フィリピン:タイフォン(Typhon)を無期限に配備2024年10月03日 23:31

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【概要】
 
 2024年10月1日、リチャード・ジャヴァド・ヘイダリアンによる報道によると、フィリピンはアメリカ製の最新ミサイルシステム「タイフォン(Typhon)」を無期限に配備することを発表し、中国との緊張がさらに高まっている。タイフォンは中距離ミサイルシステムで、台湾を巡る米中の潜在的な対立で使用される可能性があるとされている。この配備に対し、中国は地域の安定を脅かすと警告しているが、フィリピンの国防長官ロメオ・ブラウナーは、タイフォンを「永遠に」保持したいとの意向を示している。

 タイフォンの配備は、2024年の米比合同軍事演習「バリカタン」の前に始まった。このミサイルシステムは、最大1600キロメートルの射程を持つSM-6ミサイルやトマホークを発射でき、フィリピンとアメリカの軍事協力の重要な一歩と見なされている。中国は当初からこの動きに反発し、アメリカとフィリピンが地域での軍拡競争を煽っていると批判している。

 中国の王毅外相は、国連総会のために訪問したニューヨークで再びこの問題に言及し、フィリピンでのアメリカの中距離ミサイルの配備は「地域の平和と安定を損なう」と警告した。中国は過去にも、韓国がアメリカのTHAADミサイルシステムを受け入れた際に圧力をかけたが、最終的には失敗しており、現在はフィリピンが同様の高度なアメリカ製兵器システムを導入する可能性に懸念を抱いている。

 タイフォンミサイルシステムの配備は特に台湾に近いフィリピンの地理的な位置のため、敏感な問題となっている。フィリピンの北部基地は台湾の南部都市に非常に近く、米中対立が激化した場合、タイフォンシステムはアメリカ軍の重要な戦力となり得る。フィリピン側は、中国との南シナ海での争いにおいて、自国の防衛能力を強化するためにタイフォンを長期的に配備し、他の先進的な兵器システムも導入したいと考えている。

 この背景には、フィリピンの新しい防衛構想「包括的な群島防衛構想(CADC)」があり、中国に対抗するための防衛能力を迅速に強化することが目的である。

【詳細】

 フィリピンがアメリカ製の「タイフォン(Typhon)」ミサイルシステムを無期限に配備するという決定は、フィリピンと中国の間で進行中の南シナ海を巡る緊張を新たな次元に引き上げる可能性がある。このミサイルシステムは、アメリカが中国と対立した際、特に台湾を巡る衝突が発生した場合に使用されると見られ、地域の安全保障環境に大きな影響を与える。

 タイフォンミサイルシステムの概要

 タイフォンは、アメリカが開発した中距離ミサイルシステムで、複数の種類のミサイルを発射可能です。その中には、最大射程1600キロメートルのSM-6ミサイルや、長距離巡航ミサイル「トマホーク」も含まれている。これにより、タイフォンは非常に広範なエリアをカバーする能力を持ち、地上および海上の目標を精密に攻撃できる。このミサイルシステムは、フィリピン国内の複数のEDCA(強化防衛協力協定)施設に展開され、台湾や南シナ海での潜在的な軍事紛争において、アメリカ軍の重要な戦力として機能することが期待されている。

 米比防衛協力の深化と中国の反発

 タイフォンのフィリピンへの配備は、米比間での防衛協力の深化を象徴するものである。特に2024年に行われた米比合同軍事演習「バリカタン」では、このシステムが「歴史的な第一歩」として導入された。これにより、フィリピンはアメリカからの高度な兵器システムの恩恵を受けることとなり、自国の防衛能力を大幅に強化することが可能になる。

 しかし、この動きに対して中国は強く反発している。中国は以前からフィリピンとアメリカの軍事協力を批判しており、特にタイフォンの配備は「地域の平和と安定を損なう」と主張している。中国の王毅外相は、アメリカがこの兵器システムをフィリピンに配備することが、地域全体に軍拡競争を引き起こすと警告している。また、中国側は、フィリピンと台湾の近接性から、タイフォンミサイルが台湾問題での米中対立に直接関わる可能性があると懸念している。

 フィリピンの防衛戦略と「包括的な群島防衛構想(CADC)」

フィリピン側は、このミサイルシステムを長期的に配備する意図を明確にしている。フィリピン軍のトップであるロメオ・ブラウナー将軍は、タイフォンだけでなく、他の高度なミサイルシステムも導入し、フィリピンの空域と海域の防衛を強化する必要があると述べている。これは、フィリピンが新たに採用した「包括的な群島防衛構想(Comprehensive Archipelagic Defense Concept: CADC)」に基づくものであり、この構想の目的は、フィリピンが南シナ海での中国との緊張を背景に、急速に防衛能力を強化することである。

 ブラウナー将軍は、アメリカから提供されたタイフォンミサイルシステムがフィリピンの防衛に不可欠であり、可能であれば「永遠に」配備しておきたいと述べている。フィリピンは、このミサイルシステムを維持することで、中国に対する抑止力を強化し、自国の主権を守る姿勢を強調している。

 地理的優位と台湾への影響

 タイフォンの配備場所であるフィリピン北部のラワグ国際空港(イロコス・ノルテ州)は、台湾の南部に非常に近い地理的条件を持っている。この基地から台湾南部の都市までは、飛行機で30分もかからない距離である。フィリピンに配備されたタイフォンシステムは、米中対立が激化した場合、アメリカ軍が中国本土や南シナ海における中国軍の拠点を攻撃する際の拠点となる可能性があり、戦略的に重要な位置にある。

 将来的な見通し

 一部の報道では、タイフォンシステムは2024年の「バリカタン」演習後に一時的に撤去される予定であったが、最近の報告によると、このシステムは少なくとも2025年の「バリカタン」演習までフィリピンに残る見通しである。さらに、フィリピン軍はこのミサイルシステムの長期的な配備を望んでおり、フィリピンの防衛戦略においてタイフォンが今後も重要な役割を果たすと考えられている。

 フィリピン政府は、中国に「不安な夜」を与えるために、このミサイルシステムを維持したいと公言しており、米中関係や地域の安全保障に対する影響は今後も続くと見られている。
 
【要点】

 ・タイフォンミサイルシステムの配備決定: フィリピンはアメリカ製の中距離ミサイルシステム「タイフォン(Typhon)」を無期限に配備することを発表。
 ・ミサイルシステムの特徴: タイフォンはSM-6やトマホークなど、最大射程1600キロメートルのミサイルを発射でき、地上や海上の目標に対して高精度で攻撃可能。
 ・米比合同演習「バリカタン」: 2024年の米比合同軍事演習「バリカタン」でタイフォンシステムが初めて導入され、両国の防衛協力が深化。
 ・中国の反発: 中国はタイフォンの配備が「地域の平和と安定を損なう」と強く反発。特に台湾問題に関連して、米中対立の一環として警戒。
 ・フィリピンの防衛戦略: フィリピン軍トップのロメオ・ブラウナー将軍は、タイフォンや他の高度な兵器システムを長期的に保持し、空域と海域の防衛を強化したいと表明。
 ・「包括的な群島防衛構想(CADC)」: フィリピンは新たな防衛構想「包括的な群島防衛想(CADC)」を策定し、中国に対抗するための防衛能力を迅速に強化する計画。
 ・戦略的な地理的優位: タイフォンの配備場所であるフィリピン北部のラワグ空港は、台湾の南部都市に非常に近く、台湾を巡る米中対立の際に重要な拠点となる可能性。
 ・配備の長期化の可能性: タイフォンミサイルシステムは少なくとも2025年までフィリピンに配備される見込みであり、フィリピン側は長期的に維持する意向。
 ・中国への圧力: フィリピン政府は、このミサイルシステムを保持することで、中国に対して圧力をかけることを狙っている。

【引用・参照・底本】

Philippines drops a Typhon missile gauntlet on China ASIA TIMES 2024.10.01
https://asiatimes.com/2024/10/philippines-drops-a-typhon-missile-gauntlet-on-china/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=21f0632878-DAILY_2_10_2024&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-21f0632878-16242795&mc_cid=21f0632878&mc_eid=69a7d1ef3c

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