習近平:ベトナム、マレーシア、カンボジアの三カ国を公式に訪問2025年04月11日 20:15

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【概要】

 中国共産党中央委員会総書記・中華人民共和国主席である習近平氏は、2025年4月14日から18日にかけて、ベトナム、マレーシア、カンボジアの三カ国を公式に訪問する予定である。

 中国外交部の報道官が2025年4月11日(金)に発表した内容によれば、習主席はまず4月14日から15日にかけて、ベトナムを国賓として訪問する。この訪問は、ベトナム共産党中央委員会総書記トー・ラム氏およびベトナム社会主義共和国国家主席ルオン・クオン氏の招待によるものである。

 続いて、習主席はマレーシアおよびカンボジアを4月15日から18日にかけて訪問する。マレーシア訪問は、スルタン・イブラヒム国王の招待によるものであり、カンボジア訪問は、ノロドム・シハモニ国王の招待によるものである。

 この訪問日程は、中国の国家元首としての習近平氏による一連の国賓級訪問として位置付けられており、各国首脳との会談や二国間関係の強化が予定されている。

【詳細】

 2025年4月11日に新華社通信が報じたところによれば、中国共産党中央委員会総書記かつ中華人民共和国主席である習近平氏は、2025年4月14日から18日にかけて、ベトナム、マレーシア、カンボジアの三カ国に対して国賓としての公式訪問を行う予定である。これは、2023年12月の習近平氏による訪越以来の再訪となるとともに、地域における中国の外交的影響力強化を意図した一連の行動の一環であると理解されている。

 ベトナム訪問(4月14日〜15日)

 習近平氏は、4月14日から15日にかけてベトナムを訪問する。この訪問は、ベトナム共産党中央委員会総書記のトー・ラム氏、およびベトナム社会主義共和国国家主席のルオン・クオン氏の正式な招待によるものである。ベトナムは、中国にとって陸上国境を接する隣国であり、両国は「全面的戦略的協力パートナーシップ」の関係を結んでいる。今回の訪問では、両国首脳による会談が予定されており、政治、経済、安全保障、人文交流など多岐にわたる分野における協力関係の確認と強化が図られる見通しである。

 マレーシア訪問(4月15日以降)

 ベトナム訪問を終えた後、習近平氏はマレーシアを訪問する予定である。これは、マレーシア国王スルタン・イブラヒム陛下の正式な招待による国賓訪問である。中国とマレーシアは2024年に国交樹立50周年を迎えており、今回の訪問はその節目を記念する重要な外交イベントの一つであると位置づけられている。マレーシア政府首脳との間で、経済協力、地域安定、インフラ投資(とりわけ「一帯一路」構想)などを含む幅広い分野での協議が行われることが予想される。

 カンボジア訪問(4月中旬)

 習近平氏の訪問の最終目的地はカンボジアであり、ノロドム・シハモニ国王の招待により行われる。カンボジアは中国と極めて良好な関係を維持している国の一つであり、両国は「鉄の友誼(てつのゆうぎ)」と表現されるほど緊密な結びつきを持つ。今回の訪問では、王室および政府首脳との面会を通じて、両国間の政治的信頼の確認、経済投資協力の拡大、教育・文化交流の深化などが協議される予定である。

 総括

 今回の一連の国賓訪問は、中国の国家主席としての習近平氏が、東南アジア地域の複数の国と高位レベルでの外交関係をさらに深化させる機会であり、いずれの訪問も相手国元首からの正式な招待によって実現している。各訪問国との間で署名される覚書や合意文書の詳細は、訪問中または訪問後に発表されると見られる。

【要点】 

 訪問の概要

 ・期間:2025年4月14日〜18日

 ・訪問国:ベトナム、マレーシア、カンボジア(順に訪問)

 ・訪問の形式:いずれも国賓待遇による国家訪問

 ・訪問の目的:各国首脳との二国間関係の強化および各分野における協力の拡大

 ベトナム訪問(4月14日〜15日)

 ・招待者:ベトナム共産党中央委員会総書記 トー・ラム、国家主席 ルオン・クオン

 ・訪問目的

  ⇨ 両国共産党間の関係強化

  ⇨ 政治的信頼と戦略的協力の再確認

  ⇨ 経済・貿易・投資・人文交流における協力深化

 ・背景

  ⇨ 両国は「全面的戦略的協力パートナーシップ」関係にある

  ⇨ 両国は陸上国境を接する隣国であり、歴史的・地理的な結びつきが深い

 マレーシア訪問(4月15日以降)

 ・招待者:マレーシア国王 スルタン・イブラヒム

 ・訪問目的

  ⇨ 国交樹立50周年(1974年〜2024年)の節目における関係強化

  ⇨ 一帯一路構想に基づくインフラ協力の推進

  ⇨ 地域的安定と経済パートナーシップの確認

 ・会談予定対象:国王、政府首脳(首相等)

 カンボジア訪問(期間中後半)

 ・招待者:カンボジア国王 ノロドム・シハモニ

 ・訪問目的

  ⇨ 両国間の伝統的友好関係の確認

  ⇨ 政治的信頼と経済協力の深化

  ⇨ 教育・文化・人的交流の強化

 ・背景

  ⇨ 中国とカンボジアは「鉄の友誼」と称されるほどの関係を持つ

  ⇨ 中国はカンボジアに対する最大の投資国・援助国の一つである

 総合的意義

 ・習主席による一連の訪問は、東南アジア地域との関係強化を図る中国の外交方針を体現するものである

 ・各訪問は、いずれも相手国元首の正式な招待によるものであり、政治的礼節に則って実施される

 ・訪問に際し、複数の協定や覚書の署名が行われる見通しである(詳細は訪問中に発表予定)

【引用・参照・底本】

Xi to pay state visits to Vietnam, Malaysia, Cambodia from April 14 to 18 GT 2025.04.11
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331897.shtml

米国は国際社会の批判を無視し、「世界全体を敵に回している」と批判2025年04月11日 20:39

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【概要】

 2025年4月11日、中国商務部の発表によれば、Wang Wentao商務部長は10日、サウジアラビアのマジド・ビン・アブドゥラ・アルカサビ商務大臣およびG20議長国である南アフリカの貿易・産業・競争相パークス・タウとそれぞれテレビ会議を行い、米国による関税措置に対処する中で、地域的および多国間の協力強化について意見を交わした。

 Wang部長とサウジアラビアのアルカサビ大臣との会談では、米国によるいわゆる「相互的」関税への対応、中国とサウジアラビア間、さらには中国と湾岸協力会議(GCC)との経済・貿易協力の強化について協議が行われた。また、世界貿易機関(WTO)の役割を活用し、多国間貿易体制を擁護する重要性についても意見が一致した。

 一方、南アフリカのタウ大臣との会談では、同様に米国の「相互的」関税措置への対応や、中国・南アフリカ間の経済・貿易協力の強化について協議が行われ、さらにG20およびBRICSといった多国間枠組みを活用する方針が確認された。

 また、Wang部長は同日、ASEANの輪番議長国であるマレーシアのテン・ク・ザフルル・アブドゥル・アジズ投資・貿易・産業相ともテレビ会談を実施した。中国はASEANを含む貿易相手国との意思疎通と調整を強化し、相互尊重に基づく対話と協議を通じてそれぞれの懸念を解消し、多国間貿易体制を共に守っていく意向を表明した。

 これらの外交動きに関連し、同日、中国外交部の林剣報道官は記者会見において、米国の関税措置に対する中国の立場を改めて明確にし、「米国は国際的な批判を無視して世界を敵に回している」と非難したうえで、「米国は今も中国に対する関税を乱用しており、中国はこのような覇権的かついじめ的な行為を断固として拒否し、決して受け入れない」と強調した。

【詳細】

 2025年4月11日付の中国『環球時報(Global Times)』によると、中国のWang Wentao商務部長は、米国による対中関税の強化方針が国際的な懸念を呼ぶ中、サウジアラビア、南アフリカ、マレーシアの貿易担当閣僚と個別にテレビ会議形式で会談を行い、地域的および多国間の協力強化について協議した。これらの会談はすべて、米国による関税措置への対抗措置を念頭に置いたものである。

 サウジアラビアとの会談内容

 Wang部長は、サウジアラビアのマジド・ビン・アブドゥラ・アルカサビ商務大臣との会談において、以下の論点を中心に協議を行った。

 ・米国が導入を進めている「相互的関税(reciprocal tariffs)」に対する対応策。

 ・中国とサウジアラビア間の経済・貿易関係の深化。

 ・中国と湾岸協力会議(GCC)との貿易・投資協力の強化。

 ・世界貿易機関(WTO)を通じた多国間主義の擁護と制度的枠組みの活用。

 この会談は、中国と湾岸諸国との間で戦略的パートナーシップを深める一環とされる。GCCはサウジアラビア、UAE、カタールなどが加盟する湾岸アラブ諸国の経済協力機構であり、中国にとってエネルギー供給とインフラ投資において重要な地域である。

 南アフリカとの会談内容

 次に行われた南アフリカのパークス・タウ貿易・産業・競争相との会談では、以下の点が話し合われた。

 ・米国の関税措置への共同行動、特に途上国・新興国としての立場の連携。

 ・中国・南アフリカ間の二国間貿易の質的向上。

 ・G20およびBRICSを活用した多国間協力の強化。

 南アフリカは2025年のG20議長国であり、国際経済議題の調整役を担っている。このため、中国は同国との連携を通じて、グローバルな通商ルールに対する米国の単独的行動に対抗する体制の構築を意図していると解される。また、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)という新興国中心の枠組みも並行して重視されている。

 マレーシアとの会談内容

 さらに、中国はASEANの輪番議長国であるマレーシアのテン・ク・ザフルル・アブドゥル・アジズ投資・貿易・産業相とも会談を行った。この中でWang部長は、

 ・ASEAN諸国との経済連携の強化。

 ・中国とASEAN間での信頼醸成と政策協調。

 ・双方の懸念事項を相互尊重に基づく対話・協議により解決する姿勢。

 ・多国間貿易体制の共同防衛に向けた連携。

を強調した。中国は「地域包括的経済連携協定(RCEP)」や「一帯一路」構想におけるASEANとの関係を経済外交の基盤と位置付けており、今回のマレーシアとの協議もそうした文脈に含まれる。

 中国外交部の公式見解

 これらの経済・貿易会談に呼応する形で、4月10日の中国外交部定例記者会見では、林剣報道官が米国の関税政策に対する中国政府の公式立場を表明した。林氏は:

 ・米国は国際社会の批判を無視し、「世界全体を敵に回している」と批判。

 ・中国に対する関税措置は乱用であり、覇権主義的かついじめ的な行為であると明言。

 ・中国はこのような措置を「断固として拒否し、決して受け入れない」と強調。

と述べた。この発言は、米国による通商政策に対する強い政治的・道義的反発の表れであり、国際世論に対して米国の「孤立性」を印象付けることを目的としている。

 以上の一連の会談および発言は、中国が米国の関税強化方針に対抗し、多国間主義および新興国間の連携を通じて自国の通商利益と国際的な制度的正統性を確保しようとする動きであると位置づけられる。

【要点】 

 概要

 ・中国のWang Wentao商務部長は、サウジアラビア、南アフリカ、マレーシアの閣僚とテレビ会議形式で個別に会談を実施。

 ・会談の主目的は、米国による「相互的関税(reciprocal tariffs)」への対応策の協議、および地域・多国間経済協力の強化である。

 サウジアラビアとの会談(相手:マジド・アルカサビ商務大臣)

 ・米国の関税措置に対する意見交換を実施。

 ・中国とサウジアラビア間の経済・貿易協力の深化について協議。

 ・中国と湾岸協力会議(GCC)との協力強化の必要性を確認。

 ・WTOを活用した多国間貿易体制の維持に言及。

 南アフリカとの会談(相手:パークス・タウ貿易・産業・競争相)

 ・米国の一方的な関税政策に対する共通の立場を確認。

 ・中国と南アフリカ間の経済・貿易関係の強化を協議。

 ・G20およびBRICSといった多国間枠組みにおける連携強化を討議。

 ・南アフリカがG20議長国である点を重視し、制度的対抗力を構築。

 マレーシアとの会談(相手:テン・ク・ザフルル・アブドゥル・アジズ投資・貿易・産業相)

 ・ASEANとの意思疎通と政策協調の強化を提案。

 ・相互尊重に基づく対話を通じて貿易上の懸念を解決する姿勢を表明。

 ・多国間貿易体制の擁護とASEANの役割を重視。

 ・RCEPや一帯一路に関連する戦略的背景も考慮されていると見られる。

 中国外交部の公式発言(報道官:林剣)

 ・米国は国際社会の批判を無視して「世界に敵対している」と非難。

 ・対中関税措置は「乱用」であり、「覇権主義的かついじめ的行為」と断言。

 ・中国はこのような行為を「断固として拒否し、決して受け入れない」と強調。

 総括

 ・中国は米国の単独行動主義に対抗し、サウジアラビア・南アフリカ・マレーシアとの連携を通じて多国間主義を強化しようとしている。

 ・経済的圧力に対抗するため、新興国および地域機構との協調を外交戦略の柱としている。

【引用・参照・底本】

China’s commerce minister discusses multilateral cooperation with Saudi, South African counterparts amid US tariff threats GT 2025.04.11
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331900.shtml

「中国脅威論」:日・NATOの地政学的アジェンダの陳腐な手法2025年04月11日 21:18

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【概要】

 2025年4月10日に発表された日・NATO共同声明は、安全保障分野での協力強化を謳い、中国によるロシアの防衛産業基盤への「支援」や、東シナ海・南シナ海、台湾問題に関する「懸念」を表明した。この声明について、中国国際問題研究院の研究員であるXiang Haoyu氏は、「中国脅威論」は日・NATOがアジア太平洋地域における自らの地政学的アジェンダを進めるための陳腐な手法に過ぎないと述べ、今回の日本の対応は中日関係の安定化の勢いに対して逆行するものであると指摘している。

 日本の石破茂首相は、4月9日(水)にNATOのマーク・ルッテ事務総長と約45分間にわたり会談を行った。会談後に発表された共同声明では、「ユーラシア・大西洋地域とインド太平洋地域の安全保障は相互に関連しており、共通の課題に直面している」とし、ロシアおよび中国による「脅威」に言及している。

 NATOの公式ウェブサイトに掲載された声明では、「中国」は複数回にわたり取り上げられており、ロシアの防衛産業への「支援」やウクライナ危機に関する懸念、さらに東シナ海・南シナ海における現状変更の試みへの反対姿勢が示されている。また、中国に対し「軍事面での透明性向上」や、「軍備管理・軍縮・不拡散分野での建設的な協力」を促し、台湾問題については「平和的解決」を支持するとしている。

 Xiang氏によれば、今回の日本のNATOとの協調は既存の安全保障戦略の延長線上にあり、「中国脅威論」を繰り返す内容となっている。これはバイデン政権時代に進められた「アジア版NATO」構想を踏襲するものであり、日本がその推進役を担っている。NATOは日本の地政学的立地を活用してアジア太平洋での影響力を拡大しようとしており、日本側もまたNATOを通じて国際的な安全保障分野での存在感を高めようとしている。

 またXiang氏は、こうした声明の背景には、トランプ前政権が同盟国に対して冷淡な姿勢を取ったことによる米主導の同盟体制の不確実性が存在しており、日本および欧州のパートナーが相互協力を強化する動きがあると分析している。

 中国脅威を誇張する言説は目新しいものではなく、日・NATO関係において長らく続いてきた傾向である。これは地域における中国の影響力をけん制し、自らの戦略的アジェンダを正当化する手段であるとXiang氏は述べている。

 他方で、日本の対中政策は一貫性に欠け、時に揺らぎを見せている。米国および西側との協調のもとで対中牽制を行う一方、石破政権下では北京との関係改善も模索している。この動きは、トランプ政権による不透明な外交姿勢へのリスク回避(ヘッジ)戦略と解釈される。

 さらに、時事通信によれば、与党・自民党の連立パートナーである公明党の斉藤鉄夫代表が4月22日に訪中する予定である。彼の訪中は2023年11月以来となる。また、与党幹事長・森山裕氏が率いる超党派の議員団も、4月27日から3日間の日程で訪中する計画が報じられている。

 Xiang氏は、日本の対中政策は国内政治の圧力と、変動する国際情勢下における外交の複雑性を反映しているとし、日中両国の首脳間で達成された共通認識を真摯に履行し、二国間関係の改善と発展を推進すべきであると日本側に求めている。

【詳細】

 2025年4月10日に発表された日・NATO共同声明、およびその背景、戦略的意図、日中関係への影響、中国側の認識と反応について、さらに詳述する。

 1.日・NATO共同声明の主な内容

 今回の共同声明は、日本とNATOが安全保障分野における連携を強化する意思を確認したものであり、とりわけ次の点に重点が置かれている。

 (1)ユーロ・アトランティック地域とインド太平洋地域の安全保障の相互連関性
両者は「安全保障上の課題は地域を超えてつながっている」との認識を共有し、相互の地域での協力を拡大する必要性を強調している。

 (2)中国への名指しによる懸念の表明

 NATOと日本は、中国がロシアの防衛産業に与えているとされる支援について「深い懸念」を示し、これがウクライナ戦争の継続を助長しているとの見方をとっている。
また、中国に対しては以下の点で「改善」を促している。

 ・軍事透明性の向上

 ・軍備管理・軍縮・不拡散に関する協力

 ・台湾問題の平和的解決の推進

 (3)現状変更への反対

 東シナ海および南シナ海における「一方的な現状変更の試み(by force or coercion)」に反対する姿勢を表明した。

 2.NATOと日本の地政学的連携の意図

 (1)日本側の戦略的動機

 ・日本は国際安全保障における存在感を高める手段として、NATOとの協力を重視している。

 ・アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増す中、日本は米国以外の西側勢力(欧州)とも連携し、多層的な抑止力の構築を目指している。

 ・特にトランプ政権(および再登場の可能性)による米国の同盟軽視姿勢を懸念し、NATOとの関係強化によって対米依存のリスクを分散しようとする意図がある。

 (2)NATO側の狙い

 ・NATOはロシアへの対抗と並行して、中国の台頭にも戦略的関心を向けており、アジア太平洋地域での影響力拡大を図っている。

 ・日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドといった「インド太平洋パートナー」を通じて、「グローバルNATO」への布石を打っている。

 3.中国側の認識と批判

 中国国際問題研究院のXiang Haoyu氏は、以下のように分析している:

 ・「中国脅威論」は陳腐なクリシェであり、戦略的正当化の道具にすぎない
日本およびNATOは、中国の地域的影響力拡大を抑え込むために意図的に「脅威」を誇張し、自らの軍事的関与を正当化している。

 ・日本の対応は日中関係の改善に逆行する行為である
石破政権下では、中日関係の安定化を模索する動きも見られるが、今回のようなNATOとの連携強化は、その流れと矛盾している。

 ・米国の外交不確実性に対する「ヘッジ戦略」
トランプ政権のように米国が一方的な政策を取るリスクに備え、日本は欧州とも連携を深めることで選択肢を広げようとしているが、それは結果として中国との信頼関係を損なう。

 4.日中間の二重性と今後の見通し

 日本の対中政策には、「対立」と「協調」が並存している。

 ・一方で、対米・対欧戦略の一環として中国封じ込めに加担

 ・他方で、経済・外交の安定を重視し、北京との関係改善にも努力

 このような二重性は、日本の与党内部のバランス感覚、世論の動向、経済界の要請、さらには地域情勢の変動により調整されている。

 たとえば、与党内の公明党代表・斉藤鉄夫の訪中予定(4月22日)、超党派議員団の訪中(4月27日~)などは、こうした「関係改善」の一環である。これらは北京に対する「融和のシグナル」として機能しうる。

 5.総括

 今回の日・NATO共同声明は、国際的な対中包囲網の一環として位置づけられるが、それは同時に日本外交の多面性・矛盾性を露呈するものである。石破政権が中国との関係改善を模索しつつ、NATOとの軍事的連携を進めることは、戦略的には理解可能ではあるものの、中国側からは不信感と警戒感を招く結果となる。

Xiang Haoyu氏の主張に従えば、日本が本当に日中関係の安定と発展を望むのであれば、一貫性ある行動と、首脳間で達成された共通認識の着実な履行が求められる。

【要点】 
 
 1.共同声明の主な内容

 ・日本とNATOは安全保障協力を強化する方針を確認。

 ・「ユーロ・アトランティック」と「インド太平洋」の安全保障は相互に関連していると強調。

 ・中国に関する懸念を複数回にわたり明記:

  ⇨ ロシア防衛産業への支援に懸念を表明。

  ⇨ 東シナ海・南シナ海における一方的な現状変更への反対。

  ⇨ 台湾問題の平和的解決を支持。

  ⇨ 軍事透明性、軍備管理・不拡散への建設的協力を中国に要求。

 2.日本の戦略的意図

 ・NATOとの連携を通じて国際安全保障での影響力を強化。

 ・米国の外交姿勢(特にトランプ政権の不確実性)に備え、欧州との協力も重視。

 ・中国封じ込めと日中関係改善の「二重戦略」を追求。

 3.NATO側の狙い

 ・ロシア封じ込めと同時に、中国の影響拡大にも対抗。

 ・日本をはじめとするアジアのパートナー国を活用し、「グローバルNATO」構想を推進。

 4.中国側の見解と反応(Xiang Haoyu氏の分析)

 ・「中国脅威論」は陳腐なクリシェであり、NATO・日本の地政学的正当化の道具。

 ・日本のNATO接近は日中関係の安定化に逆行。

 ・トランプ再登場のリスクに備える「ヘッジ戦略」としての側面も理解するが、中国との信頼醸成を妨げる。

 ・日本政府は、日中首脳間で達成された合意を誠実に実行すべきと主張。

 5.日本国内の動き

 ・公明党の斉藤鉄夫代表が4月22日に訪中予定(2023年11月以来)。

 ・自民党の森山裕幹事長が率いる超党派議員団も4月27日から訪中予定。

 ・日本は対中関係で「対立と協調」のバランスを模索中。

 6.総括

 ・共同声明は日・NATOが中国に対し連携して圧力をかける姿勢を明示。

 ・ただし、日本は中国との関係改善も同時に志向しており、政策の一貫性に課題あり。

 ・中国は、日本の動きを不信と警戒の目で見ており、日中関係の安定には日本側の誠実な対応が不可欠とみなしている。

【引用・参照・底本】

Latest Japan-NATO statement hypes 'China threat' cliché; Tokyo's move 'counter-productive' to stabilizing bilateral relations: expert GT 2025.04.10
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331870.shtml

「最近のハリウッド映画は面白くない」2025年04月11日 21:46

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【概要】

 中国国家電影局は2025年4月10日、米国からの映画輸入本数を適度に削減する方針を発表した。この発表は、国家電影局の公式ウェブサイトに掲載された声明に基づくものである。

 声明によれば、米国政府が中国製品に対して過剰な関税を課しているという誤った行為が、中国の観客における米国映画への好感度をさらに低下させる結果を招くことになるとの認識が示された。そのうえで、国家電影局の報道官は「市場の法則に従い、観客の選択を尊重し、米国映画の輸入本数を適度に減らす」と述べた。

 一方で、同報道官は中国が世界第2位の映画市場として、引き続き高度な開放を堅持し、多様な国々から優れた映画作品を導入する方針であることを強調した。

 今回の措置は、米国による対中輸入品への懲罰的関税の引き上げが続く中で発表されたものであり、米中間の通商摩擦が激化する情勢を背景としている。

 4月9日には、中国の複数の有力ブロガーが、米国の最新の関税措置に対抗するために中国当局が検討中とされる対抗措置の一環として「ハリウッド映画の禁止」などの内容を含む投稿を行い、注目を集めた。

 これに関連し、4月9日の定例記者会見で中国外交部の報道官・林剣は、インターネット上の発言に対するコメントは行わないとしつつ、「中国の立場はすでに明確にした。我々は引き続き自国の正当な権益を断固として守る措置を講じる」と述べた。

 国家電影局の声明発表後、中国のSNS「新浪微博」上では、この方針を支持する意見が散見され、「最近の米国映画は特に好きではなかった」といったコメントも投稿された。

 中国の専門家らは、米国による対中関税政策の強化が、中国国内における米国のソフトパワーに対する幻滅感を助長しているとの見解を示している。

 華東師範大学アジア太平洋研究センター執行主任のChen Hongは、米国映画は長年にわたり、米国の価値観や国家イメージを世界に発信する重要なツールであったと指摘した。しかし、近年の「アメリカ・ファースト」政策や恣意的な関税の行使によって、米国の現実的な覇権的行動が露呈し、ハリウッド映画が描く理想化された米国像との乖離が明白になってきていると述べた。

 このような乖離は、観客に米国の文化的な語りの真実性を疑問視させ、中国国内で文化的自信に基づいた国産映画への支持を強める要因となっている。

 すでに市場データも、米国映画の中国市場における人気の低下を示している。2025年4月9日時点で、同年に中国本土で公開された米国映画は約10本であり、そのうち《キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド》と《マインクラフト・ムービー》の2本のみが1億元(約1360万ドル)以上の興行収入を達成していると、上海の報道機関が伝えている。

 中国文化・観光行政学院の副研究員・ Sun Jiashanは、国家電影局の措置は国内映画産業の成長と整合しており、中国映画市場の構造変化を反映していると分析した。今後は文化的に共鳴し質の高い作品を重視する観客の傾向により、グローバルな映画市場における中国の影響力が高まると述べた。

 南京師範大学の映画研究者・Zhang Pengは、中国の観客が地元文化や価値観に共鳴する高品質な国産映画に魅力を感じつつあるとし、《流浪地球》《哪吒之魔童降世2》のような作品が国内外で成功を収めていると指摘した。一方、ハリウッドは続編やスーパーヒーロー作品に依存しすぎており、創造性の停滞が魅力の低下につながっていると述べた。

【詳細】

 1.政策の概要と発表の経緯

 2025年4月10日、中国国家電影局(China Film Administration)は公式ウェブサイトにて、米国映画の輸入本数を「適度に減らす(moderately reduce)」との方針を発表した。この決定は、近年強まっている米中間の経済摩擦、特に米国による対中関税引き上げへの対抗措置の一環であると見られている。

 国家電影局の報道官は、記者から「米国の対中関税引き上げが映画輸入に影響するか」という質問を受け、「米国政府が不当にも対中で過度な関税を課している行為は、中国の観客が米国映画に対して抱いていた好意をさらに減退させる」と回答した。

 これを受けて、当局としては市場原理を尊重し、観客の志向を反映させる形で輸入削減を行うとした。あくまで「全面的な禁止」ではなく、「市場と需要に応じた適度な減少」である点が特徴である。

 2.措置の背景:米中通商摩擦とネット上の憶測

 今回の発表は、米国が2025年に入り中国からの一部輸入品に対して追加関税を発動したことへの中国側の反応として位置づけられる。特に、数日前(4月9日)から中国の複数の有力ブロガーやソーシャルメディアの投稿で、「中国が報復措置としてハリウッド映画の禁止などを検討している」との未確認情報が広がっていた。

 これらの投稿は内容が一致しており、当局の意図的な情報操作または世論誘導の可能性も示唆されたが、正式な発表までは存在しなかった。

 これに対し、4月9日の中国外交部定例記者会見で林剣報道官は、「インターネット上の発言に対するコメントは行わない」としつつも、「中国は正当な権利と利益を守るため、断固とした措置を講じ続ける」と述べた。これにより、ネット上の憶測が現実性を帯び、翌10日の正式発表に至った。

 3.国内世論とネット反応

 国家電影局の発表後、中国版X(旧Twitter)である新浪微博では、米国映画の制限方針に対する支持の声が多く見られた。一部のユーザーは「ここ数年のハリウッド作品はストーリー性に欠け、見る価値がない」「文化的にも魅力を感じない」といった否定的な意見を投稿しており、愛国的感情とも重なって賛同が広がった。

 この反応は、単なる貿易報復措置にとどまらず、米国映画に対する実際の消費者評価の変化も反映している。

 4.専門家の分析と文化政策の文脈

 複数の中国国内の専門家は、今回の措置が単なる経済報復ではなく、中国の文化政策およびソフトパワー強化の一環であると評価している。

 ▸ Chen Hong(華東師範大学アジア太平洋研究センター 執行主任)
米国映画は長年にわたり、米国の価値観・ライフスタイル・政治的イメージを世界に輸出する「ソフトパワーの道具」であった。

 しかし現在、米国の実際の外交・経済政策(例:関税強化、覇権主義的対応)が、その理想化された文化描写と乖離しており、「二重基準」が露呈している。

 この乖離が中国人観客にとって「作り物」として認識され、映画に対する信頼や興味を損なわせている。

 ▸ Sun Jiashan(中国文化・観光行政学院 副研究員)
国家電影局の方針は、中国映画市場の内発的成長に沿ったものであり、単に外交措置にとどまらない。

 中国の観客はより文化的に共鳴する作品、すなわち中国的価値観や美学に基づく内容を重視しつつあり、今後は国産映画が国際映画市場においても存在感を高めるだろうと述べた。

 ▸ Zhang Peng(南京師範大学 映画研究者)
中国では、《流浪地球》や《哪吒之魔童降世2》といった国産映画が国内外で高い評価と興行成績を得ている。

 一方でハリウッド映画は、続編の多発やマンネリ化したスーパーヒーロー作品への依存により、創造性を失っていると批判された。

 5.市場データによる裏付け

 報道によれば、2025年4月9日時点で中国本土において上映された米国映画は約10作品にとどまっている。その中で興行収入が1億元(約13.6百万ドル)を超えたのは《キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド》《マインクラフト・ムービー》の2作のみである。

 これは、米国映画に対する中国観客の関心が既に低下していることを示す実証的データであり、今回の政策が市場傾向とも整合していることを意味する。

 6.まとめと今後の展望

 今回の中国政府の発表は、単なる対米報復措置にとどまらず、中国国内での文化的自信の表出、国産映画産業育成の方向性、国際映画市場における中国の戦略的立場の転換を象徴している。

 中国は、米国映画の影響力を戦略的に制限しつつ、自国文化のグローバル発信をより一層強化する道を進もうとしていると見られる。

【要点】 
 
 1.政策の概要

 ・中国国家電影局が「米国映画の輸入本数を適度に減らす」と発表。

 ・理由は「観客の志向の変化」「市場原理の尊重」などと説明。

 ・発表は対米追加関税への対抗措置との見方が強い。

 2.発表前の動き

 ・4月9日、中国SNSで「ハリウッド映画が禁止される」との噂が拡散。

 ・複数の有名ブロガーが同様の内容を投稿し、情報操作の可能性が指摘された。

 ・同日、外交部報道官(林剣)は「正当な権利を守る措置を取る」と発言。

 3.政府の公式コメント(電影局報道官)

 ・「米国の関税強化は、米国映画に対する好意を損なっている」

 ・「観客の感情や志向に基づいて、適度に輸入数を調整する」

 ・「全面禁止ではなく市場原理に従う」

 4.世論・ネットの反応

 ・新浪微博では措置に賛同する投稿が多く見られた。

 ・「最近のハリウッド映画は面白くない」「文化的魅力がない」との声。

 ・映画に対する愛国的感情の影響が強まっている。

 5.専門家の見解

 ・Chen Hong(華東師範大学):「米国のソフトパワーは現実の外交政策と矛盾し、観客に偽善と映る」

 ・ Sun Jiashan(文化行政学院):「国内観客は中国的価値観の作品を求めており、輸入減は必然」

 ・Zhang Peng(南京師範大学):「中国の国産映画は質も人気も上昇中、ハリウッドは創造性を喪失」

 6.市場データ

 ・2025年に中国で上映された米国映画は約10本。

 ・興行収入が1億元を超えたのは2本のみ(《キャプテン・アメリカ》《マインクラフト》)。

 ・数量的にも関心は低下しており、政策と市場傾向が一致。

 7.総合的な意味

 ・米中経済対立の一局面でありつつ、文化・ソフトパワーの競争でもある。

 ・中国は国産映画の強化と文化的自主性の確立を目指している。

 ・ハリウッド依存から脱却し、「文化的輸入の選別時代」に入ったことを示唆。

【引用・参照・底本】

China to cut US film imports amid tariff hikes: film regulator GT 2025.04.10
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331857.shtml

中国が新鉱物種「高純度石英」を発見2025年04月11日 22:09

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【概要】

 中国が新鉱物種「高純度石英」を発見したと、2025年4月10日に中国中央テレビ(CCTV)が報じた。これは、半導体や太陽光発電(フォトボルタイクス)などの戦略的新興産業における発展を支える重要資源であり、従来の輸入依存を低減させることが期待されている。

 中国自然資源部の情報によれば、今回発見された新鉱物種「高純度石英」とは、加工・精製することで二酸化ケイ素(SiO₂)の純度が99.995%以上に達する岩石を指す。これは、半導体やフォトボルタイクスなどの先端技術分野が要求する厳格な不純物・介在物基準を満たすものである。

 中国工程院のMao Jingwen(マオ・ジンウェン)院士は、この新鉱物種の確立により、関連する戦略的新興産業の高品質な発展に寄与すると述べている。また、これにより新たな生産力の形成、ならびに産業チェーンおよび供給チェーンの回復力と安全性の強化が見込まれる。

 報道によれば、高純度石英は世界的にも稀少であり、中国においては輸入依存度が高い戦略的資源である。この鉱物は耐高温性、耐腐食性、低熱膨張性、高絶縁性、透明性といった特性を有しており、先端技術産業の中核材料として不可欠である。

 ここ数年、中国は戦略的鉱物資源探査の新たなキャンペーンを通じて、河南省中部の東秦嶺や新疆ウイグル自治区のアルタイ地域などで複数の高純度石英鉱床を発見してきた。中国国内の多数の企業および研究機関が重要技術課題の克服に取り組み、純度4N5(99.995%)のパイロット製品の製造に成功し、一部サンプルでは4N8(99.998%)の純度にも達している。

 これに伴い、資源評価、探査、深度精製、標的不純物除去といった分野で重大な技術的進展があった。これは、中国国内での高純度石英砂の工業化に向けた重要な一歩である。

 自然資源部鉱産資源保護監督司のHuang Xuexiong(ホワン・シュエション)司長は、高純度石英が戦略的鉱物資源リストに加えられると述べた。今後は、高純度石英資源の開発と利用に向けた工学技術革新センターの設立が進められる予定である。この中では、鉱床生成理論、探査・評価技術、分離・精製技術などの科学技術的ブレークスルーが重点的に進められる。さらに、全国的な資源調査・評価の連携と、資源埋蔵量を確定するための重点探査プロジェクトが展開され、国内資源の安全保障が強化される見通しである。

【詳細】

 1. 高純度石英とは何か

 中国自然資源部によって新たに鉱物種として認定された「高純度石英(High-purity Quartz)」とは、精製処理を経て純度99.995%以上の二酸化ケイ素(SiO₂)を得ることが可能な岩石を指す。このような純度は「4N5」と表記され、純度が小数点以下5桁まで9であることを意味する。さらに高い純度、すなわち「4N8(99.998%)」に達するサンプルも得られている。

 高純度石英は、極めて微量な不純物(鉄、アルミニウム、チタンなど)すらも含有してはならず、また内部に気泡や微細鉱物などの介在物も極限まで排除されていなければならない。これらの条件は、半導体製造やフォトボルタイクス(太陽光発電)といった高精度・高信頼性を要求される先端産業分野における使用条件と一致している。

 2. 高純度石英の工業的重要性

 高純度石英は以下のような物理的・化学的特性を持つことから、極めて戦略的価値の高い原材料とされている:

 ・高温耐性:半導体製造工程における高温プロセス(たとえばエピタキシャル成長や酸化処理)に耐える。

 ・耐腐食性:化学薬品やガス環境下でも劣化しにくい。

 ・低熱膨張性:寸法安定性に優れ、精密加工に適する。

 ・高絶縁性:電子デバイス内での漏電防止に有効。

 ・高透明性:光学材料としても使用され、紫外線から赤外線領域における透過性が高い。

 これらの特性により、高純度石英は主に以下の産業分野で不可欠な材料である。

 ・半導体産業:シリコンインゴットの成長用るつぼ、フォトマスク基板、エッチング装置の部材。

 ・フォトボルタイクス産業:太陽電池パネルの製造工程における精密ガラスや反応装置部品。

 ・光ファイバー:通信インフラにおけるコア材料として使用。

 ・高性能ガラス・レンズ:航空宇宙・医療機器向けの光学部品など。

 3. 中国国内の資源状況と探索成果

 高純度石英はこれまで、主に米国(ノースカロライナ州スプルースパイン地区)およびノルウェーの一部地域からの輸入に依存していた。供給の地政学的リスクを軽減するため、中国は国家戦略に基づき、近年「新一輪の戦略的鉱物探査キャンペーン(戦略性礦產資源勘查行動)」を展開してきた。

 このキャンペーンにより、以下のような地域で有望な鉱床が発見された。

 ・河南省中部・東秦嶺地域:中原地域における重要鉱源。

 ・新疆ウイグル自治区・アルタイ地区:地質的に古い岩体が分布し、鉱物の高純度が確認された。

 これらの地域では、多くの国有および民間企業、ならびに研究機関が協力して探査・評価・試験製造に取り組んでいる。技術的には、以下の課題に対して突破口が開かれている。

 ・資源評価・モデリング:鉱床の規模、品位、分布形態の定量的把握。

 ・深度精製技術:複数段階の化学洗浄や物理選別を組み合わせた高精度プロセス。

 ・標的不純物除去:微量の鉄・アルミなどの残留元素をナノレベルで除去する技術。

 これにより、国内でも量産化の前段階にあたるパイロットスケールでの生産体制が構築されつつある。

 4. 今後の政策的展開

 報道によれば、高純度石英は戦略的鉱物資源リスト(国家戦略性礦產資源名録)への登録が決定されており、国家的支援のもと、開発と利用に向けた重点投資が行われる。自然資源部鉱産資源保護監督司のHuang Xuexiong司長は、今後の政策展開として以下の方向性を示している。

 ・工学技術革新センターの設立:探査・精製・材料化技術の研究開発拠点を構築。

 ・鉱床生成理論の研究強化:地質形成過程の科学的解明に基づく探査効率の向上。

 ・全国規模の資源調査・評価:高純度石英の分布・埋蔵量を網羅的に把握する。

 ・重点探査プロジェクトの配置:産業化を見据えた資源確保のためのプロジェクト推進。

 これらの施策により、中国は高純度石英の供給安定性を高め、戦略的新興産業の原材料自給率を向上させることで、産業チェーンの安全保障を強化する方針である。

【要点】 
 
 1.高純度石英の定義と特徴

 ・高純度石英とは、純度99.995%以上(4N5等級)の二酸化ケイ素(SiO₂)を精製可能な岩石である。

 ・不純物(Fe、Al、Tiなど)および介在物(気泡、微細鉱物など)の含有量が極めて少ない。

 ・純度4N8(99.998%)に達するサンプルも確認されている。

 2.物理的・化学的特性

 ・高温耐性:1,000℃を超える環境下でも安定。

 ・耐腐食性:化学薬品やガスに対して安定性が高い。

 ・低熱膨張性:寸法変化が少なく、精密用途に適する。

 ・高絶縁性:電気的に安定で、半導体用途に必須。

 ・高透明性:紫外線から赤外線領域まで優れた光透過性を持つ。

 3.主な用途(戦略的新興産業)

 ・半導体製造(るつぼ、フォトマスク、エッチング装置部品)

 ・太陽光発電(高純度ガラス、反応容器など)

 ・光ファイバー(コア材料)

 ・精密光学機器(高性能レンズ、センサー等)

 4.中国国内の探査状況と成果

 ・東秦嶺(河南省中部)および新疆アルタイ地域で有望鉱床を発見。

 ・国家主導による戦略鉱物探査キャンペーンの成果である。

 ・多数の企業・研究機関が共同で探査・試験製造を実施。

 ・パイロットスケールで4N5等級の精製製品を安定的に生産。

 ・一部では4N8等級の製品も得られており、産業化の前段階にある。

 5.技術的ブレークスルー

 ・資源評価・モデリングに成功し、鉱床の定量的把握が可能に。

 ・深部精製技術や複合的除去プロセスの確立。

 ・微量不純物の標的除去技術(ナノレベル)を開発。

 6.政策・制度上の展開

 ・高純度石英は「戦略的鉱物資源リスト」に登録予定。

 ・国家主導で「工学技術革新センター」の設立を推進。

 ・鉱床生成理論や資源評価手法の研究を強化。

 ・全国規模の資源調査・評価プロジェクトを実施予定。

 ・重点探査地域の指定とリソース開発の加速を図る。

 7.期待される効果

 ・戦略産業の原材料自給率の向上。

 ・産業・供給チェーンの安全保障強化。

 ・国内製造業の高度化・独立性の確保。

 ・国際的な素材競争における地位の強化。

【引用・参照・底本】

China discovers new mineral species vital for strategic emerging sectors like semiconductors, photovoltaics GT 2025.04.10
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331829.shtml