【概要】

　アンドリュー・コリブコ氏の記事では、トランプ元大統領がBRICS諸国に対して課した脅威と、BRICS諸国によるドル依存の削減(いわゆる「脱ドル化」)に関する誤解について論じられている。トランプ氏は、BRICSが新通貨を創設したり、ドルの代替通貨を支援したりする場合、これらの国々に対して100%の関税を課すと警告している。しかし、この脅威が誤解に基づくものであると主張している。

　ロシアのプーチン大統領は、ドルを嫌悪しているわけではなく、むしろ利便性のためにドルを再び使用したいと述べている。しかし、アメリカがロシアに対して一方的に課した制裁により、ドル決済が不可能になったため、ロシアは必要に迫られて他の金融手段を開発することとなった。プーチン氏自身が9月の東方経済フォーラムやBRICS記者との会談、さらにBRICS首脳会議後の記者会見で述べた内容によると、ロシアは意図的に脱ドル化を進めているわけではなく、アメリカの制裁措置がロシアをそのような状況に追い込んだという立場である。

　さらに、プーチン氏はアメリカがドルに依存する現状を維持することなく、むしろその基盤を破壊していると批判している。彼は、ドルの使用が減少していることを認めつつも、それが徐々に進行しているだけであり、すぐにドルの支配が崩れるわけではないと述べている。

　BRICSが新しい通貨を導入する計画も、加盟国の通貨がドルを置き換える可能性も現時点ではないと指摘している。ただし、BRICS諸国が国内通貨をより頻繁に使用しているのは事実であり、それはロシアへの制裁回避が主な動機となっている。特に中国やインドがロシアの割安なエネルギーを輸入する際にドル以外の決済手段を利用していることが、脱ドル化の動きを促進している。

　トランプ氏の政策について、記事では以下のように提案している。もしトランプ氏がロシアへの主要な制裁を解除すれば、中国やインドは元のドル中心の貿易に戻る可能性がある。この過程では、例えばスイスの破産手続きで売却される可能性のあるノルドストリーム・プロジェクトを米国企業が購入し、それをきっかけにドイツを含む欧州諸国へのロシア産エネルギー輸入を再開することが挙げられる。この場合、ドルやSWIFTを利用した取引が復活する可能性がある。

　ただし、制裁解除はアメリカ国内外での政治的圧力に直面する可能性があり、特にロシアがウクライナ紛争で重大な譲歩を行うことは期待しにくい。プーチン氏もすべてのウクライナ領土から撤退するような要求には応じない見込みである。

　最終的に、脱ドル化の進展がアメリカの覇権に潜在的な脅威をもたらすが、現時点ではドルの支配を脅かす段階には達していないと結論づけている。それでも、トランプ氏が制裁を段階的に解除することで、この動きを鈍化させる可能性があるとも述べている。

【詳細】

　トランプ元大統領がBRICS諸国に対して抱いている誤解と、それに基づく政策的脅威についてさらに掘り下げて論じている。以下、主なポイントを詳述する。

　背景

　BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は新興経済国の連合であり、アメリカ主導の国際経済システムへの対抗策を模索していると広く見られている。特に、ドル依存からの脱却、いわゆる「脱ドル化」がその中心的テーマの一つとして注目されている。これに対し、トランプ氏はBRICSが新たな通貨を創設する、あるいはドルの代替通貨を支援する動きを見せた場合、それらの国々に対し100%の関税を課すという措置を講じると発表した。

　しかし、記事が指摘する通り、実際にはBRICS諸国間で新通貨の具体的な計画は存在せず、脱ドル化はもっぱら必要に迫られて行われているものである。これは特にロシアが西側諸国の制裁によりドル決済を利用できなくなったことが主因であり、意図的な戦略というよりも、制裁への対応策にすぎない。

　プーチン大統領の立場

　ロシアのプーチン大統領は、ドルを廃する政策を公式には追求していないと明言している。彼の主張を以下のように整理できる。

　ドル決済の必要性

　プーチン氏は、ロシアがドルを使えなくなったのはアメリカ側の制裁によるものであり、ロシア自体がドルを拒絶したわけではないと述べている。ドル決済は利便性が高く、国際貿易において効率的であるため、可能であれば再び使用したいとの意向を示している。

　制裁の影響

　アメリカがドルの使用を制限したことにより、ロシアだけでなく世界中の国々が「ドルの信頼性」に疑問を抱き始めた。これにより、ドルの使用が徐々に減少しているが、その影響は長期的であり、短期間での大きな変化は期待できない。

　アメリカの誤算
　
　プーチン氏は、アメリカが制裁を通じてドルの基盤を自ら破壊していると批判している。ドルはアメリカの国力の一つの象徴であるが、過剰な政治的利用により、他国がドルの代替手段を模索する結果を招いている。

　BRICSの実際の状況

　BRICSが新通貨を発行する予定も、現行のドル体制を脅かす計画もないと説明している。以下の点が重要である。

　1.国家通貨の使用増加

　BRICS諸国はドルの代替として、各国の通貨を利用する取引を増加させている。これは特に、ロシアから輸入されるエネルギーや農産品の決済において顕著である。しかし、これらの動きはあくまで制裁を回避するための「一時的措置」であり、ドルの完全な代替を目指しているわけではない。

　2.技術的・経済的制約

　新たな通貨を創設することは、巨大な技術的および経済的負担を伴う。また、BRICS各国はそれぞれ経済的な利害が異なり、新通貨に対する合意を形成するのは困難である。

　トランプ氏の脅威の評価

　トランプ氏の100%関税の脅威について、以下のように評価している。

　1.誤解に基づく政策

　トランプ氏は、BRICSがドルを排除し、新通貨を導入する計画を進めていると誤解している。実際には、これらの動きは存在せず、BRICS諸国がドルを利用できなくなった結果として生じた「消極的な脱ドル化」に過ぎない。

　2.逆効果の可能性

　仮にトランプ氏がBRICS諸国に高関税を課せば、これらの国々が一層ドルからの脱却を進め、アメリカ経済に逆風を招く可能性がある。

　解決策

　脱ドル化の動きを鈍化させるためにはアメリカ自身の政策変更が必要であると述べている。具体的には以下が提案されている。

　1.制裁の段階的解除

　アメリカがロシアに対する制裁を徐々に解除すれば、BRICS諸国は再びドルを利用した取引に戻る可能性がある。特に、中国やインドがロシアのエネルギーをドルで購入することが復活すれば、脱ドル化の流れを抑制できる。

　2.信頼回復の難しさ

　ただし、一度損なわれたドルへの信頼は完全には回復しない。制裁の濫用により、世界の国々がドル依存を見直す動きは続くだろう。

　3.段階的な戦略調整

　制裁解除に際しては、ロシアがウクライナ問題で譲歩することが条件となる可能性がある。これにより、アメリカの対外的な威信を保ちながら、ドル体制の維持を図る余地が生まれる。

　結論

　BRICS諸国による新通貨の導入やドルの置き換えは、現時点では実現性が低い。しかし、制裁により脱ドル化の動きが加速しているのも事実である。アメリカがこの流れを抑制するには、自国の政策、特に制裁の見直しを検討する必要があると記事は結論付けている。トランプ氏の関税脅威は、こうした現実を誤解したものであり、逆効果を招く恐れがあると警告している。
　
【要点】　

　1.トランプ氏の主張

　・BRICS諸国がドルの代替通貨を創設または支援する場合、100%関税を課すと脅威。
　・BRICSがドルを排除し、新通貨導入を計画していると誤解。

　2.BRICSの実態

　・新通貨創設やドルの完全置き換えの具体的な計画は存在しない。
　・国家通貨の利用拡大は、制裁回避のための消極的対応。
　・技術的・経済的制約や加盟国間の利害の違いから、新通貨は現実的でない。

　3.プーチン大統領の見解

　・ロシアはドルを拒否していないが、制裁によりドル決済が不可能になった。
　・ドル決済は利便性が高いため、可能なら再利用を希望。
　・アメリカの制裁がドルへの信頼を損ない、世界的な脱ドル化の動きを加速させている。

　4.脱ドル化の現状

　・中国とインドはロシアからのエネルギー輸入に国家通貨を使用。
　・脱ドル化は制裁の影響で加速しているが、短期的にドルの支配を脅かす状況ではない。

　5.トランプ氏の政策の問題点

　・BRICSの動向を誤解しており、100%関税は逆効果を招く可能性。
　・高関税によりBRICS諸国がさらにドル依存を回避する恐れがある。

　6.解決策の提案

　・制裁を段階的に解除することでBRICS諸国を再びドル決済に戻す。
　・特に中国とインドがロシア産エネルギーをドルで購入する状況を復活させるべき。
　・制裁解除にはロシアの譲歩(例：ウクライナ問題の解決)が必要となる可能性。

　7.結論

　・脱ドル化の動きは長期的な課題だが、現在のドル支配を直ちに脅かすものではない。
　・アメリカは制裁濫用の見直しと信頼回復を通じて、脱ドル化の流れを鈍化させる必要がある。
　・トランプ氏の関税脅威は、現実を誤解した政策であり、再検討が求められる。

【引用・参照・底本】

Trump’s Threats Against BRICS Are Based On False Premises Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.02
https://korybko.substack.com/p/trumps-threats-against-brics-are?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152432353&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

【概要】

　台湾地域の指導者である頼清徳(Lai Ching-te)氏のハワイでの「立ち寄り」や、米国による台湾への新たな武器売却の発表を巡り、中国がこれに強く反発し、対抗措置を講じる決意を示していることを報じている。

　1.概要

　台湾地域の動きと中国の反応：台湾地域の指導者である頼清徳氏が、太平洋地域への「外交的同盟国」訪問の一環としてハワイに立ち寄りを行った。この行動に対し、中国は「一つの中国」原則に違反するとして反対を表明し、米国政府に厳重抗議を行った。中国側の見解では、こうした訪問はいかなる名目であれ許容できないとしている。

　2.米国の武器売却

　米国防総省は台湾地域への3億8500万ドル相当の武器売却を発表した。この武器にはF-16戦闘機用のスペアパーツや電子機器、通信設備が含まれている。中国外務省はこれを「台湾独立」を支持しないとする米国の公約に矛盾するとして非難し、武器売却を即刻停止するよう要求している。

　3.中国の対抗措置

　中国政府は、米国による台湾支援をやめるよう求めるとともに、国家主権と領土保全を守るための強力かつ断固たる対抗措置を取ると表明している。台湾の独立を追求する試みは失敗する運命にあると警告している。

　4.台湾当局の発言と地域の緊張

　台湾当局者は、米国主導のAUKUS(オーカス)グループの拡大に期待感を示し、台湾海峡での軍艦の航行を歓迎すると述べている。一方、中国の専門家は、これが太平洋諸国の間で歓迎されない可能性が高いと指摘している。

　5.中国の軍事的優位性

　中国人民解放軍(PLA)は、航空ショーで最新鋭戦闘機を展示し、台湾が購入するF-16戦闘機を世代的に凌駕する性能を持つことを強調した。これにより、台湾が米国製の武器に依存することが安全を保障しないとの見解を示している。

　6.台湾当局の目的とリスク

　専門家は、台湾当局が米国の次期政権に対しその価値をアピールしようとしている可能性を指摘しているが、これが地域の緊張を悪化させる危険性を伴うと述べている。

　中国政府は、台湾問題が中国の核心的利益であることを繰り返し強調し、いかなる分離主義的な動きも失敗に終わると断言している。

【詳細】

　台湾問題に関する具体的な状況、中国の対応、米国の行動、そして関連する専門家の分析を詳細に説明する。

　1. 頼清徳氏のハワイでの「立ち寄り」

　台湾地域の指導者である頼清徳氏は、太平洋地域の「外交的同盟国」訪問の一環として米国ハワイに「立ち寄り」を行った。この「立ち寄り」は、台湾と米国の間で公式な外交関係を持たない状況下で、中国が特に問題視する行動である。

　・中国の反応

　中国の台湾事務弁公室の報道官であるChen Binhua氏は、この行動が「一つの中国」原則に違反しており、どのような名目や理由であっても受け入れられないと述べた。さらに、中国外務省はこの件に関して米国政府に対し厳重抗議を行った。

　・要請

　・中国側は米国に対し、「一つの中国」原則および三つの米中共同コミュニケに基づき、慎重に台湾問題を扱うよう求めている。

　2. 米国による武器売却

　米国防総省は、台湾地域への約3億8500万ドル相当の武器売却を承認したと発表。売却内容には、以下が含まれている。

　・F-16戦闘機用のスペアパーツ
　・電子機器、特にアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダー
　・通信設備やそのサポートシステム

　中国の見解

　・中国は、米国の武器売却が台湾独立支持に該当すると見なし、「台湾独立」を支持しないという米国の公式見解に反していると非難。
　・中国外務省は、これが台湾独立を目指す勢力に「誤ったシグナル」を送るとして厳しく抗議し、売却の即時中止を求めた。

　3. 中国の対抗措置

　中国政府は、国家主権と領土保全を守るため「断固たる」対抗措置を取ると明言。具体的な内容は明らかにされていないが、過去の事例から以下が想定される。

　・軍事演習： 台湾周辺での大規模な軍事演習を行う可能性がある。
　・外交的圧力： 米国およびその同盟国に対する外交的な抗議や制裁。
　・経済的制裁： 台湾との貿易や米国企業への圧力。

　Chen Binhua氏は、台湾地域が米国に「武器購入を通じて安全を買う」ことは無意味であり、台湾独立を軍事的手段で達成しようとする試みは、危険で自滅的な結末を招くと警告している。

4. 軍事的優位性

中国人民解放軍(PLA)は、最近の航空ショーで最新鋭戦闘機を展示し、その性能をアピールした。これにより、中国の軍事力が台湾が購入する米国製F-16戦闘機を大きく上回ることを強調した。

展示された主な戦闘機

　・J-10C: 中型戦闘機
　・J-16: 重戦闘機
　・J-20, J-35A: 第5世代ステルス戦闘機
　・J-15T, J-15D: 空母艦載機、電子戦機

　・専門家の傅前哨氏によれば、F-16は第4世代機であり、J-20やJ-35Aと比較すると技術的に1世代遅れているとされる。これにより、台湾の軍備増強が中国軍の優位性を揺るがすことは難しいと見られている。

　5. 台湾当局とAUKUS

　台湾の「外務当局」副長官である呉志中(フランソワ・ウー)氏は、米国主導のAUKUS(オーストラリア、英国、米国の防衛協定)の拡大を歓迎し、これを「NATOのようなもの」と表現した。また、台湾海峡での米国主導の軍艦航行を支持する意向を示している。

　・地域の反応

　中国の専門家によれば、太平洋諸国は歴史的に米国の核実験や植民地支配の影響を受けており、AUKUSの拡大を好意的に受け入れる可能性は低いと指摘されている。

　6. 台湾当局の行動の背景

　台湾当局の行動には、次期米国政権へのアピール意図が含まれていると見られる。北京外交学院の李海東教授は、台湾の独立派が米国の政権移行期間中に緊張を高め、次期政権にとって「価値がある存在」であることを示そうとしている可能性を指摘している。
　しかし、これは地域の緊張をさらに悪化させ、危険な状況を招くリスクを伴う。

　結論

　中国は、台湾問題を国家の核心的利益として強調し、台湾独立を目指す試みを断固拒否する姿勢を示している。米国の武器売却や台湾指導者の行動が地域の緊張を高める一方で、中国は外交的および軍事的手段を通じて対応を強化する構えである。
　
【要点】　

　1.頼清徳氏のハワイ「立ち寄り」

　・台湾地域指導者頼清徳氏が太平洋諸国訪問中にハワイで「立ち寄り」。
　・中国は「一つの中国」原則違反と非難し、米国に厳重抗議。
　・米国に対し慎重な台湾問題対応を求める。

　2.米国の武器売却

　・米国が台湾へ約3億8500万ドル相当の武器売却を発表。
　・F-16戦闘機用スペアパーツ、AESAレーダー、通信設備が含まれる。
　・中国はこれを「台湾独立」支援と見なし、即時中止を要求。

　3.中国の対抗措置

　・「国家主権と領土保全を守るため」強力な対抗措置を取ると明言。
　・具体例として軍事演習、外交的圧力、経済的制裁の可能性。

　4.中国の軍事的優位性

　・中国人民解放軍(PLA)は最新鋭戦闘機(J-20、J-35Aなど)を展示。
　・専門家はF-16よりも世代的に優位と指摘。
　・台湾の軍備増強が中国の軍事的優位性に影響を与える可能性は低い。

　5.AUKUSに関する台湾の動き

　・台湾「外務当局」副長官がAUKUS拡大を歓迎し、「NATOのようなもの」と表現。
　・専門家は太平洋諸国が歴史的背景からAUKUSを歓迎しない可能性を指摘。

　6.台湾当局の行動の背景

　・米国政権移行期間中に緊張を高め、次期政権に「価値」を示そうとする意図。
　・緊張を高める行動が地域情勢をより危険で複雑なものにすると懸念。

　7.中国の立場

　・台湾問題は国家の核心的利益であり、独立を目指す行動は断固拒否。
　・中国人民の国家主権と領土保全を守る意志と能力を強調。

【引用・参照・底本】

Lai authorities, US seek ‘more provocative’ move; China vows strong countermeasures GT 2024.12.01
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1324157.shtml

【概要】

　頼清徳総統は、2024年11月30日に中華民国台湾の総統として初の外遊に出発した。訪問先は、台湾と正式な外交関係を持つマーシャル諸島、ツバル、パラオ共和国であり、この外遊は「繁栄南島 智慧永続」というテーマで実施されている。往路では米ハワイ、復路では米領グアムに立ち寄り、合計6泊7日の行程である。

出発前の談話では、今回の外遊の核心目標として以下の3点を掲げた。

　1.智慧永続(スマート＆サステナブルな発展)
　2.民主永続(民主主義の持続的な発展)
　3.邦誼永続(国交樹立国との持続的な友好関係)
　
　頼総統は、民主主義、平和、繁栄という価値観を基盤に、訪問先国との協力関係を強化し、台湾が民主主義の手本であり、世界平和と安定に寄与する主要な役割を果たしていることを示す意向を表明した。

　ハワイでの活動

　現地時間11月30日午前、頼総統はハワイのダニエル・K・イノウエ国際空港に到着した。以下の行事に参加した。

　1.ビショップ博物館訪問

　・太平洋地域の歴史と文化、特にオーストロネシア語族の移動に関する展示を視察した。
　・台湾先住民族の文物が展示されており、台湾と太平洋地域の文化的つながりを確認した。
　・最後に、台湾の原住民族委員会の曽智勇主任委員および博物館館長と贈り物を交換し、館長から羽根の首飾りを受け取った。

　2.ハワイ州緊急事態管理庁(HI-EMA)訪問

　・ジェームス・バロス長官およびジョシュ・グリーン州知事の歓迎を受けた。
　・危機管理システムについて説明を受け、意見交換を行った。

　3.パールハーバー国立記念館訪問

　・クルーズ船でアリゾナ記念館を訪れ、戦没者慰霊碑で敬意を表した。
　・戦艦アリゾナの平面図や解説に耳を傾け、真珠湾攻撃の歴史について理解を深めた。

　夜にはホノルル在住の台湾出身者との歓迎晩餐会に出席し、台湾の民主主義と経済発展が国際社会に貢献できることを強調した。また、海外に住む台湾出身者が母国を応援していることに感謝の意を示し、国際的評価をさらに高めるための団結を訴えた。

　今回の外遊は、台湾と太平洋地域の関係深化と国際社会における台湾の地位向上を目指した重要な機会である。

【詳細】

　頼清徳総統の初外遊は、台湾の国際的地位の向上、外交関係の強化、および台湾の民主主義の模範性を世界に示す目的を持つものであり、詳細は以下の通りである。

　全体概要

　・訪問国：マーシャル諸島、ツバル、パラオ共和国(いずれも台湾と正式な外交関係を有する国々)
　・立ち寄り地：往路でハワイ、復路でグアムに滞在
　・日程：6泊7日(2024年11月30日～12月6日)
　・テーマ：「繁栄南島 智慧永続」(オーストロネシア地域の繁栄とサステナブルな発展)

　この外遊は、台湾が持続可能な発展と民主主義を基盤に、友好国との協力を深化させるための外交活動であるとともに、台湾が国際社会における重要な役割を果たしていることをアピールする場となった。

　ハワイでの活動詳細

　頼清徳総統は11月30日、ハワイのホノルルに到着し、以下の行事に参加した。

　1. ビショップ博物館訪問

　・目的：台湾と太平洋地域のオーストロネシア語族の文化的・歴史的つながりを強調
　・視察内容

　　⇨ 太平洋の地図や台湾先住民族(タイヤル族・パイワン族)の文物の展示を視察。
　　⇨ オーストロネシア語族の移動を示す図や歴史的資料を通じて、地域の文化的つながりを理解。

　・交流

　・台湾原住民族委員会の曽智勇主任委員およびビショップ博物館館長と贈り物を交換。
　・博物館館長から台湾とハワイの友好の象徴として羽根の首飾りを授与される。

　2. ハワイ州緊急事態管理庁(HI-EMA)訪問

　・目的：ハワイ州の災害管理体制の視察と意見交換
　・活動内容

　　⇨ ハワイ州緊急事態管理庁のジェームス・バロス長官とジョシュ・グリーン州知事の歓迎を受ける。
　　⇨ 緊急事態管理に関するシステムや危機対応の体制を視察し、同庁の専門家と意見交換を実施。

　3. パールハーバー国立記念館訪問

　・目的：戦没者の追悼および歴史的意義の確認
　・活動内容

　　⇨ クルーズ船でアリゾナ記念館へ向かい、1941年の真珠湾攻撃で沈没した戦艦アリゾナに関する展示を視察。
　　⇨ 戦艦アリゾナの乗組員の名前が刻まれた慰霊碑の前で黙祷し、敬意を表す。
　　⇨ 真珠湾攻撃の歴史的背景と意義について解説を受ける。

　4. 歓迎晩餐会

　・目的：ハワイ在住の台湾出身者との交流と団結の強化
　・発言内容

　　⇨ 海外に暮らす台湾出身者が台湾を支援していることへの感謝を表明。
　　⇨ 「台湾の民主主義は国際社会の手本であり、科学技術と経済発展を通じて世界の発展に寄与できる」と強調。
　　⇨ 「一致団結すれば困難を克服でき、国際的評価を高められる」と述べ、結束を呼びかけた。

　訪問国での予定

　マーシャル諸島

　・目的：既存の外交関係を強化し、持続可能な発展に向けた協力を深める。
　・活動内容：政府関係者との会談、経済・技術協力プロジェクトの視察。

　ツバル

　・目的：気候変動への対応や民主主義の共有価値を強調。
　・活動内容：環境保全プロジェクトの視察、共同声明の発表。

　パラオ共和国

　・目的：観光・漁業を中心とした経済協力の深化。
　・活動内容：観光促進イベントへの出席、現地のリーダーとの交流。

　総統の声明と目標

　頼総統は、以下の3つの主要な目標を掲げて外遊を進めている。

　1.台湾が民主主義の手本であることを示す。
　2.国交国との協力を深化させ、持続可能な発展を追求する。
　3.世界の平和と安定を促進し、台湾が国際社会で不可欠な存在であることを示す。

　意義

　頼総統の外遊は、台湾が国際社会で果たす役割を具体的に示す場となり、外交的な存在感を高めることを目指している。また、ハワイや訪問先国との文化的・経済的つながりを強化し、台湾の持続可能な発展に向けた取り組みを強調する意図がある。
　
【要点】　

　頼清徳総統の初外遊(2024年11月30日～12月6日)

　概要

　・訪問国：マーシャル諸島、ツバル、パラオ共和国(台湾と正式な外交関係を有する国々)
　・経由地：ハワイ(往路で2泊)、グアム(復路で1泊)
　・テーマ：「繁栄南島 智慧永続」(オーストロネシア地域の繁栄と持続可能な発展)

　ハワイでの活動

　1.ビショップ博物館訪問

　・太平洋地域と台湾のオーストロネシア語族の文化・歴史的つながりを視察。
　・台湾先住民族の文物や太平洋の移動史を解説員と共に見学。
　・博物館館長から羽根の首飾りを贈呈される。

　2.ハワイ州緊急事態管理庁(HI-EMA)訪問

　・ハワイ州の災害危機管理システムを視察。
　・ジェームス・バロス長官やジョシュ・グリーン州知事と意見交換。

　3.パールハーバー国立記念館訪問

　・クルーズ船でアリゾナ記念館を訪問。
　・戦艦アリゾナの慰霊碑で黙祷し、戦没者に敬意を表明。
　・真珠湾攻撃の歴史に関する解説を受ける。

　4.歓迎晩餐会

　・ハワイ在住の台湾出身者との交流。
　・台湾の民主主義と経済発展の意義を強調し、結束を呼びかけ。

　訪問国での予定

　1.マーシャル諸島

　・政府関係者との会談。
　・持続可能な発展に向けた経済・技術協力の推進。

　2.ツバル

　・気候変動対応や環境保全プロジェクトの視察。
　・民主主義の共有価値を強調。

　3.パラオ共和国

　・観光・漁業を中心とした経済協力の深化。
　・観光促進イベントや政府関係者との交流。

　外遊の目標

　1.台湾が民主主義の手本であることを示す。
　2.国交樹立国との協力を強化し、持続可能な発展を推進。
　3.世界の平和と安定を促進し、台湾の国際的存在感を高める。

　意義

　・台湾の国際的地位の向上と存在感の強化。
　・民主主義の価値観を国際社会に示す。
　・外交関係国との結びつきを深め、経済協力を拡大。

【引用・参照・底本】

頼清徳総統が初の外遊、ハワイ経由でマーシャル諸島、ツバル、パラオを訪問 TAIWAN TODAY 2024.12.02
https://jp.taiwantoday.tw/news.php?post=262424&unit=149&utm_source=Taiwan+Today+JP+9&utm_medium=email&utm_content=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9+textlink

【概要】

　中国外務省は、リトアニア外務省が中国駐リトアニア臨時代理大使館の関係外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ(受け入れ不適格者)」と宣言し、期限内の出国を求めたことについて、「無理由かつ挑発的な行為」であるとして強く非難し、断固として反対する立場を表明した。

　外務省報道官によると、リトアニアは台湾に関する問題において、一つの中国原則に重大に違反し、中国とリトアニアの外交関係樹立に関する共同声明での政治的な約束を破ったとされる。この行動は二国間関係に深刻な困難をもたらしており、中国はリトアニアに対し、主権と領土保全を損なう行為を直ちに停止し、二国間関係をさらに悪化させないよう求めている。また、中国は必要に応じて報復措置を取る権利を留保していると強調した。

　2021年、リトアニアが台湾に「代表事務所」の設置を許可したことで、中国はこれを一つの中国原則および国際規範への公然たる違反と非難し、外交関係を臨時代理大使レベルに格下げした。この経緯が二国間関係の悪化を招いており、現在も影響が続いている。

　一方、リトアニアの次期首相は、中国との外交関係を修復することに前向きな姿勢を示していると報じられている。これを受け、中国外務省の林剣報道官は定例記者会見で、新たに成立するリトアニア政府が具体的な行動を通じて、両国の外交関係樹立時の政治的約束を遵守し、一つの中国原則を堅持することを期待していると述べた。また、二国間関係を正しい軌道に戻すための条件を整えるよう求めた。

　中国側は、国際的なコンセンサスに基づき、リトアニアが関係正常化に向けた努力を行うことを希望している。

【詳細】

　2024年12月2日、中国外務省は、リトアニア外務省が中国駐リトアニア臨時代理大使館の関係外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ(受け入れ不適格者)」として宣言し、期限内にその外交官がリトアニアを離れるよう要求したことについて、強く非難した。中国はこのリトアニアの措置を「無理由かつ挑発的な行為」であるとし、断固として反対する立場を表明した。

　リトアニアと中国の関係の背景

　リトアニアと中国の外交関係は、台湾問題を巡って大きく悪化した。2021年、リトアニアは台湾に「代表事務所」を開設することを許可した。この行動は中国の「一つの中国」原則に対する明確な違反であり、中国はこれを公然と非難した。中国は台湾問題に関して一つの中国原則を強く支持しており、台湾を独立国家として認めることは許さない。そのため、リトアニアが台湾と公式に関係を結ぼうとしたことは、中国にとって極めて敏感な問題であり、この事態を受けて中国はリトアニアとの外交関係を格下げ、駐リトアニア大使館の規模を縮小して、臨時代理大使のレベルにまで降格させた。

　リトアニアの行動と中国の反応
　
　リトアニアの外交官に対する「ペルソナ・ノン・グラータ」の措置は、中国側から見て新たな挑戦として捉えられた。中国外務省の報道官は、リトアニアが「一つの中国」原則を重大に侵害し、また1991年に締結された中国とリトアニアの外交関係樹立に関する共同声明での政治的約束を破ったことを指摘した。これにより、二国間関係は深刻な困難に直面し、今回の措置は関係をさらに悪化させる結果となった。

　中国は、リトアニアに対し、主権と領土保全を侵害しないよう求め、また二国間関係を不必要に悪化させないようにとの強いメッセージを発信している。さらに、中国はリトアニアに対して報復措置を取る権利を留保しており、今後の対応については状況を見守るとしつつも、リトアニアに圧力をかけている。

　新政府への期待
　
　リトアニアでは次期政府が形成される予定であり、新首相は中国との外交関係を改善する意向を示しているとの報道がある。これに対し、中国外務省の林剣報道官は、新政府がリトアニアと中国との間で成立した外交関係樹立に関する政治的約束を尊重し、一つの中国原則を遵守するよう期待していると述べた。また、中国はリトアニアの新政府が具体的な行動を通じて、二国間関係を正常化するために努力することを望んでいる。

　経済的影響

　リトアニアと中国の関係悪化は、貿易面でも影響を及ぼしており、中国はリトアニア製品に対する貿易制限を強化している。リトアニアは、過去数年間で中国からの経済的な圧力を受けており、この問題は両国の貿易関係に深刻な影響を与えている。リトアニアの一部政治指導者は、経済的な損失を回避し、関係の修復を目指しているが、中国は台湾問題に関する原則を崩すことはないという姿勢を貫いている。

　まとめ

　中国は、リトアニアの「ペルソナ・ノン・グラータ」措置に対し、強い反発を示し、リトアニアが一つの中国原則を遵守することを求めている。また、中国はリトアニアに対し、外交関係の修復と正常化を望んでおり、新政府が関係改善に向けて具体的な措置を取ることを期待している。
　
【要点】　

・リトアニアの行動: リトアニア外務省は、中国駐リトアニア臨時代理大使館の外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ(受け入れ不適格者)」と宣言し、期限内に出国を求めた。

　・中国の反応: 中国外務省はリトアニアの行動を「無理由かつ挑発的な行為」として強く非難し、断固として反対する立場を表明。

　・台湾問題に関する背景: 2021年、リトアニアは台湾に「代表事務所」を開設することを許可。これが中国の「一つの中国」原則に違反し、中国は外交関係を格下げ。

　・関係の悪化: リトアニアの行動は中国との外交関係を深刻に悪化させ、その後も貿易や外交の摩擦が続いている。

　・中国の要求: 中国はリトアニアに対し、主権と領土保全を損なう行為を直ちに停止し、関係をさらに悪化させないように求め、報復措置の権利を留保。

　・新政府への期待: リトアニアの新政府が外交関係の修復に向けて具体的な行動を取ることを期待。中国は一つの中国原則を遵守することを求めている。

　・経済的影響: 両国の貿易関係は影響を受け、リトアニアは中国からの経済的な圧力を受けている。

　・中国の立場: 中国は、リトアニアが関係正常化に向けて努力することを望み、関係の修復を期待している。

【引用・参照・底本】

China strongly condemns Lithuania's wanton and provocative action, says Chinese FM on Lithuania's FM demanding Chinese diplomatic personnel to leave the country within time required GT 2024.12.02
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1324187.shtml