日本も脱ドル化?2023年09月07日 11:43

日本風俗図絵 第1輯(国立国会図書館デジタルコレクション)
 アンナ・コロリョーワ(Anna Korolyova)はロシアの経済専門誌「エクスペルト」の金融アナリストである。

 彼女は経済や通貨に関する専門的な知識を持ち、国際経済や通貨政策についての洞察力を提供している。アンナ・コロリョーワ氏はASEAN諸国における地域通貨推進についての専門家としての意見を述べている。

 ASEAN諸国が現地通貨取引(LCT)を推進し、脱ドル化の道を歩む意向を強調しており、その背後にはアジア地域全体の経済的な変化や、BRICS加盟国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が独自の通貨を検討していることなどがあると説明している。また、アジア諸国が資本流入に影響を受けることを好まず(註1)、自国の対抗軸を作るために強い通貨を求めていることを強調し、日本もその理由から脱ドル化に関心(註2)を持っていると指摘している。

 ドルの特権的地位がアメリカに大きく依存しており、世界の政治・金融情勢が変化する中で、多くの国がドル主導の決済システムから排除される可能性を懸念していることを指摘した。これらの見解は、アジア地域における通貨政策や国際経済に関する重要な議論の一部を反映している。

 彼女は経済専門家としての立場から、これらの問題に関する専門的な洞察を提供していると言える。

【要点】

ロシアの経済専門誌「エクスペルト」の金融アナリスト、アンナ・コロリョーワ氏は、ASEAN諸国が現地通貨取引(LCT)を促進し、ドルに依存する貿易を脱却しようとしていると分析している。

2023年7月現在、アジアの現地通貨による取引額は30億7000万ドルに達しているが、これは世界的に見ればわずかな額であると指摘している。しかし、新しい通貨はまだ黎明期にあり、発展の可能性はかなり高いと考えている。

日本は、米国と戦略的協力関係にあるにもかかわらず、脱ドル化の未来に向けて動き出している。日本が脱ドル化の動きに参加している理由について、次の点を挙げている。

・ASEの代替的な、一種のカウンターバランスを作りたいというASEAN諸国の意向に賛同する。
・人民元の弱体化によって、円も影響を受ける可能性がある。
・ドル主導の決済システムから排除されるリスクを回避したい。
・ASEAN諸国はBRICSの発展を注視しており、ASEANも代替的な通貨を作りたいと考えていること。
・人民元は円と比べてまだ弱い立場にあり、アジア諸国はドルに対抗できるような強い通貨を作りたいと考えていること。
・ASEAN諸国の中で経済のレベルがまちまちであるため、新しい通貨によって相互の貿易を円滑にしたいと考えていること。
・ASEAN諸国との経済的結びつきを強化したい。
・ドルの変動の影響を軽減したい。
・自国の対抗軸を作りたい。

ドルはアメリカ当局に大きく依存した通貨であり、独立した決済手段ではないと指摘している。また、ドルが政治的に利用される可能性もあるため、多くの国が将来的にドル主導の決済システムから排除されるのではないかという懸念があると述べている。

ドルの政治化や、ロシアへの制裁をめぐる動きなどから、多くの国がドル主導の決済システムから離脱することを検討しているのではないかと指摘している。

脱ドル化が実現した場合、ドルの地位に大きな影響を与えると予測している。ドルは、長年にわたって世界経済の基軸通貨として君臨してきましたが、その特権的地位は、もはや揺らぎつつあるのかも知れない。

分析は、ASEAN諸国がドルに依存する貿易を脱却しようとする動きが、今後も加速していく可能性を示唆している。

・脱ドル化は、もはや可能性の話ではなく、遠い将来ではあるが現実の話である。
・ASEAN諸国は、BRICS諸国の動きに注目しており、代替的な決済手段を作ろうとしている。
・中国は、ASEANとBRICSという「複数の椅子に同時に座る」ことを望んでいる。
・円はドル志向が強いため、ドルの変動の影響を受けやすい。
・ASEAN諸国は、ドルに対抗できるような強い通貨で、自国の対抗軸を作りたいと考えている。
・新しい通貨は、よりシンプルなレジームで相互の貿易を可能にし、いくつかの矛盾点を平らにするのに役立つ。
・ドルはアメリカ当局に大きく依存した通貨であり、独立した決済手段ではないし、他の通貨にとっての基準にはなりえない。
・ASEの現地通貨による取引額は30億7000万ドルに達しているが、これは世界的に見ればわずかな額である。しかし、新しい通貨はまだ黎明期にあり、発展の可能性はかなり高い。
・ASEAN諸国は、BRICSの発展を注視しており、代替的な、一種のカウンターバランスを作りたいと考えている。
・ASEは遅れを取るつもりはなく、独自の通貨を作ろうとしている。
・人民元はアジアで最も強い通貨になろうと努力しているが、円と比べるとまだ弱い立場にある。
・アジア諸国は基本的に、FRBの政策を好んでいない。
・日本は、ドル志向が強いので、ドルのわずかな変動にも影響を受ける。
・日本にとってドルは友人であるが、世界におけるドルの地位よりも自国の輸出の方が重要なのである。
・新しい通貨は、よりシンプルなレジームで相互の貿易を可能にし、いくつかの矛盾点を平らにするのに役立つだろう。
・ドルはあまりにも長い時間を使い、現在の地位を獲得してきたため、その特権的地位をそう簡単に手放すことはないだろう。
・ドルはアメリカ当局に大きく依存した通貨であり、独立した決済手段ではないし、他の通貨にとっての基準にはなりえない。
・多くの国が、米国と何らかの不和が生じた場合にロシアのようにドル主導の決済システムから排除されるのではないかと、今後起こり得る問題について考えている。

【桃源寸評】

 ドルは米国の他国支配のツール、つまり政治化されたツールとして、アジア各国も認識し始めたと云うことである。或る意味ではドル経済支配権からの独立とも云うべきである。

 BRICSが好まれるのは、支配・被支配の関係でなく、相互の発展のために相違点を乗り越えて、協力し合おうという趣旨だからである。

 が、米国は自国利益第一、そして覇権を求めるゆえに、あらゆる手段を使う。例えば、ロシア制裁、対中国制裁を見るが如くに、他国からは何れは我が身に降り掛かる災難と思われ忌避される。

 そう、覇者の逆鱗は、経済論理とは無関係に、気儘に割り込んできて混乱、破壊を引き起こす。

 その様な国家のドルをどの国家が好んで使いたがるだろうか。

 しかし、日本、ドアを開けてソロリと爪先を外に出す程度なのか、見ようではないか。

(註1)
ASEAN加盟国は、現地通貨取引(LCT:Local Currency Transaction)を促進するための作業部会を立ち上げた。2023年7月現在、ASEAN加盟国9か国と、ASEANのパートナー国3か国(中国、韓国、日本)が参加している。
目標は、ASEAN域内の取引を現地通貨で行うことで、ドルの依存度を低減し、ASEANの経済統合を推進することである。
ASEAN域内の貿易の拡大と経済の安定に大きく貢献することが期待されている。

(註2)
通貨価値の安定:外国からの大量の資本が流入すると、その国の通貨の価値が上昇する可能性がある。通貨が急激に上昇すると、輸出品が他国で高価になり、輸出が減少する可能性があるため、アジア諸国は通貨価値の安定を求めている。

金融安定性:急激な資本流入は金融市場に大きな変動をもたらすことがあり、これが金融不安を引き起こす可能性がある。アジア諸国は、金融市場の安定を保つために、過度な資本流入を抑制したり、調整したりする必要があると考えている。

独自の経済政策:アジア諸国は、外国からの資本に過度に依存せず、自国の経済政策を独立して展開したいと考えている。外国からの資本が過度に流入すると、その国の経済政策に対する外部の影響が増加する可能性があるため、アジア諸国は自主性を保ちたいという意向がある。

総括すると、「資本流入に影響を受けることを好まず」とは、アジア諸国が外部からの資本流入を管理し、安定させるために、過度な流入を制限し、自国の経済を守ることを意味している。

引用・参照・底本

「【視点】なぜ日本は将来の脱ドル化に向けて動いているのか ASEAN諸国における地域通貨推進について専門家の意見」 SPUTNIK 2023.09.05

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