孤立主義と聚團主義の對立2023年04月01日 21:37

応挙名画譜
 『米國外交上の諸主義』 法學博士 立作太郎 著

 (一四-二〇頁)
 第七節 孤立主義と聚團主義の對立

 滿洲事變の際、米國に於て昭和七年(千九百三十二年)國務次官カッスルは、フーヴァー主義(卽ちスティムソン主養義)を以て不戰條約に歯を付するものと稱したが、同樣の考を以て巳に昭和二年(千九百二十七年)一月及五月に於て、所謂侵略國に對する制裁として、侵略國に向つて輸送される兵器彈藥の輸出を禁ぜんとするカレル決議案及カワ・ハー決議案が及カッパー決議案提出された。是等の提案は議會に於て採られなかつたが、是れ不戰條約又は國際聯盟に關係する聚團主義的思想に基くものであつて、孤立主義、又は離隔主義に滿足せず、中立の公平不偏の義務より離れんとするの思想の傾向が米國の或方面に於て存することを示すものである(註三)。

註三 等しく兵器輸出の禁止に關する干九百二十九年二月のボーター決議案及同年 四月のフィッシャー決議案の如きは、一切の交戰國に向けて輸出するを禁ぜんとするのであつて、中立の基本觀念に背くこと無く、又離隔主義の思想と相容れぬもではなかつた。又干九百二十八年のバートン決議案及千九百三十二年フィッシュ決議案に至つても、戰時禁制品に關し國際協定が成らぬとせば、中立國が其國内法に依り兵器及軍用器材の輸出を禁止し、之に代へて、非戰時禁品及條件付禁制品の拿捕免除を要求 せんとし、中立に關する妥協的折衷的解決を求めんとするものであるから、中立の基本觀念に背くこと無く、離隔主義の思想と相容れぬことはなかつたのである。以上の兵器輸出禁止に關する提案は何れも法として成立するに至らなかつたのである。

 フーヴァー大統領の時、千九百三十二年一月十九日一旦米國上院を通過した決議案は、大統領の選擇に依り一方的に所調侵略國に仕向けらるる兵器の輸出のみを禁止することも爲し得ることとしたのであるが、是れ侵略國に對して強制を加へ、國際的協力に依りて戰爭の發生を防止せんとする聚團的制度の思想に基いたものであつて、離隔主義思想と相容れぬものである。之を實行するの結果は、國際法上の中立の公平不偏の蓑務に背く場合を生じ得べく、從つて國際法上の中立の制度を無視する場合を生じ得べきである。此の決議案に關して、其の米國の中立義務違反の場合を生ずるの可能性を有すること及大統領に對して米國を戰爭に引人れるの結果を生じ得る措置を爲すの權限を認め、議會の宣戰の權限を侵食するに至るべきことにつき非難が加へられ、千九百三十四年二月二十八日上院に於て、大統領の權限に制限全加へ、兵器倫出の禁止は總ての紛爭當事國に公平に適用さるべきものとするの條件を付して再び通過することとなり、大統領は紛爭國の一方のみに向けて兵器愉出祭止を行ふことを得ざるに至つた。是れ當時米國上院に於て離隔主義的思想が猶存して、聚團的制度の觀念が猶弱きことを示すものと言ひ得る。當時米國政府は是の如き條件の付せられなる案に同意するを欲せざるため、該案は上院の決議の後其僅に放置され、該当議案につき何等の措置も執られなかつた(註四)。

註四 現在のルーズヴェルト大統領の下の政府の國務長官コルデル・ハルが上院の修正を經た此案に反對するの理由として述べた所は、(1)修正が米國の國際聯盟との協力及不戰條約の違反者に對する聚團的制裁の觀念に適せざること及び(2)米國が中立權を 抛棄するに代へて、英國及佛國より海軍軍備制限に關係ある約束を得んとするノルマン・デヴィスの計畫と齟齬することの二に在つた樣である(クレクラフ卜海洋自由論ー九三五年版六六頁參照)

 伊太利、エスィオピア間の紛爭の發生に促されて千九百三十五年(昭十年)八月二 十一日急遽上院を通過し、同月二十三日下院が修正を施して採擇し、同月三十一日大統領の認可を經た所謂米國中立法(即共同決議)は、戰爭回避を主要なる目的とするのであつて、海上の中立權を強く主張する在來の傳統的の態度を棄てたのであるが、未だ國際協力の聚團的制度の觀念を認めるに至らないものである。兵器彈藥の輸出に關して、大統領の裁量の自由を認めること極めて狭く、戰爭の起る場合に於ては、雙方の交戰國に宛つべき兵器彈弾藥の輸出を一樣に禁ずべきこととなしたのであつて、平和維持に關する國際協力の聚團的制度の觀念に基き、又は英國との協議を計るの精神に基いて、所謂侵略國に對してのみ兵器彈藥の輸出を禁止する如きことは、行ひ得ざることとなつた。上述の中立法は、兵器彈藥輸出禁止の手段に依り、絶對的禁制品に  關する中立權關係の問題が米國と交戰國との間に起ることを阻止せんとし、其他の點に於ても、米國人、米國在留の外國人及米國船舶に對して制限を加へて、實践上國際法上の中立權に關する譲歩を爲し、又は中立義務の履行に關する紛議の原因を去り(註五)、中立問題に依り米國が他國間の戰爭に引入れらるることを防がんとし、主として中立權の勵行を避くることに依り戰爭を回避することを趣意としたのであるが、是れ米國上院に於て聚團的制度の觀念が猶弱く、離隔主義思想の猶衰へざることを示すものである。米國大統領側に於ては、兵器輸出禁止につき大統領の裁量の自由が充分に認められざることを遺憾としたのであるが、終に妥協的解決の結果として兵器彈藥の輸出禁止に關する規定に限り、千九百三十六年(昭和十一年)二月末日迄を有効期間と定めることとして、大統領が中立法に認可を與へることとなつたのである。是の最初の中立法は、兵器彈藥及軍用器其の輸出禁止を定めたのであるが、大統領に選択の自由を與ふる範圍を狭くし、又一切の紛爭關係國に公平に之を適用することとして、伊太利、エスィオピア間の事件に適用したのである。

註五 兵器彈藥及軍用器具輸出禁止と同樣に中立權の實践につきての譲歩を組成すると認めべき所の上述の中立法中の他の規定の例を擧ぐれば、米國人が交戰國の船舶に搭乘して公壽海を航行することは自己の危險を以て行ふものなることを宣言し、之に關して外交上の保護を與へざることを定めたるが如き是である(此規定は千九百三十七年即ち昭和十二年五月の中立法に於ては、單純なる禁止の規定となつた)。又中立義務の履行につきての紛議の原因を去らんと試むることに關係ある規定の例を擧げれば、海洋に於て行動する交戰國軍艦に人又は物件の補充又は補給を爲すの目的を有して米國港を出で、米國港を交戰國の海軍作戰の基地と爲すの嫌疑ある米國船舶又は外國船舶をして出港の際保證を提出せしむることに關する規定の如き是である。

 千九百三十七年(昭和十二年)五月一日米國大統領の認可を受けて法律の效力を具へるに至つた中立法も、千九百三十五年の中立法と同樣に、離隔主義の思想に基き、戰爭回避に依る(廣義の)自己保存を主たる目的と爲品物であつて、此中立法は、(1)兵器彈藥及軍用器具の交戰國への輸出禁止、(2)兵器彈藥及軍用器具以外の物件及材料の交戰國への輸出の制限としての俗に所謂金輸出及自國船輸送主義〔(cash and carry plan)であつて、船舶に積込む上は、米國人が貨物に關して全く利害關係を有せざるに至り(「キャッシュ・ブラン」)且米國船に依らざる自前輸送を爲すこと(「キャリー・プラン」)の制限を設けたのである〕、(3)交戰國に對する金融上の取引の禁止、(4)米國の船舶及航空機に對する交戰國への兵器倫送の禁止、(5)海上に於て軍事的行動を行ふ軍艦の爲の供給根據地として米國港を使用することの禁止規定の補則としての(疑はしき場合に於ける)保證提出に對する規定、(6)交戰國の潜水艦船及武装商船に依る米 國の港及領水の使用の制限、(7)米國人の交戰國船舶に依る旅行の制限、(8)交戰國との通商に從事する米國商船の武装の禁止等に關する規定を設けたのである。

 千九百三十九年(昭和十四年)十一月四日の最新中立法の主要點は、干九百三十七年の中立法中の兵器彈藥及軍用器具の輸出禁止制度を撤廢するに在つた。此點の改正の動機は、英國及佛國の援助の爲にすることに在つたが、中立法其ものの目的は、前の中立法と同樣に、聚團的制度を進捗することに關係無く、依然戰爭回避を主たる目的と爲すと言ひ得たのである(註六)。最新中立法は米國船に對して直接にも間接にも(兵器彈藥及軍用器具をも含めた)一切の物件を交戰國に輸送することを禁止し、又米國船に對して交戰國に旅客を倫送することをも禁止した。其の物件の輸送に關する點に於ては、貨物の「キャリー・プラン」に關するのであつて、前中立法が大統領の特に指定して輸送を禁ずる物件だけに付て米國船を以てする交戰國への輪送を禁止して居つたのを改めて、禁止の範圍を擴張して一切の物件の輸送に及ぼしたのである。又「キャッシュ・プラン」も認められて、交戰國に向つて直接又は間接に送られる亞米利加の貨物は、船に積まれるや否や最早米國人が之に關して何等の利害關係をも有せぬことに至ることを求め、「キャッシュ・プラン」及び「キャリー・プラン」の並び行はるるときは、米國産の貨物につき戰時禁制品の問題が生ずることありとも、米國船及米國人は之が渦中に立たざるを得ることとなり、米國は戰爭を回避するを得べきものと爲されたのである。中立法が米國の戰爭回避を目的とする間は、假令交戰國の一方の利益を計ることを動機として改正が行はれたとするも、法の表見的の目的より言へぱ、離隔主義的思想に矛盾することなきものと言ひ得る。

註六 米國最新中立法の前文に於て、「合衆國は外國間の戰爭中其の中立を保持し、且つ戰爭の渦中に捲き込まるることを避くるため、自發的に國内法に依り本共同決議 (即ち最新中立法)に定むる制限を自國民に課するものなるが故に」と記せるを觀ても、最新中立法の表見の目的が聚團的制度進捗を含まずして、離隔主義に反すること無きを知り得るのである。

引用・参照・底本

『米國外交上の諸主義』立作太郎 著 昭和十七年七月五日第一冊發行 日本評論社

(国立国会図書館デジタルコレクション)

売国棄民予算2023年04月02日 11:38

応挙名画譜
 (註:下記国会から山本太郎参議院議員の発言関連を抜粋したものです。)

 第211回国会 参議院 予算委員会 第3号 令和5年3月2日

○委員長(末松信介君) 次に、山本太郎君の質疑を行います。山本太郎君。

○山本太郎君 れいわ新選組代表、山本太郎です。
 総理にお聞きいたします。
 外国人、外国企業、外国政府などから寄附、献金など資金援助を総理御自身受けたことありますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 献金を受けた記憶は全くありません。

○山本太郎君 総務省、今私が言ったような寄附など資金援助というのは合法ですか。理由を教えてください。

○政府参考人(森源二君) お答えを申し上げます。
 外国人等からの政治活動に関する寄附の関係でございますが、政治資金規正法第二十二条の五第一項においては、何人も、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人である一定の団体その他の組織から、政治活動に関する寄附を受けてはならないとされております。
 これは、我が国の政治や選挙が、外国人や外国の組織、外国の政府など外国の勢力によって影響を受けることを未然に防止しようという趣旨で設けられたもの、こういうことだと承知をしております。

○山本太郎君 総理、政治家の意思決定、それが特定の外国勢力から影響があってはならないと、そう思われます。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国政治におけるこの意思決定、これは当然のことながら外国の一定の勢力から影響を受けることがあってはならない、自らの運営は自らが決めなければならない、当然のことであると思います。

○山本太郎君 総理御自身はそのような献金は受けたことがないと。
 では、党としてどうですか。自民党としてどうでしょうか。御存じですか。

○委員長(末松信介君) どなたか。党としてというのを答弁できる方は。
 じゃ、岸田内閣総理大臣。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今手元に何もありませんが、そういった献金は党としても受けることはないと考えます。

○山本太郎君 ありがとうございます。
 資料の七、一九九四年十月、ニューヨーク・タイムズ記事。(資料提示)一九五八年までCIAの極東工作を担当、アルフレッド・ウルマー氏、自民党に対して我々は資金援助をした、CIAは自民党の最初期から同党を支援、内部から情報提供者をリクルートするために資金を使った。ケネディ政権で国務省情報局長ロジャー・ヒルマン氏、一九六〇年代初頭までには自民党とその政治家への資金援助は確立され、ルーティーン化しており、極めて秘密裏にではあったが、米国の対日外交政策の基本的要素の一つとなっていたと証言。
 自民党、火消しに走るんですね。
 資料の八、九四年十一月、産経新聞。当時の自民党総裁、アメリカ大使と極秘会談、資金援助について大使館に照会があった場合はインテリジェンスに関するものでありコメントできないという線で回答してほしいとアメリカ側のメディア対応に注文を付ける。自民党の森幹事長が既に資金援助の事実関係を否定するコメントを発表していたので、アメリカ側にもこの点を踏まえて対応してくださいとお願いしたと。ごまかしても無理だよ、公文書残っているもんということなんですね。
 資料の九A、九B、一九五八年七月、アメリカ大使館一等書記官と佐藤栄作財務大臣の会談。もし合衆国がこの要請に同意すれば、この件は極秘扱いとされ、合衆国には何の迷惑も掛けないよう処理されるとのことであった。佐藤氏は、この資金工作の窓口として川島正次郎幹事長の名前を挙げた。外国勢力に金を無心、金をせびり続けてきたのが歴代自民党。
 ニューヨーク・タイムズの騒ぎから十年たった後、資料の九C、九D、二〇〇六年七月、アメリカ国務省歴史部の資料。五八年五月、衆院選挙前に、CIAが秘密資金援助や選挙アドバイスを与えることを許可。支援を受けた候補者には、アメリカの企業家から援助を受けていると伝えられた。この支援計画、その後の六〇年代の選挙運動中も続けられたと。
 資料の十、統一教会とずぶずぶ、それが自民党ですけれども、その立て役者、アメリカから絶大な信頼、岸信介。
 資料の十一A、十一B、一九五七年十月、アメリカ大使から国務省への電報。最も重要なアンダーライン部分をお読みします。来年初頭にも選挙が行われる可能性、岸を支援し、岸が今後も成果を上げられるようにすることはまさに合衆国の利益にかなうこと、我々は、過去二回の選挙でアデナウアー氏に対して行ったよう、岸を強めるためにでき得ることを検討すべき。二つの赤字、特に重要です。
 まずは、下、アデナウアーに対して行ったことって。アデナウアーとは、旧西ドイツ初代の連邦首相。既に米英公文書から判明していることですが、五〇年代、CIAは、アデナウアー率いる政党に大量の資金援助を行い、ほかにも、彼の団体の宣伝活動費としてCIAが四百万ドルを間接的に融通。アデナウアー自身、CIAなどのスパイ組織を利用し、ライバル政党の情報を入手。アメリカとの関係はウイン・ウイン。アデナウアーにあったように岸を強化すべし、つまりは岸という忠犬を見付けたよという話。そして、もう一つ、岸への支援がアメリカの利益にかなうと。アメリカの利益って何ですか。
 資料の十二、過去の公文書を見ると、世界戦争では日本の軍事力がアメリカの勝利に必要だそうです。アメリカは、自国の覇権、帝国の拡大のためには手段選ばない。
 資料の十三、特に石油取引、ドル以外で行おうとした国は虎の尾を踏む。例えば、ユーロで石油取引を開始したイラクのフセイン大統領。大量破壊兵器がある、そう断定されて、世界の反対を無視したアメリカが攻撃。イラクは破壊されまくった挙げ句、大量破壊兵器見付からず。トマホークという声も上がりました、そのとおり。そこから生まれたのは復讐を誓うISという集団。アフリカ統一通貨で石油取引を提案したリビア・カダフィ大佐。弾圧される市民を保護する人道的介入と、大義名分にアメリカが軍事攻撃を開始。カダフィをその後、裁判なしで殺害。リビアは東西勢力に分裂、内戦に突入。
 資料の十四、アメリカ国務省の元外交官、ジャーナリスト、ウィリアム・ブルム氏。第二次大戦以降、アメリカは、五十か国以上の外国政府の転覆、五十人以上の国家指導者の暗殺を試み、三十か国以上で人々の頭上に爆弾を投下したという。
 総理、日本は今でもアメリカの植民地だと思われますか。いかがでしょう。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 日本は間違いなく独立国であります。

○山本太郎君 そうですよね。
 じゃ、アメリカが間違った方向に行った際には、これ行動別にすることできますよね。約束できます、いかがでしょう。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 当然のことながら、日本は日本の国益を考え、憲法や国内法、国際法、こうしたこのルール、法の支配に基づいて外交、安全保障について考えていく、これが当然の方策であると考えます。

○山本太郎君 じゃ、国益だと判断したら、間違った戦争でもアメリカと一緒にやるというふうにも捉えられますけどね。
 イラク戦争はどうだと思われます、じゃ。イラク戦争は間違いでしたか、正しい戦争でしたか。教えてください、総理。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国として、イラク戦争の評価をする立場にはないと考えています。我が国として、自らの国益を守る、もちろん大事でありますが、それと併せて、先ほど申し上げました法の支配、憲法や国際法や国内法、こうしたものをしっかりと守る中で国民の命や暮らしを守っていく、これが日本政府の基本的な考え方であります。

○山本太郎君 何言ってるんですか。イギリス始め、イラク戦争間違いだったということを反省していますよ。日本だけですよ。何言ってるんですか、全然反省できてないじゃないですか。
 防衛省、有事には米軍の指揮下に自衛隊が入るんですか。そして、そういった話合いはこれまでされてきましたか。

○政府参考人(増田和夫君) お答え申し上げます。
 自衛隊による全ての活動は、米軍との共同対処を含め、我が国の主体的な判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われるものでありまして、自衛隊及び米軍は、各々独立した指揮系統に従って行動いたします。したがって、有事におきましても、自衛隊が米軍の指揮下に入ることはございません。
 二〇一五年に策定いたしました日米ガイドラインにおきましても、自衛隊及び米軍の活動について、各々の指揮系統を通じて行動すること、また、各々の憲法及びその時々において適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われることが明記されているところでございます。

○山本太郎君 表向きはね。
 資料の十五、外務省編さん、日本外交文書とは。

○政府参考人(志水史雄君) お答え申し上げます。
 日本外交文書とは、明治維新以降の我が国外交の経緯を明らかにし、あわせて、外交交渉の先例ともなり得る基本的史料を外務省において編さんしたもので、昭和十一年以降公刊してきており、現在までの通算刊行冊数は二百二十六冊となっております。

○山本太郎君 外務省、資料の十六、読んでください。

○委員長(末松信介君) 資料の十六。

○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 御指摘の文書の正式な和訳は存在いたしませんけれども、御指摘の箇所の和文仮訳をお示しするとすれば、次のとおりとなります。
 日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じたと合衆国政府が判断した場合には、警察予備隊及びその他全ての日本国の武装した組織は、合衆国政府が日本国政府と協議した後に指定する最高司令官の統一の指揮の下に置かれるものとするでございます。

○山本太郎君 全ての日本の組織を米軍任命の最高司令官の指揮下の下、指揮権の下に置くという規定、これ世論が黙ってませんね。
 外務省、資料十七、十七B、アンダーライン部分読んでください。

○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 御指摘の文書には、シーボルト駐日米国大使と井口外務次官のやり取りとして、以下のように記録されております。
 井口次官から、内容に異存あるのではない。あの規定が公表されると民心に動揺を来すおそれがあるから原則的の規定にしておきたいだけの話であると答えた。続けてシーボルト大使は、行政取決めは米側でも全部公表する意思はない。必要な部分だけ公表する。問題の章は、もちろん公表すべき部分ではないと説明したとございます。

○山本太郎君 米軍の指揮下に置く規定を表向きは削除する。その裏では、米軍の指揮下に置くということにした。
 そのでき上がりが資料の十八。外務省、お願いします。読んでください。

○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 日米行政協定第二十四条の規定でございますが、次のとおりでございます。
 日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のために必要な共同措置をとり、かつ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならないとございます。

○山本太郎君 こうなっているけれど、大丈夫。密約は生きております。
 資料十九A、十九B、一九五四年二月八日、アリソン大使と吉田茂首相の会談報告。有事の際に日本における軍事力を使用し、最高司令官は米国の大将、ジェネラルとなることについて日本政府の意図を再確認した。吉田氏は、現時点ではこのことは機密扱いとするが、この点について確約することにちゅうちょはないと説明。この会談後、半年もたたず自衛隊創設。協議するという建前だけで自衛隊を米国の支配下に置く仕組み、岸信介が新安保へと引き継ぎます。
 外務省、最後です。資料の二十、読んでください。

○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 御指摘の新安保条約、すなわち日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の第四条には次のとおりございます。
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。
 以上でございます。

○山本太郎君 協議する、その内容には統一指揮権の運用も含まれ、地位協定では一九六〇年設立、日米合同委員会で行う。
 外務省、日米合同委員会って何ですか。

○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 日米合同委員会は、日米地位協定の実施に関して日米相互間の協議を必要とする全ての事項に関して協議を行うための両政府間の機関として、日米地位協定第二十五条に基づいて設置されたものでございます。米側は在日米軍副司令官が代表を務め、外務省北米局の局長が日本側の代表を務めております。
 開催頻度に関しましては、日米双方の都合や議題の内容等を踏まえてその都度調整を行っておりますので、一概には申し上げられませんが、おおむね月に一回又は二回程度会合を行っております。

○山本太郎君 日米合同委員会の議事録、公開されていますか。二一年度、二二年度で公開された議事録あるか、教えてください。

○政府参考人(宮本新吾君) お答え申し上げます。
 日米合同委員会の議事録は、公文書管理法の適用を受け、法令に従い適切に保存されております。情報公開請求があった場合には法令に従い適切に対応することとなります。
 その上で、日米合同委員会の合意事項や議事録は日米双方の同意がなければ公表されないこととなっております。これは日米間の忌憚なき意見交換や協議を確保するためでございまして、日米双方の同意がないまま公表すると情報公開法が規定する他国との信頼関係が損なわれるおそれ、又は他国との交渉上の不利益を被るおそれがある場合があるためでございます。

○山本太郎君 二一年度、二二年度、公開されたか、されていないかって答えてくれましたっけ。ごめん、聞き漏らしたかも。

○委員長(末松信介君) 再度御答弁ください。

○政府参考人(宮本新吾君) 申し訳ございません。答弁漏れがございました。
 日米合同委員会の議事録は日米双方の同意がなければ公表されないことに先ほど申し上げたとおりなっておりますが、御指摘の期間中に公表されたものはございません。(発言する者あり)

○委員長(末松信介君) 答弁中。

○政府参考人(宮本新吾君) 繰り返しになりますが、これは日米間の忌憚のない意見交換などを確保するためでございます。

○山本太郎君 ブラックボックスなんですよ。合同委員会で宗主国様お望みの日米軍事一体化も可能となる枠づくりを進めてきたのが日本政府。二〇一五年には、第三次ガイドラインで、米軍の指揮の下、その地理的範囲はアジア太平洋地域を超えた地域にまで拡大できるようになっちゃった。
 資料二十一のA、昨年の日経新聞。防衛省、この記事におけるトマホーク、運用上の間違いってあるんですか。

○政府参考人(増田和夫君) お答え申し上げます。
 個々の報道の内容に関しまして政府としてコメントすることは差し控えます。
 その上で、昨年末に策定いたしました国家防衛戦略におきましては、反撃能力に関しまして、弾道ミサイル等の対処と同様に日米が協力して対処していくこととするほか、情報を含め、日米共同でその能力をより効果的に発揮する協力態勢を構築することとしております。
 それ以上の詳細につきましては、事柄の性格上、お答えを差し控えたいと思います。

○山本太郎君 反撃の判断するかしないか、この情報は米国頼みですよね。
 総理、これ、米国情報で敵の攻撃が着手されたぞって伝えられてきて、ミサイル発射した方がいいん違うかって言われたときに、日本側はそれ断ることできるんですか。発射しないという判断は、日本側がこれ握れるんですか。いかがでしょう。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 当然のことながら、日本が事態認定を判定する手続になっています。日本が判断をいたします。

○山本太郎君 情報持っているのは向こうやのに、こっちに判断し切れますかね。アメリカからの情報が正しくない場合は、日本が戦争犯罪国にもなり得る話ですよ、これ。
 イラク戦争、アメリカの偽情報から始まったんですよ。無人機攻撃、様々な戦争で、結婚式、病院、住宅地、様々な誤爆をやらかしているのが米軍ですよ。誤った情報で日本がミサイル発射、誤爆、又は日本の先制攻撃とみなされて戦争始まる、これ十分にあり得るシナリオだと思うんです。
 防衛省、本予算含め五年計画で予定されている反撃能力って、どんな性能を持つものを調達したり、国の中で造ろうとしているんですか。

○政府参考人(増田和夫君) お答え申し上げます。
 スタンドオフ防衛能力は、島嶼部を含む我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対しまして、相手方の対空ミサイル等の脅威圏の外から対処していくために整備していくものでございます。反撃能力につきましては、専らこのために独自の装備品の整備方針があるものではなく、スタンドオフ防衛能力等を活用することとしております。
 自衛隊が保有する誘導弾の射程は、従来からお答えを差し控えているところでございますけれども、公刊情報上のスタンドオフミサイルの射程をお示しすれば、トマホークは約一千六百キロ、JSMは約五百キロ、JASSMは約九百キロとされていると承知しております。

○山本太郎君 射程距離大幅に伸ばして、で、調達する、海外から。で、自分たちでも造ると。これ、日本へのリスクになっていくことを今やっているんですね。
 外務省、国連憲章って何ですか。

○政府参考人(今福孝男君) お答え申し上げます。
 国連憲章は国連の基本文書でございます。国連を設立し、加盟国の権利や義務を規定するとともに、国連の主要機関や手続を定めたものです。
 日本は、一九五六年の十二月十八日に加盟国となっております。

○山本太郎君 総理、国連憲章って軽く扱っちゃいけないものですよね。どう考えますか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国は国連加盟国であり、国連憲章を尊重しなければいけない、当然だと思います。
 平和安全法制の議論を始め安全保障に関する様々な議論においても、国連憲章のありよう、特に五十一条の個別的自衛権、集団的自衛権、それから第七章の集団安全保障の様々な項目、再三引用され議論を行った、こうした経緯もあります。国連憲章はこれからも重視してまいります。

○山本太郎君 外務省、旧敵国条項とは。

○政府参考人(今福孝男君) お答え申し上げます。
 国連憲章の第五十三条、第七十七条及び第百七条に、敵国、エネミーステーツ、又は敵、エネミーという文言が使用されております。これらの規定がいわゆる旧敵国条項と称されております。

○山本太郎君 その条項、削除するには何が要る。教えてください。

○政府参考人(今福孝男君) お答え申し上げます。
 いわゆる旧敵国条項の削除を実現するには、国連憲章の改正が必要でございます。改正には、国連総会における加盟国の三分の二の賛成と、あと、国連安保理の全ての常任理事国を含む国連加盟国の三分の二による批准という要件が設けられております。

○山本太郎君 つまりは、常任理事国が反対した場合、削除は不可能。それでいいですね。

○政府参考人(今福孝男君) お答え申し上げます。
 国連憲章の改正のための手続は先ほど申し上げたとおりでございます。常任理事国が改正案を批准しなければ国連憲章の改正はできないということになります。
 なお、一九九五年の国連総会では、いわゆるこの旧敵国条項が既に死文化しているとの認識を示す決議、これが全ての安保理常任理事国を含む圧倒的多数の賛成によって採択されております。現時点におきましては、いかなる国も旧敵国条項を援用する余地はもはやないと考えております。

○山本太郎君 でも、そこから先、手続進んでいないもんね。
 二〇一二年中国、資料の二十三、二〇一九年ロシア、二つの常任理事国が、今もこれ生きているぞということを牽制し続けているんですね。
 日本が不穏な動きをした際には安保理の許可なく攻撃が認められる、旧敵国条項。いまだ削除も死文化もされていないんですよ。今やろうとする軍備増強、合法的に日本を武力攻撃してくださいと自爆する行為ですよ。
 資料の二十四、中国との緊張が更に高まった場合、経済的損失、教えてください。

○参考人(浦田秀次郎君) 経済産業研究所よりお答え申し上げます。
 早稲田大学教授で弊所のファカルティフェローの戸堂康之氏が兵庫県立大学教授の井上寛康氏との共著論文として二〇二二年に発表した論文では、日本への素材、部品の輸入及び日本からの製品の輸出が外生的なショックによって縮小した場合、日本経済にどのような影響があるのかを一定の仮定の下でシミュレーションによって分析しています。
 その結果によれば、部品輸入の途絶はサプライチェーンを通じて下流の企業にも連鎖的に影響を与えるため、輸出の途絶と比べてより大きな生産減少をもたらすということが見出されました。輸入の途絶の影響は、その規模が大きくなればなるほど、またその期間が長期的に、長期になればなるほど急激に大きくなることも分かりました。
 御質問の点ですが、中国からの部品などの輸入の八割が二か月間、金額にして約一兆四千億円が途絶した場合には、企業の生産総額で見ると約五十三兆円減少するとの推計になっております。これを日本の付加価値生産額で見ますと十二・八兆円、二か月間の付加価値生産額の約一五%となります。
 なお、本研究からは、ある地域からの輸入の途絶による影響は、輸入額よりも、国内のサプライチェーンがその地域とどのように結び付いているかに密接に関連していることが分かりました。このため、輸入途絶の影響を考える際には、その地域からの輸入額ではなく、その地域と日本企業とのサプライチェーンのつながりに注意する必要があると考えられます。
 また、供給元の代替が輸入途絶の負の効果を緩和することが分かりました。このため、柔軟なサプライチェーンを形成することで輸出入の混乱に備えることが必要であると考えられます。
 以上です。

○山本太郎君 ありがとうございます。
 戦争にならずとも、緊張が高まって、たった二か月、八割、中国から一・四兆円の部材が入ってこないだけで、これ五十三兆円マイナス。日本、詰みますよ。これ、経済的打撃で人が死にます。
 これ、シミュレーションしています、この影響でどうなるか。今やることによって緊張が高まって、国としてシミュレーションしていますか、経済的打撃、戦争になった場合の経済的打撃。していないと思うんですけど、聞きます。総理、お願いします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今回の安保三文書の内容においても明記しているとおり、我が国として、外交を通じて我が国に好ましい国際環境をつくっていく、これが基本であると思います。外交を通じて東アジア、インド太平洋地域における平和や安定に努力をしていく、これが基本であります。
 そうした努力にもかかわらず、この関係が破綻した場合、関係がこのおかしな方向に行った場合の仮定の話について申し上げる材料は持っておりません。

○山本太郎君 総理、シミュレーションしてください。

○国務大臣(西村康稔君) 様々な事態も想定しながら、私ども、サプライチェーンの強靱化の予算も確保しながら、また同志国、それこそアメリカ、ヨーロッパ含めてですね、同志国と様々な部材も共有することを含めてそうした取組を強化をしているところでございます。
 いずれにしても、今回の、今の計算は一定の仮定の下、仮定の下でのシミュレーションに基づくものでありますので、私ども、いろいろな事態も想定しながら、サプライチェーンの強靱化、取り組んでいるところであります。

○山本太郎君 だったら、新たに試算しなければなりませんね。総理、やっていただけますよね。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 仮定に基づいての議論を公の場で申し上げることは控えます。
 我が国としましては、この地域の平和と安定のために、外交安全保障、最大限の努力を行う、これが基本であると申し上げております。

○山本太郎君 シミュレーションするとも言わない。軍備増強をあおって誰が得するんですか。軍産複合体とアメリカがオフショアで金もうけするだけでしょう。
 今回の売国棄民予算、大きな間違いですよ。先進国で唯一、三十年経済を衰退させてきた。三十年賃金下がりっ放し。格差広げて社会地盤沈下。コロナが来ても物価高でも、生活者も事業者も酪農家も守らない。一体何やっているんですか、皆さん。今必要なのは、アジア重視の外交と国内への徹底した積極財政ですよ。
 まとめますね、終わるので。
 資本家の犬、アメリカの犬、統一教会の犬でもある自民党政権は退陣以外ない。骨のない野党の経済政策に超絶積極財政をビルトインさせて政権交代。日本経済を復活させるのは私たちです。
 終わります。

○委員長(末松信介君) 以上で山本太郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)

引用・参照・底本

出典:国会会議録検索システム

無投票のお知らせ2023年04月03日 18:23

  

無投票時の選挙公報とは

https://koshimizu-tougen.asablo.jp/blog/2023/01/27/9558665"

倫と落2023年04月04日 21:56

浮世絵鑑 第1巻 菱川師宣画譜
 『鄥其山漫文 生ける支那の姿』内山完造 著

 (一〇四- 一一〇頁)
 倫と落

 〇場所  〇〇紗廠

 〇時   工人交替時

 〇人物

      A 日本人監督

      B 印度人門衛
      C 支那人男工

 男工のCが交替時間に歸る時に、棉を少し失敬して歸りかけるのを發見せられて、Bと云ふ印度人門衛に説諭されて居る。
 B Cお前は此棉を何處から持つて來たか、物を倫むことはならんと云つてあるのになぜ倫むか。
 C いえ私は決して倫みません。
 B 馬鹿云へ、現に此處に棉を倫んで來て居るじやないか。
 C いえ倫みません、私は盜人ではありません。
 B それなら此棉はどうしたのか。
 C 此棉は彼の工場から持つて來ました。
 B それ見ろ、會社の棉を倫んでるではないか。貴様樣なかなか強情じやな。
 C いえ盜んだのではありません。私は盜人じやないから盜みません。
 B 馬鹿ッ、貴樣何んと云ふ強情な奴だ。現に工場から棉を盜んで來て、其の棉を此處に引き出され、自分も工場から持つて來たと云ひながら、倫まん、私は盜人じやないなんて、づうづうしくよくそんな事を言ふなあ。馬鹿野郞。 
 C 私に盜人だと、何時倫みました。私は倫みなんてしたことはない。さあ私が何時何を盜んだか言うて呉れ。
 B 此のしぶとい強情者奴が。
 門衛はとうとう激怒しきつて、ポカンポカンと遂に腕力に訴えてしまつた。同時に事が少々面倒になつて來た。
 C 打つたな、あさあ打て、もつと打て、何の罰で私を打つのか、さあ打つて呉れ、殺ろして呉れ。
Cは大聲と泣聲とを一緖に振り立てゝ突進して來る、其勢は猛烈である。今まで遠卷きに事件の解決を待つて居つた工人連中が、此時から動搖して來た。何だかがやがやと騷ぎ出した、B君の目にも形勢頗るおだやかならざる狀況が感じられて來た。共處へ通知によつて飛んで來たのがA監督であつた。
 A 何をそこで騷いで居るのか、八ケ間敷い。
 一同ちよつと沈黙狀態となる。
 B 此Cが又棉を盜んで歸る處を發見しましたので、説諭いたしましたところが、現に盜んだ棉を引ぱり出して、自分も工場から盜んで來たことを承認しながらいや盜まない、私は盜人じやないと云ふて強情を張るのです。
C Bは私を盜人だと罵つたばかりでなく、私は盜人じやないから、盜まないと云ふとBはいや盜んだ、盜人じやと云つて、私を打つのです。さあ打つて呉れ、もつと打つて呉れ、私を打ちさへすれば盜人が解るだらう。
 多くの工人連中の動揺の色を自分へ味方をして呉れたと思つて、かさにかゝつて泣聲勇ましく喰つてかゝつて來た。
B 私が惡ふ御座りました。もう是からは盜みませんと、あやまりさへすれば、 將來をいましめて許してやるのですが、餘り強情を張るものですから、こらしめの爲めに一つやりましたが、今度はさあ打て、殺ろせと逆捻です。
 A B君、此の工人は棉工場の工人だね 。 

 B そうです、操棉工です。
 A Cお前はあの棉工場の工人だね 。 
C はい、そうです。
A Cお前が持つて居つた棉は落綿だらう。
C そうです、落棉です。
 A その落棉は、支那の紗廠では不要棉であるのだが、日本紗廠ではしてはならんことである。落棉も日本人工場では倫棉である。お前は支那流に落棉だと云ふ、 B君は日本流に倫棉だと云ふ。つまりCは日本工場の規則を知らなんだと云ふことでありB君は支那人の習慣を知らなんだからた。今日は特に許すが、今後若しも落棉すると、其時はすぐ警察へ引渡すからよく覺へて置くんだぞ、さあ歸れ歸れ。
 A君が支那人に解る樣に裁いてやられたので、全體の工人連がそうだ、そうだ、 A先生はよく解つてる、Cは日本工場の規則を知らないのだ。Bは支那の習慣を知らないのだ。
沒法子だ、さあさあ歸らうと、まだ文句を云つて居るCを連れて歸つて行つた。
Bにはどう云ふ理由か一寸合點が行かない。
B A先生、一體落棉と倫棉とはどんなに違うのですか。 
 A よしよし一つ説明して上げやう。支那の習償では、棉を扱つて居る工人が棉を、糸を扱ふて居る工人が糸を、布を扱つて居る工人が布を、少しづつ失敬して歸ることを落と云ふのだ。
 詰まり、自分の扱つて居る仕事の材料とか、製品とかを少し失敬することを落と云ふので、丁度日本の機業地たとへば京都あたりでは生糸を賃繰りに出すと、賃繰屋が佛三匁と云つて、佛樣の樣な人でも、三匁は失敬する、それは公然の秘密とされて居つて少しもとがめない。
 それと同じことである。お役所とか會社とかに勤めて居る人が、公用の用箋封筒などを私用に使ふ位いの程度に考へて居るのである。であるから、支那では、落棉でも、落糸でも、落布でもとがめないのである。そうでなくて、自分の扱つて居らん他の仕事の材料とか製品を失敬すると、それが倫となるのである。倫は卽ち盜人である。阿媽や阿仁がお使ひに行つて少し下駄を穿くのなどは落銅銭である。上海で一般に拭油と呼ばれて居るのがそれである。
B な一る程、いやよく解りました。
 A B君序でだから云ふが、叱るのはどんなに叱つてもよいが、打つてはならん。支那では打つたとなると、どんな理由も理由にはならん習慣であるから、どうか、今後は向ふから打たれる迄は、断じて打つてはならん、處が向ふからはめつたに打たない、なぜなら、打つたら敗けと云ふ事を知つて居るからね。どうか氣をつけて呉れ給へ。
 B いやよく解りました、充分注意いたします。
 習慣を知ると云ふことは實に大切である。

引用・参照・底本

『鄥其山漫文 生ける支那の姿』内山完造 著 昭和十一年六月五日第三版 學藝書院

(国立国会図書館デジタルコレクション)

円借款2023年04月05日 11:27

平成二十八年十一月九日提出 質問第一二七号
政府の円借款などに関する質問主意書 提出者 逢坂誠二
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a192127.htm

平成二十八年十一月十八日受領 答弁第一二七号 内閣総理大臣臨時代理 国務大臣 麻生太郎
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b192127.htm

平成二十八年十一月二十一日提出 質問第一五三号
第二次安倍政権以後に政府が債務免除した円借款に関する質問主意書 提出者  逢坂誠二
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a192153.htm

平成二十八年十一月二十九日受領 答弁第一五三号 内閣総理大臣 安倍晋三
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b192153.htm

平成二十八年十一月二十四日提出 質問第一六一号
円借款における延滞債権に関する質問主意書 提出者 逢坂誠二
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a192161.htm

平成二十八年十二月二日受領 答弁第一六一号 内閣総理大臣 安倍晋三
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b192161.htm

外交・デジタル 財務省 2021年10月20日
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseier20211020/03.pdf

独⽴⾏政法⼈ 国際協⼒機構(JICA)の概要
https://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/review/2021kopuro_sanko2.pdf

財政投融資分科会(令和4年12月9日開催)議事録
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_filp/proceedings/proceedings/zaitoa041209.html

図表-1 2021年度地域別事業規模
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.jica.go.jp%2Fabout%2Freport%2F2022%2Fglkrjk0000009ajl-att%2Fchart01_01.xls&wdOrigin=BROWSELINK

円借款の国別・地域別融資実績(2021年度)
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.jica.go.jp%2Fabout%2Freport%2F2022%2Fglkrjk0000009b3c-att%2Fchart02_04.xls&wdOrigin=BROWSELINK