「タイタン」による富の支配2024年08月27日 19:41

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【概要】

 ピーター・フィリップスの新しい本「Titans of Capital: How Concentrated Wealth Threatens Humanity」の内容と彼へのインタビューを紹介している。本書では、世界の富の多くが少数の企業とその背後にいる「タイタン」と呼ばれる人々によって支配されている現状が描かれている。具体的には、ブラックロックやバンガード・グループ、UBSグループなどの10大資産運用会社が、世界の富の50兆ドルを管理しており、これらの企業は主に超富裕層(人口の0.05%)のために働いている。

 フィリップスは、この富の集中が民主主義を脅かし、世界の不平等を拡大させていると警告している。これらの企業は、化石燃料、武器製造、民間刑務所など、社会的に有害とされる産業に巨額の投資を行っており、その結果、多くの人々の健康や生活環境に悪影響を与えている。また、彼らの影響力は世界の政治や経済、さらには軍事分野にまで及んでおり、グローバルな不平等を意図的に維持していると述べている。

 フィリップスは、これらの「タイタン」がどのようにして資本を集中させ、それがどのように世界に悪影響を及ぼしているのかを明らかにし、その解決策として、市民が民主的な構造を構築し、富の集中に対抗する必要があると主張している。

【詳細】

 ピーター・フィリップスによる新しい本「Titans of Capital: How Concentrated Wealth Threatens Humanity」に関する内容を中心に、世界の富が少数の企業や個人に集中し、それが人類や社会にどのような影響を及ぼしているかを解説している。以下、内容を詳しく説明する。

 1. 富の集中と「タイタン」

 フィリップスの本は、世界のトップ10の資産運用会社が、総額50兆ドルにのぼるグローバルな富を管理している現状に焦点を当てている。これらの企業は、ブラックロックやバンガード・グループ、UBSグループ、フィデリティ・インベストメンツなどで、主に超富裕層である世界の人口の0.05%に利益をもたらしている。フィリップスは、これらの資産運用会社の経営陣を「タイタン」と呼び、彼らが世界経済においてどれほどの影響力を持っているかを示している。

 2. グローバルな不平等の拡大

 フィリップスは、富の集中が単なる偶然ではなく、意図的なものであり、「タイタン」たちがその状況を維持し拡大していると主張している。彼らは富の再分配ではなく、さらに富を集中させるような資本投資の決定を行っており、その結果として世界の不平等がますます拡大している。この不平等は、世界中で貧困、栄養不良、住宅の不安定、医療へのアクセスの欠如といった問題を引き起こしている。フィリップスは、これが世界の大部分の人口に深刻な影響を与えていると述べている。

 3. 有害産業への投資

 「タイタン」たちは、化石燃料、タバコ、アルコール、プラスチック、銃器、ギャンブル、民間刑務所といった社会的に有害とされる産業に多額の投資を行っている。例えば、フィリップスは、これらの資産運用会社が、タバコ産業に1030億ドル、アルコール産業に600億ドル、武器製造業に2600億ドルを投資していることを指摘している。これにより、タバコによる年間800万人の死亡、アルコール依存症や関連する病気、さらには戦争や暴力を助長する結果を招いていると述べている。

 4. 軍事産業への関与

 フィリップスはまた、「タイタン」たちが軍事産業に深く関与していることを指摘している。彼らは、武器製造企業への巨額の投資を通じて、戦争や戦争の脅威から利益を得ている。これらの投資は、国際関係における緊張を高め、結果として世界的な安全保障の不安定化を助長している。フィリップスは、これが世界中での軍事的対立をさらに悪化させる可能性があると警告している。

 5. 世界経済フォーラム(WEF)との関係

 「タイタン」たちは、世界経済フォーラム(WEF)とも深く結びついている。WEFは、資本主義を保護し、その中で発生する主要な危機に対処することを目指すシンクタンクであり、特に「ステークホルダー資本主義」と呼ばれる概念を提唱している。これは、企業が利益追求を行う中で、環境、社会、ガバナンス(ESG)を考慮することを求めるものでる。しかし、フィリップスは、このアプローチが根本的な問題の解決にはほとんど寄与していないと批判している。

 6. 市民の役割と抵抗の可能性

 フィリップスは、これらの「タイタン」による支配に対抗するためには、市民が草の根の民主的な構造を構築し、富の集中に対抗する必要があると主張している。彼は、これらの「タイタン」たちに直接的に働きかけ、人類全体の福祉を改善するために資本を使うように求めることが重要だとしている。また、国連の「世界人権宣言」を引用し、全ての人が適切な生活水準を享受する権利があると強調している。

 7. 結論

 フィリップスのメッセージは明確である。現在の富の集中は、人類にとって深刻な脅威であり、これに対抗するためには、グローバルな市民社会が団結し、富の再分配を求める声を上げる必要があるというものである。彼は、もし「タイタン」たちがこの要求に応じなければ、地球規模の不平等が気候崩壊や地域紛争、大規模な市民の不安を引き起こす可能性があると警告している。

【要点】

 1.富の集中

 ・世界のトップ10資産運用会社が総額50兆ドルのグローバルな富を管理
 ・これらの企業は、超富裕層(人口の0.05%)のために働く

 2.不平等の拡大

 ・富の集中が意図的であり、不平等を拡大させる
 ・世界の貧困、栄養不良、住宅不安、医療へのアクセス不足などが悪化

 3.有害産業への投資

 ・「タイタン」は化石燃料、タバコ、アルコール、プラスチック、銃器、ギャンブル、民間刑務所に投資
 ・例:タバコに1030億ドル、アルコールに600億ドル、武器製造に2600億ドルを投資

 4.軍事産業への関与

 ・「タイタン」は武器製造企業に巨額の投資を行い、戦争や戦争の脅威を助長
 ・これにより国際的な緊張や安全保障の不安定化が進む
 
 5.世界経済フォーラム(WEF)との関係

 ・WEFは資本主義を保護し、環境や社会の問題に対処することを目指す
 ・「タイタン」はWEFに積極的に関与し、ESG(環境・社会・ガバナンス)基準を掲げるが、効果は限定的

 6.市民の役割と抵抗の可能性

 ・市民は草の根の民主的構造を構築し、富の再分配を求めるべき
 ・直接的な働きかけや国連の「世界人権宣言」に基づく要求が重要

 7.結論

 ・富の集中が人類にとって深刻な脅威であり、対応しなければ気候崩壊や地域紛争、大規模な市民不安が引き起こされる可能性がある 

【引用・参照・底本】

From Weapons to Fossil Fuels — 10 Firms Control $50 Trillion of Global Wealth truthout 2024.08.26
https://truthout.org/articles/from-weapons-to-fossil-fuels-10-firms-control-50-trillion-of-global-wealth/?utm_source=feedotter&utm_medium=email&utm_campaign=FO-08-26-2024&utm_content=httpstruthoutorgarticlesfromweaponstofossilfuels10firmscontrol50trillionofglobalwealth&utm_source=Truthout&utm_campaign=077f207622-EMAIL_CAMPAIGN_2024_08_26_08_33&utm_medium=email&utm_term=0_bbb541a1db-077f207622-%5BLIST_EMAIL_ID%5D

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