【桃源閑話】安倍政権→岸田政権 ― 2024年09月19日 18:11
【桃源閑話】
☞ 安倍政権から岸田政権の日本の政権について、以下のように概観する。
1. 安倍政権(2012年12月 - 2020年9月)
総理大臣: 安倍晋三
主な政策
・アベノミクス: 経済政策として、金融緩和、財政出動、成長戦略の三本の矢を掲げた。
・安全保障政策: 集団的自衛権の行使容認、日米同盟の強化、防衛力の増強。
・憲法改正: 自衛隊の明記など憲法改正の議論を推進。
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第一次安倍政権 2006年9月 - 2007年9月は、安倍晋三が日本の総理大臣を務めた最初の政権である。以下にその主要な特徴と政策を説明する。
1. 政権の背景
・発足: 2006年9月、安倍晋三が総理大臣に就任。安倍氏は、当時の首相・小泉純一郎の後継として選ばれた。
・党内状況: 自民党の内部で支持を受け、総裁選で勝利して首相に就任した。
2. 主要政策と取り組み
経済政策
・構造改革: 経済成長を促進するための構造改革を推進。規制緩和や企業支援を行った。
・税制改革: 所得税や法人税の改革を進め、企業の競争力を高めようとした。
安全保障政策
・憲法改正: 憲法改正に向けた議論を推進し、自衛隊の位置付けを明確にすることを目指した。
・日米同盟: 日米同盟の強化を図り、アジア太平洋地域での安全保障協力を深めた。
外交政策
・アジア外交: 中国や韓国との関係強化を図りつつ、アジア地域での日本の影響力を高めようとした。
・国際貢献: 国際社会における日本の役割を拡大し、国連の平和維持活動への積極的な参加を表明した。
3. 問題と課題
・内閣の不安定さ: 政治スキャンダルや内閣支持率の低下に直面し、特に防衛大臣の失言問題などが影響した。
・政策の実行困難: いくつかの政策は十分に実行されず、政権の信任を揺るがす原因となった。
4. 政権の終焉
・退陣: 2007年9月、安倍首相は健康問題を理由に辞任を表明した。これにより、第一次安倍政権は約1年で終了した。
まとめ
第一次安倍政権は、経済改革や安全保障政策の推進を試みたが、短期間での政権交代を余儀なくされた。健康問題や内政の不安定さが影響し、安倍氏はその後、再度首相に就任し、第二次安倍政権を発足させることになる。
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2. 菅政権(2020年9月 - 2021年10月)
総理大臣: 菅義偉
主な政策
・コロナ対応: 新型コロナウイルス対策としてワクチン接種の推進、緊急事態宣言の発出。
・デジタル庁の創設: デジタル社会の推進を目指し、デジタル庁を設立。
・経済政策: アベノミクスの継承、規制緩和や成長戦略の推進。
3. 岸田政権(2021年10月 - 現在)
総理大臣: 岸田文雄
主な政策
・経済政策: 「新しい資本主義」の推進。成長と分配の両立を目指す。
・防衛力強化: 防衛予算の大幅な増額、反撃能力の強化、南西諸島防衛の強化。
・外交政策: 日米同盟の強化、クアッド(日本、アメリカ、オーストラリア、インド)との連携強化、中国やロシアに対する対応。
まとめ
安倍政権から始まるこれらの政権は、日本の安全保障政策や経済政策において大きな変化をもたらした。特に、安倍政権以降、国防の強化や集団的自衛権の行使容認など、安全保障政策においては積極的な姿勢が取られている。菅政権は主にコロナ対策とデジタル化を重点的に進め、岸田政権は引き続き防衛力の強化と経済政策の改革に取り組んでいる。
では、以下で特に安倍政権、岸田政権について取り上げる。
☞ 安倍晋三政権(2012年~2020年)は、2015年に「安全保障関連法」を成立させた。この法律の改正により、日本の安全保障政策にいくつかの重要な変化がもたらされた。以下に主なポイントを述べる。
1.「存立危機事態」という新しい概念: 安倍政権は、「存立危機事態」という新たな概念を導入した。これは、日本の国の存立が脅かされるような事態(例えば、周辺国による攻撃など)発生した場合に、日本が自国防衛だけでなく、同盟国や友好国を防衛するために必要な行動を取ることができるとするものである。この概念は、従来の「専守防衛」の枠組みを超え、より広範な対応を可能にするものである。
2.集団的自衛権の行使: 安全保障関連法の改正により、日本は集団的自衛権の行使を認めるようになった。これは、自衛隊が他国の軍隊と連携して、防衛活動を行うことができるようにするもので、従来の日本の憲法解釈では認められていなかった行為である。具体的には、例えば同盟国(特に米国)が攻撃された場合、日本もその支援を行うことができるようになる。
3.戦争への参加の可能性: この法律の改正により、日本は他国同士の戦争に直接参加するわけではあないが、集団的自衛権の行使により、戦争に関連する活動に参加する可能性が高まった。これには、武力行使を含む多国籍軍との連携や支援活動が含まれる。
この改正については、国内外で賛否が分かれた。支持者は、日本の安全保障環境が厳しくなっている中で、同盟国との協力強化が必要だと主張した。一方、批判者は、これにより日本が戦争に巻き込まれるリスクが増すと懸念した。また、憲法との整合性についても議論があった。
☞ 「存立危機事態」とは、2015年の安保法制(安全保障関連法)において導入された新しい概念で、日本の防衛政策における重要な要素である。この概念は、日本が集団的自衛権を行使する際の具体的な条件を定めるために導入された。これにより、従来の日本の専守防衛を超え、他国の防衛にも関与する法的枠組みが整備された。
存立危機事態の定義
存立危機事態は、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合を指す。具体的には、以下のような状況を想定している。
1.日本への直接的な攻撃: 日本そのものが武力攻撃を受けた場合はもちろんのこと、例えば、日本に密接な関係を持つ国(特に同盟国であるアメリカ)が攻撃され、その結果、日本の存立に重大な影響を与えると判断された場合が含まれる。
2.同盟国や友好国への攻撃: 同盟国や日本と安全保障上密接な関係にある国が攻撃され、その防衛が日本の安全保障に不可欠であると政府が判断した場合も存立危機事態に該当する。具体例として、アメリカが敵対国から攻撃を受け、日本がその防衛に加わることで自国の安全が守られると判断された場合である。
集団的自衛権との関係
存立危機事態は、集団的自衛権を行使するための条件となっている。集団的自衛権とは、自国が直接攻撃されていなくても、密接な関係にある他国が攻撃を受けた場合に、その国を防衛するために武力を行使する権利である。
従来の憲法解釈では、日本は集団的自衛権の行使を認めていなかったが、この存立危機事態の導入により、日本は特定の状況下で集団的自衛権を行使できるようになった。ただし、集団的自衛権の行使が認められるのは、日本の存立や国民の権利が根本的に脅かされる明確な危険がある場合に限定されている。
存立危機事態の具体的条件
存立危機事態の発動には、いくつかの条件が満たされる必要がある。具体的には、以下の3つの要件が示されている
1.日本の存立が脅かされること:日本自体が攻撃されていなくても、同盟国や密接な関係にある国が攻撃され、その影響が日本の安全に重大な脅威を及ぼす場合。
2.国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること:これにより、単なる外交的な問題や経済的な脅威ではなく、具体的な武力攻撃やその危険が迫っている場合を対象としている。
3.武力行使が必要であり、他に適当な手段がないこと:平和的手段や他の外交手段が効果を発揮しない場合に限り、武力の行使が認められる。これにより、最終手段としての武力行使が限定的に適用されることが強調されている。
実際の運用と影響
存立危機事態の概念は、憲法9条に基づく「専守防衛」の枠組みを保ちながらも、日本の防衛範囲を拡大させるものである。特に、国際情勢の変化や地域の安全保障環境の悪化を背景に、日本が積極的に同盟国と連携して防衛活動に参加できるようにするためのものである。
・アメリカとの協力強化:日本は日米安全保障条約に基づき、アメリカとの同盟関係を維持しているが、存立危機事態の導入により、アメリカが攻撃された際に自衛隊が支援に参加する可能性が高まった。
・抑止力の強化:存立危機事態に基づく対応は、周辺国に対する抑止力を強化する役割も果たしている。これにより、例えば中国や北朝鮮の軍事的挑発に対する防衛力を強化する狙いがある。
・国内外の論争:一方で、この新しい法的枠組みについては、国内外で賛否が分かれている。日本国内では、憲法9条との整合性について疑問を呈する意見や、戦争に巻き込まれるリスクが増すという懸念が強調された。また、近隣国の中国や韓国は、日本の防衛政策の変更に対して反発を示した。
結論
存立危機事態は、安保法制の中で日本の防衛政策を大きく変革する重要な概念である。日本が国際的な防衛協力の枠組みでどのように役割を果たすか、またその行使がどのように国際関係に影響を与えるかを考える上で、中心的なテーマとなっている。
☞ 「安全保障関連法」(正式には「平和安全法制関連法案」)は、2015年に日本で成立した一連の法律で、安倍晋三政権による安全保障政策の大きな変更を伴うものでしあった。この法律の主な目的は、日本の防衛能力を強化し、国際的な安全保障環境の変化に対応することである。以下に、具体的な内容とその影響について詳しく説明する。
安全保障関連法の主要な要点
1.新しい安全保障法制の枠組み 安全保障関連法は、以下の4つの主要な法律で構成されている。
・自衛隊法の改正:自衛隊の活動範囲を広げ、集団的自衛権の行使を可能にするための改正。
・国際平和支援法:国際連携活動や平和維持活動への参加を促進するための法律。
・特定秘密保護法の改正:安全保障に関する情報の取り扱いを厳格にし、秘密保持の制度を強化。
・防衛省設置法の改正:防衛省の権限と機能を強化するための改正。
2.「存立危機事態」:「存立危機事態」は、日本の存立が脅かされるような状況に対応するための新たな概念である。具体的には、以下のような事態が該当する。
・日本への直接的な攻撃。
・同盟国や友好国が攻撃を受け、日本の安全保障に重大な影響を及ぼす場合。
3.集団的自衛権の行使 安全保障関連法により、日本は集団的自衛権を行使することができるようになった。これにより、自衛隊は、同盟国(特に米国)が攻撃を受けた場合や、国際平和支援活動において、武力行使を伴う活動を行うことが可能になる。ただし、日本が他国の戦争に直接参加するわけではない。
4.後方支援の強化 自衛隊の海外での後方支援活動の範囲も広がった。例えば、医療支援や物資輸送、軍事作戦の支援などが含まれる。これにより、国際的な平和維持活動への貢献が強化された。
5.平和維持活動や国際連携の推進 国際平和支援法に基づき、日本は国際連携や平和維持活動において、より積極的な役割を果たすことができるようになった。これにより、国際的な安全保障への貢献が拡大した。
影響と論争
1.国内の反応
・支持派:安全保障関連法の支持者は、日本の安全保障環境が厳しくなっている中で、同盟国との協力を強化する必要があると主張した。
・反対派:批判者は、集団的自衛権の行使が戦争に巻き込まれるリスクを高めると懸念した。また、憲法との整合性についても疑問が呈された。
2.国際的な影響
・この法律は、特にアメリカとの安全保障関係を強化するための一環と見なされており、日米同盟の強化がんだ一方で、周辺国、特に中国や韓国からの反発もあった。
安全保障関連法は、日本の防衛政策における大きな転換点であり、国際社会との連携や日本の安全保障の役割に重要な影響を与えている。
☞ 岸田文雄内閣が示した「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有に関する政策転換は、日本の安全保障政策において重要な変化を意味している。これにより、日本は他国からの攻撃を未然に防ぐために、直接攻撃を受けていない段階で他国領域にある敵のミサイル基地や攻撃拠点を攻撃する能力を保有する方針に転じた。これが従来の「専守防衛」政策とどのように整合性を持つのか、そして憲法9条との関係について詳しく説明する。
1. 敵基地攻撃能力(反撃能力)とは何か?
敵基地攻撃能力(反撃能力)とは、他国からの武力攻撃が差し迫った場合、相手国のミサイルや攻撃手段が発射される前に、その基地や拠点を攻撃して無力化する能力を指す。従来、日本は「専守防衛」に基づき、こうした攻撃能力の保有を認めていなかった。これは、自衛隊が他国の領域を直接攻撃することは、憲法9条で定められた「戦力の不保持」や「交戦権の否認」に反するという解釈に基づくものである。
しかし、岸田内閣は、北朝鮮のミサイル開発や中国の軍事的圧力の増大といった現実的な脅威を踏まえ、防衛能力の強化が必要であると判断し、反撃能力の保有を可能とする方針に転じまし。
2. 存立危機事態と反撃能力の関係
「存立危機事態」とは、前述したように、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険が存在する場合を指す。この概念は、集団的自衛権の行使を可能にするための法的枠組みであり、日本が直接攻撃を受けていない場合でも、同盟国が攻撃され、その影響が日本の安全に重大な脅威を与えると判断された場合に自衛措置を取ることができまする。
岸田内閣は、存立危機事態においても反撃能力の行使が可能であるとしている。つまり、日本がまだ直接攻撃されていない段階でも、他国からの明白かつ差し迫った攻撃の兆候がある場合、先制的に他国領域の基地や拠点を攻撃できるとの見解である。これは、敵のミサイル発射が間近に迫っていると認識された場合、攻撃を受ける前に反撃を行うという防衛的措置である。
3. 専守防衛との矛盾
「専守防衛」とは、日本が武力行使を行うのは、相手国から攻撃を受けた時に限り、必要最小限の防衛力をもって対応するという政策である。専守防衛は、他国領域への攻撃や積極的な武力行使を否定しており、これに基づいて日本は戦後の防衛政策を進めてきた。
しかし、反撃能力の保有は、専守防衛の定義と明らかに矛盾する可能性がある。反撃能力の行使が認められる場合、日本は相手からの攻撃を受ける前に武力行使を行うことが可能になるため、これは専守防衛の原則に反する行動とも解釈される。特に、他国領域を攻撃することは「防御」の範囲を超え、積極的な「攻撃」に当たる可能性があるため、専守防衛政策と整合性を取るのは困難だという批判が生じていまする。
4. 憲法9条との関係
憲法9条は「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を明記している。この条文に基づき、日本は戦後一貫して自衛のために必要最小限の防衛力しか持たないとされてきた。反撃能力の保有は、他国の領域への攻撃が可能になるため、戦力の不保持という憲法9条の理念と大きく矛盾する可能性がある。
反対派の主張によれば、他国の領域を攻撃することは、日本が「戦力」を保持し、「戦争」を実行する能力を持つことを意味するため、憲法9条を事実上無視することになるとされている。また、反撃能力の保有によって、日本が国際紛争に巻き込まれ、戦争に発展するリスクが高まるという懸念も存在する。
一方で、政府側は反撃能力の行使はあくまで「防衛のため」であり、憲法9条が許す範囲内であると説明している。岸田内閣は、敵基地攻撃能力の行使は「専守防衛の枠内である」とし、他国からの差し迫った攻撃がある場合のみ、その攻撃を防ぐために最小限の武力行使を行うとの立場を取っている。
5. 結論
岸田内閣による反撃能力の保有は、従来の「専守防衛」政策を根本的に再解釈し、日本の安全保障政策を大きく変えるものである。この新方針は、現実的な脅威に対応するための措置とされているが、その一方で、専守防衛政策や憲法9条との整合性についての疑問が提起されている。日本が他国領域への攻撃を可能とする反撃能力を持つことは、憲法上の問題や国際的な平和主義との矛盾をはらむ課題として、今後も議論が続くテーマとなる。
☞ 岸田文雄首相が「反撃能力(敵基地攻撃能力)」について存立危機事態でも行使可能であるとの見解を示したのは、2022年12月の国会答弁や記者会見でである。彼は、1956年の政府見解を根拠に、反撃能力は日本の防衛に合憲であると説明し、平和安全法制によって定められた「武力行使の3要件」に基づくものであると述べた。
さらに、存立危機事態は他国に対する武力攻撃が日本の存立を脅かす場合に発動できる集団的自衛権の行使要件であり、岸田首相はこれに基づいて反撃能力が適用される可能性があるとした。しかし、専守防衛を堅持しつつ、他国領域への攻撃を正当化する立場には批判があり、憲法9条との整合性についての疑問が提起されている。
これらの方針は、日本の安全保障政策における大きな転換点とされ、特に中国や北朝鮮の軍事的脅威への対応を念頭に置いているが、依然として議論の余地が残っている。
☞ 1956年の政府見解とは、日本が「自衛のために必要最小限度の実力」を持つことが憲法上認められるという見解である。この見解は、憲法9条が定める「戦力の不保持」や「交戦権の否認」に関わる問題について、当時の政府が自衛権の範囲をどう解釈するかを示したものである。
具体的には、1956年5月に参議院で「憲法第9条の下では、自衛のための必要最小限の実力行使は許されるが、他国に対して攻撃的な戦力を保持したり、行使することは認められない」という考えが表明された。この見解は、あくまで自衛に限定したものであり、攻撃的な戦力の保持や行使は憲法違反とされた。
この解釈に基づき、日本の防衛政策は長らく「専守防衛」を基本とし、他国に対する先制的な攻撃や敵基地攻撃能力の保有は認められなかった。しかし、近年の安全保障環境の変化により、反撃能力の保有が議論されるようになり、この1956年の見解が再解釈されるに至っている。岸田内閣は、反撃能力もこの見解の範囲内で合憲としていまするが、憲法9条との整合性については依然として議論が続いている。
☞ 岸田内閣総理大臣記者会見 首相官邸 令和4年12月16日の内容を纏めて見る。
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/1216kaiken.html
【概要】
岸田文雄総理大臣の記者会見(令和4年12月16日)は、新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の3文書の閣議決定に関するもので、世界情勢の変化を背景に日本の防衛力強化を強調している。ロシアのウクライナ侵攻や、周辺国による核・ミサイル能力の強化を例に挙げ、日本の安全保障環境が厳しさを増していると指摘した。
今後5年間で43兆円の防衛力整備計画を実施し、GDPの2%の防衛費を確保する方針を表明。反撃能力やサイバー領域の強化、南西諸島防衛の強化などが具体的な施策として挙げられている。また、財源については歳出削減や税制改正を通じて確保し、安定した防衛力の維持を目指すとしている。
外交努力も重視しつつ、防衛力強化が国の安全保障の説得力を高めると強調し、国民の理解と協力を求めた。
【詳細】
岸田文雄首相が令和4年12月16日の記者会見で発表した内容は、日本の国家安全保障政策の大きな転換を示している。ここで採択された3つの文書「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」は、日本の防衛力強化と安全保障政策の方向性を明確にしたものであり、その背景や具体的内容が詳述されている。以下に、さらに詳細に説明する。
1. 国家安全保障の背景と戦略的方向性
岸田首相は、世界が歴史的な分岐点にあり、特にロシアのウクライナ侵略などで国際社会が分断と対立を深めていると指摘した。日本の周辺でも、核やミサイル能力の強化、軍備の増強、力を背景にした一方的な現状変更の試みが顕著化している。特に北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空を通過したことや、EEZ(排他的経済水域)内に着弾する事態が発生したことを挙げ、危機感を強調した。
この厳しい国際環境の中で、日本は国際社会と協調しながらも、自国防衛を強化しなければならないという考えを示し、これを「歴史の転換期」と表現している。そのため、日本の防衛力強化は、外交努力を支えるものとして不可欠だと強調した。
2. 防衛力の抜本的強化
今後5年間で、防衛力を抜本的に強化するために、43兆円の防衛力整備計画が実施される。この計画の一環として、2027年(令和9年度)には、日本のGDPの2%を防衛予算に充てることが目指されている。これは、NATOの加盟国が示す防衛支出の水準に近づけるものであり、日本の防衛力を国際基準に引き上げる狙いがある。
3. 具体的な防衛能力強化のポイント
首相は、防衛力強化の3つの具体的な領域を強調した。
・反撃能力の保有:従来のミサイル防衛体制に加えて、反撃能力を持つことで相手国の攻撃を抑止する力を持つ必要があるとしている。特に、極超音速滑空兵器や飽和攻撃などの新たな脅威に対応するためには、相手に攻撃を思いとどまらせるための抑止力が不可欠であると説明した。
・新たな領域(宇宙・サイバー・電磁波)への対応:ハイブリッド戦やグレーゾーン事態が頻発する現代の安全保障環境において、宇宙、サイバー、電磁波の分野での対応能力を強化することが必要だと述べた。これにより、軍事・非軍事の境界が曖昧な状況にも対処できるようにすることを目指している。
・南西地域の防衛強化:尖閣諸島を含む南西諸島の防衛体制を強化するために、陸上自衛隊の部隊を倍増させ、全国からの迅速な展開を可能にするために輸送機や輸送船を増強するとしている。海上保安庁と自衛隊の連携も強化し、南西地域での防衛力を高める意図がある。
4. 財源の確保と増税の必要性
岸田首相は、43兆円の防衛力強化に向けた安定的な財源の確保についても説明した。このため、法人税、所得税、たばこ税の引き上げを段階的に実施する方針を示し、防衛力強化のための予算を裏付けるために必要な措置を行うと述べた。
具体的には、法人税に4~4.5%の付加税を設け、中小企業には配慮を行い、全法人の6%のみが対象となるとしている。また、所得税に関しては、復興特別所得税を1%引き下げる一方、同じ1%の付加税を導入する計画を説明した。
この増税案については、一部で「唐突だ」「拙速だ」との批判もあるが、岸田首相は、防衛力強化のための安定した財源を将来世代に先送りすることなく、現世代で対応すべきであるとの考えを示した。
5. 国民への理解と協力の要請
岸田首相は、防衛力強化には国民の理解と協力が不可欠であると強調した。ウクライナの例を引き合いに出し、国を守るために国民一人一人が主体的に意識を持つことの重要性を説いている。また、日本の安全保障政策の大きな転換にあたって、未来の世代に対して責任を果たすためにも、国民の協力が必要であると訴えた。
6. 憲法との関係と国際法の遵守
防衛力強化に伴い、憲法や国際法との整合性についても言及されている。岸田首相は、日本が非核三原則や専守防衛を堅持し、平和国家としての立場を崩さないと明言している。新たな安全保障政策は、日本国憲法、国際法、国内法の範囲内で実施されることを強調し、関係国にも透明性を持って説明し、理解を得るための努力を続ける方針を示した。
この記者会見は、日本の安全保障政策が大きな転換期を迎えていることを強調し、今後の防衛力強化に向けた政府の具体的な計画とその背景を詳細に説明した重要な発表であった。
【要点】
・国際情勢の変化
ロシアのウクライナ侵略など、国際社会で対立が深まっている。日本周辺でも北朝鮮のミサイル発射や軍備増強が進行している。
・日本の防衛力強化の必要性
防衛力強化は外交を支えるものとして不可欠であり、日本の安全保障を強化するための新しい政策が導入された。
・防衛予算の増加
今後5年間で43兆円を防衛に投じ、2027年にはGDPの2%を防衛予算に充てる計画。
・反撃能力の保有
従来の防御に加え、相手の攻撃を抑止するための反撃能力を持つことが必要とされる。
・新領域への対応強化
宇宙・サイバー・電磁波などの新たな戦場に対応する能力を強化。
・南西地域の防衛強化
尖閣諸島を含む南西諸島の防衛体制を強化し、陸上自衛隊や輸送機の増強を行う。
・増税による財源確保
法人税、所得税、たばこ税を引き上げ、防衛力強化のための安定的な財源を確保。
・国民の理解と協力
国防強化のためには国民の理解と協力が不可欠であり、未来世代への責任を果たすための努力が求められる。
・憲法と国際法の遵守
非核三原則や専守防衛を堅持し、日本国憲法と国際法の範囲内で新たな政策を実施することを強調。
☞ 日本政府は、防衛力強化のための基本方針として国家安全保障戦略(NSS)、国家防衛戦略(NDS)、および防衛力整備計画の3つの主要文書を策定している。これらは互いに関連し、国家安全保障政策の全体像を形作るものである。それぞれの文書について、以下に詳述する。
1. 国家安全保障戦略(NSS: National Security Strategy)
目的
国家安全保障戦略は、日本の安全保障に対する基本的なビジョンや戦略を示す最上位の文書であり、外交・防衛の総合的な方向性を定めるものである。国際社会での日本の役割や、安全保障に関する基本的な方針を明確にする。
主なポイント
・自由で開かれたインド太平洋の維持: アジア太平洋地域における日本の戦略的目標として、法の支配に基づいた国際秩序の維持を掲げている。中国の軍事力増強や、海洋進出に対する抑止力を強化することが重要視されている。
・防衛力強化の必要性: 周辺国の軍事的脅威の高まりに対応し、抑止力を強化するための防衛力増強が明確に打ち出されている。特に、反撃能力を含む新たな防衛体制の整備が重要視されている。
・同盟国・友好国との協力: 米国をはじめとする同盟国や、クアッド、NATOなどのパートナー国との連携強化が重点的に挙げられている。
背景
2022年12月に10年ぶりに改定され、ロシアのウクライナ侵略や、中国・北朝鮮の軍事的脅威など、国際情勢の急激な変化に対応するための防衛戦略が新たに加わった。
2. 国家防衛戦略(NDS: National Defense Strategy)
目的
国家防衛戦略は、国家安全保障戦略で示されたビジョンを具体的に実現するための防衛戦略を定めるもので、防衛省・自衛隊が実施すべき具体的な方針を示す。これまでの防衛計画の大綱が改称され、より包括的な内容となっている。
主なポイント
・持続的で強靭な防衛力の確立: 従来の専守防衛の枠組みを維持しつつ、反撃能力を含む防衛体制を強化。これにより、国民の安全を確保し、侵略を抑止することを目的としている。
・多領域防衛の強化: 陸・海・空に加え、宇宙、サイバー空間、電磁波領域といった新たな戦場に対応するため、これらの能力を強化する。
・動的防衛力の運用: 自衛隊が迅速に展開できるようにし、南西諸島などの防衛体制を強化することが重点的に述べられている。特に、即応性と機動力の向上が求められている。
・同盟・国際パートナーとの協力強化: 米国との同盟関係の強化が引き続き重視され、クアッド(日本、アメリカ、オーストラリア、インド)や、その他のインド太平洋地域でのパートナーシップを通じて防衛力を強化。
背景
国家防衛戦略は、国家安全保障戦略を実現するための詳細な防衛政策の枠組みとして、2022年12月に新たに策定された。日本の地政学的リスクを反映し、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事的影響力増加への対応が主な焦点となっている。
3. 防衛力整備計画(Defense Buildup Program)
目的
防衛力整備計画は、国家防衛戦略を実現するために必要な具体的な防衛装備や部隊編成、予算の計画を定めたものである。具体的にどのような装備や能力を整備するのか、どのようなスケジュールで実施するのかが示される。
主なポイント
・防衛力強化の目標: 防衛予算を今後5年間で43兆円に増加させ、防衛力強化のための財源確保を目指す。この中には、反撃能力の導入、弾薬備蓄の強化、新型戦闘機や無人機の導入が含まれている。
・新しい装備の導入: 特に、反撃能力を強化するための長距離ミサイルの導入が強調されている。また、サイバー防衛や宇宙防衛に対応する装備も整備される予定である。
・南西諸島の防衛強化: 尖閣諸島を含む南西地域への重点的な防衛体制強化が計画され、陸上自衛隊や航空自衛隊の展開強化、輸送機や艦船の増強が行われる。
・技術革新の推進: AIや無人機、サイバー技術などの先端技術を活用した防衛力の向上が計画に含まれており、これにより将来的な防衛力の持続性が確保されることが期待されている。
背景
この計画は、日本の防衛力を迅速に強化するための具体的な手段として策定され、国家防衛戦略に基づいて実行される。
【参考】
☞ 日中戦争(1937年-1945年)における中国人の死者数に関する推定は様々で、正確な数値には意見の相違があるが、一般的な推定値は以下の通り。
・戦闘による死者: 戦闘や爆撃などによる直接的な戦死者数は、約200万人とされている。
・民間人の死者: 民間人の死者数は、戦争による飢餓や病気、虐殺などを含めて、推定で1000万人以上とされている。特に南京大虐殺(1937年12月-1938年1月)では、数万人から30万人以上の民間人や捕虜が犠牲になったとされる。
総じて、日中戦争全体で中国人の死者数は、約1000万人から1500万人に達するというのが一般的な見積もりである。この戦争は、中国社会に深刻な影響を及ぼし、多くの人々が命を落とした。
【参考はブログ作成者が付記】
【閑話 完】
☞ 安倍政権から岸田政権の日本の政権について、以下のように概観する。
1. 安倍政権(2012年12月 - 2020年9月)
総理大臣: 安倍晋三
主な政策
・アベノミクス: 経済政策として、金融緩和、財政出動、成長戦略の三本の矢を掲げた。
・安全保障政策: 集団的自衛権の行使容認、日米同盟の強化、防衛力の増強。
・憲法改正: 自衛隊の明記など憲法改正の議論を推進。
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第一次安倍政権 2006年9月 - 2007年9月は、安倍晋三が日本の総理大臣を務めた最初の政権である。以下にその主要な特徴と政策を説明する。
1. 政権の背景
・発足: 2006年9月、安倍晋三が総理大臣に就任。安倍氏は、当時の首相・小泉純一郎の後継として選ばれた。
・党内状況: 自民党の内部で支持を受け、総裁選で勝利して首相に就任した。
2. 主要政策と取り組み
経済政策
・構造改革: 経済成長を促進するための構造改革を推進。規制緩和や企業支援を行った。
・税制改革: 所得税や法人税の改革を進め、企業の競争力を高めようとした。
安全保障政策
・憲法改正: 憲法改正に向けた議論を推進し、自衛隊の位置付けを明確にすることを目指した。
・日米同盟: 日米同盟の強化を図り、アジア太平洋地域での安全保障協力を深めた。
外交政策
・アジア外交: 中国や韓国との関係強化を図りつつ、アジア地域での日本の影響力を高めようとした。
・国際貢献: 国際社会における日本の役割を拡大し、国連の平和維持活動への積極的な参加を表明した。
3. 問題と課題
・内閣の不安定さ: 政治スキャンダルや内閣支持率の低下に直面し、特に防衛大臣の失言問題などが影響した。
・政策の実行困難: いくつかの政策は十分に実行されず、政権の信任を揺るがす原因となった。
4. 政権の終焉
・退陣: 2007年9月、安倍首相は健康問題を理由に辞任を表明した。これにより、第一次安倍政権は約1年で終了した。
まとめ
第一次安倍政権は、経済改革や安全保障政策の推進を試みたが、短期間での政権交代を余儀なくされた。健康問題や内政の不安定さが影響し、安倍氏はその後、再度首相に就任し、第二次安倍政権を発足させることになる。
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2. 菅政権(2020年9月 - 2021年10月)
総理大臣: 菅義偉
主な政策
・コロナ対応: 新型コロナウイルス対策としてワクチン接種の推進、緊急事態宣言の発出。
・デジタル庁の創設: デジタル社会の推進を目指し、デジタル庁を設立。
・経済政策: アベノミクスの継承、規制緩和や成長戦略の推進。
3. 岸田政権(2021年10月 - 現在)
総理大臣: 岸田文雄
主な政策
・経済政策: 「新しい資本主義」の推進。成長と分配の両立を目指す。
・防衛力強化: 防衛予算の大幅な増額、反撃能力の強化、南西諸島防衛の強化。
・外交政策: 日米同盟の強化、クアッド(日本、アメリカ、オーストラリア、インド)との連携強化、中国やロシアに対する対応。
まとめ
安倍政権から始まるこれらの政権は、日本の安全保障政策や経済政策において大きな変化をもたらした。特に、安倍政権以降、国防の強化や集団的自衛権の行使容認など、安全保障政策においては積極的な姿勢が取られている。菅政権は主にコロナ対策とデジタル化を重点的に進め、岸田政権は引き続き防衛力の強化と経済政策の改革に取り組んでいる。
では、以下で特に安倍政権、岸田政権について取り上げる。
☞ 安倍晋三政権(2012年~2020年)は、2015年に「安全保障関連法」を成立させた。この法律の改正により、日本の安全保障政策にいくつかの重要な変化がもたらされた。以下に主なポイントを述べる。
1.「存立危機事態」という新しい概念: 安倍政権は、「存立危機事態」という新たな概念を導入した。これは、日本の国の存立が脅かされるような事態(例えば、周辺国による攻撃など)発生した場合に、日本が自国防衛だけでなく、同盟国や友好国を防衛するために必要な行動を取ることができるとするものである。この概念は、従来の「専守防衛」の枠組みを超え、より広範な対応を可能にするものである。
2.集団的自衛権の行使: 安全保障関連法の改正により、日本は集団的自衛権の行使を認めるようになった。これは、自衛隊が他国の軍隊と連携して、防衛活動を行うことができるようにするもので、従来の日本の憲法解釈では認められていなかった行為である。具体的には、例えば同盟国(特に米国)が攻撃された場合、日本もその支援を行うことができるようになる。
3.戦争への参加の可能性: この法律の改正により、日本は他国同士の戦争に直接参加するわけではあないが、集団的自衛権の行使により、戦争に関連する活動に参加する可能性が高まった。これには、武力行使を含む多国籍軍との連携や支援活動が含まれる。
この改正については、国内外で賛否が分かれた。支持者は、日本の安全保障環境が厳しくなっている中で、同盟国との協力強化が必要だと主張した。一方、批判者は、これにより日本が戦争に巻き込まれるリスクが増すと懸念した。また、憲法との整合性についても議論があった。
☞ 「存立危機事態」とは、2015年の安保法制(安全保障関連法)において導入された新しい概念で、日本の防衛政策における重要な要素である。この概念は、日本が集団的自衛権を行使する際の具体的な条件を定めるために導入された。これにより、従来の日本の専守防衛を超え、他国の防衛にも関与する法的枠組みが整備された。
存立危機事態の定義
存立危機事態は、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合を指す。具体的には、以下のような状況を想定している。
1.日本への直接的な攻撃: 日本そのものが武力攻撃を受けた場合はもちろんのこと、例えば、日本に密接な関係を持つ国(特に同盟国であるアメリカ)が攻撃され、その結果、日本の存立に重大な影響を与えると判断された場合が含まれる。
2.同盟国や友好国への攻撃: 同盟国や日本と安全保障上密接な関係にある国が攻撃され、その防衛が日本の安全保障に不可欠であると政府が判断した場合も存立危機事態に該当する。具体例として、アメリカが敵対国から攻撃を受け、日本がその防衛に加わることで自国の安全が守られると判断された場合である。
集団的自衛権との関係
存立危機事態は、集団的自衛権を行使するための条件となっている。集団的自衛権とは、自国が直接攻撃されていなくても、密接な関係にある他国が攻撃を受けた場合に、その国を防衛するために武力を行使する権利である。
従来の憲法解釈では、日本は集団的自衛権の行使を認めていなかったが、この存立危機事態の導入により、日本は特定の状況下で集団的自衛権を行使できるようになった。ただし、集団的自衛権の行使が認められるのは、日本の存立や国民の権利が根本的に脅かされる明確な危険がある場合に限定されている。
存立危機事態の具体的条件
存立危機事態の発動には、いくつかの条件が満たされる必要がある。具体的には、以下の3つの要件が示されている
1.日本の存立が脅かされること:日本自体が攻撃されていなくても、同盟国や密接な関係にある国が攻撃され、その影響が日本の安全に重大な脅威を及ぼす場合。
2.国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること:これにより、単なる外交的な問題や経済的な脅威ではなく、具体的な武力攻撃やその危険が迫っている場合を対象としている。
3.武力行使が必要であり、他に適当な手段がないこと:平和的手段や他の外交手段が効果を発揮しない場合に限り、武力の行使が認められる。これにより、最終手段としての武力行使が限定的に適用されることが強調されている。
実際の運用と影響
存立危機事態の概念は、憲法9条に基づく「専守防衛」の枠組みを保ちながらも、日本の防衛範囲を拡大させるものである。特に、国際情勢の変化や地域の安全保障環境の悪化を背景に、日本が積極的に同盟国と連携して防衛活動に参加できるようにするためのものである。
・アメリカとの協力強化:日本は日米安全保障条約に基づき、アメリカとの同盟関係を維持しているが、存立危機事態の導入により、アメリカが攻撃された際に自衛隊が支援に参加する可能性が高まった。
・抑止力の強化:存立危機事態に基づく対応は、周辺国に対する抑止力を強化する役割も果たしている。これにより、例えば中国や北朝鮮の軍事的挑発に対する防衛力を強化する狙いがある。
・国内外の論争:一方で、この新しい法的枠組みについては、国内外で賛否が分かれている。日本国内では、憲法9条との整合性について疑問を呈する意見や、戦争に巻き込まれるリスクが増すという懸念が強調された。また、近隣国の中国や韓国は、日本の防衛政策の変更に対して反発を示した。
結論
存立危機事態は、安保法制の中で日本の防衛政策を大きく変革する重要な概念である。日本が国際的な防衛協力の枠組みでどのように役割を果たすか、またその行使がどのように国際関係に影響を与えるかを考える上で、中心的なテーマとなっている。
☞ 「安全保障関連法」(正式には「平和安全法制関連法案」)は、2015年に日本で成立した一連の法律で、安倍晋三政権による安全保障政策の大きな変更を伴うものでしあった。この法律の主な目的は、日本の防衛能力を強化し、国際的な安全保障環境の変化に対応することである。以下に、具体的な内容とその影響について詳しく説明する。
安全保障関連法の主要な要点
1.新しい安全保障法制の枠組み 安全保障関連法は、以下の4つの主要な法律で構成されている。
・自衛隊法の改正:自衛隊の活動範囲を広げ、集団的自衛権の行使を可能にするための改正。
・国際平和支援法:国際連携活動や平和維持活動への参加を促進するための法律。
・特定秘密保護法の改正:安全保障に関する情報の取り扱いを厳格にし、秘密保持の制度を強化。
・防衛省設置法の改正:防衛省の権限と機能を強化するための改正。
2.「存立危機事態」:「存立危機事態」は、日本の存立が脅かされるような状況に対応するための新たな概念である。具体的には、以下のような事態が該当する。
・日本への直接的な攻撃。
・同盟国や友好国が攻撃を受け、日本の安全保障に重大な影響を及ぼす場合。
3.集団的自衛権の行使 安全保障関連法により、日本は集団的自衛権を行使することができるようになった。これにより、自衛隊は、同盟国(特に米国)が攻撃を受けた場合や、国際平和支援活動において、武力行使を伴う活動を行うことが可能になる。ただし、日本が他国の戦争に直接参加するわけではない。
4.後方支援の強化 自衛隊の海外での後方支援活動の範囲も広がった。例えば、医療支援や物資輸送、軍事作戦の支援などが含まれる。これにより、国際的な平和維持活動への貢献が強化された。
5.平和維持活動や国際連携の推進 国際平和支援法に基づき、日本は国際連携や平和維持活動において、より積極的な役割を果たすことができるようになった。これにより、国際的な安全保障への貢献が拡大した。
影響と論争
1.国内の反応
・支持派:安全保障関連法の支持者は、日本の安全保障環境が厳しくなっている中で、同盟国との協力を強化する必要があると主張した。
・反対派:批判者は、集団的自衛権の行使が戦争に巻き込まれるリスクを高めると懸念した。また、憲法との整合性についても疑問が呈された。
2.国際的な影響
・この法律は、特にアメリカとの安全保障関係を強化するための一環と見なされており、日米同盟の強化がんだ一方で、周辺国、特に中国や韓国からの反発もあった。
安全保障関連法は、日本の防衛政策における大きな転換点であり、国際社会との連携や日本の安全保障の役割に重要な影響を与えている。
☞ 岸田文雄内閣が示した「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有に関する政策転換は、日本の安全保障政策において重要な変化を意味している。これにより、日本は他国からの攻撃を未然に防ぐために、直接攻撃を受けていない段階で他国領域にある敵のミサイル基地や攻撃拠点を攻撃する能力を保有する方針に転じた。これが従来の「専守防衛」政策とどのように整合性を持つのか、そして憲法9条との関係について詳しく説明する。
1. 敵基地攻撃能力(反撃能力)とは何か?
敵基地攻撃能力(反撃能力)とは、他国からの武力攻撃が差し迫った場合、相手国のミサイルや攻撃手段が発射される前に、その基地や拠点を攻撃して無力化する能力を指す。従来、日本は「専守防衛」に基づき、こうした攻撃能力の保有を認めていなかった。これは、自衛隊が他国の領域を直接攻撃することは、憲法9条で定められた「戦力の不保持」や「交戦権の否認」に反するという解釈に基づくものである。
しかし、岸田内閣は、北朝鮮のミサイル開発や中国の軍事的圧力の増大といった現実的な脅威を踏まえ、防衛能力の強化が必要であると判断し、反撃能力の保有を可能とする方針に転じまし。
2. 存立危機事態と反撃能力の関係
「存立危機事態」とは、前述したように、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険が存在する場合を指す。この概念は、集団的自衛権の行使を可能にするための法的枠組みであり、日本が直接攻撃を受けていない場合でも、同盟国が攻撃され、その影響が日本の安全に重大な脅威を与えると判断された場合に自衛措置を取ることができまする。
岸田内閣は、存立危機事態においても反撃能力の行使が可能であるとしている。つまり、日本がまだ直接攻撃されていない段階でも、他国からの明白かつ差し迫った攻撃の兆候がある場合、先制的に他国領域の基地や拠点を攻撃できるとの見解である。これは、敵のミサイル発射が間近に迫っていると認識された場合、攻撃を受ける前に反撃を行うという防衛的措置である。
3. 専守防衛との矛盾
「専守防衛」とは、日本が武力行使を行うのは、相手国から攻撃を受けた時に限り、必要最小限の防衛力をもって対応するという政策である。専守防衛は、他国領域への攻撃や積極的な武力行使を否定しており、これに基づいて日本は戦後の防衛政策を進めてきた。
しかし、反撃能力の保有は、専守防衛の定義と明らかに矛盾する可能性がある。反撃能力の行使が認められる場合、日本は相手からの攻撃を受ける前に武力行使を行うことが可能になるため、これは専守防衛の原則に反する行動とも解釈される。特に、他国領域を攻撃することは「防御」の範囲を超え、積極的な「攻撃」に当たる可能性があるため、専守防衛政策と整合性を取るのは困難だという批判が生じていまする。
4. 憲法9条との関係
憲法9条は「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を明記している。この条文に基づき、日本は戦後一貫して自衛のために必要最小限の防衛力しか持たないとされてきた。反撃能力の保有は、他国の領域への攻撃が可能になるため、戦力の不保持という憲法9条の理念と大きく矛盾する可能性がある。
反対派の主張によれば、他国の領域を攻撃することは、日本が「戦力」を保持し、「戦争」を実行する能力を持つことを意味するため、憲法9条を事実上無視することになるとされている。また、反撃能力の保有によって、日本が国際紛争に巻き込まれ、戦争に発展するリスクが高まるという懸念も存在する。
一方で、政府側は反撃能力の行使はあくまで「防衛のため」であり、憲法9条が許す範囲内であると説明している。岸田内閣は、敵基地攻撃能力の行使は「専守防衛の枠内である」とし、他国からの差し迫った攻撃がある場合のみ、その攻撃を防ぐために最小限の武力行使を行うとの立場を取っている。
5. 結論
岸田内閣による反撃能力の保有は、従来の「専守防衛」政策を根本的に再解釈し、日本の安全保障政策を大きく変えるものである。この新方針は、現実的な脅威に対応するための措置とされているが、その一方で、専守防衛政策や憲法9条との整合性についての疑問が提起されている。日本が他国領域への攻撃を可能とする反撃能力を持つことは、憲法上の問題や国際的な平和主義との矛盾をはらむ課題として、今後も議論が続くテーマとなる。
☞ 岸田文雄首相が「反撃能力(敵基地攻撃能力)」について存立危機事態でも行使可能であるとの見解を示したのは、2022年12月の国会答弁や記者会見でである。彼は、1956年の政府見解を根拠に、反撃能力は日本の防衛に合憲であると説明し、平和安全法制によって定められた「武力行使の3要件」に基づくものであると述べた。
さらに、存立危機事態は他国に対する武力攻撃が日本の存立を脅かす場合に発動できる集団的自衛権の行使要件であり、岸田首相はこれに基づいて反撃能力が適用される可能性があるとした。しかし、専守防衛を堅持しつつ、他国領域への攻撃を正当化する立場には批判があり、憲法9条との整合性についての疑問が提起されている。
これらの方針は、日本の安全保障政策における大きな転換点とされ、特に中国や北朝鮮の軍事的脅威への対応を念頭に置いているが、依然として議論の余地が残っている。
☞ 1956年の政府見解とは、日本が「自衛のために必要最小限度の実力」を持つことが憲法上認められるという見解である。この見解は、憲法9条が定める「戦力の不保持」や「交戦権の否認」に関わる問題について、当時の政府が自衛権の範囲をどう解釈するかを示したものである。
具体的には、1956年5月に参議院で「憲法第9条の下では、自衛のための必要最小限の実力行使は許されるが、他国に対して攻撃的な戦力を保持したり、行使することは認められない」という考えが表明された。この見解は、あくまで自衛に限定したものであり、攻撃的な戦力の保持や行使は憲法違反とされた。
この解釈に基づき、日本の防衛政策は長らく「専守防衛」を基本とし、他国に対する先制的な攻撃や敵基地攻撃能力の保有は認められなかった。しかし、近年の安全保障環境の変化により、反撃能力の保有が議論されるようになり、この1956年の見解が再解釈されるに至っている。岸田内閣は、反撃能力もこの見解の範囲内で合憲としていまするが、憲法9条との整合性については依然として議論が続いている。
☞ 岸田内閣総理大臣記者会見 首相官邸 令和4年12月16日の内容を纏めて見る。
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/1216kaiken.html
【概要】
岸田文雄総理大臣の記者会見(令和4年12月16日)は、新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の3文書の閣議決定に関するもので、世界情勢の変化を背景に日本の防衛力強化を強調している。ロシアのウクライナ侵攻や、周辺国による核・ミサイル能力の強化を例に挙げ、日本の安全保障環境が厳しさを増していると指摘した。
今後5年間で43兆円の防衛力整備計画を実施し、GDPの2%の防衛費を確保する方針を表明。反撃能力やサイバー領域の強化、南西諸島防衛の強化などが具体的な施策として挙げられている。また、財源については歳出削減や税制改正を通じて確保し、安定した防衛力の維持を目指すとしている。
外交努力も重視しつつ、防衛力強化が国の安全保障の説得力を高めると強調し、国民の理解と協力を求めた。
【詳細】
岸田文雄首相が令和4年12月16日の記者会見で発表した内容は、日本の国家安全保障政策の大きな転換を示している。ここで採択された3つの文書「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」は、日本の防衛力強化と安全保障政策の方向性を明確にしたものであり、その背景や具体的内容が詳述されている。以下に、さらに詳細に説明する。
1. 国家安全保障の背景と戦略的方向性
岸田首相は、世界が歴史的な分岐点にあり、特にロシアのウクライナ侵略などで国際社会が分断と対立を深めていると指摘した。日本の周辺でも、核やミサイル能力の強化、軍備の増強、力を背景にした一方的な現状変更の試みが顕著化している。特に北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空を通過したことや、EEZ(排他的経済水域)内に着弾する事態が発生したことを挙げ、危機感を強調した。
この厳しい国際環境の中で、日本は国際社会と協調しながらも、自国防衛を強化しなければならないという考えを示し、これを「歴史の転換期」と表現している。そのため、日本の防衛力強化は、外交努力を支えるものとして不可欠だと強調した。
2. 防衛力の抜本的強化
今後5年間で、防衛力を抜本的に強化するために、43兆円の防衛力整備計画が実施される。この計画の一環として、2027年(令和9年度)には、日本のGDPの2%を防衛予算に充てることが目指されている。これは、NATOの加盟国が示す防衛支出の水準に近づけるものであり、日本の防衛力を国際基準に引き上げる狙いがある。
3. 具体的な防衛能力強化のポイント
首相は、防衛力強化の3つの具体的な領域を強調した。
・反撃能力の保有:従来のミサイル防衛体制に加えて、反撃能力を持つことで相手国の攻撃を抑止する力を持つ必要があるとしている。特に、極超音速滑空兵器や飽和攻撃などの新たな脅威に対応するためには、相手に攻撃を思いとどまらせるための抑止力が不可欠であると説明した。
・新たな領域(宇宙・サイバー・電磁波)への対応:ハイブリッド戦やグレーゾーン事態が頻発する現代の安全保障環境において、宇宙、サイバー、電磁波の分野での対応能力を強化することが必要だと述べた。これにより、軍事・非軍事の境界が曖昧な状況にも対処できるようにすることを目指している。
・南西地域の防衛強化:尖閣諸島を含む南西諸島の防衛体制を強化するために、陸上自衛隊の部隊を倍増させ、全国からの迅速な展開を可能にするために輸送機や輸送船を増強するとしている。海上保安庁と自衛隊の連携も強化し、南西地域での防衛力を高める意図がある。
4. 財源の確保と増税の必要性
岸田首相は、43兆円の防衛力強化に向けた安定的な財源の確保についても説明した。このため、法人税、所得税、たばこ税の引き上げを段階的に実施する方針を示し、防衛力強化のための予算を裏付けるために必要な措置を行うと述べた。
具体的には、法人税に4~4.5%の付加税を設け、中小企業には配慮を行い、全法人の6%のみが対象となるとしている。また、所得税に関しては、復興特別所得税を1%引き下げる一方、同じ1%の付加税を導入する計画を説明した。
この増税案については、一部で「唐突だ」「拙速だ」との批判もあるが、岸田首相は、防衛力強化のための安定した財源を将来世代に先送りすることなく、現世代で対応すべきであるとの考えを示した。
5. 国民への理解と協力の要請
岸田首相は、防衛力強化には国民の理解と協力が不可欠であると強調した。ウクライナの例を引き合いに出し、国を守るために国民一人一人が主体的に意識を持つことの重要性を説いている。また、日本の安全保障政策の大きな転換にあたって、未来の世代に対して責任を果たすためにも、国民の協力が必要であると訴えた。
6. 憲法との関係と国際法の遵守
防衛力強化に伴い、憲法や国際法との整合性についても言及されている。岸田首相は、日本が非核三原則や専守防衛を堅持し、平和国家としての立場を崩さないと明言している。新たな安全保障政策は、日本国憲法、国際法、国内法の範囲内で実施されることを強調し、関係国にも透明性を持って説明し、理解を得るための努力を続ける方針を示した。
この記者会見は、日本の安全保障政策が大きな転換期を迎えていることを強調し、今後の防衛力強化に向けた政府の具体的な計画とその背景を詳細に説明した重要な発表であった。
【要点】
・国際情勢の変化
ロシアのウクライナ侵略など、国際社会で対立が深まっている。日本周辺でも北朝鮮のミサイル発射や軍備増強が進行している。
・日本の防衛力強化の必要性
防衛力強化は外交を支えるものとして不可欠であり、日本の安全保障を強化するための新しい政策が導入された。
・防衛予算の増加
今後5年間で43兆円を防衛に投じ、2027年にはGDPの2%を防衛予算に充てる計画。
・反撃能力の保有
従来の防御に加え、相手の攻撃を抑止するための反撃能力を持つことが必要とされる。
・新領域への対応強化
宇宙・サイバー・電磁波などの新たな戦場に対応する能力を強化。
・南西地域の防衛強化
尖閣諸島を含む南西諸島の防衛体制を強化し、陸上自衛隊や輸送機の増強を行う。
・増税による財源確保
法人税、所得税、たばこ税を引き上げ、防衛力強化のための安定的な財源を確保。
・国民の理解と協力
国防強化のためには国民の理解と協力が不可欠であり、未来世代への責任を果たすための努力が求められる。
・憲法と国際法の遵守
非核三原則や専守防衛を堅持し、日本国憲法と国際法の範囲内で新たな政策を実施することを強調。
☞ 日本政府は、防衛力強化のための基本方針として国家安全保障戦略(NSS)、国家防衛戦略(NDS)、および防衛力整備計画の3つの主要文書を策定している。これらは互いに関連し、国家安全保障政策の全体像を形作るものである。それぞれの文書について、以下に詳述する。
1. 国家安全保障戦略(NSS: National Security Strategy)
目的
国家安全保障戦略は、日本の安全保障に対する基本的なビジョンや戦略を示す最上位の文書であり、外交・防衛の総合的な方向性を定めるものである。国際社会での日本の役割や、安全保障に関する基本的な方針を明確にする。
主なポイント
・自由で開かれたインド太平洋の維持: アジア太平洋地域における日本の戦略的目標として、法の支配に基づいた国際秩序の維持を掲げている。中国の軍事力増強や、海洋進出に対する抑止力を強化することが重要視されている。
・防衛力強化の必要性: 周辺国の軍事的脅威の高まりに対応し、抑止力を強化するための防衛力増強が明確に打ち出されている。特に、反撃能力を含む新たな防衛体制の整備が重要視されている。
・同盟国・友好国との協力: 米国をはじめとする同盟国や、クアッド、NATOなどのパートナー国との連携強化が重点的に挙げられている。
背景
2022年12月に10年ぶりに改定され、ロシアのウクライナ侵略や、中国・北朝鮮の軍事的脅威など、国際情勢の急激な変化に対応するための防衛戦略が新たに加わった。
2. 国家防衛戦略(NDS: National Defense Strategy)
目的
国家防衛戦略は、国家安全保障戦略で示されたビジョンを具体的に実現するための防衛戦略を定めるもので、防衛省・自衛隊が実施すべき具体的な方針を示す。これまでの防衛計画の大綱が改称され、より包括的な内容となっている。
主なポイント
・持続的で強靭な防衛力の確立: 従来の専守防衛の枠組みを維持しつつ、反撃能力を含む防衛体制を強化。これにより、国民の安全を確保し、侵略を抑止することを目的としている。
・多領域防衛の強化: 陸・海・空に加え、宇宙、サイバー空間、電磁波領域といった新たな戦場に対応するため、これらの能力を強化する。
・動的防衛力の運用: 自衛隊が迅速に展開できるようにし、南西諸島などの防衛体制を強化することが重点的に述べられている。特に、即応性と機動力の向上が求められている。
・同盟・国際パートナーとの協力強化: 米国との同盟関係の強化が引き続き重視され、クアッド(日本、アメリカ、オーストラリア、インド)や、その他のインド太平洋地域でのパートナーシップを通じて防衛力を強化。
背景
国家防衛戦略は、国家安全保障戦略を実現するための詳細な防衛政策の枠組みとして、2022年12月に新たに策定された。日本の地政学的リスクを反映し、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事的影響力増加への対応が主な焦点となっている。
3. 防衛力整備計画(Defense Buildup Program)
目的
防衛力整備計画は、国家防衛戦略を実現するために必要な具体的な防衛装備や部隊編成、予算の計画を定めたものである。具体的にどのような装備や能力を整備するのか、どのようなスケジュールで実施するのかが示される。
主なポイント
・防衛力強化の目標: 防衛予算を今後5年間で43兆円に増加させ、防衛力強化のための財源確保を目指す。この中には、反撃能力の導入、弾薬備蓄の強化、新型戦闘機や無人機の導入が含まれている。
・新しい装備の導入: 特に、反撃能力を強化するための長距離ミサイルの導入が強調されている。また、サイバー防衛や宇宙防衛に対応する装備も整備される予定である。
・南西諸島の防衛強化: 尖閣諸島を含む南西地域への重点的な防衛体制強化が計画され、陸上自衛隊や航空自衛隊の展開強化、輸送機や艦船の増強が行われる。
・技術革新の推進: AIや無人機、サイバー技術などの先端技術を活用した防衛力の向上が計画に含まれており、これにより将来的な防衛力の持続性が確保されることが期待されている。
背景
この計画は、日本の防衛力を迅速に強化するための具体的な手段として策定され、国家防衛戦略に基づいて実行される。
【参考】
☞ 日中戦争(1937年-1945年)における中国人の死者数に関する推定は様々で、正確な数値には意見の相違があるが、一般的な推定値は以下の通り。
・戦闘による死者: 戦闘や爆撃などによる直接的な戦死者数は、約200万人とされている。
・民間人の死者: 民間人の死者数は、戦争による飢餓や病気、虐殺などを含めて、推定で1000万人以上とされている。特に南京大虐殺(1937年12月-1938年1月)では、数万人から30万人以上の民間人や捕虜が犠牲になったとされる。
総じて、日中戦争全体で中国人の死者数は、約1000万人から1500万人に達するというのが一般的な見積もりである。この戦争は、中国社会に深刻な影響を及ぼし、多くの人々が命を落とした。
【参考はブログ作成者が付記】
【閑話 完】