米中間の貿易戦争が一層激化2025年04月16日 19:29

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【概要】

 2025年4月現在、米中間の貿易戦争が一層激化する中、中国政府はアメリカの航空機大手であるボーイング社に対し、制裁措置を講じた。中国政府は、国内のすべての航空会社に対し、ボーイング製航空機の追加納入を全面的に停止するよう命じた。

 この報道は、イランの報道機関「パールストゥデイ」が、メフル通信社の情報を引用する形で伝えたものであり、ロイター通信によれば、ドナルド・トランプ米大統領による大規模な関税措置を契機として、貿易戦争が深刻化したことが背景にあるとされている。これに対し中国は、報復措置の一環として、国内の航空会社にボーイング機の追加受領停止を要請したとされる。

 ボーイング社にとって中国市場は、最大かつ最も成長が著しい市場の一つであり、欧州のライバル企業エアバスが中国市場で優位な地位を占める中、この動きによりボーイング社の株価は4.5%下落した。

 さらに中国政府は、航空会社に対し、ボーイングからの機器、スペアパーツ、各種コンポーネントの購入を中止し、すでに発注されたものについてもキャンセルを求めている。この結果、中国国内でボーイング機を運航する航空会社の整備コストが増大する可能性が指摘されている。

 現在の状況において、トランプ大統領はすべての中国製品に対して145%の関税を課しており、これに対抗して中国政府も、米国からの輸入品に対し125%の関税を導入した。こうした相互の高関税措置により、航空会社がボーイング機をリースする際のコストが大幅に増加しており、中国政府はコスト増に直面する航空会社を支援する方法を検討しているとされる。

 この影響により、中国の航空会社においては、欧州エアバス機や中国の民間航空機製造会社であるCOMAC(中国商用飛機)などの代替機種の導入を余儀なくされる可能性が高まっている。

 なお、中国の三大航空会社は、2025年から2027年の間にそれぞれ45機、53機、81機のボーイング機の納入を予定していたが、今回の制裁措置により、これらの納入スケジュールが全面的に見直されることとなる見通しである。

【詳細】
 
 1.背景:米中間の関税応酬

 現在の措置の背景には、ドナルド・トランプ米大統領による対中貿易政策の強硬化がある。トランプ政権は、中国による知的財産権の侵害や貿易黒字の是正を名目として、中国からの全輸入品に対して145%もの高率関税を一方的に課している。この政策は事実上の貿易戦争と見なされており、中国側もこれに対抗し、アメリカからの輸入品に対して125%の関税を課すなどの報復措置を講じている。

 その結果、両国間の貿易関係は著しく悪化しており、今回のボーイング社に対する制裁も、その一環として実施された措置である。

 2.ボーイング社に対する中国の具体的措置

 中国政府は、国内の全航空会社に対し、以下の命令を出した。

 ・米ボーイング社製航空機の新規納入を全面停止すること

 ・ボーイング社からの部品、機器、スペアパーツ、コンポーネントの購入を中止すること

 ・既存の注文契約をキャンセルすること

 これらの措置は、単に新たなボーイング機の導入を止めるにとどまらず、航空機の維持運用に不可欠な物品の流通そのものを遮断するものであり、事実上の全面的なボーイング排除政策といえる。

 3.ボーイング社および中国市場の関係

 ボーイング社にとって中国市場は、アメリカ国外で最大の航空機市場の一つであり、長期的な需要の伸びも見込まれていた。特に人口増加と中間層の拡大に伴い、中国では航空旅客数が急増しており、それに伴い新規航空機の需要も高まっていた。

 しかしながら、中国ではボーイング社と並ぶ欧州のエアバス社が強い競争力を持っており、エアバスはすでに天津などに組立工場を持ち、中国当局との関係も深い。そのため、今回の措置によってボーイング社の競争力は一層低下することとなり、株式市場でもその影響が即座に反映され、ボーイング社の株価は4.5%下落した。

 4.中国国内の航空会社への影響

 中国の三大国有航空会社(中国国際航空、中国南方航空、中国東方航空)は、2025年から2027年にかけて、それぞれ45機、53機、81機のボーイング機を受領する契約を結んでいた。これらの契約の履行が停止されることで、航空会社は以下のような影響を受ける可能性がある。

 ・保有機材の更新や増機計画が大幅に遅延する

 ・スペアパーツ不足によって運航効率が低下する

 ・リース契約中の機体についても、関税引き上げによりコストが急増する

 ・運航コストの上昇が運賃値上げやサービス低下に繋がる可能性がある

 このため、中国政府は、航空会社に対する財政的支援や補助金交付など、支援策の導入を検討しているとされている。

 5.代替機材:エアバスおよびCOMAC

 ・今回の措置により、ボーイング機に依存していた航空会社は、機材の代替調達先を探す必要に迫られている。主な代替候補は以下の通りである:

 ・エアバス(欧州):エアバスA320やA350シリーズなど、ボーイング737・787に相当する機種を保有しており、既に中国市場において多数納入実績がある。

 ・COMAC(中国商用飛機):中国が国家戦略として開発を進める国産旅客機C919などがある。COMACはまだ開発段階にあるが、国産機材としての調達促進が今後加速する可能性が高い。

 このように、今回の措置は中国の航空産業の自立化を促進する契機にもなり得る。

 6.今後の展望

 ボーイング社の納入停止措置は、中国の航空機調達政策に大きな転換をもたらすものであり、単なる報復措置にとどまらず、米中の航空・製造分野における構造的対立の表れである。今後、両国の貿易関係や外交交渉の動向次第では、さらに広範な分野において報復措置が拡大する可能性もある。

 したがって、今回の制裁は単なる企業間の取引停止ではなく、国際経済秩序および航空産業の再編にまで影響を与えうる重要な動きと位置づけられる。

 以上のように、本件は貿易戦争の一局面であると同時に、中国の産業政策、航空戦略、外交戦略の交差点に位置するものであり、今後の展開が注視される。

【要点】 

 ・中国政府は、米ボーイング社製航空機の新規納入を国内航空会社に対して全面停止するよう命じた。

 ・これは、アメリカと中国の間で激化する貿易戦争の一環として実施された措置である。

 ・米中間では、トランプ大統領による145%の対中関税措置に対抗し、中国も米国製品に対して125%の関税を課している。

 ・国内のすべての航空会社に対し、ボーイング機の追加受領を停止するよう命じた。

 ・ボーイングからのスペアパーツ、機器、コンポーネントなどの購入も中止するよう指示。

 ・既存のボーイング機に関する注文契約を取り消すよう求めた。

 ・ボーイング社にとって中国は最大かつ急成長中の市場のひとつである。

 ・エアバス社との競争が激しい中、今回の措置でボーイングは大きな市場を失う可能性がある。

 ・報道によれば、ボーイングの株価はこの措置を受けて4.5%下落した。

 ・主要三大航空会社(中国国際航空・中国東方航空・中国南方航空)は、2025年~2027年にかけて計179機のボーイング機の納入を予定していた。

 ・納入停止により、機材更新・拡充計画に遅れが生じる可能性がある。

 ・部品調達が制限されることで、機体の保守・運用コストが増加する懸念がある。

 ・リース中の機体にも高率関税がかかるため、財政的な負担が拡大する。

 ・中国政府は、航空会社に対する財政的支援策の検討を始めている。

 ・エアバス社(欧州)は、既に中国市場で優位にあり、代替調達先として有力である。

 ・中国国産の航空機メーカー「COMAC」(中国商用飛機)は、C919型などの国産機の導入が進む可能性がある。

 ・今回の措置は、ボーイング離れを加速させ、中国国内での航空機自給体制構築を後押しする可能性がある。

【引用・参照・底本】

白熱化する貿易戦争;中国が米ボーイング社に制裁 ParsToday 2024.04.15
https://parstoday.ir/ja/news/world-i127510-%E7%99%BD%E7%86%B1%E5%8C%96%E3%81%99%E3%82%8B%E8%B2%BF%E6%98%93%E6%88%A6%E4%BA%89_%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%8C%E7%B1%B3%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%A4%BE%E3%81%AB%E5%88%B6%E8%A3%81

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