中国人民解放軍(PLA)海軍の「タイプ22」ミサイルボート2025年04月28日 19:32

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【概要】

 中国人民解放軍(PLA)海軍の「タイプ22」ミサイルボートが、南シナ海における外国艦船の迎撃や権益保護などの多様な任務を遂行していることが、最近の公式メディアによって報じられた。このことは、約20年前に建造された「タイプ22」ミサイルボートが、独自の能力によって今もなお重要な役割を果たしていることを示している。

「タイプ22」ミサイルボートは、近年、沿岸警戒、護衛、追跡監視、さらには中国の海洋権益を守るための海上警備船との連携など、より多様な任務を担当していると、中国中央テレビ(CCTV)の軍事チャンネルは報じた。

 報道によれば、ある訓練任務中、「タイプ22」ミサイルボートは、人民解放軍東部戦区司令部の楊武艦長の指揮の下、外国艦船が中国の領海に侵入したとの突然の命令を受けて、未公開の海域で迎撃を行った。外国艦船の排水量は約8,000トンから9,000トンであるのに対し、「タイプ22」ミサイルボートの排水量はわずか200トン強である。しかし、この小型艦艇は、高い機動性、優れたステルス性能、強力な火力を活かし、即座に現場に到達し、自らの位置を支え、外国艦船への対応を行ったと、楊艦長は述べている。

 中国の軍事専門家であるWang Yunfei氏は、「タイプ22」ミサイルボートが約20年前に設計・建造された際、人民解放軍海軍は大型艦船が限られており、沿岸防衛任務が重視されていたと述べている。この船は、当時の任務を果たすために十分な能力を持っており、対艦ミサイルを搭載し、海上では時速約50ノットで航行できた。

 現在、人民解放軍海軍は沿岸防衛から遠洋防衛への移行を進め、大型艦船(空母や揚陸艦など)を配備したが、「タイプ22」ミサイルボートはその独自の能力により、依然として有用な役割を果たしている。Wang氏は、南シナ海の島嶼や礁の近くでは水深が浅いため、型22のような小型艦艇がより柔軟に航行でき、大型艦船が岩礁に触れるリスクを避けることができる点を挙げている。また、「タイプ22」ミサイルボートは、同サイズの他国艦船よりも速く移動できるとも述べている。

 「タイプ22」ミサイルボートは、人民解放軍海軍の創立76周年の記念行事において公開された30隻以上の艦船の中でも公開されていたと、新華社通信が報じている。

 以前のCCTVの報道によれば、「タイプ22」ミサイルボートは、人民解放軍海軍初のステルスボートであり、初のカタマラン型ミサイルボートであり、また水ジェット推進装置を搭載した初の主要戦闘艦船である。この水ジェット推進装置により、従来のプロペラ式に比べて速度と機動性が向上している。また、この艦艇が軽量であることも高速性の理由であり、アルミニウム合金を使用した構造がそれを実現している。

 「タイプ22」は、ジャミングフレア、6連装30mm機関砲システム、そして4連装ミサイル発射機2セットを搭載し、合計8発のYJ-83対艦ミサイルを発射可能である。これにより、「タイプ22」は、10倍以上の大きさのフリゲート艦に匹敵する対艦火力を持っていると、CCTVは報じている。

【詳細】
  
 「タイプ22」ミサイルボートは、中国人民解放軍(PLA)海軍の高速で機動性に優れた艦船であり、主に沿岸防衛任務を目的として設計された。この艦艇は約20年前に建造され、当時の中国海軍における大規模艦船の不足を補うために導入された。設計にあたっては、高い機動力、ステルス性、火力を強調し、限られた艦船で広範囲な防衛を実現することが求められた。

 「タイプ22」の設計と特徴

 「タイプ22」ミサイルボートは、特にその独特な設計が注目される。具体的には以下の特徴が挙げられる。

 カタマラン型(双胴船)設計

 このタイプの艦艇は、通常の単胴船(モノハル)ではなく、2つの船体を持つカタマラン型を採用している。これにより、より安定した航行と高速性が確保される。

 ステルス技術

 「タイプ22」は、一般的な艦艇に比べてステルス性能を高める設計が施されており、レーダーに捉えられにくい特徴を持つ。これにより、敵艦や航空機からの探知を避けることができ、特に近海での活動において有利となる。

 水ジェット推進システム

 通常のプロペラ式推進装置と異なり、 水ジェット推進システムを採用しており、これにより艦船の機動性が大きく向上する。水ジェット推進は高速度での航行を可能にし、浅い海域でも航行しやすく、また港や岩礁近くでも柔軟に動けるという利点を持つ。

 軽量で高速度

 「タイプ22」の構造はアルミニウム合金で作られており、これにより艦船自体の重量が軽減され、その結果、高速での航行が可能となる。最大速度は50ノット(約93 km/h)に達し、同サイズの他国艦艇に比べて優れた機動性を持つ。

 武装と戦闘能力

 「タイプ22」ミサイルボートは、艦船としては非常に強力な火力を持つ。主な武装には以下のものが含まれる。

 YJ-83対艦ミサイル

 8発のYJ-83対艦ミサイルが搭載されており、このミサイルは射程が150 km以上あり、精度が高いことで知られている。これにより、「タイプ22」は大型艦船や他国の艦船に対しても十分な攻撃力を発揮することができる。

 30mm機関砲システム

 6連装30mm機関砲を搭載しており、艦艇周辺の空中および水面の脅威に対応することができる。近距離での防空および水面下の目標に対しても有効な火力を提供する。

 ジャミングフレア

 自衛手段として、ジャミングフレアを装備しており、これにより敵のレーダーや誘導ミサイルからの攻撃をかわすことができる。

 任務と運用

 「タイプ22」は、特に沿岸部や浅海域での機動力が求められる任務に適している。南シナ海のような浅い水域で、島嶼や礁近くの航行が多い地域において、その機動性とステルス性を活かし、高速での迎撃や警戒、巡回を行うことが可能である。

 外国艦船の迎撃任務

 近年、人民解放軍は「タイプ22」を外国艦船の迎撃任務にも投入している。報告によれば、ある訓練では、外国艦船が中国の領海に侵入した際に「タイプ22」が迅速に対応し、迎撃を行った。このような迅速な対応は、「タイプ22」の機動力とステルス性能によるものであり、短時間で現場に到達できる点が強みとなっている。

 権益保護任務

 南シナ海での領有権を巡る争いにおいて、「タイプ22」は中国の海洋権益を守るための巡回や監視任務を行っており、沿岸警備船との連携を通じて、他国の船舶の不法な進入を防ぐ役割を果たしている。

 艦艇と護衛任務

 「タイプ22」は、船団護衛や他の軍艦との協同作戦にも使用されている。これにより、中国の海上安全保障を強化するための一環として、重要な役割を担っている。

 将来的な役割

 「タイプ22」は、建造から約20年が経過しているものの、依然としてその独自の特徴によって有用な役割を果たしている。現在、人民解放軍海軍はより大規模な艦船(空母や揚陸艦など)を導入しているが、「タイプ22」のような高速で機動的な艦艇は、依然として重要な存在であり、特に近海や狭い海域での運用においてその価値を発揮している。

 さらに、今後も技術的な改良や改装が行われる可能性があり、長期的に中国海軍の任務に貢献し続けるだろう。

【要点】 

 1.タイプ22ミサイルボートの特徴

 ・カタマラン型設計: 双胴船(カタマラン)で、安定性と高速性を確保。

 ・ステルス技術: レーダーに捉えられにくい設計で、特に近海で有利。

 ・水ジェット推進システム: 高速で機動性が高く、浅海でも運用可能。

 ・軽量な構造: アルミニウム合金を使用し、軽量化されており、最大速度は50ノット(約93 km/h)。

 2.武装と戦闘能力

 ・YJ-83対艦ミサイル: 最大8発搭載、射程150 km以上、精度高い。

 ・30mm機関砲システム: 6連装30mm砲で、近距離防空や水面下の目標に対応。

 ・ジャミングフレア: レーダーや誘導ミサイルからの攻撃をかわす。

 3.任務と運用

 ・外国艦船の迎撃: 領海侵入した外国艦船を迅速に迎撃。

 ・権益保護任務: 沿岸警備船と協力し、中国の海洋権益を守る。

 ・護衛任務: 船団護衛や他の艦艇との協同作戦を実施。

 4.将来の役割

 ・機動性とステルス性により、依然として重要な任務を果たす。

 ・大型艦船の補完として、特に近海や浅海での運用において価値が高い。

【参考】

 ☞ 6連装30mm機関砲

 6連装30mm機関砲の威力については、主に以下の点が挙げられます:

 ・発射速度: 1分間に最大2000〜3000発の弾を発射できるため、高い射撃速度を誇る。これにより、近距離での対空、対艦、対兵器の攻撃に有効である。

 ・弾薬種類: 通常、30mm機関砲は対空用や対地用、対水上艦艇用などさまざまな弾薬を使用できる。弾薬によって威力は異なるが、主に高爆発弾(HE)や徹甲弾(AP)などが使用され、特に対小型目標に対して効果的である。

 ・射程: 30mm機関砲の最大射程は約2,000〜3,000メートル程度。精密な射撃が可能であり、特に低空飛行の航空機や高速で移動する小型艦艇、ドローンなどを効果的に攻撃できる。

 ・貫通力: 徹甲弾を使用した場合、相手の装甲や防御を貫通する能力があり、特に小型艦船や未装甲の目標に対して有効。対空では航空機の構造に対しても一定の貫通力を発揮する。

 ・反応速度: 高速で連射できるため、特に近距離での攻撃において有利であり、迅速に目標に対処する能力が高い。

 まとめると、6連装30mm機関砲は、高速で連射できるため、近距離での小型目標や空中目標に対して非常に効果的な武器であり、威力や貫通力も小型艦船や航空機に対して十分な影響を与えることができる。

 ☞ 4連装ミサイル発射機は、その迅速な発射能力、複数ターゲットへの対応力、柔軟性が特徴であり、艦艇やその他の軍事施設において重要な役割を果たしている。戦術的に非常に効果的であり、特に近海での防衛任務や攻撃任務において強力な武器となる。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

PLA Navy’s Type 22 missile boat joins foreign warship interception, rights protection missions in South China Sea: report GT 2025.04.28
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1333046.shtml

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