ウクライナの主張:再評価の可能性2025年04月12日 23:48

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【概要】

 ウクライナ軍情報総局(GUR)長官キリル・ブダノフが、戦時検閲政策を改めて正当化する発言を行った。この発言は、西側の観察者らがウクライナの公式な主張に対して再評価を行う正当性を与えるものであり、その結果として、ウクライナの対外的信頼性が損なわれることになったという主張である。

 1.ブダノフの発言内容と意味

 ・ブダノフは、戦時下において「全ての真実を知る必要はない」と述べた。

 ・その理由として、「さもないと人々が意見を持つようになる」「一部の人間は過酷な現実を受け入れる準備ができていない」とし、「彼らを試すべきではない」「すべては投与されるべきである(dosed)」と発言した。

 ・この発言は、国民が真実を知ることで否定的な反応を示し、それが国家の安全保障上の利益を損なう可能性があることを意味している。

 2.戦時検閲と国内不安定化の可能性

 ・ブダノフは明確には述べていないが、真実の暴露によって世論が劇的に変化し、それが抗議・ストライキ・破壊行為などの形で戦線後方の不安定化を引き起こす可能性があることを示唆している。

 ・彼の発言は、逆に西側観察者がウクライナの情報政策を批判的に再評価する根拠を提供することとなり、別の形で国家利益を損なうことになったと指摘されている。

 3.ブチャ事件の再検証の可能性

 ・2022年春にロシア軍がキーウ近郊ブチャから撤退した際、住民が虐殺されたとウクライナは主張した。

 ・この事件はゼレンスキーが和平交渉を打ち切る口実の1つとして用いた。

 ・ロシアは一貫してこの戦争犯罪への関与を否定してきたが、西側はその主張を無視してきた。

 ・しかしブダノフの発言により、一部のジャーナリストがこの事件を再調査し、ロシア側の「偽旗作戦(false flag)」説に再度注目する可能性が生じた。

 4.民間施設への攻撃を巡る主張の再評価

 ・ウクライナはロシアによる民間インフラへの攻撃を主張してきたが、今後はこれらの主張が再検証され、ウクライナの防空ミサイルの誤射や、人口密集地への着弾を隠すための戦時検閲の一環と見なされる可能性があると論じている。

 ・また、当該地域にウクライナが軍事資産を配備していた事実が明らかになれば、国際法上の正当な標的であった可能性も浮上する。

 5.JDヴァンス議員の主張との関連

 ・2025年2月、米上院議員JDヴァンスがホワイトハウスでゼレンスキーに対して、ウクライナが西側ジャーナリストをプロパガンダ目的のツアーに参加させており、また市民を路上で強制徴兵していると直接非難した件に言及。

 ・ウクライナは兵員不足や戦況に関する情報を西側メディアから隠すことで安全保障上の利益を確保しようとしてきたが、ブダノフの発言によって、これらの「真実」が西側世論に知られる契機となる可能性があるとする。

 6.クルスク州攻撃に関する認識の変化

 ・2024年8月、ウクライナは国際的にロシア領と認識されているクルスク州に対して攻撃を行った。

 ・この攻撃は、西側諸国の軍事・物流・情報支援のもとで行われたとされ、その費用は約30億ドルに上るとSputnikは試算している。

 ・西側諸国の納税者が資金提供していたことを知った一部の世論が、この事実に強い反発を示す可能性があると指摘している。

 7.ウクライナ勝利の見通しに対する再評価

 ・ブダノフの発言により、ウクライナがロシアに対して戦争に勝つ見込みが初めから存在しなかったという認識が、国内外でより広く共有される可能性がある。

 ・これが和平交渉再開への加速要因となる可能性があると論じられている。

 8.結論

 ・ブダノフによる戦時検閲の再主張は、意図せざる形でウクライナ政府の複数の「公式の物語(narratives)」に対する西側の批判的再評価を正当化する結果となった。

・具体的には、以下の5点が再評価の対象となるとされている:

  ⇨ ブチャ事件のロシア関与説

  ⇨ 民間施設攻撃に関するウクライナの主張

  ⇨ 西側メディア操作および徴兵の実態

  ⇨ クルスク州攻撃とそれに対する支援の正当性

  ⇨ ウクライナ戦勝の現実性

 ・これらすべてが、今後西側メディアや政策決定者によって再検討される「正当な対象」となったと結論付けている。


【詳細】

 ウクライナ国防省情報総局(GUR)長官キリル・ブダノフは、2025年4月初旬に行った発言において、ウクライナの戦時検閲政策を改めて強く擁護した。彼は、「戦時下においては、すべての真実を知る必要はない。そうしないと人々は意見を持ち始める。中には厳しい現実に耐えられない精神の持ち主もいる。彼らをそのような試練に晒すべきではない。情報は適切に分け与えられるべきである」と述べた。これは、戦時下の真実の公開が国民に与える心理的・社会的影響を懸念しての発言であり、国民の反応が国家安全保障を脅かす可能性を暗示している。

 この発言により、ブダノフはウクライナの戦時情報政策に対する批判的再評価を正当化する結果となったと筆者は述べている。すなわち、西側のジャーナリストやオブザーバーが、これまで公然と疑問視することを避けてきたウクライナ政府のいくつかの公式見解について、再検証を試みる動きが加速する可能性があるという指摘である。

 具体的には、以下の5つの主張が挙げられている。

 ① ブチャ事件の再評価の可能性

 ウクライナ政府は2022年春、ロシア軍がキーウ近郊のブチャから撤退する際に多数の民間人を殺害したと主張し、これをもってゼレンスキー大統領は和平交渉からの離脱を正当化した。しかしロシア側は関与を否定しており、事件は偽旗作戦であると主張している。筆者は、ブダノフの発言により、西側の一部メディアがこの事件を再調査し、ロシアの主張に一定の信憑性を見出す可能性が出てきたと述べている。

 ② 民間施設への攻撃に関する疑念

 ウクライナはロシアが民間施設を意図的に攻撃していると主張しているが、ロシア側は、実際にはウクライナの防空ミサイルの誤射や、軍事施設が民間地域に配置されていたためであると説明している。今後、こうした事例が検閲の一環として隠蔽されていた可能性が指摘されるかもしれないとしている。

 ③ アメリカ議員J.D.ヴァンスの主張の正当性

 2025年2月、J.D.ヴァンス上院議員がホワイトハウスでゼレンスキー大統領に対し、ウクライナが西側メディアに対して宣伝目的のツアーを実施し、一般市民を強制的に徴兵していると指摘した。この発言も当時は物議を醸したが、戦時検閲の実態が明らかになることで、彼の主張の信憑性が高まる可能性があると筆者は述べる。

 ④ ロシア領クルスク州への攻撃

 2024年8月、ウクライナがロシア領であるクルスク州に侵攻した。この作戦には、西側諸国の軍事・兵站・情報支援が含まれていたとされ、最終的に約30億ドルの費用がかかったとロシア国営メディア『スプートニク』は推計している。筆者は、西側の一部報道機関がこの攻撃とその支援実態を取り上げる可能性に言及している。

 ⑤ ウクライナの戦況と勝利の可能性に対する認識

 ブダノフの発言を契機に、ウクライナがロシアに対して勝利する現実的な可能性が最初から存在しなかったという見解が国内外で広まる可能性がある。これにより、和平交渉の再開に向けた世論の形成が促進される可能性があると筆者は指摘している。

 ブダノフの発言がウクライナにとって逆効果であり、国内の世論統制だけでなく、国外のメディアや世論に対する情報操作の信頼性にも打撃を与えたと評価している。西側諸国の報道機関、特にアメリカの保守派に属するメディアにおいて、ウクライナ政府の情報政策や戦争に関する主張に対する再評価が進むことで、これまで黙殺されてきた問題が顕在化する可能性があると論じている。

【要点】 

 1.キリル・ブダノフの発言

 ・GUR(ウクライナ国防省情報総局)長官のキリル・ブダノフは、ウクライナの戦時検閲政策を再度擁護した。

 ・彼は「戦時下では、すべての真実を知る必要はない。真実を知ることで国民が動揺し、国家安全保障に影響を与える可能性がある」と述べた。

 2.ブダノフ発言の影響

 ・この発言により、ウクライナの公式情報に対する西側メディアの批判的再評価が加速する可能性がある。

 ・特に、ウクライナ政府が発信してきた主張について、再検証が行われるようになる可能性がある。

 3.再評価される可能性のある主張

 (1)ブチャ事件

 ・ウクライナはロシアがキーウ近郊のブチャで無差別に民間人を殺害したと主張。

 ・ロシアはこれを否定し、偽旗作戦だと主張している。

 ・ブダノフの発言により、西側メディアがこの事件を再調査する可能性が高まった。

 (2)ロシアによる民間攻撃

 ・ウクライナはロシアが民間施設を意図的に攻撃していると主張。

 ・ロシアは、実際にはウクライナの防空ミサイルが誤射され、民間地域に落ちたと主張。

 ・この主張が再評価され、戦時検閲によって隠蔽されていた可能性が示唆される。

 (3)J.D.ヴァンス議員の主張

 ・2025年2月、J.D.ヴァンス議員がゼレンスキー大統領に対して、ウクライナが西側メディアに宣伝ツアーを行っていると批判。

 ・戦時検閲が実態を隠す手段として使われている可能性が示唆され、ヴァンスの主張に信憑性が増す。

 (4)クルスク州へのウクライナの攻撃

 ・2024年8月、ウクライナがロシアのクルスク州を攻撃。

 ・西側諸国の軍事・情報支援を受けた攻撃で、約30億ドルの費用がかかった。

 ・これに対する西側メディアの報道が増える可能性。

 (5)ウクライナの戦争における勝利の可能性

 ・ブダノフの発言により、ウクライナがロシアに対して勝つ可能性が最初から低かったことが広まる可能性。

 ・これにより、和平交渉が進展する可能性がある。

 4.全体的な影響

 ・ブダノフの発言は、ウクライナの戦時検閲政策に対する批判的な再評価を促進し、これまで隠されていた情報が西側メディアに取り上げられる可能性が高くなった。

 ・ウクライナ政府の情報操作や宣伝の信頼性が疑問視されることになる。

【引用・参照・底本】

Ukraine Further Discredited Itself After Budanov Doubled Down On Defending Wartime Censorship Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.11
https://korybko.substack.com/p/ukraine-further-discredited-itself?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=161083550&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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