クローカステロ事件とその関与者2025年04月28日 19:04

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【概要】
 
 インディアの経済誌「Economic Times」は、ロシア当局がISIS-Kとウクライナ軍情報機関GURの共謀による昨春のクローカステロ事件の主要な関与者の一人がパキスタンで拘束された可能性があると報じた。しかし、これは未確認の情報であり、確証はない。報道によると、モスクワはアフガニスタンに対してクローカステロ事件のタジク系の首謀者の引き渡しを求めていたが、その人物はカブールが彼を拘束する前にパキスタンに逃げ込んだ可能性があるという。

 ロシアの公的なメディアはこの報道をまだ公開しておらず、ロシアの政府当局者もコメントしていないため、事実確認がなされていないが、クローカステロ事件におけるタジク系の関与、ISIS-Kの拠点がアフガニスタンにあること、そしてアフガニスタンとパキスタンの国境が非常に透過的であることを考えると、この報道には一定の信憑性があると考えられる。テロリスト指定されたグループや個人がパキスタンを拠点に活動している事例も過去に存在している。

 この点については詳述する必要がある。過去1年間、パキスタンがクローカステロ事件に関与した証拠は見つかっていないが、クローカステロ事件の関与者がアフガニスタンからパキスタンに逃亡したとしても不思議ではない。パキスタンの評判が悪いため、テロリストや過激派がその国に逃げ込むことがあるからである。

 現在、パキスタンは「バローチ解放軍」や「タリバン運動」などのテロ組織と戦っているが、インディアは先週のパハルガムテロ事件で24人のヒンドゥー教徒が虐殺された事件について、パキスタンが関与したと非難している。このように、パキスタンがテロの被害者でありながら、同時にインディアに対してテロを武器として利用しているとの非難を受けるという矛盾した状況は1990年代から続いている。

 簡単に言うと、パキスタンはソ連のアフガニスタン侵攻に対抗するためのアフガンジハードに米国と共に関与し、その経験をインディアに対する戦争戦術として活用したが、その結果、大規模な社会的過激化を招いた。その過激化したパシュトゥン族がパキスタン国家に対して戦争を起こし、その混乱がバローチ分離運動を復活させるきっかけとなった。

 また、オサマ・ビン・ラディンがパキスタンで米国によって殺害されたことも忘れてはならない。ビン・ラディンは軍基地の近くに住んでいたため、パキスタンの事実上の軍事指導者が彼や他のテロリストとどれほど近かったのかについての疑問が今も続いている。アフガニスタンとの国境地帯における腐敗と無法地帯の状況は、テロリズムの温床となっている可能性がある。

 Economic Timesの報道は「パキスタン当局がその容疑者を拘束した可能性がある」と伝えており、もしそれが事実であれば、パキスタンの信用を高め、ロシアとの関係を強化することになる。パキスタンとロシアはすでに資源分野での協力を拡大しており、中央ユーラシアを通るPAKAFUZ鉄道の進展や、テロ対策に関する協議を行っている。

 仮にパキスタンがクローカス事件の容疑者を迅速に拘束したのであれば、その能力を生かして、パハルガム事件のテロリストに関与したパキスタン人を拘束することができるだろう。インディアは自国の情報をロシアに提供し、その情報をパキスタンに伝える形で、容疑者の拘束を求めることができるだろう。インディアとパキスタンの関係は悪化しており、パキスタンはロシアに中立的な調査を依頼しているが、ロシアは両国と友好関係を築いているため、その役割を果たすことが理にかなっている。

 インディアの利益の観点からは、ロシアに対してパハルガム事件に関するすべての事実を共有することが重要であり、その情報がパキスタンの関与を立証するための証拠となる可能性がある。パキスタンの国防大臣カワジャ・アシフは、ロシアのメディアを通じて積極的に対外的な広報活動を行っているが、インディアの情報がそれに対抗する形となる可能性がある。

 結論として、クローカス事件の関与者がパキスタンで拘束されたという報道は、未確認であるが十分に信じられる内容であり、今後さらに明確な情報が得られることが期待される。また、インディアがパハルガム事件に関する情報をロシアを通じて共有し、パキスタンの関与を証明することが、今後の焦点となるだろう。

【詳細】
 
 クローカステロ事件とその関与者

 クローカステロ事件は、昨春に発生したテロ事件であり、ロシア当局がこの事件をISIS-K(イスラム国カレバ)の関与によるものと特定し、ウクライナの軍事情報機関であるGUR(ウクライナ国防省情報総局)との共謀があったと見なしている。このテロ事件において、タジク系の人物が首謀者として関与していたとされ、彼が事件の重要な指導者であると見なされている。

 報道によれば、ロシアはアフガニスタン政府に対してこのタジク系の首謀者を引き渡すよう要求したが、彼はアフガニスタン当局が彼を拘束する前にパキスタンに逃げ込んだ可能性があると伝えられている。この情報が正しい場合、アフガニスタンからパキスタンへの逃亡があり得る理由として、アフガニスタンとパキスタンの国境が非常に透過的であり、テロリストや過激派がしばしばこの地域で活動してきた経緯が挙げられる。

 パキスタンのテロリズムとその影響

 パキスタンは長年、テロリストや過激派グループが活動する温床となっていることで知られている。特に、アフガニスタンとの国境近辺は治安が不安定であり、これまでにも多くのテロリストがパキスタンに逃げ込んできた経緯がある。たとえば、アメリカのテロリスト指導者オサマ・ビン・ラディンがパキスタンに隠れていたことは有名であり、この事実はパキスタンの軍や政府がテロリストとどれほど密接な関係にあったのかを巡る疑念を生んでいる。

 現在、パキスタンは「バローチ解放軍」や「タリバン運動」などのテロ組織と戦っているが、同時に、インディアからはパキスタンが自国のテロリストグループを支援しているとの批判が続いている。例えば、先日発生したパハルガムテロ事件では、24人のヒンドゥー教徒が殺害され、インディアはパキスタンがこの攻撃に関与していると主張している。この矛盾した立場(テロの被害者でありながら、他国へのテロ支援者とされる)は、パキスタンとインディアの関係における重要な要素となっている。

 クローカステロ事件のパキスタンでの容疑者拘束

 報道では、クローカステロ事件のタジク系の首謀者がパキスタンで拘束された可能性があるとされている。この情報が事実であれば、パキスタンの政府がテロリストに対する取り締まりを強化したことになる。もしパキスタンがこの容疑者を拘束したのだとすれば、ロシアとの関係を強化するための前向きな動きとなり、またインディアにとっても、パキスタンがテロリズムに対する真摯な取り組みを見せる可能性があることを示唆することになる。

 インディアの影響力とロシアとの連携

 インディアは、パキスタンによるテロリストの支援に関する情報をロシアと共有している可能性がある。この背景には、インディアとロシアの戦略的なパートナーシップがある。ロシアはインディアとともにテロリズムとの戦いを強化しており、パキスタンが関与するテロ事件についても情報提供を通じて影響を及ぼすことが可能である。特に、インディアはパキスタンのテロ活動に関して詳細な情報を持っている可能性があり、それをロシアを通じてパキスタンに提供することが考えられる。ロシアはパキスタンとも関係を持ちながら、インディアとの関係も重要視しているため、調査において中立的な立場を取ることができる。

 今後の展開とその重要性

 クローカステロ事件に関連するパキスタンでの容疑者拘束報道が事実であれば、パキスタンはテロリストに対して法的な措置を取ったことになるが、これが今後のインディアとパキスタン、さらにはロシアとの外交にどのような影響を与えるかは注目すべき点である。また、パハルガムテロ事件に関しても、インディアがロシアを通じてパキスタンに対して関与を証明する情報を提供する可能性があり、これによりパキスタンの国際的な立場が更に厳しくなる可能性がある。

 この一連の事件と報道は、パキスタンがテロリズムと戦う一方で、他国へのテロ支援を行っているという矛盾した状況を浮き彫りにしており、国際社会での信頼回復を目指すためには、さらなる透明性と具体的な行動が求められるだろう。

【要点】 

 ・クローカステロ事件: 昨春、ロシア当局はクローカステロテロ事件がISIS-Kによるもので、ウクライナのGUR(軍事情報機関)と共謀があったと特定。タジク系の人物が首謀者とされている。

 ・報道内容: インディアの「Economic Times」が報じたところによると、クローカステロ事件の首謀者がパキスタンで拘束された可能性があると伝えられている。ロシアはアフガニスタンに容疑者引き渡しを要求したが、容疑者はアフガニスタンからパキスタンへ逃亡したという。

 ・パキスタンのテロリズム問題: パキスタンは、アフガニスタンとの国境付近で過激派グループが活動しており、過去にはオサマ・ビン・ラディンがパキスタンに隠れていた。テロリストがパキスタンに逃げ込むケースは多い。

 ・パハルガムテロ事件: インディアでは、先週発生したパハルガムテロ事件で24人のヒンドゥー教徒が殺害され、パキスタンが関与していると非難。インディアとパキスタンの間でテロリズムの責任を巡る対立が続く。

 ・クローカステロ容疑者の拘束: 報道が正しければ、パキスタンはクローカステロ事件の容疑者を拘束したことになる。これが事実なら、パキスタンのロシアとの関係強化に寄与する可能性がある。

 ・インディアとロシアの連携: インディアは、パキスタンがテロリストを支援しているという情報をロシアと共有している可能性がある。ロシアはインディアとパキスタン両国と良好な関係を維持し、調査において中立的な立場を取ることができる。

 ・今後の展開: クローカステロ事件の容疑者拘束が事実であれば、パキスタンはテロリズムに対して具体的な対応を示すことになる。インディアはロシアを通じてパキスタンに情報提供を行い、パキスタンの国際的な立場が厳しくなる可能性がある。

 ・パキスタンの信頼回復: パキスタンはテロリズムと戦う姿勢を示す必要があり、透明性のある対応が求められる。

【参考】

 ☞ 「クローカステロ事件」

 ・クローカステロ事件の概要: 昨春、ロシア当局は、クローカステロというテロ攻撃がISIS-K(イスラム国・ホラサン支部)とウクライナの軍事情報機関GUR(ウクライナ軍事情報局)の共謀によって実行されたとする立場を取っている。具体的な事件の詳細は記事に記載されていないが、ロシア側の発表によると、タジク系の人物が事件の首謀者とされている。

 ・ISIS-KとウクライナGURの関与: ロシア当局は、このテロ攻撃がISIS-Kの指導の下で行われ、ウクライナのGURがそれに関与していたと主張している。ウクライナのGURは、ウクライナの国家安全保障に関わる情報機関であり、ロシアとの対立が続く中で、ウクライナがロシアに対して反攻しているとされる状況の中で、こうした主張がなされていることは注目されている。

 ・タジク系人物の関与: 記事によると、クローカステロ事件の首謀者はタジク系の人物であり、ロシア政府はこの人物の引き渡しをアフガニスタンに求めたとされている。しかし、この人物はアフガニスタンから逃れてパキスタンに移動した可能性があり、その後の捜索が行われたと伝えられている。

 ・テロ攻撃の実行と背景: クローカステロ事件自体については、ロシア当局の発表に基づく情報が中心であり、実際のテロ攻撃の詳細や被害者数などは具体的に記載されていないが、ロシア当局は、ISIS-KとウクライナのGUR(軍事情報局)の共謀によってクローカステロ事件が実行されたと主張しており、この点が事件の重要な焦点となっている。

 この事件がロシアとウクライナの対立の中でどのように影響を与えているかは、地域的な政治やテロリズムの観点から重要である。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Evaluating The Report That A Key Crocus Plotter Might Have Been Detained In Pakistan Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.28
https://korybko.substack.com/p/evaluating-the-report-that-a-key?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=162314445&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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