(ユーロの導入)の計画が進行していた。
条約の主要な要点: マーストリヒト条約は、ECを発展させ、欧州連合(EU)の設立につながるものであった。
3つの柱(Pillars): 第1柱は共通市場と経済政策に関連し、第2柱は共通外交・安全保障政策に関連し、第3柱は司法・内務協力に関連している。
ユーロ通貨圏の設立: マーストリヒト条約は、ユーロ通貨圏(通貨統合)の導入を規定し、ユーロの発行を推進した。
共通外交・安全保障政策(CFSP): EUは共通外交政策を確立し、国際的な問題に対する協力を深めた。
ヨーロッパ市民権: EU市民に対する基本的な権利と自由を確保し、市民権を強化した。
発効と影響: マーストリヒト条約は1993年に発効し、EUの形成と発展に重要な役割を果たした。
ユーロ通貨圏は1999年にスタートし、共通通貨ユーロは2002年に導入された。条約の発効により、EUは政治的な一体性を強化し、国際的な協力、共通外交政策、内部市場の発展などで大きな成功を収めた。マーストリヒト条約は、EUの発展において重要なステップであり、ヨーロッパ統合の深化と拡大を推進した。それ以降、EUはさらに多くの国を加盟国として迎え入れ、経済的、政治的な協力を強化している。
(註6)
ネオリベラリズム(Neoliberalism)は、経済学および政治哲学の観点から理解される一連の政治的および経済的なアイデアと政策の体系である。
自由市場経済: ネオリベラリズムは、自由市場経済を重視する。つまり、市場の競争と供給と需要の自然なメカニズムを重視し、政府の干渉を最小限に抑えるべきだと主張する。このアプローチにより、個人の自己利益と競争によって市場が効率的に機能すると信じられている。
小さな政府: ネオリベラリズムは、政府の規模と干渉を削減し、税制を簡素化し、規制を緩和することを提唱する。これにより、市場への介入を最小限に抑え、個人の経済的自由を最大化しようとする。社会保障プログラムや公共サービスの民営化も一般的なネオリベラリズムの政策の一部である。
個人主義と自己責任: ネオリベラリズムは、個人主義と自己責任を重視する。個人は自分自身の成功や失敗に責任を持つべきだと考えられており、個人の自己利益が経済的な成長と社会的な繁栄をもたらすとされている。社会的な不平等や貧困は、個人の能力や努力に起因するものとみなされることがある。
自由貿易: ネオリベラリズムは、国際的な自由貿易を奨励し、貿易の障壁や関税を撤廃することを支持する。これにより、市場へのアクセスが向上し、経済成長が促進されると考えられている。
財政規律: ネオリベラリズムは、財政規律を重視し、政府の支出を制約し、財政赤字を最小限に抑えることを奨励する。これにより、インフレーションや財政危機を回避し、経済の安定を維持しようとする。ネオリベラリズムは、1970年代から1980年代にかけて世界的に台頭し、多くの国で実施された。一部では経済成長と効率性の向上をもたらしたが、一方で社会的な不平等や環境への影響についての批判もある。ネオリベラリズムには賛否両論があり、その影響は国や地域によって異なる。
(註7)
ワシントン・コンセンサス(Washington Consensus)は、1989年に経済学者ジョン・ウィリアムソン(John Williamson)によって提唱された経済政策の枠組みで、新自由主義的な経済政策と改革の一連の原則や方針を指す。この用語は、ワシントンD.C.に本部がある国際金融機関(国際通貨基金(IMF)や世界銀行)での経済政策議論において頻繁に使用されることから名付けられた。
ワシントン・コンセンサスの主要な原則と方針には以下の要点が含まれる。
財政規律(Fiscal Discipline): 財政赤字を抑制し、国の債務を管理することを奨励する。政府支出を制約し、インフレーションを抑えるために財政政策を緊縮化させることが含まれる。
市場指向型経済(Market-Oriented Economic Policies): 市場経済を奨励し、政府の干渉を最小限に抑えることを提唱する。民営化や自由な市場アクセスを推進し、競争を促進する。
開放的な貿易(Open Trade): 国際的な自由貿易を奨励し、貿易障壁や関税を削減・撤廃することを支持する。外国からの投資と貿易を促進し、市場の拡大を図る。
金融自由化(Financial Liberalization): 金融セクターを自由化し、外国からの資本流入と金融サービスの提供を増やすことを目指す。
為替レートの安定(Exchange Rate Stability): 安定した為替レート制度を維持し、急激な通貨の切り下げや切り上げを防ぎ、外国からの投資を引き付けることを支持する。
科学技術の向上(Improvement in Property Rights): 知的財産権や財産権の強化を通じて、イノベーションと投資を奨励する。ワシントン・コンセンサスは、1990年代から2000年代初頭にかけて、多くの発展途上国に対する経済政策の指針として広く採用された。しかし、一部の批評家は、この政策枠組みが貧困削減や不平等の増加などの社会的な問題を引き起こす可能性があると主張した。また、2008年の国際金融危機以降、一部の国はワシントン・コンセンサスからの逸脱を試み、独自の経済政策を採用している。
(註8)
TTIP(Transatlantic Trade and Investment Partnership)は、アメリカ合衆国とヨーロッパ連合(EU)の間で交渉された広範な自由貿易協定の略称である。この協定は、両者の経済関係を深化させ、貿易障壁を撤廃し、経済成長を促進することを目的としている。
目的: TTIPの主要な目的は、アメリカとEU間の貿易および投資関係を強化し、相互の市場へのアクセスを拡大することである。これにより、商品とサービスの交流が増加し、経済成長が促進されると期待された。
主要な要点:
・市場アクセス: TTIPは、商品やサービスの市場アクセスを向上させ、関税を削減・撤廃し、非関税障壁を緩和することを含む。これにより、企業は市場へのアクセスが容易になり、貿易が促進された。
・規制の調和: TTIPは規制の調和を通じて、製品の標準化や規制の一貫性を図った。これにより、企業は製品やサービスを異なる市場に導入しやすくなった。
・投資保護: 協定は外国投資家の権利を保護し、投資家対国家(ISDS)紛争解決メカニズムを設けた。これは、外国企業が不当な取り扱いに対して国を訴える権利を確保するものでった。
批判と議論: TTIPは一部の批評家から環境、労働権、食品安全性、公共サービスの民営化などの懸念を引き起こした。彼らは、協定が企業の利益を優先し、規制を削減しすぎる可能性があると主張した。TTIPの交渉は非常に秘密裏に行われ、透明性に欠けるとの批判もあった。一部の国や地域では、TTIPに反対するデモや運動が盛んになった。
結末: TTIPの交渉は長引き、最終的には中断された。一部の要因には政治的な対立や交渉の複雑さが影響した。代わりに、EUはカナダとのCETA(Comprehensive Economic and Trade Agreement)や、EUと日本とのEPA(経済連携協定)など、他の自由貿易協定に焦点を移した。TTIPは国際的な貿易政策における重要な議題であり、自由貿易と規制のバランス、および民間企業と国家の権利との間での対立を浮き彫りにした。その結果、国際的な自由貿易協定に関する議論と交渉が進行中であり、異なるスタンスや利益を持つ関係者間での対話が継続されている。
(註9)
ウォールストリートの影響は、主にアメリカ合衆国の経済、金融市場、政治、および世界経済に及ぼす影響を指す。ウォールストリートは、ニューヨーク市マンハッタンにある金融機関や証券取引所の集中地であり、アメリカの金融業界の中心である。
金融市場への影響: ウォールストリートは、株式市場、債券市場、外国為替市場など、さまざまな金融市場に影響を及ぼす。ウォールストリートの出来事やトレンドは、これらの市場の動向に影響を与え、市場参加者に影響を与えることがある。
企業と投資銀行への影響: ウォールストリートには多くの大手企業、銀行、証券会社が拠点を置いており、これらの企業は世界的なビジネスおよび金融取引に影響を与えている。ウォールストリートの意思決定や金融政策は、企業の成長戦略や資本調達に影響を及ぼす。
政治への影響: ウォールストリートは政治への多大な影響力を持っており、政治家や政府機関に対してロビー活動や政治献金を通じて影響を行使する。金融規制、税制政策、財政政策などの政策決定に対してウォールストリートの利益が考慮されることがある。
世界経済への影響: ウォールストリートの金融機関や国際的な金融機関(国際通貨基金(IMF)や世界銀行など)は、世界経済に大きな影響を与える。ウォールストリートの金融政策やリーマン・ブラザーズのような金融危機は、世界経済に波及効果をもたらすことがある。
富の分配への影響: ウォールストリートの成功は、個人や企業の富の増加につながることがある。一方で、貧困や不平等が拡大する可能性もあり、富の分配に関する議論を巻き起こすことがある。ウォールストリートの影響は複雑で多面的であり、金融セクターと経済の発展に対するポジティブな面と、不安定性や不平等の増大といったネガティブな面が存在する。ウォールストリートの動向と政策は、国際的な金融システム全体に影響を及ぼし、世界中の人々に影響を与えている。
(註10)
マーシャルプラン(Marshall Plan)は、第二次世界大戦後のヨーロッパの復興を支援するためにアメリカ合衆国が提供した経済的な支援プログラムである。正式には「欧州復興計画」(European Recovery Program)とも呼ばれる。
背景: 第二次世界大戦の終結後、ヨーロッパは壊滅的な状況にあった。戦争による破壊、経済的な混乱、食料不足、避難民の問題などが複合的に影響し、多くのヨーロッパ諸国が困難な復興課題に直面していた。アメリカは冷戦の構図の中でソビエト連邦との対立を考慮し、ヨーロッパに対する経済的支援を通じて安定を促進し、共産主義の拡大を防ぐ狙いがあった。
マーシャルプランの提案: 1947年6月5日、アメリカの国務長官であるジョージ・C・マーシャル(George C. Marshall)がハーバード大学で行った演説で、ヨーロッパの復興支援を提案した。この提案は「マーシャルプラン」として知られるようになった。マーシャルは、ヨーロッパ諸国が自身の復興計画を立て、アメリカからの経済的援助を受け取ることを提案した。
実施: マーシャルプランは1948年から1952年までの期間に実施された。アメリカ政府は約130億ドル(当時の通貨で)を提供し、これにヨーロッパ各国が取り組む自身の復興プロジェクトを支援した。援助は食糧、燃料、原材料、機械装置などの形で提供され、ヨーロッパの産業やインフラの再建を支援した。マーシャルプランはヨーロッパの経済回復に大きく寄与し、多くの国で生産力が向上し、失業率が減少した。
影響: マーシャルプランはヨーロッパ諸国の経済的復興に成功し、西ヨーロッパ諸国が共産主義の拡大を防ぎ、民主主義体制を維持するのに役立った。このプランは冷戦時代の西側諸国とソ連との対立の一環として位置づけられ、西側陣営の結束を強化した。マーシャルプランはアメリカの対外政策の重要な一環であり、ヨーロッパの安定と復興に貢献し、冷戦時代の国際政治に大きな影響を与えた。
(註11)
ローマ条約(Treaty of Rome)は、1957年に署名された2つの主要な国際条約で、ヨーロッパ経済共同体(European Economic Community, EEC)とヨーロッパ原子力共同体(European Atomic Energy Community, Euratom)を設立した。これらの条約は、欧州共同体(European Communities)の基礎を築き、後の欧州連合(EU)の発展の礎となった。
条約の背景: 第二次世界大戦後、ヨーロッパは荒廃し、経済的に困難な時期に直面していた。多くの政治家や指導者は、ヨーロッパ諸国間の協力を通じて経済復興と安定を実現し、将来的な紛争を防ぐ必要性を認識した。
ヨーロッパ経済共同体(EEC): ローマ条約の一部として設立されたEECは、共通市場の創設を目指すものであった。これにより、EECの加盟国間で商品、サービス、労働力、資本の自由な移動が促進され、関税および貿易障壁が撤廃された。
ヨーロッパ原子力共同体(Euratom): Euratomは原子力エネルギーの平和利用を奨励し、研究および原子力材料の供給を調整することを目的とした。この共同体は、核燃料サイクルの安全性と非拡散を管理した。
4つの自由:
ローマ条約に基づくEECは、4つの自由の原則を確立した。
・財貨の自由: 加盟国間での関税撤廃と自由な貿易
・人の自由: 労働力の自由な移動
・サービスの自由: サービスの自由な提供
・資本の自由: 資本の自由な移動
欧州連合への展開: ローマ条約によって設立されたEECとEuratomは、後のヨーロッパ連合(EU)の基盤となった。その後、EUはさらに政治的、経済的な統合を進め、共通通貨であるユーロを導入し、多くの新しい加盟国を受け入れるなど、発展を遂げた。ローマ条約はヨーロッパにおける経済的な一体化と協力の象徴として重要であり、欧州共同体(European Communities)の基盤を築いた。また、ヨーロッパにおける平和と繁栄の維持に貢献し、ヨーロッパ諸国の連帯を強化する一石となった。
(註12)
ワルシャワ条約機構(Warsaw Pact Organization)は、冷戦時代に存在した軍事同盟で、東側諸国(共産主義国家)によって結成された対西側諸国(主にアメリカとその同盟国)に対抗するために結成された。ワルシャワ条約機構は、1955年に設立され、1991年に解散するまで存在した。
設立とメンバー: ワルシャワ条約機構は、1955年にソビエト連邦(現在のロシア)を中心に、東ヨーロッパおよび中央アジアの共産主義国家によって設立された。主要メンバーはソビエト連邦、東ドイツ(東ベルリンを含む)、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア(968年まで)、および後にユーゴスラビアとアルバニアが脱退した。
目的と役割: ワルシャワ条約機構の主な目的は、冷戦時代に西側諸国(主にNATOに参加する国々)に対抗する軍事同盟を形成し、共産主義国家の安全保障を確保することであった。各メンバー国は軍事的な協力、共同防衛、および相互支援を提供し合った。ソビエト連邦が最大の軍事力を提供し、他のメンバー国も軍事力を維持した。
冷戦時代の出来事: ワルシャワ条約機構は、1968年のプラハの春(チェコスロバキアでの改革運動)や、1981年のポーランドでの戒厳令宣言など、冷戦時代にいくつかの重要な出来事に関与した。1980年代には、ソビエト連邦の指導者ミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)が改革と開放政策を推進し、東側諸国の民主化を促した。これにより、ワルシャワ条約機構の存在が緩和された。
解散: 冷戦の終結とベルリンの壁崩壊(1989年)の後、東ヨーロッパ諸国で共産主義政権が崩壊し、ワルシャワ条約機構の存在意義が急速に低下した。1991年、ワルシャワ条約機構は正式に解散し、冷戦時代のシンボルとしての役割を終えた。この出来事は東ヨーロッパの政治的変革と冷戦の終結を象徴的に示すものであった。ワルシャワ条約機構は、冷戦時代における東西陣営の軍事的な対立と緊張を象徴するものであり、その解散は冷戦の終結を象徴する重要な出来事の一つであった。
引用・参照・底本
「Video: Is the European Union a “Colony of America”? Enforcing an “Economic Iron Curtain” with Russia: Michel Chossudovsky and James Corbett」 GlobalReserch 2023.09.06
米・NATOの実力 ― 2023年09月08日 17:06
Stephen Bryenによって執筆され、NATO(北大西洋条約機構)とウクライナの戦争を背景に、NATOの将来についての懸念を述べたものである。
ウクライナ戦争におけるNATOの関与は、その領土を守るための適切な準備が不足していることを浮き彫りにしている。ウクライナはNATOと特にアメリカの約束に基づいて自身をロシアの攻撃から守ることを期待していたが、その期待が外れた。NATOは数百億ドルもの軍事支援を提供したが、ウクライナはロシアから奪回した領土がわずかで、多大な人員と装備の損失を被った。
NATOがドローンの大群や中距離および長距離ミサイルに対処するために適切に装備されていないことに触れている。これは誤った支出配分や空中防空力の無視に起因しているとされており、アメリカの防空も不十分であると指摘されている。
ウクライナでの戦闘において、ドイツ製の戦車であるレオパルトがロシアに対抗できなかったことが示されており、NATOの戦車も同様の脆弱性を抱えている可能性が指摘されている。また、戦車の防護についても議論され、アクティブディフェンス(註)の重要性が強調されている。
ロシアはウクライナで無人機を効果的に使用し、それに対抗する手段を持たないウクライナとNATOに対して優位性を保っている。また、ロシアは新たな兵器の開発と運用に成功しており、それが高価な兵器と弾薬の供給不足につながっている。
ウクライナ戦争がNATOが自身の領土を守る準備が不足していることを浮き彫りにし、欧州の政治と戦略におけるアプローチの大きな変化をもたらす可能性があると議論している。将来の指導者や政策についての予測も述べられている。
NATOとウクライナの戦争が現代の戦争の変化を示す事例であるとともに、NATOが将来の課題に対処するために必要な改革と対策を論じている。記事は軍事技術、戦術、戦略についての洞察を提供し、NATOとその加盟国が今後の脅威に対処するために必要な調整と改善を示唆している。
【要点】
ウクライナ戦争がいかにNATOの弱点と現代戦争に対する準備不足を露呈させたかについて論じている。
NATOはあまりにも現状に満足しすぎて、防空、戦車、その他の重要な能力を無視してきたと主張する。その結果、NATOは現在、ロシアの兵器や戦術に効果的に対抗するのに苦労している。
また、ウクライナ戦争でNATOの兵器や備蓄が枯渇し、同盟が将来の紛争に対応することがさらに困難になっているとも指摘している。
NATOの現在の準備状況についての厳粛な評価である。ロシアの攻撃を阻止し、打ち破ることを望むなら、同盟がやるべきことが山ほどあることは明らかだ。
米国とNATOがこれらの弱点に対処するために必要な変化を起こす用意があるかどうかを尋ねている。
ウクライナ戦争が明日終わったとしても、NATOは高水準の国防支出を継続し、備蓄を再構築するつもりがあるのかどうかを疑問視して締めくくられている。また、米国が調達システムを変更し、容易に入手可能な外国兵器を受け入れる用意があるかどうかも問うている。
NATOの弱点について多くの正当な指摘をしている。 ただし、NATO は防衛同盟であり、ロシアのような強力な敵と大規模な戦争を戦うように設計されていないことに注意することが重要である。それにもかかわらず、調査結果はNATOへの警鐘であり、ロシアを抑止し加盟国を保護したいのであれば、同盟が何らかの重大な変更を加える必要があることを示唆している。
ウクライナ戦争はNATOと米国への警鐘であると締めくくっている。NATOが必要な変化を起こさなければ、次の戦争への準備が整わないことになる。
・NATOはウクライナに1000億ドルの軍事援助を提供しているが、これには自国の即応性が犠牲となっている。
・NATOの防空体制は不十分で、無人機の群れや中・長距離ミサイルを防ぐことができない。
・NATOはウクライナに軍事援助を提供しているが、ロシアの進撃を止めるには十分ではなかった。
・NATOは、防衛費の増加、兵器の近代化、外国兵器の受け入れなど、防衛態勢を大きく変える必要がある。
・米国は調達システムをより効率的で即応性のあるものに変更する必要がある。
・NATOはより広範な戦争に対する準備が整っていないであろう。
・ウクライナ戦争はNATOと米国にとって警鐘だ。
・NATO の戦車はロシアの対戦車兵器に対して脆弱であり、より優れた防御が必要だ。
・NATOはサプライチェーンの問題により、十分な弾薬や代替武器の生産に苦戦している。
・NATOがロシアやその他の敵対国を阻止できるようにしたいのであれば、防衛態勢を大幅に変更する必要がある。
・NATOは米国の空軍力に依存しすぎ、自国の防空を無視してきた。
・NATOはロシアの無人機やミサイルに効果的に対抗できていない。
・ウクライナ戦争により、NATOの兵器庫と備蓄は枯渇した。
・米国とNATOは、将来の紛争に備えるために防衛態勢を大きく変える必要がある。
【桃源寸評】
極端に云えば、ウクライナ戦争は、米主導の西側対ロシア一国の戦いとなっている。斯様な不均衡の戦争ならば前者の必勝は疑いを挟まない筈なのだ。
が、後者には先ず、食料・資源・エネルギーの入手動線に何の不安も無いも同然である。当然前者が武器の生産・調達にあたふたしている間に後者は生産が整い供給可能となっている。
誰しも思うであろう、あの米国であるならば、武器弾薬・新兵器等どしどし現場に供給可能であると。
しかし、よく考えて見ると、米国は第二次世界大戦後、非正規軍や脆弱なそして貧弱な国家としか戦っていない、其れも現在のように徒党を組んでである。それでも、ベトナム戦争、直近ではアフガン戦争での敗走振りである。否、第二次世界大戦中でさえ、例えば、日本、最強の正規軍を持つ国家であったのか、大いに疑問である。日本・ドイツ・イタリア三国同盟の側に属した、いわゆる枢軸国でさえ同様であろう。
其の日本に原爆投下なのだ。或る意味では核戦争でさえ米国は今や始める気もないし、負ける。核大国が核を使用すると云うことは現在の状況では全面核戦争となる。従って、例えロシアがウクライナに核を使用したとしても、米国は其れに応じて核をロシアに投げ付けることは無く、露ウクライナ輔犠牲にしたまま、ロシアとの外交戦術に出る。
否、ロシアが核を使用する前に米国と折衝する。
此のウクライナ戦争は米国の実力が暴かれていることを知るべきだ。あの湾岸戦争のような事はロシア・中国相手には不可能に違いない。
日韓なども単に、軍事産業に儲けられてと云うか、ボラれているだけだ。
ウクライナでさえ梃摺っているのに、中国にちょっかいを出すなど、笑止千万である。
ただ儲けの為に、危機をでっち上げているだけなのだ。
ウクライナにゴミ兵器を突っ込めば、敗けというゴミが出るだけだ。
ウクライナに犯罪行為と見做される劣化ウラン弾を米国は提供する。「劣化ウラン弾の使用がもたらす環境への影響をあからさまに無視する米政府の姿勢の表れだ」と、リャブコフ外務次官。
また、ファルハン・ハク国連報道官も「国連は常に、世界各地での劣化ウラン弾の使用を懸念している」と。
米国の日本敗戦時の逆パターンである。
米国は“勝てる相手=弱い相手”としか戦争をしないが、其れでも潰走している。
(註)
アクティブディフェンス(Active Defense)は、情報セキュリティやサイバーセキュリティの文脈で使用される用語である。アクティブディフェンスは、サイバー攻撃に対抗するためのセキュリティ戦略や手法の一つである。
攻撃への対抗策:アクティブディフェンスは、サイバー攻撃者に対抗するために、セキュリティチームが攻撃を検知し、対応するための行動を取るアクションプランを含む。これは、攻撃が発生した際に、攻撃者の行動を追跡し、攻撃を中断しようとするものである。
リアルタイムの監視と対応:アクティブディフェンスは、システムやネットワークをリアルタイムで監視し、異常なアクティビティや侵入の兆候を検出することが重要だ。攻撃が検出された場合、速やかに対応策を実施し、被害を最小限に抑えることを目指す。
攻撃者の動きの阻止:アクティブディフェンスは、攻撃者の動きを制限し、彼らの侵入を防ぐための技術や手法を含む。これには、侵入検知システム(Intrusion Detection System)やファイアウォール、セキュリティポリシーの適用、不正アクセスのブロックなどが含まれる。
インシデントへの対応:アクティブディフェンスは、サイバー攻撃が成功した場合に備えて、迅速に侵害の範囲を特定し、侵害を制限するための手順を確立する。これには、侵害の解析、被害の最小化、攻撃者の排除、システムの復旧などが含まれる。
インテリジェンス活用:アクティブディフェンスは、サイバー脅威に関する情報収集と分析を通じて、未知の攻撃に備えるためにインテリジェンスを活用することがある。これにより、将来の攻撃に対する準備が進化し、より効果的なセキュリティ対策が構築される。
アクティブディフェンスは、パッシブディフェンス(Passive Defense)と対比されることがある。パッシブディフェンスはセキュリティ対策の一部としてシステムやネットワークを強化する手法であり、攻撃を防ぐことに主眼を置いている。一方、アクティブディフェンスは攻撃が発生した際に対応し、攻撃を中断するための手法である。アクティブディフェンスは、サイバーセキュリティ戦略の一環として用いられ、総合的なセキュリティ戦略の一部として考えられている。
引用・参照・底本
「NATO learning hard lessons about its future in Ukraine」 ASIATIMES 2023.09.07
「ロシア外務次官「米のウクライナへの劣化ウラン弾提供は犯罪行為」」 ParsToday 2023.09.07
「国連が、米の対ウクライナ劣化ウラン弾供与決定に懸念を表明」 ParsToday 2023.09.07
ウクライナ戦争におけるNATOの関与は、その領土を守るための適切な準備が不足していることを浮き彫りにしている。ウクライナはNATOと特にアメリカの約束に基づいて自身をロシアの攻撃から守ることを期待していたが、その期待が外れた。NATOは数百億ドルもの軍事支援を提供したが、ウクライナはロシアから奪回した領土がわずかで、多大な人員と装備の損失を被った。
NATOがドローンの大群や中距離および長距離ミサイルに対処するために適切に装備されていないことに触れている。これは誤った支出配分や空中防空力の無視に起因しているとされており、アメリカの防空も不十分であると指摘されている。
ウクライナでの戦闘において、ドイツ製の戦車であるレオパルトがロシアに対抗できなかったことが示されており、NATOの戦車も同様の脆弱性を抱えている可能性が指摘されている。また、戦車の防護についても議論され、アクティブディフェンス(註)の重要性が強調されている。
ロシアはウクライナで無人機を効果的に使用し、それに対抗する手段を持たないウクライナとNATOに対して優位性を保っている。また、ロシアは新たな兵器の開発と運用に成功しており、それが高価な兵器と弾薬の供給不足につながっている。
ウクライナ戦争がNATOが自身の領土を守る準備が不足していることを浮き彫りにし、欧州の政治と戦略におけるアプローチの大きな変化をもたらす可能性があると議論している。将来の指導者や政策についての予測も述べられている。
NATOとウクライナの戦争が現代の戦争の変化を示す事例であるとともに、NATOが将来の課題に対処するために必要な改革と対策を論じている。記事は軍事技術、戦術、戦略についての洞察を提供し、NATOとその加盟国が今後の脅威に対処するために必要な調整と改善を示唆している。
【要点】
ウクライナ戦争がいかにNATOの弱点と現代戦争に対する準備不足を露呈させたかについて論じている。
NATOはあまりにも現状に満足しすぎて、防空、戦車、その他の重要な能力を無視してきたと主張する。その結果、NATOは現在、ロシアの兵器や戦術に効果的に対抗するのに苦労している。
また、ウクライナ戦争でNATOの兵器や備蓄が枯渇し、同盟が将来の紛争に対応することがさらに困難になっているとも指摘している。
NATOの現在の準備状況についての厳粛な評価である。ロシアの攻撃を阻止し、打ち破ることを望むなら、同盟がやるべきことが山ほどあることは明らかだ。
米国とNATOがこれらの弱点に対処するために必要な変化を起こす用意があるかどうかを尋ねている。
ウクライナ戦争が明日終わったとしても、NATOは高水準の国防支出を継続し、備蓄を再構築するつもりがあるのかどうかを疑問視して締めくくられている。また、米国が調達システムを変更し、容易に入手可能な外国兵器を受け入れる用意があるかどうかも問うている。
NATOの弱点について多くの正当な指摘をしている。 ただし、NATO は防衛同盟であり、ロシアのような強力な敵と大規模な戦争を戦うように設計されていないことに注意することが重要である。それにもかかわらず、調査結果はNATOへの警鐘であり、ロシアを抑止し加盟国を保護したいのであれば、同盟が何らかの重大な変更を加える必要があることを示唆している。
ウクライナ戦争はNATOと米国への警鐘であると締めくくっている。NATOが必要な変化を起こさなければ、次の戦争への準備が整わないことになる。
・NATOはウクライナに1000億ドルの軍事援助を提供しているが、これには自国の即応性が犠牲となっている。
・NATOの防空体制は不十分で、無人機の群れや中・長距離ミサイルを防ぐことができない。
・NATOはウクライナに軍事援助を提供しているが、ロシアの進撃を止めるには十分ではなかった。
・NATOは、防衛費の増加、兵器の近代化、外国兵器の受け入れなど、防衛態勢を大きく変える必要がある。
・米国は調達システムをより効率的で即応性のあるものに変更する必要がある。
・NATOはより広範な戦争に対する準備が整っていないであろう。
・ウクライナ戦争はNATOと米国にとって警鐘だ。
・NATO の戦車はロシアの対戦車兵器に対して脆弱であり、より優れた防御が必要だ。
・NATOはサプライチェーンの問題により、十分な弾薬や代替武器の生産に苦戦している。
・NATOがロシアやその他の敵対国を阻止できるようにしたいのであれば、防衛態勢を大幅に変更する必要がある。
・NATOは米国の空軍力に依存しすぎ、自国の防空を無視してきた。
・NATOはロシアの無人機やミサイルに効果的に対抗できていない。
・ウクライナ戦争により、NATOの兵器庫と備蓄は枯渇した。
・米国とNATOは、将来の紛争に備えるために防衛態勢を大きく変える必要がある。
【桃源寸評】
極端に云えば、ウクライナ戦争は、米主導の西側対ロシア一国の戦いとなっている。斯様な不均衡の戦争ならば前者の必勝は疑いを挟まない筈なのだ。
が、後者には先ず、食料・資源・エネルギーの入手動線に何の不安も無いも同然である。当然前者が武器の生産・調達にあたふたしている間に後者は生産が整い供給可能となっている。
誰しも思うであろう、あの米国であるならば、武器弾薬・新兵器等どしどし現場に供給可能であると。
しかし、よく考えて見ると、米国は第二次世界大戦後、非正規軍や脆弱なそして貧弱な国家としか戦っていない、其れも現在のように徒党を組んでである。それでも、ベトナム戦争、直近ではアフガン戦争での敗走振りである。否、第二次世界大戦中でさえ、例えば、日本、最強の正規軍を持つ国家であったのか、大いに疑問である。日本・ドイツ・イタリア三国同盟の側に属した、いわゆる枢軸国でさえ同様であろう。
其の日本に原爆投下なのだ。或る意味では核戦争でさえ米国は今や始める気もないし、負ける。核大国が核を使用すると云うことは現在の状況では全面核戦争となる。従って、例えロシアがウクライナに核を使用したとしても、米国は其れに応じて核をロシアに投げ付けることは無く、露ウクライナ輔犠牲にしたまま、ロシアとの外交戦術に出る。
否、ロシアが核を使用する前に米国と折衝する。
此のウクライナ戦争は米国の実力が暴かれていることを知るべきだ。あの湾岸戦争のような事はロシア・中国相手には不可能に違いない。
日韓なども単に、軍事産業に儲けられてと云うか、ボラれているだけだ。
ウクライナでさえ梃摺っているのに、中国にちょっかいを出すなど、笑止千万である。
ただ儲けの為に、危機をでっち上げているだけなのだ。
ウクライナにゴミ兵器を突っ込めば、敗けというゴミが出るだけだ。
ウクライナに犯罪行為と見做される劣化ウラン弾を米国は提供する。「劣化ウラン弾の使用がもたらす環境への影響をあからさまに無視する米政府の姿勢の表れだ」と、リャブコフ外務次官。
また、ファルハン・ハク国連報道官も「国連は常に、世界各地での劣化ウラン弾の使用を懸念している」と。
米国の日本敗戦時の逆パターンである。
米国は“勝てる相手=弱い相手”としか戦争をしないが、其れでも潰走している。
(註)
アクティブディフェンス(Active Defense)は、情報セキュリティやサイバーセキュリティの文脈で使用される用語である。アクティブディフェンスは、サイバー攻撃に対抗するためのセキュリティ戦略や手法の一つである。
攻撃への対抗策:アクティブディフェンスは、サイバー攻撃者に対抗するために、セキュリティチームが攻撃を検知し、対応するための行動を取るアクションプランを含む。これは、攻撃が発生した際に、攻撃者の行動を追跡し、攻撃を中断しようとするものである。
リアルタイムの監視と対応:アクティブディフェンスは、システムやネットワークをリアルタイムで監視し、異常なアクティビティや侵入の兆候を検出することが重要だ。攻撃が検出された場合、速やかに対応策を実施し、被害を最小限に抑えることを目指す。
攻撃者の動きの阻止:アクティブディフェンスは、攻撃者の動きを制限し、彼らの侵入を防ぐための技術や手法を含む。これには、侵入検知システム(Intrusion Detection System)やファイアウォール、セキュリティポリシーの適用、不正アクセスのブロックなどが含まれる。
インシデントへの対応:アクティブディフェンスは、サイバー攻撃が成功した場合に備えて、迅速に侵害の範囲を特定し、侵害を制限するための手順を確立する。これには、侵害の解析、被害の最小化、攻撃者の排除、システムの復旧などが含まれる。
インテリジェンス活用:アクティブディフェンスは、サイバー脅威に関する情報収集と分析を通じて、未知の攻撃に備えるためにインテリジェンスを活用することがある。これにより、将来の攻撃に対する準備が進化し、より効果的なセキュリティ対策が構築される。
アクティブディフェンスは、パッシブディフェンス(Passive Defense)と対比されることがある。パッシブディフェンスはセキュリティ対策の一部としてシステムやネットワークを強化する手法であり、攻撃を防ぐことに主眼を置いている。一方、アクティブディフェンスは攻撃が発生した際に対応し、攻撃を中断するための手法である。アクティブディフェンスは、サイバーセキュリティ戦略の一環として用いられ、総合的なセキュリティ戦略の一部として考えられている。
引用・参照・底本
「NATO learning hard lessons about its future in Ukraine」 ASIATIMES 2023.09.07
「ロシア外務次官「米のウクライナへの劣化ウラン弾提供は犯罪行為」」 ParsToday 2023.09.07
「国連が、米の対ウクライナ劣化ウラン弾供与決定に懸念を表明」 ParsToday 2023.09.07
西側、経済的利益が脅かされると、人権等を叫ぶ ― 2023年09月08日 18:26
アフリカのクーデター(政権転覆)と西洋諸国の関与についての議論を提起している。
元フランス大統領ニコラ・サルコジが、2011年のリビアのムアンマル・カダフィ政権転覆を支援したことが取り上げられている。サルコジは、2007年の選挙キャンペーンに対するリビアからの資金提供の容疑で告発された。これにより、カダフィ政権転覆におけるサルコジの動機についての疑念が浮上した。
フランスがアフリカにおいて特別な関心を持っていることを指摘している。特に、リビアとガボンに対するフランスの関与に焦点を当てている。サルコジはガボンへの訪問を繰り返し行い、その関係に疑念が投げかけられている。
ガボンでのクーデターについても触れており、フランスと西洋諸国の役割に疑問を投げかけている。ガボンでは、疑わしい選挙がクーデターを引き起こし、国際監視団の派遣が行われなかったことに注目している。
西洋諸国がアフリカにおける民主主義や人権の問題について関心を持つのは、経済的利益が脅かされる場合に限られていると指摘している。特に、エネルギーや鉱物資源の利用に関連する事案に焦点を当てている。
西洋諸国のアフリカにおける政策の一貫性や動機に疑念を投げかけ、民主主義や人権問題に対する関心が経済的利益に基づいている可能性を示唆している。
アフリカにおける政治的な出来事と西洋諸国の役割についての洞察を提供しており、国際政治やアフリカの現状に関心を持つ人々にとって興味深いものだろう。
【要点】
ガボンでの最近のクーデターと、最終的にクーデターを引き起こした状況を作り出す上でのフランスの役割について論じている。フランスにはアフリカの政治に干渉してきた長い歴史があり、この干渉はしばしば私利私欲によって動機付けられてきたと主張する。
2007年の選挙運動のためにリビアからの資金提供を受け入れたとして告発されている元フランス大統領ニコラ・サルコジ氏に対する告発について論じることから始まる。この事件は、2011年のムアンマル・カダフィ大佐打倒を支持したサルコジ大統領の動機に疑問を投げかけていると主張する。オバマ大統領は2016年にThe Atlanticのインタビューで、フランスと英国が支援したカダフィへのクーデターの後、「リビアのフォローアップに関してヨーロッパ諸国に対して、近接性を考慮に入れると、もっと信頼していた」と述べたことにも言及している。 クーデター後。 これは、フランスがリビアの政治に干渉してきた歴史があるにもかかわらず、米国がフランスにリビアの主導権を握らせることに前向きだったことを示唆している。
2011年のムアンマル・カダフィ大佐打倒においてフランスが重要な役割を果たしたリビアの事例について論じる。当時のフランス大統領サルコジがクーデター支持の動機は個人的な経済的利益にあったと主張している。カダフィ大佐が2007年のサルコジ大統領の選挙運動に資金提供したと主張する米国の外交公電を引用した。
つまり、サルコジがリビアの政権転覆を支持した背後にある動機について疑念が生じたと述べている。リビアの情報機関は、フランスのエージェントをガダフィの捕獲と殺害に関与させ、サルコジの2007年の選挙運動に関連した隠蔽工作があったと主張した。
2011年、フランスはNATO主導のリビア介入で主導的な役割を果たし、その結果ムアンマル・カダフィ大佐の打倒と死がもたらされた。フランスがリビアの石油資源の管理を確保することに熱心だったため、この介入も私利私欲によって動機付けられたものであると主張する。
ガボンで起きた最近のクーデターに目を向ける。フランスにはガボンを50年以上統治してきたボンゴ家を支援してきた長い歴史があると指摘する。ガボンでの最近の大統領選挙が不正行為であると広く見なされていたとも指摘した。しかし、フランスは選挙に国際監視団を派遣せず、ガボンにおける民主主義の欠如を懸念していないことを示唆した。
西側諸国がアフリカにおける民主主義の欠如について不平を言うのは、新経営陣が自国の利益を脅かすのではないかと心配しているときだけだと主張する。鉄鋼生産に不可欠であり、西側諸国では重要視されているマンガンの例を挙げた。ガボンはマンガンの主要生産国であり、フランスや他の西側諸国がガボンのクーデターを懸念しているのは、新政府が同国の鉱物資源を国有化するのではないかと懸念しているだけだと述べている。
フランスと西側諸国はアフリカの政治への干渉をやめる必要があると主張して締めくくられている。この干渉は地域を不安定化し、アフリカ人が独自の民主主義を構築することをさらに困難にするだけだと主張する。
アフリカにおけるフランスと西側諸国の役割についていくつかの重要な点を提起している。
【桃源寸評】
「西洋諸国がアフリカにおける民主主義や人権の問題について関心を持つのは、経済的利益が脅かされる場合に限られていると指摘」は、ズバリと言い切った。
然りであるが、否、アフリカばかりではない。対中国を見れば理解できる。そして自国の民主主義・人権問題については沈黙した儘である。
引用・参照・底本
「African coups expose and unravel a web of Western meddling」 RT 2023.09.01
元フランス大統領ニコラ・サルコジが、2011年のリビアのムアンマル・カダフィ政権転覆を支援したことが取り上げられている。サルコジは、2007年の選挙キャンペーンに対するリビアからの資金提供の容疑で告発された。これにより、カダフィ政権転覆におけるサルコジの動機についての疑念が浮上した。
フランスがアフリカにおいて特別な関心を持っていることを指摘している。特に、リビアとガボンに対するフランスの関与に焦点を当てている。サルコジはガボンへの訪問を繰り返し行い、その関係に疑念が投げかけられている。
ガボンでのクーデターについても触れており、フランスと西洋諸国の役割に疑問を投げかけている。ガボンでは、疑わしい選挙がクーデターを引き起こし、国際監視団の派遣が行われなかったことに注目している。
西洋諸国がアフリカにおける民主主義や人権の問題について関心を持つのは、経済的利益が脅かされる場合に限られていると指摘している。特に、エネルギーや鉱物資源の利用に関連する事案に焦点を当てている。
西洋諸国のアフリカにおける政策の一貫性や動機に疑念を投げかけ、民主主義や人権問題に対する関心が経済的利益に基づいている可能性を示唆している。
アフリカにおける政治的な出来事と西洋諸国の役割についての洞察を提供しており、国際政治やアフリカの現状に関心を持つ人々にとって興味深いものだろう。
【要点】
ガボンでの最近のクーデターと、最終的にクーデターを引き起こした状況を作り出す上でのフランスの役割について論じている。フランスにはアフリカの政治に干渉してきた長い歴史があり、この干渉はしばしば私利私欲によって動機付けられてきたと主張する。
2007年の選挙運動のためにリビアからの資金提供を受け入れたとして告発されている元フランス大統領ニコラ・サルコジ氏に対する告発について論じることから始まる。この事件は、2011年のムアンマル・カダフィ大佐打倒を支持したサルコジ大統領の動機に疑問を投げかけていると主張する。オバマ大統領は2016年にThe Atlanticのインタビューで、フランスと英国が支援したカダフィへのクーデターの後、「リビアのフォローアップに関してヨーロッパ諸国に対して、近接性を考慮に入れると、もっと信頼していた」と述べたことにも言及している。 クーデター後。 これは、フランスがリビアの政治に干渉してきた歴史があるにもかかわらず、米国がフランスにリビアの主導権を握らせることに前向きだったことを示唆している。
2011年のムアンマル・カダフィ大佐打倒においてフランスが重要な役割を果たしたリビアの事例について論じる。当時のフランス大統領サルコジがクーデター支持の動機は個人的な経済的利益にあったと主張している。カダフィ大佐が2007年のサルコジ大統領の選挙運動に資金提供したと主張する米国の外交公電を引用した。
つまり、サルコジがリビアの政権転覆を支持した背後にある動機について疑念が生じたと述べている。リビアの情報機関は、フランスのエージェントをガダフィの捕獲と殺害に関与させ、サルコジの2007年の選挙運動に関連した隠蔽工作があったと主張した。
2011年、フランスはNATO主導のリビア介入で主導的な役割を果たし、その結果ムアンマル・カダフィ大佐の打倒と死がもたらされた。フランスがリビアの石油資源の管理を確保することに熱心だったため、この介入も私利私欲によって動機付けられたものであると主張する。
ガボンで起きた最近のクーデターに目を向ける。フランスにはガボンを50年以上統治してきたボンゴ家を支援してきた長い歴史があると指摘する。ガボンでの最近の大統領選挙が不正行為であると広く見なされていたとも指摘した。しかし、フランスは選挙に国際監視団を派遣せず、ガボンにおける民主主義の欠如を懸念していないことを示唆した。
西側諸国がアフリカにおける民主主義の欠如について不平を言うのは、新経営陣が自国の利益を脅かすのではないかと心配しているときだけだと主張する。鉄鋼生産に不可欠であり、西側諸国では重要視されているマンガンの例を挙げた。ガボンはマンガンの主要生産国であり、フランスや他の西側諸国がガボンのクーデターを懸念しているのは、新政府が同国の鉱物資源を国有化するのではないかと懸念しているだけだと述べている。
フランスと西側諸国はアフリカの政治への干渉をやめる必要があると主張して締めくくられている。この干渉は地域を不安定化し、アフリカ人が独自の民主主義を構築することをさらに困難にするだけだと主張する。
アフリカにおけるフランスと西側諸国の役割についていくつかの重要な点を提起している。
【桃源寸評】
「西洋諸国がアフリカにおける民主主義や人権の問題について関心を持つのは、経済的利益が脅かされる場合に限られていると指摘」は、ズバリと言い切った。
然りであるが、否、アフリカばかりではない。対中国を見れば理解できる。そして自国の民主主義・人権問題については沈黙した儘である。
引用・参照・底本
「African coups expose and unravel a web of Western meddling」 RT 2023.09.01
米国、ウクライナに劣化ウラン弾を供給 ― 2023年09月08日 19:44
アメリカ合衆国がウクライナにウラン弾薬を供給する計画に関する情報を提供している。
アメリカ合衆国はウクライナにウラン弾薬を供給する計画を進行中であり、この供給は2023年秋に予定されている。この供給は、M1エイブラムス戦車の初の引き渡しと一致する予定だ。
アメリカ国防総省の報道官であるSabrina Singhは、ウクライナがウラン弾薬を受け取る具体的な日付を提供しなかったが、ウクライナ政府が到着時期を発表すると述べた。また、アメリカはエイブラムス戦車が秋にウクライナに到着すると公言している。
アメリカ国防総省は、ウラン弾薬が公衆衛生にリスクをもたらすという主張を否定している。CDC(米国疾病対策予防センター)はウラン弾薬ががんを引き起こす証拠はないと結論づけ、WHO(世界保健機関)もウランやDU(劣化ウラン)への曝露による白血病や他のがんの増加が確認されなかったと述べている。
しかし、2022年にUN環境プログラムが発表した報告書や、2019年にEnvironmental Pollution誌に掲載された研究を引用し、劣化ウランと一般的な爆発物中の有害物質が皮膚刺激、腎不全、がんのリスク増加との関連が示唆されていることを指摘している。
イギリスはアメリカに先駆けてウクライナにウラン弾薬の供給を承認したことから、このアメリカの決定はモスクワで非難されている。ロシアの副外交大臣セルゲイ・リャブコフは、アメリカの供給を「エスカレーションを招く犯罪行為」と非難し、アメリカが現在または将来のウクライナ世代の健康を気にしていないと示唆している。
アメリカのウラン弾薬供給計画に対するロシアの反応や、ウラン弾薬の健康リスクに関する議論に焦点を当てている。ウクライナにおけるウラン弾薬の供給は国際的な関心事となっており、その影響や議論は今後も注視されるだろう。
【要点】
国防総省(Pentagon)は、劣化ウラン弾の輸送が今秋にウクライナに到着する予定であると発表した。この砲弾は、水曜日にワシントン政府が発表した1億7,500万ドルの支援パッケージの一部である。
劣化ウラン弾をウクライナに送るという米国の決定についてのものである。劣化ウランは、非常に密度が高く、装甲を貫通する可能性があるため、一部の種類の弾薬に使用される重金属だ。しかし、ガンなどの健康上の問題を引き起こす可能性のある有毒物質でもある。
劣化ウランは徹甲弾に使用される重金属だ。 鉛よりも密度が高く、戦車やその他の装甲車両に重大な損傷を与える可能性がある。しかし、人間や環境に健康上のリスクをもたらす可能性のある有毒物質でもある。
国防総省は、劣化ウラン弾ががんを引き起こすという証拠はないと述べた。しかし、国連環境計画は、劣化ウランは皮膚の炎症、腎不全、がんのリスク増加を引き起こす可能性があると警告している。
米国は劣化ウラン弾はロシア戦車に対抗するために使用されると述べた。しかし、ロシアは砲弾の引き渡しを、ウクライナ人の健康を損なう可能性のある「犯罪行為」であると非難した。
劣化ウランが皮膚炎、腎不全、がんのリスク増加を引き起こす可能性があると警告した2022年の国連環境計画報告書にも言及している。報告書はまた、劣化ウランと先天異常のリスクとの間には関連性があるとも述べている。
米国はウクライナへの劣化ウラン弾の引き渡しを発表した2番目の国となる。英国は3月にこうした供給にゴーサインを出した。
ウクライナ紛争が続く中、情勢は今後も緊迫した状況が続くとみられる。劣化ウラン弾の使用は紛争の深刻な激化であり、ウクライナ国民の健康と環境に重大な影響を与える可能性が高い。
米国は現在および将来のウクライナ世代の健康を気にしていないと述べて結論づけている。
劣化ウラン弾を引き渡すかどうかの決定は複雑だ。軍事面と人道面の両方を考慮する必要がある。最終的には、決定は米国政府に委ねられる。
・劣化ウラン弾の使用は、特定通常兵器に関する条約(CCW)(註)に違反する。ただし、米国は CCW の締約国ではない。
・劣化ウラン弾の使用については議論の余地がある。健康上のリスクが大きすぎると考える人もいれば、ロシアの戦車に対抗するために砲弾が必要だと考える人もいる。
・それらには依然として放射能が含まれており、摂取または吸入すると有毒になる可能性もある。
・ロシア政府は劣化ウラン弾の引き渡しを「犯罪行為」だと非難した。
・劣化ウラン弾をウクライナに送る決定により、紛争が激化する可能性が高い。ロシアはすでにこの引き渡しを非難しており、ロシアが報復する可能性もある。
・劣化ウラン弾の使用は、ウクライナ人の健康に長期的な影響を及ぼす可能性がある。破裂弾は環境を汚染する可能性があり、破裂弾にさらされた人に健康上の問題を引き起こす可能性もある。
【桃源寸評】
米国は、米国の軍事力に制約を与えるものについては拒否する、国際関連法に違背する姿勢を取る。一方では、他国に向かい法秩序を要求するという、かなり恣意的な判断を下す国家である。
(註)
「特定通常兵器に関する条約(Convention on Certain Conventional Weapons, CCW)」は、1980年に採択された国際的な軍縮条約である。CCWは、特定の通常兵器の使用と取引に関する規制を目的としており、これらの兵器が国際的な人道法に適合するようにすることを重要視している。CCWにはいくつかのプロトコル(追加プロトコル)が含まれており、各プロトコルは異なる種類の兵器に関する具体的な規制を定めている。
プロトコルI - 不必要な苦痛または過度な苦痛を与えないための手段と方法に関する規定
このプロトコルは、特定の通常兵器が戦闘時に不必要な苦痛や過度な苦痛を引き起こすのを防ぐための規定を提供している。具体的には、爆発物に関する規制や、兵器の使用における注意を払うための原則が含まれている。
プロトコルII - 地雷、爆発物、およびその他の類似の装置に関する規定
このプロトコルは、対人地雷および地雷に関する規制を設定し、これらの兵器の設置、使用、および除去に関する国際的な基準を確立している。地雷による民間人への被害を最小限に抑えるための規制が含まれている。
プロトコルIII - 爆発物の不定期爆発に関する規定
このプロトコルは、爆弾や弾薬などの爆発物が不定期に爆発するリスクを最小限に抑えるための規定を提供している。これにより、未爆発弾の問題や不安定な爆発物の取り扱いに関する安全基準が設定されている。
プロトコルIV - ブラインド効果に関する規定
プロトコルIVは、光線兵器の使用に関する規制を含み、この兵器が目に対して過度の損傷を引き起こすことを防ぐための規定を提供している。ブラインド効果を持つ兵器の使用を制限し、人道法に準拠させることを目的としている。
プロトコルV - 爆発物による非致死的な効果に関する規定
このプロトコルは、爆発物を使用した際の非致死的な効果に関する規制を設定している。兵器の使用において、死傷を最小限に抑えつつ、目的を達成するための規定が含まれている。
CCWは国際人道法の一部として位置づけられ、特に戦争中の兵器の使用において人道的な規制を強調している。各国がCCWに署名し、遵守することで、通常兵器の使用における人道的な標準を促進し、市民や兵士の保護を強化する役割を果たしている。
CWとは、特定通常兵器使用禁止条約(Convention on Certain Conventional Weapons)の略で、1980年に採択された国際条約です。CWは、地雷、対人地雷、ブービートラップ、焼夷兵器、残存性の高い化学兵器などの使用を規制しています。
米国は、CWの採択に賛成したが、署名と批准は行っていない。米国は、CWの規制が自国の安全保障に脅威を与える可能性があるとして、批准に消極的である。
米国は、劣化ウラン弾の使用が人権や環境に害を及ぼすという主張を否定している。米国は、劣化ウラン弾の使用は、必要かつ効果的な軍事手段であり、人権や環境に重大な損害を与えるものではないと主張している。
・劣化ウラン弾は、非常に高い貫通力を持つため、過度な殺傷効果をもたらす可能性がある。
・劣化ウラン弾は、燃焼時に酸化ウランの粉塵を発生させるため、不必要に苦痛を与える可能性がある。
・劣化ウラン弾は、環境に不必要な損害を与える可能性がある。
米国のCWに対する姿勢は、国際社会から批判されている。国際社会は、米国がCWの規制に積極的に取り組むことを求めている。
引用・参照・底本
「Pentagon reveals when Ukraine will receive depleted uranium shells」 RT 2023.09.08
「ロシア外務次官「米のウクライナへの劣化ウラン弾提供は犯罪行為」」 ParsToday 2023.09.07
「米国が劣化ウラン弾供与ならウクライナ産穀物も汚染=ザハロワ露外務省報道官」 SPUTNIK 2023.06.15
「米国はウクライナに10億ドルを割り当て、更にエイブラムス戦車用の劣化ウラン弾供与を決定した」 SPUTNIK 2023.09.07
「日本の野党、劣化ウラン弾を黙認する岸田首相を非難 岸田氏「人体への影響に関する確定的な結論は出ていない」」 SPUTNIK 2023.03.28
「【図説】劣化ウラン弾とは何か?」 SPUTNIK 2023.03.23
アメリカ合衆国はウクライナにウラン弾薬を供給する計画を進行中であり、この供給は2023年秋に予定されている。この供給は、M1エイブラムス戦車の初の引き渡しと一致する予定だ。
アメリカ国防総省の報道官であるSabrina Singhは、ウクライナがウラン弾薬を受け取る具体的な日付を提供しなかったが、ウクライナ政府が到着時期を発表すると述べた。また、アメリカはエイブラムス戦車が秋にウクライナに到着すると公言している。
アメリカ国防総省は、ウラン弾薬が公衆衛生にリスクをもたらすという主張を否定している。CDC(米国疾病対策予防センター)はウラン弾薬ががんを引き起こす証拠はないと結論づけ、WHO(世界保健機関)もウランやDU(劣化ウラン)への曝露による白血病や他のがんの増加が確認されなかったと述べている。
しかし、2022年にUN環境プログラムが発表した報告書や、2019年にEnvironmental Pollution誌に掲載された研究を引用し、劣化ウランと一般的な爆発物中の有害物質が皮膚刺激、腎不全、がんのリスク増加との関連が示唆されていることを指摘している。
イギリスはアメリカに先駆けてウクライナにウラン弾薬の供給を承認したことから、このアメリカの決定はモスクワで非難されている。ロシアの副外交大臣セルゲイ・リャブコフは、アメリカの供給を「エスカレーションを招く犯罪行為」と非難し、アメリカが現在または将来のウクライナ世代の健康を気にしていないと示唆している。
アメリカのウラン弾薬供給計画に対するロシアの反応や、ウラン弾薬の健康リスクに関する議論に焦点を当てている。ウクライナにおけるウラン弾薬の供給は国際的な関心事となっており、その影響や議論は今後も注視されるだろう。
【要点】
国防総省(Pentagon)は、劣化ウラン弾の輸送が今秋にウクライナに到着する予定であると発表した。この砲弾は、水曜日にワシントン政府が発表した1億7,500万ドルの支援パッケージの一部である。
劣化ウラン弾をウクライナに送るという米国の決定についてのものである。劣化ウランは、非常に密度が高く、装甲を貫通する可能性があるため、一部の種類の弾薬に使用される重金属だ。しかし、ガンなどの健康上の問題を引き起こす可能性のある有毒物質でもある。
劣化ウランは徹甲弾に使用される重金属だ。 鉛よりも密度が高く、戦車やその他の装甲車両に重大な損傷を与える可能性がある。しかし、人間や環境に健康上のリスクをもたらす可能性のある有毒物質でもある。
国防総省は、劣化ウラン弾ががんを引き起こすという証拠はないと述べた。しかし、国連環境計画は、劣化ウランは皮膚の炎症、腎不全、がんのリスク増加を引き起こす可能性があると警告している。
米国は劣化ウラン弾はロシア戦車に対抗するために使用されると述べた。しかし、ロシアは砲弾の引き渡しを、ウクライナ人の健康を損なう可能性のある「犯罪行為」であると非難した。
劣化ウランが皮膚炎、腎不全、がんのリスク増加を引き起こす可能性があると警告した2022年の国連環境計画報告書にも言及している。報告書はまた、劣化ウランと先天異常のリスクとの間には関連性があるとも述べている。
米国はウクライナへの劣化ウラン弾の引き渡しを発表した2番目の国となる。英国は3月にこうした供給にゴーサインを出した。
ウクライナ紛争が続く中、情勢は今後も緊迫した状況が続くとみられる。劣化ウラン弾の使用は紛争の深刻な激化であり、ウクライナ国民の健康と環境に重大な影響を与える可能性が高い。
米国は現在および将来のウクライナ世代の健康を気にしていないと述べて結論づけている。
劣化ウラン弾を引き渡すかどうかの決定は複雑だ。軍事面と人道面の両方を考慮する必要がある。最終的には、決定は米国政府に委ねられる。
・劣化ウラン弾の使用は、特定通常兵器に関する条約(CCW)(註)に違反する。ただし、米国は CCW の締約国ではない。
・劣化ウラン弾の使用については議論の余地がある。健康上のリスクが大きすぎると考える人もいれば、ロシアの戦車に対抗するために砲弾が必要だと考える人もいる。
・それらには依然として放射能が含まれており、摂取または吸入すると有毒になる可能性もある。
・ロシア政府は劣化ウラン弾の引き渡しを「犯罪行為」だと非難した。
・劣化ウラン弾をウクライナに送る決定により、紛争が激化する可能性が高い。ロシアはすでにこの引き渡しを非難しており、ロシアが報復する可能性もある。
・劣化ウラン弾の使用は、ウクライナ人の健康に長期的な影響を及ぼす可能性がある。破裂弾は環境を汚染する可能性があり、破裂弾にさらされた人に健康上の問題を引き起こす可能性もある。
【桃源寸評】
米国は、米国の軍事力に制約を与えるものについては拒否する、国際関連法に違背する姿勢を取る。一方では、他国に向かい法秩序を要求するという、かなり恣意的な判断を下す国家である。
(註)
「特定通常兵器に関する条約(Convention on Certain Conventional Weapons, CCW)」は、1980年に採択された国際的な軍縮条約である。CCWは、特定の通常兵器の使用と取引に関する規制を目的としており、これらの兵器が国際的な人道法に適合するようにすることを重要視している。CCWにはいくつかのプロトコル(追加プロトコル)が含まれており、各プロトコルは異なる種類の兵器に関する具体的な規制を定めている。
プロトコルI - 不必要な苦痛または過度な苦痛を与えないための手段と方法に関する規定
このプロトコルは、特定の通常兵器が戦闘時に不必要な苦痛や過度な苦痛を引き起こすのを防ぐための規定を提供している。具体的には、爆発物に関する規制や、兵器の使用における注意を払うための原則が含まれている。
プロトコルII - 地雷、爆発物、およびその他の類似の装置に関する規定
このプロトコルは、対人地雷および地雷に関する規制を設定し、これらの兵器の設置、使用、および除去に関する国際的な基準を確立している。地雷による民間人への被害を最小限に抑えるための規制が含まれている。
プロトコルIII - 爆発物の不定期爆発に関する規定
このプロトコルは、爆弾や弾薬などの爆発物が不定期に爆発するリスクを最小限に抑えるための規定を提供している。これにより、未爆発弾の問題や不安定な爆発物の取り扱いに関する安全基準が設定されている。
プロトコルIV - ブラインド効果に関する規定
プロトコルIVは、光線兵器の使用に関する規制を含み、この兵器が目に対して過度の損傷を引き起こすことを防ぐための規定を提供している。ブラインド効果を持つ兵器の使用を制限し、人道法に準拠させることを目的としている。
プロトコルV - 爆発物による非致死的な効果に関する規定
このプロトコルは、爆発物を使用した際の非致死的な効果に関する規制を設定している。兵器の使用において、死傷を最小限に抑えつつ、目的を達成するための規定が含まれている。
CCWは国際人道法の一部として位置づけられ、特に戦争中の兵器の使用において人道的な規制を強調している。各国がCCWに署名し、遵守することで、通常兵器の使用における人道的な標準を促進し、市民や兵士の保護を強化する役割を果たしている。
CWとは、特定通常兵器使用禁止条約(Convention on Certain Conventional Weapons)の略で、1980年に採択された国際条約です。CWは、地雷、対人地雷、ブービートラップ、焼夷兵器、残存性の高い化学兵器などの使用を規制しています。
米国は、CWの採択に賛成したが、署名と批准は行っていない。米国は、CWの規制が自国の安全保障に脅威を与える可能性があるとして、批准に消極的である。
米国は、劣化ウラン弾の使用が人権や環境に害を及ぼすという主張を否定している。米国は、劣化ウラン弾の使用は、必要かつ効果的な軍事手段であり、人権や環境に重大な損害を与えるものではないと主張している。
・劣化ウラン弾は、非常に高い貫通力を持つため、過度な殺傷効果をもたらす可能性がある。
・劣化ウラン弾は、燃焼時に酸化ウランの粉塵を発生させるため、不必要に苦痛を与える可能性がある。
・劣化ウラン弾は、環境に不必要な損害を与える可能性がある。
米国のCWに対する姿勢は、国際社会から批判されている。国際社会は、米国がCWの規制に積極的に取り組むことを求めている。
引用・参照・底本
「Pentagon reveals when Ukraine will receive depleted uranium shells」 RT 2023.09.08
「ロシア外務次官「米のウクライナへの劣化ウラン弾提供は犯罪行為」」 ParsToday 2023.09.07
「米国が劣化ウラン弾供与ならウクライナ産穀物も汚染=ザハロワ露外務省報道官」 SPUTNIK 2023.06.15
「米国はウクライナに10億ドルを割り当て、更にエイブラムス戦車用の劣化ウラン弾供与を決定した」 SPUTNIK 2023.09.07
「日本の野党、劣化ウラン弾を黙認する岸田首相を非難 岸田氏「人体への影響に関する確定的な結論は出ていない」」 SPUTNIK 2023.03.28
「【図説】劣化ウラン弾とは何か?」 SPUTNIK 2023.03.23