中国の「氷のシルクロード」とトランプ2025年01月19日 18:19

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【概要】

 北極圏における中国の「氷のシルクロード」(Ice Silk Road)構想が、アメリカの国家安全保障上の懸念を引き起こしていることを説明している。中国がロシアと協力して進めるこの新しい北極海航路は、マラッカ海峡を経由しないルートとして注目されており、アメリカによる封鎖のリスクを軽減する戦略的な役割を果たしている。

 背景

 2018年、中国政府は「中国の北極政策」を発表し、北極資源の合法的かつ合理的な利用を推進する計画を明らかにした。

 その主な目標には、北極航路の開発、石油・ガス・鉱物資源の探査と利用、漁業資源の保護と活用、観光資源の開発が含まれている。

 現状

 中国のNewNew Shipping Lineは、ロシアと提携し、2023年下半期に北極海を経由するアジア・ヨーロッパ間のコンテナ輸送を7回実施した。 
 このルートは、上海とサンクトペテルブルクを結ぶ新たな航路として昨年7月に開設された。
 北極海航路は、マラッカ海峡やスエズ運河を経由する従来のルートより航路を3分の1短縮できることから、中国にとってコスト削減とエネルギー安全保障の観点で重要である。

 アメリカの反応

 ドナルド・トランプ次期大統領は、2024年12月22日に「アメリカがグリーンランドを所有・管理することは、世界の安全と自由のために必要不可欠である」と主張した。
 トランプは2025年1月7日に、経済的または軍事的手段を用いてグリーンランドを支配する可能性を否定しないと発言した。
 グリーンランドの地政学的重要性が再び注目され、アメリカ議会の中国共産党に関する特別委員会は、北極圏における中国の影響力拡大に懸念を示している。

 歴史的経緯

 中国は1925年にスヴァールバル条約に加盟し、北極圏での科学研究を行う法的根拠を得た。
 2004年、中国はノルウェーのスヴァールバル諸島に「黄河ステーション」という初の北極研究基地を設立した。
 このような背景を持つ中国は、北極での科学研究を足掛かりとして、北極航路や資源開発の分野での影響力を強化してきた。

 今後の展望

 中国とロシアは、北極航路に関する共同委員会を設立し、航路開発、安全対策、極地船舶技術の向上について協議を進めている。
 アメリカがグリーンランドを戦略的に支配する場合、中国は北極戦略の見直しを余儀なくされる可能性がある。

 北極圏における地政学的競争がエスカレートする中で、中国とロシアが北極海航路を活用して戦略的利益を確保しようとしている状況を浮き彫りにしている。また、アメリカがどのように対応するかが、今後の国際情勢に影響を与える可能性があると示唆している。

【詳細】

 北極圏における中国の「氷のシルクロード」構想と、それに対するアメリカの懸念についてより詳細に説明している。この構想が北極海航路の活用を通じてどのように中国の戦略的目標を支えるかを解説するとともに、アメリカがグリーンランドを戦略的に重視する理由についても触れている。

 中国の「氷のシルクロード」構想の概要

 「氷のシルクロード」とは、中国が北極海の航路を利用して、アジアとヨーロッパを結ぶ新たな海上貿易ルートを確立する計画を指す。このルートは従来のマラッカ海峡やスエズ運河を経由するルートより短縮され、コスト削減や時間の節約が期待されている。具体的には以下のような点が注目される。

 1.北極航路の戦略的価値

 北極航路(Northern Sea Route)は、ロシアの北極海沿岸を経由する航路であり、従来のアジア-ヨーロッパ間のルートを約3分の1短縮することができる。この短縮により、燃料コストや輸送時間の削減が可能となり、中国の貿易コストの削減につながる。

 2.エネルギー安全保障の観点

 北極航路の開発は、アメリカによるマラッカ海峡の封鎖リスクを軽減するための重要な対策とされる。マラッカ海峡は中国にとって主要なエネルギー輸入ルートであり、封鎖されると深刻なエネルギー危機が発生する恐れがある。このため、北極航路の確立は、中国にとって「生命線」としての役割を果たす。

 3.ロシアとの協力関係

 中国はロシアと提携し、北極海航路の開発を進めている。2023年には、中国企業のNewNew Shipping Lineがロシアと共同で北極海を経由する貨物輸送を7回成功させ、上海とサンクトペテルブルクを結ぶ新ルートを開設した。また、両国は航路開発、安全対策、極地船舶技術の向上について定期的に協議を行っている。

 歴史的背景と北極圏での中国の活動

 中国の北極圏への関与は、1925年にスヴァールバル条約に加盟したことに遡る。この条約は、スヴァールバル諸島をノルウェーの主権下に置く一方、加盟国に対して科学研究や経済活動の権利を保障している。

 1.スヴァールバル条約への加盟

 1925年、中国の当時の政権(北洋政府)は条約に署名したが、内戦の混乱の中でその重要性を十分に認識していなかった。しかし、この加盟が後の北極圏での活動の法的基盤となった。

 2.北極研究基地の設立

 2004年、中国はノルウェーのスヴァールバル諸島に「黄河ステーション」を設立し、北極圏での科学研究を本格化させた。この研究基地は、中国の北極政策における重要な拠点となっている。

 3.北極圏での活動拡大

 中国は、科学研究を足掛かりに北極圏でのプレゼンスを拡大し、現在では航路開発や資源探査にも積極的に関与している。

 アメリカの反応とグリーンランドの戦略的重要性

 ドナルド・トランプ次期大統領は、2024年末にグリーンランドをアメリカの戦略的利益として強調した。トランプの主張には、以下のような背景がある。

 1.グリーンランドの地政学的重要性

 グリーンランドは北極圏における重要な拠点であり、アメリカが北極海航路を監視・制御するための戦略的な位置にある。これにより、中国とロシアの影響力拡大を抑制することが可能となる。

 2.北極圏の軍事的競争

 アメリカ議会の中国共産党に関する特別委員会は、中国の北極圏での影響力拡大を懸念し、これが軍事的競争を激化させる可能性を指摘している。グリーンランドの所有権を確保することで、アメリカはこの地域での優位性を維持できると考えている。

 3.トランプの過去の提案

 トランプは2019年にもグリーンランドの買収を提案しており、今回の発言はその延長線上にあるとみられる。当時はデンマーク政府から「馬鹿げている」と批判されたが、北極圏の戦略的重要性が増す中で、改めて注目を集めている。

 今後の展望

 1.中露の協力深化
中国とロシアは、北極航路の開発や極地技術の向上に向けて協力を強化しており、北極圏での影響力をさらに拡大する可能性がある。

 2.アメリカの対抗戦略

 アメリカがグリーンランドを戦略的に確保しようとする場合、中国とロシアは北極圏での活動を見直す必要が生じる可能性がある。また、軍事的競争の激化が航路の保険料上昇や商業活動への影響を及ぼす可能性も指摘されている。

 3.北極圏の資源競争

 北極圏には石油やガス、鉱物資源が豊富に存在しており、これらをめぐる競争が今後さらに激化することが予想される。中国はこれらの資源を自国のエネルギー安全保障の一環として重要視している。

 北極圏が地政学的に重要性を増している現状を浮き彫りにし、中国、ロシア、アメリカの戦略的利害が複雑に絡み合う地域での競争が激化していることを詳細に描写している。

【要点】
 
 中国の「氷のシルクロード」構想

 1.北極海航路の活用

 ・北極海航路(Northern Sea Route)を利用し、アジアとヨーロッパを結ぶ貿易ルートを確立する構想。
 ・従来のルートより距離を約3分の1短縮し、コストと輸送時間を削減。

 2.エネルギー安全保障

 ・アメリカによるマラッカ海峡の封鎖リスクを回避する代替ルート。
 ・輸送安定化により、中国のエネルギー安全保障を強化。

 3.ロシアとの協力

 ・ロシアと連携し、航路開発や極地技術を推進。
 ・上海とサンクトペテルブルクを結ぶルートで貨物輸送を成功させた実績あり。

 歴史的背景と北極圏での中国の活動

 1.スヴァールバル条約加盟

 ・1925年に加盟し、北極圏での活動の法的基盤を確立。

 2.研究拠点の設立

 ・2004年にスヴァールバル諸島に「黄河ステーション」を設立。
 ・科学研究を通じて北極圏でのプレゼンスを拡大。

 3.活動の拡大

 ・航路開発や資源探査への関与を強化。

 アメリカの反応とグリーンランドの重要性

 1.グリーンランドの地政学的重要性

 ・北極海航路を監視・制御するための戦略拠点。
 ・中国とロシアの影響力拡大を抑制する狙い。

 2.北極圏の軍事的競争

 ・アメリカ議会の特別委員会が、中国の影響力拡大を懸念。
 ・グリーンランドの戦略的価値が改めて注目される。

 3.トランプの提案

 ・2019年と2024年末にグリーンランド買収を提案。
 ・北極圏での優位性を維持するための戦略。

 今後の展望

 1.中露の協力深化

 ・航路開発や極地技術向上を中心にさらなる協力の可能性。

 2.アメリカの対抗戦略

 ・グリーンランドを拠点に中国・ロシアの活動をけん制。
 ・軍事的競争激化の影響が懸念される。

 3.資源競争の激化

 ・北極圏の石油・ガス・鉱物資源をめぐる争奪が今後進行する可能性。
以上により、北極圏は中国、ロシア、アメリカの利害が交錯する重要な地政学的拠点となっている。

【引用・参照・底本】

Why China’s Ice Silk Road has Trump up in Arctic arms ASIATIMES 2025.01.13
https://asiatimes.com/2025/01/why-chinas-ice-silk-road-has-trump-up-in-arctic-arms/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=7f084cc3eb-DAILY_13_01_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-7f084cc3eb-16242795&mc_cid=7f084cc3eb&mc_eid=69a7d1ef3c

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