米国の言動:「泥棒が泥棒と叫ぶ」ようなもの ― 2025年04月11日 17:45
【桃源寸評】
「かわいそうなメキシコ、神からは遠く、アメリカには近すぎる」
をなぞるならば、次のように言えるであろうか。
〝愚かな日本、旧知からは遠く、アメリカには牛耳られる〟と。
【寸評 完】
【概要】
米国は最近、中国とラテンアメリカの協力関係に対する言説を強めている。AP通信によれば、米国防長官のピート・ヘグセス氏は4月9日(水)、「中国の軍事的存在は西半球において過度に大きい」と発言し、前日には「中国はパナマ運河に対する脅威である」とも述べていた。
米国は長年にわたり、ラテンアメリカおよびカリブ地域を「裏庭」と見なしてきた。他国による通常の活動を非難し、地域諸国に選択を強いるため、米国は何度も「モンロー主義」の茶番を繰り返してきた。
中国の「軍事的存在」があると喧伝したり、パナマ運河問題に中国を悪意的に結びつけたりする行為は、「泥棒が泥棒と叫ぶ」ようなものであり、中国をこの地域から排除しようとするものである。中国政法大学・ラテンアメリカ・カリブ地域法研究センターのPan Deng(パン・ドン)所長によれば、「中国の軍事的存在が大きすぎる」という主張は事実ではなく、実際に大規模な軍事プレゼンスを維持しているのは米国であり、同地域に約76の軍事基地を有しているとされている。中国はこの地域に軍事基地を保有しておらず、部隊も派遣していないため、「中国が軍事的優位を得ている」とする米国の主張には根拠がないとされる。
ヘグセス氏は訪問中、「戦略的に重要な運河を守るために、米軍を再びパナマに派遣する可能性」に言及した。この発言は、ラテンアメリカ諸国を服従させるために、軍事的・政治的圧力を行使しようとする米国の意図を明確に示しているとされる。中国社会科学院・ラテンアメリカ研究所のLin Hua(リン・フア)副研究員は、モンロー主義が導入されてから200年以上が経過する中で、ラテンアメリカ諸国における米国の覇権主義や一方的行動への反感が顕著に強まっていると指摘している。
モンロー主義は、米国が同地域での支配権を主張する象徴的存在である。今日に至るまで、米国は近隣諸国への圧力を継続・強化しており、例えばパナマ運河の支配権を要求したり、コロンビアに対して米国からの不法移民の受け入れを強要したりしている。誰が近隣諸国を「属国化」しようとしているのかは明らかである。メキシコ人の間で語られる「かわいそうなメキシコ、神からは遠く、アメリカには近すぎる」という言葉が、その実情を象徴している。
一方で、中国とラテンアメリカとの関係では、「互恵的協力」がキーワードとなっている。近年、両地域間の経済・貿易協力は深化し、実質的成果を挙げている。たとえば、ペルーのチャンカイ港、ブラジルのマウリチ太陽光発電プロジェクト、農産物貿易、中国製の家電や自動車など、多くの分野で協力が進展しており、これらのプロジェクトは現地住民からも歓迎され、「発展のためのはしご」とみなされている。
習近平国家主席は4月10日(木)、第9回中南米カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会議に祝辞を送り、その中で「中国とラテンアメリカは政治的信頼を深化させ、実務的協力を拡大し、人的交流を強化しており、双方に利益をもたらすとともに、南南協力の模範となっている」と述べた。
中国は真に発展を促進する協力を歓迎している。米国が今後もモンロー主義的な発想に基づき、中国の正当な協力を誹謗し、ラテンアメリカ諸国の自主的選択に干渉し、統制を試みるとすれば、旧来の植民地主義的幻想にしがみつき、互恵的協力を妨げるだけでなく、自らの地域における影響力をさらに失う結果となるであろう。
【詳細】
1.米国の対中批判の激化とその背景
・2025年4月、米国防長官ピート・ヘグセスは、中国の西半球における軍事的存在が「過剰」であり、「パナマ運河に対する脅威」であると発言した。これは中国とラテンアメリカ諸国の協力関係が経済・インフラ・エネルギー・物流など多方面に広がりつつある現状に対する警戒心を背景としている。
このような発言は、単なる軍事的懸念の表明にとどまらず、米国が中国の影響力拡大を政治的・戦略的脅威として認識していることを反映している。特にパナマ運河は、米国にとって歴史的に極めて重要な戦略拠点であり、かつて軍事的・経済的に直接支配していた経緯もあるため、米国が同地域における「主導権」を再び主張し始めている様子が見て取れる。
2.モンロー主義の歴史的文脈と現代の再演
モンロー主義は1823年に米大統領ジェームズ・モンローが宣言した外交方針であり、「欧州による米州への干渉を許さない」という理念に基づいていた。当初は防衛的な性格を持っていたが、19世紀後半以降、米国が軍事・政治・経済的にラテンアメリカ諸国を影響下に置く口実として利用されるようになった。
現代における米国の行動は、こうしたモンロー主義の延長線上にあると中国側はみなしており、実際に米国が「中国の軍事的脅威」を強調する一方で、自国が西半球に約76の軍事基地を持つ事実には触れないという点に矛盾があると指摘している。
Pan Deng(パン・ドン)氏によれば、中国はこの地域に軍事基地を一つも持っておらず、部隊も派遣していない。従って、米国が「中国による軍事的優位」を主張することは、事実関係に基づかない情報操作とみなされる。
3.パナマ運河と米軍再駐留の示唆
ヘグセス氏が言及した「米軍のパナマ再駐留」という発言は、単なる仮定の話ではなく、戦略的な含意を持つ。かつて米国はパナマ運河の建設・管理・防衛を一手に担っており、1977年のパナマ運河返還協定を経て1999年に完全撤退した経緯がある。
その後、中国系企業が港湾整備や物流インフラなどで存在感を高めている中、米国はこの動向を「自国の安全保障への脅威」とみなし、再び軍事的関与を図ろうとしている様子である。これに対し、中国側は「軍事的脅威」との関連付け自体が無理筋であり、むしろ米国による干渉と圧力の復活だと反論している。
4.ラテンアメリカ諸国の立場と反発
ラテンアメリカ諸国の多くは、モンロー主義に代表される米国の覇権的姿勢に長年不満を抱いてきた。中国社会科学院のLin Hua(リン・フア)氏は、米国の一方的行動が200年の時間を経て地域諸国に対する反感を強めてきたとし、今日においては「主権の尊重」「対等な協力」を求める声が高まっていると述べている。
米国が、パナマに対して支配を要求し、またコロンビアに対して米国からの強制送還者(主に不法移民)を受け入れさせようとする行為も、地域の主権尊重を軽視したものと見なされている。その結果、「貧しいメキシコ。神からは遠く、アメリカには近すぎる」という格言が今なお共感を呼んでいる。
5.中国とラテンアメリカの協力の実態
中国とラテンアメリカの関係は、主に経済とインフラを中心に深化している。代表例として、ペルーのチャンカイ港開発、ブラジルのマウリチ太陽光発電プロジェクト、農産物貿易(大豆・果物など)、中国製家電・自動車の輸出などが挙げられる。
これらの協力プロジェクトは、受け入れ国にとって開発機会と雇用創出の場となっており、現地住民の多くが「発展のはしご」として肯定的に評価している。中国は「相互尊重」「互恵共栄」「南南協力」を基本理念とし、ラテンアメリカ諸国を対等なパートナーとして扱う姿勢を強調している。
6.習近平主席の祝辞と南南協力の意義
2025年4月10日、習近平国家主席は、中南米カリブ諸国共同体(CELAC)の第9回首脳会議に祝辞を送り、政治的信頼の深化、実務的協力の拡大、人的交流の強化に言及した。これは、中国が南南協力(途上国同士の協力)の模範となる関係を築いていることを国際的にアピールする意図がある。
7.今後の展望
米国が引き続きモンロー主義的姿勢を維持し、中国の正当な経済協力を貶めつつ、ラテンアメリカ諸国の自主的選択を妨げるような行動を続ければ、かえって地域における自国の影響力を喪失するであろうと警告している。
すなわち、「覇権」ではなく「協力」が時代の潮流であるとの立場から、覇権主義的アプローチはもはや地域から歓迎されず、相互利益を基盤とするパートナーシップこそが、持続的影響力の鍵となるという主張である。
【要点】
米国の対中批判とパナマ運河問題
・米国防長官ピート・ヘグセスは、中国の西半球での軍事的存在を「過剰」とし、パナマ運河に対する脅威であると非難した。
・この発言は、米国が中国の中南米における影響力拡大を安全保障上の脅威とみなしていることを示している。
・米国は中国との軍事的緊張が高まる中で、西半球における「勢力圏の維持」を図っている。
モンロー主義の現代的復活
・モンロー主義とは1823年に発表された米国の外交方針であり、「欧州の米州干渉を排除する」という理念に基づいていた。
・19世紀末以降、米国はこの主義を拡大解釈し、中南米諸国に対する介入を正当化する口実とした。
・現代においても米国は、中国の影響力拡大を牽制するため、事実上のモンロー主義を復活させつつある。
中国の反論と事実関係
・中国外交部のPan Deng報道官は、中国はラテンアメリカ地域に軍事基地も部隊も一切持っていないと反論した。
・一方で米国は、同地域に76以上の軍事基地を持ち、頻繁に軍事介入を行ってきた。
・中国側は、米国の「脅威論」が事実に基づかず、自国の覇権主義的行動を正当化するための口実であると批判している。
パナマ運河をめぐる米国の意図
・ヘグセス国防長官は、米軍のパナマ再駐留の可能性にも言及した。
・米国はかつてパナマ運河を支配していたが、1999年に完全返還した経緯がある。
・中国系企業が港湾インフラなどに進出していることに対し、米国は再び軍事的関与を強めようとしているとみられる。
ラテンアメリカ諸国の反発と歴史的教訓
・米国のモンロー主義的行動は、中南米諸国から反発を招いている。
・中国社会科学院のLin Hua氏は、地域諸国が主権と平等な関係を求めており、覇権的介入に反感を抱いていると指摘した。
・「神からは遠く、アメリカには近すぎる」という格言は、米国の圧力外交に対する皮肉として根強く引用されている。
中国とラテンアメリカの協力の実態
・中国は港湾建設(ペルー・チャンカイ港)、再生可能エネルギー(ブラジル・太陽光発電)、農産物貿易、電子製品などの分野で協力を進めている。
・中国側は「南南協力」「互恵共栄」の原則を掲げ、パートナーとして中南米諸国を尊重している。
・現地では雇用創出やインフラ整備が進み、中国との協力に好意的な評価が多い。
習近平国家主席の祝辞と対等関係の強調
・習近平主席は、中南米カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会議に祝辞を寄せ、「政治的信頼」「実務協力」「人的交流」を強化する方針を示した。
・中国は同地域との関係を「南南協力の模範」として捉え、対等で開かれたパートナーシップを強調している。
総括的見解と今後の展望
・中国は米国のモンロー主義的な圧力に対し、平等・互恵に基づく協力関係を対置している。
・米国が覇権主義的態度を続ければ、かえって中南米での影響力を失う恐れがある。
・新しい時代には、覇権ではなく「協力と尊重」が国際関係の原則となるべきであると中国は主張している。
【引用・参照・底本】
The US intensifies '21st-century Monroe Doctrine' in Latin America GT 2025.04.10
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331861.shtml
「かわいそうなメキシコ、神からは遠く、アメリカには近すぎる」
をなぞるならば、次のように言えるであろうか。
〝愚かな日本、旧知からは遠く、アメリカには牛耳られる〟と。
【寸評 完】
【概要】
米国は最近、中国とラテンアメリカの協力関係に対する言説を強めている。AP通信によれば、米国防長官のピート・ヘグセス氏は4月9日(水)、「中国の軍事的存在は西半球において過度に大きい」と発言し、前日には「中国はパナマ運河に対する脅威である」とも述べていた。
米国は長年にわたり、ラテンアメリカおよびカリブ地域を「裏庭」と見なしてきた。他国による通常の活動を非難し、地域諸国に選択を強いるため、米国は何度も「モンロー主義」の茶番を繰り返してきた。
中国の「軍事的存在」があると喧伝したり、パナマ運河問題に中国を悪意的に結びつけたりする行為は、「泥棒が泥棒と叫ぶ」ようなものであり、中国をこの地域から排除しようとするものである。中国政法大学・ラテンアメリカ・カリブ地域法研究センターのPan Deng(パン・ドン)所長によれば、「中国の軍事的存在が大きすぎる」という主張は事実ではなく、実際に大規模な軍事プレゼンスを維持しているのは米国であり、同地域に約76の軍事基地を有しているとされている。中国はこの地域に軍事基地を保有しておらず、部隊も派遣していないため、「中国が軍事的優位を得ている」とする米国の主張には根拠がないとされる。
ヘグセス氏は訪問中、「戦略的に重要な運河を守るために、米軍を再びパナマに派遣する可能性」に言及した。この発言は、ラテンアメリカ諸国を服従させるために、軍事的・政治的圧力を行使しようとする米国の意図を明確に示しているとされる。中国社会科学院・ラテンアメリカ研究所のLin Hua(リン・フア)副研究員は、モンロー主義が導入されてから200年以上が経過する中で、ラテンアメリカ諸国における米国の覇権主義や一方的行動への反感が顕著に強まっていると指摘している。
モンロー主義は、米国が同地域での支配権を主張する象徴的存在である。今日に至るまで、米国は近隣諸国への圧力を継続・強化しており、例えばパナマ運河の支配権を要求したり、コロンビアに対して米国からの不法移民の受け入れを強要したりしている。誰が近隣諸国を「属国化」しようとしているのかは明らかである。メキシコ人の間で語られる「かわいそうなメキシコ、神からは遠く、アメリカには近すぎる」という言葉が、その実情を象徴している。
一方で、中国とラテンアメリカとの関係では、「互恵的協力」がキーワードとなっている。近年、両地域間の経済・貿易協力は深化し、実質的成果を挙げている。たとえば、ペルーのチャンカイ港、ブラジルのマウリチ太陽光発電プロジェクト、農産物貿易、中国製の家電や自動車など、多くの分野で協力が進展しており、これらのプロジェクトは現地住民からも歓迎され、「発展のためのはしご」とみなされている。
習近平国家主席は4月10日(木)、第9回中南米カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会議に祝辞を送り、その中で「中国とラテンアメリカは政治的信頼を深化させ、実務的協力を拡大し、人的交流を強化しており、双方に利益をもたらすとともに、南南協力の模範となっている」と述べた。
中国は真に発展を促進する協力を歓迎している。米国が今後もモンロー主義的な発想に基づき、中国の正当な協力を誹謗し、ラテンアメリカ諸国の自主的選択に干渉し、統制を試みるとすれば、旧来の植民地主義的幻想にしがみつき、互恵的協力を妨げるだけでなく、自らの地域における影響力をさらに失う結果となるであろう。
【詳細】
1.米国の対中批判の激化とその背景
・2025年4月、米国防長官ピート・ヘグセスは、中国の西半球における軍事的存在が「過剰」であり、「パナマ運河に対する脅威」であると発言した。これは中国とラテンアメリカ諸国の協力関係が経済・インフラ・エネルギー・物流など多方面に広がりつつある現状に対する警戒心を背景としている。
このような発言は、単なる軍事的懸念の表明にとどまらず、米国が中国の影響力拡大を政治的・戦略的脅威として認識していることを反映している。特にパナマ運河は、米国にとって歴史的に極めて重要な戦略拠点であり、かつて軍事的・経済的に直接支配していた経緯もあるため、米国が同地域における「主導権」を再び主張し始めている様子が見て取れる。
2.モンロー主義の歴史的文脈と現代の再演
モンロー主義は1823年に米大統領ジェームズ・モンローが宣言した外交方針であり、「欧州による米州への干渉を許さない」という理念に基づいていた。当初は防衛的な性格を持っていたが、19世紀後半以降、米国が軍事・政治・経済的にラテンアメリカ諸国を影響下に置く口実として利用されるようになった。
現代における米国の行動は、こうしたモンロー主義の延長線上にあると中国側はみなしており、実際に米国が「中国の軍事的脅威」を強調する一方で、自国が西半球に約76の軍事基地を持つ事実には触れないという点に矛盾があると指摘している。
Pan Deng(パン・ドン)氏によれば、中国はこの地域に軍事基地を一つも持っておらず、部隊も派遣していない。従って、米国が「中国による軍事的優位」を主張することは、事実関係に基づかない情報操作とみなされる。
3.パナマ運河と米軍再駐留の示唆
ヘグセス氏が言及した「米軍のパナマ再駐留」という発言は、単なる仮定の話ではなく、戦略的な含意を持つ。かつて米国はパナマ運河の建設・管理・防衛を一手に担っており、1977年のパナマ運河返還協定を経て1999年に完全撤退した経緯がある。
その後、中国系企業が港湾整備や物流インフラなどで存在感を高めている中、米国はこの動向を「自国の安全保障への脅威」とみなし、再び軍事的関与を図ろうとしている様子である。これに対し、中国側は「軍事的脅威」との関連付け自体が無理筋であり、むしろ米国による干渉と圧力の復活だと反論している。
4.ラテンアメリカ諸国の立場と反発
ラテンアメリカ諸国の多くは、モンロー主義に代表される米国の覇権的姿勢に長年不満を抱いてきた。中国社会科学院のLin Hua(リン・フア)氏は、米国の一方的行動が200年の時間を経て地域諸国に対する反感を強めてきたとし、今日においては「主権の尊重」「対等な協力」を求める声が高まっていると述べている。
米国が、パナマに対して支配を要求し、またコロンビアに対して米国からの強制送還者(主に不法移民)を受け入れさせようとする行為も、地域の主権尊重を軽視したものと見なされている。その結果、「貧しいメキシコ。神からは遠く、アメリカには近すぎる」という格言が今なお共感を呼んでいる。
5.中国とラテンアメリカの協力の実態
中国とラテンアメリカの関係は、主に経済とインフラを中心に深化している。代表例として、ペルーのチャンカイ港開発、ブラジルのマウリチ太陽光発電プロジェクト、農産物貿易(大豆・果物など)、中国製家電・自動車の輸出などが挙げられる。
これらの協力プロジェクトは、受け入れ国にとって開発機会と雇用創出の場となっており、現地住民の多くが「発展のはしご」として肯定的に評価している。中国は「相互尊重」「互恵共栄」「南南協力」を基本理念とし、ラテンアメリカ諸国を対等なパートナーとして扱う姿勢を強調している。
6.習近平主席の祝辞と南南協力の意義
2025年4月10日、習近平国家主席は、中南米カリブ諸国共同体(CELAC)の第9回首脳会議に祝辞を送り、政治的信頼の深化、実務的協力の拡大、人的交流の強化に言及した。これは、中国が南南協力(途上国同士の協力)の模範となる関係を築いていることを国際的にアピールする意図がある。
7.今後の展望
米国が引き続きモンロー主義的姿勢を維持し、中国の正当な経済協力を貶めつつ、ラテンアメリカ諸国の自主的選択を妨げるような行動を続ければ、かえって地域における自国の影響力を喪失するであろうと警告している。
すなわち、「覇権」ではなく「協力」が時代の潮流であるとの立場から、覇権主義的アプローチはもはや地域から歓迎されず、相互利益を基盤とするパートナーシップこそが、持続的影響力の鍵となるという主張である。
【要点】
米国の対中批判とパナマ運河問題
・米国防長官ピート・ヘグセスは、中国の西半球での軍事的存在を「過剰」とし、パナマ運河に対する脅威であると非難した。
・この発言は、米国が中国の中南米における影響力拡大を安全保障上の脅威とみなしていることを示している。
・米国は中国との軍事的緊張が高まる中で、西半球における「勢力圏の維持」を図っている。
モンロー主義の現代的復活
・モンロー主義とは1823年に発表された米国の外交方針であり、「欧州の米州干渉を排除する」という理念に基づいていた。
・19世紀末以降、米国はこの主義を拡大解釈し、中南米諸国に対する介入を正当化する口実とした。
・現代においても米国は、中国の影響力拡大を牽制するため、事実上のモンロー主義を復活させつつある。
中国の反論と事実関係
・中国外交部のPan Deng報道官は、中国はラテンアメリカ地域に軍事基地も部隊も一切持っていないと反論した。
・一方で米国は、同地域に76以上の軍事基地を持ち、頻繁に軍事介入を行ってきた。
・中国側は、米国の「脅威論」が事実に基づかず、自国の覇権主義的行動を正当化するための口実であると批判している。
パナマ運河をめぐる米国の意図
・ヘグセス国防長官は、米軍のパナマ再駐留の可能性にも言及した。
・米国はかつてパナマ運河を支配していたが、1999年に完全返還した経緯がある。
・中国系企業が港湾インフラなどに進出していることに対し、米国は再び軍事的関与を強めようとしているとみられる。
ラテンアメリカ諸国の反発と歴史的教訓
・米国のモンロー主義的行動は、中南米諸国から反発を招いている。
・中国社会科学院のLin Hua氏は、地域諸国が主権と平等な関係を求めており、覇権的介入に反感を抱いていると指摘した。
・「神からは遠く、アメリカには近すぎる」という格言は、米国の圧力外交に対する皮肉として根強く引用されている。
中国とラテンアメリカの協力の実態
・中国は港湾建設(ペルー・チャンカイ港)、再生可能エネルギー(ブラジル・太陽光発電)、農産物貿易、電子製品などの分野で協力を進めている。
・中国側は「南南協力」「互恵共栄」の原則を掲げ、パートナーとして中南米諸国を尊重している。
・現地では雇用創出やインフラ整備が進み、中国との協力に好意的な評価が多い。
習近平国家主席の祝辞と対等関係の強調
・習近平主席は、中南米カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会議に祝辞を寄せ、「政治的信頼」「実務協力」「人的交流」を強化する方針を示した。
・中国は同地域との関係を「南南協力の模範」として捉え、対等で開かれたパートナーシップを強調している。
総括的見解と今後の展望
・中国は米国のモンロー主義的な圧力に対し、平等・互恵に基づく協力関係を対置している。
・米国が覇権主義的態度を続ければ、かえって中南米での影響力を失う恐れがある。
・新しい時代には、覇権ではなく「協力と尊重」が国際関係の原則となるべきであると中国は主張している。
【引用・参照・底本】
The US intensifies '21st-century Monroe Doctrine' in Latin America GT 2025.04.10
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331861.shtml