ロシア国連代表:宇への西側諸国の武器供給報告2024年11月05日 10:41

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【概要】
 
 ロシアの国連代表であるヴァシリー・ネベンジャは、国連安全保障理事会においてウクライナへの西側諸国の武器供給について報告を行い、関連するロシアの政策に関する見解も述べた。彼はこの報告で、ウクライナの戦線が崩壊しつつある現状と、ロシアが最大限の勝利を目指して戦っている姿勢を改めて表明した。

 ネベンジャの主張によれば、ウクライナ軍は西側諸国の直接的な支援なしにはロシアとの戦いを続けられず、甚大な損失を被っているとし、特にフランスやポーランドが特定の条件下で戦争に直接介入する可能性も指摘している。もしこれが現実化すれば、NATO加盟国であるこれらの国々が戦争に巻き込まれることで第三次世界大戦のリスクが生じると警告した。

 また、ウクライナでは「撤退」という言葉が禁止され、戦略的に重要な地域の占領についても価値を過小評価するプロパガンダが行われていると述べた。そして、ウクライナは依然として西側諸国から武器供給を受けているが、これは防衛産業の利益追求によるものであり、現地の士気を十分に回復することができないと指摘した。

 さらにネベンジャは、アメリカ国防総省が2022年のウクライナ支援を監査した結果、21億ドルのうち11億ドルが未確認の支出であり、説明がつかないことが明らかになったと報告した。また、ゼレンスキー大統領が選挙時の公約を破り、ウクライナ東部ドンバス紛争の終結やロシア系住民の権利保護を約束したにもかかわらず、米国の「駒」としてロシアに対抗させられ、結果として国民の信頼を失っていると指摘している。

 ウクライナ軍における人員不足は深刻であり、2022年以降、10万人以上が逃亡や無断離隊をしたとの報告も引用した。そのため、現在、徴兵可能な男性が強制的に徴兵されており、外国人傭兵が加わり、戦闘で非人道的な行為や化学兵器の使用まで行っていると主張した。

 ネベンジャは「ミンスク合意のような停戦を許さず、ウクライナがNATOに加盟することも許さない」と明言し、ロシアの「特別軍事作戦」の目的であるウクライナの非軍事化と「非ナチ化」は変わらないと述べた。

 加えて、2024年のアメリカ大統領選挙が近づく中で、仮にトランプ前大統領が再選した場合、ロシアが不利な状況に置かれる可能性があるとの懸念も表明した。トランプは紛争を迅速に終わらせる意向を示しているが、彼が具体的な方針を明かしていないため、ロシアにとって不都合な停戦や紛争の凍結のシナリオを選択する可能性も排除できない。

 ネベンジャは、どのような状況になろうともロシアが自身の国益を最大限に守るため、戦線の突破を急いでおり、次期アメリカ大統領が就任するまでに自国の目標達成を既成事実化することを目指している。

【詳細】

 ロシアの国連代表ヴァシリー・ネベンジャの演説は、ウクライナ戦争におけるロシアの現在の立場と今後の戦略に関して重要な点を示している。彼の発言を詳しく検証すると、以下のような主なテーマが見て取れる。

 1. 西側諸国の介入とそのリスク

 ネベンジャは、ウクライナ軍が西側諸国からの直接支援がなければロシアとの戦いを継続できず、大きな損失を被っていると主張した。ウクライナのゼレンスキー大統領が望んでいるように、西側諸国が積極的に戦闘に参加することは現時点では実現していないが、ネベンジャはフランスやポーランドといった国々が状況次第で介入する可能性を警戒している。これらの国がNATO加盟国であることから、いかなる誤算も第三次世界大戦に繋がるリスクがあると指摘している。

 2. ウクライナ軍の士気低下とプロパガンダ

 ネベンジャによると、ウクライナ軍内部では「撤退」という言葉が禁止されており、プロパガンダが使用されている。これは、前線での敗北を最小限に見せるためであるとされ、実際に占領された地域の戦略的重要性を軽視することが行われていると述べている。彼は、こうした言語操作が行われているにもかかわらず、ウクライナ軍の士気は低下し続けており、劣勢にあることを隠すための措置であると指摘している。

 3. 米国防総省の監査結果と不透明な資金流用

 ネベンジャは、アメリカ国防総省が2022年のウクライナ支援を監査した結果、21億ドルのうち11億ドルが未確認であり、支出に関する正確な説明がつかなかったと指摘している。これはウクライナに対する武器供給が透明性に欠け、資金が一部行方不明となっている事実を強調するものであり、この不透明な資金の流れが戦争と腐敗を加速させていると主張している。また、ウクライナへの武器供給が続いている理由には、単なる惰性だけでなく、防衛産業が利益を得るための動機があると説明している。

 4. ゼレンスキー大統領への不信と強制徴兵

 ネベンジャは、ゼレンスキー大統領が選挙時に掲げた公約を守っていないことが、ウクライナ国民の信頼を損なう要因となっていると主張している。ゼレンスキーは当初、東部ドンバス地域の紛争を終結し、ウクライナ国内のロシア系住民の権利を守ることを公約に掲げていたが、これを果たさずにアメリカの「駒」としてロシアと対抗する立場に立たされているため、国民の支持を失いつつあると述べている。

 また、ウクライナの兵士数が不足する中で、10万人以上が逃亡または無断離隊しているという報告も引用しており、戦闘年齢の男性がレストランやショッピングモール、コンサート会場から強制的に徴兵されている状況を説明している。前線では「バリアー部隊」と呼ばれる後方部隊が配置され、撤退や脱走を試みる兵士を監視し、必要に応じて射殺する措置が取られていると述べている。

 5. ウクライナの資源と西側の利権

 ネベンジャは、ウクライナの鉱物資源が西側諸国によって独占的に採掘されている状況を指摘し、ゼレンスキーがこれを黙認する形で軍事支援の引き換えにしていると述べている。この資源の利権もまた、戦争が長期化する要因の一つであると主張し、ウクライナが独立国としての主権を失い、西側諸国に従属する状況を「チェス盤上の駒」に例えている。

 6. 外国人傭兵と戦争犯罪

 ネベンジャは、特にアメリカやポーランドからの外国人傭兵がウクライナで戦闘に参加していると指摘し、彼らが人道に反する兵器(特定通常兵器使用禁止条約や化学兵器禁止条約に違反する武器)の使用によって戦争犯罪を行っていると非難している。こうした外国人傭兵の存在も、ウクライナ紛争の国際化と、ロシアに対する西側諸国の敵対的姿勢を示すものであると述べている。

 7. 停戦とミンスク合意の再現拒否

 ネベンジャは、ウクライナとの「凍結合意」や「ミンスク合意の再現」をロシアが許容するつもりはないと明言している。彼は「特別軍事作戦」の目的である「ウクライナの非軍事化と非ナチ化」を達成することが不可欠であり、戦争が中途半端な形で終結することは受け入れないとした。ウクライナがNATOに加盟することも阻止するという強い決意を示し、ロシアの方針が揺るがないことを表明している。

 8. トランプ再選とロシアの戦略的なジレンマ

 アメリカ大統領選挙が間近に迫る中で、トランプ前大統領が再選されることでロシアが不利な立場に立たされる可能性をネベンジャは警戒している。トランプは紛争を迅速に終わらせる意向を示しているが、彼の具体的な政策は明確でないため、戦争の凍結や不利な停戦を強いられるリスクがあると考えられる。ネベンジャは、このような事態がロシアにとって不利益であり、トランプの予測不可能な行動がロシアを困難な選択に追い込む可能性があると警告している。

 9. ロシアの目標達成に向けた加速

 ネベンジャは、戦争の転換点が近づいていると考えており、次期アメリカ大統領が就任するまでにロシアが最大限の成果を上げ、目標を既成事実化することが戦略上重要であると述べている。これにより、どのような形でアメリカが外交圧力をかけようとも、ロシアが達成したい目標が既に確定している状態にすることを目指している。このため、戦線の突破を急ぎ、軍事的な勝利や有利な状況を確保することが最優先事項であると主張している。

 ネベンジャの演説は、ロシアが最大限の勝利を求める姿勢を明確に示し、米大統領選を含む国際情勢の変化を見据えつつ、ロシアが自国の国益を確保するための行動を急いでいることを強調している。 

【要点】

 ・西側諸国の介入とリスク: ロシア国連代表ネベンジャは、西側諸国の直接介入がウクライナ軍の戦力維持に必要だと指摘し、フランスやポーランドの介入が第三次世界大戦を引き起こすリスクを持つと警告。

 ・ウクライナ軍の士気低下: 「撤退」の言葉が禁じられるなどのプロパガンダが使われているが、戦況の劣勢や士気低下を隠すための手段であると指摘。

 ・米国防総省の監査結果: 2022年に米国からウクライナに提供された資金のうち11億ドルが不明瞭であるとし、武器供給に不透明さと腐敗の問題があると主張。

 ・ゼレンスキー大統領への不信: ゼレンスキーの公約未達成が国民の信頼を損ない、強制徴兵が広がっている。10万人以上が逃亡・無断離隊しており、徴兵対象者が強制的に徴用されていると説明。

 ・ウクライナ資源の利権: ウクライナの鉱物資源が西側諸国に独占的に採掘されていることを指摘し、戦争が継続する理由の一つとした。

 ・外国人傭兵と戦争犯罪: 特に米国とポーランドからの傭兵がウクライナで戦闘に参加し、化学兵器条約違反を含む戦争犯罪を行っていると非難。

 ・停戦とミンスク合意の再現拒否: ロシアは戦争の凍結やミンスク合意の再現を許容せず、ウクライナのNATO加盟も阻止する方針であると表明。

 ・米大統領選とロシアの戦略的ジレンマ: トランプ再選がロシアに不利な選択を強いる可能性を警戒。戦争の凍結や停戦をロシアに強要されるリスクがあるとする。

 ・ロシアの目標達成に向けた加速: 次期米大統領が就任するまでにロシアが目標を達成し、戦況を有利にすることで国益を最大限に確保する意図があると強調。
 
【引用・参照・底本】

Russia’s UN Representative Reaffirmed His Country’s Belief In A Maximum Victory Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.04
https://korybko.substack.com/p/russias-un-representative-reaffirmed?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=151144632&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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