中国が新鉱物種「高純度石英」を発見 ― 2025年04月11日 22:09
【概要】
中国が新鉱物種「高純度石英」を発見したと、2025年4月10日に中国中央テレビ(CCTV)が報じた。これは、半導体や太陽光発電(フォトボルタイクス)などの戦略的新興産業における発展を支える重要資源であり、従来の輸入依存を低減させることが期待されている。
中国自然資源部の情報によれば、今回発見された新鉱物種「高純度石英」とは、加工・精製することで二酸化ケイ素(SiO₂)の純度が99.995%以上に達する岩石を指す。これは、半導体やフォトボルタイクスなどの先端技術分野が要求する厳格な不純物・介在物基準を満たすものである。
中国工程院のMao Jingwen(マオ・ジンウェン)院士は、この新鉱物種の確立により、関連する戦略的新興産業の高品質な発展に寄与すると述べている。また、これにより新たな生産力の形成、ならびに産業チェーンおよび供給チェーンの回復力と安全性の強化が見込まれる。
報道によれば、高純度石英は世界的にも稀少であり、中国においては輸入依存度が高い戦略的資源である。この鉱物は耐高温性、耐腐食性、低熱膨張性、高絶縁性、透明性といった特性を有しており、先端技術産業の中核材料として不可欠である。
ここ数年、中国は戦略的鉱物資源探査の新たなキャンペーンを通じて、河南省中部の東秦嶺や新疆ウイグル自治区のアルタイ地域などで複数の高純度石英鉱床を発見してきた。中国国内の多数の企業および研究機関が重要技術課題の克服に取り組み、純度4N5(99.995%)のパイロット製品の製造に成功し、一部サンプルでは4N8(99.998%)の純度にも達している。
これに伴い、資源評価、探査、深度精製、標的不純物除去といった分野で重大な技術的進展があった。これは、中国国内での高純度石英砂の工業化に向けた重要な一歩である。
自然資源部鉱産資源保護監督司のHuang Xuexiong(ホワン・シュエション)司長は、高純度石英が戦略的鉱物資源リストに加えられると述べた。今後は、高純度石英資源の開発と利用に向けた工学技術革新センターの設立が進められる予定である。この中では、鉱床生成理論、探査・評価技術、分離・精製技術などの科学技術的ブレークスルーが重点的に進められる。さらに、全国的な資源調査・評価の連携と、資源埋蔵量を確定するための重点探査プロジェクトが展開され、国内資源の安全保障が強化される見通しである。
【詳細】
1. 高純度石英とは何か
中国自然資源部によって新たに鉱物種として認定された「高純度石英(High-purity Quartz)」とは、精製処理を経て純度99.995%以上の二酸化ケイ素(SiO₂)を得ることが可能な岩石を指す。このような純度は「4N5」と表記され、純度が小数点以下5桁まで9であることを意味する。さらに高い純度、すなわち「4N8(99.998%)」に達するサンプルも得られている。
高純度石英は、極めて微量な不純物(鉄、アルミニウム、チタンなど)すらも含有してはならず、また内部に気泡や微細鉱物などの介在物も極限まで排除されていなければならない。これらの条件は、半導体製造やフォトボルタイクス(太陽光発電)といった高精度・高信頼性を要求される先端産業分野における使用条件と一致している。
2. 高純度石英の工業的重要性
高純度石英は以下のような物理的・化学的特性を持つことから、極めて戦略的価値の高い原材料とされている:
・高温耐性:半導体製造工程における高温プロセス(たとえばエピタキシャル成長や酸化処理)に耐える。
・耐腐食性:化学薬品やガス環境下でも劣化しにくい。
・低熱膨張性:寸法安定性に優れ、精密加工に適する。
・高絶縁性:電子デバイス内での漏電防止に有効。
・高透明性:光学材料としても使用され、紫外線から赤外線領域における透過性が高い。
これらの特性により、高純度石英は主に以下の産業分野で不可欠な材料である。
・半導体産業:シリコンインゴットの成長用るつぼ、フォトマスク基板、エッチング装置の部材。
・フォトボルタイクス産業:太陽電池パネルの製造工程における精密ガラスや反応装置部品。
・光ファイバー:通信インフラにおけるコア材料として使用。
・高性能ガラス・レンズ:航空宇宙・医療機器向けの光学部品など。
3. 中国国内の資源状況と探索成果
高純度石英はこれまで、主に米国(ノースカロライナ州スプルースパイン地区)およびノルウェーの一部地域からの輸入に依存していた。供給の地政学的リスクを軽減するため、中国は国家戦略に基づき、近年「新一輪の戦略的鉱物探査キャンペーン(戦略性礦產資源勘查行動)」を展開してきた。
このキャンペーンにより、以下のような地域で有望な鉱床が発見された。
・河南省中部・東秦嶺地域:中原地域における重要鉱源。
・新疆ウイグル自治区・アルタイ地区:地質的に古い岩体が分布し、鉱物の高純度が確認された。
これらの地域では、多くの国有および民間企業、ならびに研究機関が協力して探査・評価・試験製造に取り組んでいる。技術的には、以下の課題に対して突破口が開かれている。
・資源評価・モデリング:鉱床の規模、品位、分布形態の定量的把握。
・深度精製技術:複数段階の化学洗浄や物理選別を組み合わせた高精度プロセス。
・標的不純物除去:微量の鉄・アルミなどの残留元素をナノレベルで除去する技術。
これにより、国内でも量産化の前段階にあたるパイロットスケールでの生産体制が構築されつつある。
4. 今後の政策的展開
報道によれば、高純度石英は戦略的鉱物資源リスト(国家戦略性礦產資源名録)への登録が決定されており、国家的支援のもと、開発と利用に向けた重点投資が行われる。自然資源部鉱産資源保護監督司のHuang Xuexiong司長は、今後の政策展開として以下の方向性を示している。
・工学技術革新センターの設立:探査・精製・材料化技術の研究開発拠点を構築。
・鉱床生成理論の研究強化:地質形成過程の科学的解明に基づく探査効率の向上。
・全国規模の資源調査・評価:高純度石英の分布・埋蔵量を網羅的に把握する。
・重点探査プロジェクトの配置:産業化を見据えた資源確保のためのプロジェクト推進。
これらの施策により、中国は高純度石英の供給安定性を高め、戦略的新興産業の原材料自給率を向上させることで、産業チェーンの安全保障を強化する方針である。
【要点】
1.高純度石英の定義と特徴
・高純度石英とは、純度99.995%以上(4N5等級)の二酸化ケイ素(SiO₂)を精製可能な岩石である。
・不純物(Fe、Al、Tiなど)および介在物(気泡、微細鉱物など)の含有量が極めて少ない。
・純度4N8(99.998%)に達するサンプルも確認されている。
2.物理的・化学的特性
・高温耐性:1,000℃を超える環境下でも安定。
・耐腐食性:化学薬品やガスに対して安定性が高い。
・低熱膨張性:寸法変化が少なく、精密用途に適する。
・高絶縁性:電気的に安定で、半導体用途に必須。
・高透明性:紫外線から赤外線領域まで優れた光透過性を持つ。
3.主な用途(戦略的新興産業)
・半導体製造(るつぼ、フォトマスク、エッチング装置部品)
・太陽光発電(高純度ガラス、反応容器など)
・光ファイバー(コア材料)
・精密光学機器(高性能レンズ、センサー等)
4.中国国内の探査状況と成果
・東秦嶺(河南省中部)および新疆アルタイ地域で有望鉱床を発見。
・国家主導による戦略鉱物探査キャンペーンの成果である。
・多数の企業・研究機関が共同で探査・試験製造を実施。
・パイロットスケールで4N5等級の精製製品を安定的に生産。
・一部では4N8等級の製品も得られており、産業化の前段階にある。
5.技術的ブレークスルー
・資源評価・モデリングに成功し、鉱床の定量的把握が可能に。
・深部精製技術や複合的除去プロセスの確立。
・微量不純物の標的除去技術(ナノレベル)を開発。
6.政策・制度上の展開
・高純度石英は「戦略的鉱物資源リスト」に登録予定。
・国家主導で「工学技術革新センター」の設立を推進。
・鉱床生成理論や資源評価手法の研究を強化。
・全国規模の資源調査・評価プロジェクトを実施予定。
・重点探査地域の指定とリソース開発の加速を図る。
7.期待される効果
・戦略産業の原材料自給率の向上。
・産業・供給チェーンの安全保障強化。
・国内製造業の高度化・独立性の確保。
・国際的な素材競争における地位の強化。
【引用・参照・底本】
China discovers new mineral species vital for strategic emerging sectors like semiconductors, photovoltaics GT 2025.04.10
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331829.shtml
中国が新鉱物種「高純度石英」を発見したと、2025年4月10日に中国中央テレビ(CCTV)が報じた。これは、半導体や太陽光発電(フォトボルタイクス)などの戦略的新興産業における発展を支える重要資源であり、従来の輸入依存を低減させることが期待されている。
中国自然資源部の情報によれば、今回発見された新鉱物種「高純度石英」とは、加工・精製することで二酸化ケイ素(SiO₂)の純度が99.995%以上に達する岩石を指す。これは、半導体やフォトボルタイクスなどの先端技術分野が要求する厳格な不純物・介在物基準を満たすものである。
中国工程院のMao Jingwen(マオ・ジンウェン)院士は、この新鉱物種の確立により、関連する戦略的新興産業の高品質な発展に寄与すると述べている。また、これにより新たな生産力の形成、ならびに産業チェーンおよび供給チェーンの回復力と安全性の強化が見込まれる。
報道によれば、高純度石英は世界的にも稀少であり、中国においては輸入依存度が高い戦略的資源である。この鉱物は耐高温性、耐腐食性、低熱膨張性、高絶縁性、透明性といった特性を有しており、先端技術産業の中核材料として不可欠である。
ここ数年、中国は戦略的鉱物資源探査の新たなキャンペーンを通じて、河南省中部の東秦嶺や新疆ウイグル自治区のアルタイ地域などで複数の高純度石英鉱床を発見してきた。中国国内の多数の企業および研究機関が重要技術課題の克服に取り組み、純度4N5(99.995%)のパイロット製品の製造に成功し、一部サンプルでは4N8(99.998%)の純度にも達している。
これに伴い、資源評価、探査、深度精製、標的不純物除去といった分野で重大な技術的進展があった。これは、中国国内での高純度石英砂の工業化に向けた重要な一歩である。
自然資源部鉱産資源保護監督司のHuang Xuexiong(ホワン・シュエション)司長は、高純度石英が戦略的鉱物資源リストに加えられると述べた。今後は、高純度石英資源の開発と利用に向けた工学技術革新センターの設立が進められる予定である。この中では、鉱床生成理論、探査・評価技術、分離・精製技術などの科学技術的ブレークスルーが重点的に進められる。さらに、全国的な資源調査・評価の連携と、資源埋蔵量を確定するための重点探査プロジェクトが展開され、国内資源の安全保障が強化される見通しである。
【詳細】
1. 高純度石英とは何か
中国自然資源部によって新たに鉱物種として認定された「高純度石英(High-purity Quartz)」とは、精製処理を経て純度99.995%以上の二酸化ケイ素(SiO₂)を得ることが可能な岩石を指す。このような純度は「4N5」と表記され、純度が小数点以下5桁まで9であることを意味する。さらに高い純度、すなわち「4N8(99.998%)」に達するサンプルも得られている。
高純度石英は、極めて微量な不純物(鉄、アルミニウム、チタンなど)すらも含有してはならず、また内部に気泡や微細鉱物などの介在物も極限まで排除されていなければならない。これらの条件は、半導体製造やフォトボルタイクス(太陽光発電)といった高精度・高信頼性を要求される先端産業分野における使用条件と一致している。
2. 高純度石英の工業的重要性
高純度石英は以下のような物理的・化学的特性を持つことから、極めて戦略的価値の高い原材料とされている:
・高温耐性:半導体製造工程における高温プロセス(たとえばエピタキシャル成長や酸化処理)に耐える。
・耐腐食性:化学薬品やガス環境下でも劣化しにくい。
・低熱膨張性:寸法安定性に優れ、精密加工に適する。
・高絶縁性:電子デバイス内での漏電防止に有効。
・高透明性:光学材料としても使用され、紫外線から赤外線領域における透過性が高い。
これらの特性により、高純度石英は主に以下の産業分野で不可欠な材料である。
・半導体産業:シリコンインゴットの成長用るつぼ、フォトマスク基板、エッチング装置の部材。
・フォトボルタイクス産業:太陽電池パネルの製造工程における精密ガラスや反応装置部品。
・光ファイバー:通信インフラにおけるコア材料として使用。
・高性能ガラス・レンズ:航空宇宙・医療機器向けの光学部品など。
3. 中国国内の資源状況と探索成果
高純度石英はこれまで、主に米国(ノースカロライナ州スプルースパイン地区)およびノルウェーの一部地域からの輸入に依存していた。供給の地政学的リスクを軽減するため、中国は国家戦略に基づき、近年「新一輪の戦略的鉱物探査キャンペーン(戦略性礦產資源勘查行動)」を展開してきた。
このキャンペーンにより、以下のような地域で有望な鉱床が発見された。
・河南省中部・東秦嶺地域:中原地域における重要鉱源。
・新疆ウイグル自治区・アルタイ地区:地質的に古い岩体が分布し、鉱物の高純度が確認された。
これらの地域では、多くの国有および民間企業、ならびに研究機関が協力して探査・評価・試験製造に取り組んでいる。技術的には、以下の課題に対して突破口が開かれている。
・資源評価・モデリング:鉱床の規模、品位、分布形態の定量的把握。
・深度精製技術:複数段階の化学洗浄や物理選別を組み合わせた高精度プロセス。
・標的不純物除去:微量の鉄・アルミなどの残留元素をナノレベルで除去する技術。
これにより、国内でも量産化の前段階にあたるパイロットスケールでの生産体制が構築されつつある。
4. 今後の政策的展開
報道によれば、高純度石英は戦略的鉱物資源リスト(国家戦略性礦產資源名録)への登録が決定されており、国家的支援のもと、開発と利用に向けた重点投資が行われる。自然資源部鉱産資源保護監督司のHuang Xuexiong司長は、今後の政策展開として以下の方向性を示している。
・工学技術革新センターの設立:探査・精製・材料化技術の研究開発拠点を構築。
・鉱床生成理論の研究強化:地質形成過程の科学的解明に基づく探査効率の向上。
・全国規模の資源調査・評価:高純度石英の分布・埋蔵量を網羅的に把握する。
・重点探査プロジェクトの配置:産業化を見据えた資源確保のためのプロジェクト推進。
これらの施策により、中国は高純度石英の供給安定性を高め、戦略的新興産業の原材料自給率を向上させることで、産業チェーンの安全保障を強化する方針である。
【要点】
1.高純度石英の定義と特徴
・高純度石英とは、純度99.995%以上(4N5等級)の二酸化ケイ素(SiO₂)を精製可能な岩石である。
・不純物(Fe、Al、Tiなど)および介在物(気泡、微細鉱物など)の含有量が極めて少ない。
・純度4N8(99.998%)に達するサンプルも確認されている。
2.物理的・化学的特性
・高温耐性:1,000℃を超える環境下でも安定。
・耐腐食性:化学薬品やガスに対して安定性が高い。
・低熱膨張性:寸法変化が少なく、精密用途に適する。
・高絶縁性:電気的に安定で、半導体用途に必須。
・高透明性:紫外線から赤外線領域まで優れた光透過性を持つ。
3.主な用途(戦略的新興産業)
・半導体製造(るつぼ、フォトマスク、エッチング装置部品)
・太陽光発電(高純度ガラス、反応容器など)
・光ファイバー(コア材料)
・精密光学機器(高性能レンズ、センサー等)
4.中国国内の探査状況と成果
・東秦嶺(河南省中部)および新疆アルタイ地域で有望鉱床を発見。
・国家主導による戦略鉱物探査キャンペーンの成果である。
・多数の企業・研究機関が共同で探査・試験製造を実施。
・パイロットスケールで4N5等級の精製製品を安定的に生産。
・一部では4N8等級の製品も得られており、産業化の前段階にある。
5.技術的ブレークスルー
・資源評価・モデリングに成功し、鉱床の定量的把握が可能に。
・深部精製技術や複合的除去プロセスの確立。
・微量不純物の標的除去技術(ナノレベル)を開発。
6.政策・制度上の展開
・高純度石英は「戦略的鉱物資源リスト」に登録予定。
・国家主導で「工学技術革新センター」の設立を推進。
・鉱床生成理論や資源評価手法の研究を強化。
・全国規模の資源調査・評価プロジェクトを実施予定。
・重点探査地域の指定とリソース開発の加速を図る。
7.期待される効果
・戦略産業の原材料自給率の向上。
・産業・供給チェーンの安全保障強化。
・国内製造業の高度化・独立性の確保。
・国際的な素材競争における地位の強化。
【引用・参照・底本】
China discovers new mineral species vital for strategic emerging sectors like semiconductors, photovoltaics GT 2025.04.10
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331829.shtml