正當防衛としての三國同盟2022年10月20日 17:42

大日本輿地便覧 乾
  『ヒトラー總統の對米宣戰布告の大演説 一千年の歴史を作らん』 ヒトラー 〔述〕

  「戰爭の責任はル—ズヴエルトにあり!」 
  ヒトラー總統の對米宣戰布告大演説 
  (一九四一年十二月十一日獨逸國會に於て)

 (58-61頁)           
 正當防衛としての三國同盟              2022.10.20

 社會的に最も立ち遅れてゐる國々に住んでゐる兩氏の如きは、戰爭をけしかけるなどといふ大それたことをする代りに、各自の國の失業者等のために考へてでもやる方がましであらう。彼等は夫々の自國内に、食料品分配の意味で盡力するに足る困窮と苦惱とをもつてゐるのだ。ドイツ國民としては、チヤーチ ル氏からもルーズヴエルト氏からも、乃至はイーデンなどからも、喜捨金など惠んでもらう必要はない。ドイツ國民の欲するのはたゞ自己の權利のみである。(喝采)而してこの生存權は、干人のチヤーチル乃至ルーズヴエルトがゐて、これに反對の陰謀を企てようとも、飽く迄確保されるであらう。此處にゐるこの民族は、殆ど二千年に亘る歴史をその背後に有してゐる。この民族は長い期間に於いて今日ほど一致團結したことは未だ嘗つてなく、また斯くの如きは國民社會主義のお蔭で、今後の全將來に亘つても在り得ないことであらう。だが、この民族はまた恐らく斯くも慧眼であつたことは嘗てなく、また斯くも榮譽に満ちてゐたことも稀れであつた。それ故余は今日、米國代理公使に旅券を渡して彼に次の事を知らしめた。即ち、無制限の世界支配的獨裁を目指せる ルーズヴエルト大統領の政策が益々擴大の一途を辿る間に、北米合衆國はイギリスと協同して、獨伊兩國民、及び日本國民に對しても、彼等の自然なる生活維持のための諸前提を奪ふために、如何なる手段を擇ぶことをも躊躇せざるに至つた。英米兩國政府は、この理由よりするも、單に現在に於いてのみならす、むしろ今後の全將來に亘つて、よりよき世界新秩序招來のための一切の正當なる修正に反對したわけである。
 開戰以來米國大統領ルーズヴエルトは、益々、一聯の重大極まる國際法侵犯の罪を犯して來た。獨伊兩國民の財産に對する數々の不法侵害は、拘禁その他による威嚇を伴つたばかりか、それらの國民の一身上の自由を勝手氣儘に剝奪するといふ如き不法行爲を敢てしたのである。合衆國大統領のさなきだに益々 尖鋭化化せる攻撃振りは、遂ひに一切の國際法上の規定に反して、彼が米國海軍に向ひ、獨伊の國籍を有する艦船は何處ででも見付け次第襲撃し、砲擊し、且つ撃沈するやうにとの命令を下すまでに立ち至つたのである。米國の國務大臣等は、かやうな犯罪的な遺り方によつて、ドイツ潜水艦若干隻を既に撃沈したとまで揚言した。 
 獨伊の多數商船は米國巡洋艦の襲撃を受けて拿捕された上に、その非戰闘員たる乘組員は拉致せられ、且つ投獄せられたのであつた。それどころか、更に、アメリカ政府側には何等の公式否定も行はれすして、ルーズヴエルトの遠大な計畫なるものが米國で公表せられるに至つたが、それは遅くとも一九四三年には兵力を用ひて獨伊兩國をその本國自體に於いて襲撃せんとするものであ つた。
 これにより、數年來のルーズヴエルト大統領に依る堪え難き挑發行爲にも拘らず、戰爭の擴大を防ぎ合衆國との正常な關係を維持せんとする、獨伊兩國の類例なき辛抱強さを立證する努力は、全く水泡に歸してしまつたのである。
 茲に於いて獨伊兩國は、遂ひに、一九四〇年九月二十七日附の三國條約の規定に遵ひ、日本と相携へて、それら三國とその國民とを防衛し、且つそれに依つてその自由と獨立とを維持せんがために、アメリカ合衆國と英國とに對する戰ひを開始するの止むなきに至つたのである。依つてこれら三國は次の如き協定を締結し且つ本日ベルリンに於いて調印を了した次第である。

 (61-62頁)
 三 國 協 定                    2022.10.20

 アメリカ合衆國及び英國に對する共同の戰爭が完遂せられるまでは干戈を收めざるの確乎不動の決煮をもつて大日本帝國政府、ドイツ國政府及びイタリー國政府は左の諸規定を協定せり。
 第一條 日本國、ドイツ國及びイタリー國はアメリカ合衆國及び英國により強制せられたる戰爭を其執り得る一切の強力手段をもつて勝利に終るまで遂行すべし。
 第二條 日本國、ドイツ國及びイタリー國は相互の完全なる諒解によるにあらざればアメリカ合衆國及び英國の何れとも休戰又は講和をなさざるべきことを約す。
 第三條 日本國、ドイツ國及びイタリー國は戰爭を勝利をもつて終結したる後においても亦一九四〇年九月二十七日その締結したる三國條約の意義における公正なる新秩序招來のため最も密接に協力すべし。
 第四條 本協定は署名と同時に實施せらるべく且つ一九四〇年九月二十七日の三國條約と同一期問有効なるべく締約國は右有効期間の満了前適當なる時期 において爾後における本協定第三條に規定せられたる協力の態樣につき諒解を 遂ぐべし。 

 (63-67頁)
 銃後國民の覺悟と神への感謝            2022.10.20

 議員諸君 !
 一九四〇年七月に行つた余の最後の平和提案が拒否されて以來、我々としてはこの戰爭は最後まで闘ひ拔かねばならぬといふ點を、すでに充分に承知してゐる。故にアングロサクソン的、ユダヤ的、資本主義的世界がポルシエヴイズムと統一戰線を形成してゐる事實は、我々國民社會主義者にとつては、何ら奇とするに足りない。我々はドイツの國内においても、彼らが常に同様の寄合世帶を為しつつあつたことを見て來たのだ。しかし我々は、國内におけるこの闘 爭を成功裡に遂行し、十四年間に亘る權力獲得の死闘の後に、遂に我々の敵を殲滅した。ドイツを奈落の底から救ひ出さんと決意した時、余は未だ名もなき一介の兵士であつた。この闘爭が如何に困難であつたかは、多くの諸君が知るところである。僅か七人の黨員によつて行はれた小さな運動から一九三三年一月三十日の責任ある政府結成に至るまでの道程は、實に奇蹟的なものであつたから、たゞ神の攝理のみがその祝福によつてこれを可能ならしめることを得たのだと考へられる。
 今日余は、世界最強の陸軍、最大の空軍及び誇りある海軍を統卒してゐる。余は余の背後、余の周圍に一致團結せる黨のあることを知つてゐる。この黨と共に余に大を爲し、黨は余を通じて大を爲したのである。余の目前に見る敵は、二十年來周知の仇敬である。しかし余の前途に横はる道は、遇去において踏んで來た道程と比較すべくもない。ドイツ國民は、今や、その生存の決定的瞬間に立つてゐることを認識してゐる。幾百萬の兵士は、最も困難なる條件の下に、從順忠實にその義務を遂行してゐる。又幾百萬のドイツ農民及び勞働者、並に婦人たちは、工場に營業所に田畑に、各々額に汗して銃後のためにパンを作り、戰線のためには武器を製作してゐる。更に我國と盟を結べるものは、我々と等しき苦惱を抱き、我々と同じ敵を持つ強力な國々である。アメリカの大統領とその全權主義的徒輩は、我々を持たざる國と命名した。これは正しい。しかし持たざる者も生きんと欲するものであり、又生くるために僅かに
所有してゐるものまで持てる者たちに奪はれることを、絶對的に阻止せんとするものである。
議員諸君 ! 諸君の知らるる如く、余は一度び始めた戰爭を最後まで成功的に闘ひ拔かんとする斷乎たる決意を有するものである。諸君は皆、余がかくの如き闘争に事いて何事をも恐れず、必要とあらば如何なる抵抗をも排する意志を有するものなることを知つてゐる。
 余は諸君に對し一九三九年九月一日の演説において、今次の戰爭においては、兵器の力も時問の力もドイツを屈服せしめ得ないであらうと保證した。余は余の敵に對しても保證したい。兵力や時問が我々を屈服し得ないばかりでなく、何らの内部的疑惑も、只管に義務を遂行せんとする我々を動搖せしめ得ないといふことも。もし吾人にして戰線にある兵士の犠牲、彼等の爲せるところに思ひを致すならば、銃後の犠牲の如さは全く論ずるるに足りない些少なものである。しかし、すでに我々より前の世代にドイツ國民の存立と偉大さのために斃れた凡ゆる人々の數を考ふるならば、我々はここに初めて我々自身の双肩にかかる義務の大なるを自覺するであらう。
 しかしながら誰かこの義務を回避せんと欲する者があるならば、彼は我我々に交つて國民の一員なりと稱する權利を有しない。權力獲得のための闘爭において何ら苛責するところなく斷乎たる態度を取つて來たと同樣に、我々は今、わかドイツ國民の維持のための闘爭においても些かの苛責もなく、毅然たる熊度に出るであらう。わが國民の父たり子たる最良の男子が多數戰野に倒れてゐる時、銃後にあつて戰線の犠牲を水泡に歸せしめんとする如き生活は、誰一人としてこれを考ふることを許されない。苟くもドイツの戰線を臺なしにし、政府の権威を弱め、又銃後の働さを妨害する試みが行はるる限り、如何なる假面を被らうとも同樣である。罪ある者はすべて死罪に處せられるであらう。たゞ異なるところは、戰線の兵士は最高の名譽の中にこの犠牲を拂ふに反し、名譽ある犠牲を水抱に歸せしめんとする者は、恥辱の中に死んで行く點にある。
 我々の敵は思ひ違ひをしてはならぬ。有史以來二千年の長きに亘り、ドイッ民族が今日程鞏固に一致圈結したことは嘗つてなかつたのだ。神はこの數年 間我々に對して大なる恵みを與へ給ふた。我々はかくも偉大なる民族の一員たるこを許し給ふた神の攝理に對して、頭を垂れて成謝せざるを得ない。然り!   我々は今ドイツ民族の過去及び將來に鑑みて、不滅のドイツ史上に我らの名をも留め得るの榮譽を有することを神に感謝するものである。(完)
  
引用・参照・底本

『ヒトラー總統の對米宣戰布告の大演説 一千年の歴史を作らん』 ヒトラー 〔述〕日獨旬刊社出版局 昭和十六年十二月三十日發行

(国立国会図書館デジタルコレクション)