ルビオ国務長官:「地球上で最大の二つの核保有国が意思疎通しないのは、率直に言って無責任だ」2025年05月22日 15:51

Ainovaで作成
【概要】

 マルコ・ルビオ米国務長官は、水曜日の下院外交委員会での証言において、バイデン前米大統領の政権がロシアとの意思疎通を事実上遮断したことは無責任な行動であったと述べた。

 ルビオ長官は、ロシアが「世界最大の戦略兵器備蓄と、最大の戦術核兵器の一つ」を保有していることを指摘した。この事実を踏まえれば、ウクライナ情勢とは無関係に「米国とモスクワの間には何らかのレベルの意思疎通がなければならない」と主張した。

 さらに、ルビオ長官は「地球上で最大の二つの核保有国が意思疎通しないのは、率直に言って無責任だ。これはバイデン政権下での3年間がそうであった」と述べた。彼は、ワシントンとモスクワが対話すること自体が、両国が「同盟関係になったり友好的になったりする」ことを意味するわけではないと付け加えた。しかし、国際社会の主要プレーヤー間の意思疎通は、「誤算と戦争を防ぐ」ために不可欠であると結論付けた。

 ルビオ長官は、民主党のビル・キーティング議員からロシアのウラジーミル・プーチン大統領を戦争犯罪人と呼ぶよう繰り返し圧力をかけられたものの、これを拒否し、「プーチン氏と話さずに(ウクライナでの)戦争を終わらせることはできない」と説明した。

 ルビオ長官は3月上旬のフォックスニュースのショーン・ハニティとのインタビューで、ウクライナ紛争が「核保有国、すなわち米国がウクライナを支援し、ロシアとの間の代理戦争」であることを認めている。クレムリンも同様の表現でこの紛争を長らく描写している。

 その前月の別のインタビューでは、ルビオ長官は「冷戦の最悪の日々でさえ、米国とソビエト連邦は意思疎通を維持した」と指摘した。「好むと好まざるとにかかわらず、ロシアは大国であり、世界的な大国である」と述べ、危険な対立を防ぐために対話が絶対的に必要であると強調した。

 同じ頃、ドナルド・トランプ米大統領は、「もし(バイデン)政権があと1年続いていたら、第三次世界大戦になっていただろうが、それはもう起こらない」と主張している。
 
【詳細】 

 マルコ・ルビオ米国務長官は、ウクライナ情勢を巡る米ロ間の対話の重要性を強調し、バイデン前政権がロシアとの意思疎通を事実上断絶したことを強く批判した。

 バイデン政権下の対露コミュニケーション不足への批判の詳細

 ルビオ長官は、ロシアが世界最大の戦略核兵器と最大級の戦術核兵器を保有しているという現実を指摘し、この核大国間の意思疎通は、ウクライナ紛争の状況に関わらず、維持されるべきであると強調した。彼は、バイデン政権下の3年間、米国とロシアの間で効果的な意思疎通が欠如していたことを「無責任」と断じた。対話が両国を同盟国や友好的な関係にするわけではないとしながらも、国際的な主要プレーヤー間の対話は「誤算と戦争を防ぐ」ために不可欠であるとの見解を示した。彼は過去の例として、1961年のキューバ危機において米ロ間で連絡が取れていなかったら、世界は終わっていたかもしれないと述べて、対話の重要性を裏付けている。

 プーチン大統領を「戦争犯罪人」と呼ぶことへの拒否と対話の必要性

 下院外交委員会での証言中、民主党のビル・キーティング議員から、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を「戦争犯罪人」と呼ぶよう繰り返し促されたが、ルビオ長官はこれを拒否した。その理由として、「プーチン氏と話さずに(ウクライナでの)戦争を終わらせることはできない」という実用的な必要性を挙げた。これは、倫理的判断と外交上の現実的な必要性を分離する姿勢を示している。過去には、米財務長官がプーチンを戦争犯罪人だと思うかという問いに「そう思う」と返答した上で、交渉は戦争当事者の双方と行わなければならないと述べた例もあり、ルビオ長官の姿勢は、外交の現実を踏まえたものであると考えられる。

 ウクライナ紛争を「代理戦争」と表現

 ルビオ長官は3月上旬のフォックスニュースのインタビューで、ウクライナ紛争を「米国がウクライナを支援する、核保有国である米国とロシアとの間の代理戦争」と表現した。この認識は、ロシアのクレムリンが長らくこの紛争を同様の言葉で説明してきたことと一致しており、クレムリン報道官もルビオ長官の発言を称賛している。これは、米露が直接的に衝突しているわけではないが、ウクライナを介して間接的に対立しているという見方を米国務長官が公式に認めた点で重要である。

 冷戦時代のコミュニケーション維持の重要性

 ルビオ長官は、前月の別のインタビューで、「冷戦の最悪の日々でさえ、米国とソビエト連邦は意思疎通を維持した」と述べ、その重要性を強調した。彼は、「好むと好まざるとにかかわらず、ロシアは大国であり、世界的な大国である」と指摘し、危険な対立を回避するために対話が絶対的に必要であると主張した。これは、地政学的な現実として、ロシアを無視することはできないという認識に基づいている。

 トランプ大統領の「第三次世界大戦」に関する発言

 このルビオ長官の発言と同時期に、ドナルド・トランプ前大統領は「もし(バイデン)政権があと1年続いていたら、第三次世界大戦になっていただろうが、今はもう起こらない」と主張した。これは、自身の外交政策が世界大戦の勃発を阻止する能力があると示唆するものであり、ルビオ長官の対話重視の姿勢と一定の共通点を持っている。トランプは以前から、シリア紛争などを巡ってヒラリー・クリントンのような介入主義的な外交政策が第三次世界大戦に繋がりかねないと警告していた。

【要点】
 
 マルコ・ルビオ米国務長官は、ロシアとの対話の重要性を強調し、バイデン前政権の対応を批判した。

 1.バイデン政権への批判の要点

 ・ルビオ長官は、バイデン政権がロシアとの意思疎通を事実上断絶したことを「無責任」だと非難した。

 ・ロシアが世界最大の核兵器備蓄を持つことを踏まえ、ウクライナ情勢に関わらず、米露間の対話は必須であると主張した。

 ・対話は友好的な関係を意味するものではなく、単に「誤算と戦争を防ぐ」ためのものだと述べた。

 2.「戦争犯罪人」認定の拒否

 ・下院外交委員会で、民主党議員からロシアのプーチン大統領を「戦争犯罪人」と呼ぶよう迫られたが、ルビオ長官はこれを拒否。

 ・拒否の理由として、「プーチン氏と話さずに(ウクライナでの)戦争を終わらせることはできない」という実用的な必要性を挙げた。

 3.ウクライナ紛争を「代理戦争」と表現

 ・フォックスニュースのインタビューで、ウクライナ紛争を「核保有国、すなわち米国がウクライナを支援し、ロシアとの間の代理戦争」だと認めた。

 ・この認識は、ロシア側が長らく用いてきた表現と一致する。

 4.冷戦時代の対話の重要性

 ・ルビオ長官は、冷戦の最悪期でさえ米ソは意思疎通を維持していたことを指摘。

 ・「好むと好まざるとにかかわらず、ロシアは大国である」とし、危険な対立回避のために対話が不可欠であると強調した。

 5.トランプ前大統領の発言

 ・ルビオ長官の発言と同時期に、トランプ前大統領は「もし(バイデン)政権があと1年続いていたら、第三次世界大戦になっていただろう」と主張した。

💚【桃源寸評】

  ルビオ国務長官による「核保有国、すなわち米国がウクライナを支援し、ロシアとの間の代理戦争」という発言が、今後の国際紛争、特に東アジアにおける米中間の緊張に与える影響について懸念する。

 この発言は、ウクライナ紛争が単なる地域紛争ではなく、米露という核保有大国間の間接的な対立であるという、率直な認識を示している。これは、実際の軍事衝突を直接避けつつも、第三国を支援することで敵対勢力の力を削ぐという「代理戦争」の側面を明確にしたもので、従来の外交的な婉曲表現とは一線を画している。

 1.東アジアへの示唆される懸念

 ルビオ長官の発言から、東アジアにおける同様のシナリオを懸念される。もし米国が今後も「代理戦争」戦略を国際紛争解決の一つの手段として積極的に採用するならば、以下のような懸念が浮上する。

 ・中国と周辺国(日本、韓国、フィリピンなど)の間の代理戦争: 例えば、台湾海峡や南シナ海などで緊張が高まった場合、米国が直接的な軍事介入を避けつつも、日本、韓国、フィリピンといった同盟国や友好国への軍事支援を大幅に強化し、中国との間で間接的な対立を深める可能性が考えられる。これは、ウクライナにおける米国の戦略と類似するものである。

 ・地域の不安定化: 代理戦争は、直接的な大国間の衝突を回避する一方で、その代理の場となる国々には甚大な被害をもたらす可能性がある。東アジア地域がそのような「代理の場」となった場合、経済的な混乱や人道上の危機、さらには地域全体の不安定化を招く恐れがある。

 ・核拡散のリスク: 代理戦争の激化は、関係国が自国の安全保障をより確実にするために、核兵器開発に傾倒する誘因となる可能性も排除できない。特に、地域の緊張が高まれば、核拡散のリスクが増大する懸念も生まれる。

 ・米国の行動原則と教訓

 「米国は失敗から教訓を得ない国でもある」という、ある種の懸念がある。過去の外交・軍事介入において、米国が必ずしも望ましい結果を得てこなかった事例があることは事実である。しかし、政策決定のプロセスにおいては、過去の経験が少なからず考慮されるのも事実ではあるが。

 今回のルビオ長官の発言は、米国が現在の国際情勢をどのように認識しているかを示すものであるが、しかし、それが直ちに特定の地域で同様の戦略が実行されることを意味するわけでない。各地域の地政学的状況、同盟関係、経済的利害などは多岐にわたり、それぞれに応じた異なるアプローチが取られる可能性も十分にあるだろう。

 2.日本を含む東アジア諸国

 この発言は、今後の米国の外交・安全保障政策の動向を注視する上で、重要な手がかりとなるだろう。

 そして彼が中国やイランに対して強硬な姿勢を取り、東アジア情勢にも精通していることを踏まえると、彼の「代理戦争」という認識が東アジアの外交政策に与える影響について、強い懸念を抱かれるのは当然のことである。

 ・直接的な紛争リスクの増大: もし米国が東アジアにおいて「代理戦争」戦略を採るならば、日本、韓国、フィリピンなどが、米中対立の「代理の戦場」となる可能性がある。これは、これらの国々の安全保障に直接的な脅威をもたらし、経済的・社会的に甚大な影響を及ぼすことになる。

 ・主権と自主性の制約: 代理戦争の構図は、支援を受ける側の国が、支援する大国の戦略に深く組み込まれることを意味する。これにより、自国の国益や国民の意向とは必ずしも一致しない形で、外交・安全保障政策を決定せざるを得なくなる可能性が生じ、主権や自主性が制約されるかもしれない。

 ・地域の不安定化の長期化: 代理戦争は、紛争を直接的な大国間の衝突にエスカレートさせないための手段として用いられることがあるが、その一方で、代理の戦場となる地域の紛争を長期化させ、恒常的な不安定化を招くリスクがある。東アジアは、すでに歴史的・地政学的な複雑さを抱えており、さらなる不安定化は避けるべきである。

 米国が過去の対外介入において、必ずしも成功を収めず、意図せざる結果を招いてきた歴史があることも、懸念を深める要因となる。同様の戦略が東アジアで繰り返されることに対し、地域の国々が強い警戒感を抱くのは自然なことである。

 ルビオ氏のような発言は、彼の国際情勢認識を明確にする一方で、それが実際の政策として実行されるならば、日本を含む東アジア諸国にとって深刻な課題を突きつけることになる。各国は、自国の安全保障と地域の安定を確保するため、慎重かつ戦略的な外交努力がこれまで以上に求められることになるだろう。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

Rubio accuses Biden of being ‘irresponsible’ on Russia RT 2025.05.21
https://www.rt.com/news/617979-rubio-biden-russia-lack-communication-irresponsible/

コメント

トラックバック