欧州市場:労働力不足が深刻でロボット導入ニーズが高い ― 2025年06月07日 14:47
【概要】
中国のロボットメーカーが、米中間の技術対立の激化によるリスクを背景に、欧州市場への進出を加速させている。Unitree Robotics をはじめとする中国ロボットメーカーは、BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)などの中国大手テック企業の支援を受け、欧州で顧客やパートナーを積極的に開拓している。
イギリスに拠点を置く中国ロボットメーカーの販売代理店である EnduX の創業者兼CEOであるアスカ・リウ氏によれば、多くの中国ロボット企業は依然として米国企業との連携を続けているが、地政学的な不安定さを背景に、欧州市場への関心が高まっているという。リウ氏は、中国と米国はそれぞれハードウェアとAI「ブレイン」に強みを持つため、補完的な協力関係を築くべきであると述べている。
一方で、彼女は中国企業の一部が「すべての卵を1つのバスケットに入れる」ことを避けるため、欧州への注力を強めている点にも言及している。欧州は労働力不足を抱え、産業や農業におけるロボットの導入ニーズが高く、倫理・安全・基準において世界をリードする規制環境を備えているため、中国企業にとって魅力的な市場であると評価している。また、中国は電子部品の供給網が整っており、ロボットの試作から量産までを迅速に進める体制が整っているという。
中国企業が注目する市場は、研究・教育、巡回・点検、接客・サービス、物品搬送、遠隔操作などである。特に遠隔操作によって、低賃金国の労働者が高コスト国の工場や店舗でロボットを遠隔的に操作する仕組みの活用が見込まれている。
米国では、中国製ロボットに対する警戒が強まっている。2025年5月9日、米国下院の中国共産党に関する特別委員会は、Unitree製の「デュアルユース(軍民両用)」ロボットが国家安全保障上の脅威であるとして、同社と中国人民解放軍(PLA)との関係や、製品にバックドア(裏口機能)が仕込まれていないかを調査するよう求める超党派の書簡を提出した。委員会のジョン・ムーレナール委員長は、「これらのロボットは単なる道具ではなく、CCP(中国共産党)による潜在的な監視装置である」と指摘した。
Autodiscovery社は、必要に応じてロボットのネットワーク機能を完全に無効化できるとウェブサイト上で明記している。
技術力の面では、中国のUnitree G1と米国のBoston DynamicsのAtlasは共に高い機動力を持つが、Atlasの方がより複雑な作業に対応している。Autodiscoveryのマネージングディレクターであるアロン・キスディ氏によれば、工場内で重い物体や形状の異なる物を運搬できる能力が求められており、その点でAtlasは優れているという。Unitreeのプラットフォームは、標準状態ではそのようなソフトウェア機能が備わっていないため、顧客のニーズに応じて個別に実装しているとのことである。ただし、同氏は、2026年末から2027年初めには、改良されたソフトウェアを搭載したUnitree製ロボットを顧客に直接提供できるようになるとの見通しを示している。
Atlasは販売されておらず、製造コストは50万~100万米ドルとされる。一方、UnitreeのG1は1万6000ドルで販売されており、価格面での優位性がある。リウ氏は「高級・低級」ではなく、それぞれ異なるバリューチェーン上にあると説明している。中国はハードウェアの製造と設計で世界をリードしており、コスト・品質・多様性において他国の追随を許さないとしている。電気自動車(EV)の部品供給網が充実している中国では、ヒューマノイドロボットの構成部品の40~60%をEV部品で賄うことが可能であり、これが中国の競争力となっている。
EnduXは、Alibaba GroupやNIO Capitalが出資するLimX Dynamics、Tencent・BYD・Baiduが出資するAgiBot、Deep Robotics、Kepler Roboticsなどのロボットを販売している。
中国国内ではグローバル市場でのコスト優位性を持つ一方で、国内企業間の競争も激化している。2025年5月29〜30日にロンドンで開催された「ヒューマノイド・サミット」では、UnitreeがH1ロボットを展示したが、デモンストレーションは行わなかった。一方、キングストン大学はG1ロボットを用いた簡単な動作を披露した。EnduXはLimXの二足歩行ロボット「TRON1」をデモし、不整地でもバランスを保つ能力を紹介した。
北京のスタートアップ企業であるBooster Roboticsは、サッカーをするロボット「T1」と人間のダンサーとの共演によって注目を集めた。T1は身長1.2メートル、体重30キログラムで、G1の1.3メートル・35キログラムと比較される。
Boosterのグローバル戦略責任者であるチャオイー・リ氏は、「Unitreeは素晴らしい企業で、優れた製品とマーケティングを行っている」と評価しつつも、自社製品との差別化を図る必要があると述べている。同社はソフトウェア開発にも注力しており、元Microsoftなどの大手企業出身者も多く在籍している。今後は、より高度な作業が可能となるロボット用の手の開発も進める方針である。
【詳細】
概要
近年の米中間の技術摩擦の激化、特に国家安全保障に絡む分野における規制の強化を受け、中国のロボットメーカーは欧州市場への進出を加速させている。特にUnitree Robotics、LimX Dynamics、AgiBotなど、中国国内の主要企業やBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)系の出資を受けたロボット関連企業が、ロンドンを拠点とする販売代理店を通じて欧州のパートナーや顧客の開拓に力を入れている。
欧州市場への注力
EnduX社の創業者アスカ・リウ氏は、現在も中国と米国のロボット関連企業が協業を続けていると述べている。米国のAI企業 Physical Intelligence(略称 Pi)は、2024年に設立されたばかりであるが、中国のAgiBot社のロボットハードウェアを利用して自社のAI機能(ブレイン)を構築している。これは、ハードウェア面での中国の優位性と、ソフトウェア・AI面での米国の技術力を補完的に組み合わせた事例である。
しかし、リウ氏はこうした協業が将来的に困難になる可能性を指摘しており、中国企業は米国の政治的リスクに備えて市場分散を図り、より安定した欧州市場に目を向けている。彼女は「欧州は労働力不足が深刻で、産業・農業の分野でロボットの導入余地が大きい。さらに、規制面でも倫理性・安全性・国際標準化において信頼できる地域である」と述べている。
また、中国は電子機器やEVの分野で高度に発達したサプライチェーンを持つため、ロボットの試作(POC)から量産に至るまでの時間とコストを大幅に削減できる体制を整備している。この点も欧州市場への展開を後押しする要因である。
米国での政治的リスクと規制圧力
2025年5月、米国議会の中国共産党に関する特別委員会は、中国のUnitree社が製造するロボットが軍事転用(デュアルユース)の可能性を有するとの懸念を示し、調査を要請した。委員長のジョン・ムーレナール議員は、「中国人民解放軍(PLA)と関係がある企業のロボットが米国内の刑務所や陸軍の作戦で使用されているのは重大な問題である。これらは単なる機械ではなく、監視・情報収集・破壊活動の可能性を秘めた『トロイの木馬』になり得る」と指摘している。
同様の安全保障上の懸念から、2022年にはHuaweiやZTEといった中国通信機器メーカーの米国市場での製品販売が禁止されており、2024年には中国製電気自動車(EV)にも同様の規制が検討された経緯がある。
ヨーロッパでの現地適応と販売戦略
イギリスのロボットディストリビューターであるAutodiscovery社は、中国製ロボットを販売するだけでなく、顧客のニーズに合わせてソフトウェアをカスタマイズするサービスも提供している。たとえば、ロボットに搭載されたネットワーク機能をすべて無効化することで、セキュアな環境での使用に対応している。
Autodiscovery社のアロン・キスディ氏は、UnitreeのG1など中国製ロボットのハードウェア性能は高いが、工場内での重物運搬や複雑形状物の取り扱いなど、実務的な作業への対応にはソフトウェア開発が不可欠であると述べている。現時点ではBoston DynamicsのAtlasがその点で優れており、同社ではクライアントごとに追加開発を行って対応しているが、2026年末から2027年初めにかけては、標準機能として実装された製品を直接納入できるようにする予定である。
コストパフォーマンスと競争力
Unitree G1は、2025年に中国・杭州で行われた世界初のロボットキックボクシング大会で注目を集めた。価格は16,000米ドルであり、対照的にBoston DynamicsのAtlasは市販されておらず、製造コストは50万〜100万米ドルと推定されている。
リウ氏によれば、「中国と米国のロボットは単純に『高級』『廉価』と分類すべきではなく、異なる役割・階層にある。中国は設計・製造の面で世界有数の水準にあり、多様性・価格競争力・品質の三点で他国を凌駕している」としている。また、ヒューマノイドロボットの構成部品の4〜6割はEVの部品と共通しており、EV産業での発展がロボット開発にも寄与しているとされる。
欧州での展示・競合の動き
2025年5月末にロンドンで開催された「ヒューマノイド・サミット」では、Unitree社がH1ロボットを展示したが、動作デモは行われなかった。一方で、キングストン大学はUnitree G1を使った簡易動作を披露し、EnduXはLimX社のTRON1ロボットを用いて不整地でのバランス維持能力を紹介した。
このイベントでは、2023年創業の北京系スタートアップ、Booster Robotics社が注目を集めた。同社のT1ロボットは、サッカーのデモンストレーションや人間ダンサーとの共演を行い、観客の関心を集めた。T1は身長1.2m、体重30kgで、Unitree G1の1.3m・35kgと比較される。
Booster社のグローバル展開責任者チャオイー・リ氏は、「Unitreeは優れた製品と市場での知名度を持つが、自社はより堅牢な製品を志向し、差別化を図っている」と述べた。また、同社は元Microsoftの技術者を含む経験豊富な開発陣を抱えており、将来的にはより複雑な作業に対応可能なロボット用の「手」の開発にも取り組む予定である。
【要点】
中国ロボットメーカーの欧州進出拡大
・米中技術戦争の激化で米国市場リスクが高まるため、欧州市場に注力。
・Unitree RoboticsやBAT系企業(Baidu、Alibaba、Tencent)支援の企業が欧州で販売・提携を強化。
中国と米国のロボット技術協業
・米国のAI企業Physical Intelligence(Pi)は中国AgiBotのハードウェアを利用し、AI脳を開発。
・ハード(中国)とソフト(米国)の強みを組み合わせる協業が継続している。
欧州市場の魅力
・労働力不足が深刻でロボット導入ニーズが高い。
・産業・農業分野でのロボット活用機会が豊富。
・規制面で倫理・安全・国際標準を重視し、信頼性が高い。
・中国の高度な電子サプライチェーンが試作から量産まで支える。
米国での安全保障上の懸念と規制
・米議会の中国共産党委員会がUnitreeのロボットを「デュアルユース」兵器の可能性で調査要請。
・ロボットの遠隔操作機能を使ったスパイや破壊活動の懸念。
・過去にHuawei、ZTEの通信機器輸入禁止やEV輸入警告などの安全保障措置が実施済み。
欧州での現地適応とカスタマイズ
・Autodiscovery社は中国製ロボットのネットワーク機能を無効化し、安全環境利用を支援。
・ソフトウェア面での顧客ニーズに合わせたカスタマイズを提供。
・2026〜2027年頃にソフトウェア強化済み製品の直接納入を計画。
技術的差異と競争力
・Unitree G1はハード性能が高いが、複雑作業対応のソフトウェアは不足。
・米Boston DynamicsのAtlasは重い物体の精密移動など高度な作業が可能。
・Atlasは市販されておらず価格は数十万〜百万ドル、Unitree G1は約16,000ドルと価格差大。
・中国はハードウェア設計・製造に優れ、多様性・コストパフォーマンスで世界屈指。
・ヒューマノイドロボットの部品はEV産業の部品と多く共通し、EV産業の発展が強み。
欧州展示会と国内競争
・2025年5月のロンドン・ヒューマノイド・サミットでUnitree、LimX、Booster Roboticsなどが参加。
・Booster RoboticsはT1ロボットのサッカーやダンスデモで注目を集める。
・Boosterは堅牢性やソフトウェア強化に注力、Microsoft出身者も開発に参画。
・自社製の高度な「手」の開発も計画。
【桃源寸評】🌍
中国のロボットメーカーは国際的な規制リスクを回避しながら、欧州において技術的応用の深化と市場展開を進めており、同時に国内外での競争力強化に取り組んでいる現状が浮き彫りとなっている。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
US Trojan horse alarms pushing China’s robots to Europe ASIA TIMMES 2025.06.06
https://asiatimes.com/2025/06/us-trojan-horse-alarms-pushing-chinas-robots-to-europe/#
中国のロボットメーカーが、米中間の技術対立の激化によるリスクを背景に、欧州市場への進出を加速させている。Unitree Robotics をはじめとする中国ロボットメーカーは、BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)などの中国大手テック企業の支援を受け、欧州で顧客やパートナーを積極的に開拓している。
イギリスに拠点を置く中国ロボットメーカーの販売代理店である EnduX の創業者兼CEOであるアスカ・リウ氏によれば、多くの中国ロボット企業は依然として米国企業との連携を続けているが、地政学的な不安定さを背景に、欧州市場への関心が高まっているという。リウ氏は、中国と米国はそれぞれハードウェアとAI「ブレイン」に強みを持つため、補完的な協力関係を築くべきであると述べている。
一方で、彼女は中国企業の一部が「すべての卵を1つのバスケットに入れる」ことを避けるため、欧州への注力を強めている点にも言及している。欧州は労働力不足を抱え、産業や農業におけるロボットの導入ニーズが高く、倫理・安全・基準において世界をリードする規制環境を備えているため、中国企業にとって魅力的な市場であると評価している。また、中国は電子部品の供給網が整っており、ロボットの試作から量産までを迅速に進める体制が整っているという。
中国企業が注目する市場は、研究・教育、巡回・点検、接客・サービス、物品搬送、遠隔操作などである。特に遠隔操作によって、低賃金国の労働者が高コスト国の工場や店舗でロボットを遠隔的に操作する仕組みの活用が見込まれている。
米国では、中国製ロボットに対する警戒が強まっている。2025年5月9日、米国下院の中国共産党に関する特別委員会は、Unitree製の「デュアルユース(軍民両用)」ロボットが国家安全保障上の脅威であるとして、同社と中国人民解放軍(PLA)との関係や、製品にバックドア(裏口機能)が仕込まれていないかを調査するよう求める超党派の書簡を提出した。委員会のジョン・ムーレナール委員長は、「これらのロボットは単なる道具ではなく、CCP(中国共産党)による潜在的な監視装置である」と指摘した。
Autodiscovery社は、必要に応じてロボットのネットワーク機能を完全に無効化できるとウェブサイト上で明記している。
技術力の面では、中国のUnitree G1と米国のBoston DynamicsのAtlasは共に高い機動力を持つが、Atlasの方がより複雑な作業に対応している。Autodiscoveryのマネージングディレクターであるアロン・キスディ氏によれば、工場内で重い物体や形状の異なる物を運搬できる能力が求められており、その点でAtlasは優れているという。Unitreeのプラットフォームは、標準状態ではそのようなソフトウェア機能が備わっていないため、顧客のニーズに応じて個別に実装しているとのことである。ただし、同氏は、2026年末から2027年初めには、改良されたソフトウェアを搭載したUnitree製ロボットを顧客に直接提供できるようになるとの見通しを示している。
Atlasは販売されておらず、製造コストは50万~100万米ドルとされる。一方、UnitreeのG1は1万6000ドルで販売されており、価格面での優位性がある。リウ氏は「高級・低級」ではなく、それぞれ異なるバリューチェーン上にあると説明している。中国はハードウェアの製造と設計で世界をリードしており、コスト・品質・多様性において他国の追随を許さないとしている。電気自動車(EV)の部品供給網が充実している中国では、ヒューマノイドロボットの構成部品の40~60%をEV部品で賄うことが可能であり、これが中国の競争力となっている。
EnduXは、Alibaba GroupやNIO Capitalが出資するLimX Dynamics、Tencent・BYD・Baiduが出資するAgiBot、Deep Robotics、Kepler Roboticsなどのロボットを販売している。
中国国内ではグローバル市場でのコスト優位性を持つ一方で、国内企業間の競争も激化している。2025年5月29〜30日にロンドンで開催された「ヒューマノイド・サミット」では、UnitreeがH1ロボットを展示したが、デモンストレーションは行わなかった。一方、キングストン大学はG1ロボットを用いた簡単な動作を披露した。EnduXはLimXの二足歩行ロボット「TRON1」をデモし、不整地でもバランスを保つ能力を紹介した。
北京のスタートアップ企業であるBooster Roboticsは、サッカーをするロボット「T1」と人間のダンサーとの共演によって注目を集めた。T1は身長1.2メートル、体重30キログラムで、G1の1.3メートル・35キログラムと比較される。
Boosterのグローバル戦略責任者であるチャオイー・リ氏は、「Unitreeは素晴らしい企業で、優れた製品とマーケティングを行っている」と評価しつつも、自社製品との差別化を図る必要があると述べている。同社はソフトウェア開発にも注力しており、元Microsoftなどの大手企業出身者も多く在籍している。今後は、より高度な作業が可能となるロボット用の手の開発も進める方針である。
【詳細】
概要
近年の米中間の技術摩擦の激化、特に国家安全保障に絡む分野における規制の強化を受け、中国のロボットメーカーは欧州市場への進出を加速させている。特にUnitree Robotics、LimX Dynamics、AgiBotなど、中国国内の主要企業やBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)系の出資を受けたロボット関連企業が、ロンドンを拠点とする販売代理店を通じて欧州のパートナーや顧客の開拓に力を入れている。
欧州市場への注力
EnduX社の創業者アスカ・リウ氏は、現在も中国と米国のロボット関連企業が協業を続けていると述べている。米国のAI企業 Physical Intelligence(略称 Pi)は、2024年に設立されたばかりであるが、中国のAgiBot社のロボットハードウェアを利用して自社のAI機能(ブレイン)を構築している。これは、ハードウェア面での中国の優位性と、ソフトウェア・AI面での米国の技術力を補完的に組み合わせた事例である。
しかし、リウ氏はこうした協業が将来的に困難になる可能性を指摘しており、中国企業は米国の政治的リスクに備えて市場分散を図り、より安定した欧州市場に目を向けている。彼女は「欧州は労働力不足が深刻で、産業・農業の分野でロボットの導入余地が大きい。さらに、規制面でも倫理性・安全性・国際標準化において信頼できる地域である」と述べている。
また、中国は電子機器やEVの分野で高度に発達したサプライチェーンを持つため、ロボットの試作(POC)から量産に至るまでの時間とコストを大幅に削減できる体制を整備している。この点も欧州市場への展開を後押しする要因である。
米国での政治的リスクと規制圧力
2025年5月、米国議会の中国共産党に関する特別委員会は、中国のUnitree社が製造するロボットが軍事転用(デュアルユース)の可能性を有するとの懸念を示し、調査を要請した。委員長のジョン・ムーレナール議員は、「中国人民解放軍(PLA)と関係がある企業のロボットが米国内の刑務所や陸軍の作戦で使用されているのは重大な問題である。これらは単なる機械ではなく、監視・情報収集・破壊活動の可能性を秘めた『トロイの木馬』になり得る」と指摘している。
同様の安全保障上の懸念から、2022年にはHuaweiやZTEといった中国通信機器メーカーの米国市場での製品販売が禁止されており、2024年には中国製電気自動車(EV)にも同様の規制が検討された経緯がある。
ヨーロッパでの現地適応と販売戦略
イギリスのロボットディストリビューターであるAutodiscovery社は、中国製ロボットを販売するだけでなく、顧客のニーズに合わせてソフトウェアをカスタマイズするサービスも提供している。たとえば、ロボットに搭載されたネットワーク機能をすべて無効化することで、セキュアな環境での使用に対応している。
Autodiscovery社のアロン・キスディ氏は、UnitreeのG1など中国製ロボットのハードウェア性能は高いが、工場内での重物運搬や複雑形状物の取り扱いなど、実務的な作業への対応にはソフトウェア開発が不可欠であると述べている。現時点ではBoston DynamicsのAtlasがその点で優れており、同社ではクライアントごとに追加開発を行って対応しているが、2026年末から2027年初めにかけては、標準機能として実装された製品を直接納入できるようにする予定である。
コストパフォーマンスと競争力
Unitree G1は、2025年に中国・杭州で行われた世界初のロボットキックボクシング大会で注目を集めた。価格は16,000米ドルであり、対照的にBoston DynamicsのAtlasは市販されておらず、製造コストは50万〜100万米ドルと推定されている。
リウ氏によれば、「中国と米国のロボットは単純に『高級』『廉価』と分類すべきではなく、異なる役割・階層にある。中国は設計・製造の面で世界有数の水準にあり、多様性・価格競争力・品質の三点で他国を凌駕している」としている。また、ヒューマノイドロボットの構成部品の4〜6割はEVの部品と共通しており、EV産業での発展がロボット開発にも寄与しているとされる。
欧州での展示・競合の動き
2025年5月末にロンドンで開催された「ヒューマノイド・サミット」では、Unitree社がH1ロボットを展示したが、動作デモは行われなかった。一方で、キングストン大学はUnitree G1を使った簡易動作を披露し、EnduXはLimX社のTRON1ロボットを用いて不整地でのバランス維持能力を紹介した。
このイベントでは、2023年創業の北京系スタートアップ、Booster Robotics社が注目を集めた。同社のT1ロボットは、サッカーのデモンストレーションや人間ダンサーとの共演を行い、観客の関心を集めた。T1は身長1.2m、体重30kgで、Unitree G1の1.3m・35kgと比較される。
Booster社のグローバル展開責任者チャオイー・リ氏は、「Unitreeは優れた製品と市場での知名度を持つが、自社はより堅牢な製品を志向し、差別化を図っている」と述べた。また、同社は元Microsoftの技術者を含む経験豊富な開発陣を抱えており、将来的にはより複雑な作業に対応可能なロボット用の「手」の開発にも取り組む予定である。
【要点】
中国ロボットメーカーの欧州進出拡大
・米中技術戦争の激化で米国市場リスクが高まるため、欧州市場に注力。
・Unitree RoboticsやBAT系企業(Baidu、Alibaba、Tencent)支援の企業が欧州で販売・提携を強化。
中国と米国のロボット技術協業
・米国のAI企業Physical Intelligence(Pi)は中国AgiBotのハードウェアを利用し、AI脳を開発。
・ハード(中国)とソフト(米国)の強みを組み合わせる協業が継続している。
欧州市場の魅力
・労働力不足が深刻でロボット導入ニーズが高い。
・産業・農業分野でのロボット活用機会が豊富。
・規制面で倫理・安全・国際標準を重視し、信頼性が高い。
・中国の高度な電子サプライチェーンが試作から量産まで支える。
米国での安全保障上の懸念と規制
・米議会の中国共産党委員会がUnitreeのロボットを「デュアルユース」兵器の可能性で調査要請。
・ロボットの遠隔操作機能を使ったスパイや破壊活動の懸念。
・過去にHuawei、ZTEの通信機器輸入禁止やEV輸入警告などの安全保障措置が実施済み。
欧州での現地適応とカスタマイズ
・Autodiscovery社は中国製ロボットのネットワーク機能を無効化し、安全環境利用を支援。
・ソフトウェア面での顧客ニーズに合わせたカスタマイズを提供。
・2026〜2027年頃にソフトウェア強化済み製品の直接納入を計画。
技術的差異と競争力
・Unitree G1はハード性能が高いが、複雑作業対応のソフトウェアは不足。
・米Boston DynamicsのAtlasは重い物体の精密移動など高度な作業が可能。
・Atlasは市販されておらず価格は数十万〜百万ドル、Unitree G1は約16,000ドルと価格差大。
・中国はハードウェア設計・製造に優れ、多様性・コストパフォーマンスで世界屈指。
・ヒューマノイドロボットの部品はEV産業の部品と多く共通し、EV産業の発展が強み。
欧州展示会と国内競争
・2025年5月のロンドン・ヒューマノイド・サミットでUnitree、LimX、Booster Roboticsなどが参加。
・Booster RoboticsはT1ロボットのサッカーやダンスデモで注目を集める。
・Boosterは堅牢性やソフトウェア強化に注力、Microsoft出身者も開発に参画。
・自社製の高度な「手」の開発も計画。
【桃源寸評】🌍
中国のロボットメーカーは国際的な規制リスクを回避しながら、欧州において技術的応用の深化と市場展開を進めており、同時に国内外での競争力強化に取り組んでいる現状が浮き彫りとなっている。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
US Trojan horse alarms pushing China’s robots to Europe ASIA TIMMES 2025.06.06
https://asiatimes.com/2025/06/us-trojan-horse-alarms-pushing-chinas-robots-to-europe/#
Tokamak Energyと日本 ― 2025年06月07日 19:16
【概要】
英国の核融合エネルギーの先駆者であるTokamak Energyは、日本のエネルギーイノベーション戦略の一環として位置付けられている。
同社は数年間にわたり、日本の政府機関、企業、学術・科学機関との関係構築を進め、2025年2月に東京に子会社を設立した。また、同年4月には東京都から「グリーントランスフォーメーション」賞を受賞した。
Tokamak Energyは2009年に英国原子力エネルギー機関からのスピンオフ企業として設立された。英国には約10社の核融合技術開発企業が存在するが、Tokamak Energyは商業化に最も近いと広く認識されている。ただし、商業化は少なくとも10年以上先の見込みである。
【詳細】
概要
Tokamak Energyは、英国における核融合エネルギー技術の開発をリードする企業である。同社は2009年に英国原子力エネルギー機関(UK Atomic Energy Authority)からのスピンオフとして設立され、核融合技術の研究開発に特化している。英国国内には約10社の核融合技術開発企業が存在するが、その中でもTokamak Energyは、核融合エネルギーの商業化に最も近いと広く認められている企業である。
このTokamak Energyは、日本のエネルギーイノベーション戦略の一環として重要な役割を果たしている。日本の政府機関や企業、さらには学術・科学機関との協力関係を数年間にわたり築き上げてきた。これにより2025年2月に東京に子会社を設立し、日本市場における核融合エネルギー技術の普及と商業化を目指している。
さらに、2025年4月には東京都から「グリーントランスフォーメーション」賞を受賞している。この賞は、環境負荷の低減や持続可能な社会の実現に向けた技術開発や取り組みを評価するものであり、Tokamak Energyの核融合エネルギー技術が持つ将来性と社会的意義が認められたものである。
なお、商業化までには依然として技術的課題が多く残されており、現時点での見通しでは、実用化には少なくとも10年以上の時間を要するとされている。
【要点】
・Tokamak Energyは英国の核融合エネルギー技術開発をリードする企業である。
・2009年に英国原子力エネルギー機関(UK Atomic Energy Authority)からのスピンオフとして設立された。
・英国には約10社の核融合技術開発企業が存在し、その中でTokamak Energyは商業化に最も近いとされている。
・日本の政府機関、企業、学術・科学機関と数年間にわたり協力関係を築いてきた。
・2025年2月に東京に子会社を設立し、日本での核融合エネルギー技術の普及と商業化を目指している。
・2025年4月に東京都から「グリーントランスフォーメーション」賞を受賞した。
・同賞は環境負荷低減や持続可能な社会の実現に向けた技術や取り組みを評価するものである。
・商業化には依然として技術的課題が多く、実用化には少なくとも10年以上の時間を要すると見込まれている。
【桃源寸評】🌍
核融合エネルギー技術開発
核融合エネルギー技術開発は、地球温暖化対策やエネルギー安全保障の観点から世界各国が力を入れている分野である。国際協力プロジェクトであるITER(国際熱核融合実験炉)計画が進む一方で、各国独自の取り組みや民間企業の参入も活発化し、国際競争の様相を呈している。
以下に主要国の核融合エネルギー技術開発の状況を国別にまとめる。
1. 国際熱核融合実験炉(ITER)計画
ITERは、核融合エネルギーの実用化を目指す世界最大の国際共同プロジェクトです。EU、日本、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極が協力して、フランス南部に巨大なトカマク型核融合炉を建設している。
・目的: 科学技術的な実現可能性の検証、および核融合発電の工学的実証
・現状: 2025年12月の運転開始、2035年12月の核融合運転開始を目指して建設が進められている。
・各極の貢献: 各極が分担する機器を調達・製造して持ち寄り、ITER機構が全体を組み立てる仕組みである。例えば、日本は巨大なトロイダル超伝導磁石など、重要なコンポーネントを供給している。
2. 各国の核融合エネルギー技術開発動向
ITER計画の進展を受けて、各国は独自の核融合発電ロードマップを策定し、実用化に向けた取り組みを加速させている。
(1) アメリカ
・目標: 2040年代の実用化を目指している。
・特徴
✓2022年12月には、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)がレーザー核融合において投入エネルギー以上のエネルギー生成(点火)に成功し、画期的な進展を発表した。これは核融合研究における大きなマイルストーンとなった。
✓民間企業の核融合ベンチャーへの投資が非常に活発で、政府も商業核融合エネルギーの実現を加速するための10年戦略を策定している。
✓中国と比較すると、政府予算は少ないものの、民間投資との連携が盛んである。
(2) 中国
・目標: 2030年代の実用化を目指しており、最も積極的な姿勢を見せている。
・特徴
✓年間約15億ドルを核融合開発に投じており、その投資額は他のすべての国を合わせた額を上回るとも言われている。
✓核融合に関する特許数で世界最多を誇り、核融合科学と工学の博士号取得者も米国をはるかに上回るとされている。
✓2023年12月には国営企業25社によるコンソーシアムを設立し、政府主導で開発を進めている。
✓大規模試験施設群「CRAFT」を2025年に完成させる予定で、トカマク型核融合実験炉の建設も進め、2027年の運転開始を目指している。
(3) 欧州連合(EU)
・目標: 2050年代の実用化を目指しています。
・特徴
✓ITER計画のホストサイトであり、ITERへの貢献とEU独自の核融合発電原型炉プログラムへの参画を継続している。
✓ユーロフュージョン(EUROfusion)というコンソーシアムを通じて、加盟国間の共同研究を進めている。
✓2022年には、英国のJET(Joint European Torus)において、記録的な59メガジュールの持続核融合エネルギー放出に成功するなど、着実に成果を上げている。
(4) 日本
・目標: 2030年代の実証を目指す「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定している。
・特徴
✓ITER計画において主要な貢献国であり、世界最大級のトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」を建設し、核融合研究の進展に貢献している。
✓高温超電導導体の独自開発など、基盤技術開発にも力を入れている。
✓国内の研究開発の推進と国際協調、そして人材育成を重視している。
✓民間スタートアップ企業も登場し、ヘリカル型核融合炉の開発など、多様なアプローチが進められている。
(5) イギリス
・目標: 2040年代の実用化を目指しています。
・特徴
✓EU離脱後、独自のエネルギー政策として核融合を重視し、2021年10月には独自の核融合戦略を発表した。
✓球状トカマク型エネルギー核融合施設(STEP)の建設を計画しており、2040年までの完成を目指している。
✓核融合に関する規格・規制の策定を先導し、核融合産業の構築と世界への技術輸出を目指している。
✓JETの運営を通じて、核融合研究をリードしてきた。
(6) 韓国
・目標: 2050年代の実用化を目指している。
・特徴
✓韓国型超伝導核融合研究装置「KSTAR」を用いて、高温プラズマの長時間維持に関する世界記録を樹立するなど、研究成果を上げている。
✓「人工太陽」技術確保と核融合新規プロジェクト推進のため、大規模な政府投資を計画している。
(7) インド
・特徴
✓ITER計画の主要な参加国の一つであり、核融合研究に貢献している。
✓民間企業による核融合炉開発の動きも出てきている。
まとめ
核融合エネルギー開発は、国際協調の時代から各国独自の戦略と民間投資が活発化する国際競争の時代へと移行している。各国がそれぞれの強みを生かし、実用化に向けた研究開発を加速させており、今後の技術的進展が注目される。
東日本大震災による福島第一原子力発電所事故を経験した日本にとって、新たなエネルギー技術における安全性への懸念は当然のことである。核融合エネルギーが従来の核分裂エネルギー(現在の原子力発電)とどのように異なり、どのような安全対策が講じられているのかについて説明する。
核融合エネルギーの安全性に関する基本的な考え方
核融合エネルギーは、太陽と同じ原理を利用したエネルギー源である。軽い原子核(主に水素の同位体である重水素と三重水素)を高温・高圧にすることで融合させ、より重い原子核(ヘリウム)と中性子を生成する際に発生するエネルギーを取り出す。
従来の核分裂炉がウランなどの重い原子核を分裂させるのに対し、核融合炉は軽い原子核を融合させる点で根本的に異なる。この違いが、安全性における大きな利点となる。
福島第一原発事故との根本的な違い
福島第一原発事故は、主に以下の要因が複合的に作用して発生した。
(1)冷却機能の喪失: 地震による外部電源喪失と津波による非常用ディーゼル発電機の浸水により、炉心冷却機能が失われた。
(2)炉心溶融: 冷却できないことで燃料が高温になり、溶け落ちる「炉心溶融」が発生した。
(3)水素爆発: 炉心溶融によって発生した水素が建屋内に充満し、爆発を引き起こした。
(4)放射性物質の大量放出: 炉心溶融と建屋損壊により、大量の放射性物質が外部に放出された。
これに対し、核融合炉では以下のような特徴から、福島第一原発事故のような事態は起こり得ない。
1. 臨界の概念がない
核分裂炉では、核燃料が連鎖反応を起こし続ける「臨界状態」を維持して発電する。もし冷却できなくなると、炉心が高温になり暴走する可能性がある。
一方、核融合炉では、プラズマを安定的に維持するために常にエネルギーを投入し続ける必要がある。プラズマは非常に不安定な状態であり、少しでも制御が乱れると瞬時に活動が停止する。つまり、何らかの異常が発生してエネルギー供給が途絶えたり、閉じ込めが困難になったりすれば、核融合反応は自動的に停止し、暴走する可能性はない。これは、原理的に「臨界事故」が起こり得ないことを意味する。
2. 核融合燃料の少量性
核融合炉で一度に炉心に存在する燃料(重水素と三重水素)は、ごく微量である。例えば、ITERのような大規模な実験炉であっても、プラズマ中に存在する燃料は数グラム程度と極めて少量である。これに対して、核分裂炉では何トンもの核燃料が装荷されている。
万が一の事故が発生した場合でも、存在する燃料が少ないため、大量の放射性物質が放出されるリスクは格段に低くなる。
3. 放射性廃棄物の特性と量
核融合炉では、核融合反応で生成される中性子が炉壁などの構造材に当たることで、誘導放射化と呼ばれる現象が起こり、放射性物質が生じる。これが核融合炉における主な放射性物質の発生源となる。
しかし、これらの放射性物質の半減期は比較的短く(数十年〜数百年程度)、現在主流の核分裂炉から出る高レベル放射性廃棄物(半減期が数万年〜数百万年と非常に長いものも含まれる)とは異なる。また、発生量も核分裂炉に比べて格段に少ないとされている。数十年〜数百年で放射能レベルが十分に低くなるため、最終処分場の確保や管理の負担が大幅に軽減されると期待されている。
その他の安全性への配慮
核融合炉の研究開発においては、上記の根本的な安全性に加え、以下のような多重防護の設計が検討されている。
・トリチウム(三重水素)の管理: 核融合燃料の一つであるトリチウムは放射性物質であるが、半減期が約12年と比較的短く、体内に入っても速やかに排出される特性がある。核融合炉では、トリチウムを厳重に閉じ込め、回収・再利用するシステムが構築される。
・構造材の選定: 中性子照射によって放射化しにくい材料(低放射化材料)の開発が進められている。
・冷却システムの設計: 万が一の冷却材喪失事故でも、炉心損傷に至らないよう、多様な冷却システムや受動的な安全機能が検討されている。
まとめ
核融合エネルギーは、その原理上、核分裂エネルギーとは異なる安全上の特性を持っている。連鎖反応による暴走がないこと、炉内の燃料がごく微量であること、そして発生する放射性廃棄物の特性が、核分裂炉におけるシビアアクシデントのリスクを大幅に低減させる。
もちろん、新しい技術である以上、設計や運用における万全の安全対策は不可欠である。しかし、福島第一原発事故で懸念されたような大規模な炉心溶融や放射性物質の広範囲な放出といった事故のリスクは、核融合炉の原理的な特性によって極めて低いと考えられている。
核融合エネルギーは、持続可能な社会を実現するための有力な選択肢として、安全性を最優先に研究開発が進められている。
核融合炉でプラズマを安定的に維持するために投入される「エネルギー」
核融合炉でプラズマを安定的に維持するために投入される「エネルギー」とは、主にプラズマを核融合反応が起こる超高温(1億℃以上)まで加熱し、その温度を維持するためのエネルギーのことである。
プラズマは非常に不安定な状態であり、一度加熱しても、その熱はすぐに外部に逃げ出してしまう。太陽のように自らの重力で閉じ込めることができない地上では、人工的に様々な方法でエネルギーを投入し、プラズマを「閉じ込め」ながら「加熱」し続ける必要がある。
具体的にどのようなエネルギーが投入されるかというと、以下のような複数の加熱方式が組み合わせて用いられる。
1. 初期加熱(オーム加熱/ジュール加熱)
核融合反応を開始させる最初の段階で用いられる加熱方法である。
・仕組み: プラズマ中に電流を流すことで、プラズマ自身の電気抵抗によって熱が発生する。これは、電熱線に電流を流すと熱くなるのと同じ原理である。
・特徴: 比較的簡単な方法であるが、プラズマの温度が上がると電気抵抗が下がるため、これだけで核融合反応に必要な1億℃まで加熱することはできない。あくまで初期の加熱手段として使われる。
2. 追加加熱(核融合炉の主要な加熱方法)
オーム加熱だけでは到達できない超高温までプラズマを加熱し、その温度を維持するために、外部から強力なエネルギーを投入する。
(1)中性粒子ビーム加熱(NBI: Neutral Beam Injection)
・仕組み: 水素(または重水素、三重水素)の原子をイオン化し、非常に高速に加速してビームにする。このビームをプラズマに入射する直前で中性化(電荷をなくす)させ、強力な磁場を貫通させてプラズマの内部に打ち込む。プラズマに入った中性粒子は、プラズマ中のイオンや電子と衝突することで運動エネルギーをプラズマに渡し、加熱する。
・特徴: プラズマの深部までエネルギーを供給でき、プラズマの電流駆動(安定化)にも利用できる。
(2)高周波加熱(RF加熱)
・仕組み: 特定の周波数の電磁波(マイクロ波やラジオ波)をプラズマに入射し、プラズマ中の電子やイオンの運動(サイクロトロン運動など)と共鳴させることで、エネルギーを与えて加熱する。電子レンジが食品を温めるのと似た原理である。
・種類
✓電子サイクロトロン加熱(ECH): 電子と共鳴するマイクロ波を使って電子を加熱する。
✓イオンサイクロトロン加熱(ICH): イオンと共鳴するラジオ波を使ってイオンを加熱する。
✓低域混成波加熱(LHH): プラズマ電流の駆動にも利用される高周波加熱である。
・特徴: 加熱したい場所を比較的細かく制御でき、非接触でプラズマを加熱できる。
3. 自己加熱(核融合反応による加熱)
核融合反応が十分に活発になると、反応で生成されるヘリウム原子核(アルファ粒子)が高速で飛び出し、その運動エネルギーの一部をプラズマ中の他の粒子に与えることで、プラズマ自身を加熱するようになる。これを自己加熱と呼ぶ。
・目標: 最終的には、外部からの追加加熱を減らし、自己加熱だけで核融合反応を維持できる「自己点火(self-ignition)」状態を目指す。ITERでは、投入エネルギーの10倍の核融合エネルギーを発生させる「Q=10」の達成を目標としており、これは自己加熱の割合を大きくすることで実現される。
まとめると
核融合炉でプラズマを安定的に維持するために投入される「エネルギー」とは、プラズマを1億℃以上の超高温に加熱し、その状態を磁場で閉じ込めて維持するために、外部から供給される電気エネルギーや電磁波エネルギー、粒子ビームの運動エネルギーなどのことである。
これらのエネルギーを効率的に投入し、プラズマが外部に逃げ出す熱損失を上回るだけの核融合反応を起こせる状態をいかに長時間維持するかが、核融合エネルギー実用化の最大の技術的課題となっている。
「プラズマ」
「プラズマ」は、物質の第4の状態と呼ばれている。一般的には、固体、液体、気体の3つの状態が知られているが、気体にさらに大きなエネルギー(熱や電磁波など)を加えることで、原子が電子を放出し、正の電荷を帯びたイオンと、負の電荷を帯びた自由電子がバラバラに動き回る状態になる。この、正イオンと自由電子がほぼ同数存在し、全体として電気的に中性な状態の電離気体が「プラズマ」である。
プラズマの特徴
・電気伝導性: イオンと電子が自由に動くため、電気を通しやすい性質がある。
・電磁場との相互作用: 荷電粒子であるため、電場や磁場の影響を強く受け、その運動を制御することができる。これが核融合炉でプラズマを閉じ込める(磁気閉じ込め)原理にもなっている。
・化学的活性: 通常の気体よりもはるかに高いエネルギーを持ち、反応性が非常に高いため、様々な化学反応を促進することができる。
・光の放出: 励起された電子が元の安定した状態に戻る際に光を放出するため、発光現象を伴うことが多い(蛍光灯やネオンサインなど)。
自然界におけるプラズマ
実は、宇宙の物質の99%以上はプラズマ状態であると言われている。
・太陽や恒星: 太陽は巨大なプラズマの塊である。核融合反応によって莫大なエネルギーを放出している。
・オーロラ: 太陽から放出されたプラズマ(太陽風)が地球の磁場に導かれ、大気中の原子や分子と衝突して発光する現象である。
・雷: 落雷の際に空気が瞬間的に電離し、プラズマが発生している。
・星間ガス、銀河間ガス: 宇宙空間に漂う希薄なガスも、ほとんどがプラズマ状態である。
地球上では、大気圧下ではプラズマ状態を維持するのが難しいため、意識しないとあまり見かけないが、実は身近なところにも存在する。
・蛍光灯やネオンサイン: 放電によってガスをプラズマ状態にすることで発光している。
・ろうそくの炎: 厳密には部分的にプラズマ状態になっている。
人工的なプラズマとその応用例
・人工的にプラズマを生成し、その特性を利用する技術は「プラズマ技術」と呼ばれ、私たちの生活の様々な場面で活用されている。
1.核融合エネルギー: 究極のクリーンエネルギーとして期待される核融合発電は、まさに超高温のプラズマを磁場で閉じ込めて核融合反応を維持する技術である。
2.半導体製造
・エッチング: プラズマ中の活性種(イオンやラジカル)を利用して、半導体基板の表面を精密に削る(加工する)技術である。
・薄膜形成(CVD/PVD): プラズマ中で反応ガスを分解し、目的の物質を基板表面に堆積させて薄い膜を作る技術である(例: 太陽電池のシリコン膜、硬いコーティングなど)。
3.表面改質: 材料の表面にプラズマを当てることで、撥水性、親水性、硬度、耐摩耗性、生体適合性など、様々な特性を付与することができる。プラスチックや金属の表面処理、医療機器の表面改質などに使われる。
4.殺菌・滅菌: 低温プラズマは、熱に弱い医療器具や食品の殺菌、空気清浄などに応用されている。
5.環境浄化: 排ガス処理、水処理、臭気分解など、環境分野での応用も進んでいる。
6.医療・バイオ: 低温プラズマを用いた創傷治癒、がん治療の研究、遺伝子導入、歯の治療など、多岐にわたる研究開発が進められている。
7.照明: 蛍光灯、ネオンサイン、プラズマディスプレイ(過去のテレビ技術)などが挙げられる。
8.溶接・切断: アーク溶接やプラズマ切断は、高温のプラズマを利用した金属加工技術である。
このように、「プラズマ」は、宇宙の大部分を占める自然現象であると同時に、現代の高度な科学技術を支える基盤であり、未来のエネルギーや産業を拓く可能性を秘めた非常に重要な物質の状態である。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
US Trojan horse alarms pushing China’s robots to Europe ASIA TIMMES 2025.06.06
https://asiatimes.com/2025/06/us-trojan-horse-alarms-pushing-chinas-robots-to-europe/#
英国の核融合エネルギーの先駆者であるTokamak Energyは、日本のエネルギーイノベーション戦略の一環として位置付けられている。
同社は数年間にわたり、日本の政府機関、企業、学術・科学機関との関係構築を進め、2025年2月に東京に子会社を設立した。また、同年4月には東京都から「グリーントランスフォーメーション」賞を受賞した。
Tokamak Energyは2009年に英国原子力エネルギー機関からのスピンオフ企業として設立された。英国には約10社の核融合技術開発企業が存在するが、Tokamak Energyは商業化に最も近いと広く認識されている。ただし、商業化は少なくとも10年以上先の見込みである。
【詳細】
概要
Tokamak Energyは、英国における核融合エネルギー技術の開発をリードする企業である。同社は2009年に英国原子力エネルギー機関(UK Atomic Energy Authority)からのスピンオフとして設立され、核融合技術の研究開発に特化している。英国国内には約10社の核融合技術開発企業が存在するが、その中でもTokamak Energyは、核融合エネルギーの商業化に最も近いと広く認められている企業である。
このTokamak Energyは、日本のエネルギーイノベーション戦略の一環として重要な役割を果たしている。日本の政府機関や企業、さらには学術・科学機関との協力関係を数年間にわたり築き上げてきた。これにより2025年2月に東京に子会社を設立し、日本市場における核融合エネルギー技術の普及と商業化を目指している。
さらに、2025年4月には東京都から「グリーントランスフォーメーション」賞を受賞している。この賞は、環境負荷の低減や持続可能な社会の実現に向けた技術開発や取り組みを評価するものであり、Tokamak Energyの核融合エネルギー技術が持つ将来性と社会的意義が認められたものである。
なお、商業化までには依然として技術的課題が多く残されており、現時点での見通しでは、実用化には少なくとも10年以上の時間を要するとされている。
【要点】
・Tokamak Energyは英国の核融合エネルギー技術開発をリードする企業である。
・2009年に英国原子力エネルギー機関(UK Atomic Energy Authority)からのスピンオフとして設立された。
・英国には約10社の核融合技術開発企業が存在し、その中でTokamak Energyは商業化に最も近いとされている。
・日本の政府機関、企業、学術・科学機関と数年間にわたり協力関係を築いてきた。
・2025年2月に東京に子会社を設立し、日本での核融合エネルギー技術の普及と商業化を目指している。
・2025年4月に東京都から「グリーントランスフォーメーション」賞を受賞した。
・同賞は環境負荷低減や持続可能な社会の実現に向けた技術や取り組みを評価するものである。
・商業化には依然として技術的課題が多く、実用化には少なくとも10年以上の時間を要すると見込まれている。
【桃源寸評】🌍
核融合エネルギー技術開発
核融合エネルギー技術開発は、地球温暖化対策やエネルギー安全保障の観点から世界各国が力を入れている分野である。国際協力プロジェクトであるITER(国際熱核融合実験炉)計画が進む一方で、各国独自の取り組みや民間企業の参入も活発化し、国際競争の様相を呈している。
以下に主要国の核融合エネルギー技術開発の状況を国別にまとめる。
1. 国際熱核融合実験炉(ITER)計画
ITERは、核融合エネルギーの実用化を目指す世界最大の国際共同プロジェクトです。EU、日本、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極が協力して、フランス南部に巨大なトカマク型核融合炉を建設している。
・目的: 科学技術的な実現可能性の検証、および核融合発電の工学的実証
・現状: 2025年12月の運転開始、2035年12月の核融合運転開始を目指して建設が進められている。
・各極の貢献: 各極が分担する機器を調達・製造して持ち寄り、ITER機構が全体を組み立てる仕組みである。例えば、日本は巨大なトロイダル超伝導磁石など、重要なコンポーネントを供給している。
2. 各国の核融合エネルギー技術開発動向
ITER計画の進展を受けて、各国は独自の核融合発電ロードマップを策定し、実用化に向けた取り組みを加速させている。
(1) アメリカ
・目標: 2040年代の実用化を目指している。
・特徴
✓2022年12月には、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)がレーザー核融合において投入エネルギー以上のエネルギー生成(点火)に成功し、画期的な進展を発表した。これは核融合研究における大きなマイルストーンとなった。
✓民間企業の核融合ベンチャーへの投資が非常に活発で、政府も商業核融合エネルギーの実現を加速するための10年戦略を策定している。
✓中国と比較すると、政府予算は少ないものの、民間投資との連携が盛んである。
(2) 中国
・目標: 2030年代の実用化を目指しており、最も積極的な姿勢を見せている。
・特徴
✓年間約15億ドルを核融合開発に投じており、その投資額は他のすべての国を合わせた額を上回るとも言われている。
✓核融合に関する特許数で世界最多を誇り、核融合科学と工学の博士号取得者も米国をはるかに上回るとされている。
✓2023年12月には国営企業25社によるコンソーシアムを設立し、政府主導で開発を進めている。
✓大規模試験施設群「CRAFT」を2025年に完成させる予定で、トカマク型核融合実験炉の建設も進め、2027年の運転開始を目指している。
(3) 欧州連合(EU)
・目標: 2050年代の実用化を目指しています。
・特徴
✓ITER計画のホストサイトであり、ITERへの貢献とEU独自の核融合発電原型炉プログラムへの参画を継続している。
✓ユーロフュージョン(EUROfusion)というコンソーシアムを通じて、加盟国間の共同研究を進めている。
✓2022年には、英国のJET(Joint European Torus)において、記録的な59メガジュールの持続核融合エネルギー放出に成功するなど、着実に成果を上げている。
(4) 日本
・目標: 2030年代の実証を目指す「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を策定している。
・特徴
✓ITER計画において主要な貢献国であり、世界最大級のトカマク型超伝導プラズマ実験装置「JT-60SA」を建設し、核融合研究の進展に貢献している。
✓高温超電導導体の独自開発など、基盤技術開発にも力を入れている。
✓国内の研究開発の推進と国際協調、そして人材育成を重視している。
✓民間スタートアップ企業も登場し、ヘリカル型核融合炉の開発など、多様なアプローチが進められている。
(5) イギリス
・目標: 2040年代の実用化を目指しています。
・特徴
✓EU離脱後、独自のエネルギー政策として核融合を重視し、2021年10月には独自の核融合戦略を発表した。
✓球状トカマク型エネルギー核融合施設(STEP)の建設を計画しており、2040年までの完成を目指している。
✓核融合に関する規格・規制の策定を先導し、核融合産業の構築と世界への技術輸出を目指している。
✓JETの運営を通じて、核融合研究をリードしてきた。
(6) 韓国
・目標: 2050年代の実用化を目指している。
・特徴
✓韓国型超伝導核融合研究装置「KSTAR」を用いて、高温プラズマの長時間維持に関する世界記録を樹立するなど、研究成果を上げている。
✓「人工太陽」技術確保と核融合新規プロジェクト推進のため、大規模な政府投資を計画している。
(7) インド
・特徴
✓ITER計画の主要な参加国の一つであり、核融合研究に貢献している。
✓民間企業による核融合炉開発の動きも出てきている。
まとめ
核融合エネルギー開発は、国際協調の時代から各国独自の戦略と民間投資が活発化する国際競争の時代へと移行している。各国がそれぞれの強みを生かし、実用化に向けた研究開発を加速させており、今後の技術的進展が注目される。
東日本大震災による福島第一原子力発電所事故を経験した日本にとって、新たなエネルギー技術における安全性への懸念は当然のことである。核融合エネルギーが従来の核分裂エネルギー(現在の原子力発電)とどのように異なり、どのような安全対策が講じられているのかについて説明する。
核融合エネルギーの安全性に関する基本的な考え方
核融合エネルギーは、太陽と同じ原理を利用したエネルギー源である。軽い原子核(主に水素の同位体である重水素と三重水素)を高温・高圧にすることで融合させ、より重い原子核(ヘリウム)と中性子を生成する際に発生するエネルギーを取り出す。
従来の核分裂炉がウランなどの重い原子核を分裂させるのに対し、核融合炉は軽い原子核を融合させる点で根本的に異なる。この違いが、安全性における大きな利点となる。
福島第一原発事故との根本的な違い
福島第一原発事故は、主に以下の要因が複合的に作用して発生した。
(1)冷却機能の喪失: 地震による外部電源喪失と津波による非常用ディーゼル発電機の浸水により、炉心冷却機能が失われた。
(2)炉心溶融: 冷却できないことで燃料が高温になり、溶け落ちる「炉心溶融」が発生した。
(3)水素爆発: 炉心溶融によって発生した水素が建屋内に充満し、爆発を引き起こした。
(4)放射性物質の大量放出: 炉心溶融と建屋損壊により、大量の放射性物質が外部に放出された。
これに対し、核融合炉では以下のような特徴から、福島第一原発事故のような事態は起こり得ない。
1. 臨界の概念がない
核分裂炉では、核燃料が連鎖反応を起こし続ける「臨界状態」を維持して発電する。もし冷却できなくなると、炉心が高温になり暴走する可能性がある。
一方、核融合炉では、プラズマを安定的に維持するために常にエネルギーを投入し続ける必要がある。プラズマは非常に不安定な状態であり、少しでも制御が乱れると瞬時に活動が停止する。つまり、何らかの異常が発生してエネルギー供給が途絶えたり、閉じ込めが困難になったりすれば、核融合反応は自動的に停止し、暴走する可能性はない。これは、原理的に「臨界事故」が起こり得ないことを意味する。
2. 核融合燃料の少量性
核融合炉で一度に炉心に存在する燃料(重水素と三重水素)は、ごく微量である。例えば、ITERのような大規模な実験炉であっても、プラズマ中に存在する燃料は数グラム程度と極めて少量である。これに対して、核分裂炉では何トンもの核燃料が装荷されている。
万が一の事故が発生した場合でも、存在する燃料が少ないため、大量の放射性物質が放出されるリスクは格段に低くなる。
3. 放射性廃棄物の特性と量
核融合炉では、核融合反応で生成される中性子が炉壁などの構造材に当たることで、誘導放射化と呼ばれる現象が起こり、放射性物質が生じる。これが核融合炉における主な放射性物質の発生源となる。
しかし、これらの放射性物質の半減期は比較的短く(数十年〜数百年程度)、現在主流の核分裂炉から出る高レベル放射性廃棄物(半減期が数万年〜数百万年と非常に長いものも含まれる)とは異なる。また、発生量も核分裂炉に比べて格段に少ないとされている。数十年〜数百年で放射能レベルが十分に低くなるため、最終処分場の確保や管理の負担が大幅に軽減されると期待されている。
その他の安全性への配慮
核融合炉の研究開発においては、上記の根本的な安全性に加え、以下のような多重防護の設計が検討されている。
・トリチウム(三重水素)の管理: 核融合燃料の一つであるトリチウムは放射性物質であるが、半減期が約12年と比較的短く、体内に入っても速やかに排出される特性がある。核融合炉では、トリチウムを厳重に閉じ込め、回収・再利用するシステムが構築される。
・構造材の選定: 中性子照射によって放射化しにくい材料(低放射化材料)の開発が進められている。
・冷却システムの設計: 万が一の冷却材喪失事故でも、炉心損傷に至らないよう、多様な冷却システムや受動的な安全機能が検討されている。
まとめ
核融合エネルギーは、その原理上、核分裂エネルギーとは異なる安全上の特性を持っている。連鎖反応による暴走がないこと、炉内の燃料がごく微量であること、そして発生する放射性廃棄物の特性が、核分裂炉におけるシビアアクシデントのリスクを大幅に低減させる。
もちろん、新しい技術である以上、設計や運用における万全の安全対策は不可欠である。しかし、福島第一原発事故で懸念されたような大規模な炉心溶融や放射性物質の広範囲な放出といった事故のリスクは、核融合炉の原理的な特性によって極めて低いと考えられている。
核融合エネルギーは、持続可能な社会を実現するための有力な選択肢として、安全性を最優先に研究開発が進められている。
核融合炉でプラズマを安定的に維持するために投入される「エネルギー」
核融合炉でプラズマを安定的に維持するために投入される「エネルギー」とは、主にプラズマを核融合反応が起こる超高温(1億℃以上)まで加熱し、その温度を維持するためのエネルギーのことである。
プラズマは非常に不安定な状態であり、一度加熱しても、その熱はすぐに外部に逃げ出してしまう。太陽のように自らの重力で閉じ込めることができない地上では、人工的に様々な方法でエネルギーを投入し、プラズマを「閉じ込め」ながら「加熱」し続ける必要がある。
具体的にどのようなエネルギーが投入されるかというと、以下のような複数の加熱方式が組み合わせて用いられる。
1. 初期加熱(オーム加熱/ジュール加熱)
核融合反応を開始させる最初の段階で用いられる加熱方法である。
・仕組み: プラズマ中に電流を流すことで、プラズマ自身の電気抵抗によって熱が発生する。これは、電熱線に電流を流すと熱くなるのと同じ原理である。
・特徴: 比較的簡単な方法であるが、プラズマの温度が上がると電気抵抗が下がるため、これだけで核融合反応に必要な1億℃まで加熱することはできない。あくまで初期の加熱手段として使われる。
2. 追加加熱(核融合炉の主要な加熱方法)
オーム加熱だけでは到達できない超高温までプラズマを加熱し、その温度を維持するために、外部から強力なエネルギーを投入する。
(1)中性粒子ビーム加熱(NBI: Neutral Beam Injection)
・仕組み: 水素(または重水素、三重水素)の原子をイオン化し、非常に高速に加速してビームにする。このビームをプラズマに入射する直前で中性化(電荷をなくす)させ、強力な磁場を貫通させてプラズマの内部に打ち込む。プラズマに入った中性粒子は、プラズマ中のイオンや電子と衝突することで運動エネルギーをプラズマに渡し、加熱する。
・特徴: プラズマの深部までエネルギーを供給でき、プラズマの電流駆動(安定化)にも利用できる。
(2)高周波加熱(RF加熱)
・仕組み: 特定の周波数の電磁波(マイクロ波やラジオ波)をプラズマに入射し、プラズマ中の電子やイオンの運動(サイクロトロン運動など)と共鳴させることで、エネルギーを与えて加熱する。電子レンジが食品を温めるのと似た原理である。
・種類
✓電子サイクロトロン加熱(ECH): 電子と共鳴するマイクロ波を使って電子を加熱する。
✓イオンサイクロトロン加熱(ICH): イオンと共鳴するラジオ波を使ってイオンを加熱する。
✓低域混成波加熱(LHH): プラズマ電流の駆動にも利用される高周波加熱である。
・特徴: 加熱したい場所を比較的細かく制御でき、非接触でプラズマを加熱できる。
3. 自己加熱(核融合反応による加熱)
核融合反応が十分に活発になると、反応で生成されるヘリウム原子核(アルファ粒子)が高速で飛び出し、その運動エネルギーの一部をプラズマ中の他の粒子に与えることで、プラズマ自身を加熱するようになる。これを自己加熱と呼ぶ。
・目標: 最終的には、外部からの追加加熱を減らし、自己加熱だけで核融合反応を維持できる「自己点火(self-ignition)」状態を目指す。ITERでは、投入エネルギーの10倍の核融合エネルギーを発生させる「Q=10」の達成を目標としており、これは自己加熱の割合を大きくすることで実現される。
まとめると
核融合炉でプラズマを安定的に維持するために投入される「エネルギー」とは、プラズマを1億℃以上の超高温に加熱し、その状態を磁場で閉じ込めて維持するために、外部から供給される電気エネルギーや電磁波エネルギー、粒子ビームの運動エネルギーなどのことである。
これらのエネルギーを効率的に投入し、プラズマが外部に逃げ出す熱損失を上回るだけの核融合反応を起こせる状態をいかに長時間維持するかが、核融合エネルギー実用化の最大の技術的課題となっている。
「プラズマ」
「プラズマ」は、物質の第4の状態と呼ばれている。一般的には、固体、液体、気体の3つの状態が知られているが、気体にさらに大きなエネルギー(熱や電磁波など)を加えることで、原子が電子を放出し、正の電荷を帯びたイオンと、負の電荷を帯びた自由電子がバラバラに動き回る状態になる。この、正イオンと自由電子がほぼ同数存在し、全体として電気的に中性な状態の電離気体が「プラズマ」である。
プラズマの特徴
・電気伝導性: イオンと電子が自由に動くため、電気を通しやすい性質がある。
・電磁場との相互作用: 荷電粒子であるため、電場や磁場の影響を強く受け、その運動を制御することができる。これが核融合炉でプラズマを閉じ込める(磁気閉じ込め)原理にもなっている。
・化学的活性: 通常の気体よりもはるかに高いエネルギーを持ち、反応性が非常に高いため、様々な化学反応を促進することができる。
・光の放出: 励起された電子が元の安定した状態に戻る際に光を放出するため、発光現象を伴うことが多い(蛍光灯やネオンサインなど)。
自然界におけるプラズマ
実は、宇宙の物質の99%以上はプラズマ状態であると言われている。
・太陽や恒星: 太陽は巨大なプラズマの塊である。核融合反応によって莫大なエネルギーを放出している。
・オーロラ: 太陽から放出されたプラズマ(太陽風)が地球の磁場に導かれ、大気中の原子や分子と衝突して発光する現象である。
・雷: 落雷の際に空気が瞬間的に電離し、プラズマが発生している。
・星間ガス、銀河間ガス: 宇宙空間に漂う希薄なガスも、ほとんどがプラズマ状態である。
地球上では、大気圧下ではプラズマ状態を維持するのが難しいため、意識しないとあまり見かけないが、実は身近なところにも存在する。
・蛍光灯やネオンサイン: 放電によってガスをプラズマ状態にすることで発光している。
・ろうそくの炎: 厳密には部分的にプラズマ状態になっている。
人工的なプラズマとその応用例
・人工的にプラズマを生成し、その特性を利用する技術は「プラズマ技術」と呼ばれ、私たちの生活の様々な場面で活用されている。
1.核融合エネルギー: 究極のクリーンエネルギーとして期待される核融合発電は、まさに超高温のプラズマを磁場で閉じ込めて核融合反応を維持する技術である。
2.半導体製造
・エッチング: プラズマ中の活性種(イオンやラジカル)を利用して、半導体基板の表面を精密に削る(加工する)技術である。
・薄膜形成(CVD/PVD): プラズマ中で反応ガスを分解し、目的の物質を基板表面に堆積させて薄い膜を作る技術である(例: 太陽電池のシリコン膜、硬いコーティングなど)。
3.表面改質: 材料の表面にプラズマを当てることで、撥水性、親水性、硬度、耐摩耗性、生体適合性など、様々な特性を付与することができる。プラスチックや金属の表面処理、医療機器の表面改質などに使われる。
4.殺菌・滅菌: 低温プラズマは、熱に弱い医療器具や食品の殺菌、空気清浄などに応用されている。
5.環境浄化: 排ガス処理、水処理、臭気分解など、環境分野での応用も進んでいる。
6.医療・バイオ: 低温プラズマを用いた創傷治癒、がん治療の研究、遺伝子導入、歯の治療など、多岐にわたる研究開発が進められている。
7.照明: 蛍光灯、ネオンサイン、プラズマディスプレイ(過去のテレビ技術)などが挙げられる。
8.溶接・切断: アーク溶接やプラズマ切断は、高温のプラズマを利用した金属加工技術である。
このように、「プラズマ」は、宇宙の大部分を占める自然現象であると同時に、現代の高度な科学技術を支える基盤であり、未来のエネルギーや産業を拓く可能性を秘めた非常に重要な物質の状態である。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
US Trojan horse alarms pushing China’s robots to Europe ASIA TIMMES 2025.06.06
https://asiatimes.com/2025/06/us-trojan-horse-alarms-pushing-chinas-robots-to-europe/#
習近平中国国家主席:トランプ米大統領の要請に応じて電話会談 ― 2025年06月07日 23:28
【概要】
2025年6月5日木曜日の夜、習近平中国国家主席は、ドナルド・トランプ米大統領の要請に応じて電話会談を行った。これは中国と米国の貿易摩擦が始まって以来、両国首脳による初の直接対話であり、中国・米国関係におけるもう一つの重要な節目となった。
この電話会談によって発せられた前向きなシグナルは、より建設的な中国・米国関係に対する国際的な期待を高めた。香港の『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』はこの電話会談を「待望のもの」とし、両国が「信頼構築と会談に向けた基本原則の確立」に一定の進展を見せたと報じた。また、米国の『フォーリン・ポリシー』誌は、双方の声明と会談要旨の全体的なトーンが概ね肯定的であり、米国側が「非常に良い電話会談だった」と評価したことを伝えている。
この会談において、習主席は「中米関係という巨大な船の航向を修正するには、舵を取り、正しい方向を設定する必要がある」と述べ、「様々な妨害や混乱を避けることが特に重要である」と強調した。この「特に」という語の強調は大きな注目を集めており、現在の中米関係に対する深い洞察を示すものであり、米国に対する善意ある忠告としても受け止められている。この発言は、極めて的を射たものであり、実際的な意義を持つと国際社会に認識されている。
中国と米国は世界二大経済大国であり、両国関係は世界で最も重要な二国間関係の一つである。この巨大な船が世界的な混乱の中でも安定して航行できるかどうかは、両国民の根本的利益のみならず、人類の未来にも関わる重大な問題である。
21世紀において、両国がどのように共存するかは、狭隘かつ近視眼的な視点ではなく、主要文明間の新たな交流モデルの模索として捉えるべきである。このようにして初めて、中米は「トゥキディデスの罠」に陥った国々とは異なる新たな航路を開くことができる。
近年、中米関係に前向きな動きがあるたびに、米国から様々な方向からの干渉や破壊行為が現れることが常態化している。たとえば、2025年5月にジュネーブで開催された中米経済貿易会議において、両国が共通認識に達し、実質的な進展を遂げたにもかかわらず、米国はその直後に対中ネガティブ措置を相次いで打ち出した。一部の米国関係者は中国を「悪意ある競争相手」と呼び、北京が合意を遵守していないと根拠なく非難した。
台湾問題に関しても、米国は一方で「一つの中国」原則を堅持し「台湾独立を支持しない」と繰り返し表明しているが、実際には台湾地域への武器売却を拡大しており、一部の米国当局者は分裂勢力に誤ったシグナルを送っている。また、国連総会決議2758号を歪曲しようとする試みも見られ、これらの行動は中米関係に非常に高いリスクをもたらしている。
国際関係における基本原則である相互尊重は、中米関係の前提条件でもある。いかなる国も、一方で中国を抑圧・封じ込めようとしながら、他方で良好な関係を構築できるという幻想を抱くべきではない。米国内にはいまだに「ゼロサムゲーム」的思考や冷戦的思考に固執する勢力が存在しており、この問題は根本的に改善されていない。彼らは国際関係を「敗者がいれば勝者がいる」ゲームとして捉えており、中国との対話も、緊張を管理したり相違を解消するためではなく、「米国の全面的勝利と中国の全面的敗北」を目指しており、極端な圧力をかけて中国を屈服させようとさえしている。
中米の高官間の対話では、戦略的認識が常に重要な議題となっており、「第一ボタンを正しくかける」必要性、すなわち平和を重んじ、安定を優先し、信義を重んじるという原則を守ることの重要性が強調されている。
事実として、中米両国は協力によって利益を得、対立によって損失を被るということが何度も証明されてきた。両国が対等な立場で対話を行えば、具体的な成果が生まれるが、中国に対する封じ込めや圧力はむしろ逆効果を招く。過去2か月間、NVIDIAのJensen HuangCEO、インベスコのワゴナー会長、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOなど、米国の主要企業トップが相次いで中国を訪問し、一部は「米国の半導体輸出規制はかえって中国の技術発展を加速させている」と述べ、中国側はそれを恐れていないと明言している。これら米産業界からの声は、米政府が真剣に耳を傾けるべきである。
中国と米国は、国際的責任、共通利益、協力分野が広大であり、健全かつ安定した中米関係は世界の平和と繁栄の礎である。両国の協力は国際社会共通の期待である。電話会談中、トランプ氏は「習主席を大変尊敬している」「米中が協力すれば素晴らしい成果を上げられる」「米国は合意の履行に向けて中国と協力する」「米国は中国人留学生が米国で学ぶことを歓迎する」と述べた。
米国が中国と「中間地点で会う」ことができるかどうかは、対中認識の修正と「さまざまな妨害や混乱」に屈しない姿勢にかかっている。それは中国だけでなく、国際社会全体が注視していることであり、米国が言行一致を保てるかどうかが問われている。
首脳外交は中米関係の方向性を定める基本的な指導力であり、羅針盤でもある。中国は引き続き、安定的、健全かつ持続可能な中米関係の維持に尽力する。米国にも同様に、自らの約束を誠実に履行し、ジュネーブでの合意を継続的に実施し、中国の発展を客観的かつ理性的に見つめ、実務的かつ建設的な交流を展開し、両国に利益をもたらし、世界の幸福に資する正しい中米関係の道をともに歩むことを望むものである。
【詳細】
1. 首脳間の電話会談という外交的節目
2025年6月5日(木)夜、中国の習近平国家主席は、アメリカのドナルド・トランプ大統領の要請に応じ、電話による首脳会談を行った。この会談は、中国と米国の間で深刻化していた貿易摩擦以降、両首脳による初の直接的な意思疎通であり、両国関係における重要な転機であった。このような首脳間の対話は、単なる儀礼ではなく、両国関係の方向性や緊張の緩和に直接的な影響を及ぼす「基軸」となる外交的行為である。
2. 国際社会の前向きな評価
この電話会談は、国際社会から「建設的な対話の兆し」として肯定的に受け止められた。香港の有力紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』は、今回の通話を「待望されていた」と報じ、両国が「信頼を築き、会談の基本原則を設定する」段階に達したと評価した。米国の外交専門誌『フォーリン・ポリシー』もまた、双方の公式発表のトーンが概ね前向きであり、トランプ政権側が「非常に良い会談だった」とコメントしたことを伝えている。
3. 習近平主席の「航向修正」の比喩
習主席は、両国関係を「巨大な船」に例え、「正しい航向を定め、しっかりと舵を取る」必要があると強調した。この比喩は、複雑かつ多層的な中米関係の性質を示しており、一度間違った方向へ進めば、軌道修正が極めて困難であることを意味する。習氏は特に、「様々な妨害や混乱を避けることが重要」と述べ、「特に(particularly)」という語を用いて強調した。この語の選択は、単なる一般的注意喚起ではなく、米国に対する明確なメッセージとして解釈され、外部からも注目された。
4. 中米関係の国際的重要性と人類的意義
中国と米国は、それぞれ世界第2位および第1位の経済大国であり、両国の関係は、単なる二国間の利害を超えて、地球規模での安定、経済成長、安全保障、気候変動対策といった多岐にわたる課題に直結する。従って、この関係が「巨大な船」として安定航行できるか否かは、両国民の利益にとどまらず、「人類全体の未来」にも関わる深刻な問題である。
5. 文明間対話としての中米関係モデル
21世紀における中米関係は、過去の大国間競争(例:米ソ冷戦)と同様の枠組みで理解すべきではない。むしろ、それは異なる歴史的・文化的背景を持つ「主要文明」間の新たな交流モデルを模索する試みであるべきである。習主席の言葉は、軍事的・経済的対立を前提とするのではなく、協力と共存を前提とした全く新しい国際関係の在り方を提唱するものである。このようにすれば、「トゥキディデスの罠」(既存の覇権国と新興国が不可避的に戦争に至るとする歴史理論)を回避し得るとされる。
6. 「妨害」の常態化とその例
しかしながら、近年の実態として、両国が関係改善へ向けて前進するたびに、米国側から様々な妨害や破壊的措置が取られるという「パターン」が固定化している。具体例として、2025年5月のジュネーブにおける経済・貿易会議においては、両国が一定の合意に達し、実質的進展を見せた直後に、米国が中国に対する新たな制裁や否定的声明を発表した。加えて、一部の米国政治家は中国を「悪意ある競争相手」と非難し、北京が合意を破ったとする根拠のない主張を展開した。
7. 台湾問題における矛盾と危険性
台湾に関しては、米国は表向きには「一つの中国」政策を支持し、「台湾独立を支持しない」と公言しているものの、実際には台湾への武器売却を続けており、一部当局者が台湾独立を志向する勢力に対して誤ったシグナルを送っている。また、国連総会決議2758号(1971年に中華人民共和国を国連の正統な代表と認定した決議)の解釈を故意に歪曲しようとする動きも見られ、こうした行為は中米関係に深刻な危機をもたらすリスクを孕んでいる。
8. 相互尊重と米国の「二重基準」への警告
国際関係の根本原則は「相互尊重」であり、これは中米関係においても不可欠である。中国側は、「一方で中国を封じ込めつつ、他方で関係改善を図る」といった米国の二重基準的態度を強く批判している。米国内の一部勢力は、冷戦時代の「ゼロサムゲーム」的発想に固執し、「自国の全面的勝利=他国の全面的敗北」という思考に基づいて行動している。このような戦略認識は、過去数年間の中米高官間の会談でも常に議題となってきた問題である。
9. 協力の利益と対立の損失
歴史的事実として、中米は協力によって共に利益を得ることができ、対立によって共に損失を被るという現実が何度も示されてきた。対等な立場で対話を重ねれば、具体的成果が上がるが、圧力や封じ込めを通じて一方的に譲歩を迫るような手法は、逆効果であり、関係悪化を招くだけである。
10. 米産業界からの懸念と提言
近年、米国の主要企業の経営者たちが相次いで中国を訪問している。たとえば、NVIDIAのJensen HuangCEO、インベスコのワゴナー会長、JPモルガン・チェースのダイモンCEOらである。彼らの中には、米国による半導体の輸出規制が、むしろ中国の技術発展を加速させる結果となっており、中国側はこれを脅威とみなしていないと明言する者もいた。こうした意見は、経済現場からの「現実的な声」として、ワシントンが真摯に受け止めるべきであるとされている。
11. 国際社会の期待と米国の対応への注視
中米両国には、地球規模の責任、多様な共通利益、広範な協力領域が存在している。両国の健全かつ安定的な関係は、世界の平和と繁栄の「礎」となっており、これは国際社会全体の共通した期待である。電話会談の中で、トランプ氏は「習主席に対する深い敬意」「米中が協力すれば多くの偉業を達成できる」「合意履行に向け中国と協力する」「中国人留学生の米国留学を歓迎する」といった発言を行った。
12. 総括
言行一致と正しい航路の共有
中国側は、米国が中国と「中間地点で会う」意志を示すかどうかを、米国の対中認識の修正と、国内外からの妨害に動じない態度にかかっていると見ている。この問題は、両国のみならず国際社会全体が注視しており、米国が発言と行動を一致させられるかが問われている。首脳外交は中米関係の基本的な方向性を定める「羅針盤」であり、中国は安定的で健全かつ持続可能な中米関係の維持に尽力する姿勢を明確にしている。中国は、米国にも同様の誠意と理性、実務的姿勢を持って共に前進することを強く求めている。
【要点】
全体の主張
・中米関係は世界にとって最も重要な二国間関係の一つであり、その安定は人類全体の利益に直結する。
・習近平主席の発言「特に妨害や混乱を避けることが重要」は、現在の中米関係の実態に即した、強く具体的な警告である。
・中米首脳会談は、両国関係の航向を定める「羅針盤」としての役割を持ち、戦略的指導力の発露とされる。
会談の意義と国際社会の反応
・2025年6月5日、習近平主席とトランプ大統領が電話会談を実施。これは貿易摩擦以降、初の直接対話である。
・国際メディア(例:サウスチャイナ・モーニング・ポスト、フォーリン・ポリシー)は、会談を肯定的に評価し、両国が信頼構築に進みつつあるとの見方を示した。
・トランプ氏の発言も前向きであり、協力への意欲や中国人留学生の受け入れ姿勢を明言した。
「特に妨害を避けるべき」との強調の意味
・習主席の発言中の「特に(particularly)」という表現は、単なる一般論ではなく、現在の米国による妨害行為に対する明確な牽制である。
・この表現は国際社会でも注目され、中国から米国への「実務的警告」として機能している。
中米関係の地政学的・文明的意義
・中米は世界第1・第2の経済大国であり、その関係の安定は世界経済と安全保障の要である。
・両国の共存は文明間の新たな相互作用のモデルと位置づけられ、単なる覇権争いの文脈で論じるべきではない。
・「トゥキディデスの罠」に陥らないためには、新たな文明間関係モデルの構築が不可欠である。
妨害の「パターン化」とその具体例
・米国では、中米関係が前向きに進展するたびに、国内外からの妨害が発生するという「構造」が定着している。
・例として、2025年5月のジュネーブ経済会談後、米国が制裁や否定的言動を繰り返した。
・一部米国政治家は、中国を「悪意ある競争相手」と非難し、合意違反を根拠なく主張した。
台湾問題をめぐる米国の矛盾行動
・米国は「一つの中国」政策を支持すると表明しつつ、台湾への武器売却を継続している。
・米高官が台湾独立派に誤ったシグナルを送っており、これは中米関係を不安定化させる要因となっている。
・国連総会決議2758号を歪曲しようとする試みもあり、中国はこれを極めて危険視している。
米国の「ゼロサム」思考への批判
・中国は、「抑圧と協力の両立は不可能」と主張し、米国が冷戦的思考に固執していることを問題視している。
・米国の一部勢力は「自国の全面的勝利=中国の敗北」を求めており、これが対話の障害となっている。
・「戦略的認識の誤差」が、首脳級会談で常に問題として提起されている。
協力の成果と対立の代償
・歴史的に見ても、中米は協力によって利益を得、対立によって損失を被ってきた。
・平等な立場での対話は成果を生み出すが、圧力や封じ込め政策は逆効果である。
米産業界の現実的視点
・NVIDIA、JPモルガン、インベスコなどの米国大手企業のCEOらが中国を訪問し、対中規制の逆効果を指摘。
・半導体輸出規制が中国の技術発展を促進しているとの見解も表明されている。
これら産業界の声は、米国政府が真摯に受け止めるべき現実的警鐘である。
国際社会の期待と米国の対応
・国際社会は、中米関係の安定と協力を共通の期待として持っている。
・習近平・トランプ両首脳の対話は、その期待に対する重要なステップである。
・米国が「妨害に屈せず」、中国と中間地点で誠意を持って協力できるかが問われている。
総括
・中米関係の正しい航路とは
☞首脳外交は両国関係の方向性を定める羅針盤である。
☞中国は、安定的・健全で持続可能な関係構築に引き続き尽力する姿勢を強調。
☞米国にも、言行一致を図り、ジュネーブ合意の履行、中国の発展を客観的に捉える冷静さ、建設的対話を通じて「正しい道」を共に歩むことが期待されている。
【桃源寸評】🌍
中米関係の現状認識と、それに対する中国側の戦略的視座を詳細に伝えており、特に「妨害の排除」が関係改善の前提条件であるとの認識を繰り返し強調している。
5月のスイス・ジュネーブで高官協議後、関税以外の規制撤廃するとともに、新たな枠組みを設けて貿易協議を続けていくことで合意した。しかし、レアアース輸出は滞り、「米国をはじめ、世界の自動星産に影響が出始めている。トランプ氏は交流サイ卜(S N S)で『中国は米との合意を完全に破った』と批判。米メディアによると、米国は報復として、中国国産旅客機向けエンジン輸出を停止するなど、ハイテク製品に対する対中規制を強化していた」と。(中日06.07)
しかし、GTの此れまでの報道から観る限り、米国側に非がある。今次もGTは繰り返し述べている。
米国は恐らく、中国の言うことに聞く耳を持たず、理解する能力をも欠くだろう。
以下、論ずる。
1.米国は「協調」を語りながら「対決」を実行する二面性外交を取っている
・社説が繰り返し非難しているのは、米国の態度の不整合性である。
・対話・信頼・協力を表向きに唱えながら、その直後に敵対的措置を講じるという「裏切りの構図」は繰り返されている。
・社説ではこれを「パターン」と明言しており、一時的な偶発的現象ではなく、米外交戦略に組み込まれた行動様式であると見ている。
2.具体的な米国の裏切り行為:スイス・ジュネーブ協議後の行動
・協議直後の矛盾する措置(裏切りの典型例)
・協議内容:2025年5月、スイス・ジュネーブにおいて、中米高官による経済貿易協議が行われ、「共通認識」「信頼構築の一歩」として国際的に報じられた。
➢米国の行動:協議後、短期間のうちに以下の措置を講じた。
⇨ 中国企業に対する制裁措置の強化
⇨ 「中国は協議を破った」とするトランプ氏のSNS発言
⇨ 中国を「悪意ある競争相手」とする米政府関係者の発言
⇨ 協議によって得られた信頼を、米国自ら破壊した構図であり、「交渉に応じつつ同時に敵視する」というダブルスタンダードが明白である。
3.台湾問題における「表の約束」と「裏の行動」の乖離
➢表向きの表明:「一つの中国」原則の支持を表明
⇨ 実際の行動:台湾への先端兵器売却を継続・拡大(例:戦闘機、ミサイル、AIドローン)
➢表向きの表明:「台湾独立を支持しない」との誓約
⇨ 実際の行動:台湾高官との非公式接触、議会訪問団の派遣
➢表向きの表明:UNGA決議2758の遵守を口にする
⇨ 実際の行動:決議の解釈変更を試み、「台湾代表権」の問題を蒸し返す発言を一部米高官が行う
これらは、中国の主権と核心利益に対する重大な干渉であり、「公に約束し、私に反する」行動の典型とされる。
4.米国内政・軍産複合体による「対中敵視」推進構造
・社説は、米国の一部勢力(特に議会、軍産複合体、特定メディア)が、中国敵視によって政治的利益を得る構造を形成していると指摘する。
・その結果として、政府の外交表明と実際の政策執行の間に乖離が生じ、交渉相手としての信頼性が大きく損なわれている。
5.中米関係における「戦略的誤認」と「冷戦思考」への警告
・社説では、米国の一部対中戦略は依然として「冷戦的ゼロサム思考」に基づいており、次のような誤った信念を持っていると指摘されている:
➢米国の優位を保つには、中国の成長を抑制するしかない。
➢協調的共存は不可能であり、「勝つか負けるか」しかない。
このような考え方は、対話の可能性を閉ざし、中国に対する不信と敵意を制度化する原因となっている。
6.企業界の反応:米国の政策が自国産業に逆効果をもたらしている
・NVIDIA、Invesco、JPモルガンなど、米国の大手企業幹部が続々と訪中し、以下のような発言を行っている:
➢「米国の輸出規制は中国の半導体自立を加速している」
➢「中国市場は極めて重要。政治による断絶は経済的損失である」
このような産業界の声を無視し、あくまで政治的対決を優先する米国の対応は、自国利益すら損ねる「非合理な敵対」であるとされている。
7.総括
・米国に対する根源的批判
➢協議に応じては敵対措置を講じるという「裏切りの習慣」は、米国の外交の根本的問題である。
➢信頼関係を構築するには、言行一致・整合性・尊重の原則が必要不可欠である。
中国側は「理にかなった冷静な対応」を維持している一方で、米国が現在のように「表裏ある」交渉を続ける限り、真の相互理解は困難であると示唆している。
故に、高官協議は続けても、習近平氏とトランプとの直接会談(特にワシントンでは)は避けるべきであると考える。
以下論ずる。
すなわち「高官レベルでの協議は継続しても、首脳会談(特にワシントンでの開催)は避けるべき」とする立場は、『環球時報(Global Times)』の社説における中国側の慎重姿勢や現実的懸念とも整合するものであり、以下の観点から理に適っていると考える。
1. 米国の「信頼に足るパートナーとしての一貫性の欠如」
・社説では、米国が「対話と対決」を並行させる二重外交を常に行っていると繰り返し非難している。
・実際、過去の高官会談や首脳会談(例:アラスカ会談、バリ会談、サンフランシスコ会談)後に、米国側から敵対的措置(制裁、技術輸出規制、台湾関係強化など)が必ずと言ってよいほど続いている。
・そのため、習近平氏がワシントンを訪れ、トランプ氏と会談するという外交的ジェスチャーを行うこと自体が、米国に「外交的勝利」として利用されかねない。
2. 首脳会談には象徴的意味と「信頼保証」の重みがある
・国家元首同士の会談は、「国として信頼を預ける」レベルの重要な外交行為である。
・にもかかわらず、会談後に裏切るような対応を米国が繰り返してきたことから、そのような「象徴的な信義の交換」は現段階で行うべきでないとする懸念は極めて妥当である。
・特にワシントンでの会談は、米国の内政的・選挙戦略的演出に利用されるリスクが高く、外交的バランスを欠く可能性がある。
3. 高官レベルの協議には「検証と管理」の余地がある
・高官協議(例:国務次官級、商務次官級など)は、技術的・政策的論点に限定しやすく、合意履行の監視や反証が可能である。
・したがって、「信頼に足るかどうかを試す場」としては、首脳会談よりも高官協議の方が合理的な外交チャネルである。
・社説でも、「まずは戦略的認識の一致」「妨害と干渉の回避」が重要とされており、形式的成果よりも基礎信頼の再構築を優先している。
4. トランプ氏の発言と行動の不安定さへの懸念
・トランプ氏は、2025年現在においてもSNSなどを通じて感情的・攻撃的な発言を繰り返しており、外交儀礼や会談内容にすら即反する発言を公然と行っている。
・このような人物と首脳会談を行っても、成果を得るどころか、発言が即座に反故にされるリスクすらある。
・社説が指摘する「米国国内の干渉勢力」「合意後の破棄の常態化」を鑑みれば、会談による期待値の高さがむしろ中国の外交的損失をもたらす可能性がある。
5. 国際社会への誤ったメッセージを避けるため
・中国首脳があえて米国に赴くことで、「中米関係は健全に回復中である」という誤認を国際社会に与えかねない。
・実際には、根本的な対立や米国の敵視政策は継続しており、虚偽の「正常化演出」は中国にとって逆効果となる。
・よって、「真の改善が進まぬ限り、象徴的イベントには加わらない」という明確な立場を取ることが、戦略的には正しい選択となる。
総括
したがって、「高官レベルの接触・協議は実利と監視可能性の点で有効だが、現段階での習近平氏とトランプ氏の対面会談(特に米国側主催)は時期尚早かつリスクが高い」という判断は、中国の戦略的利益、外交的論理、過去の経験に照らしても極めて合理的である。特に現在のように信頼が根底から揺らいでいる状況では、対話の形式よりも内容と整合性こそが問われる段階であり、形式的な首脳会談は慎重に扱うべきである。
更に侮辱的なゼレンスキー大統領との件もあり、非常に危惧するのである。
.「ゼレンスキー大統領との件」が示すように、米国(とりわけトランプ氏)における首脳外交の扱い方には、相手国を侮辱または矮小化するような姿勢が散見され、極めて憂慮すべきである。この点は、習近平主席のような国家的権威を備えた指導者との会談において、外交的損失や国際的誤解を招く重大なリスクとなる。
以下に、そのような懸念を裏付ける点を箇条書きで示す。
・ゼレンスキー大統領との件に見られた「外交的侮辱」の実例
・トランプ氏はウクライナ問題において、ゼレンスキー大統領に対し軍事支援の条件として「個人的利益に資する調査を要求」し、世界的非難を浴びた(2019年の「ウクライナ疑惑」)。
・ゼレンスキー大統領を「弱腰の操り人形」や「感謝を知らぬ小国の代表」と扱うような発言も記録されている。
・会談の内容を政治的に利用し、相手国の立場を貶める態度は、主権国家同士の対等原則に反する侮辱的行為である。
この事例から見えるリスクと教訓
・トランプ氏は会談の場を「自国世論へのアピール」や「自己顕示の道具」として用いる傾向が強く、外交的誠実さを欠いている。
・中国のように国家としての威信と国格を重視する国にとって、こうした軽薄な言動は容認しがたく、会談そのものが中国側に損失をもたらす可能性がある。
・その場では友好的態度を装いながら、SNSや選挙演説で直後に矛盾する非難を繰り返すという「二枚舌」外交は、信頼構築を著しく損ねる。
特にワシントンでの会談は危険
・トランプ氏の政治的拠点たるワシントンD.C.での会談は、米国メディアや保守層への「政治ショー」として演出される恐れがある。
・報道やSNSにおいて、中国側が「頭を下げてやって来た」と印象操作されるリスクも否定できない。
・対等な外交を求める中国にとって、そうした舞台での会談は屈辱的演出に利用される可能性が高く、極めて危険である。
中国として取るべき対応
・高官レベルの協議や事務次官級の実務的対話は続けるべきであるが、国家元首会談は「実質的信頼」が蓄積されるまで凍結すべきである。
・特に、相手が過去に他国首脳を公然と侮辱し、協議内容を自身の政治資本に利用するような人物である場合、首脳会談を行うべきではない。
・中国の国家的威信を守るためにも、「信頼なき象徴的首脳会談」は厳に慎むべき外交行動である。
総括
「ゼレンスキー大統領との件」は、トランプ氏の外交姿勢が自国中心主義・場当たり的・非礼かつ侮辱的であることを如実に示したものであり、その教訓を無視してはならない。習近平主席のような国家指導者が同じ目に遭うことを防ぐためにも、安易な首脳会談の開催は回避すべきであり、信頼回復こそが最優先事項である。
2025年2月28日、トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領はホワイトハウスで会談を行ったが、予定されていた重要鉱物資源に関する協定の署名には至らず、会談は決裂した。両首脳は、ウクライナの鉱物資源に関する協定や停戦協定を巡る具体的な政策の議論の中で対立したというよりも、お互いに積み重ねてきた不満がこの場で一気に噴き出し、激しい感情的な対立が会談の決裂につながった感が強い。
ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領がロシア寄りの立場で停戦合意をまとめようとしていることに強い不満を持ってきた。さらに、ロシアとウクライナとの間の協定を、過去にロシアのプーチン大統領が何度も破ったことを指摘し、仮に停戦合意が成立しても、プーチン大統領がそれを破棄し、再びウクライナ侵攻を進めるリスクを強く警戒している。
一方、トランプ大統領は、米国の支援がなければウクライナは戦争を継続することができないにもかかわらず、ゼレンスキー大統領が当然のことのように米国に支援を求めてきたことに、「米国への感謝がない」との強い不満を持つ。しかも戦争が起こっているのは欧州であり、米国に対する直接的なリスクはない中である。
このような背景から、トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談が決裂したことを受けて、早期の停戦合意はより難しくなったと考えられる。いかにトランプ大統領とプーチン大統領が停戦合意の枠組みで合意しても、ゼレンスキー大統領がそれを受け入れないならば、停戦は実現しない。
その後、ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領が「真の問題解決のため」に自身を再び招待すれば会談する用意があるとし、先週末に署名に至らなかった鉱物資源取引を受け入れる用意があると述べた。
また、ゼレンスキー大統領は、「前向きな動きがあり、来週、最初の結果が出ることを期待している」と述べ、アメリカとの協力関係の前進を示唆し、トランプ大統領との再会談につながると期待されている。
このように、両首脳の関係は一時的に悪化したものの、再会談に向けた動きが進んでおり、今後の展開が注目される。
さて、オバマ前大統領さえも、習近平氏の大平洋は米中にとって十分に広い、というな発言を無視している
習近平国家主席が2013年6月の米中首脳会談で提唱した「太平洋は米中両国にとって十分に広い」という発言は、米中が共存・協力できるという中国側の戦略的メッセージであった。しかし、当時のオバマ政権はこの提案に対し、公式な支持や明確な反応を示さなかった。
同会談では、オバマ大統領が南シナ海や東シナ海における中国の行動、特に人工島建設に対する懸念を表明し、習主席はこれに対し「南シナ海の島嶼は中国の領土であり、合法的な権益を有する」と主張している。
このように、オバマ政権は中国の提案に対して明確な支持を示さず、むしろ中国の海洋進出に対する懸念を強調した。この対応は、米国が中国の提案を受け入れる意志が乏しいことを示唆しており、米中間の戦略的信頼の欠如を浮き彫りにしている。
この背景には、米国がアジア太平洋地域での影響力を維持し、中国の台頭を警戒する姿勢があると考えられる。そのため、習主席の提案は米国にとって受け入れがたいものであり、結果として無視された形となった。
2019年の「ウクライナ疑惑」
2019年にドナルド・トランプ氏が関与した「ウクライナ疑惑」は、ウクライナへの軍事支援を条件に、自身の政敵であるジョー・バイデン氏(当時、2020年大統領選挙の民主党有力候補)とその息子ハンター氏に関する調査をウクライナ政府に要求したとされる問題である。この疑惑は、トランプ氏の権力乱用にあたるとして、米下院での弾劾調査に発展した。
ウクライナ疑惑の概要
1.発端: 2019年7月25日、トランプ大統領はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談を行った。この会談で、トランプ氏はゼレンスキー大統領に対し、バイデン親子に関する「汚職調査」を開始するよう繰り返し促したとされる。具体的には、ハンター・バイデン氏が役員を務めていたウクライナのガス会社「ブリスマ」に対する捜査や、ジョー・バイデン氏が副大統領時代にウクライナの検事総長解任を要求したとされる疑惑に言及した。 1
2.軍事支援の「条件」: この電話会談の数週間前から、トランプ政権は議会が承認したウクライナへの約4億ドルの軍事援助を凍結していた。疑惑は、トランプ氏がこの軍事援助を、バイデン親子への調査開始という条件と引き換えに利用しようとしたというものであった。これは、トランプ氏が自身の政治的利益のために国の外交政策を利用した権力乱用にあたるのではないかと指摘された。
3.内部告発と発覚: この疑惑は、匿名の情報機関職員による内部告発によって明るみに出た。告発内容は、トランプ大統領が職権を乱用し、2020年の大統領選挙に有利な情報を得るために外国政府に不適切な圧力をかけたというものであった。
4.弾劾調査の開始: 内部告発を受け、2019年9月24日、ナンシー・ペロシ下院議長(当時)はトランプ大統領に対する正式な弾劾調査の開始を発表した。民主党は、トランプ氏の行為が憲法上の**「贈収賄」や「権力乱用」**にあたると主張した。
5.ホワイトハウスの対応と電話会談記録の公開: 当初、ホワイトハウスは電話会談記録の公開を拒否していたが、世論の圧力や議会の要求を受け、最終的に「未改訂の会話記録」として公表した。しかし、この記録は逐語録ではなく、シチュエーションルームの当直将校や国家安全保障会議のスタッフのメモや記憶をまとめたものとされている。
6.公聴会と証言: 下院の各委員会は、疑惑に関連する政府高官らを招致し、非公開および公開の公聴会で証言を求めた。これらの証言によって、トランプ政権がウクライナへの支援を保留し、バイデン親子への調査を求めていた状況が徐々に明らかになった。
論点と影響
・権力乱用の疑い: 民主党は、トランプ氏が大統領の権限を私的な政治的利益のために悪用したとして、権力乱用を弾劾の主要な根拠とした。
・贈収賄の疑い: 軍事支援を条件に調査を要求した行為は、贈収賄にあたる可能性も指摘された。
・選挙への介入: 外国政府に国内政治のライバルに関する調査を求めることは、選挙への不適切な介入であると批判された。
・共和党の擁護: 共和党は、トランプ氏の行為に違法性はなく、単にウクライナの汚職対策を促していたに過ぎない、あるいは民主党による**「魔女狩り」**であると主張した。
・弾劾手続きの結末: 下院はトランプ氏を弾劾訴追したが、共和党が多数を占める上院では罷免に必要な票数を得られず、トランプ氏は無罪となった。
このウクライナ疑惑は、トランプ氏が2020年の大統領選挙を控える中で、大統領の権限と倫理に関する大きな議論を巻き起こし、アメリカ政治に深い分断をもたらした。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
Why is it ‘particularly important’ to steer clear of disturbances and disruptions in China-US relations?: Global Times editorial GT 2025.06.07
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1335605.shtml
「米中近く閣僚級協議」中日新聞 2025.06.07
https://viewer-data.chunichi.co.jp/hv/index_viewer.html?pkg=jp.co.chunichi.viewer.pc&mcd=CHUNICHI_M1&npd=20250607&uid=1000220963&tkn=4edd9f0f654779a083bc10e6f44aff095ec22bd3&pn=3&chiiki=no
Remarks by President Obama and President Xi Jinping of the People's Republic of China Before Bilateral Meeting The White House 2013.06.07
https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2013/06/07/remarks-president-obama-and-president-xi-jinping-peoples-republic-china-
「This is a wonderful place, a place of sunshine, and it’s very close to the Pacific Ocean. And on the other side of the ocean is China. When I visited the United States last year, I stated that the vast Pacific Ocean has enough space for the two large countries of China and the United States. I still believe so.」
Highlights of Xi-Obama meeting in Washington DC during Xi's US trip CHINA DAILY 2015.09.26
https://www.chinadaily.com.cn/world/2015xivisitus/2015-09/26/content_21989654.htm?utm_source=chatgpt.com
「Xi: The Pacific Ocean is big enough to accommodate China and US. The common interests of the two countries way outnumber the differences. Obama: I don’t agree with "the Thucydides trap", and US and China should try their best to avoid conflict.」
2025年6月5日木曜日の夜、習近平中国国家主席は、ドナルド・トランプ米大統領の要請に応じて電話会談を行った。これは中国と米国の貿易摩擦が始まって以来、両国首脳による初の直接対話であり、中国・米国関係におけるもう一つの重要な節目となった。
この電話会談によって発せられた前向きなシグナルは、より建設的な中国・米国関係に対する国際的な期待を高めた。香港の『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』はこの電話会談を「待望のもの」とし、両国が「信頼構築と会談に向けた基本原則の確立」に一定の進展を見せたと報じた。また、米国の『フォーリン・ポリシー』誌は、双方の声明と会談要旨の全体的なトーンが概ね肯定的であり、米国側が「非常に良い電話会談だった」と評価したことを伝えている。
この会談において、習主席は「中米関係という巨大な船の航向を修正するには、舵を取り、正しい方向を設定する必要がある」と述べ、「様々な妨害や混乱を避けることが特に重要である」と強調した。この「特に」という語の強調は大きな注目を集めており、現在の中米関係に対する深い洞察を示すものであり、米国に対する善意ある忠告としても受け止められている。この発言は、極めて的を射たものであり、実際的な意義を持つと国際社会に認識されている。
中国と米国は世界二大経済大国であり、両国関係は世界で最も重要な二国間関係の一つである。この巨大な船が世界的な混乱の中でも安定して航行できるかどうかは、両国民の根本的利益のみならず、人類の未来にも関わる重大な問題である。
21世紀において、両国がどのように共存するかは、狭隘かつ近視眼的な視点ではなく、主要文明間の新たな交流モデルの模索として捉えるべきである。このようにして初めて、中米は「トゥキディデスの罠」に陥った国々とは異なる新たな航路を開くことができる。
近年、中米関係に前向きな動きがあるたびに、米国から様々な方向からの干渉や破壊行為が現れることが常態化している。たとえば、2025年5月にジュネーブで開催された中米経済貿易会議において、両国が共通認識に達し、実質的な進展を遂げたにもかかわらず、米国はその直後に対中ネガティブ措置を相次いで打ち出した。一部の米国関係者は中国を「悪意ある競争相手」と呼び、北京が合意を遵守していないと根拠なく非難した。
台湾問題に関しても、米国は一方で「一つの中国」原則を堅持し「台湾独立を支持しない」と繰り返し表明しているが、実際には台湾地域への武器売却を拡大しており、一部の米国当局者は分裂勢力に誤ったシグナルを送っている。また、国連総会決議2758号を歪曲しようとする試みも見られ、これらの行動は中米関係に非常に高いリスクをもたらしている。
国際関係における基本原則である相互尊重は、中米関係の前提条件でもある。いかなる国も、一方で中国を抑圧・封じ込めようとしながら、他方で良好な関係を構築できるという幻想を抱くべきではない。米国内にはいまだに「ゼロサムゲーム」的思考や冷戦的思考に固執する勢力が存在しており、この問題は根本的に改善されていない。彼らは国際関係を「敗者がいれば勝者がいる」ゲームとして捉えており、中国との対話も、緊張を管理したり相違を解消するためではなく、「米国の全面的勝利と中国の全面的敗北」を目指しており、極端な圧力をかけて中国を屈服させようとさえしている。
中米の高官間の対話では、戦略的認識が常に重要な議題となっており、「第一ボタンを正しくかける」必要性、すなわち平和を重んじ、安定を優先し、信義を重んじるという原則を守ることの重要性が強調されている。
事実として、中米両国は協力によって利益を得、対立によって損失を被るということが何度も証明されてきた。両国が対等な立場で対話を行えば、具体的な成果が生まれるが、中国に対する封じ込めや圧力はむしろ逆効果を招く。過去2か月間、NVIDIAのJensen HuangCEO、インベスコのワゴナー会長、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOなど、米国の主要企業トップが相次いで中国を訪問し、一部は「米国の半導体輸出規制はかえって中国の技術発展を加速させている」と述べ、中国側はそれを恐れていないと明言している。これら米産業界からの声は、米政府が真剣に耳を傾けるべきである。
中国と米国は、国際的責任、共通利益、協力分野が広大であり、健全かつ安定した中米関係は世界の平和と繁栄の礎である。両国の協力は国際社会共通の期待である。電話会談中、トランプ氏は「習主席を大変尊敬している」「米中が協力すれば素晴らしい成果を上げられる」「米国は合意の履行に向けて中国と協力する」「米国は中国人留学生が米国で学ぶことを歓迎する」と述べた。
米国が中国と「中間地点で会う」ことができるかどうかは、対中認識の修正と「さまざまな妨害や混乱」に屈しない姿勢にかかっている。それは中国だけでなく、国際社会全体が注視していることであり、米国が言行一致を保てるかどうかが問われている。
首脳外交は中米関係の方向性を定める基本的な指導力であり、羅針盤でもある。中国は引き続き、安定的、健全かつ持続可能な中米関係の維持に尽力する。米国にも同様に、自らの約束を誠実に履行し、ジュネーブでの合意を継続的に実施し、中国の発展を客観的かつ理性的に見つめ、実務的かつ建設的な交流を展開し、両国に利益をもたらし、世界の幸福に資する正しい中米関係の道をともに歩むことを望むものである。
【詳細】
1. 首脳間の電話会談という外交的節目
2025年6月5日(木)夜、中国の習近平国家主席は、アメリカのドナルド・トランプ大統領の要請に応じ、電話による首脳会談を行った。この会談は、中国と米国の間で深刻化していた貿易摩擦以降、両首脳による初の直接的な意思疎通であり、両国関係における重要な転機であった。このような首脳間の対話は、単なる儀礼ではなく、両国関係の方向性や緊張の緩和に直接的な影響を及ぼす「基軸」となる外交的行為である。
2. 国際社会の前向きな評価
この電話会談は、国際社会から「建設的な対話の兆し」として肯定的に受け止められた。香港の有力紙『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』は、今回の通話を「待望されていた」と報じ、両国が「信頼を築き、会談の基本原則を設定する」段階に達したと評価した。米国の外交専門誌『フォーリン・ポリシー』もまた、双方の公式発表のトーンが概ね前向きであり、トランプ政権側が「非常に良い会談だった」とコメントしたことを伝えている。
3. 習近平主席の「航向修正」の比喩
習主席は、両国関係を「巨大な船」に例え、「正しい航向を定め、しっかりと舵を取る」必要があると強調した。この比喩は、複雑かつ多層的な中米関係の性質を示しており、一度間違った方向へ進めば、軌道修正が極めて困難であることを意味する。習氏は特に、「様々な妨害や混乱を避けることが重要」と述べ、「特に(particularly)」という語を用いて強調した。この語の選択は、単なる一般的注意喚起ではなく、米国に対する明確なメッセージとして解釈され、外部からも注目された。
4. 中米関係の国際的重要性と人類的意義
中国と米国は、それぞれ世界第2位および第1位の経済大国であり、両国の関係は、単なる二国間の利害を超えて、地球規模での安定、経済成長、安全保障、気候変動対策といった多岐にわたる課題に直結する。従って、この関係が「巨大な船」として安定航行できるか否かは、両国民の利益にとどまらず、「人類全体の未来」にも関わる深刻な問題である。
5. 文明間対話としての中米関係モデル
21世紀における中米関係は、過去の大国間競争(例:米ソ冷戦)と同様の枠組みで理解すべきではない。むしろ、それは異なる歴史的・文化的背景を持つ「主要文明」間の新たな交流モデルを模索する試みであるべきである。習主席の言葉は、軍事的・経済的対立を前提とするのではなく、協力と共存を前提とした全く新しい国際関係の在り方を提唱するものである。このようにすれば、「トゥキディデスの罠」(既存の覇権国と新興国が不可避的に戦争に至るとする歴史理論)を回避し得るとされる。
6. 「妨害」の常態化とその例
しかしながら、近年の実態として、両国が関係改善へ向けて前進するたびに、米国側から様々な妨害や破壊的措置が取られるという「パターン」が固定化している。具体例として、2025年5月のジュネーブにおける経済・貿易会議においては、両国が一定の合意に達し、実質的進展を見せた直後に、米国が中国に対する新たな制裁や否定的声明を発表した。加えて、一部の米国政治家は中国を「悪意ある競争相手」と非難し、北京が合意を破ったとする根拠のない主張を展開した。
7. 台湾問題における矛盾と危険性
台湾に関しては、米国は表向きには「一つの中国」政策を支持し、「台湾独立を支持しない」と公言しているものの、実際には台湾への武器売却を続けており、一部当局者が台湾独立を志向する勢力に対して誤ったシグナルを送っている。また、国連総会決議2758号(1971年に中華人民共和国を国連の正統な代表と認定した決議)の解釈を故意に歪曲しようとする動きも見られ、こうした行為は中米関係に深刻な危機をもたらすリスクを孕んでいる。
8. 相互尊重と米国の「二重基準」への警告
国際関係の根本原則は「相互尊重」であり、これは中米関係においても不可欠である。中国側は、「一方で中国を封じ込めつつ、他方で関係改善を図る」といった米国の二重基準的態度を強く批判している。米国内の一部勢力は、冷戦時代の「ゼロサムゲーム」的発想に固執し、「自国の全面的勝利=他国の全面的敗北」という思考に基づいて行動している。このような戦略認識は、過去数年間の中米高官間の会談でも常に議題となってきた問題である。
9. 協力の利益と対立の損失
歴史的事実として、中米は協力によって共に利益を得ることができ、対立によって共に損失を被るという現実が何度も示されてきた。対等な立場で対話を重ねれば、具体的成果が上がるが、圧力や封じ込めを通じて一方的に譲歩を迫るような手法は、逆効果であり、関係悪化を招くだけである。
10. 米産業界からの懸念と提言
近年、米国の主要企業の経営者たちが相次いで中国を訪問している。たとえば、NVIDIAのJensen HuangCEO、インベスコのワゴナー会長、JPモルガン・チェースのダイモンCEOらである。彼らの中には、米国による半導体の輸出規制が、むしろ中国の技術発展を加速させる結果となっており、中国側はこれを脅威とみなしていないと明言する者もいた。こうした意見は、経済現場からの「現実的な声」として、ワシントンが真摯に受け止めるべきであるとされている。
11. 国際社会の期待と米国の対応への注視
中米両国には、地球規模の責任、多様な共通利益、広範な協力領域が存在している。両国の健全かつ安定的な関係は、世界の平和と繁栄の「礎」となっており、これは国際社会全体の共通した期待である。電話会談の中で、トランプ氏は「習主席に対する深い敬意」「米中が協力すれば多くの偉業を達成できる」「合意履行に向け中国と協力する」「中国人留学生の米国留学を歓迎する」といった発言を行った。
12. 総括
言行一致と正しい航路の共有
中国側は、米国が中国と「中間地点で会う」意志を示すかどうかを、米国の対中認識の修正と、国内外からの妨害に動じない態度にかかっていると見ている。この問題は、両国のみならず国際社会全体が注視しており、米国が発言と行動を一致させられるかが問われている。首脳外交は中米関係の基本的な方向性を定める「羅針盤」であり、中国は安定的で健全かつ持続可能な中米関係の維持に尽力する姿勢を明確にしている。中国は、米国にも同様の誠意と理性、実務的姿勢を持って共に前進することを強く求めている。
【要点】
全体の主張
・中米関係は世界にとって最も重要な二国間関係の一つであり、その安定は人類全体の利益に直結する。
・習近平主席の発言「特に妨害や混乱を避けることが重要」は、現在の中米関係の実態に即した、強く具体的な警告である。
・中米首脳会談は、両国関係の航向を定める「羅針盤」としての役割を持ち、戦略的指導力の発露とされる。
会談の意義と国際社会の反応
・2025年6月5日、習近平主席とトランプ大統領が電話会談を実施。これは貿易摩擦以降、初の直接対話である。
・国際メディア(例:サウスチャイナ・モーニング・ポスト、フォーリン・ポリシー)は、会談を肯定的に評価し、両国が信頼構築に進みつつあるとの見方を示した。
・トランプ氏の発言も前向きであり、協力への意欲や中国人留学生の受け入れ姿勢を明言した。
「特に妨害を避けるべき」との強調の意味
・習主席の発言中の「特に(particularly)」という表現は、単なる一般論ではなく、現在の米国による妨害行為に対する明確な牽制である。
・この表現は国際社会でも注目され、中国から米国への「実務的警告」として機能している。
中米関係の地政学的・文明的意義
・中米は世界第1・第2の経済大国であり、その関係の安定は世界経済と安全保障の要である。
・両国の共存は文明間の新たな相互作用のモデルと位置づけられ、単なる覇権争いの文脈で論じるべきではない。
・「トゥキディデスの罠」に陥らないためには、新たな文明間関係モデルの構築が不可欠である。
妨害の「パターン化」とその具体例
・米国では、中米関係が前向きに進展するたびに、国内外からの妨害が発生するという「構造」が定着している。
・例として、2025年5月のジュネーブ経済会談後、米国が制裁や否定的言動を繰り返した。
・一部米国政治家は、中国を「悪意ある競争相手」と非難し、合意違反を根拠なく主張した。
台湾問題をめぐる米国の矛盾行動
・米国は「一つの中国」政策を支持すると表明しつつ、台湾への武器売却を継続している。
・米高官が台湾独立派に誤ったシグナルを送っており、これは中米関係を不安定化させる要因となっている。
・国連総会決議2758号を歪曲しようとする試みもあり、中国はこれを極めて危険視している。
米国の「ゼロサム」思考への批判
・中国は、「抑圧と協力の両立は不可能」と主張し、米国が冷戦的思考に固執していることを問題視している。
・米国の一部勢力は「自国の全面的勝利=中国の敗北」を求めており、これが対話の障害となっている。
・「戦略的認識の誤差」が、首脳級会談で常に問題として提起されている。
協力の成果と対立の代償
・歴史的に見ても、中米は協力によって利益を得、対立によって損失を被ってきた。
・平等な立場での対話は成果を生み出すが、圧力や封じ込め政策は逆効果である。
米産業界の現実的視点
・NVIDIA、JPモルガン、インベスコなどの米国大手企業のCEOらが中国を訪問し、対中規制の逆効果を指摘。
・半導体輸出規制が中国の技術発展を促進しているとの見解も表明されている。
これら産業界の声は、米国政府が真摯に受け止めるべき現実的警鐘である。
国際社会の期待と米国の対応
・国際社会は、中米関係の安定と協力を共通の期待として持っている。
・習近平・トランプ両首脳の対話は、その期待に対する重要なステップである。
・米国が「妨害に屈せず」、中国と中間地点で誠意を持って協力できるかが問われている。
総括
・中米関係の正しい航路とは
☞首脳外交は両国関係の方向性を定める羅針盤である。
☞中国は、安定的・健全で持続可能な関係構築に引き続き尽力する姿勢を強調。
☞米国にも、言行一致を図り、ジュネーブ合意の履行、中国の発展を客観的に捉える冷静さ、建設的対話を通じて「正しい道」を共に歩むことが期待されている。
【桃源寸評】🌍
中米関係の現状認識と、それに対する中国側の戦略的視座を詳細に伝えており、特に「妨害の排除」が関係改善の前提条件であるとの認識を繰り返し強調している。
5月のスイス・ジュネーブで高官協議後、関税以外の規制撤廃するとともに、新たな枠組みを設けて貿易協議を続けていくことで合意した。しかし、レアアース輸出は滞り、「米国をはじめ、世界の自動星産に影響が出始めている。トランプ氏は交流サイ卜(S N S)で『中国は米との合意を完全に破った』と批判。米メディアによると、米国は報復として、中国国産旅客機向けエンジン輸出を停止するなど、ハイテク製品に対する対中規制を強化していた」と。(中日06.07)
しかし、GTの此れまでの報道から観る限り、米国側に非がある。今次もGTは繰り返し述べている。
米国は恐らく、中国の言うことに聞く耳を持たず、理解する能力をも欠くだろう。
以下、論ずる。
1.米国は「協調」を語りながら「対決」を実行する二面性外交を取っている
・社説が繰り返し非難しているのは、米国の態度の不整合性である。
・対話・信頼・協力を表向きに唱えながら、その直後に敵対的措置を講じるという「裏切りの構図」は繰り返されている。
・社説ではこれを「パターン」と明言しており、一時的な偶発的現象ではなく、米外交戦略に組み込まれた行動様式であると見ている。
2.具体的な米国の裏切り行為:スイス・ジュネーブ協議後の行動
・協議直後の矛盾する措置(裏切りの典型例)
・協議内容:2025年5月、スイス・ジュネーブにおいて、中米高官による経済貿易協議が行われ、「共通認識」「信頼構築の一歩」として国際的に報じられた。
➢米国の行動:協議後、短期間のうちに以下の措置を講じた。
⇨ 中国企業に対する制裁措置の強化
⇨ 「中国は協議を破った」とするトランプ氏のSNS発言
⇨ 中国を「悪意ある競争相手」とする米政府関係者の発言
⇨ 協議によって得られた信頼を、米国自ら破壊した構図であり、「交渉に応じつつ同時に敵視する」というダブルスタンダードが明白である。
3.台湾問題における「表の約束」と「裏の行動」の乖離
➢表向きの表明:「一つの中国」原則の支持を表明
⇨ 実際の行動:台湾への先端兵器売却を継続・拡大(例:戦闘機、ミサイル、AIドローン)
➢表向きの表明:「台湾独立を支持しない」との誓約
⇨ 実際の行動:台湾高官との非公式接触、議会訪問団の派遣
➢表向きの表明:UNGA決議2758の遵守を口にする
⇨ 実際の行動:決議の解釈変更を試み、「台湾代表権」の問題を蒸し返す発言を一部米高官が行う
これらは、中国の主権と核心利益に対する重大な干渉であり、「公に約束し、私に反する」行動の典型とされる。
4.米国内政・軍産複合体による「対中敵視」推進構造
・社説は、米国の一部勢力(特に議会、軍産複合体、特定メディア)が、中国敵視によって政治的利益を得る構造を形成していると指摘する。
・その結果として、政府の外交表明と実際の政策執行の間に乖離が生じ、交渉相手としての信頼性が大きく損なわれている。
5.中米関係における「戦略的誤認」と「冷戦思考」への警告
・社説では、米国の一部対中戦略は依然として「冷戦的ゼロサム思考」に基づいており、次のような誤った信念を持っていると指摘されている:
➢米国の優位を保つには、中国の成長を抑制するしかない。
➢協調的共存は不可能であり、「勝つか負けるか」しかない。
このような考え方は、対話の可能性を閉ざし、中国に対する不信と敵意を制度化する原因となっている。
6.企業界の反応:米国の政策が自国産業に逆効果をもたらしている
・NVIDIA、Invesco、JPモルガンなど、米国の大手企業幹部が続々と訪中し、以下のような発言を行っている:
➢「米国の輸出規制は中国の半導体自立を加速している」
➢「中国市場は極めて重要。政治による断絶は経済的損失である」
このような産業界の声を無視し、あくまで政治的対決を優先する米国の対応は、自国利益すら損ねる「非合理な敵対」であるとされている。
7.総括
・米国に対する根源的批判
➢協議に応じては敵対措置を講じるという「裏切りの習慣」は、米国の外交の根本的問題である。
➢信頼関係を構築するには、言行一致・整合性・尊重の原則が必要不可欠である。
中国側は「理にかなった冷静な対応」を維持している一方で、米国が現在のように「表裏ある」交渉を続ける限り、真の相互理解は困難であると示唆している。
故に、高官協議は続けても、習近平氏とトランプとの直接会談(特にワシントンでは)は避けるべきであると考える。
以下論ずる。
すなわち「高官レベルでの協議は継続しても、首脳会談(特にワシントンでの開催)は避けるべき」とする立場は、『環球時報(Global Times)』の社説における中国側の慎重姿勢や現実的懸念とも整合するものであり、以下の観点から理に適っていると考える。
1. 米国の「信頼に足るパートナーとしての一貫性の欠如」
・社説では、米国が「対話と対決」を並行させる二重外交を常に行っていると繰り返し非難している。
・実際、過去の高官会談や首脳会談(例:アラスカ会談、バリ会談、サンフランシスコ会談)後に、米国側から敵対的措置(制裁、技術輸出規制、台湾関係強化など)が必ずと言ってよいほど続いている。
・そのため、習近平氏がワシントンを訪れ、トランプ氏と会談するという外交的ジェスチャーを行うこと自体が、米国に「外交的勝利」として利用されかねない。
2. 首脳会談には象徴的意味と「信頼保証」の重みがある
・国家元首同士の会談は、「国として信頼を預ける」レベルの重要な外交行為である。
・にもかかわらず、会談後に裏切るような対応を米国が繰り返してきたことから、そのような「象徴的な信義の交換」は現段階で行うべきでないとする懸念は極めて妥当である。
・特にワシントンでの会談は、米国の内政的・選挙戦略的演出に利用されるリスクが高く、外交的バランスを欠く可能性がある。
3. 高官レベルの協議には「検証と管理」の余地がある
・高官協議(例:国務次官級、商務次官級など)は、技術的・政策的論点に限定しやすく、合意履行の監視や反証が可能である。
・したがって、「信頼に足るかどうかを試す場」としては、首脳会談よりも高官協議の方が合理的な外交チャネルである。
・社説でも、「まずは戦略的認識の一致」「妨害と干渉の回避」が重要とされており、形式的成果よりも基礎信頼の再構築を優先している。
4. トランプ氏の発言と行動の不安定さへの懸念
・トランプ氏は、2025年現在においてもSNSなどを通じて感情的・攻撃的な発言を繰り返しており、外交儀礼や会談内容にすら即反する発言を公然と行っている。
・このような人物と首脳会談を行っても、成果を得るどころか、発言が即座に反故にされるリスクすらある。
・社説が指摘する「米国国内の干渉勢力」「合意後の破棄の常態化」を鑑みれば、会談による期待値の高さがむしろ中国の外交的損失をもたらす可能性がある。
5. 国際社会への誤ったメッセージを避けるため
・中国首脳があえて米国に赴くことで、「中米関係は健全に回復中である」という誤認を国際社会に与えかねない。
・実際には、根本的な対立や米国の敵視政策は継続しており、虚偽の「正常化演出」は中国にとって逆効果となる。
・よって、「真の改善が進まぬ限り、象徴的イベントには加わらない」という明確な立場を取ることが、戦略的には正しい選択となる。
総括
したがって、「高官レベルの接触・協議は実利と監視可能性の点で有効だが、現段階での習近平氏とトランプ氏の対面会談(特に米国側主催)は時期尚早かつリスクが高い」という判断は、中国の戦略的利益、外交的論理、過去の経験に照らしても極めて合理的である。特に現在のように信頼が根底から揺らいでいる状況では、対話の形式よりも内容と整合性こそが問われる段階であり、形式的な首脳会談は慎重に扱うべきである。
更に侮辱的なゼレンスキー大統領との件もあり、非常に危惧するのである。
.「ゼレンスキー大統領との件」が示すように、米国(とりわけトランプ氏)における首脳外交の扱い方には、相手国を侮辱または矮小化するような姿勢が散見され、極めて憂慮すべきである。この点は、習近平主席のような国家的権威を備えた指導者との会談において、外交的損失や国際的誤解を招く重大なリスクとなる。
以下に、そのような懸念を裏付ける点を箇条書きで示す。
・ゼレンスキー大統領との件に見られた「外交的侮辱」の実例
・トランプ氏はウクライナ問題において、ゼレンスキー大統領に対し軍事支援の条件として「個人的利益に資する調査を要求」し、世界的非難を浴びた(2019年の「ウクライナ疑惑」)。
・ゼレンスキー大統領を「弱腰の操り人形」や「感謝を知らぬ小国の代表」と扱うような発言も記録されている。
・会談の内容を政治的に利用し、相手国の立場を貶める態度は、主権国家同士の対等原則に反する侮辱的行為である。
この事例から見えるリスクと教訓
・トランプ氏は会談の場を「自国世論へのアピール」や「自己顕示の道具」として用いる傾向が強く、外交的誠実さを欠いている。
・中国のように国家としての威信と国格を重視する国にとって、こうした軽薄な言動は容認しがたく、会談そのものが中国側に損失をもたらす可能性がある。
・その場では友好的態度を装いながら、SNSや選挙演説で直後に矛盾する非難を繰り返すという「二枚舌」外交は、信頼構築を著しく損ねる。
特にワシントンでの会談は危険
・トランプ氏の政治的拠点たるワシントンD.C.での会談は、米国メディアや保守層への「政治ショー」として演出される恐れがある。
・報道やSNSにおいて、中国側が「頭を下げてやって来た」と印象操作されるリスクも否定できない。
・対等な外交を求める中国にとって、そうした舞台での会談は屈辱的演出に利用される可能性が高く、極めて危険である。
中国として取るべき対応
・高官レベルの協議や事務次官級の実務的対話は続けるべきであるが、国家元首会談は「実質的信頼」が蓄積されるまで凍結すべきである。
・特に、相手が過去に他国首脳を公然と侮辱し、協議内容を自身の政治資本に利用するような人物である場合、首脳会談を行うべきではない。
・中国の国家的威信を守るためにも、「信頼なき象徴的首脳会談」は厳に慎むべき外交行動である。
総括
「ゼレンスキー大統領との件」は、トランプ氏の外交姿勢が自国中心主義・場当たり的・非礼かつ侮辱的であることを如実に示したものであり、その教訓を無視してはならない。習近平主席のような国家指導者が同じ目に遭うことを防ぐためにも、安易な首脳会談の開催は回避すべきであり、信頼回復こそが最優先事項である。
2025年2月28日、トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領はホワイトハウスで会談を行ったが、予定されていた重要鉱物資源に関する協定の署名には至らず、会談は決裂した。両首脳は、ウクライナの鉱物資源に関する協定や停戦協定を巡る具体的な政策の議論の中で対立したというよりも、お互いに積み重ねてきた不満がこの場で一気に噴き出し、激しい感情的な対立が会談の決裂につながった感が強い。
ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領がロシア寄りの立場で停戦合意をまとめようとしていることに強い不満を持ってきた。さらに、ロシアとウクライナとの間の協定を、過去にロシアのプーチン大統領が何度も破ったことを指摘し、仮に停戦合意が成立しても、プーチン大統領がそれを破棄し、再びウクライナ侵攻を進めるリスクを強く警戒している。
一方、トランプ大統領は、米国の支援がなければウクライナは戦争を継続することができないにもかかわらず、ゼレンスキー大統領が当然のことのように米国に支援を求めてきたことに、「米国への感謝がない」との強い不満を持つ。しかも戦争が起こっているのは欧州であり、米国に対する直接的なリスクはない中である。
このような背景から、トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談が決裂したことを受けて、早期の停戦合意はより難しくなったと考えられる。いかにトランプ大統領とプーチン大統領が停戦合意の枠組みで合意しても、ゼレンスキー大統領がそれを受け入れないならば、停戦は実現しない。
その後、ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領が「真の問題解決のため」に自身を再び招待すれば会談する用意があるとし、先週末に署名に至らなかった鉱物資源取引を受け入れる用意があると述べた。
また、ゼレンスキー大統領は、「前向きな動きがあり、来週、最初の結果が出ることを期待している」と述べ、アメリカとの協力関係の前進を示唆し、トランプ大統領との再会談につながると期待されている。
このように、両首脳の関係は一時的に悪化したものの、再会談に向けた動きが進んでおり、今後の展開が注目される。
さて、オバマ前大統領さえも、習近平氏の大平洋は米中にとって十分に広い、というな発言を無視している
習近平国家主席が2013年6月の米中首脳会談で提唱した「太平洋は米中両国にとって十分に広い」という発言は、米中が共存・協力できるという中国側の戦略的メッセージであった。しかし、当時のオバマ政権はこの提案に対し、公式な支持や明確な反応を示さなかった。
同会談では、オバマ大統領が南シナ海や東シナ海における中国の行動、特に人工島建設に対する懸念を表明し、習主席はこれに対し「南シナ海の島嶼は中国の領土であり、合法的な権益を有する」と主張している。
このように、オバマ政権は中国の提案に対して明確な支持を示さず、むしろ中国の海洋進出に対する懸念を強調した。この対応は、米国が中国の提案を受け入れる意志が乏しいことを示唆しており、米中間の戦略的信頼の欠如を浮き彫りにしている。
この背景には、米国がアジア太平洋地域での影響力を維持し、中国の台頭を警戒する姿勢があると考えられる。そのため、習主席の提案は米国にとって受け入れがたいものであり、結果として無視された形となった。
2019年の「ウクライナ疑惑」
2019年にドナルド・トランプ氏が関与した「ウクライナ疑惑」は、ウクライナへの軍事支援を条件に、自身の政敵であるジョー・バイデン氏(当時、2020年大統領選挙の民主党有力候補)とその息子ハンター氏に関する調査をウクライナ政府に要求したとされる問題である。この疑惑は、トランプ氏の権力乱用にあたるとして、米下院での弾劾調査に発展した。
ウクライナ疑惑の概要
1.発端: 2019年7月25日、トランプ大統領はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談を行った。この会談で、トランプ氏はゼレンスキー大統領に対し、バイデン親子に関する「汚職調査」を開始するよう繰り返し促したとされる。具体的には、ハンター・バイデン氏が役員を務めていたウクライナのガス会社「ブリスマ」に対する捜査や、ジョー・バイデン氏が副大統領時代にウクライナの検事総長解任を要求したとされる疑惑に言及した。 1
2.軍事支援の「条件」: この電話会談の数週間前から、トランプ政権は議会が承認したウクライナへの約4億ドルの軍事援助を凍結していた。疑惑は、トランプ氏がこの軍事援助を、バイデン親子への調査開始という条件と引き換えに利用しようとしたというものであった。これは、トランプ氏が自身の政治的利益のために国の外交政策を利用した権力乱用にあたるのではないかと指摘された。
3.内部告発と発覚: この疑惑は、匿名の情報機関職員による内部告発によって明るみに出た。告発内容は、トランプ大統領が職権を乱用し、2020年の大統領選挙に有利な情報を得るために外国政府に不適切な圧力をかけたというものであった。
4.弾劾調査の開始: 内部告発を受け、2019年9月24日、ナンシー・ペロシ下院議長(当時)はトランプ大統領に対する正式な弾劾調査の開始を発表した。民主党は、トランプ氏の行為が憲法上の**「贈収賄」や「権力乱用」**にあたると主張した。
5.ホワイトハウスの対応と電話会談記録の公開: 当初、ホワイトハウスは電話会談記録の公開を拒否していたが、世論の圧力や議会の要求を受け、最終的に「未改訂の会話記録」として公表した。しかし、この記録は逐語録ではなく、シチュエーションルームの当直将校や国家安全保障会議のスタッフのメモや記憶をまとめたものとされている。
6.公聴会と証言: 下院の各委員会は、疑惑に関連する政府高官らを招致し、非公開および公開の公聴会で証言を求めた。これらの証言によって、トランプ政権がウクライナへの支援を保留し、バイデン親子への調査を求めていた状況が徐々に明らかになった。
論点と影響
・権力乱用の疑い: 民主党は、トランプ氏が大統領の権限を私的な政治的利益のために悪用したとして、権力乱用を弾劾の主要な根拠とした。
・贈収賄の疑い: 軍事支援を条件に調査を要求した行為は、贈収賄にあたる可能性も指摘された。
・選挙への介入: 外国政府に国内政治のライバルに関する調査を求めることは、選挙への不適切な介入であると批判された。
・共和党の擁護: 共和党は、トランプ氏の行為に違法性はなく、単にウクライナの汚職対策を促していたに過ぎない、あるいは民主党による**「魔女狩り」**であると主張した。
・弾劾手続きの結末: 下院はトランプ氏を弾劾訴追したが、共和党が多数を占める上院では罷免に必要な票数を得られず、トランプ氏は無罪となった。
このウクライナ疑惑は、トランプ氏が2020年の大統領選挙を控える中で、大統領の権限と倫理に関する大きな議論を巻き起こし、アメリカ政治に深い分断をもたらした。
【寸評 完】🌺
【引用・参照・底本】
Why is it ‘particularly important’ to steer clear of disturbances and disruptions in China-US relations?: Global Times editorial GT 2025.06.07
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1335605.shtml
「米中近く閣僚級協議」中日新聞 2025.06.07
https://viewer-data.chunichi.co.jp/hv/index_viewer.html?pkg=jp.co.chunichi.viewer.pc&mcd=CHUNICHI_M1&npd=20250607&uid=1000220963&tkn=4edd9f0f654779a083bc10e6f44aff095ec22bd3&pn=3&chiiki=no
Remarks by President Obama and President Xi Jinping of the People's Republic of China Before Bilateral Meeting The White House 2013.06.07
https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2013/06/07/remarks-president-obama-and-president-xi-jinping-peoples-republic-china-
「This is a wonderful place, a place of sunshine, and it’s very close to the Pacific Ocean. And on the other side of the ocean is China. When I visited the United States last year, I stated that the vast Pacific Ocean has enough space for the two large countries of China and the United States. I still believe so.」
Highlights of Xi-Obama meeting in Washington DC during Xi's US trip CHINA DAILY 2015.09.26
https://www.chinadaily.com.cn/world/2015xivisitus/2015-09/26/content_21989654.htm?utm_source=chatgpt.com
「Xi: The Pacific Ocean is big enough to accommodate China and US. The common interests of the two countries way outnumber the differences. Obama: I don’t agree with "the Thucydides trap", and US and China should try their best to avoid conflict.」