「アークティックLNG2」と日本の反露政策 ― 2025年01月25日 18:59
【概要】
ロシア外務省は、日本が現在の反露路線を取っている状況下で、新たなエネルギープロジェクトを開始するのは困難であると発表した。同省によれば、ロシアと日本はエネルギー分野において引き続き協力を維持しており、ロシア側はサハリンにおけるプロジェクトでの日本企業の参加を妨げていない。しかしながら、日本政府が同盟国、特にアメリカの決定に縛られていることが影響していると述べた。
具体的には、ロシア外務省は、日本が国のエネルギー安全保障を確保する重要な要素として位置付けていた「アークティックLNG2」プロジェクトへの日本の関与が、アメリカの商業的利益に沿う形で事実上凍結された点を指摘した。同プロジェクトは年産660万トンのLNG生産を目指す大規模な事業であり、日本の三井物産とJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が設立した合弁会社が10%の権益を保有している。しかし、アメリカが2023年11月にこのプロジェクトを経済制裁の対象に加えたことで事業が妨害されている。ただし、これまで日本企業はこのプロジェクトからの撤退を発表していない。
また、ロシア外務省は、エネルギー分野がロシアと日本の間で建設的な協力が維持されている数少ない分野の一つであることを強調した。一方で、2025年6月28日まで、日本に供給されるサハリン2プロジェクトの石油が米国の価格上限措置の対象外とされることが昨年6月に米国財務省から発表された。このように、日本とロシアのエネルギー協力は制約を受けながらも継続している状況である。
【詳細】
ロシア外務省が発表した声明によると、ロシアと日本のエネルギー分野での協力は依然として維持されているものの、日本政府の反露政策が新たなプロジェクトの進展を妨げる主因となっていると指摘している。ロシア側はサハリンプロジェクトを含む既存の事業において日本企業の参加を引き続き容認しており、エネルギー供給の義務も履行している。しかし、新規の協力の展開は現状では非常に難しいと述べた。
背景と詳細
サハリン2プロジェクト
「サハリン2」はロシア極東で行われる液化天然ガス(LNG)および石油の大規模生産プロジェクトであり、日本はこのプロジェクトに深く関与している。日本政府および企業はこのプロジェクトをエネルギー安全保障の重要な柱として位置づけてきた。2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、多くの西側諸国がロシアとのエネルギー協力を停止したが、日本は国内のエネルギー供給を確保するため、「サハリン2」から撤退せず、石油やLNGの輸入を継続している。
米国の制裁措置
米国財務省は2023年6月、「サハリン2」プロジェクトから日本への石油供給を、2025年6月28日までの期間限定で価格上限措置の対象外とすることを発表した。この措置は、日本のエネルギー供給を安定させるための特例とみなされている。一方で、同年11月、米国商務省は「アークティックLNG2」プロジェクトを経済制裁の対象に追加した。これにより、プロジェクトの資金調達や機材供給などが制約され、日本企業を含む関係者の活動が著しく妨害されている。
アークティックLNG2プロジェクト
「アークティックLNG2」はロシア北極圏で行われる天然ガスの液化・輸出プロジェクトであり、最大年産660万トンを目指す巨大事業である。日本は三井物産とJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が設立した合弁会社を通じて、このプロジェクトに10%の権益を保有している。しかし、米国の制裁により事業が凍結状態に陥り、進行が大幅に遅れている。それにもかかわらず、日本企業はこれまでに撤退を表明しておらず、将来的な状況改善の可能性に期待を寄せているとみられる。
日本の対露政策とアメリカの影響
ロシア外務省は、日本の反露政策がアメリカ主導の決定に強く影響を受けている点を批判した。特に、日本が「アークティックLNG2」をエネルギー安全保障上の重要な要素と位置付けながらも、アメリカの商業的利益に沿う形でプロジェクトへの関与を事実上停止せざるを得なくなった点を例として挙げた。これにより、日本のエネルギー政策がアメリカの制約の下に置かれ、独立した意思決定が難しい状況になっているとロシア側は主張している。
ロシア側の主張とエネルギー分野の意義
ロシア外務省は、エネルギー分野が依然としてロシアと日本の間で建設的な協力が維持されている数少ない分野であることを強調した。政治的対立や制裁の影響が強まる中でさえ、この分野での協力は完全には途絶えていない。特に、日本がロシア産エネルギーに依存している現状を考慮すると、エネルギー供給の維持が両国にとって共通の利益であると見ている。
ロシア側は、こうした協力が続いているにもかかわらず、日本政府の反露路線が新たなプロジェクトの可能性を閉ざしていると述べた。さらに、アメリカの経済制裁が日本のエネルギー安全保障政策に与える影響についても懸念を示し、日本が独立したエネルギー戦略を構築する必要性を示唆した。
【要点】
1.ロシア外務省の声明
・ロシアと日本はエネルギー分野での協力を継続しているが、日本政府の反露政策により新規プロジェクトの実現は難しい。
・ロシア側は、既存プロジェクト(例:サハリン)において日本企業の参加を妨げていない。
2.サハリン2プロジェクト
・ロシア極東の液化天然ガス(LNG)と石油の生産プロジェクトで、日本は撤退せず、供給を継続。
・2023年6月、米国財務省はこのプロジェクトの日本への石油供給を2025年6月まで制裁対象外とする特例措置を発表。
3.アークティックLNG2プロジェクト
・ロシア北極圏での天然ガス液化プロジェクト(最大年産660万トン)。
・日本は三井物産とJOGMECを通じて10%の権益を保有。
・2023年11月、米国が経済制裁の対象に追加したため、事業が凍結状態に陥る。
4.米国の制裁の影響
・米国主導の制裁により、日本企業の活動が制約され、新たなエネルギープロジェクトへの参画が困難になっている。
・日本政府はアメリカの政策に縛られ、独立したエネルギー政策を展開できていないとロシア側が批判。
5.エネルギー分野の重要性
・ロシア外務省は、エネルギーが両国間で建設的協力が維持されている数少ない分野と指摘。
・日本のエネルギー安全保障にはロシアとの協力が不可欠とされるが、政治的障壁が進展を阻害している。
6.ロシア側の主張
・日本は独立したエネルギー戦略を構築すべきであり、米国の商業的利益に従う現状を脱する必要があると主張。
・日本の反露政策が新規プロジェクトを妨げ、両国の協力の可能性を閉ざしている。
【引用・参照・底本】
日本の反露路線の下で新たなエネルギープロジェクトは不可能=露外務省 sputnik 日本 2025.01.25
https://sputniknews.jp/20250125/100-19528400.html
ロシア外務省は、日本が現在の反露路線を取っている状況下で、新たなエネルギープロジェクトを開始するのは困難であると発表した。同省によれば、ロシアと日本はエネルギー分野において引き続き協力を維持しており、ロシア側はサハリンにおけるプロジェクトでの日本企業の参加を妨げていない。しかしながら、日本政府が同盟国、特にアメリカの決定に縛られていることが影響していると述べた。
具体的には、ロシア外務省は、日本が国のエネルギー安全保障を確保する重要な要素として位置付けていた「アークティックLNG2」プロジェクトへの日本の関与が、アメリカの商業的利益に沿う形で事実上凍結された点を指摘した。同プロジェクトは年産660万トンのLNG生産を目指す大規模な事業であり、日本の三井物産とJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が設立した合弁会社が10%の権益を保有している。しかし、アメリカが2023年11月にこのプロジェクトを経済制裁の対象に加えたことで事業が妨害されている。ただし、これまで日本企業はこのプロジェクトからの撤退を発表していない。
また、ロシア外務省は、エネルギー分野がロシアと日本の間で建設的な協力が維持されている数少ない分野の一つであることを強調した。一方で、2025年6月28日まで、日本に供給されるサハリン2プロジェクトの石油が米国の価格上限措置の対象外とされることが昨年6月に米国財務省から発表された。このように、日本とロシアのエネルギー協力は制約を受けながらも継続している状況である。
【詳細】
ロシア外務省が発表した声明によると、ロシアと日本のエネルギー分野での協力は依然として維持されているものの、日本政府の反露政策が新たなプロジェクトの進展を妨げる主因となっていると指摘している。ロシア側はサハリンプロジェクトを含む既存の事業において日本企業の参加を引き続き容認しており、エネルギー供給の義務も履行している。しかし、新規の協力の展開は現状では非常に難しいと述べた。
背景と詳細
サハリン2プロジェクト
「サハリン2」はロシア極東で行われる液化天然ガス(LNG)および石油の大規模生産プロジェクトであり、日本はこのプロジェクトに深く関与している。日本政府および企業はこのプロジェクトをエネルギー安全保障の重要な柱として位置づけてきた。2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、多くの西側諸国がロシアとのエネルギー協力を停止したが、日本は国内のエネルギー供給を確保するため、「サハリン2」から撤退せず、石油やLNGの輸入を継続している。
米国の制裁措置
米国財務省は2023年6月、「サハリン2」プロジェクトから日本への石油供給を、2025年6月28日までの期間限定で価格上限措置の対象外とすることを発表した。この措置は、日本のエネルギー供給を安定させるための特例とみなされている。一方で、同年11月、米国商務省は「アークティックLNG2」プロジェクトを経済制裁の対象に追加した。これにより、プロジェクトの資金調達や機材供給などが制約され、日本企業を含む関係者の活動が著しく妨害されている。
アークティックLNG2プロジェクト
「アークティックLNG2」はロシア北極圏で行われる天然ガスの液化・輸出プロジェクトであり、最大年産660万トンを目指す巨大事業である。日本は三井物産とJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)が設立した合弁会社を通じて、このプロジェクトに10%の権益を保有している。しかし、米国の制裁により事業が凍結状態に陥り、進行が大幅に遅れている。それにもかかわらず、日本企業はこれまでに撤退を表明しておらず、将来的な状況改善の可能性に期待を寄せているとみられる。
日本の対露政策とアメリカの影響
ロシア外務省は、日本の反露政策がアメリカ主導の決定に強く影響を受けている点を批判した。特に、日本が「アークティックLNG2」をエネルギー安全保障上の重要な要素と位置付けながらも、アメリカの商業的利益に沿う形でプロジェクトへの関与を事実上停止せざるを得なくなった点を例として挙げた。これにより、日本のエネルギー政策がアメリカの制約の下に置かれ、独立した意思決定が難しい状況になっているとロシア側は主張している。
ロシア側の主張とエネルギー分野の意義
ロシア外務省は、エネルギー分野が依然としてロシアと日本の間で建設的な協力が維持されている数少ない分野であることを強調した。政治的対立や制裁の影響が強まる中でさえ、この分野での協力は完全には途絶えていない。特に、日本がロシア産エネルギーに依存している現状を考慮すると、エネルギー供給の維持が両国にとって共通の利益であると見ている。
ロシア側は、こうした協力が続いているにもかかわらず、日本政府の反露路線が新たなプロジェクトの可能性を閉ざしていると述べた。さらに、アメリカの経済制裁が日本のエネルギー安全保障政策に与える影響についても懸念を示し、日本が独立したエネルギー戦略を構築する必要性を示唆した。
【要点】
1.ロシア外務省の声明
・ロシアと日本はエネルギー分野での協力を継続しているが、日本政府の反露政策により新規プロジェクトの実現は難しい。
・ロシア側は、既存プロジェクト(例:サハリン)において日本企業の参加を妨げていない。
2.サハリン2プロジェクト
・ロシア極東の液化天然ガス(LNG)と石油の生産プロジェクトで、日本は撤退せず、供給を継続。
・2023年6月、米国財務省はこのプロジェクトの日本への石油供給を2025年6月まで制裁対象外とする特例措置を発表。
3.アークティックLNG2プロジェクト
・ロシア北極圏での天然ガス液化プロジェクト(最大年産660万トン)。
・日本は三井物産とJOGMECを通じて10%の権益を保有。
・2023年11月、米国が経済制裁の対象に追加したため、事業が凍結状態に陥る。
4.米国の制裁の影響
・米国主導の制裁により、日本企業の活動が制約され、新たなエネルギープロジェクトへの参画が困難になっている。
・日本政府はアメリカの政策に縛られ、独立したエネルギー政策を展開できていないとロシア側が批判。
5.エネルギー分野の重要性
・ロシア外務省は、エネルギーが両国間で建設的協力が維持されている数少ない分野と指摘。
・日本のエネルギー安全保障にはロシアとの協力が不可欠とされるが、政治的障壁が進展を阻害している。
6.ロシア側の主張
・日本は独立したエネルギー戦略を構築すべきであり、米国の商業的利益に従う現状を脱する必要があると主張。
・日本の反露政策が新規プロジェクトを妨げ、両国の協力の可能性を閉ざしている。
【引用・参照・底本】
日本の反露路線の下で新たなエネルギープロジェクトは不可能=露外務省 sputnik 日本 2025.01.25
https://sputniknews.jp/20250125/100-19528400.html