<外面似菩薩、内心如夜叉>の米国 ― 2024年09月23日 17:19
【桃源寸評】
他国の瘡蓋を或は生傷を探し回り、剥がし或は塩を塗りつける行為を臆面もなくやってのけ、自国の利益を引き出す米国の在り方は、国際社会での"ヤクザ稼業"に等しい。
米国社会に対応するには、離反させられるのでなく、結束して対峙すべきである。
米国は国際社会のアウトローである。子分になる(徒党を組む)を断じて拒否すべきである。
他国を利用するだけで、全幅の信頼を置くことができない国であり、手の平を返すことが常套手段となっている。
【寸評 完】
【概要】
アメリカがインドに対して「良い警官、悪い警官」の戦略を取っていると論じている。具体的には、アメリカの一部はインドに友好的な態度を示す一方で、他の一部は背後でインドを困らせる行動を取っていると述べている。特に、インドのモディ首相が最新のクアッド首脳会議に出席する直前、アメリカ国家安全保障会議のメンバーがカリスタン分離主義者と関係のあるグループと会ったことが問題視されている。このカリスタン運動はインドにとってテロリズムと見なされており、アメリカのこうした行動はインドとの関係を悪化させる原因になっていると指摘されている。
さらに、バングラデシュでの政権交代がアメリカの支持を受けて行われたとして、インドはこの点でもアメリカに疑念を抱いていると説明されている。インドは非西側諸国でありながら、西側諸国との経済的なつながりが必要であるため、アメリカとの協力関係を維持しようとしているが、カリスタンやバングラデシュ問題がアメリカのインド封じ込め政策の一環として懸念されている。
インドが今後の関係を改善するためには、アメリカに対して何らかの行動を取る必要があるとし、さもなければ両国の関係はさらに悪化する可能性があると結論付けている。
【詳細】
アメリカがインドに対して取っている複雑な外交戦略を解説している。この「良い警官、悪い警官」の戦術は、アメリカの「ディープステート」(軍事、情報、外交の常設官僚機構)内で、インドに対する異なるアプローチが取られていることを指摘している。具体的には、一部のアメリカ政府関係者はインドに友好的な姿勢を示しており、協力を促進しようとしているが、他方で別の勢力はインドに対して圧力をかけ、特にインド国内でテロリストと見なされているカリスタン分離主義者を支持する動きを見せている。
カリスタン問題
インドにとって非常に敏感な問題の一つがカリスタン運動である。これはインドのパンジャブ州を拠点にした分離主義運動で、独立国家「カリスタン」の設立を目指しており、インド政府はこれをテロリズムと見なしている。アメリカ国家安全保障会議のメンバーがモディ首相の訪米直前にこの運動と関係のあるグループと会合を持ったことは、インド政府に対して大きな侮辱と見なされ、両国の関係に緊張をもたらした。
バングラデシュ政権交代の影響
さらに、アメリカはバングラデシュでの政権交代を支持しており、これがインドにとって問題視されている。インドはバングラデシュとの友好関係を重視しており、アメリカがバングラデシュでの政権交代に介入したと感じることで、アメリカに対する不信感が増している。この出来事は、インドがアメリカに対して慎重になるもう一つの要因である。
インドの立場とジレンマ
インドは反西洋的ではなく「非西洋的」な立場をとっており、西側諸国との貿易や投資に依存している。これが経済成長を支える重要な要素となっており、インドはアメリカとの経済関係を維持したいと考えている。また、インドとアメリカは共に中国の台頭に対して懸念を抱いており、軍事的な協力も強化している。しかし、同時にインドはアメリカの本当の意図についても疑問を抱いている。特に、カリスタン問題やバングラデシュでの政権交代が、アメリカがインドを封じ込めようとしている兆候だと受け止められている。
「良い警官、悪い警官」戦略
アメリカは一方ではインドとの経済的・軍事的な協力を進めているが、他方ではカリスタン運動やバングラデシュの問題を利用してインドに対して圧力をかけている。これが「良い警官、悪い警官」の戦略であり、アメリカはインドの警戒心を和らげる一方で、背後で行動し、インドをコントロールしようとしているとこの記事は主張している。
インドの対応
インドは、このようなアメリカの戦略に対して困難な立場に立たされている。インドはアメリカとの関係を完全に断つことはできず、アメリカからの経済的・軍事的な支援を必要としている。そのため、アメリカの行動に対して即座に強い反発を示すことは避けているようである。しかし、この記事ではインドが今後何もしない限り、この状況は悪化するだけだと警告している。アメリカは自分たちが「上位のパートナー」であると見なし、インドに対して一方的な行動を取り続けるため、インドがこの関係を再調整しない限り、事態は改善しないと指摘している。
結論
アメリカとインドの関係は、協力と対立の両面を持つ複雑なものである。両国は中国に対する共通の懸念を抱えており、軍事協力を強化しているものの、アメリカはインドをコントロールしようとする意図を持っていると考えられ、カリスタンやバングラデシュの問題を通じてインドに圧力をかけている。インドが何らかの形でアメリカに対して関係を再調整しない限り、これらの問題は今後も続き、両国関係はさらに悪化する可能性があると警告している。
【要点】
・アメリカの「良い警官、悪い警官」戦略: 一部のアメリカ政府関係者はインドに友好的な姿勢を示し、他方ではカリスタン分離主義者と関係するグループと接触するなど、インドに圧力をかける行動を取っている。
・カリスタン問題: インドにとってカリスタン分離主義はテロリズムと見なされている。モディ首相の訪米直前にアメリカの国家安全保障会議メンバーがカリスタン分離主義者と関わったことは、インドにとって侮辱と見なされ、両国関係に緊張をもたらした。
・バングラデシュ政権交代: アメリカがバングラデシュでの政権交代を支持したことが、インドの疑念を深めており、アメリカがインドを封じ込めようとしていると懸念されている。
・インドのジレンマ: インドは反西洋的ではなく非西洋的な立場を取っており、西側諸国との経済関係を維持しつつ、中国への対抗でアメリカとの軍事協力を続けている。しかし、アメリカの真の意図に対して疑念を抱いている。
・アメリカの目的: アメリカはインドの警戒心を和らげつつ、背後でカリスタンやバングラデシュ問題を利用してインドをコントロールしようとしている。
・インドの対応の必要性: インドがアメリカに対して関係を再調整する行動を取らない限り、アメリカは自分たちを「上位のパートナー」として扱い、インドに対して一方的な行動を取り続けているため、事態はさらに悪化する可能性がある。
・両国関係の将来: 両国は中国に対して共通の懸念を抱え、協力関係を続けているが、アメリカの圧力がインドとの関係を悪化させる可能性が高い。
【参考】
☞ カリスタン分離主義は、インドのパンジャブ州に住むシク教徒の一部が独立国家「カリスタン(Khalistan)」の設立を目指す分離主義運動である。以下がこの運動の背景と影響である。
・歴史的背景: カリスタン運動は、1947年のインド独立後、シク教徒の権利や自治を求める動きが強まり、1970年代から1980年代にかけてインド政府との対立が激化した。特に1984年、インディラ・ガンディー首相が命じた「ブルースター作戦」では、アムリトサルの黄金寺院(シク教の最も聖地)が軍によって襲撃され、多くのシク教徒が犠牲になった。これにより運動が激化し、ガンディー首相暗殺の一因にもなった。
・テロ行為: 一部の過激派は、インド国内外でテロ行為を実行しており、1985年にはエア・インディア182便爆破事件を引き起こし、329人が死亡した。このため、インド政府はカリスタン運動をテロリズムと見なし、厳しく取り締まっている。
・国外での活動: カナダ、イギリス、アメリカなど、シク教徒のディアスポラ(移民コミュニティ)が多い国々では、カリスタン支持者が存在し、分離独立のための政治的・財政的な支援が行われている。
・現在の状況: 現在、カリスタン運動の影響は国内では衰退しているが、海外のシク教徒コミュニティでは今も支持が続いており、特にカナダやアメリカで活動が報告されている。このため、インド政府はこれらの国々とカリスタン分離主義者に対する対応で緊張関係にある。
・インドと外国の関係: 特にインドは、アメリカやカナダがカリスタン運動に関与していると疑い、これが外交関係に影響を与えている。
☞ インディラ・ガンディー首相暗殺は、1984年10月31日にインドで起きた重大事件で、インドの歴史に深い影響を与えた。以下が事件の背景と詳細である。
背景
インディラ・ガンディーはインド初の女性首相であり、1966年から1977年、そして1980年から暗殺されるまで首相を務めた。彼女の暗殺の背景には、パンジャブ州で展開されていたカリスタン分離主義運動に対する政府の対応が深く関わっている。
ブルースター作戦
1984年、パンジャブ州でカリスタン運動が激化し、シク教徒の一部がアムリトサルにあるシク教の最も神聖な寺院、黄金寺院を拠点に軍事的な活動を行っていた。この時、運動の指導者の一人、ジャルネイル・シン・ビンドランワレが寺院に立てこもり、インド政府に対抗していた。
これに対し、インディラ・ガンディーは6月にブルースター作戦を命じ、インド軍を黄金寺院に投入して過激派を制圧した。この作戦では多数のシク教徒が犠牲になり、寺院も甚大な被害を受けたため、シク教徒のコミュニティ全体に深い怒りと悲しみを引き起こした。
暗殺の詳細
1984年10月31日、インディラ・ガンディーはニューデリーの自宅で、シク教徒の警備員であるベアント・シンとサトワント・シンによって暗殺された。彼女は数十発の銃弾を浴び、現場で即死した。これらの警備員は彼女に非常に近い位置にいたため、容易に攻撃することができた。
暗殺の動機は、ブルースター作戦によってシク教徒の聖地が侵され、多くのシク教徒が犠牲になったことに対する報復だと考えられている。
暗殺後の影響
暴動の発生: ガンディー首相の暗殺後、インド全土で反シク暴動が発生し、特にニューデリーでは多くのシク教徒が襲撃され、数千人が命を落とした。この暴力は、インディラ・ガンディーを支持する一部の者たちがシク教徒全体をターゲットにしたものである。
政治的影響: インディラ・ガンディーの暗殺後、彼女の息子であるラジーヴ・ガンディーがインドの首相に就任した。この事件は、インドの国内政治やシク教徒との関係に長期的な影響を与え、宗教間の緊張が続く原因となった。
シク教徒との関係悪化: この事件を契機に、インド政府とシク教徒の関係は長期間にわたって緊張したままになり、パンジャブ州でのカリスタン運動はさらに複雑化した。
インディラ・ガンディーの暗殺は、インドの歴史における一大転換点であり、インド社会全体に深い傷を残した出来事である。
☞ 現在のインドにおけるイスラム教の状況は、歴史的・政治的な背景や社会的な変化が影響し、多様で複雑なものとなっている。以下が現代インドにおけるイスラム教徒の主な状況である。
1. 人口と分布
・インドには約2億人のイスラム教徒が住んでおり、総人口の約15%を占める。これはインドでヒンドゥー教に次ぐ2番目に大きな宗教集団である。
・イスラム教徒は特にウッタル・プラデーシュ州や西ベンガル州など北部および東部の州に多く住んでいる。また、カシミール地方ではイスラム教徒が多数派である。
2. 歴史的背景
インドにおけるイスラム教は、7世紀から12世紀にかけてアラブ商人やムガル帝国の影響を受けて広まった。インドのイスラム教徒は、長い歴史を持ち、インド文化や社会に深く根付いている。しかし、1947年のインド・パキスタン分離独立時に宗教をめぐる暴力が発生し、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立は根深い問題として残った。
3. 宗教的な緊張
近年、インド国内では宗教的な緊張が高まっており、特にヒンドゥー至上主義(ヒンドゥートヴァ)を掲げる勢力との対立が目立っている。与党インド人民党(BJP)やその支持基盤である民族義勇団(RSS)は、イスラム教徒に対して批判的な立場を取ることが多く、これが宗教間の対立を煽る要因となっている。
・モディ政権下での影響: ナレンドラ・モディ首相が率いるBJPの政権下では、イスラム教徒に対する差別や暴力事件が増加しているとの報告がある。特に、牛の屠殺禁止や「ラブ・ジハード」運動といった宗教的な問題がヒンドゥー教徒とイスラム教徒の間で緊張を引き起こしている。
⇨ 牛屠殺問題: ヒンドゥー教徒にとって神聖とされる牛の屠殺を禁じる法律が制定され、これがイスラム教徒の食文化やビジネスに影響を与えている。
⇨ 「ラブ・ジハード」運動: ヒンドゥー教徒の女性とイスラム教徒の男性の結婚を宗教的な「改宗の陰謀」として批判する運動が広がり、一部の州では法的規制が導入されている。
4. カシミール問題
カシミールはイスラム教徒が多数派を占める地域であり、長年にわたりインドとパキスタンの対立の中心にある。2019年、インド政府はジャンムー・カシミール州の特別自治権を廃止し、中央政府の直接統治下に置いた。この動きは、カシミールのイスラム教徒コミュニティに強い反発を引き起こし、地域の緊張が高まっている。
5. 社会的・経済的状況
・経済的な格差: インドのイスラム教徒は、他の宗教グループと比較して経済的に厳しい状況にあることが多いとされている。多くが貧困層に属し、教育や医療へのアクセスが限られている。また、社会的な差別や偏見が、彼らの雇用機会や生活環境に影響を与えることもある。
・政治的代表: イスラム教徒はインドの政治において少数派であり、議会での代表数も比較的少ないため、政治的な影響力が制限されている。ただし、特定の州や地域ではイスラム教徒が重要な票田として政治的に影響力を持つ場合もある。
6. 市民権修正法(CAA)と抗議活動
2019年にインド政府が導入した市民権修正法(CAA)は、隣国からの非ムスリム難民に対して市民権を提供する内容であったが、イスラム教徒は対象外とされた。これに対して、イスラム教徒を中心に抗議活動が全国的に広がり、特にニューデリーやウッタル・プラデーシュ州で大規模なデモが行われた。この法案は、イスラム教徒に対する差別であるとして国内外で批判を集めた。
7. 文化と共存
・インドのイスラム教徒は、文化や芸術、建築、料理など、インド文化に大きな影響を与え続けている。タージ・マハルなどのイスラム建築はその象徴的な例である。
・インド国内では、多くのイスラム教徒がヒンドゥー教徒や他の宗教との共存を図り、地域によっては平和な共存が続いている場所もある。
結論
インドにおけるイスラム教徒の状況は、宗教的、政治的な緊張の中でますます複雑化している。彼らは経済的・社会的な課題に直面しながらも、インド社会における重要な存在として文化や歴史に深く根付いている。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
The US Is Playing A Game Of Good Cop, Bad Cop Against India Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.23
https://korybko.substack.com/p/the-us-is-playing-a-game-of-good?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=149277338&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
他国の瘡蓋を或は生傷を探し回り、剥がし或は塩を塗りつける行為を臆面もなくやってのけ、自国の利益を引き出す米国の在り方は、国際社会での"ヤクザ稼業"に等しい。
米国社会に対応するには、離反させられるのでなく、結束して対峙すべきである。
米国は国際社会のアウトローである。子分になる(徒党を組む)を断じて拒否すべきである。
他国を利用するだけで、全幅の信頼を置くことができない国であり、手の平を返すことが常套手段となっている。
【寸評 完】
【概要】
アメリカがインドに対して「良い警官、悪い警官」の戦略を取っていると論じている。具体的には、アメリカの一部はインドに友好的な態度を示す一方で、他の一部は背後でインドを困らせる行動を取っていると述べている。特に、インドのモディ首相が最新のクアッド首脳会議に出席する直前、アメリカ国家安全保障会議のメンバーがカリスタン分離主義者と関係のあるグループと会ったことが問題視されている。このカリスタン運動はインドにとってテロリズムと見なされており、アメリカのこうした行動はインドとの関係を悪化させる原因になっていると指摘されている。
さらに、バングラデシュでの政権交代がアメリカの支持を受けて行われたとして、インドはこの点でもアメリカに疑念を抱いていると説明されている。インドは非西側諸国でありながら、西側諸国との経済的なつながりが必要であるため、アメリカとの協力関係を維持しようとしているが、カリスタンやバングラデシュ問題がアメリカのインド封じ込め政策の一環として懸念されている。
インドが今後の関係を改善するためには、アメリカに対して何らかの行動を取る必要があるとし、さもなければ両国の関係はさらに悪化する可能性があると結論付けている。
【詳細】
アメリカがインドに対して取っている複雑な外交戦略を解説している。この「良い警官、悪い警官」の戦術は、アメリカの「ディープステート」(軍事、情報、外交の常設官僚機構)内で、インドに対する異なるアプローチが取られていることを指摘している。具体的には、一部のアメリカ政府関係者はインドに友好的な姿勢を示しており、協力を促進しようとしているが、他方で別の勢力はインドに対して圧力をかけ、特にインド国内でテロリストと見なされているカリスタン分離主義者を支持する動きを見せている。
カリスタン問題
インドにとって非常に敏感な問題の一つがカリスタン運動である。これはインドのパンジャブ州を拠点にした分離主義運動で、独立国家「カリスタン」の設立を目指しており、インド政府はこれをテロリズムと見なしている。アメリカ国家安全保障会議のメンバーがモディ首相の訪米直前にこの運動と関係のあるグループと会合を持ったことは、インド政府に対して大きな侮辱と見なされ、両国の関係に緊張をもたらした。
バングラデシュ政権交代の影響
さらに、アメリカはバングラデシュでの政権交代を支持しており、これがインドにとって問題視されている。インドはバングラデシュとの友好関係を重視しており、アメリカがバングラデシュでの政権交代に介入したと感じることで、アメリカに対する不信感が増している。この出来事は、インドがアメリカに対して慎重になるもう一つの要因である。
インドの立場とジレンマ
インドは反西洋的ではなく「非西洋的」な立場をとっており、西側諸国との貿易や投資に依存している。これが経済成長を支える重要な要素となっており、インドはアメリカとの経済関係を維持したいと考えている。また、インドとアメリカは共に中国の台頭に対して懸念を抱いており、軍事的な協力も強化している。しかし、同時にインドはアメリカの本当の意図についても疑問を抱いている。特に、カリスタン問題やバングラデシュでの政権交代が、アメリカがインドを封じ込めようとしている兆候だと受け止められている。
「良い警官、悪い警官」戦略
アメリカは一方ではインドとの経済的・軍事的な協力を進めているが、他方ではカリスタン運動やバングラデシュの問題を利用してインドに対して圧力をかけている。これが「良い警官、悪い警官」の戦略であり、アメリカはインドの警戒心を和らげる一方で、背後で行動し、インドをコントロールしようとしているとこの記事は主張している。
インドの対応
インドは、このようなアメリカの戦略に対して困難な立場に立たされている。インドはアメリカとの関係を完全に断つことはできず、アメリカからの経済的・軍事的な支援を必要としている。そのため、アメリカの行動に対して即座に強い反発を示すことは避けているようである。しかし、この記事ではインドが今後何もしない限り、この状況は悪化するだけだと警告している。アメリカは自分たちが「上位のパートナー」であると見なし、インドに対して一方的な行動を取り続けるため、インドがこの関係を再調整しない限り、事態は改善しないと指摘している。
結論
アメリカとインドの関係は、協力と対立の両面を持つ複雑なものである。両国は中国に対する共通の懸念を抱えており、軍事協力を強化しているものの、アメリカはインドをコントロールしようとする意図を持っていると考えられ、カリスタンやバングラデシュの問題を通じてインドに圧力をかけている。インドが何らかの形でアメリカに対して関係を再調整しない限り、これらの問題は今後も続き、両国関係はさらに悪化する可能性があると警告している。
【要点】
・アメリカの「良い警官、悪い警官」戦略: 一部のアメリカ政府関係者はインドに友好的な姿勢を示し、他方ではカリスタン分離主義者と関係するグループと接触するなど、インドに圧力をかける行動を取っている。
・カリスタン問題: インドにとってカリスタン分離主義はテロリズムと見なされている。モディ首相の訪米直前にアメリカの国家安全保障会議メンバーがカリスタン分離主義者と関わったことは、インドにとって侮辱と見なされ、両国関係に緊張をもたらした。
・バングラデシュ政権交代: アメリカがバングラデシュでの政権交代を支持したことが、インドの疑念を深めており、アメリカがインドを封じ込めようとしていると懸念されている。
・インドのジレンマ: インドは反西洋的ではなく非西洋的な立場を取っており、西側諸国との経済関係を維持しつつ、中国への対抗でアメリカとの軍事協力を続けている。しかし、アメリカの真の意図に対して疑念を抱いている。
・アメリカの目的: アメリカはインドの警戒心を和らげつつ、背後でカリスタンやバングラデシュ問題を利用してインドをコントロールしようとしている。
・インドの対応の必要性: インドがアメリカに対して関係を再調整する行動を取らない限り、アメリカは自分たちを「上位のパートナー」として扱い、インドに対して一方的な行動を取り続けているため、事態はさらに悪化する可能性がある。
・両国関係の将来: 両国は中国に対して共通の懸念を抱え、協力関係を続けているが、アメリカの圧力がインドとの関係を悪化させる可能性が高い。
【参考】
☞ カリスタン分離主義は、インドのパンジャブ州に住むシク教徒の一部が独立国家「カリスタン(Khalistan)」の設立を目指す分離主義運動である。以下がこの運動の背景と影響である。
・歴史的背景: カリスタン運動は、1947年のインド独立後、シク教徒の権利や自治を求める動きが強まり、1970年代から1980年代にかけてインド政府との対立が激化した。特に1984年、インディラ・ガンディー首相が命じた「ブルースター作戦」では、アムリトサルの黄金寺院(シク教の最も聖地)が軍によって襲撃され、多くのシク教徒が犠牲になった。これにより運動が激化し、ガンディー首相暗殺の一因にもなった。
・テロ行為: 一部の過激派は、インド国内外でテロ行為を実行しており、1985年にはエア・インディア182便爆破事件を引き起こし、329人が死亡した。このため、インド政府はカリスタン運動をテロリズムと見なし、厳しく取り締まっている。
・国外での活動: カナダ、イギリス、アメリカなど、シク教徒のディアスポラ(移民コミュニティ)が多い国々では、カリスタン支持者が存在し、分離独立のための政治的・財政的な支援が行われている。
・現在の状況: 現在、カリスタン運動の影響は国内では衰退しているが、海外のシク教徒コミュニティでは今も支持が続いており、特にカナダやアメリカで活動が報告されている。このため、インド政府はこれらの国々とカリスタン分離主義者に対する対応で緊張関係にある。
・インドと外国の関係: 特にインドは、アメリカやカナダがカリスタン運動に関与していると疑い、これが外交関係に影響を与えている。
☞ インディラ・ガンディー首相暗殺は、1984年10月31日にインドで起きた重大事件で、インドの歴史に深い影響を与えた。以下が事件の背景と詳細である。
背景
インディラ・ガンディーはインド初の女性首相であり、1966年から1977年、そして1980年から暗殺されるまで首相を務めた。彼女の暗殺の背景には、パンジャブ州で展開されていたカリスタン分離主義運動に対する政府の対応が深く関わっている。
ブルースター作戦
1984年、パンジャブ州でカリスタン運動が激化し、シク教徒の一部がアムリトサルにあるシク教の最も神聖な寺院、黄金寺院を拠点に軍事的な活動を行っていた。この時、運動の指導者の一人、ジャルネイル・シン・ビンドランワレが寺院に立てこもり、インド政府に対抗していた。
これに対し、インディラ・ガンディーは6月にブルースター作戦を命じ、インド軍を黄金寺院に投入して過激派を制圧した。この作戦では多数のシク教徒が犠牲になり、寺院も甚大な被害を受けたため、シク教徒のコミュニティ全体に深い怒りと悲しみを引き起こした。
暗殺の詳細
1984年10月31日、インディラ・ガンディーはニューデリーの自宅で、シク教徒の警備員であるベアント・シンとサトワント・シンによって暗殺された。彼女は数十発の銃弾を浴び、現場で即死した。これらの警備員は彼女に非常に近い位置にいたため、容易に攻撃することができた。
暗殺の動機は、ブルースター作戦によってシク教徒の聖地が侵され、多くのシク教徒が犠牲になったことに対する報復だと考えられている。
暗殺後の影響
暴動の発生: ガンディー首相の暗殺後、インド全土で反シク暴動が発生し、特にニューデリーでは多くのシク教徒が襲撃され、数千人が命を落とした。この暴力は、インディラ・ガンディーを支持する一部の者たちがシク教徒全体をターゲットにしたものである。
政治的影響: インディラ・ガンディーの暗殺後、彼女の息子であるラジーヴ・ガンディーがインドの首相に就任した。この事件は、インドの国内政治やシク教徒との関係に長期的な影響を与え、宗教間の緊張が続く原因となった。
シク教徒との関係悪化: この事件を契機に、インド政府とシク教徒の関係は長期間にわたって緊張したままになり、パンジャブ州でのカリスタン運動はさらに複雑化した。
インディラ・ガンディーの暗殺は、インドの歴史における一大転換点であり、インド社会全体に深い傷を残した出来事である。
☞ 現在のインドにおけるイスラム教の状況は、歴史的・政治的な背景や社会的な変化が影響し、多様で複雑なものとなっている。以下が現代インドにおけるイスラム教徒の主な状況である。
1. 人口と分布
・インドには約2億人のイスラム教徒が住んでおり、総人口の約15%を占める。これはインドでヒンドゥー教に次ぐ2番目に大きな宗教集団である。
・イスラム教徒は特にウッタル・プラデーシュ州や西ベンガル州など北部および東部の州に多く住んでいる。また、カシミール地方ではイスラム教徒が多数派である。
2. 歴史的背景
インドにおけるイスラム教は、7世紀から12世紀にかけてアラブ商人やムガル帝国の影響を受けて広まった。インドのイスラム教徒は、長い歴史を持ち、インド文化や社会に深く根付いている。しかし、1947年のインド・パキスタン分離独立時に宗教をめぐる暴力が発生し、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立は根深い問題として残った。
3. 宗教的な緊張
近年、インド国内では宗教的な緊張が高まっており、特にヒンドゥー至上主義(ヒンドゥートヴァ)を掲げる勢力との対立が目立っている。与党インド人民党(BJP)やその支持基盤である民族義勇団(RSS)は、イスラム教徒に対して批判的な立場を取ることが多く、これが宗教間の対立を煽る要因となっている。
・モディ政権下での影響: ナレンドラ・モディ首相が率いるBJPの政権下では、イスラム教徒に対する差別や暴力事件が増加しているとの報告がある。特に、牛の屠殺禁止や「ラブ・ジハード」運動といった宗教的な問題がヒンドゥー教徒とイスラム教徒の間で緊張を引き起こしている。
⇨ 牛屠殺問題: ヒンドゥー教徒にとって神聖とされる牛の屠殺を禁じる法律が制定され、これがイスラム教徒の食文化やビジネスに影響を与えている。
⇨ 「ラブ・ジハード」運動: ヒンドゥー教徒の女性とイスラム教徒の男性の結婚を宗教的な「改宗の陰謀」として批判する運動が広がり、一部の州では法的規制が導入されている。
4. カシミール問題
カシミールはイスラム教徒が多数派を占める地域であり、長年にわたりインドとパキスタンの対立の中心にある。2019年、インド政府はジャンムー・カシミール州の特別自治権を廃止し、中央政府の直接統治下に置いた。この動きは、カシミールのイスラム教徒コミュニティに強い反発を引き起こし、地域の緊張が高まっている。
5. 社会的・経済的状況
・経済的な格差: インドのイスラム教徒は、他の宗教グループと比較して経済的に厳しい状況にあることが多いとされている。多くが貧困層に属し、教育や医療へのアクセスが限られている。また、社会的な差別や偏見が、彼らの雇用機会や生活環境に影響を与えることもある。
・政治的代表: イスラム教徒はインドの政治において少数派であり、議会での代表数も比較的少ないため、政治的な影響力が制限されている。ただし、特定の州や地域ではイスラム教徒が重要な票田として政治的に影響力を持つ場合もある。
6. 市民権修正法(CAA)と抗議活動
2019年にインド政府が導入した市民権修正法(CAA)は、隣国からの非ムスリム難民に対して市民権を提供する内容であったが、イスラム教徒は対象外とされた。これに対して、イスラム教徒を中心に抗議活動が全国的に広がり、特にニューデリーやウッタル・プラデーシュ州で大規模なデモが行われた。この法案は、イスラム教徒に対する差別であるとして国内外で批判を集めた。
7. 文化と共存
・インドのイスラム教徒は、文化や芸術、建築、料理など、インド文化に大きな影響を与え続けている。タージ・マハルなどのイスラム建築はその象徴的な例である。
・インド国内では、多くのイスラム教徒がヒンドゥー教徒や他の宗教との共存を図り、地域によっては平和な共存が続いている場所もある。
結論
インドにおけるイスラム教徒の状況は、宗教的、政治的な緊張の中でますます複雑化している。彼らは経済的・社会的な課題に直面しながらも、インド社会における重要な存在として文化や歴史に深く根付いている。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
The US Is Playing A Game Of Good Cop, Bad Cop Against India Andrew Korybko's Newsletter 2024.09.23
https://korybko.substack.com/p/the-us-is-playing-a-game-of-good?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=149277338&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email