【桃源閑話】アレナ・F・ドゥハン報告書(2022.07.15)2024-10-20 19:44

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【桃源閑話】アレナ・F・ドゥハン報告書(2022.07.15)

【概要】

 国連人権理事会の第51回セッションに提出された報告書で、特別報告者であるアレナ・F・ドゥハンが、単独制裁が人権に与える負の影響についてまとめたものである。

 概要

 報告書では、特別報告者が「二次制裁」の概要と評価を行っている。二次制裁は、特定の国や個人に対して初めての制裁が科される際に、他国に対しても制裁を課すものであり、その目的は初期制裁を強化することにある。特別報告者は、二次制裁や国内の執行措置、その他の要因が相まって、単独制裁の過剰遵守が広がっている状況を指摘している。この過剰遵守は、初期制裁の直接の対象ではない個人や全体の人々にも影響を及ぼし、その結果として人権が深刻に侵害されている。

 報告書は、これらの慣行の性質、法的妥当性、影響を受けるさまざまな権利についても考察し、発生する人権侵害を軽減するための提言を行っている。

 I.はじめに

 報告書は、国連人権理事会の決議27/21および45/5、及び総会決議74/154に基づき提出されたもので、単独の強制的措置が人権享有に及ぼす負の影響に関する情報収集、トレンド、発展、課題の分析が求められている。特別報告者は、単独制裁が国際法において法的に疑わしいにもかかわらず増加していることを指摘し、二次制裁の導入と民事および刑事罰の適用が進んでいることを強調している。

 これにより、単独制裁が課されている国やセクター、エンティティに対する合法なやり取りでさえも、実施者が違反のリスクを恐れているために抑制される結果を招いている。これは、第三国における過剰遵守も含めて、単独制裁の影響を拡大させている。

 II.特別報告者の活動

 特別報告者は、単独制裁が人権に与える影響や、国連における人権に関する状況を広めるために、メディアインタビューやテーマ別会議、ウェビナーに参加してきた。特に、ジンバブエ(2021年10月)とイラン(2022年5月)への訪問を通じて、単独制裁の影響を評価し、政府関係者や市民社会のグループとの会合を行った。

 また、特別報告者は、単独制裁が人権に与える影響に関する研究プラットフォームを開発し、さまざまな関係者とコミュニケーションを取り、過剰遵守や人道支援へのアクセスに関する問題に取り組んでいる。

 報告書は、二次制裁や過剰遵守が引き起こす人権侵害の深刻さを浮き彫りにし、これに対する具体的な対応策を提言することで、単独制裁がもたらす人権への悪影響を軽減する重要性を強調している。

 III. セカンダリー制裁と単独制裁への過剰適合

 A. 定義と一般的な説明

 1.セカンダリー制裁の概要

 ・一国の単独制裁を補強する手段として広がっている。
 ・対象国や特定の経済セクター、外国企業、個人に対して適用される。
 ・制裁対象との協力や関与を理由に、他国の企業や個人も制裁の対象となる。

 2.影響

 ・セカンダリー制裁を受けた企業は、制裁国でのビジネスを禁じられることがある。
 ・制裁国の金融市場や通貨での取引が制限されることもある。
 ・セカンダリー制裁により、医薬品や医療機器の供給に支障が出ることがある。

 3.法的懸念

 ・セカンダリー制裁の国際法上の合法性は疑問視される。
 ・他国の主権を侵害する可能性があり、国際貿易法とも対立する。

 4.人権への影響

 ・セカンダリー制裁の対象者は、法的手続きを受けずに権利が侵害される。
 ・制裁の影響で医療や健康の権利が損なわれることがある。

 5.過剰適合の現象

 ・過剰適合は、制裁以上の制限を自己規制として実施することを指す。
 ・企業や金融機関がリスク回避のために、合法的な取引を控える傾向がある。

 B. 過剰適合のタイプ

 1.全ての取引停止

 ・制裁対象国や個人とのすべての取引を停止する事例が多い。
 ・例として、スウェーデンの企業がイランへの医療用品の輸出を停止したことが挙げられる。
 
 2.金融セクターの過剰適合

 ・銀行は、承認された取引を拒否することや、過剰な書類要求を行うことがある。
 ・セカンダリー制裁を恐れるため、銀行が非対象者の口座を閉鎖することもある。

 3.企業による過剰適合

 ・企業が合法的な取引を避けることが増加。
 ・人道的な免除がある場合でも、過剰適合が影響を及ぼす。

 4.国際機関への影響

 ・国家や国際機関も過剰適合を行い、必要なサービスや商品が提供されない場合がある。

 このように、セカンダリー制裁や過剰適合は国際的なビジネスや人権に深刻な影響を与えることが示されている。

 C.域外管轄権と執⾏

 国連特別報告者は、米国による一方的な制裁の域外管轄権とその執行に関して懸念を表明している。特に、米国が自国内だけでなく国外でも制裁を執行する際の法的原則が明確ではない点に問題があると指摘している。学者の一人は、米国の制裁法における最近の事例で、従来の管轄権の原則を超えて拡大解釈する傾向が見られることを懸念している。

 米国が制裁違反に対して法的権限を主張する根拠として、次の二つの状況が挙げられている。

 1.米国内の仲介者が関与する場合

 ・米国の制裁対象となった相手国と外国との取引が、米国に物理的に存在する仲介者(例えば、米国内の銀行)を介して行われる場合。

 2.米国の金融システムが関与する場合

 ・制裁対象となった相手国と外国との取引が、米国が管理するシステムやプロセス(例えば、米ドル建ての取引が米国の金融システムで決済される場合)を介して行われる場合。

 一部の国もまた、域外での制裁執行を可能にしている例がある。例えば、1940年代に始まったアラブ連盟のイスラエルに対するボイコットでは、第三国の企業がイスラエルとの取引を行う場合に、その企業をブラックリストに載せることが許されている。このボイコットも米国は制裁とみなしているが、現在のところ、域外での制裁執行を積極的に行っているのは米国のみである。

 米国による制裁の罰則を恐れることが、外国企業が過剰に制裁に従う大きな要因となっている。2018年に米国がイランに対する制裁を再度発動した際、フランスの議員は、米国に経済的・商業的利益を持つ全てのヨーロッパの企業が、制裁対象でない商品を取り扱っている企業も含め、イランから撤退したと述べている。

 以下に、特別報告者が指摘する過剰遵守の理由とその結果について、説明する。

 D. 過剰遵守の理由

 1.デリスキングポリシーの影響

 ・デリスキングポリシーは、特に金融セクターにおいて、単独制裁に対する過剰遵守を引き起こす。
 ・企業は、制裁だけでなく、マネーロンダリングやテロ資金供与防止のためのその他の規制にも遵守する必要がある。
 ・リスクを正確に評価するためのデューデリジェンスは労力がかかり、高コストである。
 ・不十分なリスク管理に対する法的・ビジネス上の罰則が厳しいため、過剰に慎重になりがち。

 2.複雑で不明確な制裁制度

 ・制裁制度の複雑さや不明確さが過剰遵守を促進する要因。
 ・制裁が迅速に作成されることで、詳細な規定が欠如することがある。
 ・制裁の変更頻度も過剰遵守を促進する。

 3.管轄外の執行

 ・アメリカ合衆国による管轄外の制裁執行や厳しい罰則、執行措置に対する恐怖が過剰遵守を助長する。
 ・罰則には、重要な市場や金融システムからの排除が含まれる。

 4.デューデリジェンスのコスト

 ・企業は人権デューデリジェンスを実施する責任があるが、そのコストが高くつく場合がある。
 ・違反した場合のコストが高いため、企業は過剰遵守を選ぶ傾向がある。

 5.制裁の厳しさの違い

 ・同じ国や主体に対する異なる制裁制度の違いが過剰遵守を生む。

 E. 過剰遵守の人権への影響

 1.権利への影響範囲

 ・過剰遵守は、全ての種類の単独制裁において発生し、時には包括的制裁と同等の影響を及ぼす。
 ・対象国の人々の人権が深刻に侵害される。

 2.具体的なケース

 ・シリアでは、国に対する制裁が個人や企業への制裁と同様の影響を及ぼす。
 ・ザンビアでは、過剰遵守が健康、食料、水、教育、雇用のアクセスを損ない、開発の権利を阻害している。

 3.NGOの活動への影響

 過剰遵守が人道援助に携わるNGOの活動を妨げ、支援物資の供給が困難になっている。
 ・例として、イランにおける洪水後の援助が銀行サービスの拒否により妨げられた。

 4.国家の国際的義務への影響

 ・国家は国際的な人権保護義務や国内法義務を果たすことが困難になる。
 ・特に、外国の銀行が年金の送金を拒否することで、ベラルーシの国民の権利が侵害されている。

 5.国際組織の活動への影響

 ・国連の人道的、開発的な活動が銀行の過剰遵守によって妨げられている。
 ・国連のスタッフへの支払いが滞るケースもある。

 F. 過剰遵守の範囲

 1.過剰遵守の測定の難しさ

 ・企業ごとにポリシーや実践が異なり、一般的には秘密にされることが多いため、過剰遵守の測定が難しい。

 2.グローバルな現象

 ・過剰遵守は全世界的な現象であり、特に金融セクターで顕著である。

 3.人権への影響

 ・過剰遵守が人権に与える悪影響は、単独制裁そのものの影響を上回る可能性がある。

 4.具体的な影響の事例

 ・イランの研究者や科学者が国際的な競技や会議から排除され、技術や知識の移転が妨げられている。
 ・学術出版社が二次制裁を恐れ、イランの研究を公表することを拒む事例も存在する。

 以下は、過剰遵守に対する対策に関する内容を説明したものである。

 IV. 過剰遵守への対策

 A. 制裁国による行動

 1.国際法の義務

 ・国家は国内の人権保護に加え、国際経済社会文化権規約に基づき、自国の企業が国外で人権侵害を引き起こさないようにする義務がある。
 ・国際慣習法は、国家が自国の領土を他国に対する損害を引き起こすために使用することを禁止している。

 2.企業への指針

 ・一部の国々は、自国の企業がビジネスと人権に関する指導原則に従うことを求める取り組みを進めているが、現状では不十分で効果的でないと認識されている。

 3.スウェーデンの提案:

 ・スウェーデンでは、公共管理庁が2018年に企業に対する人権デューデリジェンスを法的義務とする立法を提案したが、進展は非常に限られている。

 4.EUの指令提案

 ・2022年初頭、EU委員会は企業の人権デューデリジェンスに関する国ごとの規則を設けることを求める指令を提案したが、過剰遵守に関連する人権問題には対応していない。

 5.人道的免除に対する取り組み

 ・一部の制裁国は、人道的免除に関する商品の過剰遵守を最小限に抑える努力を行っているが、その効果はほぼ存在しない。

 6.過剰遵守の要因

 ・制裁制度の複雑さ、規定のあいまいさ、厳しい執行措置、二次制裁の脅威が過剰遵守の主要因として機能している。

 7.米国の意図

 ・米国が制裁を意図的に不明確にして、影響を強化しているとの疑惑も存在する。

 B. 第三国の行動

 1.他国制裁への不従属:

 ・一部の国では、国内の管轄権を持つ個人や企業が他国の一方的制裁に従うことを禁止している。

 2.近年の法律

 ・米国の制裁の域外執行に対抗するため、EUやロシア、中国は法的措置を講じている。

 3.EUのブロッキング法

 ・EUのブロッキング法は効果がないとされており、2021年には改正計画が発表された。

 4.過剰遵守への対応の不備

 ・これらの法律は他国の制裁への従属に関するものであり、過剰遵守に対する適切な対策がなされているか疑問が残る。

 V. 結論と提言

 A. 結論

 1.二次制裁の役割

 ・二次制裁は、一方的なプライマリ制裁を執行するために使用され、国外の対象に対しても適用される。

 2.国際法との矛盾

 ・二次制裁は国際法に基づいて合法とは見なされておらず、その多くは合法性が疑わしい。

 3.過剰遵守の原因

 ・二次制裁の脅威は、企業や個人がプライマリ制裁に過剰遵守する要因となっている。

 4.人権への影響

 ・過剰遵守は、医療品や食料の供給を妨げ、非対象者の権利を脅かす。

 5.影響の広がり

 ・過剰遵守は、制裁の影響をさらに拡大し、銀行などの特定のセクターでは普遍的な現象となっている。

 6.企業の行動

 ・銀行は、承認された取引の拒否や、難しい書類を求めることなどを行い、過剰遵守の例となっている。

 7.国際義務の不履行

 ・過剰遵守は、国家が年金支払いを行えなくなるなどの問題を引き起こす。

 8.人権への影響の拡大

 ・過剰遵守は、制裁が発効していない期間にも発生し、制裁の目的を達成する助けにはならない。

 9.企業の人権デューデリジェンス

 ・国家が企業に人権デューデリジェンスを義務づける動きがあるが、過剰遵守の拡大に追いついていない。

 10.制裁に対する企業の見解

 ・企業は、制裁の不明瞭さや複雑さが過剰遵守を引き起こしている要因であると認識し、政府との対話を行う必要がある。

 B. 提言

 1.国家の行動

 ・制裁国は、過剰遵守を排除または最小化するために適切な手段を講じるべきである。

 2.企業の義務化

 ・国家は企業に対して人権デューデリジェンスを義務化し、制裁遵守や過剰遵守による負の影響に対処すべきである。

 3.国内法の見直し

 ・国家は、企業が過剰遵守に至るような国内法を見直すべきである。

 4.企業との対話

 ・制裁国は企業と対話を行い、過剰遵守を引き起こす現行の制裁制度や執行プロセスを特定し、改善を図るべきである。

 5.二次制裁の禁止

 ・制裁国は、二次制裁や民事・刑事処罰の脅威を避けるべきである。

 6.国際法の遵守

 ・制裁国は、国際法に準拠した執行プロセスを行う必要がある。

 7.相対的資源の考慮

 ・国家は、過剰遵守を助長しないよう、個人や企業の相対的な資源を考慮に入れた制裁執行を行うべきである。

 8.企業の人権考慮

 ・企業は人権を包括的に考え、制裁遵守が人権に与える影響を調査し、改善策を講じるべきである。

 9.銀行の取り組み

 銀行は、過剰遵守や二次制裁に関する指針を策定するために、特別報告者や国際機関と協力すべきである。

【詳細】

 アレナ・F・ドゥハン特別報告者による報告書の詳細な説明である。

 報告書の目的と背景

 I.報告書の提出背景

 本報告書は、国連人権理事会の決議27/21および45/5、および総会決議74/154に基づき作成された。これらの決議では、単独制裁が人権享有に及ぼす負の影響に関する情報収集、分析、提言を求めている。特に、単独制裁の影響を受ける国や地域において人権状況が悪化していることが指摘されている。

 2.単独制裁と二次制裁の定義

 ・単独制裁: 一つの国が他国に対して独自に課す制裁措置。国際法の観点からその法的根拠が疑問視される場合が多い。
 ・二次制裁: 初めの制裁対象でない国や企業に対して、制裁を課すこと。これは、初めの制裁を回避または回避しようとする行動を取る者に対して制裁を科すもので、特にその影響が広がりやすい。

 二次制裁と過剰遵守のメカニズム

 1.過剰遵守の概念

 二次制裁や国内の執行措置が実施されると、企業や個人は法的リスクを回避するために、許可された取引さえも避ける傾向にある。この現象を「過剰遵守」と呼び、結果として制裁対象国との必要な交流が阻害される。

 2.影響の拡大

 二次制裁による過剰遵守は、制裁を受けていない国や人々にまで影響が及ぶ。特に、第三国での企業活動が抑制され、経済的な影響や人道的な支援が行き届かない事態を引き起こすことがある。

 3.人権への影響

 ・二次制裁の実施と過剰遵守により、初めの制裁の対象でない個人やコミュニティの人権が侵害されることがある。具体的には、医療や教育、食料などの基本的な人権の享有が妨げられる場合が多い。

 法的および倫理的考察

 1.法的な疑問

 特別報告者は、二次制裁およびそれに関連する民事・刑事罰の合法性に疑問を呈している。国際法上、主権国家間の取引を不当に妨害するものであり、違法性が指摘されている。

 2.人権に対する倫理的配慮

 特に脆弱な状況に置かれている人々に対する人権侵害は、倫理的な観点からも問題視される。報告書では、これらの人々が経済的、社会的、文化的権利を享受するための支援が必要であると強調されている。

 II.特別報告者の活動と提言

 1.国際的な啓発活動

 特別報告者は、メディアインタビューや国際会議への参加を通じて、単独制裁の負の影響について広く知らせる努力をしている。具体的には、政府関係者や市民社会との対話を通じて問題提起を行っている。

 2.国別訪問

 ジンバブエとイランへの訪問では、現地での人権状況を詳細に調査し、関係者と意見交換を行った。訪問後には、得られた知見を基にした提言を行う予定である。

 3.研究プラットフォームの設立

 単独制裁の影響に関する研究を促進するため、電子リポジトリを設立し、関連する研究成果や報告を集める取り組みを行っている。

 4.具体的な提言

 ・過剰遵守の抑制: 適切なガイドラインや規則を設定し、企業や団体が過剰遵守を避けられるようにする。
 ・人道的支援のアクセス確保: 人道的目的のための取引が妨げられないよう、法的保護を強化する。
 ・国際協力の促進: 国際社会が連携して、単独制裁の人権への影響を評価し、改善策を講じる必要がある。
 
 特別報告者は、単独制裁とその拡大による人権への悪影響に対処するために、国際的な協力と具体的な行動が必要であると強調している。この報告書は、制裁政策の見直しや新たな基準の設定を促す重要な資料となっている。

 以下に、二次制裁と過剰遵守について、より詳しく説明する。

 III. 二次制裁の定義と一般的な説明

 A. 二次制裁とは何か

 二次制裁は、特定の国家や個人、企業が主に制裁対象となっている場合に、その対象と関係を持つ第三者に対しても制裁を課す手法である。このような制裁は、制裁対象と取引したり協力したりすることを理由に適用されることが多い。これにより、制裁対象の国や企業はさらに国際的な取引において孤立し、経済的な影響を受ける。

 二次制裁の影響

 二次制裁は、制裁を課した国の金融市場へのアクセスを制限したり、その国の通貨を使用した取引を禁止したりすることによって、第三国企業や個人に大きな影響を与える。また、制裁対象国の人々の人権にも深刻な影響を与える。例えば、キューバやイラン、シリアなどの国では、COVID-19パンデミックの際に医薬品や医療機器の供給が遅れたり、製造業者が出荷を躊躇する原因となった。

 過剰遵守(Overcompliance)とは

 過剰遵守の概念

 過剰遵守は、制裁の範囲を超えた自発的な制限を指す。これは、リスク回避の一環として、企業や個人が制裁対象国との取引を避けたり、法律上許可されている活動すら行わないことが含まれる。たとえば、企業が制裁に関連する法的リスクを避けるために、制裁対象国との取引を全て停止することがある。

 過剰遵守の影響

 過剰遵守は、制裁の直接的な対象でない人々や企業にまで影響を及ぼし、全体的な人権の侵害を拡大させる。特に、食糧、医療、基本的なサービスの供給が妨げられ、非制裁対象の個人も人権が侵害される場合がある。過剰遵守によって、医薬品や必需品の輸送が妨げられるケースも多く、必要な援助が届かない事態が発生する。

 B.過剰遵守の具体的な事例

 1.企業の行動

 ・例: スウェーデンの医療製品メーカーであるMölnlyckeは、アメリカの制裁が再発効した後、イランへの全ての輸出を停止した。これにより、特に重度の皮膚病を患う子供たちに必要なバンデージが供給されず、彼らの健康権が侵害された。

 2.金融機関の過剰遵守

 ・例: アメリカの制裁により、ベネズエラへの送金を行う銀行が、正当な取引であっても資金の移動を拒否することが多くなった。これにより、必要な医療品や食料品が届かないという事態が生じている。

 3.国際機関の制約

 ・例: 国際的な人道支援が必要な状況でも、銀行が取引を拒否するために、援助物資が必要な国に届けられないことがある。特に、タリバンに関連する制裁に関しては、人道的援助が許可されているにもかかわらず、銀行が過剰なリスク回避を行うため、援助が行き届かない。

 C.域外管轄権と執⾏

 特別報告者は、米国による制裁の域外管轄権とその執行について、いくつかの具体的な懸念を詳しく述べている。まず、米国が国内法を国外に適用し、制裁違反に対する罰則を世界中で執行する際に、その法的根拠が不明確である点に焦点が当てられている。特に、米国が制裁対象となった外国の取引に関連する場合、従来の国際法上の管轄権の枠を超えて適用範囲を拡大しているとされる。ある学者の指摘によれば、米国の制裁法には「伝統的な管轄権の原則を拡大解釈している」という傾向があり、これが国際的な懸念を引き起こしている。

 次に、米国が域外で制裁を執行するための法的権限の基礎として挙げられる二つの接点について、詳細に説明している。

 1.米国内の仲介者の関与

 米国は、自国内の企業や金融機関が関与する取引を通じて制裁を執行する権限を主張している。例えば、制裁対象国との外国取引が、米国内に存在する仲介機関(特に、取引が米国内の銀行などを通じて行われる場合)を経由する場合、米国はその取引を規制する権限があると考えている。これにより、外国の取引が制裁対象国の場合、米国内のインフラを介した場合には、米国の法律が適用され、制裁違反と見なされる可能性がある。

 2.米国の金融システムの利用

 米国の制裁は、特に米ドル建ての取引や、米国の金融システムを介して行われる取引に強く依存している。例えば、外国の取引が米ドルで決済される場合、米国の金融機関を通じて取引が行われるため、これも米国の管轄権に含まれるとされる。この結果、外国企業が米ドルを使用して制裁対象国と取引を行う場合、たとえ取引が自国で合法であっても、米国の制裁の影響を受けることがある。

 特別報告者は、他国が域外での制裁を実行している例として、アラブ連盟によるイスラエルに対するボイコットを挙げている。このボイコットは、1940年代に開始され、第三国企業がイスラエルと取引を行った場合に、その企業をブラックリストに載せることができるという内容である。しかし、米国とは異なり、他国はこのような域外制裁の執行に対してそれほど積極的ではなく、米国のみが現在、域外制裁の執行を強力に推進しているという点が強調されている。

 また、米国の制裁に対する罰則の恐怖が、他国の企業による「過剰な順守(overcompliance)」を促進しているとも述べられている。これは、制裁に直接影響されない場合でも、米国に経済的な関係を持つ企業が、制裁対象国との取引を控えるようになっている状況を指している。たとえば、2018年に米国がイランに対する制裁を復活させた際、ヨーロッパの多くの企業が、米国との商業関係を維持するために、制裁対象外の製品を取り扱う取引であってもイラン市場から撤退した。これにより、米国の制裁が外国の企業に対しても多大な影響力を持つことが明らかになっている。

 これらの状況から、特別報告者は、米国の制裁における域外管轄権の不明瞭な法的基盤が、国際的な法的安定性や透明性を損なう可能性があると懸念している。また、米国の制裁に対する過剰な順守が、他国の企業や経済に与える影響にも言及し、これが国際的な商取引や経済関係に悪影響を及ぼす可能性について警鐘を鳴らしている。

 二次制裁や過剰遵守は、制裁を課す国の目的に反し、制裁の影響を受けることのない個人や企業にまで影響を及ぼす。これにより、国際法と人権に対する新たな脅威が生まれている。制裁がもたらす人権への影響を軽減するためには、透明性のあるガイダンスが必要であり、制裁の対象外の人々や国に対しても配慮が必要である。
 
 D. 過剰遵守の理由

 ・デリスキング政策: 特別報告者は、金融セクターにおける一方的制裁に対する過剰遵守の主要な原因として、デリスキング政策があると指摘している。これらの政策は、制裁以外の多くの規制義務にも対応するように設計されており、金融リスクの最小化、マネーロンダリングやテロ資金供与などの金融犯罪に関連する取引を避けること、または株主からのデリスキング圧力を考慮することを含む。これにより、企業は過剰に慎重になり、複数の規制に対して過剰遵守をする傾向が強まる。

 ・遵守のコスト: デリスキングポリシーに従うための適切なデューデリジェンスを行うには、時間や費用がかかり、専門的な調査能力が必要であるため、多くの機関がその実施を困難と感じる。その結果、法律やビジネスの罰則を避けるために、企業は過剰に慎重になる。

 ・複雑さと不明瞭さ: 制裁制度の複雑さやその規定の不明瞭さも過剰遵守を促進する要因として指摘されている。特に、地政学的な出来事に迅速に対応する形で制裁が設けられると、制裁内容が十分に詳細に書かれていない場合が多い。

 ・規制の変動性: 制裁が頻繁に変更されることも、過剰遵守を促進する。たとえば、2020年のマリに対するECOWASの制裁は、クーデター直後に決定され、その後短期間で緩和されるなど、規制の不安定さが企業に混乱をもたらす。

 ・制裁対象の変化: 制裁の対象が新たにリストに追加されたり、解除されたりすることで、遵守の必要性が変化し、企業はその変化に対応する必要が生じる。

 ・解釈の不明瞭さ: 欧州連合の制裁に関する弁護士事務所の調査によると、制裁は多くの広範かつ未定義の概念を使用しており、その解釈に関する公式なガイダンスが乏しい。このため、企業は過剰に慎重な対応をせざるを得ない。

 ・域外適用: 特にアメリカによる制裁の域外適用や厳しい罰則、執行の脅威が過剰遵守を助長する要因となっている。企業は、制裁を違反した場合の厳しい罰則(例えば、重要市場からの排除や金融システムへのアクセスの喪失)を恐れ、過剰遵守を選択することが多い。

 ・デューデリジェンスのコスト: 企業は人権デューデリジェンスを実施する責任があり、これには一方的制裁の遵守に必要なコストが含まれる。制裁を違反した際のコストが高いため、多くの企業は過剰遵守を選ぶ傾向がある。

 ・制裁の厳しさの違い: 同じ国や個人に対する一方的制裁の違いも、過剰遵守を生む要因となる。たとえば、英国、米国、EUのロシアに対する制裁では、英国が二次取引を違反と見なさない一方、米国ではそう見なす場合がある。

 E. 過剰遵守の人権への影響

 ・影響を受ける権利: 過剰遵守はすべての種類の一方的制裁に関連しており、その結果が対象とされる国や個人の権利に深刻な影響を及ぼす。特に、過剰遵守が包括的制裁に近い影響を与え、大規模な人権侵害を引き起こすことがある。

 ・シリアの状況: シリアにおいて、政府を対象とする制裁と個人や企業を対象とする制裁があり、過剰遵守が双方の影響を同等にするケースがある。アメリカのシーザー法の影響で、特定のサービスを供給することが制限されるなどの影響が指摘されている。

 ・ジンバブエの影響: 特別報告者はジンバブエ訪問中に、過剰遵守が住民の健康、食料、安全な飲料水、教育、雇用へのアクセスを害し、持続可能な開発目標達成を妨げているとの情報を得ている。

 ・学問の自由への影響: 国際的な学術出版社の過剰遵守が、制裁国からの論文の投稿を拒否することによって表現の自由や教育、科学の進歩に影響を及ぼしている。

 ・人道援助への影響: 人道援助を行うNGOが制裁の影響で困難に直面し、特に食品や医薬品、ワクチンなどが届かない事例が多発している。

 ・イランのNGOの事例: イランのNGOが銀行サービスの拒否により、救援物資の提供が阻害されているという報告がある。これは、制裁が原因であり、特に人道的な緊急事態への対応に困難をもたらしている。

 ・寄付のアクセス: NGOは制裁の影響で寄付金にアクセスできない場合が多く、また寄付者も二次制裁を恐れて資金を送ることをためらう。

 ・シリアの人道状況: シリアでは、人道的な免除があっても、過剰遵守が日常生活に深刻な影響を及ぼしており、十分な支援が行われていないとの声が上がっている。

 F. 過剰遵守の範囲

 ・過剰遵守の測定の困難性: 過剰遵守は企業ごとに異なり、機密性のために測定が難しいが、グローバルに広がっている現象であり、その規模は非常に大きい。

 ・人権への影響: 過剰遵守の人権への影響は、一方的制裁自体の影響よりも広範囲で深刻な可能性がある。

 ・イランの研究活動への影響: 過剰遵守は教育や表現の自由、科学の進歩に悪影響を与え、イランの研究者が国際的な会議や競技会に参加できなくなっている。

 このように、過剰遵守は制裁の影響を超えて、広範な人権の侵害を引き起こす要因となっている。

 次は、国連の特別報告者が作成したもので、特に過剰コンプライアンスに関する国家の行動を中心に論じている。過剰コンプライアンスは、企業や国が制裁を遵守しようとするあまり、本来の対象でない個人や団体にまで影響を及ぼすことを指す。このセクションは、制裁を行う国家と、第三国による行動、そして結論と推奨事項に分かれている。

 IV. 過剰コンプライアンスへの対策

 A. 制裁を課す国家の行動

 1.国際的な義務の認識

 特別報告者は、国家が自国の人権を守るだけでなく、経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約(ICESCR)に従い、自国の企業が海外で人権侵害を引き起こさないようにする義務があると指摘している。この義務は、領域や管轄権に制限されるものではない。

 2.企業の人権デューデリジェンス

 スウェーデンの事例を挙げ、スウェーデン政府が企業の人権デューデリジェンスを法的義務にする提案をしたことに言及しているが、進展は乏しいとされている。特に、多くの企業がこのプロジェクトを支持しているにもかかわらず、実際の行動には乏しさが見られる。

 3.EUの指令案

 2022年に欧州委員会が提案した指令案は、加盟国に対して企業の人権デューデリジェンスを義務付ける内容であるが、制裁の遵守から生じる人権問題に対する対策は含まれていないと述べている。

 4.人道的例外の利用促進

 制裁国が人道的例外に関するガイダンスを発表し、過剰コンプライアンスを最小限に抑える努力がある一方で、効果はほとんどないと指摘している。特に米国とEUはCOVID-19危機の際に人道的例外を奨励しましたが、実際には制裁が必要な物資の供給を妨げている。

 5.過剰コンプライアンスの要因

 制裁制度の複雑さや不明瞭さ、厳しい執行措置、二次制裁の脅威などが、過剰コンプライアンスを引き起こす要因として挙げられている。

 6.過剰コンプライアンスを促すかどうか

 過剰コンプライアンスが制裁の目的を支える可能性があるため、制裁国がこの問題に対してより積極的に行動しない可能性がある。特に、米国が意図的に制裁を不明瞭にしてその影響を高めているとの疑念も示されている。

 B. 第三国の行動

 1.外国制裁への抵抗

 一部の国々は、自国内の個人や団体が他国の制裁に従うことを禁止しています。これには、1969年に米国が制定した「輸出管理法」が含まれ、他国のボイコットに参加することを禁止しました。

 2.外国制裁に対するブロッキング法

 EUやロシア、中国などが外国の制裁に対抗するためのブロッキング法を施行しているが、これらの法律は過剰コンプライアンスに対する対策としては不十分であるとの指摘がある。

 V. 結論と推奨事項

 A. 結論

 1.二次制裁の拡大

 二次制裁は、第一次制裁の対象とされる外国の個人や団体との取引に対して適用され、国際法では合法と認められていない。これが拡大することにより、より多くの企業が過剰コンプライアンスに走る懸念がある。

 2.法的根拠の不明確さ

 二次制裁や民事・刑事罰の恐れが、企業の過剰コンプライアンスを助長しているとされている。制裁の複雑さや不明瞭さ、頻繁な変更が企業の行動に影響を与えている。

 3.人権への影響
 
 過剰コンプライアンスは、食料や医薬品などの購入や供給を阻害し、結果として多くの人権が侵害される可能性がある。非対象の個人が財産へのアクセスや経済的義務を果たせなくなることもある。

 4.国際的な義務の認識の遅れ

 一部の国は企業に対して人権デューデリジェンスを義務付けようとしているが、過剰コンプライアンスが広がっている中で進展は遅れている。

 B. 推奨事項

 1.過剰コンプライアンスの最小化

 各国は、法律や規制、金融インセンティブを通じて過剰コンプライアンスを最小限に抑える努力をするべきである。

 2.人権デューデリジェンスの義務化

 企業が人権デューデリジェンスを行うことを法的に義務付けることを推奨している。

 3.企業への影響を考慮

 国家は、企業が過剰コンプライアンスを行わざるを得ない理由を特定し、それを改善するための相談を行うべきである。

 4.二次制裁の脅威の排除

 制裁国は、二次制裁や刑事罰の脅威を排除すべきである。

 5.人権に基づく制裁の見直し

 制裁の執行プロセスが国際法に従ったものであることを確認し、特に人権に与える影響に注意を払う必要がある。

この報告書全体は、制裁がどのように人権に影響を及ぼすか、また過剰コンプライアンスのリスクについて詳しく考察している。そして、過剰コンプライアンスを最小限に抑えるための具体的な提言を行っている。

【要点】

 報告書の目的と背景

 ・提出背景: 人権理事会の決議27/21、45/5、総会決議74/154に基づく。
 ・単独制裁: 一国が他国に独自に課す制裁。国際法上の法的根拠が疑問視される。
 ・二次制裁: 初めの制裁の対象でない国や企業に対して課される制裁。

 二次制裁と過剰遵守のメカニズム

 ・過剰遵守: 企業や個人が法的リスクを避けるために許可された取引を避ける傾向。
 ・影響の拡大: 過剰遵守により、制裁対象国以外の人々にも影響が及ぶ。
 ・人権への影響: 初めの制裁の対象でない個人やコミュニティの権利が侵害される。

 法的および倫理的考察

・法的疑問: 二次制裁や関連する罰則の合法性に疑問。
 ・倫理的配慮: 脆弱な状況に置かれている人々の人権侵害に対する懸念。

 特別報告者の活動と提言

 ・国際的な啓発活動: メディアインタビューや国際会議への参加を通じて広報。
 ・国別訪問: ジンバブエとイランでの人権状況調査。
 ・研究プラットフォーム: 単独制裁の影響に関する研究成果を集める電子リポジトリの設立。
 ・具体的提言

  ⇨ 過剰遵守の抑制策の設定。
  ⇨ 人道的支援へのアクセス確保。
  ⇨ 国際的な協力促進。

 ・必要な行動: 単独制裁による人権への悪影響に対処するための国際的協力と具体的行動の重要性を強調。

 二次制裁と過剰遵守について箇条書きで説明する。

 二次制裁

 ・定義: 特定の国家や個人に対して主に課される制裁が、第三者にも適用されること。
 ・目的: 制裁対象国や企業の国際的孤立を強化し、経済的圧力を高める。
 ・影響

  ⇨ 制裁対象国の金融市場へのアクセス制限。
  ⇨ 通貨使用に関する取引禁止。
  ⇨ 医薬品や医療機器の供給遅延や制限。

 過剰遵守(Overcompliance)

 ・定義: 制裁の範囲を超えて、自発的に制限を課す行為。
 ・背景: リスク回避のために、企業や個人が制裁対象国との取引を完全に避けること。
 ・影響

  ⇨ 非制裁対象者の人権が侵害される可能性。
  ⇨ 食糧や医療の供給が妨げられる。
  ⇨ 国際機関の人道支援活動が制約を受ける。

 具体的な事例

 1.企業の行動

 ・スウェーデンのMölnlyckeがイランへの医療品輸出を停止し、患者に影響。

 2.金融機関の過剰遵守

 ・アメリカの制裁によるベネズエラへの送金拒否が、必要な物資の届かない原因に。

 3.国際機関の制

 ・銀行が人道的援助を正当な理由で拒否し、援助物資が届かない問題。
 
 * 二次制裁と過剰遵守は制裁の目的に反し、人権や国際法に対する新たな脅威を生む。
 * 透明性のあるガイダンスと配慮が必要。

 域外管轄権と執⾏

 ・特別報告者は、米国による域外制裁の法的基盤が不明確である点を懸念。
 ・米国は、従来の国際法の枠を超えた制裁執行を行い、管轄権の拡大を図っている。
 ・米国が域外制裁を行う2つの主な根拠

  ⇨ 米国内仲介者の関与:米国内の銀行などが外国取引に関わる場合、その取引を制裁対象とみなす。
  ⇨ 米国金融システムの利用:米ドルでの取引や、米国の金融機関を通じた取引も制裁対象となる。
 ・他国による域外制裁の例として、アラブ連盟のイスラエルに対するボイコットが挙げられるが、米国のみが域外制裁の執行を積極的に行っている。
 ・米国の制裁による罰則への恐怖が、他国企業の「過剰な順守」を促進し、制裁対象外の取引でも影響を受けるケースが増えている。
 ・米国の制裁は、国際的な法的安定性や透明性を損なう懸念があると指摘されている。
 
 過剰遵守の理由

 ・デリスキング政策

  ⇨ 一方的制裁に対応するため、金融リスクを最小限に抑える必要から過剰遵守が生じる。

 ・遵守のコスト

  ⇨ 適切なデューデリジェンスに多くの時間と費用がかかり、実施が困難。

 ・複雑さと不明瞭さ

  ⇨ 制裁制度の複雑さや不明瞭な規定が、企業の慎重な対応を促進。

 ・規制の変動性

  ⇨ 制裁が頻繁に変更され、企業が対応に困難を感じる。

 ・制裁対象の変化

  ⇨ 制裁対象の追加や解除による遵守の必要性の変化。

 ・解釈の不明瞭さ

  ⇨ 制裁に関する公式ガイダンスが不足し、企業が過剰に慎重になる。

 ・域外適用

  ⇨ アメリカの厳しい制裁が過剰遵守を助長。

 ・デューデリジェンスのコスト

  ⇨ 人権デューデリジェンスのコストが過剰遵守を促す要因に。

 ・制裁の厳しさの違い

  ⇨ 同じ対象に対する制裁の異なる解釈が過剰遵守を生む。

 過剰遵守の人権への影響

 ・影響を受ける権利

  ⇨ 過剰遵守が人権に深刻な影響を及ぼす。

 ・シリアの状況

  ⇨ 制裁が政府と個人を対象にしており、過剰遵守が双方に影響を与える。

 ・ジンバブエの影響

  ⇨ 過剰遵守が住民の健康や教育、雇用へのアクセスを妨げている。

 ・学問の自由への影響

  ⇨ 学術出版社の過剰遵守が論文投稿を拒否する事例が増加。

 ・人道援助への影響

  ⇨ NGOが制裁の影響で食品や医薬品の提供に困難を抱える。

 ・イランのNGOの事例

  ⇨ 銀行サービスの拒否が救援物資の提供を阻害。

 ・寄付のアクセス

  ⇨ NGOが寄付金にアクセスできず、寄付者も二次制裁を恐れる。

 ・シリアの人道状況

  ⇨ 人道的免除があっても過剰遵守が支援を妨げている。

 過剰遵守の範囲

 ・測定の困難性

  ⇨ 過剰遵守は企業によって異なり、測定が難しいが、グローバルに広がっている。

 ・人権への影響

  ⇨ 過剰遵守の影響は一方的制裁自体の影響よりも深刻な可能性がある。

 ・イランの研究活動への影響

  ⇨ 過剰遵守が教育や表現の自由に悪影響を与える。

以下に、国連特別報告者の文書における過剰コンプライアンスに関する内容を箇条書きでまとめる。

 過剰コンプライアンスへの対策

 制裁を課す国家の行動

 1.国際的義務の認識

 ・国家は国際規約(ICESCR)に従い、自国の企業が海外で人権侵害を引き起こさないよう義務がある。

 2.企業の人権デューデリジェンス

 ・スウェーデン政府が企業の人権デューデリジェンスを法的義務化する提案をしたが、進展は乏しい。

 3.EUの指令案

 ・2022年に提案された指令案は企業の人権デューデリジェンスを義務付けるが、制裁に関連する人権問題への対策は不十分。

 4.人道的例外の利用促進

 ・制裁国は人道的例外に関するガイダンスを発表しているが、過剰コンプライアンスを抑える効果は薄い。

 5.過剰コンプライアンスの要因

 ・制裁制度の複雑さ、厳しい執行措置、二次制裁の脅威が過剰コンプライアンスを引き起こす要因。

 6.過剰コンプライアンスを促すかどうか

 ・制裁国が過剰コンプライアンスを意図的に助長する場合もあり、特に米国がその影響を高めているとの疑念。

 第三国の行動

 1.外国制裁への抵抗

 ・一部の国が自国内の個人や団体の外国制裁への従事を禁止。

 2.外国制裁に対するブロッキング法

 ・EUやロシア、中国が施行しているが、過剰コンプライアンスへの対策としては不十分。

 結論と推奨事項

 結論

 1.二次制裁の拡大

 ・二次制裁が拡大し、企業の過剰コンプライアンスを助長する懸念。

 2.法的根拠の不明確さ

 ・二次制裁や罰の恐れが企業の行動に影響。

 3.人権への影響

 ・過剰コンプライアンスが食料や医薬品の供給を阻害し、広範な人権侵害のリスクを引き起こす。

 4.国際的な義務の認識の遅れ

 ・人権デューデリジェンスの義務化が遅れている。

 推奨事項

 1.過剰コンプライアンスの最小化

 ・法律や金融インセンティブを通じて過剰コンプライアンスを抑える。

 2.人権デューデリジェンスの義務化

 ・企業に人権デューデリジェンスを法的義務とすることを推奨。

 3.企業への影響を考慮

 ・国家が企業が過剰コンプライアンスを行う理由を特定し、改善のための相談を行う。

 4.二次制裁の脅威の排除

 ・制裁国は二次制裁や刑事罰の脅威を排除すべき。

 5.人権に基づく制裁の見直し

 ・制裁の執行が国際法に従ったものであることを確認し、人権への影響に注意を払う。

【註】

 ➢ 翻訳文に疑義が生じた場合には、原文を参照して下さい。此れは飽く迄も一参考纏め訳です。 

【註はブログ作成者が付記】

【閑話 完】

【引用・参照・底本】

Secondary sanctions, civil and criminal penalties for circumvention of sanctions regimes and overcompliance with sanctions - Report of the Rapporteur on the negative impact of unilateral coercive measures on the enjoyment of human rights (A/HRC/51/33)
https://reliefweb.int/attachments/546e88cb-218f-407e-99ed-eea441eefb0e/Secondary%20sanctions%2C%20civil%20and%20criminal%20penalties%20for%20circumvention%20of%20sanctions%20regimes%20and%20overcompliance%20with%20sanctions.pdf

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