バイデン政権:ウクライナ支援戦略はあるのか2024年09月30日 17:03

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【概要】

 バイデン政権がウクライナへの支援戦略を完全に機密扱いしていることに対して、批判的な立場を取っている。特に、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の編集部は、バイデン大統領が議会と約束した戦略文書を機密化したことを問題視し、アメリカの支援がどのようにウクライナの戦況改善に繋がるのか明確にすべきだと指摘している。

 WSJはまた、戦略が明らかにされない理由として、カマラ・ハリス副大統領が戦争についての自分の考えを選挙前に説明しなければならなくなる可能性を示唆しているが、筆者はその背後には国内の選挙対策以上の問題があるとしている。実際、バイデン政権が明確な戦略を持っていない可能性が高いと推測している。

 米国が当初ロシアに対する経済制裁が効力を持つと過大評価していたことや、西側の期待とは異なり、ロシアが経済的に耐え、軍事的にも「消耗戦」に持ち込んだことを強調している。西側が支援した昨年のウクライナの反攻作戦は失敗し、ロシアが物資の調達面で西側に優位に立っているとも述べている。

 また、昨年の春に議会がウクライナへの支援を認める条件としてバイデン政権に戦略の提出を求めたが、その戦略は機密扱いとなり、一般市民は戦略の詳細を知ることができない。そのため、バイデン政権には具体的な目標がないのではないかと疑っている。

 さらに、戦略文書に、ウクライナへの新兵器が慎重に提供されている理由や、米国がロシアとのエスカレーションを管理するために意図的に兵器提供を遅らせたことが記載されている可能性があると推測している。しかし、これらは一般市民の期待に反するものであり、そのため文書が公開されないのではないかと述べている。

 最後に、バイデン政権はウクライナ支援戦略を公開し、国民に現実的な期待を持たせるべきだとし、現実的な政治的解決に向けて準備を進める必要があると結論づけている。


【詳細】

 バイデン政権がウクライナへの支援に関する戦略を機密化していることに対する批判を述べたものである。筆者は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が9月に発表した社説を引用し、バイデン政権が戦略文書を公開せず、国民に戦争の進展や目的について説明していないことが問題であると指摘している。

 WSJの社説では、特に共和党議員がバイデン政権に対し、ウクライナへの支援がどのようにして戦争に勝利するために使われるのかを明確にするよう要求していることを支持している。さらに、バイデン大統領だけでなく、カマラ・ハリス副大統領にも批判の矛先を向け、彼女が選挙前にウクライナ戦争に対する自身の考えを説明することを避けるために、戦略文書が公開されないのではないかと指摘している。

 米国の戦略不足とロシアの対応

 筆者は、米国が当初ロシアに対して課した経済制裁が効果的だと過信していたが、ロシアは予想以上に経済的に耐え、戦争が「消耗戦」に変わったと指摘している。ロシアは、経済制裁にもかかわらず、軍事作戦を継続し、西側諸国が支援したウクライナの反攻作戦は期待されたほどの成果を上げなかったことが例として挙げられている。

 さらに、ロシアが軍需物資を大量に生産し、コスト面でも西側を上回っている点が強調されている。具体的には、Sky Newsの報道を引用し、ロシアが西側の3倍の速度で砲弾を生産し、そのコストは西側の4分の1に過ぎないと述べている。それにもかかわらず、戦争は依然として消耗戦の形を取り、ロシアも大きな地上戦での進展を見せていないとしている。

 ウクライナ支援に対する米国の即興的な対応

 ウクライナへの支援戦略が機密扱いされていることについて、筆者は米国政府が明確な戦略を持っていない可能性が高いと指摘している。バイデン政権が「できるだけ長くウクライナを支援する」という曖昧な表現に終始していることを、WSJの社説も批判しており、それは戦略ではなく、単なる「修辞的な回避策」に過ぎないとしている。

 2023年の春、共和党議員がウクライナへの支援を条件にバイデン政権に戦略の提出を求めたが、提出された文書は完全に機密扱いとなり、一般市民はその内容を知ることができなかった。そのため、バイデン政権には具体的な目標や戦略がなく、事態を即興的に対応しているだけだと推測されている。

 軍事的支援の遅延とエスカレーション管理

 さらに、機密扱いされている文書には、ウクライナへの新しい兵器システムの提供が意図的に遅らされている理由が含まれている可能性があるとしている。これは、ロシアとのエスカレーションを管理するための措置であり、米国が意図的に兵器の提供を遅らせてきたことが文書に記されている可能性があると筆者は推測している。しかし、これが一般市民の期待を裏切るものであるため、公開されていないのではないかと考えられている。

 バイデン政権への提言と平和への道筋

 筆者は最終的に、バイデン政権はウクライナ支援戦略を公開し、国民に対して現実的な見通しを示すべきだと主張している。米国の国益を守るためには、ウクライナ戦争が最大限の勝利を目指すものではなく、最終的には政治的解決を目指すべきだとしている。そうすることで、国民の不必要な期待を抑え、現実的な目標に向けて準備を進めることが可能になると結論づけている。

 全体として、この記事はバイデン政権の不透明なウクライナ支援戦略に対する批判を中心に展開されており、米国が実際には明確な勝利戦略を持っていない可能性に焦点を当てている。また、戦争の進展に関する現実を国民に知らせることの重要性を訴え、長期的な平和を目指すための道筋を模索するべきだという主張が強調されている。
 
【要点】

 ・バイデン政権がウクライナへの支援戦略を機密扱いしていることに対し、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が批判。
 ・共和党議員は、ウクライナ支援がどのように戦争の勝利に繋がるかを明確にすべきだと要求。
 ・カマラ・ハリス副大統領が選挙前に戦争についての自身の考えを避けるために、戦略文書が公開されていない可能性を指摘。
 ・米国は当初、ロシアに対する経済制裁が効果的だと過信していたが、ロシアは耐え抜き、戦争は「消耗戦」に発展。
 ・ロシアは、西側よりも速くかつ安く軍需物資を生産しており、物資の面で優位に立っているが、地上戦での大きな進展はない。
 ・バイデン政権には明確なウクライナ支援戦略がなく、事態を即興的に対応していると推測されている。
 ・ウクライナへの新しい兵器の提供が遅れている理由は、ロシアとのエスカレーション管理のためである可能性がある。
 ・バイデン政権はウクライナ支援戦略を公開し、国民に現実的な期待を持たせるべきだと筆者は主張。
 ・最終的に、戦争の政治的解決を目指すために国民を準備させることが、米国の国益に合致すると結論づけている。

【引用・参照・底本】

The Wall Street Journal Is Right: The Biden Admin Should Declassify Its Ukrainian Aid Strategy Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.30
https://korybko.substack.com/p/the-wall-street-journal-is-right-610

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