ジブチ:エチオピアにタジュラの港の100%管理提案 ― 2024年09月08日 18:42
【概要】
ジブチがエチオピアに対してタジュラの港を100%管理させるという提案が、実際にはエチオピアにとって不利なものであると述べている。この提案は、エチオピアが2024年1月にソマリランドと結んだ覚書(MoU)を破棄することを条件にしているが、エチオピアがこの提案を受け入れることで、エチオピアの海上輸送が再びジブチに依存することになると指摘している。これはエチオピアの国家安全保障上のリスクであり、また、エジプトがソマリアに展開している軍事力を軽減することにもならないため、この取引は罠だとしている。
エチオピアがこの提案を受け入れると、ソマリランドとの関係を損なうだけでなく、エジプトの脅威を和らげることもできず、むしろジブチへの依存が再び強まり、結果的に国際的な評判を傷つけるとされています。
【詳細】
ジブチがエチオピアに対して、タジュラ港を「100%管理」させるという提案がどのようにエチオピアにとって不利であるかを詳細に論じている。エチオピアが2024年1月にソマリランドとの間で結んだ覚書(MoU)を破棄することを条件として、ジブチはこの新しい港とすでに建設済みの北部の回廊を提供するとしている。しかし、この記事は、この提案を受け入れることがエチオピアにとって非常に悪い選択であり、戦略的な罠であるとしている。その理由を以下に整理する。
1. ジブチへの依存の再強化
エチオピアは、過去にその貿易の大部分をジブチの港に依存してきたが、これはエチオピアにとって一方的な依存関係であり、エチオピアの経済的・安全保障的なリスクを高めていた。そのため、エチオピアはソマリランドとのMoUを通じて、ジブチへの依存を減らし、独自の港を持つことを目指した。この港は、エチオピアがより独立した貿易ルートを持ち、国際市場へのアクセスを多様化する手段となる。しかし、ジブチの提案を受け入れると、エチオピアは再びジブチの港に依存せざるを得なくなり、経済的にも安全保障上も再びジブチに縛られることになる。
2. エジプトの脅威に対する対策にならない
エチオピアとエジプトの間には、ナイル川上流に建設されたグランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダム(GERD)を巡って緊張が続いており、エジプトはダムの影響で自国の水供給が脅かされることを懸念している。この緊張はエジプトが軍事的圧力を加える形で顕在化し、特にエジプトがソマリアに軍を展開したことでさらに深まっている。この展開はエチオピアへの脅威として認識されており、エチオピアはこれに対抗する必要がある。しかし、ジブチの提案を受け入れたとしても、エジプトがソマリアに展開している軍を撤退させることには繋がらず、エジプトの脅威が解消されるわけではないと記事では強調されている。
3. ソマリランドとの関係悪化と国際的な評判の損失
エチオピアがジブチの提案を受け入れるためには、2024年1月にソマリランドとの間で締結したMoUを破棄する必要がある。この覚書は、エチオピアにとって戦略的な港へのアクセスを可能にし、経済的にも安全保障上もメリットがあるとされていた。また、ソマリランドの独立を間接的に認める形での関係構築も国際的な注目を集めていた。しかし、このMoUを破棄することで、エチオピアはソマリランドとの信頼関係を損ない、さらに国際的な評判も大きく傷つけることになる。特にエチオピアが独立した海上輸送ルートを確保するという目標が無に帰すことで、同国の国際的な信頼性に悪影響を及ぼすと予想される。
4. ジブチの「100%管理」の罠
一見すると、ジブチがエチオピアに「100%管理」を提案することは、エチオピアにとって有利に見えるかもしれない。管理権を持つことで、エチオピアはジブチが過去に課していた高額な使用料を回避し、港の運営を自主的に行うことができるようになるからである。しかし、実際には、ジブチは依然としてエチオピアの貿易ルートをコントロールしており、港と回廊の物理的な位置関係を通じて依存関係を維持することができる。このため、エチオピアは名目上の管理権を持っていても、実際にはジブチに対する依存度は変わらず、戦略的には不利な状況が続くことになる。
結論
このように、ジブチの提案は表面的にはエチオピアに有利に見えるものの、実際にはエチオピアの利益を損ない、ジブチへの依存を再強化し、エジプトによる脅威を緩和することもできない「罠」だと結論付けられている。エチオピアがこの提案を受け入れれば、ソマリランドとの関係を損なうだけでなく、国際的な評判も傷つけ、国家安全保障上のリスクを高める結果になるとこの記事は主張している。
【要点】
・ジブチ依存の再強化: エチオピアは再びジブチの港に依存することになり、経済的・安全保障的リスクが増大する。
・エジプトの脅威に対する効果なし: ジブチの提案を受け入れても、ソマリアに駐留するエジプト軍の脅威は変わらず、エチオピアへの圧力は軽減されない。
・ソマリランドとのMoU破棄による影響: ソマリランドとの覚書を破棄することで、同国との信頼関係が損なわれ、エチオピアの国際的な評判が悪化する。
・港の「100%管理」の名目と実態: エチオピアがジブチから港の管理権を得ても、実際にはジブチが物流回廊をコントロールし、依存が続く。
・戦略的損失: エチオピアは独自の海上輸送ルートを失い、ジブチへの依存が再び強化されることで、国家安全保障が脅かされる。
・国際的な評判へのダメージ: ソマリランドとのMoU破棄は、エチオピアが築いた外交的成果を失わせ、国際的な信頼を損ねる。
【参考】
☞ 記事では、ジブチがエチオピアに提案した港の管理権が「罠」であるとされているが、この罠の背後には主にジブチ自身の利益があると考えられる。
罠の主体
・ジブチ: この提案は、エチオピアを再びジブチに依存させ、港と貿易ルートを通じてエチオピアの経済的コントロールを維持することを目的としていると見られる。エチオピアが独立した貿易ルートを確保することを防ぎ、ジブチがその地政学的影響力を強化しようとする意図がある。
関与の可能性がある他のプレイヤー
・エジプト: エジプトもジブチの提案がエチオピアの弱体化につながることを望んでいる可能性がある。エジプトはエチオピアのグランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダム(GERD)を巡る対立で、エチオピアを圧力下に置きたい立場にある。ジブチとエジプトが協力して、エチオピアを地域的に孤立させる狙いがあるかもしれない。
結論
この罠は主にジブチの戦略的利益に基づいているが、エジプトや他のエチオピアの敵対勢力(ソマリアなど)が間接的に利益を得る可能性もある。
☞ ソマリランドは、ソマリア北西部に位置する地域で、1991年に一方的に独立を宣言した。ソマリア内戦が勃発した際、ソマリランドはソマリアからの分離を試み、以降は事実上の独立状態を維持しているが、国際的には広く認められていない。
ソマリランドの特徴
・首都: ハルゲイサ
・政治体制: 独自の政府、議会、憲法を持ち、比較的安定した統治を行っている。
・経済: 主に畜産、農業、港湾事業に依存しており、エチオピアと港の利用に関する経済的協力を進めている。
・国際的地位: 公式には国家として認められていないため、国連加盟国や他の多くの国際機関に属していないが、実質的な自治を確立している。
ソマリランドは、特に地域の安定やエチオピアとの貿易において重要な役割を果たしており、独自の外交関係も模索している。
☞ ソマリランドとエチオピアの関係は、特に経済と貿易面で重要なものとなっている。エチオピアは内陸国であるため、外部へのアクセスに港湾を必要としており、これがソマリランドとの関係を強化する理由の一つである。以下は両国の関係における主要なポイントである。
1. 貿易・経済協力
エチオピアは、ソマリランドの主要港であるベルベラ港を利用することを重視している。この港は、エチオピアにとってジブチ以外の選択肢となり、貿易ルートを多様化し、ジブチへの過度な依存を減らす手段となる。2024年1月にエチオピアとソマリランドは覚書(MoU)を締結し、エチオピアはベルベラ港の使用権を獲得した。これにより、ソマリランドはエチオピアにとって重要な経済パートナーとなっている。
2. 安全保障の側面
ソマリランドは、比較的安定した地域であり、周辺地域のソマリアなどと比較して治安が良好である。このため、エチオピアはソマリランドとの協力を通じて、地域の安定化を図りつつ、自国の安全保障上の利益も確保しようとしていまする。特にソマリランドを拠点とする港湾や交通インフラは、エチオピアの国家安全保障にとって戦略的に重要である。
3. 政治的なサポート
エチオピアは、ソマリランドの独立運動に対して一定の支持を示してきた。これは、ソマリランドとの協力を深めることでジブチやソマリアへの依存を減らすための戦略でもある。特にソマリランドの独立を承認することは、国際的にはデリケートな問題であるが、エチオピアはその存在を認めつつ実質的な協力関係を築いている。
4. ジブチとの競争
ソマリランドとの協力は、ジブチとの貿易独占を崩すためのエチオピアの重要な一手である。ジブチはこれまでエチオピアの主要な海上輸送ルートを独占してきたが、ソマリランドとの関係強化により、エチオピアは貿易ルートを分散し、より有利な条件を得ることを目指している。
まとめ
ソマリランドとエチオピアの関係は、貿易、経済、安全保障の面で重要な戦略的パートナーシップである。エチオピアはソマリランドの港湾アクセスを活用することで、内陸国としての不利を補い、ジブチに対する依存を減らす一方、ソマリランドにとっても経済的に重要な協力国となっている。この関係は、地域の地政学的バランスにも影響を与えている。
☞ エチオピアとソマリアの関係は、歴史的に緊張が続いてきたものの、近年は特に安全保障や地域の安定化を目指す取り組みを通じて複雑化している。以下はその関係の主要なポイントである。
1. 歴史的背景と領土問題
エチオピアとソマリアの関係は、オガデン戦争(1977-1978年)にまで遡る。この戦争は、ソマリアがエチオピアのオガデン地域(ソマリ人が多く住む地域)の支配権を求めて侵攻したことが原因であった。この戦争では、ソマリアがソビエト連邦の支援を失い、最終的にエチオピアが勝利した。この戦争は、両国間の敵対的な関係を深める大きな要因となり、長い間両国の関係に影響を与え続けた。
2. アルシャバーブに対する戦い
近年、エチオピアはソマリア内の過激派組織アルシャバーブとの戦いに積極的に関与している。アルシャバーブは、ソマリア内で活動するイスラム過激派であり、エチオピアや他の地域諸国にとって大きな脅威となっている。エチオピアはアフリカ連合(AU)のミッションに参加し、ソマリアに軍を派遣してアルシャバーブの勢力を抑え込む役割を担っている。
3. エジプトとの緊張とソマリア
エチオピアとソマリアの関係は、エジプトが関与することでさらに複雑化している。特にグランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダム(GERD)を巡るエチオピアとエジプトの対立が、ソマリアの情勢に影響を与えている。エジプトはソマリアとの関係を強化し、同国に軍を派遣するなどして、エチオピアに圧力をかけている。これは、エチオピアにとってソマリアの情勢が単なる国内問題以上の意味を持つ要因となっている。
4. 経済的・貿易関係の希薄さ
エチオピアとソマリアの間には経済的な協力は限定的である。エチオピアは主にジブチやソマリランドを通じて外部と貿易を行っており、ソマリアとの貿易関係は比較的薄い。ソマリアの政治的不安定さや治安問題も、両国の経済関係を制約していまする。
5. ソマリランドを巡る対立
ソマリランドの独立問題は、エチオピアとソマリアの関係にも影響を与えている。エチオピアはソマリランドとの経済的協力を進めている一方で、ソマリアはソマリランドを自国の一部として主張し続けている。このため、ソマリアはエチオピアのソマリランド支援を警戒しており、両国間の緊張を生む要因となっている。
6. 地域の安定化を目指す取り組み
エチオピアは、ソマリアが安定することが自国の安全保障にも繋がると認識している。そのため、ソマリア政府を支援し、アフリカ連合や国際社会と協力してソマリアの安定化に取り組んでいるが、アルシャバーブとの戦いや国内の政治的混乱が依然として障害となっている。
まとめ
エチオピアとソマリアの関係は、歴史的な敵対関係から始まり、現在は地域の安全保障やアルシャバーブとの戦いを中心に協力が行われている一方で、エジプトの影響やソマリランド問題が関係を複雑化させている。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Djibouti’s Plan To Offer Ethiopia Full Management Of A Port Is A Trap Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.08
https://korybko.substack.com/p/djiboutis-plan-to-offer-ethiopia?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148635077&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ジブチがエチオピアに対してタジュラの港を100%管理させるという提案が、実際にはエチオピアにとって不利なものであると述べている。この提案は、エチオピアが2024年1月にソマリランドと結んだ覚書(MoU)を破棄することを条件にしているが、エチオピアがこの提案を受け入れることで、エチオピアの海上輸送が再びジブチに依存することになると指摘している。これはエチオピアの国家安全保障上のリスクであり、また、エジプトがソマリアに展開している軍事力を軽減することにもならないため、この取引は罠だとしている。
エチオピアがこの提案を受け入れると、ソマリランドとの関係を損なうだけでなく、エジプトの脅威を和らげることもできず、むしろジブチへの依存が再び強まり、結果的に国際的な評判を傷つけるとされています。
【詳細】
ジブチがエチオピアに対して、タジュラ港を「100%管理」させるという提案がどのようにエチオピアにとって不利であるかを詳細に論じている。エチオピアが2024年1月にソマリランドとの間で結んだ覚書(MoU)を破棄することを条件として、ジブチはこの新しい港とすでに建設済みの北部の回廊を提供するとしている。しかし、この記事は、この提案を受け入れることがエチオピアにとって非常に悪い選択であり、戦略的な罠であるとしている。その理由を以下に整理する。
1. ジブチへの依存の再強化
エチオピアは、過去にその貿易の大部分をジブチの港に依存してきたが、これはエチオピアにとって一方的な依存関係であり、エチオピアの経済的・安全保障的なリスクを高めていた。そのため、エチオピアはソマリランドとのMoUを通じて、ジブチへの依存を減らし、独自の港を持つことを目指した。この港は、エチオピアがより独立した貿易ルートを持ち、国際市場へのアクセスを多様化する手段となる。しかし、ジブチの提案を受け入れると、エチオピアは再びジブチの港に依存せざるを得なくなり、経済的にも安全保障上も再びジブチに縛られることになる。
2. エジプトの脅威に対する対策にならない
エチオピアとエジプトの間には、ナイル川上流に建設されたグランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダム(GERD)を巡って緊張が続いており、エジプトはダムの影響で自国の水供給が脅かされることを懸念している。この緊張はエジプトが軍事的圧力を加える形で顕在化し、特にエジプトがソマリアに軍を展開したことでさらに深まっている。この展開はエチオピアへの脅威として認識されており、エチオピアはこれに対抗する必要がある。しかし、ジブチの提案を受け入れたとしても、エジプトがソマリアに展開している軍を撤退させることには繋がらず、エジプトの脅威が解消されるわけではないと記事では強調されている。
3. ソマリランドとの関係悪化と国際的な評判の損失
エチオピアがジブチの提案を受け入れるためには、2024年1月にソマリランドとの間で締結したMoUを破棄する必要がある。この覚書は、エチオピアにとって戦略的な港へのアクセスを可能にし、経済的にも安全保障上もメリットがあるとされていた。また、ソマリランドの独立を間接的に認める形での関係構築も国際的な注目を集めていた。しかし、このMoUを破棄することで、エチオピアはソマリランドとの信頼関係を損ない、さらに国際的な評判も大きく傷つけることになる。特にエチオピアが独立した海上輸送ルートを確保するという目標が無に帰すことで、同国の国際的な信頼性に悪影響を及ぼすと予想される。
4. ジブチの「100%管理」の罠
一見すると、ジブチがエチオピアに「100%管理」を提案することは、エチオピアにとって有利に見えるかもしれない。管理権を持つことで、エチオピアはジブチが過去に課していた高額な使用料を回避し、港の運営を自主的に行うことができるようになるからである。しかし、実際には、ジブチは依然としてエチオピアの貿易ルートをコントロールしており、港と回廊の物理的な位置関係を通じて依存関係を維持することができる。このため、エチオピアは名目上の管理権を持っていても、実際にはジブチに対する依存度は変わらず、戦略的には不利な状況が続くことになる。
結論
このように、ジブチの提案は表面的にはエチオピアに有利に見えるものの、実際にはエチオピアの利益を損ない、ジブチへの依存を再強化し、エジプトによる脅威を緩和することもできない「罠」だと結論付けられている。エチオピアがこの提案を受け入れれば、ソマリランドとの関係を損なうだけでなく、国際的な評判も傷つけ、国家安全保障上のリスクを高める結果になるとこの記事は主張している。
【要点】
・ジブチ依存の再強化: エチオピアは再びジブチの港に依存することになり、経済的・安全保障的リスクが増大する。
・エジプトの脅威に対する効果なし: ジブチの提案を受け入れても、ソマリアに駐留するエジプト軍の脅威は変わらず、エチオピアへの圧力は軽減されない。
・ソマリランドとのMoU破棄による影響: ソマリランドとの覚書を破棄することで、同国との信頼関係が損なわれ、エチオピアの国際的な評判が悪化する。
・港の「100%管理」の名目と実態: エチオピアがジブチから港の管理権を得ても、実際にはジブチが物流回廊をコントロールし、依存が続く。
・戦略的損失: エチオピアは独自の海上輸送ルートを失い、ジブチへの依存が再び強化されることで、国家安全保障が脅かされる。
・国際的な評判へのダメージ: ソマリランドとのMoU破棄は、エチオピアが築いた外交的成果を失わせ、国際的な信頼を損ねる。
【参考】
☞ 記事では、ジブチがエチオピアに提案した港の管理権が「罠」であるとされているが、この罠の背後には主にジブチ自身の利益があると考えられる。
罠の主体
・ジブチ: この提案は、エチオピアを再びジブチに依存させ、港と貿易ルートを通じてエチオピアの経済的コントロールを維持することを目的としていると見られる。エチオピアが独立した貿易ルートを確保することを防ぎ、ジブチがその地政学的影響力を強化しようとする意図がある。
関与の可能性がある他のプレイヤー
・エジプト: エジプトもジブチの提案がエチオピアの弱体化につながることを望んでいる可能性がある。エジプトはエチオピアのグランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダム(GERD)を巡る対立で、エチオピアを圧力下に置きたい立場にある。ジブチとエジプトが協力して、エチオピアを地域的に孤立させる狙いがあるかもしれない。
結論
この罠は主にジブチの戦略的利益に基づいているが、エジプトや他のエチオピアの敵対勢力(ソマリアなど)が間接的に利益を得る可能性もある。
☞ ソマリランドは、ソマリア北西部に位置する地域で、1991年に一方的に独立を宣言した。ソマリア内戦が勃発した際、ソマリランドはソマリアからの分離を試み、以降は事実上の独立状態を維持しているが、国際的には広く認められていない。
ソマリランドの特徴
・首都: ハルゲイサ
・政治体制: 独自の政府、議会、憲法を持ち、比較的安定した統治を行っている。
・経済: 主に畜産、農業、港湾事業に依存しており、エチオピアと港の利用に関する経済的協力を進めている。
・国際的地位: 公式には国家として認められていないため、国連加盟国や他の多くの国際機関に属していないが、実質的な自治を確立している。
ソマリランドは、特に地域の安定やエチオピアとの貿易において重要な役割を果たしており、独自の外交関係も模索している。
☞ ソマリランドとエチオピアの関係は、特に経済と貿易面で重要なものとなっている。エチオピアは内陸国であるため、外部へのアクセスに港湾を必要としており、これがソマリランドとの関係を強化する理由の一つである。以下は両国の関係における主要なポイントである。
1. 貿易・経済協力
エチオピアは、ソマリランドの主要港であるベルベラ港を利用することを重視している。この港は、エチオピアにとってジブチ以外の選択肢となり、貿易ルートを多様化し、ジブチへの過度な依存を減らす手段となる。2024年1月にエチオピアとソマリランドは覚書(MoU)を締結し、エチオピアはベルベラ港の使用権を獲得した。これにより、ソマリランドはエチオピアにとって重要な経済パートナーとなっている。
2. 安全保障の側面
ソマリランドは、比較的安定した地域であり、周辺地域のソマリアなどと比較して治安が良好である。このため、エチオピアはソマリランドとの協力を通じて、地域の安定化を図りつつ、自国の安全保障上の利益も確保しようとしていまする。特にソマリランドを拠点とする港湾や交通インフラは、エチオピアの国家安全保障にとって戦略的に重要である。
3. 政治的なサポート
エチオピアは、ソマリランドの独立運動に対して一定の支持を示してきた。これは、ソマリランドとの協力を深めることでジブチやソマリアへの依存を減らすための戦略でもある。特にソマリランドの独立を承認することは、国際的にはデリケートな問題であるが、エチオピアはその存在を認めつつ実質的な協力関係を築いている。
4. ジブチとの競争
ソマリランドとの協力は、ジブチとの貿易独占を崩すためのエチオピアの重要な一手である。ジブチはこれまでエチオピアの主要な海上輸送ルートを独占してきたが、ソマリランドとの関係強化により、エチオピアは貿易ルートを分散し、より有利な条件を得ることを目指している。
まとめ
ソマリランドとエチオピアの関係は、貿易、経済、安全保障の面で重要な戦略的パートナーシップである。エチオピアはソマリランドの港湾アクセスを活用することで、内陸国としての不利を補い、ジブチに対する依存を減らす一方、ソマリランドにとっても経済的に重要な協力国となっている。この関係は、地域の地政学的バランスにも影響を与えている。
☞ エチオピアとソマリアの関係は、歴史的に緊張が続いてきたものの、近年は特に安全保障や地域の安定化を目指す取り組みを通じて複雑化している。以下はその関係の主要なポイントである。
1. 歴史的背景と領土問題
エチオピアとソマリアの関係は、オガデン戦争(1977-1978年)にまで遡る。この戦争は、ソマリアがエチオピアのオガデン地域(ソマリ人が多く住む地域)の支配権を求めて侵攻したことが原因であった。この戦争では、ソマリアがソビエト連邦の支援を失い、最終的にエチオピアが勝利した。この戦争は、両国間の敵対的な関係を深める大きな要因となり、長い間両国の関係に影響を与え続けた。
2. アルシャバーブに対する戦い
近年、エチオピアはソマリア内の過激派組織アルシャバーブとの戦いに積極的に関与している。アルシャバーブは、ソマリア内で活動するイスラム過激派であり、エチオピアや他の地域諸国にとって大きな脅威となっている。エチオピアはアフリカ連合(AU)のミッションに参加し、ソマリアに軍を派遣してアルシャバーブの勢力を抑え込む役割を担っている。
3. エジプトとの緊張とソマリア
エチオピアとソマリアの関係は、エジプトが関与することでさらに複雑化している。特にグランド・エチオピアン・ルネッサンス・ダム(GERD)を巡るエチオピアとエジプトの対立が、ソマリアの情勢に影響を与えている。エジプトはソマリアとの関係を強化し、同国に軍を派遣するなどして、エチオピアに圧力をかけている。これは、エチオピアにとってソマリアの情勢が単なる国内問題以上の意味を持つ要因となっている。
4. 経済的・貿易関係の希薄さ
エチオピアとソマリアの間には経済的な協力は限定的である。エチオピアは主にジブチやソマリランドを通じて外部と貿易を行っており、ソマリアとの貿易関係は比較的薄い。ソマリアの政治的不安定さや治安問題も、両国の経済関係を制約していまする。
5. ソマリランドを巡る対立
ソマリランドの独立問題は、エチオピアとソマリアの関係にも影響を与えている。エチオピアはソマリランドとの経済的協力を進めている一方で、ソマリアはソマリランドを自国の一部として主張し続けている。このため、ソマリアはエチオピアのソマリランド支援を警戒しており、両国間の緊張を生む要因となっている。
6. 地域の安定化を目指す取り組み
エチオピアは、ソマリアが安定することが自国の安全保障にも繋がると認識している。そのため、ソマリア政府を支援し、アフリカ連合や国際社会と協力してソマリアの安定化に取り組んでいるが、アルシャバーブとの戦いや国内の政治的混乱が依然として障害となっている。
まとめ
エチオピアとソマリアの関係は、歴史的な敵対関係から始まり、現在は地域の安全保障やアルシャバーブとの戦いを中心に協力が行われている一方で、エジプトの影響やソマリランド問題が関係を複雑化させている。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Djibouti’s Plan To Offer Ethiopia Full Management Of A Port Is A Trap Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.08
https://korybko.substack.com/p/djiboutis-plan-to-offer-ethiopia?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=148635077&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email