シコルスキの発言:ロシアとの核のチキンゲーム2024年09月08日 17:37

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【概要】

 ポーランドの元外相ラデック・シコルスキの提案について述べられている。シコルスキは、ウクライナの核発電所(NPP)をロシアからのミサイル攻撃から守るために、ポーランドが自国防衛の名目で介入する権利があると述べている。彼の意見は個人としての見解であると強調されており、ウクライナの安全保障を理由に西側諸国が軍隊をウクライナに派遣するための口実として使われる可能性があると筆者は指摘している。

 シコルスキは、ウクライナのリヴネ、フメルニツキー、ミコラエフにあるNPPを保護するため、ポーランドがミサイル防衛システムを展開すべきだと主張している。特に、リヴネの発電所はポーランド国境に近いため、この地域に防衛システムを配置する必要があるとされている。この提案が実現すれば、西側諸国がウクライナに軍隊を派遣し、さらにその数を増やす可能性があるという懸念が強調されている。

 最終的に、筆者はこの提案がロシアとの緊張をさらに高め、紛争がエスカレートする危険性があると指摘している。また、NATOや米国がこれまでこの提案に慎重な態度を示している理由は、ロシアとの直接的な対立を避けるためであるとしているが、今後の情勢次第では状況が変わる可能性もあると述べている。

【詳細】

 ポーランドの元外相ラデック・シコルスキの発言を通じて、ウクライナの核発電所(NPP)を守る名目で西側諸国がウクライナに軍隊を派遣する可能性についての議論が展開されている。シコルスキは、ロシアからのミサイル攻撃の脅威に対抗し、ウクライナ国内の核発電所を守るために、ポーランドが「自衛権」を行使してウクライナに介入できると主張している。この記事では、この発言が表向きはシコルスキ個人の見解とされているが、背後にはより大きな力が働いており、西側諸国がウクライナに軍事介入するための正当化に使われる可能性があるとされている。

 シコルスキの発言の背景と意図

 シコルスキは、まず「個人的な見解」として、ポーランドがウクライナの核発電所を守るために介入できると述べている。これは、ロシアのミサイルがこれらの発電所を標的にすることで、ヨーロッパ全体に対する核災害のリスクがあるという「チェルノブイリのような大惨事」を防ぐためのものである。しかし、筆者はこれが単なる個人の意見にとどまらず、シコルスキが西側の強硬派の代弁者としての役割を果たしており、実際にはNATOや西側諸国がこの提案を支持し、軍事介入を正当化するための布石として使っている可能性があると分析している。

 地理的・軍事的側面

 シコルスキの提案は、ウクライナにある3つの核発電所に焦点を当てています。これらの発電所は以下の場所にある。
 ・リヴネ(Rivne): ポーランド国境に近く、ポーランドのパトリオット・ミサイル防衛システムの射程内にあるが、より効果的な防衛には西ウクライナにシステムを配備する必要がある。
 ・フメルニツキー(Khmelnitsky): ポーランドとルーマニアの中間に位置し、ポーランド側の支援を必要とします。
 ・ミコラエフ(Mikolaev): ルーマニアに近く、こちらも防衛には西側からの直接的な軍事支援が必要である。

 特にリヴネ発電所はポーランドの「自衛権」の根拠として使われる可能性があり、シコルスキはポーランドが自国の安全を守るためにウクライナにパトリオットミサイルを配備する必要があると述べている。しかし、ポーランドにはこれ以上提供できる軍事装備がないとされており、シコルスキの提案は、ポーランドの最低限の国防ニーズを犠牲にしてでもウクライナを守るというものである。

 政治的な文脈

 シコルスキの発言は、NATOの新しい事務総長としてマーク・ルッテが就任することや、2024年11月の米国大統領選挙の結果によって状況が変わる可能性があるという文脈の中で行われている。筆者は、特に強硬派の力が強まる可能性があり、それがシコルスキのような人物を後押ししていると述べている。例えば、民主党が大統領選で勝利するか、もしくはドナルド・トランプが勝利した場合、アメリカの「ディープステート」(影の政府)の一部がロシアとの対立を煽る可能性があるとしている。

 さらに、シコルスキの発言は、ウクライナのゼレンスキー大統領の提案とも連動していると見られている。ゼレンスキーは、ポーランドとルーマニアがウクライナ上空でロシアのミサイルを撃墜するべきだと述べており、これが実現すれば、ルーマニアもこの計画に参加する可能性が高いとされている。

 「核の安全保障」という口実

 筆者は、シコルスキとゼレンスキーが提案している「核の安全保障」という名目が、ロシアとの対立をさらに深めるための口実であると主張している。核発電所の保護を名目に西側諸国の軍隊がウクライナに展開され、そこからさらに「ミッションの拡大」によって、ウクライナの他の地域やドニエプル川を越える形での展開が進む可能性があるとしている。もし西側の軍隊がウクライナで攻撃を受けた場合、それを「核テロリズム」として糾弾し、さらなる軍事介入を正当化する材料にすることができると警告している。

 結論

 最終的に、筆者はこの提案がロシアとの「核のチキンゲーム」になりかねないと述べている。NATOとロシアは互いの意図を完全には理解しておらず、相手の主張を信用していないため、小規模な衝突が発生すれば、それがエスカレートして世界規模の戦争に発展する可能性があると警告している。

 また、NATOや米国はこれまでこのような提案に慎重な態度を示してきたが、ロシアがドンバス地方で戦略的な勝利を収めた場合、西側諸国がパニックに陥り、通常の軍事介入が現実味を帯びる可能性があるとも述べている。

【要点】

 ・ポーランド元外相ラデック・シコルスキは、ウクライナの核発電所を守るために、ポーランドが自衛権を行使して介入できると主張。
 ・彼の発言は個人の見解とされているが、背後には西側諸国の強硬派が関与している可能性がある。
 ・ウクライナにある3つの核発電所(リヴネ、フメルニツキー、ミコラエフ)はロシアのミサイル攻撃の脅威にさらされており、これを保護するために西側の軍事介入が必要とされる。
 ・シコルスキはポーランドがパトリオット・ミサイル防衛システムをウクライナに配備し、自国防衛の名目で介入するべきだと提案。
 ・この提案は、ロシアとの直接対立を招きかねず、紛争がエスカレートする可能性があると懸念。
 ・NATO新事務総長マーク・ルッテの就任や、2024年11月の米国大統領選挙によって、状況が変わる可能性がある。
 ・ウクライナのゼレンスキー大統領も、ポーランドとルーマニアがウクライナ上空でロシアのミサイルを迎撃するよう提案しており、シコルスキと連携している可能性がある。
 ・「核の安全保障」を名目に西側諸国がウクライナに軍を派遣することが、さらなる軍事介入の口実になる可能性がある。
 ・軍隊の展開が進むと、ロシアとの「核のチキンゲーム」が発生し、世界規模の戦争に発展するリスクがある。
 ・NATOや米国はこれまで慎重だったが、ロシアがドンバスで戦略的勝利を収めた場合、介入の可能性が高まると指摘。

【引用・参照・底本】

Interpreting Sikorski’s Proposal For Poland To Protect Ukrainian Nuclear Power Plants Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.08
https://korybko.substack.com/p/interpreting-sikorskis-proposal-for?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148637309&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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