自由を恐れる自由主義標榜大国、米国2024年09月15日 07:34

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【桃源寸評】

 何の証拠も提示せずに一方的に決めつける米国、最早、言論で闘うことの出来ない愚かな国に成り下がっている。

 したがって、米国の言うことは信用できない。他国などを誣告し、貶めようとするも、読者に偽旗が見抜かれている。

 軍事力や経済力を振り翳しても、今では通用しない。墓穴を掘るのが精々である。

 米国は何様のつもりなのだろうか。世界は米国の言い成りにはならない。米国と付き合う国は"国益・主権を損なう"ことを覚悟することだ。

 米国に言論の自由などを語る資格は無い。

 此の幼児的発想の米国、<月の影取る猿>か。

【寸評 完】

【概要】

 アメリカがRT(ロシア・トゥデイ)をスケープゴートにして、自国の「ソフトパワー」の失敗を隠そうとしていると主張している。RTは、アメリカの外交政策の「不都合な真実」を報じることで、特にグローバルサウス(南半球の新興国や途上国)や一部の西側諸国で影響力を持つようになったと言及されている。これに対してアメリカは、RTが「情報機関」として隠密な影響操作に従事していると非難し、制裁を課したが、その根拠は不十分であり、むしろアメリカ自身がソフトパワー競争に敗れた結果であるとしている。

 アメリカは、RTがロシアの情報機関に情報を渡し、選挙や内政に干渉する計画があると主張しているが、証拠は示されていない。一方で、アメリカの主要なメディアも長年にわたり世界各地で同様のことをしてきたと批判している。この記事の著者は、RTが単に「アメリカの不都合な真実」を伝え、ロシアの視点を提供しただけであり、これがRTの人気の一因であると主張している。

 また、ロシアは新しい多極的な世界秩序を提唱しており、これが小国や中規模国により大きな発言権を与えるとして、多くのグローバルサウスの国々から支持されていると指摘している。

【詳細】

 アメリカがRT(ロシア・トゥデイ)を「スケープゴート(責任転嫁の対象)」にすることで、自国のグローバルな「ソフトパワー」戦略の失敗を隠そうとしているという論点が展開されています。著者の主張をより詳細に説明します。

 1. RTへの制裁と「情報機関」扱い

 アメリカはRTを「未申告の情報機関」として、隠密な影響操作を行っているとして制裁を課した。特に、ロシアがモルドバの選挙に干渉し、選挙結果が不利な場合は混乱を起こそうとしているとする主張に基づいている。しかし、記事ではこれらの主張は証拠が欠けており、根拠のないものであると批判されている。さらに、アメリカ自身の主要メディアも、過去に同様の情報操作や外国政府への干渉を行ってきたとし、アメリカの二重基準を指摘している。

 2. RTの役割:アメリカの「不都合な真実」の報道

 RTは、アメリカの外交政策やグローバルな動きに関する「不都合な真実」を報道することで、その視点を広く発信してきた。この記事では、特にグローバルサウス(南半球の新興国や途上国)の人々や、西側諸国の一部の層が、RTの報道を信頼し支持するようになった理由として、アメリカや西側のメディアが報じない「事実」やロシアの視点をRTが提供している点が挙げられている。

 3. ソフトパワーの失敗:アメリカの影響力低下

 アメリカは、ソフトパワーを強化するために「US Agency for Global Media(アメリカ国際放送)」に多額の資金を投入してきたが、その結果は思わしくない。特にウクライナ戦争に対する国際的な支持を得る上で失敗しており、その責任をRTに押し付けているとされている。アメリカは、各国がロシアに対して経済制裁を課し、ウクライナを支援することを期待していたが、多くの国々がこの期待に応えなかった。これは主に、各国の指導者が自国経済を守るためにロシアとの関係を維持しようとした戦略的判断に基づいていると指摘されている。

 4. RTが提供する「代替の視点」

 RTの報道は、アメリカや西側のメディアが無視または意図的に隠している情報に焦点を当てている。特に、ウクライナ戦争の背景やアメリカの外交政策に関する報道がその例である。これにより、多くの視聴者が自分自身で判断し、アメリカの主張とは異なる結論に至ったとされている。RTは、アメリカが主張する「ルールに基づく秩序」が実際には西側諸国の利益を守るためのものであると批判し、代わりにロシアが推進する「多極的な世界秩序」の方が公平であり、特にグローバルサウスの国々にとって有益であると訴えている。

 5. 多極的世界秩序とグローバルサウスの支持

 ロシアは、多極的な世界秩序を提唱しており、これによって小国や中規模の国々がより大きな発言権を持つことができると主張している。この記事では、これがグローバルサウスの国々やその国々の人々からロシアが支持される理由の一つであると説明されている。一方で、アメリカが推進する「ルールに基づく秩序」は、西側諸国が引き続き支配的な地位を保つためのものであり、これが他国の反発を招いているとしている。

 6. アメリカの反応と皮肉

 アメリカがRTに対して「情報機関」というレッテルを貼り、制裁を課したことについて、著者はこれを「知的侮辱」として批判している。RTの視聴者が、単に外国のスパイ機関に「騙されている」とするアメリカの主張は、視聴者の知性を軽視したものだと述べている。また、ロシアの視点を報じるRTに対するアメリカの恐れが、このような過剰反応に繋がっていると指摘している。RTは、アメリカの言論の自由に関する理念を引用し、アメリカ自体が異なる意見を恐れていることを示唆している。

 7. 結論としてのケネディの引用

 RTの副編集長であるアンナ・ベルキナは、アメリカの主張に対して、故ジョン・F・ケネディ大統領の言葉を引用している。「事実を判断する自由市場を恐れる国家は、その国民を恐れている」というケネディの言葉を引用し、アメリカが現在、異なる視点を持つメディアを恐れていることを示している。

 全体を通じて、この記事はアメリカがRTを利用して自国の情報戦争における敗北を隠そうとしているという視点を持ち、RTの活動を正当化しつつ、アメリカの二重基準や情報操作を批判している。
 
【要点】

 ・アメリカはRT(ロシア・トゥデイ)を「情報機関」として制裁を課したが、証拠がないと批判されている。
 ・RTはアメリカの外交政策に関する「不都合な真実」を報道し、特にグローバルサウスや一部の西側諸国で支持を得ている。
 ・アメリカの「US Agency for Global Media」に多額の予算が投入されているが、ウクライナ支援に関してソフトパワーの効果は薄く、その失敗をRTに責任転嫁しているとされている。
 ・アメリカはRTがモルドバの選挙に干渉する計画があると主張しているが、証拠は示されていない。
 ・RTは、アメリカや西側のメディアが報じないロシアの視点を提供しており、視聴者は自分で情報を判断できるとされている。
 ・ロシアは「多極的な世界秩序」を提唱し、グローバルサウスの国々から支持を集めている。これに対し、アメリカの「ルールに基づく秩序」は西側諸国の利益を守るためのものであると批判されている。
 ・アメリカがRTを「情報機関」として非難することは、視聴者を侮辱し、アメリカが異なる意見を恐れていることを示している。
 ・RTの副編集長は、ジョン・F・ケネディの言葉を引用し、アメリカが自由市場での意見の対立を恐れていると批判した。

【引用・参照・底本】

RT Is Being Scapegoated For The US’ Global Soft Power Failures Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.14
https://korybko.substack.com/p/rt-is-being-scapegoated-for-the-us?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148880700&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&token=eyJ1c2VyX2lkIjoxMTQ3ODcsInBvc3RfaWQiOjE0ODg4MDcwMCwiaWF0IjoxNzI2MzAyMDA2LCJleHAiOjE3Mjg4OTQwMDYsImlzcyI6InB1Yi04MzU3ODMiLCJzdWIiOiJwb3N0LXJlYWN0aW9uIn0.G1rNcTKYhjrVFLvbFfRXhkAet2Iowv0HpbRQO3IsoOU&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

モディ首相:月21日-24日にかけて訪米2024年09月15日 10:11

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【概要】

 インドのモディ首相が9月21日から24日にかけて米国を訪問し、バイデン大統領がデラウェア州の自宅で開催するクアッドサミットに出席する。この訪問は、昨年の暗殺未遂事件や先月のバングラデシュでの政権交代など、米印関係に生じた問題を背景に行われる。これらの出来事は、両国のエリート層と市民社会の間に不信感を生じさせ、バングラデシュの新政権の政策によってはインドの国家安全保障に脅威をもたらす可能性がある。

 クアッドサミットは、モディ首相とバイデン大統領がこれらの問題について話し合うための機会でもある。本来はインドが今年のサミットを主催する予定であったが、米国に変更されまし。この背景には、バイデン大統領が体調的にインドへの渡航が難しいことや、米国政府が昨年インドを暗殺計画に関与したとして非難したため、バイデン大統領がインドを訪問することがスキャンダラスになる可能性があることが考えられる。

 今回の訪問では、米印間の不信感の軽減に加え、ウクライナ紛争についても話し合われる見込みである。モディ首相は、モスクワとキーウを訪問しており、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の双方とこの問題について話し合った数少ない人物の一人である。

 今回の訪問は、クアッドや米印二国間関係だけに焦点が当てられるわけではなく、インドのウクライナ平和プロセスにおける役割にも関わる可能性がある。ただし、具体的な平和提案が存在するかどうかはまだ不明である。

 最後に、ロシアやBRICSもインドが米国からの圧力を軽減することを望んでおり、今回の訪問がその一助となるかもしれないが、大きな期待は控えるべきである。それでも、この訪問は重要な出来事であり、無視することはできない。

【詳細】

 インドのモディ首相が9月21日から24日にかけて米国を訪問し、バイデン大統領がデラウェア州で主催するクアッドサミットに出席することが注目されている。このサミットは、米国、日本、オーストラリア、インドの4カ国による安全保障協力の枠組みであるクアッド(Quad)の一環として行われる。しかし、今回の訪問には特に米印関係における複雑な背景が存在しており、単なるクアッドの枠を超えた意義を持つと考えられる。

 背景:米印関係の緊張

 米印間の関係は、昨年からいくつかの重大な出来事により緊張してきた。その一つは、インドが昨年、二重国籍の米国市民に対する暗殺計画に関与したとされる疑惑である。この事件は米印両国の間で深い不信感を生じさせ、両国のエリート層や市民社会にもその影響が広がった。また、バングラデシュで先月発生した政権交代に対する米国の役割が、インドの国家安全保障にとって新たな脅威をもたらす可能性があり、米印関係はさらに悪化している。

 クアッドサミットの重要性

 こうした背景の中で開催されるクアッドサミットは、モディ首相とバイデン大統領が直接対話する機会を提供する。本来、今年のクアッドサミットはインドが主催する予定であったが、米国にその役割が変更された。これは、バイデン大統領の健康問題や、米国側が昨年の暗殺疑惑でインドを非難したことによるスキャンダル回避のためと考えられる。バイデン大統領がインドを訪問することで、政治的な影響が避けられないため、米国内でサミットを開催することが選ばれた可能性がある。

 ウクライナ紛争におけるインドの役割

 今回の訪問のもう一つの重要な要素は、ウクライナ紛争に関連する話し合いである。モディ首相はこれまでにロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の双方と直接会談を行っており、ウクライナ問題における非西側の平和プロセスにおいてインドが重要な役割を果たす可能性がある。インドは、米中関係が悪化している中で中国に代わってこの役割を担うことが期待されている。これにより、インドが米国やロシアとの外交的な立場を強化することができ、両国とのバランスを取った外交戦略が展開されると見られている。

 インドの中立的外交とBRICSの立場

 今回のモディ首相の米国訪問は、インドがロシアやBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)との関係を損なうものではない。インドはあくまで自国の利益を追求するために、米国との関係改善を図りながらも、ロシアやBRICSとの経済的・政治的な協力を維持している。特に、インドとロシアの経済関係は拡大しており、逆にロシアと中国の関係には問題が生じ始めているとされている。ロシアはインドが米国と関係を持つことを容認しており、インドが米国との対話を通じて受ける圧力を軽減することは、ロシアやBRICSにとっても利益となるだろう。

 結論:期待を控えながらも注目すべき訪問

 米印関係における緊張は非常に深刻であり、今回の訪問で完全に解決することは期待できないが、少なくとも両国の不信感を軽減し、対話の糸口を見つける機会となるかもしれない。また、インドがウクライナ平和プロセスにおいてどのような役割を果たすかは、今後の国際情勢に大きな影響を与える可能性がある。このため、今回のモディ首相の訪問は、特別なイベントではないものの、見過ごすことのできない重要な出来事であると言える。
 
【要点】

 ・モディ首相の訪米: 9月21日から24日にかけてモディ首相が米国を訪問し、バイデン大統領がデラウェア州で主催するクアッドサミットに出席。

 ・米印関係の背景: 昨年の暗殺未遂疑惑やバングラデシュでの政権交代を巡る米国の関与により、米印間の緊張が高まっている。

 ・クアッドサミットの重要性: サミットは米印両国の対話の場として、両国間の不信感を軽減し、米国側からの圧力を和らげる機会を提供。

 ・開催地変更の理由: インドが今年のサミットを主催する予定だったが、バイデン大統領の健康問題や、暗殺未遂疑惑による政治的リスクを避けるため、米国内での開催に変更された。

 ・ウクライナ紛争におけるインドの役割: モディ首相はロシアとウクライナの双方と直接会談しており、非西側の平和プロセスにおいてインドが重要な役割を果たす可能性がある。

 ・インドの中立的な外交姿勢: インドは米国との関係改善を目指しつつも、ロシアやBRICSとの協力を維持し、両方の関係をバランスよく管理。

 ・ロシアとBRICSの立場: ロシアはインドの米国との対話を支持しており、インドが米国からの圧力を軽減することはロシアやBRICSの利益にもつながる。

 ・期待を抑えた見方: 米印間の不信感は根深いため、完全な解決は期待できないが、対話の促進やウクライナ平和プロセスでのインドの役割が注目される。

【参考】

 ☞ インドが関与したとされる暗殺未遂疑惑は2023年に浮上した。米国政府が、インドが二重国籍を持つ米国市民に対して暗殺計画を企てたと非難したことで、米印関係が急速に悪化した。この疑惑は2023年後半に特に注目を集め、両国間の信頼関係に大きな影響を与えた。

 今回のモディ首相の訪米がこの疑惑を直接解決するためのものかは不明であるが、この問題が両国の間で重要な議題として扱われる可能性がある。また、バイデン大統領がこの問題に対処する際にインドへの強い批判や圧力がかかることが予想され、クアッドサミット後の対話で何らかの進展が見られるかが注目されている。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

The Upcoming Quad Summit Is An Opportunity For India & The US To Patch Up Their Problems Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.14
https://korybko.substack.com/p/the-upcoming-quad-summit-is-an-opportunity?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148878470&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

ロシア:IMF第4条協議が再開2024年09月15日 10:40

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【概要】

 ロシアが国際通貨基金(IMF)と再び関わりを持つ理由は、複雑な国際金融の現状とロシアの戦略的な目標に関係している。

 IMFのコミュニケーションディレクターであるジュリー・コザックは、2021年以来初めてロシアとのIMF第4条協議が再開されると発表した。これはIMFのメンバー国であるロシアが義務的に行うべき手続きであり、ウクライナ侵攻後の不安定な経済状況がこれまで協議の障害となっていたが、経済が安定したため、協議が再開されることになった。

 また、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相も、IMFや世界貿易機関(WTO)での改革が必要であり、ロシアはその過程に積極的に関わるべきだと主張している。彼は、G7諸国がこれらの機関での特権的な地位を維持しようとしているものの、この改革の流れを止めることはできないと述べている。ロシアはIMF内での改革を通じて、金融の多極化を促進しようとしており、IMFもその方向性に同意している兆しを見せている。

 IMFはBRICS拡大も称賛しており、BRICSメンバーのほとんどがIMFに所属している事実を指摘している。このことから、BRICSとIMFの間には一定の関係が存在し、両者の相互依存が強調されている。

 要するに、ロシアはIMFと再び関わることで、金融の多極化を徐々に進めるために必要な役割を果たそうとしており、IMFもこの過程でのパートナーとして重要な存在となっている。

【詳細】

 ロシアがIMFと再び関わりを持つ理由は、いくつかの主要な要素に基づいている。以下に詳細を説明する。

 1. IMFとの関係の再構築

 IMFは、国際的な金融安定を確保するために、加盟国と定期的に経済状況をレビューする「第4条協議」を実施している。ロシアは2022年のウクライナ侵攻以来、経済的不安定性が続いていたため、この協議が難しかった状況があった。しかし、最近の経済状況が安定してきたため、IMFはロシアとの協議を再開することに決定した。

 2. 金融の多極化への貢献

 ロシアは、国際金融体制の多極化を推進するためにIMFとの再接触を図っている。ロシアのラブロフ外相は、IMFやWTOでの改革が必要であると述べており、これはロシアが単独でなく、他のBRICS諸国と協力して金融体制を多極化しようとしていることを示している。この多極化は、特にG7諸国の影響力を相対化し、より均衡の取れた国際金融体制を目指すものである。

 3. BRICSとIMFの関係

 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)もIMFのメンバーであり、IMFの改革を通じて金融の多極化を促進しようとしている。BRICSの拡大はIMFからも歓迎されており、これはIMFが新興市場国や開発途上国との関係を強化し、より広範な国際協力を目指している証である。ロシアもBRICSの一員として、IMF内での改革に関与し、金融の多極化を進める意図がある。

 4. 経済的相互依存とリスク回避

 ロシアは、経済的に西側諸国と一定の相互依存関係を維持しており、これにはエネルギー資源や鉱鉱などが含まれる。急激な金融ショックや資源の供給停止が中国やインドなどの主要な貿易パートナーに悪影響を与え、結果的にロシア自身にも負の影響が及ぶ可能性がある。このため、ロシアは西側との関係を完全に断つことなく、穏健な改革と協力の道を選んでいる。

 5. IMF内での役割と影響力の強化

 ロシアは、IMFにおける自国の役割を強化し、国際金融体制の改革に貢献することで、より大きな影響力を持つことを目指している。IMF内での活動を通じて、ロシアは金融システムの多極化を推進しつつ、自国の経済的利益も確保しようとしている。

 まとめ

 ロシアがIMFと再接触する理由は、国際金融体制の改革を進め、金融の多極化を促進し、自国の経済的利益を保つためである。IMFとの関係再構築は、ロシアが国際的な金融のプレーヤーとしての役割を維持し、強化するための戦略的な動きの一環と言える。
 
【要点】

 ロシアがIMFと再関わりを持つ理由を箇条書きで説明します:

 1.第4条協議の再開

 ・IMFは加盟国と経済状況をレビューする「第4条協議」を定期的に実施。
 ・ロシアはウクライナ侵攻後、経済的不安定のため協議が難しかったが、最近の安定で再開が決定。

 2.金融の多極化への貢献

 ・ロシアは国際金融体制の多極化を推進するためにIMFと再接触。
 ・ラブロフ外相はIMFやWTOの改革が必要であると主張し、多極化を進める意向。

 3.BRICSとIMFの関係

 ・BRICSのメンバーであるロシアはIMFの改革に関与。
 ・IMFはBRICSの拡大を歓迎しており、新興市場国との協力を強化。

 4.経済的相互依存とリスク回避

 ・ロシアは西側諸国との経済的相互依存関係を維持。
 ・資源供給停止による影響を回避するため、急激なショックを避ける意図。

 5.IMF内での役割と影響力の強化

 ・IMf内での活動を通じてロシアの影響力を強化し、金融システムの多極化を推進。 

【参考】

 ☞ IMF第4条協議(Article IV Consultations)について、以下のポイントで説明する。

 1.目的

 ・IMF第4条協議は、加盟国の経済状況、政策、見通しをレビューし、国際金融システムの安定を維持することを目的としている。

 2.実施頻度

 各加盟国について年に1回実施されるのが基本である。

 3.プロセス

 ・IMFの専門チームが加盟国の政府と対話し、経済データを分析。
 ・協議には、政府関係者、中央銀行、民間セクターの代表など、複数のステークホルダーとの面談が含まれる。

 4.成果物

 ・協議の結果、IMFは加盟国に対して経済政策の助言や勧告を行う。
 ・また、IMFは各国の経済状況を評価した報告書を公表する。

 5.義務

 ・IMFの加盟国は、第4条協議に参加する義務がある。
 ・この協議はIMFの「設立条約」(Articles of Agreement)の一部として定められている。

 5.影響

 ・第4条協議は、加盟国の経済政策に対する国際的な視点を提供し、政策の透明性を高める役割を果たす。
 ・経済政策の調整や改善のための具体的な提案が行われることがある。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Why’s Russia Re-Engaging With The IMF? Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.13
https://korybko.substack.com/p/whys-russia-re-engaging-with-the?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148841681&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

ロシアの最近の展開:ドンバスの進展・クルスク反攻2024年09月15日 11:57

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【概要】

 ロシア・ウクライナ紛争の最近の動向の概要

 ドンバスの進展

 ・ロシアの前進:最近の展開では、ロシア軍はドンバスで大きな進歩を遂げている。主な行動には、グリゴロフカ、ヴォディアノエ、およびノヴゴロドフカ、カリノヴォ、メムリク、ガリツィノフカ、ドリノフカなどの他のさまざまな集落の占領が含まれる。これらの動きにより、ロシアの支配はオチェレティーノの西と南西に拡大し、ウクライナの支配下にあるポクロフスクに接近している。

 ・セリドヴォとウクライナ:セリドヴォとウクライナでは激しい戦闘が報告されており、ウクライナではロシアが部分的に支配している。クラスノゴロフカの解放は注目され、ガリツィノフカとクラスノゴロフカの間に残っていたウクライナ軍の大規模な包囲につながった。

 クルスク反攻

 ・ロシアの反攻:ロシアはクルスク州で反攻を開始し、8月上旬以降にウクライナが占領した10の集落の支配を取り戻した。これには、アパナソフカ、ビャホヴォ、スナゴストなどの村が含まれる。

 ・ウクライナの抵抗:ウクライナ軍は国境を突破しようと試みたが、困難に直面している。最近のウクライナ軍のロシア領内への進出の試みは撃退され、車両や装備などの損失が出た。

 ・死傷者と装備の損失:ロシアの推定では、ウクライナ軍は12,795人以上の兵士を失い、戦車、装甲車、さまざまな砲兵システムなどの装備に大きな損害を与えたと報告されている。

 ストライクドローンの帰還

 ・ドローンの使用の増加:ロシアのオリオンやウクライナのバイラクタルTB2 UAVなどの大型ストライクドローンが戦場に再び登場した。ロシアの無人機はウクライナの戦車を標的にしており、いくつかのビデオでは攻撃の成功を示している。
 
 物流ストライキ

 ・インフラ攻撃:ロシア軍は、橋や陸橋など、ポクロフスクとその周辺のインフラを標的にしている。これらの攻撃は甚大な被害をもたらし、道路と鉄道の両方の接続性に影響を与えている。一部の構造物はひどく損傷しているか、動作不能になっているが、他の構造物は部分的に無傷のままである。

 これらの展開は、紛争の主要地域で進行中の激しい戦闘と支配のシフトを反映している。

【詳細】

 ロシア・ウクライナ紛争の最近の動向の詳細な概要

 ドンバスの進歩

 1.ドンバスにおけるロシアの前進:

 ・グリゴロフカ:2024年9月10日、ロシア国防省は、チャソフ・ヤールの北にある村、グリゴロフカの占領を発表した。この解決は、Chasov Yarが激しく争われているため、戦略的に重要である。
 ・ヴォディアノエ:同日、ロシア軍はウグレダルの北東にある小さな鉱山の町、ヴォディアノエも占領した。ヴォディアノエはウクライナ軍によって要塞化されており、その占領はこの地域のウクライナの兵站を混乱させている。
 ・西ドンバス:ロシア軍は、かつてのウクライナの拠点であり兵站の中心地であったオチェレティーノの西と南西に大幅な前進を遂げた。彼らはノヴゴロドフカ、カリノヴォ、メムリク、ガリツィノフカ、ドリノフカを支配している。

 2.セリドヴォとウクライナの現在の状況:

 ・セリドヴォとウクライナ:激しい戦闘が続いており、ウクライナではロシアが部分的に支配していると報告されている。ガリツィノフカの南東に位置するクラスノゴロフカも解放された。この地域のウクライナ軍は現在、大部分が包囲されており、深刻な兵站上の課題に直面する可能性がある。

 3.包囲とウクライナ軍の撤退

 ・ガリツィノフカとクラスノゴロフカの間の地域は、ウクライナ軍にとって大きなポケットとなっており、ウクライナ軍は陣地の維持に困難に直面していると報じられている。ウクライナのメディアは、一部の部隊が陣地を維持するよう命令されているにもかかわらず撤退を開始したと報じている。

 クルスク反攻

 1.ロシアの反撃

 ・最近の成果:モスクワはクルスク州で反攻を開始し、8月上旬の侵攻開始以来、ウクライナが占領した10の集落の支配を取り戻した。これらには、アパナソフカ、ビャホヴォ、ヴィシネフカ、ヴィクトロフカ、ヴネザプノエ、ゴルデエフカ、クラスヌークチャブルスコエ、オブホフカ、スナゴスト、デシャティ・オクチャブルが含まれる。
 ・戦術的影響:これらの村々の奪還は、特に多くがウクライナ軍が使用する主要道路沿いに位置しているため、ウクライナの兵站を複雑にしている。

 2.ウクライナの抵抗と死傷者

 ・ウクライナの反撃:これに対し、ウクライナ軍はさらに西のいくつかの地点でロシアの防衛線を突破しようと試みた。しかし、これらの試みは大部分が成功していない。ウクライナ軍は激しい砲火に直面しており、その結果、車両や装備が失われている。
 ・報告された損失:ロシアの情報源によると、ウクライナは12,795人以上の兵士と、108台の戦車やさまざまな装甲車両などの多数の装備を含む、大幅な損失を被っている。

 ストライクドローンの帰還

 1.ドローンの復活

 ・ロシアのドローン:この紛争では、ロシアのオリオンUAVのような大型の攻撃ドローンが復活している。これらのドローンは、ウクライナの防空網が縮小したため、現在クルスク州で運用されている。ビデオは、これらの無人機が誘導爆弾とミサイルでウクライナの戦車を標的にしていることを示している。
 ・例: ある動画では、ゴンチャロフカで Forpost-RU ドローンがウクライナの T-64BV 戦車 2 台を攻撃している様子が映っている。別のビデオでは、オリオンのドローンが誘導ミサイルでウクライナのT-64BV戦車を破壊する様子が紹介されている。

 物流ストライキ

 1.インフラストラクチャ攻撃

 ・標的となった橋梁:ロシア軍は、ポクロフスクとその周辺の橋や陸橋を攻撃している。これらの攻撃は、重要なインフラストラクチャに重大な損害を与え、道路と鉄道の両方の接続に影響を及ぼしている。

 2.具体的な損害賠償

 ・道路高架:ポクロフスクとミルノグラードを結ぶ主要な道路高架が攻撃を受け、その下の線路に一部が崩壊しました。
 ・小さな橋:追加の攻撃により、小さな橋や高架が損傷し、一部の構造物は運用不能になったり、大幅に損傷したりしている。

 全体として、状況は依然としてダイナミックで、制御の移行が進み、大量の死傷者が発生し、インフラストラクチャの混乱が発生している。
 
【要点】

 最近のロシア・ウクライナ紛争の詳細

 ドンバスでの進展

 ・グリゴロフカ: 2024年9月10日にロシアが北チャソフヤールのグリゴロフカを占領。
 ・ヴォディヤノエ: 同日、ウクライナ支配のウグレダー北東の小さな鉱鉱町ヴォディヤノエを占領。ウクライナの物流に影響を与える。
 ・西ドンバス: ロシア軍はオチェレティノの西および南西の地域で進軍し、ノヴゴロドフカ、カリノボ、メムリク、ガリツィノフカ、ドリノフカを占領。
セリドヴォとウクラインスク: セリドヴォおよびウクラインスクで激しい戦闘が続き、ウクラインスクの一部はロシアの支配下に。クラスノゴロフカも解放され、ウクライナ軍が大規模に包囲されている。

 クルスク反攻

 ・ロシアの反攻: クルスク地方でロシア軍が反攻を開始し、アパナソフカ、ビヤホヴォ、ヴィシュネフカ、ヴィクトロフカ、ヴニザプノエ、ゴルデエフカ、クラスノオクチャブリスコエ、オブホフカ、スナゴスト、デシャティ・オクチャブリを再占領。
 ・ウクライナの抵抗: ウクライナ軍は複数の地点で反攻を試みたが、主に失敗。兵器と装備の損失が報告されている。
 ・被害: ウクライナ軍は1万2795人の死傷者と、108両の戦車、その他の装備を失ったとされている。

 ドローンの復活

 ・ドローンの使用再開: ロシアのオリオンおよびウクライナのバイラクタルTB2などの大型攻撃ドローンが再び使用されている。
 ・具体例: ロシアのオリオンドローンがウクライナのT-64BV戦車を攻撃し、破壊する映像が公開されている。

 物流攻撃

 ・インフラ攻撃: ポクロフスク周辺の橋や高架道路が攻撃され、重要なインフラに深刻な損傷が発生。

 ・被害例

 ・ポクロフスクとミルノグラードを結ぶ主要な道路高架橋が崩落。
 ・ポクロフスクとセリドヴォを結ぶ小さな橋も攻撃され、一部が使用不能に。

【引用・参照・底本】

Kursk counteroffensive, Donbass advance, and return of strike drones: The week in the Ukraine conflict (VIDEOS) RT 2024.09.14
https://www.rt.com/russia/603989-kursk-counteroffensive-donbass-push/

ドイツ海軍:台湾海峡を通過2024年09月15日 18:10

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【概要】

 ドイツ海軍の軍艦2隻が台湾海峡を通過したことについて、中国軍は「安全保障上のリスクを増大させた」と非難した。中国外務省は、この行為が「挑発」であり、一つの中国政策に違反していると述べた。

 台湾は1949年以降、事実上の自治を行っており、中国は台湾を自国の領土の一部と主張している。台湾海峡の通過に関して、中国は領有権と主権を強調し、国際的な航行の自由という名目での挑発行為に強く反対している。

 これに対し、ドイツ国防相ボリス・ピストリウスは、国際水域は国際的なものであり、最短で安全なルートを選んだと説明した。

【詳細】

 2024年9月、ドイツ海軍のフリゲート艦「バーデン・ヴュルテンベルク」と補給艦「フランクフルト・アム・マイン」が台湾海峡を通過した。この行動は、ドイツの軍艦としては22年ぶりのものであり、中国の反発を引き起こした。

 中国側はこの行動を「挑発」として非難し、台湾海峡での航行は国際的な航行の自由の問題ではなく、中国の主権と領土保全に関わる問題であると強調した。中国の外務省報道官毛寧は、「台湾問題は航行の自由の問題ではなく、中国の主権と領土の一体性に関わる」と述べた。また、毛氏は中国が国連海洋法条約に基づく国際水域での他国の航行の権利を尊重しているものの、「航行の自由の名目による挑発行為には断固反対する」と強調した。

 さらに、中国人民解放軍東部戦区司令部のLi Xi上級大尉は、ドイツの行動が「安全保障上のリスクを増大させ、誤った信号を送っている」と述べた。加えて、中国大使館は、台湾海峡の水域が中国の内水、領海、接続水域、排他的経済水域に当たると主張し、この地域での外国軍艦の航行を認めない姿勢を明確にした。

 一方、ドイツの国防大臣ボリス・ピストリウスは、国際水域として認められている台湾海峡を通過することは「最短で最も安全なルート」であり、天候条件を考慮した結果だと説明した。彼は「国際水域は国際水域であり、そこを通過することは問題ない」と主張した。

 このドイツの軍艦の台湾海峡通過は、中国が反対するにもかかわらず、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランスなどの国々がこれまでにも複数回行ってきた航行と同様の行動である。これらの国々は、中国が主張する一つの中国政策を尊重しつつも、台湾海峡を国際水域として扱い、航行の自由を行使しているという立場を取っている。

 この状況は、中国が台湾海峡における主権を強く主張し、外国艦船の通過に敏感な態度を取る一方で、欧米諸国が航行の自由を守るとして同地域での軍事プレゼンスを維持し続けていることを示している。
 
【要点】

 ・2024年9月、ドイツ海軍のフリゲート艦「バーデン・ヴュルテンベルク」と補給艦「フランクフルト・アム・マイン」が22年ぶりに台湾海峡を通過。
 ・中国軍はこの行動を「安全保障上のリスクを増大させた」と非難。
 ・中国外務省は、ドイツの行動が「挑発」であり、一つの中国政策に違反していると主張。
 ・台湾海峡の航行について、中国はそれが自国の主権と領土保全の問題だと強調。
 ・中国外務省の毛寧報道官は、航行の自由の問題ではなく、中国の領土と主権に関わる問題だと発言。
 ・中国人民解放軍東部戦区司令部のLi Xi上級大尉も、ドイツの行動が「誤った信号」を送っていると批判。
 ・中国大使館は、台湾海峡の水域を中国の内水、領海、接続水域、排他的経済水域と主張。
 ・ドイツのボリス・ピストリウス国防大臣は、台湾海峡を通過した理由について「国際水域であり、最短かつ最も安全なルート」であると説明。
 ・アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランスも過去に台湾海峡を通過しており、航行の自由を主張している。

 この事件は、中国と欧米諸国との間で台湾海峡の領有権や航行の自由に関する緊張が続いていることを示す。

【参考】

 ☞ 台湾海峡が国際水域であるかどうかは、解釈が分かれる問題である。一般的な理解としては、台湾海峡の中央部分は国際水域と見なされているが、沿岸部は中国と台湾の領海に属する。この点について、いくつかのポイントがある。

 ・国際法上の位置づけ:国連海洋法条約(UNCLOS)によると、沿岸国は自国の海岸線から最大12海里(約22キロメートル)の領海を主張できる。台湾海峡の幅は最も狭い部分で約130キロメートルあるため、中央部分は12海里を超えており、国際水域と解釈する国が多いる。
 
 ・台湾海峡の最も広い部分は、約220海里(約407キロメートル)である。

 ・中国の主張:中国は台湾海峡全体を自国の領海や排他的経済水域(EEZ)と主張し、台湾海峡が「中国の内水、領海、接続水域、排他的経済水域」であるとしている。また、外国の軍艦の通過を挑発とみなすこともある。

 ・航行の自由:一方、アメリカや多くの西側諸国は、台湾海峡の中央部分は国際水域であり、航行の自由が認められるべきだとしている。彼らは国際法に基づき、台湾海峡の通過を正当化している。

 結論として、台湾海峡の中央部分は事実上、国際水域として扱われているものの、中国はこれに異議を唱え、自国の主権を強調している。このため、台湾海峡での外国軍艦の航行は、中国と西側諸国との間で緊張を引き起こしている。

 ☞ 内水(Internal Waters)とは、国際法上、沿岸国の領域に完全に含まれる水域であり、沿岸国の主権が完全に及ぶ区域を指す。これは、内水が領海や接続水域とは異なる概念であることを示す。

 内水の特徴

 1.沿岸国の完全な主権

 ・内水は、陸地の一部として扱われ、沿岸国はここでの水域に対して完全な主権を持つ。沿岸国の法律が全面的に適用され、他国の船舶が許可なく自由に航行することはできない。

 2.内水に含まれる範囲

 ・内水は、港、河口、湾、湖、河川などの水域を含む。特に、海岸線の直線基線の内側にあるすべての水域が内水とされる。
 ・湾や入り江については、その幅が24海里(約44.4キロメートル)を超えない限り、その湾口に直線基線を引き、その内側の水域が内水として扱われる。

 3.無害通航権が適用されない

 ・無害通航権は内水には適用されない。領海とは異なり、他国の船舶は内水を自由に航行する権利を持たず、沿岸国の許可が必要である。したがって、外国船舶が内水に入るには沿岸国の事前の許可が必要となる。

 内水の例

 ・港湾や河川:内水に含まれる典型的な例として、国家の港湾施設や主要河川がある。例えば、東京湾やニューヨーク港などの港湾はその国の内水とされ、外国船舶が自由に出入りすることはできない。

 ・海岸線内の湾や入り江:一定の基準を満たす湾や入り江も内水と見なされる。例えば、フランスのモン・サン=ミシェル湾やスペインのビスケー湾なども内水に含まれる可能性がある。

 内水と領海の違い

 ・領海では無害通航権が認められ、外国船舶は一定の条件の下で自由に通過できるが、内水ではそうした権利がなく、沿岸国の許可が必要である。
 ・内水は、沿岸国がその領土として完全に管理・統制できる水域であり、領海よりも強い管轄権を持つといえる。

 結論

 内水は、沿岸国の完全な主権が及ぶ水域であり、他国の船舶が自由に航行できる領海とは異なる。内水内では沿岸国の法が全面的に適用され、無害通航権も適用されないため、外国船舶は許可なしに内水に侵入することはでない。

 ☞ 領海(Territorial Sea)とは、国際法における海域の一つで、沿岸国がその海域に対して完全な主権を持つ区域である。領海は国際的に認められた範囲とルールに従って定義されている。以下に、領海の主要な特徴と規定を説明する。

 領海の特徴

 1.主権の範囲

 ・領海は沿岸国の主権が及ぶ海域であり、領土と同様に扱われる。このため、沿岸国は領海内での法律を完全に施行でき、他国の船舶や航空機の活動に対しても一定の権限を持つ。

 2.幅の制限

 ・国際法により、領海の幅は最大で12海里(約22キロメートル)までと定められている。この12海里は、沿岸国の基線(通常は低水位線)から測定される。

 3.無害通航権

 ・無害通航権が適用される。これは、領海内での外国の商業船舶や民間の航空機が、沿岸国の許可なしに通過できる権利を指す。通航が「無害」である限り、外国船舶は領海を通過する権利を有する。
 ・無害通航とは、航行が沿岸国の平和、秩序、安全に影響を及ぼさないことを意味する。つまり、領海内での通航が沿岸国の法令に違反しないことが求められる。

 4.沿岸国の権限

 ・領海内で沿岸国は、法的規制を施行する権限を持つ。例えば、海洋環境保護、税関、移民管理、保健、その他の法律の適用などが含まれる。
 ・外国軍艦の領海内での活動には制限があり、無害通航権の範囲内での活動は認められているが、領海内での軍事活動や他国の船舶に対するチェックが行われることもある。

 5.基線の設定

 ・領海の幅は、通常は低水位線から12海里の範囲で設定されるが、沿岸国が直線基線(基線を直線で結ぶ方法)を設定できる場合もある。これにより、湾や入り江などの領海の範囲が調整される。

 6.領海とその他の海域との違い

 ・内水(Internal Waters):内水は領海の内側にあり、完全に沿岸国の主権が及ぶ水域である。他国の船舶は無害通航権が適用されず、沿岸国の許可が必要である。

 ・接続水域(Contiguous Zone):接続水域は領海の外側に広がる海域で、最大で領海から24海里(約44キロメートル)まで設定できる。接続水域では、沿岸国は税関や移民に関連する法律の施行を行う権限があるが、完全な主権は領海に比べて制限される。

 ・排他的経済水域(EEZ):EEZは領海の外側に広がる海域で、最大で200海里(約370キロメートル)まで設定できる。EEZ内では、沿岸国が天然資源の探索や開発に対して排他的権利を持つが、航行の自由は国際法により確保されている。

 結論

 領海は、沿岸国がその主権を行使できる海域であり、最大で12海里の幅を持つ。無害通航権が適用され、外国の船舶や航空機は通過する権利を有するが、沿岸国は領海内での法的規制を全面的に施行する権限を持っている。

 ☞ 低水位線(Low Water Line)は、海洋法において重要な基準であり、沿岸国の海域を定義する際の基準線として使用される。低水位線についての詳細は以下の通り。

 低水位線の定義

 ・低水位線とは、干潮時における海岸線の位置を示す。これは、満潮時の水位ではなく、海水が最も低い状態での海岸線を指す。

 主な特徴と使用方法

 1.基線の設定

 ・領海や排他的経済水域(EEZ)などの海域の幅を測定するための基準として使用される。通常、領海やEEZの範囲は、低水位線から測定される。
 ・例えば、領海の幅は低水位線から最大で12海里(約22キロメートル)まで設定されることがある。

 2.直線基線との関係

 ・低水位線は、沿岸国が直線基線(直線で結んだ基準線)を設定する際の基準としても使用される。直線基線は、湾や入り江の幅を短縮するために用いることができる。

 3.基準の変動

 ・低水位線は干潮時の位置を基準にするため、潮位の変動に影響を受けることがある。干潮の度合いに応じて、低水位線の位置が変わることがあるため、長期的な平均潮位線を基準にすることが一般的である。

 4.海岸線の測定

 ・沿岸国は、海岸線を特定するために低水位線を用いることがある。これは、領海の幅や基準線を設定する際の基本となる。

 使用例

 ・領海の設定:領海は、低水位線から最大で12海里まで設定されるため、低水位線は領海の幅を決定する際に重要である。
 ・直線基線の設定:湾や入り江のような複雑な海岸線を単純化するために、低水位線に基づいて直線基線が設定されることがある。

 結論

 低水位線は、干潮時の海岸線を示す基準線であり、領海や排他的経済水域(EEZ)の幅を測定するための重要な基準となる。潮位の変動に応じて位置が変わる可能性があるため、通常は長期的な平均潮位線が使用されることが多い。

 ☞ 接続水域(Contiguous Zone)は、領海に隣接する海域であるが、領海とは異なる。領海と接続水域には異なる法的権限が適用されまする。

 接続水域と領海の違い

 ・領海:領海は沿岸国の主権が及ぶ海域で、海岸線から最大12海里(約22キロメートル)までの範囲である。この領海内では、沿岸国が完全な主権を持ち、他国の船舶は「無害通航権」に基づいて通過できるものの、沿岸国の法律が適用される。

 ・接続水域:接続水域は、領海の外側に広がる海域で、領海の外側に最大12海里(領海から24海里、約44キロメートル)まで設定されることがある。接続水域は領海ではなく、沿岸国の主権も及ばない。ただし、沿岸国は次の目的に限定して接続水域を管理できる。

 ⇨ 税関、財政、移民、保健に関する法律や規則の違反を防止する。
 ⇨ 領海内でこれらの法律や規則が違反された場合に取り締まる。

 主なポイント

 1.領海の一部ではない:接続水域は領海の延長ではなく、沿岸国が特定の法律(税関や移民など)の施行を目的に制限された権利を行使できる区域である。領海のように全面的な主権はない。

 2.航行の自由:接続水域では、他国の船舶や航空機は基本的に自由に航行できる。接続水域は国際水域の一部であり、航行の自由が尊重される。ただし、違法行為の防止や取り締まりに関連する場合、沿岸国が一定の権利を行使することが可能である。

 結論

 接続水域は領海ではなく、沿岸国が特定の法律や規則を執行するための権限を持つ区域である。接続水域においては、他国の船舶は引き続き航行の自由を持つが、沿岸国は特定の法律に基づいて活動を制限する権利を有している。

 ☞ 接続水域において沿岸国が適用できる「特定の法律」は、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づいて定義されており、次の4つの分野に限定されている。

 接続水域で適用される法律の分野

 1.税関法

 ・沿岸国は、接続水域内での物品の密輸などの税関に関する違反行為を防止および取り締まる権利を持っている。これにより、国境を越えた不正な貿易活動を監視・取り締まることができる。

 2.財政法

 ・沿岸国は、接続水域内での財政に関わる法律(例えば、税金に関連する違反行為)を施行するための権利を持つ。密輸や税金回避などの財政関連の不正行為を抑止するために必要な措置を取ることができる。

 3.移民法(入国管理法)

 ・沿岸国は、移民や入国管理に関連する法律を接続水域内で施行することができる。これにより、違法な入国、移民の取り締まり、不法な人の輸送を防止するための措置を取ることが可能である。

 4.保健法

 ・公衆衛生に関する法律も接続水域で適用され、例えば伝染病の拡散を防ぐための船舶や貨物に対する検査・検疫措置などが実施される。特に疫病や感染症の防止が重要視されるケースで、沿岸国は接続水域内で監視を行うことができる。

 沿岸国の権利

 接続水域内でこれらの法律に違反する可能性がある行為を防止するために、沿岸国は監視活動や必要な法的措置を実施できる。これには、違反が発生する前に未然に防ぐための措置や、違反行為が発生した場合にそれを取り締まる権利が含まれる。

 航行の自由との関係

 接続水域はあくまで国際水域であり、他国の船舶や航空機は航行の自由を享受する。ただし、上記の4つの法律に関連する違反行為に関しては、沿岸国が取り締まる権利を持つ。このため、接続水域では、特定の法的措置を実施しつつも、通常の無害通航や航行の自由が基本的に維持される。

 結論

 接続水域における沿岸国の権限は、税関、財政、移民、保健の4つの特定の法律に関連する違反行為に対してのみ行使され、それ以外の分野では沿岸国の権限は制限される。他国の船舶はこの範囲内で航行の自由を尊重されつつ、これらの法律に反しない限り自由に通行できる。

 ☞ 排他的経済水域(EEZ)における航行権については、国連海洋法条約(UNCLOS)に規定されている。以下がその概要である。

 EEZ内の航行権

 ・他国の船舶や航空機の自由航行:排他的経済水域(EEZ)では、他国の船舶や航空機は、無害通航権に基づいて自由に航行できる。これには商業船や軍艦の通航も含まれる。沿岸国はEEZ内での経済活動に対して排他的権利を持っているが、他国の船舶の通行や飛行を制限することはできない。

 ・無害通航権:UNCLOSに基づいて、EEZ内での航行は無害通航でなければならない。これは、航行が沿岸国の平和、安全、公序を脅かさないことを意味する。通航が無害であれば、他国の船舶は沿岸国の許可を得ずにEEZ内を航行することができる。

 軍艦の航行

 ・軍艦の自由航行:EEZ内では軍艦も航行の自由を享受できるが、これが「無害通航」であるかどうかは議論の余地がある。中国を含む一部の国々は、EEZ内での外国軍艦の活動を制限すべきだと主張しているが、アメリカや多くの国々は、軍艦もEEZ内で自由に航行できるとしている。

 経済的権利と航行の自由のバランス

 ・沿岸国の経済的権利:EEZは沿岸国に経済的な権利を付与するが、それはあくまで天然資源の探索や利用に限られる。漁業、鉱物資源の採取、海洋エネルギー開発などの経済的活動は沿岸国の管轄であるが、他国の航行や飛行はこれに含まれない。

 ・沿岸国の管轄:沿岸国は、EEZ内での経済活動に関して規制する権利を持っているが、航行そのものを制限する権限はない。例えば、船舶がEEZを通過する際、資源採取や軍事訓練などの経済的または軍事的活動を行う場合は問題となるが、単に通過するだけであれば許可を必要としない。

 結論

 排他的経済水域(EEZ)では、沿岸国が資源に対する排他的権利を持つ一方、他国の船舶や航空機には航行や飛行の自由が認められている。特に、EEZ内の他国の軍艦や商業船は、無害通航権に基づいて自由に通行できる。ただし、一部の国(中国など)は軍艦の航行を挑発行為と見なすことがあり、これが国際的な摩擦の原因となっている。

 ☞ 台湾の台湾海峡に関する領海の主張は、以下のようなポイントに集約される。

 台湾の台湾海峡に関する領海主張

 1.領海の幅

 ・台湾は、領海の幅を12海里とする国際的な規定に従っている。これは、低水位線から最大で12海里の範囲を領海と定義する国際法に基づいている。

 2.台湾海峡の領海

 ・台湾は、台湾海峡の海域についても、自国の領海として主張している。台湾海峡は、台湾と中国大陸の間に位置しており、その幅が狭く、戦略的に重要な海域である。
 ・台湾海峡の領海の範囲も、台湾の基線から12海里を基準にしている。

 3.無害通航権

 ・台湾は、無害通航権を尊重する立場を取っている。これは、領海内の外国船舶が通行する際に、台湾の法律に従いながら通過する権利を認めるという考え方である。
 ・台湾海峡を通過する際の無害通航権についても、国際法に則り、台湾が管理している。

 4.中国との対立

 ・台湾海峡における領海の管理は、中国との対立の一因でもある。中国は台湾海峡の領域に対しても強い主権を主張しており、台湾の領海主張に対して異議を唱えている。
 ・中国は台湾海峡を含む海域の「一つの中国」政策に基づいて、台湾の領海主張を認めていない。

 5.国際法の適用

 ・台湾は、国際海洋法に基づいて、領海や海峡の管理を行っている。国際法(特に国連海洋法条約)に従い、自国の領海の範囲や管理を主張し、台湾海峡における領海の問題についても国際的な基準を守ろうとしている。

 結論

 台湾は、台湾海峡の領海について、国際的な基準に従って12海里の幅で主張している。無害通航権を尊重しつつも、中国との領海主張の対立があり、国際海洋法に基づいて領海の管理を行っている。台湾の主張は、国際法に則った範囲での領海管理を行いつつ、中国との緊張関係も含めた複雑な状況下にある。

 ☞ 無害通航権と各種海域(内水、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚、公海)との関係

 無害通航権とは、外国船舶が他国の領海を通航する際、沿岸国の平和・秩序・安全を害さない限り、その通航が許される権利である。この権利は、国連海洋法条約(UNCLOS)で規定されているが、各種海域との関係を以下のように整理できる。

 1. 内水

 ・内水とは、領海の基線の内側にある水域(例えば、湾や港など)を指す。
 ・無害通航権は内水には適用されない。沿岸国は外国船舶の通航を完全に規制する権利を持つ。

 2. 領海

 ・領海は、沿岸国の基線から最大12海里までの水域を指す。
 ・外国の船舶は、領海内で無害通航権を行使できるが、その通航が無害であることが条件である。軍艦や潜水艦の通航には特に制限がかかることがある。

 3. 接続水域

 ・接続水域は、領海の外側で最大24海里までの範囲である。この区域では、沿岸国は関税、移民、健康、財政に関する法の適用を強制する権利がある。
 ・無害通航権はこの水域には直接関係ないが、沿岸国の特定の権利を保護するため、接続水域を通過する船舶に監視を行うことがある。

 4. 排他的経済水域(EEZ)

 ・EEZは、領海の外側に最大200海里まで広がる水域で、沿岸国は水産資源や海底資源の利用に関する主権的権利を持つ。
 無害通航権はEEZには直接適用されず、EEZ内では「自由航行権」が認められている。これは沿岸国の資源権を害さない限り、外国船舶は自由に航行できるという権利である。

 5. 大陸棚

 ・大陸棚は、沿岸国の領海の外側に広がる海底の区域で、沿岸国はこの地域の天然資源を開発する権利を持っている。
 ・大陸棚における通航は基本的に自由であるが、資源開発に影響を与える活動は制限される可能性がある。

 6. 公海

 ・公海は、どの国の主権も及ばない海域であり、すべての国に対して航行の自由が保障されている。
 ・無害通航権は公海には適用されない。公海では「航行の自由」が基本原則である。
 ・無害通航権は主に「領海」で適用され、その他の海域ではそれぞれ異なる通航権や規制が存在する。

 ☞ 航行の自由と各種海域(内水、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚、公海)との関係

 航行の自由とは、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、船舶や航空機が他国の海域や空域を自由に航行できる原則である。ただし、各海域において沿岸国の主権や権利が異なるため、航行の自由にも様々な制約がある。以下は、各海域との関係についての詳細である。

 1. 内水

 ・内水は、基線の内側にある水域であり、沿岸国の完全な主権が及ぶ(例:湾や河口、港湾)。
 ・航行の自由は適用されない。外国船舶が内水に入るには沿岸国の許可が必要である。

 2. 領海

 ・領海は、基線から最大12海里までの海域で、沿岸国の主権が及ぶ。
 ・航行の自由は制限され、無害通航権が適用される。つまり、外国船舶は領海内を通過できるが、通航は沿岸国の平和や秩序を害さない限りに限られる。軍艦や潜水艦の通航には特に注意が必要である。

 3. 接続水域

 ・接続水域は、領海の外側に最大24海里まで広がる海域で、沿岸国は税関、移民、健康、財政に関連する法律を執行する権利を持つ。
 ・航行の自由が原則として適用されるが、沿岸国は特定の法的権利を保護するために監視を行うことができる。

 4. 排他的経済水域(EEZ)

 ・EEZは、領海の外側に最大200海里まで広がる海域で、沿岸国は水産資源や海底資源の探査・開発に関する主権的権利を有す。
 ・航行の自由が保障されている。外国船舶や航空機は、沿岸国の資源利用を妨げない限り、EEZ内を自由に通航できる。

 5. 大陸棚

 ・大陸棚は、沿岸国の領海の外側に広がる海底区域で、沿岸国はこの地域で天然資源を開発する権利を持っている。
 ・大陸棚そのものにおいては航行の自由が適用されるが、海底資源開発に影響を与える行為は制限される場合がある。

 6. 公海

 ・公海は、いかなる国の主権も及ばない領域であり、全ての国が平等に利用できる海域である
 ・航行の自由が完全に適用される領域である。すべての国は、公海において自由に航行、漁業、海底資源の探査を行うことができる。
 ・航行の自由は特に「公海」や「排他的経済水域(EEZ)」で最大限に保障されてい.
が、「領海」や「内水」では沿岸国の主権や規制により制限を受けることになる。

 ☞ 現在、領海や領空の侵犯を発見するためには、さまざまな技術や方法が組み合わされている。これらの方法は、特に海洋国家や沿岸国にとって重要であり、国家の安全保障や国境管理の一環として機能している。以下は、主な発見方法である。

 1. レーダーシステム

 ・地上/海上レーダー: 海岸線や基地に設置されたレーダーは、領空や領海に近づく航空機や船舶をリアルタイムで検知する。レーダーは広範囲にわたって動体を監視し、迅速な対応を可能にする。

 ・航空機や艦船搭載レーダー: 軍艦や哨戒機(例:P-3C、P-8Aなど)に搭載されたレーダーが定期的に海域をパトロールし、不審な船舶や航空機を検知する。

 2. 人工衛星による監視

 ・リモートセンシング衛星: 高解像度の画像を撮影する衛星は、広範囲の領海や領空を定期的に観測する。これにより、領海や国境に近づく不審な船舶や航空機を早期に発見できる。

 ・AIS(船舶自動識別システム): 多くの船舶はAISトランスポンダーを搭載しており、衛星を通じて船舶の位置情報が追跡される。これにより、船舶が領海に侵入した場合に警告が発される。

 3. 無人航空機(ドローン)

 ・哨戒ドローン: 無人航空機(UAV)は、低コストで広範囲の監視を行うために利用される。特に、遠隔地や危険な海域のパトロールに効果的である。長時間の飛行能力を持つドローンは、リアルタイムで映像を送信し、不審な動きや侵入を監視する。

 4. 海洋監視システム(音響センサーやソナー)

 ・音響監視システム: 海中に設置されたソナーや水中音響センサーを使って、潜水艦や不審船舶の音を検知する。これにより、海底を通過する潜水艦や船舶を追跡することができる。

 5. 航空機や艦艇による定期哨戒

 ・哨戒機: 特に沿岸国では、哨戒機が領空や領海を定期的にパトロールし、レーダーやカメラで監視を行う。不審な船舶や航空機が検知された場合、直ちに報告され、対応が行われる。

 ・艦艇やコーストガード: 沿岸警備隊や海軍の艦船が、領海内での定期的なパトロールを行い、不審船や領海侵犯を監視する。

 6. 電波監視(ELINT)

 ・電波情報収集: 軍や情報機関は、領空や領海を航行する船舶や航空機が発する電波や通信信号を監視する。これにより、敵対的な動きを察知し、早期に対応を取ることができる。

 7. 監視カメラ・センサー
 
 ・沿岸部や重要施設に設置された監視カメラや各種センサーが、領海や領空への不審な接近を監視する。これらはリアルタイムで管理されており、異常が発見されると自動的に警報が発される。

 8. AIS(船舶自動識別システム)とIFF(敵味方識別システム)

 ・船舶のAISや航空機のIFFトランスポンダーが領海・領空に侵入する際に信号を発し、監視システムにより識別される。信号が発せられない場合や不審な行動が確認された場合、警告が出される。

 これらの技術が統合され、領海や領空の防衛はリアルタイムで強化されており、各国は侵入に迅速に対応できるようになっている。

 ☞ 領海や空域の侵入を防ぐために、各国は事前に領域の境界情報を監視システムにインプットしておくことで、リアルタイムで侵入を検知・監視できる体制を整えている。具体的にどのようにして空域や領海の境界をシステムに入力し、それを監視するかについて、以下に説明する。

 1. デジタルマッピングとGIS(地理情報システム)

 ・地理情報システム(GIS)は、領海や空域の境界をデジタル化して管理する技術である。沿岸国は、国際的に定められた海域や空域の境界線を正確にデジタルマップに登録する。
  ⇨ これにより、各国の監視システムにあらかじめ正確な領海・領空の範囲がインプットされ、監視対象となるエリアを特定できるようになる。
  ⇨ 基線や領海線、EEZ、接続水域、大陸棚の境界がすべてデジタルマップ上に登録され、これが監視システムに統合される。
 
 2. レーダーシステムと自動境界設定

 ・レーダーシステムには、予め設定された空域や領海の境界情報が組み込まれている。これにより、監視する海域や空域を自動的に識別し、国際空域や公海と領空・領海を区別することができる。
  ⇨ レーダーは海上監視用、空域監視用とで異なる設定がされており、特定の領域に入った船舶や航空機が即座にアラートとして通知される。

 3. AIS(船舶自動識別システム)と航空機トランスポンダーの監視
 
 ・AIS(船舶自動識別システム)と航空機のIFF(敵味方識別システム)では、船舶や航空機が発信する信号とあらかじめ設定された境界情報がリンクされている。これにより、船舶や航空機が領海や領空に接近・侵入した場合、自動的に警告が発される。
 ・システムは、領海や領空の境界データを組み込んでおり、特定の範囲に近づくとリアルタイムでアラートを出す仕組みになっている。

 4. 衛星による監視と境界設定

 ・リモートセンシング衛星やAIS衛星では、国際的な空域や海域の境界があらかじめデータベースに登録されており、衛星からの観測データと照合される。これにより、船舶や航空機の正確な位置がリアルタイムで把握され、境界を越えるかどうかが監視されまする。
  ⇨ 衛星データは、地上の監視センターで使用され、海域や空域の状況が自動的に解析される。

 5. 無人監視システム(ドローン)とプログラムされた境界線
 
 ・無人航空機(UAV)や無人船舶(USV)は、あらかじめプログラムされた領空や領海の境界に従って自律的にパトロールを行う。これらのドローンは、設定された範囲を超える船舶や航空機を自動的に監視し、境界線に近づくと即座に警告を発す。
  ⇨ UAVやUSVのナビゲーションシステムには、領域データがインプットされ、巡回ルートや監視範囲が設定される。

 6. 監視センターとリアルタイムモニタリング

 ・各国の沿岸警備隊や防空指揮センターなどでは、領海や領空の境界が登録されたシステムを使って、リアルタイムで監視している。
  ⇨ システムは、レーダーやAISデータ、衛星データ、ドローンデータを統合し、不審な動きがある場合にアラームを出す仕組みになっている。
  ⇨ 監視センターでは、常に更新された境界データを参照し、領海や領空の侵入を防ぐための即時対応が可能である。

 7. 国際的なデータベースとの連携

 ・国際民間航空機関(ICAO)や国際海事機関(IMO)などの国際機関は、空域や海域に関するデータベースを管理しており、各国はこれに基づいて自国の境界情報を更新する。
  ⇨ 国際的な海図や航空図は、国際法に基づき定期的に更新され、これに基づいて各国の監視システムがデータをインプットする。
 
 まとめ

 領海や空域の境界は、事前にデジタルマップや監視システムにインプットされ、レーダー、AIS、衛星、ドローン、監視カメラなどの監視機器がその情報を基にリアルタイムで監視している。これにより、不審な船舶や航空機が国境を越えると即座に通知が行われ、適切な対応が可能になる。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

German warships a ‘security risk’ – Chinese military RT 2024.09.14
https://www.rt.com/news/604027-china-german-warships-taiwan-strait/