“再び騙されない”というプーチン大統領の姿勢を示す2025年04月14日 19:45

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【概要】

 ロシアが「エネルギー停戦」を延長すべき理由(三点)

 1. 米国との外交的前向きな動きを維持するため

 現在、米国との協議は概ね順調であり、ロシアはこの外交的ダイナミクスを維持することで、関係正常化および代理戦争の終結に向けた具体的進展を目指すことが可能となる。その観点から、プーチン大統領はウクライナ側の違反が依然として管理可能な水準にあると判断し、忍耐と自制を選択する可能性がある。このような対応は、軍事的手段のみに頼るよりも外交によって多くの成果を得られる可能性を高める。

 2. ロシアの意図に関するネオコンの主張を打ち消すため

 米国の一部強硬派およびそのメディア同盟者は、ロシアが信用ならない存在であると主張している。もしロシアが停戦を延長しなければ、こうした主張に表面的な正当性を与える可能性がある。その結果、トランプ大統領に対する圧力が強まり、協議が頓挫するおそれがある。これにより、対ロシア強硬路線を主張するネオコン勢力の影響力が高まり、さらなる緊張の高まりに繋がる懸念がある。

 3. 米国にウクライナへの圧力をかけさせるための誘因となる

 現在のロシアと米国の協議は、戦略資源協力も含まれており、詳細な交渉が必要とされる分野である。そのため、ウクライナ側の違反にもかかわらず、ロシアが外交的安定を維持すれば、最終的に包括的な合意に至る可能性が高まる。そして、もし合意が成立すれば、米国がウクライナに対して停戦遵守や和平に向けたロシアの要求への譲歩を促す誘因が強まる可能性がある。

 ロシアが「エネルギー停戦」を延長すべきでない理由(三点)

 1. プーチン大統領が再び「鼻先を引き回される」ことはないと示すため

 ウクライナが停戦を守っていないことを理由に延長を拒否することで、プーチン大統領が他国に操られるような存在ではないと米国側に示すことができる。これは、かつてドイツのメルケル元首相によるミンスク合意を巡る“操作”に対する言及とも重なる。このような対応は、プーチン大統領の個人的威信を保ち、トランプ大統領に対してより一層の敬意を抱かせることで、将来的な合意履行のためにウクライナに圧力をかける可能性を高める狙いがある。

 2. より有利な条件で「エスカレーションしてデスカレーションする」ため

 ロシアがウクライナのエネルギーインフラに対する攻撃を再開し、とりわけ中距離極超音速ミサイル「オレシュニクス」のような新兵器を用いて劇的な攻勢に出ることで、有利な条件を引き出すための「エスカレーションしてデスカレーションする」戦略を取る可能性がある。これは、バイデン政権がかつてロシアに用いた手法を米国に対して逆用する形になるが、トランプ大統領の性格や思考回路が大きく異なることから、期待した効果が得られる保証はない。

 3. 米国の「弱体化」を決定的に突く好機と見なす場合

 過去数ヶ月間で、トランプ大統領が「アジアへの再軸足」を強調したことにより、米欧関係に亀裂が生じ、さらに彼のグローバルな貿易戦争が進行するなかで、米国の国際的影響力は低下しているとする見方がある。プーチン大統領がこのような米国の弱体化を機会と捉えれば、ウクライナでの軍事的圧力を最大限に高め、西側が報復の手段を取りにくい状況を作り出せると考えるかもしれない。ただし、これは米国が必ずしも後退するとは限らないという前提に立っており、不確実性を含む。

 以上のように、「エネルギー停戦」を延長する場合としない場合のいずれにおいても、重大なリスクが存在する。延長すれば、プーチン大統領が再び他国の思惑に引き込まれるおそれがあり、延長を拒否すれば米ロ間の深刻な対立に発展する可能性がある。ただし、プーチン大統領は本質的に慎重でエスカレーションを避ける傾向にあることから、強硬派の意見がなければ、現行の「一方的な停戦措置」を維持する方向に傾く可能性があるとされている。

【詳細】

 クレムリン報道官ドミトリー・ペスコフ氏によれば、ロシアがウクライナのエネルギーインフラに対する攻撃を30日間停止するモラトリアム(休戦措置)を延長するかどうかについては、プーチン大統領が最終的に決定するという。またペスコフ氏は、ウクライナ側がこのモラトリアムを実質的に遵守していないと述べた。この主張には根拠があるものの、アメリカがウクライナに対して協定遵守の圧力をかけていない点が指摘されている。

 ロシアが“エネルギー休戦”を延長する利点(賛成の論点)

 1. 米国との外交的進展を維持するため

 ロシアとアメリカの対話は概ね良好に進んでいるため、ロシアはこうした外交的な前向きな雰囲気を維持することを優先し、対立の激化を避ける可能性がある。プーチン大統領としては、ウクライナ側がモラトリアムを破っているにもかかわらず、被害が限定的である以上、外交的手段を通じてより多くの目的を達成できると判断し、忍耐と自制を選ぶことが合理的とされる。

 2. ネオコン勢力による“ロシア不信”の主張を否定するため

 米国の一部タカ派(ネオコン)やそれに追随するメディアは、ロシアが信用できない国家であると主張している。仮にプーチン大統領がモラトリアムを延長しなければ、こうした主張に一理あるかのような印象を与えてしまい、トランプ大統領がロシアとの対話を打ち切るよう圧力を受ける可能性がある。その結果、米政権内でネオコン勢力の影響力が強まり、対ロ関係が再び悪化する恐れがある。

 3. 米国にウクライナへの圧力行使を促す戦術

 ロシアと米国の交渉には、戦略的資源協力など時間を要する議題が含まれている。ロシアがモラトリアムを一方的に遵守し続ければ、米国はロシアとの合意形成に向けて前向きになり、結果的にウクライナに対してもモラトリアムの遵守や停戦合意に向けた譲歩を強いるようになる可能性がある。これは長期的な成果を見据えた外交戦略である。

 モラトリアムを延長しない利点(反対の論点)

 1. プーチン大統領が“再び騙されない”ことを示す

 ウクライナ側がモラトリアムを守らなかったにもかかわらず、ロシアがそれを延長することは、かつてメルケル独首相によって「ミンスク合意」で騙されたとするプーチン大統領の苦い経験を繰り返すことになりかねない。延長を拒否することにより、プーチン大統領は「これ以上操られない」という強い姿勢を示し、トランプ大統領に対しても“対等なリーダー”としての評価を得る可能性がある。

 2. “エスカレートしてデエスカレート”をロシアに有利な条件で実施

 ロシアがエネルギーインフラへの攻撃を再開し、たとえば中距離極超音速ミサイル「オレシュニク」などを用いた大規模攻撃を行えば、ウクライナおよびその支援国に対して軍事的圧力を加えることで、より有利な停戦条件を引き出すという“エスカレートしてデエスカレート”戦略が成立する可能性がある。ただし、これはバイデン政権下で一定の効果を持った戦術であるが、トランプ政権において同様に通用するかは不透明である。

 3. 米国の“弱体化”を徹底的に突く機会と見なす

 プーチン大統領の視点から見れば、トランプ大統領の“アジア回帰”政策、欧州との関係悪化、グローバルな通商戦争などにより、米国の国際的影響力が減退しているように見える可能性がある。これを好機と捉え、ウクライナ戦線において一気に攻勢を強めれば、米国が反撃せずに事実上紛争から撤退するかもしれないという見立てもある。ただし、これは保証されているわけではない。

 結論

 いずれの選択肢にも重大なリスクが伴う。モラトリアムを延長すれば、トランプ政権によりプーチン大統領が再び“操作”される可能性がある。一方で、延長を拒否すれば、ロシア・米国間で深刻な緊張が再燃する可能性がある。ただし、プーチン大統領は基本的に慎重で、エスカレーションを避ける傾向があるため、ウクライナ側の違反を容認しつつも、現状の“片務的休戦”を継続する可能性が高いとも考えられている。ただし、国内の“強硬派”がその判断を覆させる可能性も排除されていない。

【要点】 

 ロシアが「エネルギー休戦」を延長する賛成の理由

 1.米国との対話を維持するため

 ・現在、ロシアと米国の外交対話は一定の前進を見せており、休戦の継続はこの前向きな流れを維持する助けとなる。

 ・プーチン大統領は、ウクライナ側の違反が限定的であると見なすならば、外交ルートを優先する可能性がある。

 2.ネオコンによる「ロシア不信」の主張を無効化するため

 ・モラトリアムを延長すれば、米国内の反ロシア的勢力(ネオコン)に対し、「ロシアは約束を守る国家」であるとの印象を与える。
 ・これは、トランプ大統領のロシアとの対話継続を政治的に支える材料ともなりうる。

 3.米国によるウクライナへの圧力誘導

 ・ロシアが一方的に休戦を継続すれば、米国は信頼関係を維持するためにウクライナに圧力をかける可能性がある。
 
 ・結果的に、米国主導の形でウクライナが休戦遵守や停戦に向かう展開もありうる。

 4.ロシアがモラトリアムを延長しない反対の理由

 ・“再び騙されない”というプーチン大統領の姿勢を示すため

 ・過去にミンスク合意で西側に欺かれたとされる経験から、今回は同様の過ちを繰り返さないという意思表示になる。

 ・これはトランプ大統領に対し、対等な立場のリーダーであるという印象を与える効果もある。

 5. 軍事的エスカレーションを通じた交渉有利化

 ・“エスカレートしてデエスカレート”の戦略により、攻撃を通じて相手に譲歩を強いるというロシアの常套戦術が実行可能である。

 ・新型兵器の使用(例:極超音速ミサイル「オレシュニク」)による戦術的優位が期待される。

 6.米国の戦略的弱体化を突く機会と見なす

 ・ロシア側は、米国がアジア重視に傾き、欧州・ウクライナへの関与が弱まると分析している可能性がある。

 ・その場合、ウクライナへの大規模攻勢を行えば、米国が対応せず事実上撤退する可能性があるとの見方も存在する。
 
 7.結論(中立的立場からの分析)

 ・モラトリアムを延長すれば、米国との信頼関係維持や外交的進展が期待されるが、強硬派から「軟弱」と見なされるリスクがある。

 ・延長を拒否すれば、軍事的・政治的圧力は加えられるが、ロシアと米国の対話が再び破綻する可能性がある。

 ・現状では、プーチン大統領が慎重に対応しており、ウクライナの違反が大規模でない限り、モラトリアムの維持を選ぶ可能性が高いと見られる。

 ・ただし、ロシア国内の強硬派がモラトリアム終了を要求すれば、政権判断が変わる可能性も排除されない。

【参考】

 ☞ エネルギー停戦

 「エネルギー停戦(energy ceasefire)」という表現は、正式な条約や国際的に合意された用語ではなく、分析者やメディアが便宜的に用いている名称であると見られる。具体的には、ロシアがウクライナのエネルギーインフラ(発電所、変電所、送電線など)に対する攻撃を一時的に停止するという一方的な措置を指しており、以下のような特徴を持つ。

 1.名称の性質と意味

 非公式かつ事実上の停戦

 ・この「エネルギー停戦」は、戦場全体での停戦ではなく、限定的にエネルギー関連施設のみを対象とする。
 ・国際的な監視機構や合意文書は存在せず、ロシア側の自主的モラトリアム(攻撃停止)として実施されている。

 呼称の意図

 ・「停戦(ceasefire)」という語を用いることで、この措置が外交的配慮に基づく戦略的判断であることを強調している。
 ・また、「エネルギーインフラを標的にしない」ことが人道的配慮とも解釈されうるため、国際社会に対するイメージ戦略の一環ともなっている。

 2.使用例と位置づけ

 記事内での文脈

 ・この記事では「energy ceasefire」と表現されているが、これは米露間の非公式合意や暗黙の了解に基づいていると推測される。
 ・プレスコフ報道官も「実質的にはウクライナ側によって遵守されていない」と述べており、この「エネルギー停戦」は双方向的な停戦ではないことが明言されている。

 他の用語との違い

 ・全面停戦(ceasefire)や一時停戦(truce)とは異なり、対象領域(energy infrastructure)を限定している点で特異である。
 ・軍事的には、戦略目標の柔軟な制御を可能にする限定的抑制措置に近い。

 したがって、「エネルギー停戦」という名称は、軍事・外交両面における戦略的意味合いを含む政治的・分析的な表現であり、公式な国際法上の停戦協定を意味するものではない。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Three Arguments For & Against Russia Extending Its “Energy Ceasefire” With Ukraine Andrew Korybko's Newsletter Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.14
https://korybko.substack.com/p/three-arguments-for-and-against-russia?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=161289338&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

中国は、他国が作った脚本に従って動く存在ではない2025年04月14日 20:12

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【概要】

 米中関係に対する中国側の見解を示している。論旨は、米国がいまだに中国を対等な国として認識せず、一方的な優越意識に基づいて対応していることに対する批判と、中国側の立場の明確化にある。

 米国の一部政治家が現在も「覇権的支配」の幻想に囚われていると指摘している。彼らは「力」や「強さ」といった概念を口にしながら、世界の力関係の実際の変化を無視しているという。中国は、他国が作った脚本に従って動く存在ではなく、自らの国情に基づいた現代化の道を歩んでいると強調している。これを理解するには、米国のイデオロギー的フィルターを外して中国の現実を直視する必要があると主張している。

 また、米国は長年にわたり、自らが定めたルールによって他国を評価し、「価値」という名の下に力を正当化し、交渉における真の平等を欠いたまま制裁を利用してきたと述べている。こうした「覇権の慣性」により、米国は現在の世界を正確に認識することが困難になっているという。

 19世紀的な西洋の「大国間競争」の視点で21世紀の米中関係を理解しようとするのは、「馬車のエンジンで高速鉄道を動かそうとするようなものであり、破綻する運命にある」との比喩が用いられている。

 さらに、米国の対中戦略は「力」に対する心理的矛盾を反映しているとする。一方で力を誇示しつつ、他方ではその力が衰えたことを嘆き、「再び偉大な国になる」と主張している。この矛盾は、覇権の衰退に対する不安として表れている。米国は競技場で審判を装いながらプレーヤーとしても参加し、試合が不利になるとルールよりもボールを奪うことに躍起になっていると描写している。

 アラスカでの米中会談において、当時の外交担当トップであった楊潔篪が「米国には力の立場から中国と話す資格はない」と述べたことが紹介されており、これは感情的な発言ではなく、国際政治における力の均衡変化を示す現実の反映であると位置付けられている。

 米中関係の今後は、米国が「兄貴分」的な態度を維持できるか否かではなく、中国という古代文明の現代的再興を遂げた国家を対等に見ることができるかにかかっていると論じられている。

 この文脈において、グローバル化の進展が米中関係の鍵とされている。両国はすでに経済・産業において深く結びついており、無理に「デカップリング(切り離し)」を進めれば、双方に深刻な損害が生じると警告している。解決の道は「対等な対話」にしかなく、「相互尊重」は単なる外交辞令ではなく、生存の基本原則であると断言されている。

 最後に、中国の対米姿勢は明確であり、「レッドラインを引き、ルールを定める」ことが基本的態度とされている。これは成熟した関係に必要な姿勢であり、米国が力の立場から物事を押しつける姿勢を改めない限り、両国間の緊張は深まるばかりであると結論づけている。

 国家間の関係は人間関係に例えられ、幻想的な強さに頼るのではなく、誠実な理解と対等な対話によって共通の基盤を築くことが必要であると述べられている。

【詳細】

 米中関係に対する米側の姿勢への批判

 冒頭では、米国の対中政策に関する報道が増加するなかで、一部の米国政治家が依然として「覇権的支配」という幻想にとらわれているとの指摘がなされている。すなわち、彼らは「力」や「強さ」について語りながら、実際に国際社会で進行している力関係の変化を無視している、という主張である。

 この段階で提示される論点は、現代の国際秩序はすでに多極化しつつあり、米国が独自に作り上げた一国支配の論理では説明できないというものである。

 中国の現実に対する再評価の必要性

 続いて、中国は「謎めいた存在」でも「脅威」でもなく、他者が用意した設計図に従って動くような国ではないと述べられている。つまり、米国が抱くような「予測不可能な脅威国家」というイメージは現実を反映しておらず、それは米国のイデオロギー的な偏見に基づくものであると指摘している。

 ここでの主張は、真に中国の力を理解するには、イデオロギーのフィルターを取り除き、中国の国民が自らの道を模索して築きつつある「中国式現代化」を客観的に見る必要があるという点にある。

 米国の外交手法の批判とその歴史的背景

 さらに、米国が長年にわたり、他国との関係において自国の定めた「ルール」に基づき、形式上の「価値」を振りかざしながら、実際には力に基づいて交渉を支配してきたと論じている。このような手法では真の平等は成立せず、制裁の濫用こそがそれを象徴しているとされている。

 このような姿勢を「覇権の惰性」と表現し、結果として米国が世界の現実を正確に見通す能力を損なっていると分析している。

 歴史観の時代錯誤性への指摘

 比喩的に、米国が現在の中国を「19世紀の西洋的な大国間競争」の観点から理解しようとすることを、「馬車のエンジンで高速鉄道を動かそうとする」試みに例えている。ここでの主張は、時代錯誤な思考では現代の複雑な国際関係を捉えることは不可能であり、そのままでは政策が破綻に向かうという警告である。

 米国の「力」に対する心理的矛盾

 次に、米国の対中戦略は「力」に関する深い心理的な矛盾を反映していると論じられる。一方では、依然として世界最強であるかのように「棒(スティック)」を振りかざし、他方では「米国の力は昔ほどではない」として、再び偉大になる必要があると訴えている。この二重性は、米国が自らの覇権の衰退に直面しているという内的葛藤を表しているとされる。

 例として、米国が「競技の審判」でありながら「プレイヤー」でもあろうとするという構図が提示されている。試合が不利になるにつれ、ルールを守ろうとするのではなく、ゲームそのものを支配しようとするようになるという観察である。

 楊潔篪発言の再評価と国際政治の現実

 2021年アラスカで行われた米中高官会談において、当時の中国外交トップ・楊潔篪が「米国には力の立場から中国と話す資格はない」と述べた発言が引用される。この発言は、しばしば感情的・対立的な言辞として解釈されがちであるが、「国際政治の力の均衡が変化しているという現実を語ったもの」として評価されている。

 中国を「対等な存在」として見ることの重要性

 中国は、単なる「新興国」ではなく、過去40年の間にグローバル化を再構成してきた文明国家である。米中関係の未来は、米国がこのような中国を「上から目線」で見ることをやめ、「対等なパートナー」として捉えられるかどうかにかかっているとされる。

 グローバル化と「デカップリング」の限界

 米中関係の本質的構造は、すでに深く経済的・技術的に結びついており、これを一方的に「切り離す(デカップリング)」ことは、双方に大きな損害をもたらすだけであるとされる。このような現実のなかでは、力による支配ではなく、「対等な対話」こそが唯一の解決手段であるという立場が表明されている。

 「相互尊重」は単なる美辞麗句ではなく、両国が共に存続し、世界と共に歩むための最低条件であるという見解が示されている。

 現在の中国の対米姿勢とその意味

 中国の米国に対する姿勢はすでに明確であり、「レッドライン(越えてはならない一線)」を明示し、「ルール」を設定するという方針である。これは「大人同士のやり取りの方法」であると表現されている。すなわち、中国は米国との関係において、感情的・反応的ではなく、構造的かつ制度的な対応を志向しているという主張である。

 総括:関係の本質は「対話と理解」

 最終段では、国家間の関係は人間関係と同様であり、幻想的な「強さ」では問題は解決できないと述べられる。真に必要なのは「誠実な理解」と「対等な対話」であり、それによってこそ両者の間に共通の基盤が築かれるという提言で締めくくられている。

【要点】 

 ・米中関係に関する米国の報道が増えるなか、一部の米国政治家は依然として「覇権的支配」という幻想に囚われていると指摘している。

 ・米国は「力」や「強さ」を語る一方で、国際秩序における現実的な力関係の変化を無視していると批判されている。

 ・中国は、他国が定めた脚本に従って行動する存在ではなく、自らの条件に基づいて独自の現代化の道を進んでいると主張されている。

 ・米国の中国認識にはイデオロギー的なフィルターがかかっており、それを取り払って中国の現実を見るべきであるとされている。

 ・米国は伝統的に、他国に対して自国が設定したルールを押しつけ、価値を名目にして制裁などの力を行使してきた歴史があると指摘されている。

 ・このような「覇権の惰性」により、米国は現在の世界を正確に見ることが困難になっていると論じられている。

 ・現代の米中関係を、19世紀の欧米的な大国間競争の文脈で理解しようとするのは時代錯誤であり、非現実的であると比喩的に批判されている。

 ・米国の対中戦略には、「力」に関する深い心理的矛盾があるとされている。すなわち、力を誇示する一方で、かつての強さを失ったと嘆いている。

 ・米国は、自らを「ルールの審判」としながら「試合の参加者」としても振る舞い、ゲームが不利になるとルールではなくボールの支配に走っていると例えられている。

 ・中国外交官・楊潔篪がアラスカ会談にて「米国には力の立場から中国に話す資格はない」と述べた発言は、感情的ではなく国際政治の現実を表したものであると評価されている。

 ・米中関係の未来は、米国が中国を「兄貴分」としてではなく、対等な存在として認識できるかどうかにかかっているとされている。

 ・中国は、過去40年間でグローバル化の構造を変えるような影響力を持つ存在であると位置づけられている。

 ・両国はすでに経済・技術・産業において深く結びついており、「デカップリング(切り離し)」を強行すれば、双方が深刻な損害を被ると警告されている。

 ・「相互尊重」は単なる外交用語ではなく、国家としての生存をかけた基本的な原則であると主張されている。

 ・中国の対米姿勢は明確であり、「レッドラインを引く」「ルールを定める」ことで関係を成熟したものとしようとしている。

 ・米国がなおも「力の立場」から対中関係を進めようとする限り、両国間の緊張はさらに深まると指摘されている。

 ・国家間の関係は人間関係に似ており、幻想的な「強さ」ではなく、誠実な理解と対等な対話によってのみ共通の基盤が築かれると結論づけられている。

【引用・参照・底本】

China’s stance is clear; why does the US still struggle to adjust its mind-set? GT 2025.04.13
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1332029.shtml

米国:経済理論と現在の為替市場の乖離2025年04月14日 20:53

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【概要】

 米国の貿易政策、特に関税の影響が、米ドル建て資産の信頼性や安全資産としての地位に対する市場の評価に変化をもたらしている可能性について報じられている。

 CNBCによる最近の報道を引用し、米国債とドルの両方に対する売り圧力が強まっていると指摘している。4月の金融市場の下落は通常の調整局面を上回る広範かつ変動の大きいものであり、ワシントンの攻撃的かつ一貫性を欠く貿易政策が、米国の金融的信用に長期的な悪影響を及ぼしている可能性があると述べている。

 経済理論上、関税の引き上げは一般に自国通貨の価値を上昇させる要因となるが、現在の米国ではそれとは逆の現象が発生している。英紙『ガーディアン』によれば、ドルは他通貨のバスケットに対して1%以上下落し、3年ぶりの安値を記録した。年初からの下落幅は約10%に達しているという。

 このような現象の背景について一部の分析では、他国と比較して米国経済が関税の影響を強く受けるとの見方が投資家に広がっているためとされる。経済の弱体化は通貨への需要を減少させ、結果としてドル安が進行するという構図である。

 一方、通常は安定しているとされる米国債市場においても、10年物国債利回りが上昇し、同週の利回り全体を押し上げている。債券の利回りは価格と逆に動くため、利回りの上昇は債券価格の下落を意味し、保有資産の価値が下がっていることになる。『ニューヨーク・タイムズ』によれば、米国債市場の不安定な動きは、投資家の米国資産離れの兆候との懸念を呼んでいる。

 ワシントンの関税政策は市場に不確実性をもたらし、投資家の信頼を損ねている。このような状況は、関税政策が米国経済に対して逆効果を生んでいる一例とみなされる。米国の貿易赤字の改善という成果が現れていない中で、金融市場、とりわけドル建て資産にマイナスの影響が顕在化しているとされている。

 最近では、ドルや米国債といったドル建て資産が「安全資産」としての地位を失い、「リスク資産」として再評価されているのではないかとの議論が浮上している。このような議論自体が、ドル建て資産に対する信頼の低下を示唆している。ワシントンの関税政策がもたらす経済的不確実性は、金融市場の不安定性へと波及し、米国経済全体の基盤を揺るがす要因となっている。

 ドル建て資産は長年にわたり世界の安全資産として認識され、米国経済に大きな恩恵をもたらしてきた。仮に世界の投資家の信頼がわずかでも低下すれば、資本流出などの具体的な経済的損失が発生する可能性がある。

 米国は世界の金融市場において中核的な役割を果たしており、ドルおよび米国債の安全資産としての地位に対する信頼の低下が新たな潮流の起点となる場合、その影響は深く、持続的なものとなる可能性がある。ドル建て資産が安全資産からリスク資産へと再評価される過程が今後進行すれば、グローバルな金融システムに多大な不確実性をもたらし、世界経済と金融市場の構造に重大な変化を与えることが見込まれる。

 4月上旬には、米国政府が一部の新たな関税措置の実施を90日間延期すると発表したが、依然として米国の関税政策には変動性と不透明性が残り、国際経済への影響は続くと考えられている。

 このような不確実性の中で、国際社会はドル建て資産の評価見直しがもたらす波及効果に警戒を要する。ドルおよび米国債に対する信頼が揺らぐことで国際金融構造に変化が生じる可能性がある中、各国は不確実性への対応として、多国間かつ相互に利益をもたらす金融協力を強化することが重要となる。

【詳細】

 1. 市場の変動とその背景

 まず、4月の金融市場の下落が通常の調整を超える規模と変動性を伴っていると指摘する。この異常な動きは、投資家の間で米国の経済政策に対する不安が高まっていることを反映している。

 CNBCの報道によると、米国の貿易政策、とりわけ関税の適用が予測不可能かつ頻繁に変動している点が、市場にとって大きなリスク要因となっている。

 このため、米国の資産、とりわけドル建て資産や米国債が「売り」に出されているとみられる。

 2. 経済理論と現在の為替市場の乖離

 経済学の理論では、関税導入は通常、自国通貨の価値を押し上げるとされている。なぜなら、輸入品が高くなることで自国製品の需要が高まり、貿易収支の改善につながると考えられるからである。

 ・しかし、今回の米国ではその逆が起こっている。具体的には、ドルは2025年に入ってから10%近く下落し、最近では1日で1%以上の下落を記録し、3年ぶりの安値となった(『ガーディアン』の報道)。

 この乖離については、以下のような市場心理が指摘されている。

 ・米国経済が関税の影響を他国以上に受けると市場が認識している。

 ・それにより、米国経済全体への信頼が低下し、ドルの需要も低下している。

 ・通貨はその国の経済の健全性への信頼を反映するため、ドルの下落は信頼喪失の表れとされる。

 3. 米国債市場の動揺と利回りの上昇

 同時に、通常は「最も安全な資産」とみなされてきた米国の国債市場にも異常が見られている。

 ・10年物米国債の利回りが上昇しており、これは債券価格が下落していることを意味する。

 ・利回りの上昇は通常、インフレ予測や金融引き締めを反映するが、今回のケースでは政策の不確実性と資産価値への不安が背景にある。

 『ニューヨーク・タイムズ』によれば、このような国債市場の動きが「米国資産に対する投資家の信頼の低下」を示しているという。

 4. 関税政策と金融市場への悪影響

 ワシントンの関税政策が金融市場に広範な影響を与えていると述べている。

 ・関税政策の目的である貿易赤字の是正について、未だ明確な成果は見られない。

 ・一方で、市場に不安定性を生み、ドル建て資産の魅力を減退させているという指摘がなされている。

 ・これは、米国政府の貿易戦略が、意図せぬ形で金融システムの安定性を損なっているという事実を示唆している。

 5. ドルと米国債の「安全資産」からの地位低下という議論

 近年、世界の投資家はドル建て資産を「安全資産」として信頼してきた。

 ・しかし現在では、それらの資産がリスク資産として再評価されている可能性が出てきている。

 ・この「再評価」そのものはまだ確定的な現象ではないが、このような議論が公然となされること自体が信頼低下の表れと記事は述べている。

 このような地位の低下が現実化すれば、以下の影響が考えられる。

 ・米国への投資資金が減少し、資本流出が発生。

 ・ドルの流動性に影響が出ることで、世界金融市場全体に不安定性を波及。

 ・他国がドル以外の通貨や資産に安全性を求めるようになり、国際通貨体制に変化が生じる可能性。

 6. 関税政策の一時停止と先行きの不透明性

 米国政府は最近、一部の新たな関税措置を90日間停止すると発表した。

 ・しかし、これは一時的措置に過ぎず、関税政策全体の方向性に対する不透明性は依然として残っている。

 ・このことが、今後も市場に不安をもたらし続ける要因になると考えられる。

 7. 国際社会への影響と対応の必要性

 結びでは、以下の点が強調されている。

 ・ドル建て資産の信頼性に対する再評価が世界経済に波及する可能性がある。

 ・それに備えるため、各国は相互に協力し、多国間の金融協調体制を強化する必要がある。

 ・特に、不確実性の時代においては、一国の政策がグローバル市場全体に影響を与えることから、安定した国際金融秩序の維持が重要であるとされている。

【要点】 

 金融市場の異常な変動

 ・2025年4月の金融市場では、通常の調整を超える下落と変動が発生。

 ・背景には、米国の不安定な貿易政策への投資家の懸念がある。

 ・特に、ドル建て資産や米国債の信頼性が疑問視され始めている。

 経済理論と現実の乖離

 ・経済学上は、関税導入により貿易収支が改善 → 自国通貨高が起こるのが通常。

 ・だが、今回はドルが10%近く下落し、2025年には3年ぶりの安値を記録。

 ・市場は「米国経済が関税の打撃を最も強く受ける」と見ている。

 米国債市場の不安定化

 ・安全資産とされた米国債が売られ、利回りが上昇。

 ・これは、金利やインフレという通常の要因ではなく、政策リスクによる信頼喪失の表れ。

 ・『ニューヨーク・タイムズ』は「米国資産が再評価されている」と報道。

 関税政策が金融市場に与える悪影響

 ・ワシントンの関税政策は未だ効果が見えず。

 ・一方で、市場の混乱とドル離れを招いている。

 ・投資家は米国政府の政策運営能力にも疑問を持ち始めている。

 ドルの「安全資産」神話の揺らぎ

 ・従来、ドルと米国債は世界の安全資産と見なされてきた。

 ・現在は、それらがリスク資産として再評価されている兆候がある。

 ・これは国際金融秩序に重大な変化をもたらす可能性がある。

 一時的な関税停止措置と先行き不透明感

 ・米国は一部関税を90日間停止と発表。

 ・しかし、政策の根本的な方向性が不明なままで、市場の不安は払拭されていない。

 国際的な影響と対応の必要性

 ・ドルへの信頼低下は他国の金融政策や為替政策にも影響を与える。

 ・各国は、金融協調体制の再構築を迫られている。

 ・世界経済の安定のためには、一国の政策暴走を抑える多国間の枠組みが不可欠とされる。

【参考】

 ☞ 「関税の引き上げは一般に自国通貨の価値を上昇させる要因となる」

 1.一般理論:関税と通貨高の関係

 ・貿易収支の改善
 
 関税は輸入品に対して課されるため、輸入が減少する傾向にある。これにより、貿易収支(特に経常収支)が改善し、外貨支出が減る。
 ⇒ その結果、自国通貨への需要が高まり、通貨高となる。

 ・国内産業の保護と国内生産の拡大
 
 輸入が減少すれば、国内産業の競争力が相対的に上がり、生産や雇用が増加する可能性がある。経済のファンダメンタルズが改善すれば、通貨に対する信認も上昇する。

 ・資本流入の増加
 
 国内企業の利益拡大が見込まれると、海外からの投資が増加し、資本収支が改善。これも自国通貨の上昇要因となる。

 2.ただし、現実は理論と異なる場合がある

 上記のような理論的枠組みは存在するが、現実の経済・市場はそれだけでは動かない。特に以下のような要因がある。

 ・報復関税などの悪循環によって輸出も打撃を受け、総合的には経済成長が鈍化する。

 ・政策の一貫性・信頼性の欠如が、投資家心理に悪影響を与え、資本流出や通貨安を招く。

 ・特に今回のように、米国の関税政策が不安定かつ効果不透明である場合、市場はリスク回避姿勢を強め、ドル資産からの離脱が進む可能性がある。

 以上より、関税の引き上げは理論的には自国通貨高をもたらすが、政策運営の信頼性や経済全体への波及効果次第で、むしろ通貨安に向かうこともあるという点に注意が必要である。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

GT Voice: Will fallout from US tariffs affect risk assessment of dollar assets? GT 2025.04.13
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1332020.shtml

中国:相応の査証制限措置を講じる2025年04月14日 21:02

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【概要】

 中国外交部報道官の林剣(Lin Jian)による発言を報じた。内容は、アメリカが「チベット(中国語:西蔵、ピン音:Xizang)」関連の政策に関与したとされる中国当局者に対して査証(ビザ)制限を課す方針を示したことに対する中国の対応に関するものである。

 林剣報道官は、アメリカによる査証制限措置について、「中国の内政に対する不当な干渉であり、国際法および国際関係の基本原則に深刻に違反している」と述べた。これを受けて、中国は「外交関係法」および「反外国制裁法」の関連条項に基づき、西蔵問題に関して悪質な行為を行った米国人員に対し、相応の査証制限措置を講じると発表した。

 林報道官はさらに、西蔵は開放されており、外国の友好的な個人による訪問、観光、ビジネスを歓迎していると述べた。その一方で、中国は「人権」「宗教」「文化」といった名目を用いて西蔵問題に干渉するいかなる国・個人にも反対するとし、西蔵への訪問を口実に妨害や破壊活動を行うことも容認しないとの立場を明確にした。

 以上の発言は、アメリカ側の制裁措置に対する相互主義的な対抗措置であり、中国政府が西蔵問題を内政問題として一貫して扱っていること、ならびに外国による干渉を断固として拒否する姿勢を改めて示すものである。

【詳細】

 1.報道の概要

 2025年4月14日、中国共産党系メディア「環球時報(Global Times)」は、中国外交部報道官・林剣(Lin Jian)による声明を掲載した。声明は、米国が中国の西蔵(チベット)政策に関与したとされる中国政府関係者に対し査証制限(ビザ制裁)を発動する意向を示したことに対する中国政府の正式な反応を伝えている。

 2.中国外交部の主張

 林剣報道官は、米国による査証制限について、次のように述べている。

 ・「西蔵の事務は純粋に中国の内政である」 → 西蔵問題に関して外国が意見を述べたり制裁を科したりすること自体が、中国の内政干渉であるとの見解を示している。

 ・「米国による中国当局者への査証制限は、国際法および国際関係の基本原則への深刻な違反である」 → 特定の中国政府関係者に制裁を科すことは、国際的な主権尊重や不干渉の原則に反する行為であるとの立場を表明している。

 3.中国側の対抗措置

 林剣報道官は、アメリカ側の措置に対して**「相応の査証制限を課す」との対抗措置を講じる**方針を発表している。具体的には次の通りである。

 ・「外国関係法(Law on Foreign Relations)」

 ・「反外国制裁法(Anti-Foreign Sanctions Law)」

 この2つの国内法に基づき、「西蔵関連問題において悪質な行為を行った米国人員(US personnel)」に対して査証制限を課すと述べている。

 ここでいう「悪質な行為(egregious behavior)」については詳細が明示されていないが、少なくとも中国の主権や国内政策に対する介入と見なされた行為を指していると解される。

 4.西蔵の現状に関する中国の主張

 林報道官は、中国が西蔵を開放しており、次のような立場をとっていることを強調している。

 ・「西蔵は開かれており、友好的な外国人による訪問、旅行、ビジネスを歓迎する」→ 西蔵が外国人に閉鎖されているとの一部の国際的な主張に反論している。

 ・「人権・宗教・文化を口実にした干渉には反対する」 → 外国政府や個人が西蔵問題を利用して中国を非難または妨害することを拒絶する姿勢を明確にしている。

 ・「西蔵訪問を妨害や破壊活動の口実とする行為にも反対する」 → 外国人の西蔵訪問が政治的な抗議や工作活動と結び付けられることを警戒している。

 5.まとめ

 この報道は、米中間の対立が「西蔵問題」という敏感な領域にも波及していることを示しており、中国政府はこれを内政干渉と捉え、法的根拠をもって対抗措置を取ることを明言したものである。

 林報道官の発言を通じて、中国は次の三点を明確に打ち出している。

 (1)西蔵問題は完全に中国の主権に属する内政である

 (2)米国による制裁措置は国際法違反であり容認できない

 (3)中国も同様の措置で対抗し、主権を守る用意がある

これらの点は、いずれも国家主権と内政不干渉という原則に基づく中国の一貫した立場を反映している。

【要点】 

 背景と発端

 ・米国は、中国当局が西蔵(チベット)地域への外国人のアクセスを制限しているとして、関与した中国当局者に対する査証(ビザ)制限を発動すると発表した。

 ・これに対し、中国外交部報道官・林剣(Lin Jian)が公式見解を発表した。

 中国側の主張

 ・西蔵の事務は中国の純然たる内政問題であるとし、他国の干渉は容認できないと強調した。

 ・米国による査証制限は、国際法および国際関係の基本原則に深刻に違反していると批判した。

 ・特に、内政不干渉の原則を侵すものとして、中国は強く反発している。

 中国側の対抗措置

 ・中国は米国の措置に対抗し、相応の査証制限(ビザ制裁)を米国人員に対して講じると表明した。

 ・対象は、西蔵問題に関して悪質な行為(egregious behavior)を行った米国関係者である。

 ・措置は、中国の「外国関係法(Law on Foreign Relations)」および「反外国制裁法(Anti-Foreign Sanctions Law)」に基づいて実施される。

 西蔵に関する中国の立場

 ・西蔵は開かれており、友好的な外国人の訪問・観光・ビジネスを歓迎するとの方針を示した。

 ・「人権」「宗教」「文化」などを名目にして西蔵問題に干渉することには断固反対するとした。

 ・訪問を装って妨害や破壊活動を行う行為も容認しないと警告した。

 全体的な立場の要点

 ・中国は、国家主権および内政の独立性を重視しており、いかなる外部からの干渉も拒絶する姿勢を取っている。

 ・米国の措置には相互主義(reciprocity)に基づく制裁で応じる構えである。

 ・西蔵政策を正当化しつつ、国際社会に対して開放性と主権尊重の両立をアピールする内容である。

【引用・参照・底本】

China to impose reciprocal visa restrictions on US personnel involved in egregious behavior related to Xizang issues GT 2025.04.14
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1332071.shtml

林氏:「保護主義はどこにも行き着かない」2025年04月14日 22:26

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【概要】

 中国外交部の報道官である林剣氏は、米国の関税政策の度重なる変更に関する質問に対し、定例記者会見で次のように発言した。

 まず、中国商務部の報道官がすでにこの問題に対する中国の立場を表明していることに言及した。林氏は、事実はこれまでも示されてきたし、今後も示され続けるであろうとして、「関税戦争や貿易戦争に勝者は存在せず、保護主義はいかなる成果ももたらさない」と述べた。

 さらに、林氏は、米国による過度な関税措置の乱用は、他国に損害を与えるのみならず、自国にとっても不利益であると指摘した。

 その上で林氏は、「中国は米国に対し、極端な圧力という誤ったやり方を放棄し、平等・相互尊重・互恵の原則に基づく対話を通じて問題を解決するよう強く求める」と述べた。

【詳細】

 中国外交部報道官の林剣(Lin Jian)氏は、定例記者会見において、米国が関税政策を繰り返し変更していることに関連する質問に対し、詳細に見解を示した。以下は、その発言内容を忠実かつ詳しく再構成したものである。

 林氏はまず、中国商務部の報道官がこの件についてすでに中国政府としての基本的な立場を表明していることを前提として言及した。そのうえで、林氏は「関税戦争(tariff war)あるいは貿易戦争(trade war)に勝者は存在しない」と明言し、こうした対立的手段ではどの国も実質的利益を得られないとの認識を示した。この言葉には、過去の実例に基づく経験則としての主張が込められており、中国側はすでに米中間での関税対立が双方に損失をもたらしたという事実認識を強調している。

 林氏はまた、「保護主義はどこにも行き着かない」と述べ、国家が市場を閉ざす方向に傾くことは、最終的に経済の健全な発展を阻害するとの見解を示した。この点は、中国政府が一貫して唱えてきた「自由貿易支持」「開放型経済の推進」といった方針とも整合する。特に米国による制裁的関税措置は、経済政策として有効性を欠くだけでなく、国際経済秩序を損なう危険性があるとする中国側の基本的立場を裏付けている。

 加えて林氏は、「米国の過剰な関税乱用は他国を害するだけでなく、米国自身にも害を及ぼしている」と指摘した。すなわち、関税措置は対外的な圧力手段であると同時に、国内の消費者や産業にもコストを増大させ、結果として経済全体に負担を強いるものとなるという認識が示されている。ここでは、中国が被っている被害の訴えに加え、米国の国益にも反しているという訴求を通じて、米側への説得的なメッセージが構成されている。

 最後に林氏は、「中国は米国に対し、極端な圧力という誤った手法をただちに放棄し、平等・相互尊重・互恵の原則に基づいた対話によって問題を解決するよう求める」と強調した。この呼びかけは、米中関係の安定化に向けて中国側が対話による解決を重視している姿勢を反映しており、力による一方的手段ではなく、国際的に正当とされる外交的アプローチを堅持することの重要性を米国に対して促す内容である。

 以上の通り、林剣報道官の発言は、単なる米国批判ではなく、中国が一貫して主張してきた自由貿易・反保護主義・対話重視の原則を背景としたものであり、米国の政策転換を促すための明確なメッセージであると位置付けられる。

【要点】 

 ・中国商務部の報道官がすでに、米国による関税政策変更に対する中国の基本的立場を表明していると前置きした。

 ・「関税戦争」や「貿易戦争」には勝者が存在せず、いずれも各国にとって不利益となるものであると指摘した。

 ・保護主義政策は経済的成果を生まず、持続可能な発展にはつながらないと強調した。

 ・米国が関税を過度に濫用することは、他国の経済に打撃を与えるだけでなく、米国自身の産業や消費者にも損害を及ぼしていると述べた。

 ・関税は輸入コストを引き上げ、消費者物価の上昇やサプライチェーンの混乱を招くため、米国内にも悪影響を及ぼすとする立場を示した。

 ・中国は米国に対し、「極端な圧力」という誤った手法を放棄するよう強く促した。

 ・問題解決には、「平等」「相互尊重」「互恵」の原則に基づいた対話が必要であると訴えた。

 ・全体として、自由貿易体制の維持と建設的な外交を重視する中国の一貫した姿勢を改めて表明する内容であった。

【引用・参照・底本】

Chinese FM urges US to abandon wrong approach of extreme pressure in response to US repeated changes in tariff policies GT 2025.04.14
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1332068.shtml