米国のウクライナとロシアのパイプライン支配 ― 2025年04月28日 14:34
【概要】
アメリカ合衆国がウクライナを通るガスパイプラインとノードストリームパイプラインに対する支配を通じて、EUに対して多大な影響力を行使できる可能性について述べられている。具体的には、アメリカがウクライナとの資源契約の一環として、ロシアとEUを結ぶ国際的なガスパイプラインの管理権を獲得することで、EUに対する交渉のレバレッジを得る意図があるとされている。この管理権獲得の背景には、EUとの貿易戦争でアメリカに有利な譲歩を引き出すこと、またアメリカの輸出市場を安定させる目的がある。
さらに、ロシアのパイプラインガス輸出の管理をアメリカが掌握することで、ロシアに対して停戦合意を促すための財政的なインセンティブを提供し、失われた収入を回復させる狙いもある。アメリカはまた、ノードストリーム1および2の4本のパイプラインを支配することも視野に入れており、これにはEUの支配下にあるロシア資産の一部をアメリカが取得することが鍵となると考えられている。
具体的には、アメリカがロシアから押収した約50億ドルの資産を手に入れることができれば、ノードストリームパイプラインの約200億ドルのコストを補うために必要な追加の資金、15億ドル以上をEUに対して要求し、EUの拒否を受けて新たな金融取引を構築する可能性がある。こうした資産移転が進むことで、アメリカはEUに対して強力な交渉カードを手に入れることができ、貿易戦争における有利な立場を確保することができるとされている。
また、ロシアがアメリカとの経済的な協力関係を構築する意向を示す中で、アメリカがロシアに対してこれらの資産を活用することが提案されており、この資産の利用はロシアにとっても利益をもたらす可能性があると指摘されている。特に、アメリカとロシアの新たなデタント(緊張緩和)を築くための手段として、押収された資産のアメリカへの移転が有効であるとされている。
最後に、これらのエネルギー外交および金融取引を通じて、アメリカがEUに対して多大な影響力を行使できる状況が生まれると論じられており、これによりアメリカはEUに対する譲歩を引き出すための強力なレバレッジを得ることができるとされている。
【詳細】
アメリカ合衆国がウクライナを通るガスパイプラインやノードストリームパイプラインを支配することによって、EUに対して影響力を強め、その貿易戦争における交渉を有利に進める可能性について詳述されている。以下、さらに詳細にその内容を説明する。
1. アメリカのウクライナとロシアのパイプライン支配
アメリカがウクライナを通るガスパイプラインの管理権を得るために、トランプ大統領とウクライナとの間で結ばれた資源契約が重要な役割を果たす。この契約の中には、「イースターエッグ」と呼ばれる特典があり、アメリカの国際開発金融公社(IDFC)が、ロシアとEUを結ぶ国際的なガスパイプラインの管理権を握ることが含まれている。このガスパイプラインは、ロシアからEUへの重要なエネルギー供給路であり、アメリカがこのパイプラインの運営に関与することで、EUに対して強力なレバレッジを持つことができると考えられている。
2. アメリカの目的と意図
アメリカがこのような支配権を獲得する背景には、いくつかの目的がある。
・貿易戦争での有利な立場: アメリカとEUの間では、現在貿易戦争が続いており、アメリカはこの状況を利用してEUに譲歩を引き出そうとする。ガスパイプラインを支配することにより、アメリカはEUのエネルギー供給に対して影響を及ぼし、貿易戦争における交渉を有利に進めることができる。
・アメリカ経済の安定化: この支配を通じて、アメリカの輸出市場を安定させることも目指されている。EUに対する影響力を行使することで、アメリカ製品をより安定した市場で販売できるようにし、経済的な利益を得ようとする。
・ロシアに対する圧力: さらに、アメリカはロシアに対して停戦を促すインセンティブを提供しようとしている。ロシアに失われた収入を補う手段として、ガスパイプラインの管理権を握り、ロシアがエネルギー供給を再開することに見返りとして、停戦合意を取り付ける狙いがある。
3. ノードストリームパイプラインの支配
ノードストリーム1および2は、ロシアからEUへの重要なガス供給ルートであり、アメリカはこれらのパイプラインの支配をも視野に入れている。特に、ロシアの所有するこれらのパイプラインの支配を確立するためには、ウクライナのガスパイプラインを支配するための契約と異なり、異なる方法を講じる必要がある。
・EUに対する圧力: アメリカは、EUが保有するロシアの資産を利用して、ノードストリームパイプラインのコスト(約200億ドル)を補うために、追加の資金を引き出そうとする。この資金は、アメリカがEUに対して金融的なプレッシャーをかける手段として活用される可能性がある。
・押収されたロシア資産の移転: ロシアから押収された資産(約3000億ドル)の一部を、アメリカが受け取る形に転換することが提案されている。これにより、アメリカはEUの支配下にあるロシアの資産を自国に移転させ、それを大規模な購入に活用することができる。このプロセスは、アメリカとロシアの経済的な協力関係を深化させ、双方に利益をもたらすとされている。
4. EUとロシアの関係
EUは、ロシアからのエネルギー供給に依存しているが、ウクライナ戦争などを受けて、ロシアとの関係が冷え込んでいる。アメリカは、EUがロシアとの関係を見直す中で、アメリカのエネルギー供給を強化し、ロシアに対して経済的圧力をかける手段を講じている。また、EUがロシアの資産を解放することを拒否した場合、アメリカは新たな金融取引を通じてその資産をアメリカに移すことを計画している。
5. アメリカとロシアの「新たなデタント」
この記事の中で言及されている「新たなデタント」とは、アメリカとロシアが緊張を緩和し、新たな経済的パートナーシップを築く過程を指している。ロシアは、アメリカが押収した資産を完全には取り戻せないと認識しており、その一部をアメリカが利用することに対して受け入れる可能性がある。この過程で、アメリカはロシアに対して新たな経済的な協力関係を提供し、その見返りとして戦争の終結を促すことが目指されている。
結論
このように、アメリカがガスパイプラインやロシア資産の支配を通じてEUに対する影響力を強め、EUとの貿易戦争を有利に進める戦略が示唆されている。また、ロシアとの関係改善のために、アメリカがロシアに対して経済的なインセンティブを提供する形で、戦争の終結を促す可能性があると論じられている。
【要点】
1.アメリカの目的
・ウクライナを通るガスパイプラインの管理権を獲得: アメリカは、トランプ大統領とウクライナとの契約を通じて、ロシアからEUへのガス供給を支配することを目指す。
・EUとの貿易戦争での有利な立場確保: アメリカは、この支配権を利用してEUに対する交渉で有利な立場を確保し、譲歩を引き出すことを狙う。
・アメリカ経済の安定化: EUに対する影響力を行使して、アメリカ製品を安定した市場で販売できるようにする。
・ロシアへの圧力: ガスパイプラインの支配を通じて、ロシアに停戦を促し、エネルギー供給を再開させることで収入を補う。
2.ノードストリームパイプライン:
・ロシア所有のノードストリームの支配: アメリカは、ロシアからEUへのガス供給を行っているノードストリーム1・2の支配をも視野に入れている。
・EUからの圧力: EUが保有するロシアの資産を利用して、ノードストリームパイプラインのコスト(約200億ドル)を補うための資金を引き出す。
3.押収されたロシア資産:
・資産移転の提案: アメリカは、ロシアから押収した約3000億ドルの資産の一部をアメリカに移転し、それを大規模な購入に活用する計画。
・EUの支配下にあるロシア資産: EUがロシア資産の解放を拒否した場合、アメリカは新たな金融取引を通じてその資産をアメリカに移転させる。
4.新たなロシア-USデタント
・経済的協力の再構築: アメリカとロシアの間で緊張を緩和し、経済的な協力関係を築く「新たなデタント」が進行中。
・ロシアの受け入れ: ロシアはアメリカに押収された資産の完全な返還を期待していないが、一部をアメリカと共に利用することを受け入れる可能性がある。
5.戦争終結へのインセンティブ:
・ロシアへのインセンティブ提供: アメリカはロシアに対し、戦争終結のインセンティブとして経済的な提案を行い、停戦を促すことを目指している。
【引用・参照・底本】
Here’s How Gas Pipelines & Seized Russian Assets Could Give The US Lots Of Leverage Over The EU Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.18
https://korybko.substack.com/p/heres-how-gas-pipelines-and-seized?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=161594795&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
アメリカ合衆国がウクライナを通るガスパイプラインとノードストリームパイプラインに対する支配を通じて、EUに対して多大な影響力を行使できる可能性について述べられている。具体的には、アメリカがウクライナとの資源契約の一環として、ロシアとEUを結ぶ国際的なガスパイプラインの管理権を獲得することで、EUに対する交渉のレバレッジを得る意図があるとされている。この管理権獲得の背景には、EUとの貿易戦争でアメリカに有利な譲歩を引き出すこと、またアメリカの輸出市場を安定させる目的がある。
さらに、ロシアのパイプラインガス輸出の管理をアメリカが掌握することで、ロシアに対して停戦合意を促すための財政的なインセンティブを提供し、失われた収入を回復させる狙いもある。アメリカはまた、ノードストリーム1および2の4本のパイプラインを支配することも視野に入れており、これにはEUの支配下にあるロシア資産の一部をアメリカが取得することが鍵となると考えられている。
具体的には、アメリカがロシアから押収した約50億ドルの資産を手に入れることができれば、ノードストリームパイプラインの約200億ドルのコストを補うために必要な追加の資金、15億ドル以上をEUに対して要求し、EUの拒否を受けて新たな金融取引を構築する可能性がある。こうした資産移転が進むことで、アメリカはEUに対して強力な交渉カードを手に入れることができ、貿易戦争における有利な立場を確保することができるとされている。
また、ロシアがアメリカとの経済的な協力関係を構築する意向を示す中で、アメリカがロシアに対してこれらの資産を活用することが提案されており、この資産の利用はロシアにとっても利益をもたらす可能性があると指摘されている。特に、アメリカとロシアの新たなデタント(緊張緩和)を築くための手段として、押収された資産のアメリカへの移転が有効であるとされている。
最後に、これらのエネルギー外交および金融取引を通じて、アメリカがEUに対して多大な影響力を行使できる状況が生まれると論じられており、これによりアメリカはEUに対する譲歩を引き出すための強力なレバレッジを得ることができるとされている。
【詳細】
アメリカ合衆国がウクライナを通るガスパイプラインやノードストリームパイプラインを支配することによって、EUに対して影響力を強め、その貿易戦争における交渉を有利に進める可能性について詳述されている。以下、さらに詳細にその内容を説明する。
1. アメリカのウクライナとロシアのパイプライン支配
アメリカがウクライナを通るガスパイプラインの管理権を得るために、トランプ大統領とウクライナとの間で結ばれた資源契約が重要な役割を果たす。この契約の中には、「イースターエッグ」と呼ばれる特典があり、アメリカの国際開発金融公社(IDFC)が、ロシアとEUを結ぶ国際的なガスパイプラインの管理権を握ることが含まれている。このガスパイプラインは、ロシアからEUへの重要なエネルギー供給路であり、アメリカがこのパイプラインの運営に関与することで、EUに対して強力なレバレッジを持つことができると考えられている。
2. アメリカの目的と意図
アメリカがこのような支配権を獲得する背景には、いくつかの目的がある。
・貿易戦争での有利な立場: アメリカとEUの間では、現在貿易戦争が続いており、アメリカはこの状況を利用してEUに譲歩を引き出そうとする。ガスパイプラインを支配することにより、アメリカはEUのエネルギー供給に対して影響を及ぼし、貿易戦争における交渉を有利に進めることができる。
・アメリカ経済の安定化: この支配を通じて、アメリカの輸出市場を安定させることも目指されている。EUに対する影響力を行使することで、アメリカ製品をより安定した市場で販売できるようにし、経済的な利益を得ようとする。
・ロシアに対する圧力: さらに、アメリカはロシアに対して停戦を促すインセンティブを提供しようとしている。ロシアに失われた収入を補う手段として、ガスパイプラインの管理権を握り、ロシアがエネルギー供給を再開することに見返りとして、停戦合意を取り付ける狙いがある。
3. ノードストリームパイプラインの支配
ノードストリーム1および2は、ロシアからEUへの重要なガス供給ルートであり、アメリカはこれらのパイプラインの支配をも視野に入れている。特に、ロシアの所有するこれらのパイプラインの支配を確立するためには、ウクライナのガスパイプラインを支配するための契約と異なり、異なる方法を講じる必要がある。
・EUに対する圧力: アメリカは、EUが保有するロシアの資産を利用して、ノードストリームパイプラインのコスト(約200億ドル)を補うために、追加の資金を引き出そうとする。この資金は、アメリカがEUに対して金融的なプレッシャーをかける手段として活用される可能性がある。
・押収されたロシア資産の移転: ロシアから押収された資産(約3000億ドル)の一部を、アメリカが受け取る形に転換することが提案されている。これにより、アメリカはEUの支配下にあるロシアの資産を自国に移転させ、それを大規模な購入に活用することができる。このプロセスは、アメリカとロシアの経済的な協力関係を深化させ、双方に利益をもたらすとされている。
4. EUとロシアの関係
EUは、ロシアからのエネルギー供給に依存しているが、ウクライナ戦争などを受けて、ロシアとの関係が冷え込んでいる。アメリカは、EUがロシアとの関係を見直す中で、アメリカのエネルギー供給を強化し、ロシアに対して経済的圧力をかける手段を講じている。また、EUがロシアの資産を解放することを拒否した場合、アメリカは新たな金融取引を通じてその資産をアメリカに移すことを計画している。
5. アメリカとロシアの「新たなデタント」
この記事の中で言及されている「新たなデタント」とは、アメリカとロシアが緊張を緩和し、新たな経済的パートナーシップを築く過程を指している。ロシアは、アメリカが押収した資産を完全には取り戻せないと認識しており、その一部をアメリカが利用することに対して受け入れる可能性がある。この過程で、アメリカはロシアに対して新たな経済的な協力関係を提供し、その見返りとして戦争の終結を促すことが目指されている。
結論
このように、アメリカがガスパイプラインやロシア資産の支配を通じてEUに対する影響力を強め、EUとの貿易戦争を有利に進める戦略が示唆されている。また、ロシアとの関係改善のために、アメリカがロシアに対して経済的なインセンティブを提供する形で、戦争の終結を促す可能性があると論じられている。
【要点】
1.アメリカの目的
・ウクライナを通るガスパイプラインの管理権を獲得: アメリカは、トランプ大統領とウクライナとの契約を通じて、ロシアからEUへのガス供給を支配することを目指す。
・EUとの貿易戦争での有利な立場確保: アメリカは、この支配権を利用してEUに対する交渉で有利な立場を確保し、譲歩を引き出すことを狙う。
・アメリカ経済の安定化: EUに対する影響力を行使して、アメリカ製品を安定した市場で販売できるようにする。
・ロシアへの圧力: ガスパイプラインの支配を通じて、ロシアに停戦を促し、エネルギー供給を再開させることで収入を補う。
2.ノードストリームパイプライン:
・ロシア所有のノードストリームの支配: アメリカは、ロシアからEUへのガス供給を行っているノードストリーム1・2の支配をも視野に入れている。
・EUからの圧力: EUが保有するロシアの資産を利用して、ノードストリームパイプラインのコスト(約200億ドル)を補うための資金を引き出す。
3.押収されたロシア資産:
・資産移転の提案: アメリカは、ロシアから押収した約3000億ドルの資産の一部をアメリカに移転し、それを大規模な購入に活用する計画。
・EUの支配下にあるロシア資産: EUがロシア資産の解放を拒否した場合、アメリカは新たな金融取引を通じてその資産をアメリカに移転させる。
4.新たなロシア-USデタント
・経済的協力の再構築: アメリカとロシアの間で緊張を緩和し、経済的な協力関係を築く「新たなデタント」が進行中。
・ロシアの受け入れ: ロシアはアメリカに押収された資産の完全な返還を期待していないが、一部をアメリカと共に利用することを受け入れる可能性がある。
5.戦争終結へのインセンティブ:
・ロシアへのインセンティブ提供: アメリカはロシアに対し、戦争終結のインセンティブとして経済的な提案を行い、停戦を促すことを目指している。
【引用・参照・底本】
Here’s How Gas Pipelines & Seized Russian Assets Could Give The US Lots Of Leverage Over The EU Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.18
https://korybko.substack.com/p/heres-how-gas-pipelines-and-seized?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=161594795&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email