在米中国大使館:「結び目を作った者がそれを解くべきである」 ― 2025年04月26日 22:52
【概要】
2025年4月25日、在米中国大使館の報道官は、米国が中国との間で関税問題について合意に向けた協議を行っていると繰り返し表明していることに対して、これを受けたメディアの問い合わせに応じ、次のように述べた。
報道官は、「私の知る限り、中国と米国の間で関税問題に関する協議や交渉は行われておらず、ましてや何らかの合意に達したという事実もない」と述べた。また、関税戦争は米国によって一方的に引き起こされたものであり、「結び目を作った者がそれを解くべきである」と指摘した。
さらに報道官は、米国が本当に対話と交渉を通じて問題を解決しようとするのであれば、まず誤りを正し、威圧的な手法を放棄し、中国に対するすべての一方的な関税措置を撤廃すべきであると述べた。そのうえで、意味のある対話は平等、相互尊重、互恵の原則に基づいてのみ成立し得ると強調した。
最後に報道官は、中国と米国が新時代において良好な関係を築くためには、相互尊重、平和共存、ウィンウィン協力こそが正しい道であると述べた。また、「一方で協力を口にしながら、他方で最大限の圧力をかけるようなやり方では、中国との真の協力関係を築くことはできない」と付け加えた。
【詳細】
2025年4月25日、在米中国大使館の報道官は、米国側が「中国と関税問題に関して合意に向けた協議を行っている」と繰り返し表明していることに対して、メディアからの問い合わせに応じた。
この問い合わせに対し、報道官はまず、「私の知る限り、中国と米国の間で関税問題に関する協議や交渉は一切行われていない」と明言した。そして「ましてや、双方の間で何らかの合意に達したという事実も存在しない」と付け加えた。この発言は、米国側の主張を「誤解を招くもの」と位置付け、事実関係を否定するものであった。
報道官はさらに、現在の関税問題の発端についても言及した。関税戦争は「米国によって一方的に引き起こされたものである」と指摘し、続けて「結び目を作った者がその結び目を解くべきである」と表現した。この言葉は、関税問題の責任は米国にあるとの認識を明確に示すものであり、解決に向けた第一歩は米国側の態度と行動の是正にあるとする立場を示したものである。
さらに報道官は、もし米国が本当に問題を対話と交渉を通じて解決したいのであれば、次の三点を実行すべきであると述べた。
1.自らの誤りを正すこと
2.威圧的な手法(coercive tactics)を放棄すること
3.中国に対するすべての一方的な関税措置を撤廃すること
これらの条件を満たして初めて、「平等」「相互尊重」「互恵」の原則に基づく「意味のある対話」が成立し得るとした。
最後に報道官は、今後の中米関係のあり方についても言及した。すなわち、「相互尊重」「平和共存」「ウィンウィンの協力」が新時代における中米両国の正しい関係の在り方であると強調した。そして、「一方で協力を口にしながら、他方で最大限の圧力をかける」というやり方では、中国との間で真の協力関係を築くことはできないと指摘した。
本件における報道官の発言全体は、米国側が示す「交渉進展」や「合意可能性」といった楽観的な見通しを明確に否定すると同時に、関係改善に向けては米国側に根本的な態度変化が求められるとの立場を示したものである。
【要点】
・2025年4月25日、在米中国大使館の報道官がメディアの問い合わせに応じた。
・問い合わせ内容は、米国が「中国と関税問題について合意に向けた協議を行っている」と繰り返し主張していることに関するものであった。
・報道官は「私の知る限り、中国と米国の間で関税問題に関する協議や交渉は一切行われていない」と明言した。
・さらに、「双方の間で何らかの合意に達した事実も存在しない」と強調した。
・報道官は、関税戦争は「米国によって一方的に引き起こされたものである」と指摘した。
・「結び目を作った者がそれを解くべきである」と述べ、問題解決の責任は米国側にあると主張した。
・報道官は、米国が本当に対話と交渉による解決を望むのであれば、以下を実行すべきであると述べた。
⇨ 自らの誤りを正すこと
⇨ 威圧的な手法(coercive tactics)を放棄すること
⇨ 中国に対するすべての一方的な関税措置を撤廃すること
・上記の条件を満たしたうえでのみ、「平等」「相互尊重」「互恵」に基づく意味のある対話が可能になると述べた。
・報道官はまた、中米関係の正しいあり方として以下を挙げた。
⇨ 相互尊重
⇨ 平和共存
⇨ ウィンウィンの協力
・最後に、「一方で協力を口にしながら、他方で最大限の圧力をかけるやり方では、中国との真の協力関係は築けない」と指摘した。
【桃源寸評】
中国側の主張が理に適っている
1.なぜ中国側の主張が理に適っていると考えられるのか
・中国報道官は、米中間の関税問題について、「関税戦争は米国が一方的に引き起こしたものであり、その解決も米国側の是正によってなされるべきである」と主張している。
・事実、2018年以降、米国(トランプ政権)は、主に「対中貿易赤字の是正」「知的財産権侵害の防止」を名目として、中国からの輸入品に一方的な追加関税を課した。
・この関税措置は、世界貿易機関(WTO)のルールにおいても本来、事前協議や多国間手続きを経るべきところを、米国単独の判断により発動されたものである。
・対応として中国は報復関税を課したが、発端が米国の一方的行動にあったことは国際的にも広く認識されている。
・よって、中国側が「結び目を作った者(米国)がそれを解くべきである」と主張するのは、事実の経緯に沿った理に適ったものである。
・また、中国側が「平等・相互尊重・互恵」を前提とする対話を求めている点も、国際交渉の一般原則にかなっている。国際関係において一方的圧力下での交渉は、公正な合意形成とは認められないためである。
2.トランプ政権下での関税政策の背景と問題点
・トランプ政権は、2017年から「アメリカ・ファースト」政策を掲げ、対中貿易赤字削減を重視する立場をとった。
・これにより、通商拡大法第301条(Section 301)に基づき、中国による不公正貿易慣行(知的財産権侵害、不当な技術移転要求など)を理由として、巨額の関税措置を発動した。
・しかし、実際には米国の消費者と企業に対しても関税コストが跳ね返り、米国内でも多くの産業界から反発があった。
・また、米国政府自身が求めた「貿易赤字の縮小」についても、短期的に一定の効果は見られたものの、構造的な改善には至らず、赤字額自体は根本的には解消されなかった。
・加えて、関税措置がWTOルールに違反する可能性についても各方面から指摘され、国際的な信頼低下を招いた。
・これらの点から、トランプ政権下の対中関税政策には、一方的で短期的効果に偏り、中長期的には自国経済や国際秩序への悪影響が大きかったという問題があったと評価できる。
3.米中関税問題に関する時系列年表
年月 出来事
・2018年3月 トランプ政権が鉄鋼・アルミニウムに関税を課す(対中制裁の一環)。
・2018年7月 米国が中国製品340億ドル分に25%の追加関税を発動。中国も対米報復関税を実施。
・2018年9月 米国がさらに2000億ドル相当の中国製品に10%関税(後に25%に引き上げ)。
・2019年5月 米中交渉が一時決裂。米国が追加関税措置を拡大。中国も報復関税を強化。
・2020年1月 「第一段階合意」(Phase One Deal)が締結。中国の農産品購入拡大などが盛り込まれるが、主要な関税は維持された。
・2021年以降 バイデン政権下でも多くのトランプ時代の関税措置が継続される。包括的な再交渉は進まず。
・2025年4月 中国大使館が「現在、米中間で関税問題に関する協議や交渉は行われていない」と公式に表明。
4.米中双方の立場比較表(関税問題に関して)
項目 米国側立場(主にトランプ政権) 中国側立場
(1)関税措置の理由 ・対中貿易赤字の是正、中国による不公正貿易慣行(知的財産権侵害等)の是正 *米国の一方的措置であり、国際ルール違反と主張
(2)交渉の前提 ・最大限の圧力をかけ、譲歩を引き出す交渉戦略(いわゆる
「ディール」志向) *平等・相互尊重・互恵の原則を前提とする
(3)現状認識(2025年時点) ・協議を試みていると米側が発信しているが、具体的成果なし *公式に「協議や交渉は存在しない」と否定
(3)解決に向けた要求 ・中国の構造改革、米国製品の購入拡大 *米国による一方的関税措置の完全撤廃
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
There have been no negotiations between China, US: Chinese Embassy GT 2025.04.26
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1332885.shtml
2025年4月25日、在米中国大使館の報道官は、米国が中国との間で関税問題について合意に向けた協議を行っていると繰り返し表明していることに対して、これを受けたメディアの問い合わせに応じ、次のように述べた。
報道官は、「私の知る限り、中国と米国の間で関税問題に関する協議や交渉は行われておらず、ましてや何らかの合意に達したという事実もない」と述べた。また、関税戦争は米国によって一方的に引き起こされたものであり、「結び目を作った者がそれを解くべきである」と指摘した。
さらに報道官は、米国が本当に対話と交渉を通じて問題を解決しようとするのであれば、まず誤りを正し、威圧的な手法を放棄し、中国に対するすべての一方的な関税措置を撤廃すべきであると述べた。そのうえで、意味のある対話は平等、相互尊重、互恵の原則に基づいてのみ成立し得ると強調した。
最後に報道官は、中国と米国が新時代において良好な関係を築くためには、相互尊重、平和共存、ウィンウィン協力こそが正しい道であると述べた。また、「一方で協力を口にしながら、他方で最大限の圧力をかけるようなやり方では、中国との真の協力関係を築くことはできない」と付け加えた。
【詳細】
2025年4月25日、在米中国大使館の報道官は、米国側が「中国と関税問題に関して合意に向けた協議を行っている」と繰り返し表明していることに対して、メディアからの問い合わせに応じた。
この問い合わせに対し、報道官はまず、「私の知る限り、中国と米国の間で関税問題に関する協議や交渉は一切行われていない」と明言した。そして「ましてや、双方の間で何らかの合意に達したという事実も存在しない」と付け加えた。この発言は、米国側の主張を「誤解を招くもの」と位置付け、事実関係を否定するものであった。
報道官はさらに、現在の関税問題の発端についても言及した。関税戦争は「米国によって一方的に引き起こされたものである」と指摘し、続けて「結び目を作った者がその結び目を解くべきである」と表現した。この言葉は、関税問題の責任は米国にあるとの認識を明確に示すものであり、解決に向けた第一歩は米国側の態度と行動の是正にあるとする立場を示したものである。
さらに報道官は、もし米国が本当に問題を対話と交渉を通じて解決したいのであれば、次の三点を実行すべきであると述べた。
1.自らの誤りを正すこと
2.威圧的な手法(coercive tactics)を放棄すること
3.中国に対するすべての一方的な関税措置を撤廃すること
これらの条件を満たして初めて、「平等」「相互尊重」「互恵」の原則に基づく「意味のある対話」が成立し得るとした。
最後に報道官は、今後の中米関係のあり方についても言及した。すなわち、「相互尊重」「平和共存」「ウィンウィンの協力」が新時代における中米両国の正しい関係の在り方であると強調した。そして、「一方で協力を口にしながら、他方で最大限の圧力をかける」というやり方では、中国との間で真の協力関係を築くことはできないと指摘した。
本件における報道官の発言全体は、米国側が示す「交渉進展」や「合意可能性」といった楽観的な見通しを明確に否定すると同時に、関係改善に向けては米国側に根本的な態度変化が求められるとの立場を示したものである。
【要点】
・2025年4月25日、在米中国大使館の報道官がメディアの問い合わせに応じた。
・問い合わせ内容は、米国が「中国と関税問題について合意に向けた協議を行っている」と繰り返し主張していることに関するものであった。
・報道官は「私の知る限り、中国と米国の間で関税問題に関する協議や交渉は一切行われていない」と明言した。
・さらに、「双方の間で何らかの合意に達した事実も存在しない」と強調した。
・報道官は、関税戦争は「米国によって一方的に引き起こされたものである」と指摘した。
・「結び目を作った者がそれを解くべきである」と述べ、問題解決の責任は米国側にあると主張した。
・報道官は、米国が本当に対話と交渉による解決を望むのであれば、以下を実行すべきであると述べた。
⇨ 自らの誤りを正すこと
⇨ 威圧的な手法(coercive tactics)を放棄すること
⇨ 中国に対するすべての一方的な関税措置を撤廃すること
・上記の条件を満たしたうえでのみ、「平等」「相互尊重」「互恵」に基づく意味のある対話が可能になると述べた。
・報道官はまた、中米関係の正しいあり方として以下を挙げた。
⇨ 相互尊重
⇨ 平和共存
⇨ ウィンウィンの協力
・最後に、「一方で協力を口にしながら、他方で最大限の圧力をかけるやり方では、中国との真の協力関係は築けない」と指摘した。
【桃源寸評】
中国側の主張が理に適っている
1.なぜ中国側の主張が理に適っていると考えられるのか
・中国報道官は、米中間の関税問題について、「関税戦争は米国が一方的に引き起こしたものであり、その解決も米国側の是正によってなされるべきである」と主張している。
・事実、2018年以降、米国(トランプ政権)は、主に「対中貿易赤字の是正」「知的財産権侵害の防止」を名目として、中国からの輸入品に一方的な追加関税を課した。
・この関税措置は、世界貿易機関(WTO)のルールにおいても本来、事前協議や多国間手続きを経るべきところを、米国単独の判断により発動されたものである。
・対応として中国は報復関税を課したが、発端が米国の一方的行動にあったことは国際的にも広く認識されている。
・よって、中国側が「結び目を作った者(米国)がそれを解くべきである」と主張するのは、事実の経緯に沿った理に適ったものである。
・また、中国側が「平等・相互尊重・互恵」を前提とする対話を求めている点も、国際交渉の一般原則にかなっている。国際関係において一方的圧力下での交渉は、公正な合意形成とは認められないためである。
2.トランプ政権下での関税政策の背景と問題点
・トランプ政権は、2017年から「アメリカ・ファースト」政策を掲げ、対中貿易赤字削減を重視する立場をとった。
・これにより、通商拡大法第301条(Section 301)に基づき、中国による不公正貿易慣行(知的財産権侵害、不当な技術移転要求など)を理由として、巨額の関税措置を発動した。
・しかし、実際には米国の消費者と企業に対しても関税コストが跳ね返り、米国内でも多くの産業界から反発があった。
・また、米国政府自身が求めた「貿易赤字の縮小」についても、短期的に一定の効果は見られたものの、構造的な改善には至らず、赤字額自体は根本的には解消されなかった。
・加えて、関税措置がWTOルールに違反する可能性についても各方面から指摘され、国際的な信頼低下を招いた。
・これらの点から、トランプ政権下の対中関税政策には、一方的で短期的効果に偏り、中長期的には自国経済や国際秩序への悪影響が大きかったという問題があったと評価できる。
3.米中関税問題に関する時系列年表
年月 出来事
・2018年3月 トランプ政権が鉄鋼・アルミニウムに関税を課す(対中制裁の一環)。
・2018年7月 米国が中国製品340億ドル分に25%の追加関税を発動。中国も対米報復関税を実施。
・2018年9月 米国がさらに2000億ドル相当の中国製品に10%関税(後に25%に引き上げ)。
・2019年5月 米中交渉が一時決裂。米国が追加関税措置を拡大。中国も報復関税を強化。
・2020年1月 「第一段階合意」(Phase One Deal)が締結。中国の農産品購入拡大などが盛り込まれるが、主要な関税は維持された。
・2021年以降 バイデン政権下でも多くのトランプ時代の関税措置が継続される。包括的な再交渉は進まず。
・2025年4月 中国大使館が「現在、米中間で関税問題に関する協議や交渉は行われていない」と公式に表明。
4.米中双方の立場比較表(関税問題に関して)
項目 米国側立場(主にトランプ政権) 中国側立場
(1)関税措置の理由 ・対中貿易赤字の是正、中国による不公正貿易慣行(知的財産権侵害等)の是正 *米国の一方的措置であり、国際ルール違反と主張
(2)交渉の前提 ・最大限の圧力をかけ、譲歩を引き出す交渉戦略(いわゆる
「ディール」志向) *平等・相互尊重・互恵の原則を前提とする
(3)現状認識(2025年時点) ・協議を試みていると米側が発信しているが、具体的成果なし *公式に「協議や交渉は存在しない」と否定
(3)解決に向けた要求 ・中国の構造改革、米国製品の購入拡大 *米国による一方的関税措置の完全撤廃
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
There have been no negotiations between China, US: Chinese Embassy GT 2025.04.26
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1332885.shtml