ロシアとインドによる歴史的な石油取引2024年12月13日 17:49

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【概要】
  
 ロシアとインドによる歴史的な石油取引について、以下の五つの重要なポイントに基づき説明する。

 1. 安定した収益とインドの成長加速

 この取引により、ロシアは制裁圧力に対抗するための安定した予算収入を得ることができ、インドは割引価格での石油輸入によって成長を加速させることが可能となる。この契約は10年間にわたり継続されるため、両国間の戦略的パートナーシップの基盤を拡大する。また、ロシアは得た収益の一部をインド国内に再投資する可能性も示唆されている。

 2. ロシアの南アジアエネルギー重視

 この取引はロシアの南アジアにおけるエネルギー戦略の一環である。ロシアは中国への過度の依存を回避するため、インドを中心とする南アジア市場を活用しようとしている。この契約により、ロシアの石油輸出の約半分がインド市場に向けられると報じられており、これが中国とのエネルギー関係において重要なバランス調整役となる。

 3. OPEC+との摩擦は限定的

 この取引は、一部ではOPEC+加盟国との摩擦を引き起こす可能性があると指摘されている。しかし、インドの石油需要の約3分の2は引き続きサウジアラビアやUAEが供給する余地があり、これらの湾岸諸国とロシアの関係は良好であるため、大きな問題にはならないと考えられる。さらに、ロシアはASEANや欧州、日本市場での直接的な競争相手ではない。

 4. トランプ政権下でのインド制裁は見込まれない

 トランプ氏の外交方針として、ロシアと中国の連携を分断する戦略が掲げられている。このため、ロシアがインドに依存することはアメリカの利益に合致し、インドに対する制裁は避けられる可能性が高い。仮に石油関連の制裁が発動される場合、中国を対象とする可能性が高いと見られる。

 5. 中国との価格交渉の影響

 2022年以降、中国が「底値取引」を求めた結果、ロシア側は不満を抱くに至った。この交渉は、西側の報道が示唆していた中国の搾取的な姿勢を裏付けるものとして認識され、結果的にロシアはインドをエネルギー分野における最も戦略的なパートナーとして優先するようになった。

 この取引は、ロシアとインドの戦略的パートナーシップの新たな節目であり、両国の関係が外部からの圧力にもかかわらず拡大し続けていることを証明している。また、ロシアがインドを優先する方向にシフトしていることを示しているが、これは中国を犠牲にしてのことではなく、三者の協調が維持される中での動きである。

【詳細】

 以下に、ロシアとインドによる歴史的な石油取引について、各ポイントをさらに詳しく説明する。

 1. 安定した収益とインドの成長加速

 この取引により、ロシアは年間約130億ドル(現在の価格で)の収益を確保できる。制裁の影響で経済的圧力を受ける中、こうした安定した収入源はロシア経済の重要な支えとなる。一方で、インドは1日あたり50万バレルという大規模な石油供給を割引価格で受け取ることで、エネルギーコストを削減し、経済成長を加速させることができる。特に、インドは2027年までに世界第3位の経済大国を目指しており、この取引はその目標達成を支援する要素となる。また、ロシアが得た収益の一部をインド国内のプロジェクトに再投資する可能性があり、これが両国間の経済協力をさらに深めるきっかけとなる。

 2. ロシアの南アジアエネルギー重視

 この取引は、ロシアが南アジア市場を重要視している証拠である。ロシアは、従来の中国やヨーロッパ向けのエネルギー輸出依存からの脱却を目指し、新たな市場の開拓を進めている。特に、中国へのエネルギー依存が高まることへの懸念が背景にあり、インド市場の活用は、ロシアにとって戦略的に重要な選択肢となる。また、ロシアはインド以外にも、アフガニスタンやパキスタンを含む南アジア全体でエネルギー協力を拡大する計画を進めており、この地域全体でのプレゼンスを強化する意図が見える。今回の取引では、ロシアの海上石油輸出の約半分がインド向けとなるとされており、インド市場がロシアのエネルギー戦略における中心的役割を果たすことが明確である。

 3. OPEC+との摩擦は限定的

 一部の専門家は、ロシアがインド市場でサウジアラビアやUAEなどのOPEC+加盟国と競合することで、摩擦が生じる可能性を指摘している。しかし、インドの石油需要のうち約3分の2は引き続き湾岸諸国からの供給で賄われる見込みであり、大きな市場競争には発展しないと考えられる。また、ロシアとこれらの湾岸諸国の間には強固な外交関係が築かれており、特にプーチン大統領と湾岸諸国の指導者との個人的な関係は良好である。さらに、ロシアは東南アジア、ヨーロッパ、日本などの市場では直接的な競争相手ではなく、これが摩擦の可能性を抑える要因となる。

 4. トランプ政権下でのインド制裁は見込まれない

 トランプ前大統領が再び大統領の座に就いた場合、ロシアと中国の連携を分断することがアメリカの戦略的目標になると予想される。そのため、ロシアがインド市場への依存を深めることはアメリカの利益に合致するとみられる。インドに対する制裁は、インドとの関係を強化したいアメリカの戦略に反するため、発動される可能性は低い。一方で、仮に石油取引に関する制裁が行われる場合、その対象はインドではなく、中国になる可能性が高いとされている。これは、ロシアが中国に供給する石油の量を制限することで、中国の影響力を抑える意図がある。

 5. 中国との価格交渉の影響

 中国が2022年以降、ロシアに対して極端に低い価格でのエネルギー供給契約を要求したことは、ロシア政府内で驚きと不満を引き起こした。この要求は、これまで信頼されていた中国の交渉姿勢を疑問視させるものであり、結果的にロシアは中国に代わる戦略的パートナーとしてインドを選ぶ方向に傾いた。もちろん、ロシアと中国の関係は歴史的に見ても非常に良好であり、二国間貿易も過去最高水準に達している。しかし、エネルギー分野におけるこうした経験は、ロシアがインドとの関係をより重視する契機となった。

 総括
 
 この石油取引は、ロシアとインドの戦略的パートナーシップを次の段階へと引き上げる歴史的なものである。両国の関係が外部からの圧力にもかかわらず拡大し続けていることを示し、また、ロシアが中国に対する依存を減らしつつ、インドとの関係を深化させる意図を明確にしている。ただし、これは中国を犠牲にしてのものではなく、ロシアはインド、中国とのバランスを取りつつ、三者間の協力関係を維持しようとしている。この動きは、BRICSやSCOといった多国間枠組みにおいても重要な影響を与える可能性がある。
 
【要点】 

 1.安定した収益とインド経済の成長加速

 ・ロシアは年間約130億ドルの収益を確保し、制裁下での財政安定を図る。
 ・インドは割引価格で1日50万バレルの石油を輸入し、エネルギーコスト削減と経済成長を加速。
 ・ロシアが収益の一部をインド国内プロジェクトに再投資する可能性があり、経済協力がさらに深化する。

 2.ロシアの南アジアエネルギー戦略

 ・ロシアは中国への過度な依存を回避し、インドを中心とした南アジア市場に軸足を移している。
 ・南アジア全体でのエネルギー協力を拡大し、特にインド市場はロシアの海上石油輸出の約半分を占める重要な存在となる。
OPEC+との摩擦の可能性は低い

 ・ロシアがインド市場で湾岸諸国と競合する懸念があるが、インド需要の約3分の2は引き続きサウジアラビアやUAEが供給。
 ・ロシアと湾岸諸国は強固な外交関係を維持しており、直接的な摩擦は生じにくい。

 3.トランプ政権下での制裁リスクは低い

 ・トランプ氏の戦略的目標はロシアと中国の連携分断であり、インドとの関係強化を重視する可能性が高い。
 ・仮に制裁が行われる場合、その対象はインドではなく中国になる可能性が高い。

 4.中国との価格交渉の影響

 ・中国がロシアに対して極端な低価格での契約を要求したことが、ロシアのインド重視の契機となる。
 ・ロシアと中国の関係は良好だが、こうした経験を踏まえ、エネルギー分野でインドを主要パートナーとして選ぶ方向に傾いた。

 総括

 ・この取引は、ロシアとインドの戦略的パートナーシップを新たな段階に引き上げた。
 ・ロシアは中国との関係を犠牲にせず、インドとの協力を強化し、BRICSやSCOにおける三者間の協力関係を維持しようとしている。

【引用・参照・底本】

Five Takeaways From The Historic Russian-Indian Oil Deal Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.13
https://korybko.substack.com/p/five-takeaways-from-the-historic-f85?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153059900&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

中国パキスタン経済回廊(CPEC)2024年12月13日 18:44

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【概要】
  
 Andrew Korybko氏がVOA中国のFM Shakil氏とのインタビューで述べた内容を記述したものである。

 1. 中国のアフガニスタンにおける関心と平和・安定への取り組みの動機

 中国は、中国パキスタン経済回廊(CPEC)をアフガニスタンを経由して中央アジア共和国へ拡大することを構想している。これは停滞しているこのメガプロジェクトを活性化させるためのものであるが、アフガニスタンとパキスタン間の緊張関係が計画の妨げとなっている。この緊張は、タリバンがテリーク・イ・タリバン・パキスタン(TTP)を支援しているとされる疑惑や、パキスタンがアメリカと接近していることへの懸念に起因している。

 パキスタンとアメリカはTTPをテロ組織とみなしている。一方、タリバンはパキスタンがアメリカの反テロ攻撃のために自国の空域を提供する可能性に不安を抱いている。軍事力の非対称性を背景に、タリバンはTTPを非正規戦の手段として利用し、パキスタンとの軍事的バランスを保とうとしている可能性がある。しかし、TTPはバローチ解放軍(BLA)などの他の武装勢力とも連携しているとされ、これらはパキスタン、中国、アメリカによってもテロリストとみなされている。

 これらの勢力は2021年8月以降、中国の労働者やCPEC関連投資を標的とした攻撃を強化している。中国にとって、アフガニスタンとパキスタン間の安全保障上のジレンマを軽減することは、自国民やプロジェクトへの攻撃を減少させ、CPECの復活とアフガニスタンへの拡大を可能にする重要な要素である。CPECが「一帯一路」構想の旗艦プロジェクトであることを踏まえれば、この点は特に重要である。

 2. カブールにおけるパキスタンの影響力の低下

 アフガニスタンとパキスタン間の安全保障上のジレンマは、タリバンが権力を掌握する以前から存在していたが、2022年4月にイスラマバードでの政権交代がスキャンダラスな形で起きたことにより悪化した。タリバンはこの政権交代を親米的な体制変革として認識し、TTPへの依存を強めることで、パキスタンとアメリカの関係改善が自国に与える影響を警戒した。

 これにより、タリバンはパキスタンとの関係を断ち切り、アメリカを地域から追放するという共通の目標を裏切られたとみなした。一方、パキスタン側も、タリバンが権力掌握後にTTPとの関係を断絶しなかったことを非難し、これを彼らが再び過激な路線に戻った結果と考えた。また、アフガニスタンがデュランドラインを国境として認めておらず、パシュトゥーン人の多くがパキスタンに居住している事実も両国間の長年の対立点であり、タリバン政権においてもこれが国家主義的な議題として強調されている。

 タリバンは現在、自国を国家主義と宗教主義を組み合わせた組織とみなし、これらの問題を自国に有利に解決することを優先している。これによりパキスタンにとっては存在論的な脅威が生じ、結果としてアメリカとの関係改善を進める動きにつながった。

 3. タリバンと中国共産党の協力の背景と共通点

 タリバンは国家主義と宗教主義を融合させた組織であると主張しているが、無神論者である中国共産党と協力することに矛盾を感じていない。アフガニスタンは経済を再建し、国民の生活を向上させるために外国からの投資を切実に必要としており、中国はユーラシア貿易ルートの開拓と、アフガニスタンにあるとされる1兆ドル規模の希少鉱物資源の探索に関心を持っている。

 また、中国はパキスタンの伝統的な戦略的パートナーであるため、タリバンは中国がパキスタンにポジティブな影響を与え、アメリカの影響を抑えることを期待している可能性がある。これが成功すれば、アフガニスタンとパキスタン間の安全保障上のジレンマがカブールに有利に解決されるとタリバンは考えている。

以上がKorybko氏の見解の要約である。

【詳細】

 以下は、Andrew Korybko氏のインタビュー内容について、さらに詳しく説明したものである。各質問に対する回答を深掘りし、それぞれの要素を詳細に解説する。

 1. 中国のアフガニスタンにおける関心と動機

 中国の「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」は、「一帯一路」構想の旗艦プロジェクトであり、地域のインフラ開発と貿易促進を目指す重要な構想である。しかし、これをアフガニスタンや中央アジア共和国まで拡大するという中国の計画は、アフガニスタンとパキスタン間の深刻な緊張により妨げられている。

 1.1 安全保障上のジレンマ

 ・タリバンとTTPの関係

 パキスタンとアメリカは、TTP(パキスタン・タリバン運動)をテロ組織と認識しており、パキスタンはタリバンがTTPを支援していると疑っている。これに対し、タリバン側は、TTPを非正規戦力として利用し、パキスタンとの軍事的非対称性を克服しようとしている可能性がある。

 ・バローチ解放軍(BLA)の脅威

 TTPはバローチ解放軍(BLA)などの武装勢力とも連携しているとされており、これらのグループは中国、パキスタン、アメリカすべてにとって共通の敵である。特に、中国のCPEC関連のプロジェクトや労働者を標的とした攻撃が激化しており、中国の安全保障への影響が増大している。

 1.2 中国の狙い

 ・CPECの復活と拡大

中国は、この安全保障上の問題を緩和することで、CPECの停滞を解消し、アフガニスタン経由で中央アジアにプロジェクトを拡大することを目指している。

 ・「一帯一路」構想の推進

 CPECの成功は「一帯一路」全体の成功に直結しており、中国はこれを地域における経済的・地政学的影響力の拡大と結びつけている。


 2. パキスタンの影響力の低下

 アフガニスタンとパキスタン間の緊張関係はタリバンが政権を掌握する以前から存在していたが、2022年のパキスタンにおける政権交代によって悪化した。

 2.1 政権交代の影響

 ・タリバンの見解

 タリバンは、パキスタンの政権交代をアメリカによる親米的な体制変革とみなした。これにより、タリバンはパキスタンとの関係を見直し、TTPへの依存を強めた。この動きは、アメリカとの関係改善を進めるパキスタンに対する牽制とみなされている。

 ・パキスタンの不満

 一方、パキスタンはタリバンが権力掌握後もTTPとの関係を断絶しないことを裏切り行為と認識し、タリバンが再び過激な路線に戻ったと考えている。

 2.2 デュランドライン問題

 ・歴史的背景

 デュランドラインはアフガニスタンとパキスタン間の国境であるが、アフガニスタンはこれを正式な国境として認めていない。さらに、パシュトゥーン人がパキスタンに多く居住していることも、両国間の緊張を高めている。

 ・タリバンの姿勢

 タリバンは自らを国家主義と宗教主義を融合させた組織と位置付け、デュランドライン問題やパシュトゥーン問題を優先的に解決することで、自国の正統性を強化しようとしている。

 3. タリバンと中国の協力関係

 タリバンと中国は一見すると対極的なイデオロギーを持つ組織であるが、共通の利益に基づき協力関係を構築している。

 3.1 経済的な相互利益

 ・アフガニスタンのニーズ

 アフガニスタンは戦争によって荒廃した経済を再建し、国民の生活水準を向上させるために、中国からの投資を切実に必要としている。

 ・中国の関心

 中国は、アフガニスタンに存在するとされる1兆ドル規模の希少鉱物資源の開発に強い関心を持っている。また、新しいユーラシア貿易ルートの開拓にも関心がある。

 3.2 地域安定への期待

 タリバンは、中国がパキスタンに影響を与えることで、アメリカの影響力を抑制できると期待している。また、中国としても、CPECをアフガニスタンに拡大するためには、地域の安定が不可欠である。

 3.3 タリバンの期待

 タリバンは、中国との協力が自国の国際的な正統性を高め、パキスタンとの交渉を有利に進める助けになると考えている。また、中国による経済投資がアフガニスタンの経済再建に寄与するとの期待もある。

 以上のように、中国、パキスタン、アフガニスタン、そしてタリバンの間の関係は、地政学的な利益や安全保障上の懸念、経済的な必要性に基づいて複雑に絡み合っている。これらの要素が相互に影響を与えながら、地域の将来が形成されていく可能性がある。
 
【要点】 

 中国のアフガニスタンへの関心と動機

 ・中国パキスタン経済回廊(CPEC):CPECの停滞解消とアフガニスタン経由での中央アジア拡大を目指す。

 ・安全保障上の問題

  ⇨ タリバンがTTP(パキスタン・タリバン運動)を支援しているとの懸念。
  ⇨ TTPとバローチ解放軍(BLA)が中国のCPEC関連プロジェクトを標的に。

 ・経済的利益:アフガニスタンに1兆ドル規模の希少鉱物資源があるとされ、中国はその開発に関心。

 パキスタンの影響力低下

 ・タリバンの態度変化:パキスタン政権交代をアメリカ寄りとみなし、TTP支援を強化。
 ・国境問題(デュランドライン):タリバンはデュランドラインを国境として認めず、パシュトゥーン人問題も絡む。
 ・パキスタンの不満:タリバンがTTPとの関係を断絶しないことを裏切り行為と認識。

 タリバンと中国の協力関係

 ・経済的利益の共有

  ⇨ アフガニスタンは経済再建のために中国投資を求める。
  ⇨ 中国はアフガニスタンの鉱物資源開発や新貿易ルート構築を狙う。

 ・地域安定の期待

  ⇨ 中国はパキスタンに影響を及ぼし、アメリカの影響力を抑制。
  ⇨ タリバンは中国の協力を国際的正統性向上に利用。

 総括

 ・中国、アフガニスタン、パキスタン間の関係は、安全保障、経済、地政学的利益の複雑な相互作用に基づいている。
 ・地域安定と「一帯一路」構想推進のため、中国はアフガニスタンとの関係強化を模索している。

【引用・参照・底本】

Korybko To VOA China: China Will Struggle To Bring Pakistan & The Taliban Back Together Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.12
https://korybko.substack.com/p/korybko-to-voa-china-china-will-struggle?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153015908&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

イスラエルのシリアでの「ショック・アンド・オー」作戦の背景2024年12月13日 19:21

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【概要】
  
 イスラエルによるシリアでの「ショック・アンド・オー」作戦の背景について、以下のように説明する。

 イスラエルは、シリアのアサド政権が崩壊し、テロ組織指定を受けているトルコ支援下のハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)による新政権が成立した後、同国に対して約500回の攻撃を行った。この大規模作戦の目的は「防衛地帯の無力化」であり、ゴラン高原の緩衝地帯を越え、シリア・レバノン国境沿いに進出し、ダマスカスからわずか数キロの地点にまで到達している。

 この作戦は現在も進行中であり、イスラエルがさらにシリア深部やレバノンを迂回してヒズボラを攻撃する可能性がある。また、ゴラン高原のイスラエル占領地をシリア側に拡張し、さらには南シリアでドルーズ派を武装化させることで、独立はしないまでもクライアント国家を形成する可能性もある。これらは「大イスラエル計画」の一環と見なされる。

 ロシアの国連常駐代表ヴァシリー・ネベンジアは、イスラエルによるシリアへの「継続的な侵略」を非難した。一方で、イスラエルの「非軍事化」作戦は、旧ソ連およびロシア製の戦略兵器がトルコ経由でウクライナに送られることを防ぐとも言える。これらの兵器は反乱軍やテロリストでは運用できないため、彼らが西側支援者への支払いとして渡す可能性があったが、破壊されたことでその可能性が消えた。

 この結果、ロシアにとって軍事技術的な機会が生じた可能性がある。ロシア科学アカデミーの研究者イブラギム・イブラギモフは、新たなシリア軍を編成するためにロシアの軍事教官が協力する可能性を指摘している。このため、ロシアの国営メディアは、シリア政権交代に対して抑制的な反応を示していると考えられる。

 さらに、イスラエルがシリアの戦略兵器を今になって破壊した理由については、アサド政権よりもHTSをより大きな脅威と見なしているためであると考えられる。アサド政権は予測可能であり、イスラエルにとって管理可能な存在であったが、HTSはイデオロギー的に動機づけられた組織であり、戦略兵器を使用してイスラエルに対する攻撃を行う可能性が高い。

 こうした背景から、イスラエルの作戦の動機は以下の通りである。

 1.HTSをアサド政権以上の脅威と見なしていること。
 2.レバノンおよびシリアでの軍事戦略的目標の追求。
 3.領土拡張を目指す「大イスラエル計画」の可能性。

 一方で、以下のような意図しない結果ももたらしている。

 1.バイデン政権によるアフガニスタン撤退の失策がさらに際立つこと。
 2.シリアの重装備がウクライナに渡ることが防がれること。
 3.ロシアがシリアでの軍事的存在を維持する可能性が高まること。

【詳細】

 イスラエルによる今回のシリアでの大規模攻撃作戦は、地域の戦略的環境に深い影響を与えており、政治的、軍事的、そして地政学的な要因が複雑に絡み合っている。これをさらに詳しく解説する。

 作戦の背景と目的

 イスラエルがシリアで展開している「ショック・アンド・オー」作戦は、次の主要な目的に基づいている。

 1.「防衛地帯」の確立

 イスラエルの主要な目標は、ゴラン高原周辺を「無力化」し、将来的な脅威を排除することである。この地域は長年にわたり、イスラエルにとって安全保障上の最優先課題であり、特にヒズボラやイラン革命防衛隊(IRGC)の活動が懸念されてきた。新たに成立したHTS政権は、これまでのアサド政権以上に予測不能で危険な存在と見なされており、彼らが支配するシリアの状況に対応する必要があった。

 2.戦略兵器の無力化

 シリアが保有していた旧ソ連およびロシア製の戦略兵器は、HTSの手に渡る可能性があった。HTS自体はこれらの運用能力を欠いているが、訓練を受けた旧シリア軍兵士や、兵器を西側諸国やトルコに渡すことによる間接的な脅威が存在した。これを阻止することがイスラエルの優先事項であった。

 3.「大イスラエル計画」の可能性

 イスラエルが今回の作戦を通じて領土を拡大する可能性も指摘されている。ゴラン高原のイスラエル占領地をシリア側にさらに拡大する、あるいは南シリアにおけるドルーズ派の自治地域を形成することが、長期的な計画として考えられる。

 4.ヒズボラへの対策

 作戦範囲がシリア南部だけでなく、レバノン国境付近にも及んでいることから、ヒズボラに対する牽制の意図が含まれていると推測される。特に、ヒズボラの防衛線を背後から攻撃する形で侵入する可能性が指摘されており、これがレバノン全体の安全保障環境を不安定化させる可能性がある。

 地域的・国際的影響

 1.ロシアとの微妙な関係

 ロシアは今回の政権交代やイスラエルの行動に対して公式には非難を表明したが、同時に、これを自身の利益に活用する余地がある。具体的には、破壊された戦略兵器を新たに供給することで、ロシアがシリアでの影響力を維持する可能性がある。また、ロシアの軍事教官が新政権の軍事力再編に関与する可能性も示唆されている。

 2.アメリカの「失策」との対比

 バイデン政権下でのアフガニスタン撤退により、約240億ドル相当の米国製兵器がタリバンの手に渡った一件と、今回のイスラエルの対応が比較される。イスラエルはHTSの支配下にあるシリアで同様の事態を防ぐために迅速に行動しており、この違いは国際的に注目されている。

 3.トルコの関与と影響

 HTSがトルコの支援を受けていることを考えると、イスラエルの行動はトルコとの緊張を高める可能性がある。同時に、トルコが新政権を通じて地域での影響力を拡大しようとする動きも見逃せない。これにより、トルコとイスラエル、そしてロシアの間で複雑な三角関係が形成される可能性がある。

 4.シリア内政と再編成の行方

 HTS政権は、従来のアサド政権と異なり、宗教的かつイデオロギー的な要素が強い。そのため、シリア国内の安定化がさらに難航する可能性が高い。イスラエルの攻撃によって旧シリア軍の兵器が破壊される中、HTSは新たな装備を確保するために他国との連携を強化する必要がある。

 意図せざる結果

 イスラエルの作戦には意図せざる影響も含まれている。

 1.ロシアの影響力強化

 シリアにおける旧式兵器の破壊により、新たな軍事協力の必要性が生まれ、ロシアがこれを活用する可能性がある。これはロシアのシリアにおける軍事的存在感を維持する一助となる。

 2.ウクライナへの兵器供給の阻止

 シリアの戦略兵器がウクライナに送られる可能性を排除したことで、イスラエルの行動が間接的にロシアの利益を守る結果となっている。

 3.地域の不安定化

 イスラエルの攻撃により、シリア内戦後の安定化がさらに遅れる可能性がある。特に、HTSの支配地域では報復的な攻撃やさらなる過激化が進む可能性が懸念される。

 以上のように、イスラエルの「ショック・アンド・オー」作戦は、複数の戦略的目的を達成するためのものである一方で、地域および国際的な影響を広範に及ぼしている。
 
【要点】 

 作戦の背景と目的

 ・防衛地帯の確立: ゴラン高原周辺を「無力化」し、安全保障を強化。
 ・戦略兵器の無力化: HTS政権の手に渡る旧ソ連・ロシア製兵器を排除。
 ・領土拡大の可能性: ゴラン高原を越えた地域支配の拡大や自治領形成の可能性。
 ・ヒズボラへの牽制: 南シリアおよびレバノン国境付近でのヒズボラの動きを封じ込め。

 地域的・国際的影響

 ・ロシアとの微妙な関係: ロシアは公式に非難しつつも、兵器供給を通じて影響力を維持する可能性。
 ・アメリカとの対比: アフガニスタン撤退時の失策と異なり、迅速な対応で国際的評価を獲得。
 ・トルコとの緊張: HTSへの支援を背景に、イスラエルとトルコ間の摩擦が拡大。
 ・シリア内政への影響: HTS政権のイデオロギー的特徴が国内の安定化をさらに難航させる。

 意図せざる結果

 ・ロシアの影響力強化: シリアへの兵器供給を通じ、ロシアの軍事的存在感が維持される可能性。
 ・ウクライナへの兵器供給阻止: 戦略兵器がウクライナに送られる事態を回避。
 ・地域の不安定化: 攻撃によりHTSの過激化や報復の懸念が拡大。

 全体の評価

 イスラエルの作戦は、防衛上の緊急課題に迅速に対応した一方で、ロシアやトルコなど複数国との関係や地域情勢に新たな影響をもたらしている。

【参考】

 ☞ 「ショック・アンド・オー(Shock and Awe)」とは、主に軍事戦略の一形態で、相手に対して強力で迅速な攻撃を行い、心理的な衝撃を与えて戦意を喪失させることを目的とした戦術である。この戦術は、敵軍の能力を奪うだけでなく、民間人や敵軍の士気に対しても強い心理的影響を与え、早期に戦争を終結させることを目指す。

 主な特徴

 1.圧倒的な軍事力の行使: 非常に強力な攻撃を短期間で集中して行う。これには空爆、ミサイル攻撃、大規模な地上戦力の展開が含まれる。
 2.心理的効果: 敵軍や市民に対して恐怖と混乱を引き起こし、戦意喪失を促進することを狙う。戦闘の早期決着を意図して、敵の指導層や重要インフラをターゲットにする。
 3.戦闘の迅速化: 物理的および心理的な圧力によって、戦争をできるだけ速やかに終結させることを目指す。

 歴史的な背景

 ・イラク戦争(2003年): アメリカ合衆国がイラクに対して実施した攻撃で、この戦術が有名になった。空爆を中心に、イラク政府の指導層や軍事施設、通信インフラを瞬時に破壊し、イラクの抵抗力を急速に削ぐことを狙った。

 目的

 ・迅速な制圧: 戦場での戦力を最大限に活用し、戦争を速やかに勝利に導く。
 ・敵の士気を削ぐ: 戦闘が始まった瞬間から、敵の精神的・心理的な抵抗を無力化することを目指す。

 ショック・アンド・オー戦術は、敵の兵力や戦力を単に物理的に破壊するだけでなく、その心理的な影響を通じて戦争の早期終了を図るための戦略である。

 ☞ 「戦略兵器」とは、国家間の戦争や重大な軍事的対立において、広範囲にわたる破壊力を持つ兵器を指す。これには、通常、以下のような兵器が含まれる。

 1.核兵器: 広範囲に甚大な破壊をもたらす兵器で、国家間の抑止力として使用されることが多い。これには核弾頭を搭載した弾道ミサイルや潜水艦発射型ミサイルが含まれる。

 2.戦術ミサイル: 精密誘導型で、長距離のターゲットに対して攻撃を行うことができるミサイル。弾道ミサイルや巡航ミサイルなどがあり、戦略的な目標を攻撃するために使われる。

 3.航空機および爆撃機: 大規模な空爆が可能な航空機、特に核兵器を搭載できる長距離爆撃機が含まれる。

 4.弾道ミサイル防衛システム: 戦略的兵器による攻撃を防御するためのシステム。これは攻撃力自体ではなく、攻撃に対する防御力として戦略的価値がある。

 これらの兵器は、通常、敵国の主要な軍事施設や経済インフラを標的にして、戦争を迅速に決着させることを目的としている。また、戦略兵器は抑止力としても機能し、核戦争を避けるために国家間での使用が制限されている。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

What’s Really Behind Israel’s “Shock & Awe” Campaign In Syria? Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.13
https://korybko.substack.com/p/whats-really-behind-israels-shock?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=153057128&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

習近平:トランプの就任式招待を拒否2024年12月13日 19:46

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【概要】
  
 2024年12月13日、CBSニュースは、中国の習近平国家主席が、ドナルド・トランプ次期大統領の就任式への招待を拒否したと報じた。トランプ氏は選挙後に習主席に個人的に招待状を送ったが、習主席は出席しない見込みであるとされている。代わりに、中国の駐米大使とその配偶者が通常の外交プロトコルに従って、2025年1月20日の就任式に出席する予定だという。また、追加の中国政府関係者がその代表団に加わる可能性があるとも伝えられている。

 トランプ氏は、最近、中国からの輸入品に対して25%以上の関税を課す意向を示しており、これはメキシコやカナダに対しても同様の関税を課す計画の一部である。その目的は不法移民やフェンタニルの密輸を抑制することだとされている。トランプ氏の次期広報担当官であるカロライン・レヴィット氏は、この招待状を「同盟国だけでなく、競争相手や敵国との対話を開くトランプ氏の姿勢の一例」として評価している。

 また、トランプ氏は伝統を破り、ハンガリーのオルバン首相など他の世界のリーダーにも招待状を送ることを検討しているという。

【詳細】

 2024年12月13日、CBSニュースの報道によると、中国の習近平国家主席がドナルド・トランプ次期大統領の2025年1月20日の就任式に出席しないことが確実視されている。トランプ氏は選挙後、習主席に個人的な招待状を送ったが、習主席はこれを辞退したとされている。習主席が出席しない代わりに、通常の外交プロトコルに従い、中国の駐米大使とその配偶者が就任式に出席する予定であり、さらに他の中国政府関係者が代表団に加わる可能性もあるという。

 トランプ氏のチームは、就任式の際に外交的な手続きを円滑に進めるためのスタッフを配置しており、特に中国の代表団の出席に関しても調整が行われている。しかし、中国大使館やトランプ氏の移行チームはこの件に関してコメントを避けている。

 トランプ氏は、中国に対して関税を大幅に引き上げる意向を示しており、これには中国からの輸入品に対して最大25%の関税を課す案が含まれている。この計画は、トランプ氏がメキシコやカナダに対しても同様に高い関税を課す意向を表明している背景と関連しており、その目的は不法移民やフェンタニルの密輸を防ぐことだと説明されている。

 トランプ氏の次期広報担当官であるカロライン・レヴィット氏は、この招待状を「トランプ氏が敵対的な国や競争相手に対しても対話を開く姿勢を示す一例」として評価している。つまり、トランプ氏は就任式に際して、アメリカの同盟国だけでなく、敵国や競争国とも直接対話を進める姿勢を示しているとされている。

 さらに、トランプ氏は従来の慣例に反して、ハンガリーのオルバン首相など、他の国の指導者にも招待状を送ることを検討している。この点は、トランプ氏が国際的な関係において柔軟なアプローチを取ろうとしていることを示している。
 
【要点】 

 ・習近平国家主席の出席拒否: 2025年1月20日のドナルド・トランプ次期大統領の就任式に習近平国家主席は出席しない見込み。

 ・習主席の代わりに出席する者: 中国の駐米大使とその配偶者が就任式に出席する予定。また、他の中国政府関係者も代表団に加わる可能性がある。

 ・トランプ氏の招待: トランプ氏は選挙後、習主席に個人的な招待状を送ったが、習主席はこれを辞退した。

 ・外交プロトコルの対応: 就任式の際、外交的な手続きを管理するためのスタッフが配置され、特に中国の代表団の出席に関して調整が行われている。

 ・中国に対する関税計画: トランプ氏は、中国からの輸入品に最大25%の関税を課す計画を示している。また、メキシコやカナダにも同様の関税を課す意向を表明しており、不法移民やフェンタニルの密輸を防ぐ目的がある。

 ・トランプ氏の対話姿勢: トランプ氏の広報担当官カロライン・レヴィット氏は、この招待状を「敵国や競争国との対話を開く姿勢の一例」として評価している。

 ・伝統的慣例の破棄: トランプ氏は従来の慣例に反して、ハンガリーのオルバン首相など、他の世界のリーダーにも就任式への招待状を送ることを検討している。

【引用・参照・底本】

Xi Jinping Rejects Donald Trump's Inauguration Invitation: Report Newsweek 2024.12.13
https://www.newsweek.com/xi-jinping-rejects-donald-trumps-inauguration-invitation-2000238?utm_source=STMailing&utm_medium=email&utm_campaign=BreakingNews&user_email_address=ae77b5293ed738f21ef36c7d61f53b5a&emh=875c208bfdb91599791b24ecf34f9546ee63c6dc178cc0873d1b700ea5690a33&utm_term=%5BAudience%5D%20-%20BreakingNews

林芳正内閣官房長官の発言2024年12月13日 20:04

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【概要】
  
 2024年12月11日、日本の林芳正内閣官房長官は、中国人民解放軍が第1列島線周辺に最大規模の艦隊を展開していることを受け、台湾海峡の平和と安定の重要性について懸念を表明した。林長官は、「台湾海峡の平和と安定は日本の安全保障だけでなく、国際社会全体の安定にとっても重要である」と述べた。この発言に対して、台湾外交部は日本政府の立場を評価し、歓迎の意を示した。

 林官房長官はさらに、台湾海峡の平和と安定を支持する日本政府の立場は、11月の日中首脳会談でも中国側に伝達されていると述べ、引き続き台湾を巡る動向に注視するとともに、周辺海空域での警戒・監視を強化し、米国をはじめとする同盟国や同志国と緊密に連携して適切に対応していく考えを示した。

 台湾外交部は、台湾海峡の平和と安定維持が国際社会の共通認識であることを確認し、中国の海上での大規模な軍事活動が地域の平和と安定を脅かしていると指摘した。さらに、外交部は中国に対し、理性と自制を求め、台湾に対する脅威や地域の緊張を高める行為の停止を呼びかけた。

 また、トランプ氏は伝統を破り、ハンガリーのオルバン首相など他の世界のリーダーにも招待状を送ることを検討しているという。

【詳細】

 2024年12月11日、日本の林芳正内閣官房長官は、現在中国人民解放軍が第1列島線周辺に最大規模の艦隊を展開していることについて、台湾海峡の平和と安定が日本および国際社会にとって重要であるという懸念を示した。この発言は、日中間の緊張が高まる中で、台湾海峡における中国の軍事的動向に対する日本政府の警戒感を表すものである。

 具体的には、林官房長官は、台湾海峡の平和と安定が「日本の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要だ」と述べ、台湾海峡を巡る事態が、直接的に日本の安全や地域の平和に影響を与える可能性があることを強調した。また、これに関連して、日本政府は台湾海峡の情勢を引き続き注視し、周辺海空域での警戒や監視を強化する姿勢を示した。さらに、米国をはじめとする同盟国や同志国との緊密な連携を保ちながら、適切な対応をしていく方針も表明した。

 台湾外交部は、林官房長官の発言に対して「台湾海峡の平和と安定を重視する日本政府の立場は、台湾にとって大変心強い」として、これを評価し、歓迎するとのコメントを発表した。台湾外交部はまた、台湾海峡の平和と安定がすでに国際社会の共通認識となっていることを確認し、中国の軍事活動が地域の平和と安定を脅かしているとの懸念を表明した。

 特に、中国人民解放軍の大規模な海上活動について、台湾外交部はそれが台湾に対する脅威となり、地域の緊張を高める要因になっていると指摘した。外交部は、これに対して中国に対し理性と自制を求め、台湾に対する圧力行為や挑発行動を停止するよう呼びかけている。台湾政府は、台湾海峡における安定的な環境を守るため、引き続き国際社会との協力を強化し、平和的解決を追求する姿勢を崩さないとしている。

 この一連の発言は、台湾海峡を巡る情勢の緊迫化を背景に、地域の安定を守るための国際的な協力と、中国の軍事的動向に対する警戒を強める必要性を強調するものである。また、日本政府としても、台湾をめぐる事態が直接的に日本の安全に関わるものであるという認識が深まっていることを示している。
 
【要点】 

 1.林芳正内閣官房長官の発言

 ・中国人民解放軍が第1列島線周辺に最大規模の艦隊を展開していることを受け、懸念を示す。
 ・「台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障および国際社会全体の安定にとって重要」と強調。

 2.日本政府の立場

 ・11月の日中首脳会談で、台湾海峡の平和と安定を重視する立場が中国に伝達された。
 ・台湾情勢を引き続き注視し、周辺海空域での警戒・監視を強化。
 ・米国や同盟国・同志国との緊密な連携の重要性を強調。

 3.台湾外交部の反応

 ・日本政府の立場を評価し、台湾海峡の平和と安定維持を支持する姿勢を歓迎。
 ・台湾海峡の平和と安定が国際社会の共通認識であることを確認。

 4.中国の軍事活動に対する懸念

 ・中国の大規模な海上軍事活動が地域の平和と安定を脅かしていると指摘。
 ・台湾外交部は、中国に理性と自制を求め、台湾への脅威や地域の緊張を高める行為の停止を呼びかけ。

 5.台湾政府の対応

 ・引き続き国際社会との協力を強化し、平和的解決を追求する方針を維持。

【引用・参照・底本】

日本の内閣官房長官が台湾情勢について懸念示す、外交部は「歓迎」TAIWAN TODAY 2024.12.13
https://jp.taiwantoday.tw/news.php?post=263011&unit=149&utm_source=Taiwan+Today+JP+9&utm_medium=email&utm_content=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9+textlink