日本が沖ノ鳥礁に基づいてEEZを主張することは国際法に違反 ― 2025年05月27日 23:32
【概要】
中国外務省の毛寧報道官は火曜日、沖ノ鳥礁付近の海域における中国海洋調査船の存在について問われた際、日本海上保安庁がその海域を排他的経済水域(EEZ)の一部と主張し、中国船に活動中止を要求していることに対し、以下のように述べた。
国連海洋法条約(UNCLOS)に基づけば、沖ノ鳥は「岩」であり「島」ではないため、EEZや大陸棚を生成する権利はない。毛報道官は、日本が沖ノ鳥礁に基づいてEEZを主張することは国際法に違反すると指摘した。
さらに、中国の科学調査船が当該海域で活動することは公海の自由を行使しているものであり、日本には干渉する権利はない、と述べた。
【詳細】
中国外務省報道官毛寧の発言は、沖ノ鳥礁をめぐる日本と中国の間の海洋権益に関する長年の対立を反映している。
発言の要点は以下の通りである。
・沖ノ鳥礁の法的地位: 毛寧報道官は、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、沖ノ鳥は「岩」であって「島」ではないと主張した。UNCLOS第121条第3項では、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定されている。中国は、沖ノ鳥礁はこの「岩」に該当するため、EEZや大陸棚を生成する権利がないと主張している。
・日本のEEZ主張への異議: 日本は沖ノ鳥礁を「島」と位置づけ、その周辺に200海里の排他的経済水域(EEZ)を設定している。しかし、毛寧報道官は、日本が沖ノ鳥礁を根拠にEEZを主張することは国際法に違反すると明言した。これは、沖ノ鳥礁が「岩」である以上、そのような広大な海域の管轄権を持つことはできないという中国の立場を示すものである。
・中国調査船の活動の正当性: 日本海上保安庁が沖ノ鳥礁周辺のEEZ内での中国海洋調査船の活動に対し、活動中止を要求したことに対し、毛寧報道官は、中国の科学調査船の活動は「公海の自由」を行使しているものであり、日本には干渉する権利はないと反論した。これは、中国が沖ノ鳥礁周辺海域を日本のEEZとは認めず、公海の一部と見なしていることを意味する。公海においては、すべての国が航行の自由、上空飛行の自由、科学的調査の自由などの自由を有するとされる。
この発言は、沖ノ鳥礁の法的地位に関する日中間の解釈の相違が、海洋調査活動における具体的な対立として現れていることを示している。日本は沖ノ鳥礁を護岸工事などによって維持し、島としての地位を確保しようとしているが、中国は一貫してその主張を否定している。この問題は、西太平洋における海洋安全保障や、各国の海洋権益に関わる重要な問題として、今後も国際社会の注目を集め続けると見られる。
【要点】
1.沖ノ鳥礁の法的分類
・毛寧報道官は、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、沖ノ鳥礁は「岩(rock)」であり、「島(island)」ではないと述べた。
・UNCLOS第121条第3項の規定に言及し、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」という国際法の原則を強調した。
2.日本のEEZ主張への異議
・毛寧報道官は、日本が沖ノ鳥礁を根拠として排他的経済水域(EEZ)を主張することは国際法に違反すると指摘した。
・これは、沖ノ鳥礁が「岩」である以上、その周囲にEEZや大陸棚を設定する法的根拠がないという中国の立場を明確に示したものである。
3.中国調査船の活動の正当性
・日本海上保安庁が、沖ノ鳥礁周辺の海域で活動する中国の海洋調査船に対し、活動中止を要求したことについて言及した。
・毛寧報道官は、中国の科学調査船が当該海域で活動しているのは「公海の自由」を行使しているものであり、日本には干渉する権利はないと主張した。
・この主張は、中国が沖ノ鳥礁周辺海域を日本のEEZとは認めず、公海の一部であると見なしていることを意味する。公海では、すべての国が自由に航行、上空飛行、科学調査などを行う権利を持つ。
【桃源寸評】💚
沖ノ鳥礁は、その法的地位をめぐる国際的な議論の的となっており、コンクリートなどで護岸工事が施され、満潮時にも水面上に維持されるよう強化されている。
沖ノ鳥礁の現状と国際法上の論点
沖ノ鳥礁は、太平洋上の孤立した環礁であり、日本の最南端に位置する。自然の状態では、高潮時にはわずかな岩礁部分しか水面上に現れない、非常に小さな地形である。
日本は、この沖ノ鳥礁を「島」と主張し、国連海洋法条約に基づいてその周囲に200海里の排他的経済水域(EEZ)および大陸棚を設定している。しかし、この主張は、多くの国、特に中国や韓国から異議を唱えられている。
主な論点は以下の通りである。
・「島」と「岩」の定義: 国連海洋法条約第121条では、「島」とは「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」と定義されている。これに対し、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定されている。
・人工的な構造物の影響: 日本は、沖ノ鳥礁が自然に存在する陸地であると主張しつつも、波による浸食から保護し、水面上に維持するために多額の費用を投じてコンクリート製の護岸や観測施設などを建設している。中国などは、こうした人工的な構造物の存在が、沖ノ鳥礁を「島」とみなす法的根拠を弱め、「岩」とみなすべきであると主張している。
・EEZの権利: もし沖ノ鳥礁が国際法上「岩」と判断されれば、それに由来するEEZや大陸棚を持つことはできず、その周辺の広大な海域は公海とみなされることになる。これが、中国が自国の調査船の活動を「公海の自由」として正当化する根拠となっている。
このように、沖ノ鳥礁の法的地位に関する解釈の相違は、周辺海域の資源探査や航行の自由といった、国際的な海洋権益に直接影響を与える重要な問題となっている。
「日本の強弁ではないのか」
「日本の強弁ではないのか」という見方は、沖ノ鳥礁をめぐる国際社会、特に中国や韓国からの主な批判点であり、非常に的を射た指摘と言える。国際法の解釈、特に国連海洋法条約(UNCLOS)の「島」と「岩」の定義を巡る争点は、まさに日本の主張が国際社会で全面的に受け入れられているわけではないことを示している。
なぜ「日本の強弁」と見なされやすいのか
・「島」の定義の厳格さ: UNCLOS第121条第3項は、「人間の居住又は独自の経済的生活を持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と明確に規定している。沖ノ鳥礁は、自然の状態では満潮時にほとんど水没し、通常の状態では人間が居住したり、独自の経済活動を維持したりすることは極めて困難な、ごく小さな岩礁である。
・日本は「自然に形成された陸地」であり「高潮時にも水面上にある」という「島」の主要な要件を満たすと主張している。しかし、その水面上にある部分が極めて小さく、護岸工事なしには浸食で消滅しかねない状況であるため、「実質的に人間の生活を支える島とは言えない」という反論が強い。
・人工的な構造物の役割: 日本は、沖ノ鳥礁の浸食を防ぎ、水面上に維持するために大規模なコンクリート製の護岸工事を実施している。これにより、一部の国は「これは自然の島とは言えず、人工的な構造物によってかろうじて維持されているに過ぎない」と批判している。
・国際法上、人工島や施設はEEZや大陸棚の基点とはなりえない。日本は護岸工事は「保全」目的であり、元々存在した自然の岩礁を強化しているだけだと主張しているが、その実態は「島」の要件を人工的に満たそうとする行為と見られがちである。
・EEZの範囲と国際社会の利益: 沖ノ鳥礁はごく小さな存在であるにもかかわらず、日本がその周囲に約40万平方キロメートルという広大なEEZを設定することは、周辺海域での漁業や海洋資源開発、科学調査などに関心を持つ他国にとっては、その自由な活動を制限されることになる。このため、沖ノ鳥礁の法的地位を「岩」と主張することで、より多くの海域を公海として利用したいという思惑が他国にはある。
・国際司法の判断との関連: 南シナ海における仲裁裁判所の判断(2016年)では、太平島のようなある程度の大きさを持つ島(面積0.43㎢、沖ノ鳥礁よりはるかに大きい)でさえ、その上に居住や経済生活が維持されていないという理由で「岩」と判断され、EEZを生成しないとされた。
・この判断は、沖ノ鳥礁のようなさらに小さな地形が「島」として認められることの困難さを示唆するものとして、中国などが日本の主張の「強弁」性を補強する根拠としている。日本は、この仲裁判断は沖ノ鳥礁には直接適用されないと主張している。
これらの点から、日本の沖ノ鳥礁に関する主張が国際社会で広く、または異論なく受け入れられているわけではなく、多くの国からは「自国の海洋権益を最大化するための強引な解釈である」と見なされる傾向がある。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
Japan's EEZ claim based on Okinotori Reef violates intl law; has no right to interfere in Chinese research ship’s operation: Chinese FM GT 2025.05.27
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334930.shtml
中国外務省の毛寧報道官は火曜日、沖ノ鳥礁付近の海域における中国海洋調査船の存在について問われた際、日本海上保安庁がその海域を排他的経済水域(EEZ)の一部と主張し、中国船に活動中止を要求していることに対し、以下のように述べた。
国連海洋法条約(UNCLOS)に基づけば、沖ノ鳥は「岩」であり「島」ではないため、EEZや大陸棚を生成する権利はない。毛報道官は、日本が沖ノ鳥礁に基づいてEEZを主張することは国際法に違反すると指摘した。
さらに、中国の科学調査船が当該海域で活動することは公海の自由を行使しているものであり、日本には干渉する権利はない、と述べた。
【詳細】
中国外務省報道官毛寧の発言は、沖ノ鳥礁をめぐる日本と中国の間の海洋権益に関する長年の対立を反映している。
発言の要点は以下の通りである。
・沖ノ鳥礁の法的地位: 毛寧報道官は、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、沖ノ鳥は「岩」であって「島」ではないと主張した。UNCLOS第121条第3項では、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定されている。中国は、沖ノ鳥礁はこの「岩」に該当するため、EEZや大陸棚を生成する権利がないと主張している。
・日本のEEZ主張への異議: 日本は沖ノ鳥礁を「島」と位置づけ、その周辺に200海里の排他的経済水域(EEZ)を設定している。しかし、毛寧報道官は、日本が沖ノ鳥礁を根拠にEEZを主張することは国際法に違反すると明言した。これは、沖ノ鳥礁が「岩」である以上、そのような広大な海域の管轄権を持つことはできないという中国の立場を示すものである。
・中国調査船の活動の正当性: 日本海上保安庁が沖ノ鳥礁周辺のEEZ内での中国海洋調査船の活動に対し、活動中止を要求したことに対し、毛寧報道官は、中国の科学調査船の活動は「公海の自由」を行使しているものであり、日本には干渉する権利はないと反論した。これは、中国が沖ノ鳥礁周辺海域を日本のEEZとは認めず、公海の一部と見なしていることを意味する。公海においては、すべての国が航行の自由、上空飛行の自由、科学的調査の自由などの自由を有するとされる。
この発言は、沖ノ鳥礁の法的地位に関する日中間の解釈の相違が、海洋調査活動における具体的な対立として現れていることを示している。日本は沖ノ鳥礁を護岸工事などによって維持し、島としての地位を確保しようとしているが、中国は一貫してその主張を否定している。この問題は、西太平洋における海洋安全保障や、各国の海洋権益に関わる重要な問題として、今後も国際社会の注目を集め続けると見られる。
【要点】
1.沖ノ鳥礁の法的分類
・毛寧報道官は、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、沖ノ鳥礁は「岩(rock)」であり、「島(island)」ではないと述べた。
・UNCLOS第121条第3項の規定に言及し、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」という国際法の原則を強調した。
2.日本のEEZ主張への異議
・毛寧報道官は、日本が沖ノ鳥礁を根拠として排他的経済水域(EEZ)を主張することは国際法に違反すると指摘した。
・これは、沖ノ鳥礁が「岩」である以上、その周囲にEEZや大陸棚を設定する法的根拠がないという中国の立場を明確に示したものである。
3.中国調査船の活動の正当性
・日本海上保安庁が、沖ノ鳥礁周辺の海域で活動する中国の海洋調査船に対し、活動中止を要求したことについて言及した。
・毛寧報道官は、中国の科学調査船が当該海域で活動しているのは「公海の自由」を行使しているものであり、日本には干渉する権利はないと主張した。
・この主張は、中国が沖ノ鳥礁周辺海域を日本のEEZとは認めず、公海の一部であると見なしていることを意味する。公海では、すべての国が自由に航行、上空飛行、科学調査などを行う権利を持つ。
【桃源寸評】💚
沖ノ鳥礁は、その法的地位をめぐる国際的な議論の的となっており、コンクリートなどで護岸工事が施され、満潮時にも水面上に維持されるよう強化されている。
沖ノ鳥礁の現状と国際法上の論点
沖ノ鳥礁は、太平洋上の孤立した環礁であり、日本の最南端に位置する。自然の状態では、高潮時にはわずかな岩礁部分しか水面上に現れない、非常に小さな地形である。
日本は、この沖ノ鳥礁を「島」と主張し、国連海洋法条約に基づいてその周囲に200海里の排他的経済水域(EEZ)および大陸棚を設定している。しかし、この主張は、多くの国、特に中国や韓国から異議を唱えられている。
主な論点は以下の通りである。
・「島」と「岩」の定義: 国連海洋法条約第121条では、「島」とは「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」と定義されている。これに対し、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定されている。
・人工的な構造物の影響: 日本は、沖ノ鳥礁が自然に存在する陸地であると主張しつつも、波による浸食から保護し、水面上に維持するために多額の費用を投じてコンクリート製の護岸や観測施設などを建設している。中国などは、こうした人工的な構造物の存在が、沖ノ鳥礁を「島」とみなす法的根拠を弱め、「岩」とみなすべきであると主張している。
・EEZの権利: もし沖ノ鳥礁が国際法上「岩」と判断されれば、それに由来するEEZや大陸棚を持つことはできず、その周辺の広大な海域は公海とみなされることになる。これが、中国が自国の調査船の活動を「公海の自由」として正当化する根拠となっている。
このように、沖ノ鳥礁の法的地位に関する解釈の相違は、周辺海域の資源探査や航行の自由といった、国際的な海洋権益に直接影響を与える重要な問題となっている。
「日本の強弁ではないのか」
「日本の強弁ではないのか」という見方は、沖ノ鳥礁をめぐる国際社会、特に中国や韓国からの主な批判点であり、非常に的を射た指摘と言える。国際法の解釈、特に国連海洋法条約(UNCLOS)の「島」と「岩」の定義を巡る争点は、まさに日本の主張が国際社会で全面的に受け入れられているわけではないことを示している。
なぜ「日本の強弁」と見なされやすいのか
・「島」の定義の厳格さ: UNCLOS第121条第3項は、「人間の居住又は独自の経済的生活を持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と明確に規定している。沖ノ鳥礁は、自然の状態では満潮時にほとんど水没し、通常の状態では人間が居住したり、独自の経済活動を維持したりすることは極めて困難な、ごく小さな岩礁である。
・日本は「自然に形成された陸地」であり「高潮時にも水面上にある」という「島」の主要な要件を満たすと主張している。しかし、その水面上にある部分が極めて小さく、護岸工事なしには浸食で消滅しかねない状況であるため、「実質的に人間の生活を支える島とは言えない」という反論が強い。
・人工的な構造物の役割: 日本は、沖ノ鳥礁の浸食を防ぎ、水面上に維持するために大規模なコンクリート製の護岸工事を実施している。これにより、一部の国は「これは自然の島とは言えず、人工的な構造物によってかろうじて維持されているに過ぎない」と批判している。
・国際法上、人工島や施設はEEZや大陸棚の基点とはなりえない。日本は護岸工事は「保全」目的であり、元々存在した自然の岩礁を強化しているだけだと主張しているが、その実態は「島」の要件を人工的に満たそうとする行為と見られがちである。
・EEZの範囲と国際社会の利益: 沖ノ鳥礁はごく小さな存在であるにもかかわらず、日本がその周囲に約40万平方キロメートルという広大なEEZを設定することは、周辺海域での漁業や海洋資源開発、科学調査などに関心を持つ他国にとっては、その自由な活動を制限されることになる。このため、沖ノ鳥礁の法的地位を「岩」と主張することで、より多くの海域を公海として利用したいという思惑が他国にはある。
・国際司法の判断との関連: 南シナ海における仲裁裁判所の判断(2016年)では、太平島のようなある程度の大きさを持つ島(面積0.43㎢、沖ノ鳥礁よりはるかに大きい)でさえ、その上に居住や経済生活が維持されていないという理由で「岩」と判断され、EEZを生成しないとされた。
・この判断は、沖ノ鳥礁のようなさらに小さな地形が「島」として認められることの困難さを示唆するものとして、中国などが日本の主張の「強弁」性を補強する根拠としている。日本は、この仲裁判断は沖ノ鳥礁には直接適用されないと主張している。
これらの点から、日本の沖ノ鳥礁に関する主張が国際社会で広く、または異論なく受け入れられているわけではなく、多くの国からは「自国の海洋権益を最大化するための強引な解釈である」と見なされる傾向がある。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
Japan's EEZ claim based on Okinotori Reef violates intl law; has no right to interfere in Chinese research ship’s operation: Chinese FM GT 2025.05.27
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334930.shtml