ロシアがウクライナを完全かつ恒久的に制圧可能 ― 2025年01月18日 20:10
【概要】
ロバート・ケーガンが主張する内容に対して、反対の立場が真実であることを指摘する論点がいくつかある。ケーガンは、ロシアがウクライナを完全かつ恒久的に制圧することができると主張し、さらに米国がウクライナへの援助を強化しなければならないと訴えている。しかし、以下の3つの反論によって、その主張は根本的に間違っていることが明らかになる。
1. ロシアにはウクライナを恒久的に制圧する能力がない
ウクライナは地理的に広大な国であり、恒久的に制圧するためには莫大な軍事的資源が必要である。さらに、ウクライナの多くの市民が軍事経験を持ち、基本的な武器訓練を受けている。また、国全体にわたり武器が広がり、特に西部地域は極端な民族主義で知られている。ロシアがこれを制圧し続けるには、膨大な軍事的リソースが必要である。
もしロシアがそのような試みをすれば、アフガニスタンやイラクのような反乱が発生するリスクがある。特にウクライナの西部地域では、極端な民族主義が存在し、ロシアの軍隊が容易なターゲットとなるでしょう。この地域では反政府勢力が長い間根を下ろしており、ソ連時代からその活動は続いている。
したがって、ロシアがウクライナを制圧し続けることは、兵力と財政面でのコストがかかりすぎ、まさに「ロシアのベトナム」になる可能性がある。そのため、プーチン大統領は現実的な政府を作ることなしには、この目標を達成することはできない。
2. NATOの通常兵力がロシアの突破を阻止する可能性がある
ケーガンが主張するようなロシアと米国のブリンクスマンシップ(際どい対立)のシナリオは、非常に現実的である。ロシアが軍事的に突破した場合、NATOがウクライナの少なくともドニエプル川まで通常の軍事介入を行う可能性があるためである。
ドナルド・トランプ前大統領は、ウクライナ問題で第三次世界大戦を引き起こすことを避けたいと考えている一方で、歴史に“負けた”大統領として記録されるのを避けたいとも思っている。
そのため、仮にロシアがポーランドの南東部に軍を進駐させた場合、米国は簡単にヨーロッパから撤退することが難しくなる。このような状況では、トランプがNATOによる通常の介入を命じる可能性があり、その結果として、プーチンがウクライナの極端な民族主義の西部地域を制圧するリスクを負うことになるだろう。このような状況では、プーチンはウクライナ全体を占領する代わりに、戦争の終結のための大きな交渉に応じる可能性がある。
3. プーチンは妥協を求めるが、それはロシアの主要な目的を達成するため
プーチン大統領は、対話による妥協を求めている。ただし、その妥協は、ロシアがウクライナにおいて主張している重要な目標を満たすものでなければならない。その主な目的は、ウクライナの中立地位の回復、軍事的な非武装化、ナチスの清掃、そしてロシアに併合された地域の事実上の認知である。
これらの目標は、プーチンにとって重要であり、彼はその実現に注力している。そのため、ある程度の妥協の余地はあるが、詳細において柔軟な対応を取ることも可能である。しかし、ウクライナの新たな事実を受け入れる必要があり、例えばNATOとの連携強化が進んでいるため、プーチンは完璧な終結を追求するよりも、現実を受け入れる可能性もある。
最近のプーチンの行動は、単にウクライナ全体を占領し続けるつもりではなく、むしろ米国に対し一部の主な目標を譲歩させるために“エスカレーションからの脱却”を試みているだけである。
トランプが第三次世界大戦をリスクにさらすことを避けると知っているため、プーチンがウクライナの一部を放棄する代わりに、交渉に応じる可能性は非常に高いと考えられる。
これらの反論から分かる通り、ケーガンの主張は間違っており、ロシアがウクライナを恒久的に制圧することは不可能であること、米国とロシアの緊張状態が現実的であること、そしてプーチンが妥協を探る意思を持つが、それは条件付きであることが示されている。ケーガンの主張は、ウクライナへの援助を正当化するための誤った前提に基づいたものであり、その影響を受ける米国のエリート層に向けて誤解を招く可能性があるため、注意が必要である。
【詳細】
ロバート・ケーガンが主張する内容に対して、反対の立場からさらに詳しく説明する。ケーガンは、ロシアがウクライナを完全かつ恒久的に制圧しようとするので、米国がウクライナへの援助を強化しなければならないと警告している。しかし、その主張には根本的な誤りがある。以下、ケーガンの主張を詳しく掘り下げて、それに対する反論を詳述する。
1. ロシアにはウクライナを恒久的に制圧する能力がない
ケーガンの主張に対して、ロシアがウクライナ全土を永続的に制圧することは現実的ではない。ウクライナは広大な国土を持ち、長期的に制圧するには大量の軍事資源が必要である。さらに、ウクライナの市民は多くが軍事経験を持ち、武器も広く普及しています。そのため、ロシアが長期間にわたりウクライナを制圧し続けることは非常に困難である。
また、ウクライナ西部地域は極端な民族主義的地域であり、ナチス思想に対する根強い嫌悪感が広がっている。この地域でロシアの軍隊が活動すれば、反乱勢力からの攻撃を受けやすくなるため、非常に困難な状況に直面する。この地域では、既に長年反政府組織が存在し、その活動は根深く、特にソ連時代から反政府運動が続いている。そのため、ロシアがウクライナを永続的に制圧し続けることは、反政府勢力の攻撃によってますます困難になるだけである。
さらに、ウクライナを制圧する試みは、アフガニスタンやイラクでの反乱と同様に、ロシアにとって致命的なコストを伴うものとなり得る。このような状況は、ロシアにとって「ベトナム戦争」のようなものになる可能性があるため、プーチン大統領もそのリスクを回避しようとしている。
2. NATOの通常兵力がロシアの突破を阻止する可能性がある
ケーガンの主張に対し、ロシアが軍事的にウクライナを制圧しようとする場合、NATOが通常の軍事力で介入するシナリオも現実的である。特に、ロシアが軍事的にドニエプル川を突破した場合、NATOがその進行を止めるために通常の軍事介入を行う可能性がある。
ドナルド・トランプ前大統領は、ウクライナ問題で第三次世界大戦のリスクにさらすことを避けたいと考えている一方で、歴史に“負けた”大統領として記録されることを避けたいと考えている。そのため、トランプはNATOによる通常の介入を命じる可能性があり、またプーチンがウクライナの一部を放棄する代わりに、交渉に応じる可能性もある。
もしロシアがポーランド南東部に進行し、NATOがウクライナに介入する状況になれば、米国は簡単にヨーロッパから撤退することができなくなる。このような状況では、トランプはウクライナをめぐる危機に介入し、NATOによる通常兵力でロシアの突破を防ぐ可能性がある。そのため、ロシアと米国の間でのブリンクスマンシップ(際どい対立)は現実的であり、プーチンにとっても難しい選択を迫ることになる。
3. プーチンは妥協を求めるが、それはロシアの主要な目標を達成するため
ケーガンの主張に対して、プーチン大統領は妥協を探る意思を持っている。ただし、その妥協はロシアの主要な目的を満たすものでなければならない。プーチンが最も重要視する目標は、ウクライナの中立地位の回復、軍事的な非武装化、ナチスの清掃、そしてロシアに併合された地域の事実上の認知である。
プーチンはこれらの目標を達成するために、交渉に応じる可能性がある。特に、ウクライナの西部地域では民族主義が強く、ロシアの占領軍に対する抵抗も強いことを知っており、現実的に制圧し続けることは困難である。そのため、プーチンは現実的な選択肢として、交渉で自国の目標をある程度達成する方法を模索している。
最近のプーチンの行動は、戦争を継続してポーランド南東部にロシア軍を進駐させることを意図したものではなく、むしろ米国に対し一部の主な目標を譲歩させるための戦術であると考えられる。このような状況では、プーチンも交渉を行い、戦争を終結させるために妥協する可能性がある。
総括
以上のように、ケーガンの主張は現実的ではなく、ロシアがウクライナを恒久的に制圧することは困難であり、米国とロシアの間でのブリンクスマンシップは現実的であること、そしてプーチンも妥協の可能性を持っていることが指摘される。ケーガンが行う誤った前提に基づいた議論により、米国のエリート層がウクライナへの誤った支援を促進される恐れがあるため、注意が必要である。
【要点】
ロシアにはウクライナを恒久的に制圧する能力がない
・ウクライナは広大な国土を持ち、長期的に制圧するためには大量の軍事資源が必要。
・ウクライナ西部地域は民族主義が強く、抵抗運動が根深い。
長期間の制圧試みは、反政府勢力の攻撃を受けやすく、アフガニスタンやイラクのような反乱に直面する可能性がある。
・プーチンはリスクを回避し、交渉による解決を目指す。
NATOの通常兵力がロシアの突破を阻止する可能性がある
・ロシアが軍事的にドニエプル川を突破した場合、NATOが介入するシナリオが現実的。
・トランプ前大統領は第三次世界大戦をリスクにすることを避けつつ、ウクライナを失うことも回避したいと考えている。
・トランプはNATOによる通常兵力介入を支持する可能性があり、ロシアの突破を阻止するために動く可能性がある。
プーチンは妥協を求めるが、それはロシアの主要な目標を達成するため
・プーチンはウクライナにおけるロシアの主要な目標を達成するために、交渉に応じる意向がある。
・主要な目標には中立地位の回復、非武装化、ナチス清掃、ロシアに併合された地域の事実上の認知が含まれる。
・最近のプーチンの行動は、交渉による主な目標の達成を目指すものであり、戦争を継続させるつもりはない。
・妥協を通じて戦争を終結させる道もあると考えている。
【参考】
☞ ロバート・ケーガント(Robert Kagan)
・アメリカの著名な歴史家・国際政治学者であり、ネオコン(新保守主義)の代表的な人物の1人。
・1996年に『大国の興亡』(原題:Of Paradise and Power)を出版し、アメリカとヨーロッパの安全保障政策における違いを指摘。その中でアメリカの役割や国際政治における価値観の違いを論じたことで知られる。
・主にアメリカの対外政策、特に中東・ロシア・ヨーロッパにおけるアメリカの影響力、NATOの重要性、そして民主主義の普及に対する強い信念を持つ。
・ウクライナ危機やロシアの行動に対する強硬な立場を取り、対ロシア政策の強化をアメリカに呼びかけている。
ケーガントは、特にアメリカの対ロシア政策やNATOの重要性、民主主義の普及をめぐる議論で影響力を持つ人物である。ウクライナ情勢やロシアとの対立においても、アメリカが積極的な介入をすべきだと主張している。
また、彼の主張に基づいてアメリカの国内外で議論が巻き起こることが多い。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Three Arguments Tearing Apart Robert Kagan’s Claims About Trump, Ukraine, & Putin Andrew Korybko's Newsletter 2025.01.15
https://korybko.substack.com/p/three-arguments-tearing-apart-robert?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=154868908&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ロバート・ケーガンが主張する内容に対して、反対の立場が真実であることを指摘する論点がいくつかある。ケーガンは、ロシアがウクライナを完全かつ恒久的に制圧することができると主張し、さらに米国がウクライナへの援助を強化しなければならないと訴えている。しかし、以下の3つの反論によって、その主張は根本的に間違っていることが明らかになる。
1. ロシアにはウクライナを恒久的に制圧する能力がない
ウクライナは地理的に広大な国であり、恒久的に制圧するためには莫大な軍事的資源が必要である。さらに、ウクライナの多くの市民が軍事経験を持ち、基本的な武器訓練を受けている。また、国全体にわたり武器が広がり、特に西部地域は極端な民族主義で知られている。ロシアがこれを制圧し続けるには、膨大な軍事的リソースが必要である。
もしロシアがそのような試みをすれば、アフガニスタンやイラクのような反乱が発生するリスクがある。特にウクライナの西部地域では、極端な民族主義が存在し、ロシアの軍隊が容易なターゲットとなるでしょう。この地域では反政府勢力が長い間根を下ろしており、ソ連時代からその活動は続いている。
したがって、ロシアがウクライナを制圧し続けることは、兵力と財政面でのコストがかかりすぎ、まさに「ロシアのベトナム」になる可能性がある。そのため、プーチン大統領は現実的な政府を作ることなしには、この目標を達成することはできない。
2. NATOの通常兵力がロシアの突破を阻止する可能性がある
ケーガンが主張するようなロシアと米国のブリンクスマンシップ(際どい対立)のシナリオは、非常に現実的である。ロシアが軍事的に突破した場合、NATOがウクライナの少なくともドニエプル川まで通常の軍事介入を行う可能性があるためである。
ドナルド・トランプ前大統領は、ウクライナ問題で第三次世界大戦を引き起こすことを避けたいと考えている一方で、歴史に“負けた”大統領として記録されるのを避けたいとも思っている。
そのため、仮にロシアがポーランドの南東部に軍を進駐させた場合、米国は簡単にヨーロッパから撤退することが難しくなる。このような状況では、トランプがNATOによる通常の介入を命じる可能性があり、その結果として、プーチンがウクライナの極端な民族主義の西部地域を制圧するリスクを負うことになるだろう。このような状況では、プーチンはウクライナ全体を占領する代わりに、戦争の終結のための大きな交渉に応じる可能性がある。
3. プーチンは妥協を求めるが、それはロシアの主要な目的を達成するため
プーチン大統領は、対話による妥協を求めている。ただし、その妥協は、ロシアがウクライナにおいて主張している重要な目標を満たすものでなければならない。その主な目的は、ウクライナの中立地位の回復、軍事的な非武装化、ナチスの清掃、そしてロシアに併合された地域の事実上の認知である。
これらの目標は、プーチンにとって重要であり、彼はその実現に注力している。そのため、ある程度の妥協の余地はあるが、詳細において柔軟な対応を取ることも可能である。しかし、ウクライナの新たな事実を受け入れる必要があり、例えばNATOとの連携強化が進んでいるため、プーチンは完璧な終結を追求するよりも、現実を受け入れる可能性もある。
最近のプーチンの行動は、単にウクライナ全体を占領し続けるつもりではなく、むしろ米国に対し一部の主な目標を譲歩させるために“エスカレーションからの脱却”を試みているだけである。
トランプが第三次世界大戦をリスクにさらすことを避けると知っているため、プーチンがウクライナの一部を放棄する代わりに、交渉に応じる可能性は非常に高いと考えられる。
これらの反論から分かる通り、ケーガンの主張は間違っており、ロシアがウクライナを恒久的に制圧することは不可能であること、米国とロシアの緊張状態が現実的であること、そしてプーチンが妥協を探る意思を持つが、それは条件付きであることが示されている。ケーガンの主張は、ウクライナへの援助を正当化するための誤った前提に基づいたものであり、その影響を受ける米国のエリート層に向けて誤解を招く可能性があるため、注意が必要である。
【詳細】
ロバート・ケーガンが主張する内容に対して、反対の立場からさらに詳しく説明する。ケーガンは、ロシアがウクライナを完全かつ恒久的に制圧しようとするので、米国がウクライナへの援助を強化しなければならないと警告している。しかし、その主張には根本的な誤りがある。以下、ケーガンの主張を詳しく掘り下げて、それに対する反論を詳述する。
1. ロシアにはウクライナを恒久的に制圧する能力がない
ケーガンの主張に対して、ロシアがウクライナ全土を永続的に制圧することは現実的ではない。ウクライナは広大な国土を持ち、長期的に制圧するには大量の軍事資源が必要である。さらに、ウクライナの市民は多くが軍事経験を持ち、武器も広く普及しています。そのため、ロシアが長期間にわたりウクライナを制圧し続けることは非常に困難である。
また、ウクライナ西部地域は極端な民族主義的地域であり、ナチス思想に対する根強い嫌悪感が広がっている。この地域でロシアの軍隊が活動すれば、反乱勢力からの攻撃を受けやすくなるため、非常に困難な状況に直面する。この地域では、既に長年反政府組織が存在し、その活動は根深く、特にソ連時代から反政府運動が続いている。そのため、ロシアがウクライナを永続的に制圧し続けることは、反政府勢力の攻撃によってますます困難になるだけである。
さらに、ウクライナを制圧する試みは、アフガニスタンやイラクでの反乱と同様に、ロシアにとって致命的なコストを伴うものとなり得る。このような状況は、ロシアにとって「ベトナム戦争」のようなものになる可能性があるため、プーチン大統領もそのリスクを回避しようとしている。
2. NATOの通常兵力がロシアの突破を阻止する可能性がある
ケーガンの主張に対し、ロシアが軍事的にウクライナを制圧しようとする場合、NATOが通常の軍事力で介入するシナリオも現実的である。特に、ロシアが軍事的にドニエプル川を突破した場合、NATOがその進行を止めるために通常の軍事介入を行う可能性がある。
ドナルド・トランプ前大統領は、ウクライナ問題で第三次世界大戦のリスクにさらすことを避けたいと考えている一方で、歴史に“負けた”大統領として記録されることを避けたいと考えている。そのため、トランプはNATOによる通常の介入を命じる可能性があり、またプーチンがウクライナの一部を放棄する代わりに、交渉に応じる可能性もある。
もしロシアがポーランド南東部に進行し、NATOがウクライナに介入する状況になれば、米国は簡単にヨーロッパから撤退することができなくなる。このような状況では、トランプはウクライナをめぐる危機に介入し、NATOによる通常兵力でロシアの突破を防ぐ可能性がある。そのため、ロシアと米国の間でのブリンクスマンシップ(際どい対立)は現実的であり、プーチンにとっても難しい選択を迫ることになる。
3. プーチンは妥協を求めるが、それはロシアの主要な目標を達成するため
ケーガンの主張に対して、プーチン大統領は妥協を探る意思を持っている。ただし、その妥協はロシアの主要な目的を満たすものでなければならない。プーチンが最も重要視する目標は、ウクライナの中立地位の回復、軍事的な非武装化、ナチスの清掃、そしてロシアに併合された地域の事実上の認知である。
プーチンはこれらの目標を達成するために、交渉に応じる可能性がある。特に、ウクライナの西部地域では民族主義が強く、ロシアの占領軍に対する抵抗も強いことを知っており、現実的に制圧し続けることは困難である。そのため、プーチンは現実的な選択肢として、交渉で自国の目標をある程度達成する方法を模索している。
最近のプーチンの行動は、戦争を継続してポーランド南東部にロシア軍を進駐させることを意図したものではなく、むしろ米国に対し一部の主な目標を譲歩させるための戦術であると考えられる。このような状況では、プーチンも交渉を行い、戦争を終結させるために妥協する可能性がある。
総括
以上のように、ケーガンの主張は現実的ではなく、ロシアがウクライナを恒久的に制圧することは困難であり、米国とロシアの間でのブリンクスマンシップは現実的であること、そしてプーチンも妥協の可能性を持っていることが指摘される。ケーガンが行う誤った前提に基づいた議論により、米国のエリート層がウクライナへの誤った支援を促進される恐れがあるため、注意が必要である。
【要点】
ロシアにはウクライナを恒久的に制圧する能力がない
・ウクライナは広大な国土を持ち、長期的に制圧するためには大量の軍事資源が必要。
・ウクライナ西部地域は民族主義が強く、抵抗運動が根深い。
長期間の制圧試みは、反政府勢力の攻撃を受けやすく、アフガニスタンやイラクのような反乱に直面する可能性がある。
・プーチンはリスクを回避し、交渉による解決を目指す。
NATOの通常兵力がロシアの突破を阻止する可能性がある
・ロシアが軍事的にドニエプル川を突破した場合、NATOが介入するシナリオが現実的。
・トランプ前大統領は第三次世界大戦をリスクにすることを避けつつ、ウクライナを失うことも回避したいと考えている。
・トランプはNATOによる通常兵力介入を支持する可能性があり、ロシアの突破を阻止するために動く可能性がある。
プーチンは妥協を求めるが、それはロシアの主要な目標を達成するため
・プーチンはウクライナにおけるロシアの主要な目標を達成するために、交渉に応じる意向がある。
・主要な目標には中立地位の回復、非武装化、ナチス清掃、ロシアに併合された地域の事実上の認知が含まれる。
・最近のプーチンの行動は、交渉による主な目標の達成を目指すものであり、戦争を継続させるつもりはない。
・妥協を通じて戦争を終結させる道もあると考えている。
【参考】
☞ ロバート・ケーガント(Robert Kagan)
・アメリカの著名な歴史家・国際政治学者であり、ネオコン(新保守主義)の代表的な人物の1人。
・1996年に『大国の興亡』(原題:Of Paradise and Power)を出版し、アメリカとヨーロッパの安全保障政策における違いを指摘。その中でアメリカの役割や国際政治における価値観の違いを論じたことで知られる。
・主にアメリカの対外政策、特に中東・ロシア・ヨーロッパにおけるアメリカの影響力、NATOの重要性、そして民主主義の普及に対する強い信念を持つ。
・ウクライナ危機やロシアの行動に対する強硬な立場を取り、対ロシア政策の強化をアメリカに呼びかけている。
ケーガントは、特にアメリカの対ロシア政策やNATOの重要性、民主主義の普及をめぐる議論で影響力を持つ人物である。ウクライナ情勢やロシアとの対立においても、アメリカが積極的な介入をすべきだと主張している。
また、彼の主張に基づいてアメリカの国内外で議論が巻き起こることが多い。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Three Arguments Tearing Apart Robert Kagan’s Claims About Trump, Ukraine, & Putin Andrew Korybko's Newsletter 2025.01.15
https://korybko.substack.com/p/three-arguments-tearing-apart-robert?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=154868908&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email