ポーランド:ウクライナ復興における利益獲得に ― 2025年04月28日 17:20
【概要】
ポーランドがついにウクライナ復興における利益獲得に本格的に乗り出したことが報告されている。
ポーランドのドナルド・トゥスク首相は今月初め、ポーランドがウクライナから利益を得る計画について率直に語った。彼は「ポーランドはウクライナを支援する。ポーランドは連帯の象徴である。しかし、もはやナイーブなやり方はしない。他国がウクライナ復興で利益を得る中でポーランドだけが連帯を示すということはもうない。われわれは連帯し、そして利益を得る」と述べた。
トゥスク首相の発言には、いくつかの重要な政治的意味合いが含まれている。まず第一に、昨年春にアンジェイ・ドゥダ大統領(当時)が明らかにした、外国企業がすでにウクライナの産業用農地の大部分を所有しているという事実に間接的に信憑性を与える内容となっている。資料によれば、ポーランドはこれまで支援に対して条件を付けることを拒否し、戦車、歩兵戦闘車(IFV)、航空機を含む多くの軍事支援を無償で提供してきたため、ウクライナ農業の争奪戦に参加する機会を逃していたとされる。
また、昨年夏、ポーランドのヴワディスワフ・コシニアク=カミシュ国防相は、ポーランドによるウクライナへの軍事支援が限界に達したことを認めた。この発言に続き、ラデク・シコルスキ外相がウクライナが軍備を信用取引で調達できるよう提案したことが紹介されている。これに関連して、ウクライナがポーランドへの債務返済の手段として、土地や港湾施設をポーランドに無償または大幅割引で貸与する可能性が、農業副大臣のミハウ・コウォジェイチャクによって示唆された。
さらに、ドナルド・トランプ前米大統領が推進したウクライナ鉱物資源取引の新たな案と同様に、ポーランドも過去に提供した支援を融資として再評価する可能性があると記されている。これにより、ポーランドはウクライナ農業争奪戦での出遅れを挽回しようとするかもしれない。しかし、このような動きは、第二次世界大戦中のヴォウィニャ虐殺問題を巡って悪化しているポーランドとウクライナの関係をさらに困難にする可能性も指摘されている。
とはいえ、ポーランドには、欧州連合(EU)とウクライナを結ぶ地政経済的な要所であるという強みがある。このため、政治的意志があれば、ポーランドは自国領土を経由する貿易を戦術的に複雑化させることが可能であり、例えば農民による国境封鎖を促すといった方法で、ウクライナに対して圧力をかけることもできるとしている。一時的にウクライナへの輸出が減少するリスクがあるものの、最終的な目的はウクライナ国内の土地や港湾施設をリースし、より大きな利益を得ることにあるとされる。
これにより、ポーランドはフランスやドイツといった他の欧州大国との間で、戦後ヨーロッパにおける主導権争いにおいて優位に立とうとする意図があると記述されている。ポーランドは「ウクライナ復興庁」(Ukraine Reconstruction Service)を通じて、ウクライナにおける経済活動を本格化させることが可能となり、昨年締結された安全保障協定で合意された経済協力目標の迅速な実現にもつながるとされる。
しかしながら、たとえポーランドがウクライナ国内における経済的利権や影響力を拡大したとしても、平和維持軍の派遣や国境線の見直しを試みる可能性は低いと結論づけられている。平和維持軍を派遣すれば、結局は他国に利益を奪われるリスクが再び高まる一方で、国境の見直しを試みれば、莫大な経済的・政治的・安全保障上の代償を伴い、最悪の場合にはポーランドのウクライナに対する影響力を完全に失う恐れもあるためである。
最後に、トゥスク首相の発言に立ち返ると、今後のポーランドの対ウクライナ政策は、ナイーブな連帯感ではなく、明確な利益追求を中心に展開されるであろうとまとめられている。
【詳細】
ポーランドのウクライナ支援とその戦略的背景
・ドナルド・トゥスク首相の発言
ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、ウクライナに対する支援を今後は単なる「連帯」の象徴として提供するのではなく、明確に利益を得る戦略に切り替える方針を示した。彼の発言によれば、「ポーランドはウクライナを支援するが、それは今後、無償ではなく利益を得る形で行われる」と強調した。この発言は、ポーランドがウクライナの復興に参加する際、過去の無償支援や無条件の連帯から一歩踏み込んで、経済的な利益を重視する姿勢に転換することを示唆している。
・ウクライナ農業への影響とポーランドの「出遅れ」
ポーランドは過去にウクライナへの無償支援を行ったが、その際には支援に条件を付けなかったため、ウクライナの農業分野での競争に参加する機会を逃していた。ウクライナはその後、外国企業に農業産業を売却する動きが加速したが、ポーランドはその一部を握ることができなかった。この点をポーランドの政治指導者たちは後悔している。ポーランドが提供した軍事支援(戦車、戦闘車両、航空機など)は最大規模だったが、経済的な側面で利益を得るためには遅れを取った形となっている。
・ウクライナの負債と土地・港湾のリース提案
ポーランドがウクライナから利益を得る手段として、ウクライナの負債を処理するために土地や港湾をリースする提案がなされている。ウクライナは経済的に困窮しており、国際的な支援に頼らざるを得ない状況にある。この状況を利用して、ポーランドはウクライナから土地や港湾を有利な条件で借りることを提案しており、この条件が債務の帳消しと引き換えに設定される可能性がある。これにより、ポーランドはウクライナの復興過程で一部の重要な経済資源を掌握できる立場となる。
・ポーランドの外交・経済戦略の一環としての利益追求
ポーランドは、ウクライナとEU間の重要な地政学的ゲートウェイに位置しているため、これを利用して経済的な影響力を強化することが可能だ。ポーランドは、ウクライナとEUの貿易や物流において、物理的な障害を設けたり、ポーランド経由の貿易ルートに影響を与えたりすることで、自国に有利な状況を作り出すことができる。農民による国境封鎖など、ポーランドの国内問題を利用して外交的圧力をかけることも一つの戦術として考えられる。
・ポーランドとウクライナの経済協力
ポーランドはウクライナ復興庁(Ukraine Reconstruction Service)を設立し、その機能を強化する計画を進めている。この組織はポーランド企業にとって、ウクライナ国内での事業展開の拡大を後押しする役割を果たすことが期待されており、特に土地や港湾のリースが実現すれば、復興過程でポーランド企業が大きな利益を得る可能性が高まる。また、ポーランドは昨年締結された安全保障協定を基に、ウクライナとの経済協力を加速させることを目指している。この協定には、ウクライナにおけるインフラ復興のための具体的な共同作業が含まれており、ポーランドはこれを通じて影響力を強化し、ウクライナの経済的再建にも大きな役割を果たすと見込まれている。
・ポーランドの「戦後リーダーシップ」の追求
ポーランドは、ウクライナが戦争後に復興を果たす過程で、フランスやドイツといった他の欧州大国と競いながらリーダーシップを取ろうとしている。ポーランドの地理的な優位性と、ウクライナとの緊密な経済関係を活かし、ウクライナ復興において主導的な役割を果たすことが目標となっている。この戦略により、ポーランドはEU内での存在感を高め、特に戦後のヨーロッパにおけるポーランドの影響力を確立しようとしている。
・平和維持軍の派遣と国境問題
ポーランドがウクライナに対して平和維持軍を派遣する可能性は低いとされる。これは、派遣が政治的・経済的・安全保障的に大きなリスクを伴うためである。また、国境線の変更を試みることも、ポーランドの影響力を強化する手段にはならず、逆に自国のウクライナに対する影響力を失う危険性を伴う。ポーランドにとって、経済的利益の確保が最も重要な目的であり、これを達成するためには軍事的介入よりも経済的・外交的手段が優先される。
・結論
ポーランドは、今後ウクライナ支援を利益追求の手段として再定義する考えである。トゥスク首相の発言を踏まえ、ポーランドはウクライナに対する支援を単なる連帯ではなく、経済的・戦略的利益を得るための手段として位置付け、そのために土地や港湾のリース、さらには復興プロジェクトでの支配権を確保することを目指している。ポーランドはウクライナ復興において主導的な役割を果たし、戦後のヨーロッパにおけるリーダーシップを取ろうとしている。
【要点】
1.ドナルド・トゥスク首相の発言
・ポーランドは今後、ウクライナ支援を「連帯」の象徴だけでなく、利益を得る形で行う方針。
・ポーランドは無償支援から脱却し、支援と引き換えに利益を追求する。
2.ポーランドの過去の「出遅れ」
・ポーランドはウクライナへの支援を無償で行ったが、その際に経済的条件をつけなかったため、ウクライナ農業の競争に参加する機会を逃した。
3.ウクライナの負債と土地・港湾リース提案
・ウクライナは経済的に困窮しており、負債処理のために土地や港湾をリースする提案をポーランドが行っている。
・ポーランドはリース条件を有利に設定し、負債の帳消しと引き換えに土地や港湾を借りることを目指している。
4.ポーランドの外交・経済戦略
・ポーランドはウクライナとEU間の地政学的ゲートウェイとしての立場を利用し、貿易や物流において影響力を強化。
・ポーランドは国境封鎖などの手段を使って、外交的圧力をかける可能性がある。
5.ポーランドとウクライナの経済協力
・ポーランドはウクライナ復興庁を設立し、ポーランド企業のウクライナ国内での事業展開を後押し。
・両国は昨年締結した安全保障協定に基づき、経済協力を加速させる。
6.ポーランドの「戦後リーダーシップ」
・ポーランドはウクライナの復興を通じて、フランスやドイツと競いながら戦後のヨーロッパでリーダーシップを取ろうとしている。
7.平和維持軍派遣の可能性
・ポーランドはウクライナに平和維持軍を派遣する可能性は低い。
・軍事介入はリスクが大きく、経済的・外交的手段が優先される。
8.結論
・ポーランドはウクライナ支援を利益追求の手段として再定義し、土地や港湾のリースなどで経済的利益を得ることを目指している。
・戦後のヨーロッパでのリーダーシップを確立するために、ウクライナ復興において主導的な役割を果たそうとしている。
【桃源寸評】
ウクライナを巡る西側諸国の動きは、確かに経済的利益を追求する側面があり、特にウクライナの復興や資源、農業、インフラに関する取り決めでその姿勢が見受けられる。ドナルド・トゥスク首相が述べたように、ポーランドは「連帯」を掲げつつも、その背後には利益を得る意図があるとされ、これは他の西側諸国に共通する態度でもある。これを一種の「強奪戦」と見ることも可能である。
具体的な点を挙げよう。
1.ウクライナの資源とインフラ
戦争によるウクライナの経済的な困窮に乗じて、外国企業がウクライナの農業や鉱物資源を所有する事態が進行しており、これには西側企業も積極的に関与している。
ウクライナの産業基盤やインフラが破壊される中で、復興支援の名のもとに西側諸国が利益を得る形となる。
2.軍事支援と経済的利益の絡み
トランプ氏の提案のように、アメリカはウクライナに対する支援を「ローン」として見なす可能性があり、ウクライナがその負債を支払う手段として土地や資源のリースが含まれる場合もある。
これは単なる支援ではなく、経済的な取引として利益を得る構造を作り上げる可能性がある。
3.ポーランドの動き
ポーランドもウクライナから経済的利益を得ることを明言しており、土地や港湾のリース、復興プロジェクトにおけるポーランド企業の参画など、利益を得るための戦略を取っている。
4.西側の競争
ウクライナの復興支援を巡る競争は、単なる人道的な支援を超えて、西側諸国間で経済的優位を占めるための競争にもなっている。フランスやドイツ、アメリカ、ポーランドなどが、ウクライナ復興の主導権を争っている。
つまり、ウクライナを巡る西側諸国の動きは、単なる支援ではなく、経済的利益を追求する「強奪戦」的な側面も強く、戦争や復興を通じて各国が地政学的・経済的利益を獲得しようとしている状況と言える。
5.「禿鷹(はげたか)」
「禿鷹(はげたか)」という表現は、確かに今回のような状況に当て嵌まるだろう。禿鷹は死んだ動物を食い漁る鳥で、これが比喩的に「他人の困難を利用して利益を得る者」や「他人の不幸に便乗して利益を得る者」を指すことがある。
ウクライナのような戦争状態で、戦後復興や資源獲得を巡って各国が利益を追求している状況は、「禿鷹のようだ」と言われることがあるだろう。特に、戦争によって多くの人々が困難な状況に置かれ、インフラや資源が破壊される中で、食い物にし、経済的利益を得ようとする動きは、この表現が適切であると感じられる。
このような見方は、ウクライナの復興支援を名目にして、実際には自国の利益を追求し、戦争や災厄を「搾取」の手段とする国々が存在するという批判が強調される。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
The Political Implications Of Poland Explicitly Planning To Profit From Ukraine Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.23
https://korybko.substack.com/p/the-political-implications-of-poland?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=161942965&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ポーランドがついにウクライナ復興における利益獲得に本格的に乗り出したことが報告されている。
ポーランドのドナルド・トゥスク首相は今月初め、ポーランドがウクライナから利益を得る計画について率直に語った。彼は「ポーランドはウクライナを支援する。ポーランドは連帯の象徴である。しかし、もはやナイーブなやり方はしない。他国がウクライナ復興で利益を得る中でポーランドだけが連帯を示すということはもうない。われわれは連帯し、そして利益を得る」と述べた。
トゥスク首相の発言には、いくつかの重要な政治的意味合いが含まれている。まず第一に、昨年春にアンジェイ・ドゥダ大統領(当時)が明らかにした、外国企業がすでにウクライナの産業用農地の大部分を所有しているという事実に間接的に信憑性を与える内容となっている。資料によれば、ポーランドはこれまで支援に対して条件を付けることを拒否し、戦車、歩兵戦闘車(IFV)、航空機を含む多くの軍事支援を無償で提供してきたため、ウクライナ農業の争奪戦に参加する機会を逃していたとされる。
また、昨年夏、ポーランドのヴワディスワフ・コシニアク=カミシュ国防相は、ポーランドによるウクライナへの軍事支援が限界に達したことを認めた。この発言に続き、ラデク・シコルスキ外相がウクライナが軍備を信用取引で調達できるよう提案したことが紹介されている。これに関連して、ウクライナがポーランドへの債務返済の手段として、土地や港湾施設をポーランドに無償または大幅割引で貸与する可能性が、農業副大臣のミハウ・コウォジェイチャクによって示唆された。
さらに、ドナルド・トランプ前米大統領が推進したウクライナ鉱物資源取引の新たな案と同様に、ポーランドも過去に提供した支援を融資として再評価する可能性があると記されている。これにより、ポーランドはウクライナ農業争奪戦での出遅れを挽回しようとするかもしれない。しかし、このような動きは、第二次世界大戦中のヴォウィニャ虐殺問題を巡って悪化しているポーランドとウクライナの関係をさらに困難にする可能性も指摘されている。
とはいえ、ポーランドには、欧州連合(EU)とウクライナを結ぶ地政経済的な要所であるという強みがある。このため、政治的意志があれば、ポーランドは自国領土を経由する貿易を戦術的に複雑化させることが可能であり、例えば農民による国境封鎖を促すといった方法で、ウクライナに対して圧力をかけることもできるとしている。一時的にウクライナへの輸出が減少するリスクがあるものの、最終的な目的はウクライナ国内の土地や港湾施設をリースし、より大きな利益を得ることにあるとされる。
これにより、ポーランドはフランスやドイツといった他の欧州大国との間で、戦後ヨーロッパにおける主導権争いにおいて優位に立とうとする意図があると記述されている。ポーランドは「ウクライナ復興庁」(Ukraine Reconstruction Service)を通じて、ウクライナにおける経済活動を本格化させることが可能となり、昨年締結された安全保障協定で合意された経済協力目標の迅速な実現にもつながるとされる。
しかしながら、たとえポーランドがウクライナ国内における経済的利権や影響力を拡大したとしても、平和維持軍の派遣や国境線の見直しを試みる可能性は低いと結論づけられている。平和維持軍を派遣すれば、結局は他国に利益を奪われるリスクが再び高まる一方で、国境の見直しを試みれば、莫大な経済的・政治的・安全保障上の代償を伴い、最悪の場合にはポーランドのウクライナに対する影響力を完全に失う恐れもあるためである。
最後に、トゥスク首相の発言に立ち返ると、今後のポーランドの対ウクライナ政策は、ナイーブな連帯感ではなく、明確な利益追求を中心に展開されるであろうとまとめられている。
【詳細】
ポーランドのウクライナ支援とその戦略的背景
・ドナルド・トゥスク首相の発言
ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、ウクライナに対する支援を今後は単なる「連帯」の象徴として提供するのではなく、明確に利益を得る戦略に切り替える方針を示した。彼の発言によれば、「ポーランドはウクライナを支援するが、それは今後、無償ではなく利益を得る形で行われる」と強調した。この発言は、ポーランドがウクライナの復興に参加する際、過去の無償支援や無条件の連帯から一歩踏み込んで、経済的な利益を重視する姿勢に転換することを示唆している。
・ウクライナ農業への影響とポーランドの「出遅れ」
ポーランドは過去にウクライナへの無償支援を行ったが、その際には支援に条件を付けなかったため、ウクライナの農業分野での競争に参加する機会を逃していた。ウクライナはその後、外国企業に農業産業を売却する動きが加速したが、ポーランドはその一部を握ることができなかった。この点をポーランドの政治指導者たちは後悔している。ポーランドが提供した軍事支援(戦車、戦闘車両、航空機など)は最大規模だったが、経済的な側面で利益を得るためには遅れを取った形となっている。
・ウクライナの負債と土地・港湾のリース提案
ポーランドがウクライナから利益を得る手段として、ウクライナの負債を処理するために土地や港湾をリースする提案がなされている。ウクライナは経済的に困窮しており、国際的な支援に頼らざるを得ない状況にある。この状況を利用して、ポーランドはウクライナから土地や港湾を有利な条件で借りることを提案しており、この条件が債務の帳消しと引き換えに設定される可能性がある。これにより、ポーランドはウクライナの復興過程で一部の重要な経済資源を掌握できる立場となる。
・ポーランドの外交・経済戦略の一環としての利益追求
ポーランドは、ウクライナとEU間の重要な地政学的ゲートウェイに位置しているため、これを利用して経済的な影響力を強化することが可能だ。ポーランドは、ウクライナとEUの貿易や物流において、物理的な障害を設けたり、ポーランド経由の貿易ルートに影響を与えたりすることで、自国に有利な状況を作り出すことができる。農民による国境封鎖など、ポーランドの国内問題を利用して外交的圧力をかけることも一つの戦術として考えられる。
・ポーランドとウクライナの経済協力
ポーランドはウクライナ復興庁(Ukraine Reconstruction Service)を設立し、その機能を強化する計画を進めている。この組織はポーランド企業にとって、ウクライナ国内での事業展開の拡大を後押しする役割を果たすことが期待されており、特に土地や港湾のリースが実現すれば、復興過程でポーランド企業が大きな利益を得る可能性が高まる。また、ポーランドは昨年締結された安全保障協定を基に、ウクライナとの経済協力を加速させることを目指している。この協定には、ウクライナにおけるインフラ復興のための具体的な共同作業が含まれており、ポーランドはこれを通じて影響力を強化し、ウクライナの経済的再建にも大きな役割を果たすと見込まれている。
・ポーランドの「戦後リーダーシップ」の追求
ポーランドは、ウクライナが戦争後に復興を果たす過程で、フランスやドイツといった他の欧州大国と競いながらリーダーシップを取ろうとしている。ポーランドの地理的な優位性と、ウクライナとの緊密な経済関係を活かし、ウクライナ復興において主導的な役割を果たすことが目標となっている。この戦略により、ポーランドはEU内での存在感を高め、特に戦後のヨーロッパにおけるポーランドの影響力を確立しようとしている。
・平和維持軍の派遣と国境問題
ポーランドがウクライナに対して平和維持軍を派遣する可能性は低いとされる。これは、派遣が政治的・経済的・安全保障的に大きなリスクを伴うためである。また、国境線の変更を試みることも、ポーランドの影響力を強化する手段にはならず、逆に自国のウクライナに対する影響力を失う危険性を伴う。ポーランドにとって、経済的利益の確保が最も重要な目的であり、これを達成するためには軍事的介入よりも経済的・外交的手段が優先される。
・結論
ポーランドは、今後ウクライナ支援を利益追求の手段として再定義する考えである。トゥスク首相の発言を踏まえ、ポーランドはウクライナに対する支援を単なる連帯ではなく、経済的・戦略的利益を得るための手段として位置付け、そのために土地や港湾のリース、さらには復興プロジェクトでの支配権を確保することを目指している。ポーランドはウクライナ復興において主導的な役割を果たし、戦後のヨーロッパにおけるリーダーシップを取ろうとしている。
【要点】
1.ドナルド・トゥスク首相の発言
・ポーランドは今後、ウクライナ支援を「連帯」の象徴だけでなく、利益を得る形で行う方針。
・ポーランドは無償支援から脱却し、支援と引き換えに利益を追求する。
2.ポーランドの過去の「出遅れ」
・ポーランドはウクライナへの支援を無償で行ったが、その際に経済的条件をつけなかったため、ウクライナ農業の競争に参加する機会を逃した。
3.ウクライナの負債と土地・港湾リース提案
・ウクライナは経済的に困窮しており、負債処理のために土地や港湾をリースする提案をポーランドが行っている。
・ポーランドはリース条件を有利に設定し、負債の帳消しと引き換えに土地や港湾を借りることを目指している。
4.ポーランドの外交・経済戦略
・ポーランドはウクライナとEU間の地政学的ゲートウェイとしての立場を利用し、貿易や物流において影響力を強化。
・ポーランドは国境封鎖などの手段を使って、外交的圧力をかける可能性がある。
5.ポーランドとウクライナの経済協力
・ポーランドはウクライナ復興庁を設立し、ポーランド企業のウクライナ国内での事業展開を後押し。
・両国は昨年締結した安全保障協定に基づき、経済協力を加速させる。
6.ポーランドの「戦後リーダーシップ」
・ポーランドはウクライナの復興を通じて、フランスやドイツと競いながら戦後のヨーロッパでリーダーシップを取ろうとしている。
7.平和維持軍派遣の可能性
・ポーランドはウクライナに平和維持軍を派遣する可能性は低い。
・軍事介入はリスクが大きく、経済的・外交的手段が優先される。
8.結論
・ポーランドはウクライナ支援を利益追求の手段として再定義し、土地や港湾のリースなどで経済的利益を得ることを目指している。
・戦後のヨーロッパでのリーダーシップを確立するために、ウクライナ復興において主導的な役割を果たそうとしている。
【桃源寸評】
ウクライナを巡る西側諸国の動きは、確かに経済的利益を追求する側面があり、特にウクライナの復興や資源、農業、インフラに関する取り決めでその姿勢が見受けられる。ドナルド・トゥスク首相が述べたように、ポーランドは「連帯」を掲げつつも、その背後には利益を得る意図があるとされ、これは他の西側諸国に共通する態度でもある。これを一種の「強奪戦」と見ることも可能である。
具体的な点を挙げよう。
1.ウクライナの資源とインフラ
戦争によるウクライナの経済的な困窮に乗じて、外国企業がウクライナの農業や鉱物資源を所有する事態が進行しており、これには西側企業も積極的に関与している。
ウクライナの産業基盤やインフラが破壊される中で、復興支援の名のもとに西側諸国が利益を得る形となる。
2.軍事支援と経済的利益の絡み
トランプ氏の提案のように、アメリカはウクライナに対する支援を「ローン」として見なす可能性があり、ウクライナがその負債を支払う手段として土地や資源のリースが含まれる場合もある。
これは単なる支援ではなく、経済的な取引として利益を得る構造を作り上げる可能性がある。
3.ポーランドの動き
ポーランドもウクライナから経済的利益を得ることを明言しており、土地や港湾のリース、復興プロジェクトにおけるポーランド企業の参画など、利益を得るための戦略を取っている。
4.西側の競争
ウクライナの復興支援を巡る競争は、単なる人道的な支援を超えて、西側諸国間で経済的優位を占めるための競争にもなっている。フランスやドイツ、アメリカ、ポーランドなどが、ウクライナ復興の主導権を争っている。
つまり、ウクライナを巡る西側諸国の動きは、単なる支援ではなく、経済的利益を追求する「強奪戦」的な側面も強く、戦争や復興を通じて各国が地政学的・経済的利益を獲得しようとしている状況と言える。
5.「禿鷹(はげたか)」
「禿鷹(はげたか)」という表現は、確かに今回のような状況に当て嵌まるだろう。禿鷹は死んだ動物を食い漁る鳥で、これが比喩的に「他人の困難を利用して利益を得る者」や「他人の不幸に便乗して利益を得る者」を指すことがある。
ウクライナのような戦争状態で、戦後復興や資源獲得を巡って各国が利益を追求している状況は、「禿鷹のようだ」と言われることがあるだろう。特に、戦争によって多くの人々が困難な状況に置かれ、インフラや資源が破壊される中で、食い物にし、経済的利益を得ようとする動きは、この表現が適切であると感じられる。
このような見方は、ウクライナの復興支援を名目にして、実際には自国の利益を追求し、戦争や災厄を「搾取」の手段とする国々が存在するという批判が強調される。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
The Political Implications Of Poland Explicitly Planning To Profit From Ukraine Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.23
https://korybko.substack.com/p/the-political-implications-of-poland?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=161942965&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

