米国:南アフリカ共和国が主催する今後のG20関連行事に参加しない方針を正式に確認2025年05月21日 21:03

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【概要】

 アメリカ合衆国は、南アフリカ共和国が主催する今後のG20関連行事に参加しない方針を正式に確認した。これは2025年5月20日、アメリカ国務長官マルコ・ルビオが上院外交委員会で証言した際に明らかにされたものである。

 この決定は、先週メディアによって初めて報道されており、両国間の緊張の高まりを背景としている。アメリカのトランプ政権は、南アフリカ政府が「人種差別的な動機によるジェノサイド」を助長していると非難しているが、これに対し南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は「完全に虚偽の物語」であると一蹴している。

 ルビオ国務長官は、ボイコットの理由として、当該イベントの議題が現政権の優先事項を反映していない点を挙げた。また、南アフリカがイランや中国といったアメリカが戦略的なライバルと見なす国々と広範に歩調を合わせていることも問題視している。

 国務長官は、「ある国があらゆる課題において一貫してアメリカと足並みを揃えないのであれば、その国について一定の結論を下す必要がある」と述べた。

 さらに、ルビオ氏は南アフリカのイスラエルに対する姿勢を批判し、それが「バランスを欠いているだけでなく、完全に一方的である」との認識を示した。

 2023年、南アフリカは国際司法裁判所(ICJ)に対し、ガザ地区における軍事行動をめぐってイスラエルをジェノサイドの罪で提訴した。これに対しICJは2024年1月にイスラエルへの差し止め命令を出したが、イスラエル政府はこれを無視している。

 この対立は、2023年10月にパレスチナ武装組織ハマスが主導した攻撃により始まり、その後、広範な地域的危機へと発展している。イスラエル側は、現在再開された軍事作戦について「ガザ征服」を目的とするものであると主張している。

 なお、ルビオ国務長官がこれらの発言を行った同日、ラマポーザ大統領は二国間関係の「再構築と活性化」を目指してワシントンを訪れており、大統領府の声明によれば、翌日にトランプ大統領と会談し、南アフリカ政府が提案する貿易協定について協議する予定である。

【詳細】 

 2025年5月20日、アメリカ合衆国のマルコ・ルビオ国務長官は、上院外交委員会の公聴会において、南アフリカ共和国が議長国を務めるG20関連行事へのアメリカの不参加を正式に表明した。この決定は、同年のG20の一連のイベントに対するボイコットを意味するものであり、両国の外交関係における深刻な軋轢の現れである。

 不参加の理由

 ルビオ国務長官は、ボイコットの主な理由として以下の点を挙げた:

 1.議題の不一致
 
 南アフリカが議長国として設定したG20の議題が、アメリカ・トランプ政権の政策目標および優先事項を反映しておらず、現政権にとって政治的に受け入れがたいものであると判断された。

 2.外交的立場の乖離
 
 南アフリカが外交政策において一貫してアメリカと立場を異にしていることが指摘された。ルビオ長官は、「一つの国があらゆる問題においてアメリカと立場を共にしないのであれば、その関係性について何らかの結論に至る必要がある」と述べ、同国との戦略的距離を取ることの妥当性を主張した。

 3.敵対的国家との連携
 
 南アフリカが、アメリカが「戦略的競争国」と位置付けるイランおよび中国と密接に協調している点も問題視された。これは、アメリカの外交・安全保障上の利益と明確に対立する行動である。

 4.イスラエル問題における偏向
 
 ルビオ長官はまた、南アフリカの対イスラエル姿勢についても批判した。同国はパレスチナ寄りの立場を一貫して取り、イスラエル政府に対して強い非難を行っている。長官はこれを「バランスを欠いたものではなく、完全に一方に偏っている」と表現した。

 南アフリカとイスラエルをめぐる国際法上の対立

 2023年、南アフリカ政府は国際司法裁判所(ICJ)に対し、イスラエルがガザ地区で行っている軍事行動が「ジェノサイド(集団虐殺)」に該当するとして訴えを提起した。これを受け、ICJは2024年1月にイスラエルに対して軍事行動の即時停止を求める仮保全措置を命じたが、イスラエル政府はこの命令を無視しており、戦闘を継続している。

 この背景には、2023年10月に発生したパレスチナ武装組織ハマスによるイスラエル領内への越境攻撃があり、これに対する報復としてイスラエル軍が大規模な軍事作戦を開始した。イスラエル政府はこの作戦を「ガザ征服」と位置付けており、紛争はガザ地区を超えて周辺地域にも波及しつつある。

 ラマポーザ大統領の訪米と米国の対応

 アメリカによるG20不参加表明と同時期に、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領はワシントンD.C.を訪問している。同大統領の訪米は、米南アフリカ間の関係を「再構築および活性化」することを目的としたものであり、トランプ大統領との首脳会談が予定されている。この会談では、南アフリカ側が提示する新たな貿易提案に関する議論が行われる見通しである。

 しかしながら、アメリカがG20のボイコットを明言したことで、この訪問は外交的には厳しい状況下での交渉となることが予想される。両国間の信頼関係が揺らぐ中でのトップ会談が、実質的な成果をもたらすか否かは不透明である。

【要点】
 
概要

 ・発表日:2025年5月20日

 ・発表者:マルコ・ルビオ米国務長官

 ・発表場所:米上院外交委員会での証言にて

 ・内容:アメリカは南アフリカが議長国を務めるG20関連行事に参加しない方針を確認

 ボイコットの理由

 1.議題の不一致

 ・南アフリカが設定したG20の議題が、トランプ政権の外交・経済方針と合致しない

 2.外交政策の乖離

 ・南アフリカは一貫してアメリカと異なる立場を取っており、国務長官は「問題ごとに対立している」と表現

 3.中国・イランとの連携

 ・南アフリカが、アメリカが「戦略的競争相手」と位置づける中国・イランと緊密に協力している点を問題視

 4.イスラエル問題に関する偏向姿勢

 ・南アフリカの中東政策が「完全に一方的」であり、イスラエルに対する批判が過度であると指摘

 南アフリカの対イスラエル姿勢

 ・ICJ提訴:2023年、南アフリカは国際司法裁判所にて、イスラエルのガザ攻撃を「ジェノサイド」として提訴

 ・仮保全命令:2024年1月、ICJはイスラエルに軍事行動の差し止め命令を出すも、イスラエルはこれを無視

 ・背景

  ➢2023年10月にハマスがイスラエルに越境攻撃を実施

  ➢イスラエルは「ガザ征服」を目的とする軍事作戦を再開

  ➢紛争は地域全体に拡大中

 ラマポーザ大統領の訪米

 ・目的:米南アフリカ間の関係修復と貿易協議

 ・予定:2025年5月21日にトランプ大統領と首脳会談予定

 ・アメリカ側の姿勢:G20不参加決定により、ラマポーザ大統領の訪問は困難な外交環境下での実施となる

 総合評価

 ・このボイコットは、単なるイベント不参加にとどまらず、南アフリカに対するアメリカの外交方針における構造的な変化を示唆するものである。

 ・今後の米・南アフリカ関係、およびG20の国際的機能にも影響を及ぼす可能性がある。

💚【桃源寸評】

 アメリカによるG20ボイコットは一時的な対応にとどまらず、南アフリカに対する根本的な外交姿勢の変化を示唆しており、国際秩序における新たな分断の兆候とも解釈され得る。

 しかし、アメリカが「自国の政策目標に合致しないから」という理由でG20の議題を拒絶し、主催国である南アフリカを明確に批判する姿勢は、国際協調の枠組みであるG20の本来の理念―多国間対話・合意形成―と矛盾する印象を与える。以下に論点を整理する。

 傲慢と受け取られかねない米国の態度

 ・G20は合議制の国際フォーラム
 
 G20は多様な経済的・政治的背景を持つ主要国が集まり、意見の相違を前提として議論を行う場である。個々の国が自国の優先事項を他国に押しつけるのではなく、相互理解と妥協によって政策調整を行うことが求められる。

 ・「反映していないから不参加」は一方的な主張

 南アフリカが提示する議題がアメリカの政策に合致しないという理由だけで参加を拒む姿勢は、他国の主権や国際的多様性を軽視していると受け取られる可能性がある。特に、南半球諸国や「グローバル・サウス」の立場から見れば、G20の平等性を損なう振る舞いと映る。

 ・国際秩序の多極化を逆手に取る行為にも見える

 アメリカがG20を「従わせる場」と見なしているかのような態度は、むしろ他の新興国や非西側諸国の結束を促進する結果となり得る。これは長期的にはアメリカの国際的影響力をかえって損なう可能性がある。

 アメリカはG20から離脱すべきか?

 ・もし自国中心の姿勢を変えられないなら、離脱は一つの論理的帰結
 
 G20は一国の価値観や利益を優先させるための場ではない。もしアメリカが多国間協調よりも一方的な外交方針を貫くならば、G20に残るよりも離脱して別の枠組み(例:二国間交渉、経済ブロック)に注力する方が整合性はある。

 ・ただし離脱には代償もある

 G20を離れれば、アメリカは世界経済に対する政策影響力を部分的に手放すことになり、新興経済国や対抗勢力に議論の主導権を与える恐れもある。多国間フォーラムに背を向けることが、アメリカの「覇権的リーダーシップ」に矛盾することにもなる。

 この項まとめ

 アメリカの今回のG20ボイコットは、「自国の視点が国際標準である」とする前提に基づくものであり、国際的には傲慢と見なされる危険性がある。もしこのような態度を今後も続けるのであれば、G20という枠組みにおける建設的な役割は果たせず、むしろ米国の不在によって、他の国々がより対等に議論を行う空間が生まれる可能性もある。―「むしろ抜けた方が好い」―は、国際協調と主権尊重を重視する立場から見れば、筋の通った批判であろう。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

US confirms South Africa G20 boycott RT 2025.05.21
https://www.rt.com/news/617950-rubio-g20-south-africa/

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