【概要】

　フランスのミシェル・バルニエ首相は、就任からわずか3か月で辞任する見通しである。これは、彼の政権が議会における不信任投票が可決され　、60年以上ぶりに政府が倒れる結果となったためである。この出来事は、フランスにとって6か月間で2回目の大規模な政治危機を引き起こしている。

　バルニエ氏は、欧州連合(EU)のブレグジット交渉官として知られるベテラン政治家であったが、今回の辞任により現代フランス史上最短の在任期間となる。不信任投票による政府の崩壊は、1962年にジョルジュ・ポンピドゥー首相の政権が倒れて以来のことである。

　この不信任投票では、極左勢力と極右勢力が共闘し、バルニエ政権を批判した。彼らは、議会での採決を経ずに強行された予算案が原因だと主張している。この予算案には、60億ユーロ(約630億ドル)の削減目標が盛り込まれ、大幅な財政赤字の縮小を目指していたが、特に極右「国民連合」(RN)は、労働者層に対して過度に厳しいと非難していた。

　この辞任は、大統領エマニュエル・マクロン氏の立場をさらに弱める可能性が高い。マクロン氏は、来年のパリオリンピックを控えた今年夏に解散総選挙を実施したが、これが裏目に出て現在の危機を招いたとされている。マクロン氏への辞任要求も高まっているが、大統領任期は2027年までであり、強制的に退任させることはできない。

　フランスでは2025年の予算案が成立しない可能性があるが、フランス憲法ではアメリカのような「政府閉鎖」を回避するための特別措置が認められている。

　この政治的混乱は、ドイツの連立政権崩壊によるEUの混乱をさらに悪化させ、間もなくホワイトハウスに復帰する予定のドナルド・トランプ次期アメリカ大統領にも影響を及ぼす可能性がある。

　トランプ氏は、今週土曜日に改修を終えたノートルダム大聖堂の除幕式に参加するためパリを訪問する予定であり、マクロン氏はそれまでに新首相を任命する意向であると報じられている。

　現在のフランスでは、安定した政府の不在や議会の分裂により、投資家はフランス国債や株式市場に不安を抱いている。最近では、フランスの借入コストがリスクの高いとされるギリシャを一時的に上回る事態も発生した。

　新しい首相が任命されたとしても、分裂した議会で法案や予算案を通過させるというバルニエ政権と同様の課題に直面することが予想されている。また、憲法上、新たな議会選挙は来年7月まで実施できない。

【詳細】

　フランスの政治情勢は、今回のミシェル・バルニエ首相の辞任によって、複雑さを増している。以下に、その背景と影響をさらに詳しく説明する。

　不信任投票の背景と内容
　
　バルニエ政権に対する不信任投票は、2024年12月4日にフランス国民議会で行われ、極右の「国民連合」(RN)と極左の「急進左翼連合」(LFI)が共闘して投票を主導した。議会での不信任案が可決された直接の要因は、議会の採決を省略して押し通された予算案である。この予算案では60億ユーロの支出削減が目標とされ、特に社会福祉や公共サービスに大幅な影響を与えると批判された。

　・極右の立場：「国民連合」は、この予算案が労働者階級や地方住民に不当な負担を課すと主張し、マクロン政権とバルニエ内閣がエリート層に偏った政策を推進していると非難した。
　・極左の立場：「急進左翼連合」は、財政削減が社会的平等を損なうとして、同様に予算案に反対した。

　この両極端の勢力が共闘したことで、議会の不信任案が成立し、バルニエ政権は倒れることとなった。これはフランスの政治において異例の出来事であり、1962年のジョルジュ・ポンピドゥー政権以来初めてのことである。

　ミシェル・バルニエ首相の政治的立場

　バルニエ氏は、欧州連合(EU)におけるブレグジット交渉の責任者としてその名を知られており、穏健で経験豊富な政治家として評価されていた。しかし、分裂した議会構成や、厳しい財政運営を求められる中での政権運営は困難を極めた。

　バルニエ氏の辞任により、彼は現代フランス史上最短の在任期間を記録することになった。この短命政権は、彼個人の能力や政策よりも、むしろマクロン大統領の政治的戦略の失敗に起因していると多くの専門家が指摘している。

　マクロン大統領の立場

　マクロン大統領は2027年までの任期を持つが、今回の事態で政治的立場が大きく弱まった。マクロン氏は、2024年夏の総選挙を通じて議会の支持を固めようと試みたが、結果として与党勢力の過半数を失い、議会がさらに分裂する結果を招いた。

　特に、マクロン氏の「強権的な政策運営」が批判の対象となっている。今回の予算案の採決を議会で避けるため、フランス憲法第49条3項を適用したことが反発を招いた。これにより、議会の不信任投票が実現し、政権崩壊に至った。

　今後のフランス政治への影響

　政府運営の不透明化
　
　現時点で新首相の人選は進行中であるが、いかなる候補者も分裂した議会での多数派形成に苦労することが予想される。新政権が安定するまでの間、以下のような問題が懸念されている。

　・2025年予算の成立：分裂した議会では予算案の審議が進まず、政府運営に支障を来す可能性が高い。ただし、フランス憲法には特別措置が含まれており、アメリカの「政府閉鎖」に類似する事態は回避可能とされる。
　・議会選挙の制約：憲法上、次回の議会選挙は2025年7月まで実施できず、現在の膠着状態が長期化する恐れがある。

　EUおよび国際情勢への影響

　フランス国内の不安定化は、欧州連合全体にも波及する可能性がある。特に、ドイツでの連立政権崩壊が追い打ちをかけ、EUの意思決定が一層困難になることが懸念されている。また、アメリカではドナルド・トランプ次期大統領がホワイトハウスに復帰予定であり、これがEUとアメリカの関係に影響を与える可能性もある。

　市場への影響

　フランスの政治不安は、投資家心理にも悪影響を及ぼしている。フランス国債の利回りは一時的にギリシャを上回る水準に達し、株式市場も不安定な動きを見せている。この状況が続けば、フランス経済全体に悪影響を及ぼす可能性がある。

　トランプ氏訪問と政局の緊張

　12月7日には、改修を終えたノートルダム大聖堂の除幕式が予定されており、アメリカのトランプ次期大統領もパリを訪問する。この国際的なイベントを前に、マクロン大統領は新首相を任命し、政局の安定をアピールしたい考えである。しかし、これが実現するかどうかは現時点で不透明である。

　総括

　フランスは現在、政権の不安定化、議会の分裂、そして経済や外交面でのリスクを抱えた状況にある。ミシェル・バルニエ首相の辞任を契機に、フランス政治は一層不透明さを増しており、今後の動向に注目が集まっている。

【要点】　

　1.不信任投票の背景

　・ミシェル・バルニエ首相の政権は、議会での不信任投票によって崩壊。
　・原因は議会採決を省略して通過させた予算案(60億ユーロの削減を含む)。
　・極右「国民連合」(RN)と極左「急進左翼連合」(LFI)が共闘し、不信任案を可決。

　2.ミシェル・バルニエ首相について

　・欧州連合(EU)のブレグジット交渉官を務めたベテラン政治家。
　・辞任により、現代フランス史上最短の在任期間となる。

　3.予算案への反発

　・極右RN：予算案が労働者層に不当な負担を課していると非難。
　・極左LFI：予算削減が社会的平等を損なうと批判。

　4.マクロン大統領の立場

　・総選挙の実施により与党が過半数を失い、議会の分裂を招いた。
　・憲法第49条3項を使った強権的な予算案通過が反発を増幅。
　・大統領任期は2027年までで辞任不可だが、政治的立場は弱体化。

　5.今後の課題

　・政府運営の不透明化：新首相が議会での支持を得るのは困難。
　・2025年予算の成立：議会の膠着状態で審議が難航する可能性。
　・議会選挙の制約：新たな選挙は2025年7月まで実施できない。

　6.市場への影響

　・政治不安により、フランス国債の利回りが一時的にギリシャを上回る。
　・株式市場も不安定な動きを見せている。

　7.国際的影響

　・フランスの不安定化は、EU全体の意思決定に悪影響を与える懸念。
　・アメリカではトランプ次期大統領の就任が控え、EUとの関係に影響。

　8.ノートルダム大聖堂除幕式

　・12月7日に予定され、アメリカのトランプ次期大統領がパリ訪問予定。
　・マクロン大統領はそれまでに新首相を任命し、政局安定を図る意向。

　10.総括

　・政権の不安定、議会の分裂、経済・外交リスクが増大している。
　・フランス政治の不透明さが国内外に影響を及ぼしている。

【引用・参照・底本】

France's Barnier to resign as no-confidence vote sparks new political crisis FRANCE24 2024.12.05
https://www.france24.com/en/europe/20241205-france-s-barnier-to-resign-as-no-confidence-vote-opens-new-political-crisis?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020241205&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

【概要】

　ウクライナのゼレンスキー大統領が停戦条件に関して態度を変えたことについて詳述している。ゼレンスキー氏は最近、NATO加盟を条件として停戦に応じる可能性を示唆したが、この条件には、紛争が続く間、NATOの集団防衛を規定する第5条がすべての領土に適用されないという制限が含まれている。その後、ウクライナ外務省はNATO加盟以外の選択肢を受け入れないという声明を発表し、これに対してロシアは予想通り「受け入れ難い」と表明した。

　NATO事務総長のルッテ氏は現在、NATOの主な焦点がウクライナへの武器供与にあることを明確にし、ハンガリー、ドイツ、米国を含むいくつかの加盟国がウクライナの即時加盟に反対しているという報道を裏付けた。この背景には、米国がウクライナにATACMSミサイルを提供し、ウクライナがそれを使用して2014年以前のロシア領内を攻撃したことを受け、ロシアが初めてオレシニクという新型の極超音速ミサイルを使用したことがある。

　ゼレンスキー氏の今回の提案は、一見すると譲歩のように見えるが、実際には「見せかけの譲歩」であると指摘されている。ウクライナがすべての失地を回復する可能性は低く、加えて彼はNATO加盟を引き続き要求している。この要求こそが紛争の根本原因とされる。同時に、ウクライナは事実上、既にNATOのメンバーであると考えられる。過去1年間で、ウクライナは多くのNATO加盟国と安全保障保証を締結しており、これらの保証はNATO条約第5条に類似する精神を持つ。

　第5条は、同盟国が攻撃を受けた場合に部隊を派遣する義務を負うものと誤解されがちであるが、実際には必要とされる支援を各国が判断することを義務付けているのみである。ウクライナが締結した安全保障保証は、武器供与や情報共有などの形でこれらの支援を制度化しており、第5条に伴う部隊派遣の暗黙の圧力を伴わない形で実質的に同等の効果を持つ。

　このような状況下で紛争が凍結され、ウクライナが正式にNATOに加盟しない場合でも、安全保障保証が継続される限り、ロシアは事実上のNATO加盟を容認したことになる。ただし、これらの保証を終了させることは非常に困難である。ドイツやイギリスとの合意は、通知から6カ月以内に終了可能であるが、ポーランドや米国との合意は実施中の活動やプロジェクトが特定の条件下で継続されることを規定している。

　特に、ポーランドとの合意では「両国が別途合意しない限り、既存の活動やプロジェクトの実施は終了後も影響を受けない」とされており、米国との合意も類似の条項を含む。このため、ロシアがウクライナ政府にこれらの保証を終了させたとしても、ポーランドや米国が独自の解釈に基づいて一部の保証を実行する可能性がある。

　この状況が続く限り、ウクライナは事実上NATOの一部であり続ける。ロシアがこの現状を受け入れるか、あるいはこの軍事戦略上の現実を変えるためにさらに踏み込んだ措置を講じるかが今後の焦点となる。ゼレンスキー氏の提案は、実際には紛争を終結させるための実質的な譲歩ではない。

【詳細】

　ウクライナ紛争におけるゼレンスキー大統領の停戦条件に関する発言が、見かけ上の譲歩であると指摘している。その背景や含意について、さらに詳しく説明する。

　ゼレンスキー氏の提案の内容

　ゼレンスキー大統領は最近、NATO加盟を条件に停戦に応じる可能性を示唆した。ただし、この提案は以下の点で制限がある。

　1.NATO第5条の適用範囲が限定される

　紛争が続く間、ウクライナ領全域にNATOの集団防衛義務が適用されるわけではない。この制約は、ロシアとのさらなる対立を避けるための妥協策とも言える。

　2.NATO加盟の継続要求

　ウクライナ外務省は、NATO加盟以外の選択肢を受け入れないという立場を明確にし、従来の要求を強調した。

　これに対し、ロシアはこの条件を拒否。ゼレンスキー氏の提案は、「見せかけの譲歩」であり、実際には実質的な進展や妥協を示していないとされる。

　NATO加盟に関する問題点

　ウクライナのNATO加盟問題は、紛争の核心にある重要な論点である。NATO加盟は以下の理由で複雑化している。

　1.NATO加盟国の分裂

　現時点で、ハンガリー、ドイツ、米国などいくつかのNATO加盟国が、ウクライナの即時加盟に反対している。特に、加盟が第5条の義務を伴う場合、これがロシアとの直接衝突に繋がる可能性があるため、慎重な対応が求められている。

　2.安全保障保証による事実上の加盟

　ウクライナはすでに多くのNATO加盟国との間で安全保障保証を締結しており、これがNATO第5条と実質的に同様の役割を果たしている。具体的には、武器供与、情報共有、軍事訓練などがこれに含まれる。

　3.安全保障保証の終了の困難さ

　ドイツやイギリスとの保証は、通知から6カ月以内に終了可能とされているが、ポーランドや米国との保証は終了後も一定の条件下で継続されることが規定されている。

　例えば次のようである。

　・ポーランドとの合意では「既存の活動やプロジェクトは終了後も継続され得る」としている。
　・米国との合意も類似の条項を含み、特定の条件下で継続可能とされる。

　これにより、ウクライナが公式にはNATO加盟国ではなくとも、実質的にはNATOに組み込まれている状態が維持されている。

　ロシアの対応と戦略的懸念

　ロシアは、ウクライナのNATO加盟や安全保障保証を拒否する姿勢を一貫して示している。この理由は以下の通り：

　1.NATOの拡大に対する警戒

　NATOがウクライナを含む形で拡大することは、ロシアにとって安全保障上の脅威となる。特に、NATOがロシア国境に接近することは、ロシアの軍事戦略上の大きな懸念である。

　2.新型兵器の使用

　最近、ロシアはオレシニクという新型極超音速ミサイルを使用。これは、ウクライナがATACMSミサイルを使用してロシア領内を攻撃したことに対する反応と見られる。このようなエスカレーションは、紛争がさらに激化するリスクを伴う。

　3.安全保障保証の終了を目指す圧力

　ロシアがウクライナ政府（ゼレンスキー氏またはその後継者）に対してこれらの保証を終了させることを目指す可能性がある。しかし、前述のように、これらの保証の終了は極めて困難であり、西側諸国（特に米国やポーランド）が一部を独自に継続する可能性がある。

　今後の展望

　ロシアが軍事的・外交的に現状を変えるためには、以下のシナリオが考えられる：

　1.軍事的突破

　ロシアがウクライナ国内での軍事行動において決定的な優位を確立し、ゼレンスキー政権またはその後継政権に対し譲歩を強いる。

　2.安全保障保証の停止

　ロシアが西側諸国、特に米国やポーランドに対し、ウクライナへの安全保障保証を終了させるよう圧力をかける。しかし、これにはこれら諸国が軍事介入を躊躇することが必要である。

　3.NATOとロシア間の直接交渉

　NATOとロシアが妥協点を模索する交渉を開始する可能性もあるが、これには多くの障害がある。

　結論

　ゼレンスキー氏の提案は、実質的な譲歩ではなく、ウクライナがNATOに事実上組み込まれている現状を変えるものではない。ロシアがこれを受け入れるか、さらなる軍事的・外交的措置を講じて現状を変えようとするかが今後の焦点となる。この状況を根本的に変えるためには、予測不能な大規模な出来事が必要となる可能性が高い。

【要点】　

　ゼレンスキー氏の提案と背景

　1.停戦条件として、ウクライナがNATO加盟を認める代わりに、NATO第5条（集団防衛義務）が一部の領土には適用されないことを示唆した。
　2.外務省は「NATO加盟以外の選択肢を受け入れない」と明言し、基本方針を維持している。
　3.ロシアはこの提案を拒否し、現実的な譲歩ではないと批判している。

　ウクライナのNATO加盟と安全保障保証の現状

　1.加盟国の意見の相違

　ハンガリー、ドイツ、米国などは即時加盟に慎重である。

　2.安全保障保証による事実上の加盟

　多くのNATO加盟国と締結した安全保障保証が、NATO第5条と実質的に同等の機能を果たしている。

　3.安全保障保証の終了が困難

　ドイツとイギリスとの保証は比較的容易に終了可能だが、ポーランドや米国との合意は終了後も特定条件下で継続する可能性がある。

　ロシアの懸念と対応

　1.NATO拡大への反発
　
　ウクライナのNATO加盟は、ロシアにとって安全保障上の脅威。

　2.新型兵器の使用

　オレシニク極超音速ミサイルを使用し、紛争をエスカレートさせた。

　3.安全保障保証の終了を目指す

　ロシアはウクライナまたは西側諸国に保証を終了させるよう圧力をかける可能性があるが、困難が予想される。

　今後のシナリオ

　1.軍事的突破

　ロシアがウクライナ国内での軍事行動を強化し、譲歩を引き出す。

　2.安全保障保証の停止

　米国やポーランドに保証の終了を強制させるが、実行可能性は低い。

　3.NATOとロシアの交渉

　妥協点を模索する直接交渉の可能性もあるが、障害が多い。

　結論

　・ゼレンスキー氏の提案は実質的な譲歩ではなく、ウクライナの事実上のNATO加盟状態は維持される。
　・ロシアが現状を変えるには軍事的、外交的、または予期せぬ大きな出来事が必要となる。

【引用・参照・底本】

Zelensky’s Flip-Flop On Ceasefire Terms Is A Faux Concession Andrew Korybko's Newsletter 2024.12.05
https://korybko.substack.com/p/zelenskys-flip-flop-on-ceasefire?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=152601150&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

【概要】

　2024年12月4日、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は「春節、中国人による伝統的な新年の祝祭に関する社会的慣習」を無形文化遺産の代表的なリストに追加した。この決定は、無形文化遺産保護に関する政府間委員会の第19回セッションで行われ、中国はこれにより無形文化遺産リストに44項目を有する国となり、引き続き世界で最も多くの項目を持つ国となった。

　春節は、中国文化の象徴的な部分であり、中国国内および世界中で最も重要な祭りの一つである。この無形文化遺産としての認定は、春節が中国の文化的ルーツを持つだけでなく、人類全体に共通する価値観や考えを反映していることを示すものである。

　春節は中国文明の平和と調和の追求を象徴し、未来への最良の願いを表現し、社会的包摂や人間と自然との調和といった人類共通の価値観を具現化するものとして位置づけられている。

　春節は家族を中心に行われる。中国人は家族や家族間の強い絆を大切にし、その愛情をコミュニティや国家、さらには世界へと広げる。これが、毎年春節の時期に数百万人が故郷に帰る現象を生み出し、地球上で最も大きな人間の移動とも言われる。

　春節の祝いは15日間続き、最終日には灯籠祭り(元宵節)で締めくくられ、家族の集まりや宴会、さまざまな文化活動が行われる。

　春節は各家庭の食卓から始まる。春節の食文化は中国料理の文化に大いに貢献しており、餃子やもち米のケーキ、揚げ肉団子や煮込み魚など、地域ごとの特産料理が、家族への最良の祝福を込めて提供される。

　春節にはさまざまなレベルで無形文化遺産が含まれており、民話やそれに基づく伝統が根底にある祭りである。

　花火や赤い飾りは、かつて年末に人々や家畜を襲うと信じられた「年(ニアン)」という伝説上の怪物を追い払うために行われた。怪物は大きな音や赤い色を恐れていたため、今日では、春節の間、赤いランタンを吊るし、花火を打ち上げ、赤い巻物に韻を踏んだ言葉を門に貼り付けて、悪霊を追い払い、幸運を呼び込むことを願う。

　春節に関連する特定の日の風習だけでなく、その他にも興味深い文化的なシンボルや行事が存在し、これらの慣習や行事は中国やアジア、さらには世界中で受け継がれている。紙切りや龍の舞、灯籠祭りなど、これらの祭りは春節を祝う人々にとって最も幸せな日々となる。

【詳細】

　春節(中国の旧正月)は、中国をはじめ、世界中で広く祝われる最も重要な伝統的な祭りであり、これがユネスコの無形文化遺産に登録されたことは、その文化的・社会的な重要性を改めて認識させる出来事である。

　1. 春節の文化的背景と意義
春節は、中国における最も重要な伝統的な祭りで、農暦(旧暦)の1月1日にあたる日から始まり、通常は15日間続く。この期間中、家庭やコミュニティ、国家が一体となり、家族の絆や地域社会との繋がりを祝うことが特徴である。春節は、家族の団結を強調し、親しい人々との再会を促進するため、特に「帰省ラッシュ」として知られる巨大な人の移動が発生する。これは、世界最大規模の人間の移動現象であり、数億人が故郷に帰るために長距離を移動する。この点が、春節を単なる新年の祝いではなく、家族や社会の絆を再確認する重要な行事にしている。

　2. 春節の食文化

　春節において、食事は非常に重要な役割を果たす。各地で食べられる料理は、地域ごとに異なるが、どれも幸福、長寿、繁栄などの象徴を込めて作られる。代表的な料理には以下がある：

　・餃子(ジアオズ)：特に北方で食べられ、餃子の形が「金塊」に似ていることから、財運を招くと信じられている。
　・年糕(ニェンガオ)：もち米で作られる年糕は「年(ニェン)」を連想させ、家族の幸運と成長を象徴している。
　・魚(ユ)：魚は「余(ユ)」という音が同じで、「余裕」や「繁栄」を意味し、余った魚を食べることで、翌年の富を願う。

　これらの料理は、家族全員が一堂に会して食べることが多く、特に元日には家庭の食卓を囲み、親しい人々と共に過ごすことが大切にされる。

　3. 春節の伝統行事と文化的慣習

　春節には数多くの伝統行事や文化的慣習が存在する。これらは、民間伝承や伝説に基づいており、春節の期間中に行われるさまざまな儀式やイベントが含まれる。

　年(ニアン)という怪物の伝説：年の怪物は、春節の前後に人々を襲うと信じられており、この怪物を追い払うために、音を立てる花火や爆竹が使用される。赤い色が怪物を怖がらせるとされ、家々には赤いランタンや赤い飾り物、赤い巻物が飾られる。これらの飾りには、悪霊を追い払い、幸福を呼び込むという意味が込められている。

　花火と爆竹：春節の最も代表的な風習の一つとして、花火や爆竹を使うことが挙げられる。これは、年の怪物を追い払い、家の中を清めるための儀式的行為とされている。また、音の大きさが新年の繁栄を象徴するとも言われる。

　ドラゴンダンスと獅子舞：春節期間中に行われる伝統的な舞踊で、ドラゴンや獅子が登場するパフォーマンスは、幸運を呼び込むと信じられている。これらの舞踊は、主に町の広場や商業地区で行われる。

　灯籠祭り(元宵節)：春節の最終日には、元宵節として灯籠祭りが行われる。この日には、色とりどりの灯籠が街に飾られ、灯籠の中には詩や願いが込められていることが多い。また、この日には、団子(元宵)を食べることが習慣となっており、これも家族の絆や繁栄を象徴している。

　4. 現代の春節とその影響

　現代においても、春節は中国国内外で盛大に祝われており、文化的影響が広範囲に及んでいる。中国国内では、企業や商業施設が春節に合わせたプロモーションやイベントを行い、観光地では春節の期間に合わせた特別な行事が企画されることが多い。また、海外に住む中国人にとっても、春節は文化的アイデンティティを再確認するための重要な時期となっており、世界各地で春節を祝う祭りが開催される。

　さらに、春節は単なる祝祭の枠を超えて、家族の絆や社会的な絆を強化する象徴的な行事として、文化的な意味を持ち続けている。そのため、ユネスコによる無形文化遺産への登録は、春節が中国だけでなく、全人類に共通する価値を持つ伝統的な祝祭であることを再認識させるものである。

【要点】　

　1.春節の文化的意義

　・中国で最も重要な伝統的祭りで、農暦1月1日から15日間続く。
　・家族の団結を強調し、親しい人々との再会を促進する。
　・世界最大規模の人間の移動現象(帰省ラッシュ)が発生。

　2.春節の食文化

　・餃子：北方では金塊を象徴し、財運を呼び込む。
　・年糕(もち米のケーキ)：家族の成長と幸運を象徴。
　・魚(ユ)：余裕と繁栄を意味し、富を願う。

　3.春節の伝統行事

　・年(ニアン)怪物伝説：花火や爆竹、赤い飾り物で怪物を追い払い、悪霊を払う。
　・ドラゴンダンスと獅子舞：幸運を呼び込むための伝統的な舞踊。
　・灯籠祭り(元宵節)：春節の最終日、灯籠を飾り、団子を食べる。

　3.現代の春節の影響

　・中国国内外で盛大に祝われ、商業施設や観光地で特別イベントが行われる。
　・海外に住む中国人にとっても、文化的アイデンティティを再確認する時期。
　・ユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、世界的にその価値が認識される。

【引用・参照・底本】

China’s Spring Festival inscribed as UNESCO Intangible Cultural Heritage of Humanity GT 2024.12.04
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1324341.shtml

【概要】

　2024年12月4日、中国が直面するさまざまな形態の抑圧や封じ込めに対する最良の対応策は、自己強化であると強調した。

　最近、米国による中国の半導体産業への新たな輸出制限に対し、中国の複数の業界団体が「米国製半導体製品はもはや安全や信頼をおけない」と宣言した。この発言は、国際的に波紋を呼び、いくつかの西側メディアはこれを細かく分析し、米国の一部メディアは中国の「報復措置」に懸念を表明した。また、米国の同盟国はこれらの「報復措置」が「中国・米国貿易戦争2.0」を引き起こし、他国に影響を及ぼす可能性を心配している。一方、ホワイトハウスは、中国の「強制的な行動」に対抗するために「必要な措置」を取ると述べている。

　実際、米国が新たな輸出制限を計画した初期段階で、米国内の業界団体、企業、信頼のおけるメディアは、保護主義的な手段を用いて中国の技術進歩を妨げることが政策目的を達成しないどころか、むしろ中国の独立した革新努力を加速させるだろうと警告していた。

　外部からの抑圧や封じ込めに直面した場合、中国はその利益を不当な損害から守る権利を有する。中国は、決定を下す際に、世界貿易秩序の維持や産業・供給チェーンの安定性を常に考慮している。中国が技術分野における抑圧や封じ込めに対して行ってきた対応策の核心は、自己依存と自己強化である。

　米国が中国の技術進歩を抑制するために策定した「戦略的合意」は長期的なものであり、その政策の一貫性は高い。先進的な半導体製造設備への輸出制限の強化や、他国に対する中国半導体産業への「包囲網」形成の圧力、高度な技術を有する中国企業の「エンティティリスト」への追加、米国での中国企業の投資や買収の制限、米中企業間の技術交流や協力の制限など、これらはすべて露骨な不当な圧力行為である。これにより、中国の先端技術分野の発展は複雑な外部環境に直面し、技術進歩に欠かせない協力的な環境が不安定化する。

　中国はこれらの抑圧や圧力に対し、常に技術的な突破口や産業のアップグレードを自らの努力で実現してきた。このことは過去にも当てはまり、今後も変わらない。

　中国の自己依存と自己強化こそが、あらゆる抑圧や封じ込めに対する最良の反応である。報道によると、過去10年間、中国はイノベーションにおいて最も成長した経済の一つとされている。中国は独立した高度な技術の研究開発能力を強化しただけでなく、将来を見据えた戦略的投資や国際協力にも注力している。昨年、中国の研究開発(R&D)支出は3.3兆元を超え、前年比で8.4％増加した。また、多くの多国籍企業が中国に研究開発センターを設立している。イギリスの『エコノミスト』誌は、中国が「世界の研究開発ラボ」としての役割を強化していると分析し、「まずは道具を研げ」という結論に至っている。

　中国の巨大な市場需要、産業の大規模なアップグレードの必要性、高品質な革新人材の蓄積、そして強固な産業基盤が、継続的な技術革新を潜在的な力に変え、世界経済と技術の発展に大きな貢献をしている。中国はこれまで、5G、ドローン、リチウム電池、太陽光パネル、超高圧送電などの新興技術で国際的に輝かしい成果を上げてきた。外部からの圧力が影響を与えることはあっても、独立したイノベーションへの道を阻むことはできない。これらの目に見える進展は、西側の一部の識者が「ワッカ・モールゲーム」を放棄するよう米国に呼びかける背景となっている。

　現在、半導体などの先端技術分野において、中国と世界の先進的なレベルとの間には依然として大きなギャップが存在する。しかし、中国の革新と発展の決意は揺るぎない。中国の技術的な自立は、14億人以上の人々の発展権に関連するのみならず、世界により高品質な公共財を提供する能力にも関わっている。中国は電気自動車、太陽光製品、5Gネットワークなどをヨーロッパ、米国、中東、アフリカ、ラテンアメリカの人々と共有しており、その高技術開発は、グローバル化の時代において包括的で万人に利益をもたらすものであり、さらなる成功を収めることが予想される。

【詳細】

　2024年12月4日、米国が中国に対して行った輸出制限について、中国が採るべき最良の対応策として「自己強化」を強調している。これに対し、複数の中国の業界団体は、米国製半導体製品に対して「もはや安全と信頼をおけない」と表明した。この発言は、国際的に波紋を広げ、一部の米国メディアはこれを詳細に分析した上で、中国が報復措置を取る可能性を懸念している。さらに、米国の同盟国は、これらの報復措置が「中国・米国貿易戦争2.0」を引き起こし、世界的な影響を及ぼすのではないかと心配している。

　このような状況に対し、ホワイトハウスは「必要な措置」を講じて、中国の「強制的な行動」に対応することを表明している。中国の報復措置が引き金となる新たな貿易戦争に関して、米国の反応は、事態を逆転させようとするものだと社説では述べられている。

　1. 米国の抑圧的政策と中国の反応

　米国は、中国の技術発展を抑制するために長年にわたって一貫した政策を採ってきた。これには、先進的な半導体製造機器への輸出制限、他国に対する中国半導体産業への「包囲網」の形成、高度な技術を持つ中国企業のリスト化、米国での中国企業の投資や買収の制限、そして米中間の技術交流の制限が含まれる。これらの措置は、いずれも中国の技術進歩を妨げるものであり、社説では「露骨な圧力行為」とされている。

　このような圧力に対し、中国は過去にも類似の状況に直面しており、例えば1993年に米国が中国の衛星技術へのアクセスを制限した際、中国は独自に衛星技術を発展させ、現在では約900基の衛星を運用しており、米国の「スターリンク」に匹敵する衛星通信システムを立ち上げた。また、1999年に米国が中国の位置情報システムへのアクセスを制限した際も、中国は「北斗衛星ナビゲーションシステム」を独自に開発し、現在ではGPSよりも優れた精度を誇るとされている。これらの事例からも、中国は外部からの制約に対して自力で突破口を開く力を持っていることが示されている。

　2. 中国の自己強化と独立性の強調

　中国は、技術分野における抑圧に対して、独立した革新の努力を続けることが最良の対応策であるとする立場を取っている。中国の技術開発の原則は、常に「自己依存と自己強化」であり、外部の抑圧に屈することなく、独自の技術革新を進めることだと強調されている。中国は、外部からの圧力をむしろ刺激として、国内の技術革新を加速させてきたとされる。これには、国内での大規模な研究開発(R&D)の投資が含まれ、例えば2023年には中国のR&D支出が3.3兆元を超え、前年比で8.4％増加した。

　また、中国は新興技術においても成果を上げており、5G、ドローン、リチウム電池、太陽光パネル、超高圧送電などの分野で国際的に重要な地位を築いてきた。これらの技術は、米国やヨーロッパといった先進国に匹敵する、あるいはそれを凌駕するレベルに達しており、中国の技術開発は常に進展し続けていると述べられている。

　3. 中国のイノベーションへの投資と国際協力

　中国の技術革新は、国内の需要や産業のアップグレードに支えられており、強固な産業基盤と革新人才の蓄積によって支えられている。これにより、中国は技術革新をグローバル経済における重要な力に転換し、世界の技術発展に貢献しているとされる。さらに、中国の新技術は、単に国内の利益にとどまらず、世界中に波及し、特にヨーロッパ、米国、中東、アフリカ、ラテンアメリカなどの地域において、電気自動車や太陽光発電、5Gネットワークといった分野で重要な役割を果たしている。

　中国が追求する技術的な自立は、14億人以上の国民の発展権にとどまらず、世界中の人々に高品質な公共財を提供することにもつながると強調している。中国の技術発展は、すべての国にとって利益となる形で進められており、今後もグローバル化の時代において、中国の高技術が歓迎され、さらなる成功を収めると予測されている。

　結論

　米国による制裁や抑圧が中国の技術革新に対して圧力をかけるものであることは明白であり、それに対して中国は「自己強化」を通じて独自の技術力を高めてきた。中国は外部からの圧力をむしろ発展の原動力として、今後も世界の技術革新に貢献し続けるであろう。そのため、米国をはじめとする西側諸国がどれだけ抑圧的な措置を取ったとしても、中国の技術発展を止めることはできないという自信が示されている。

【要点】　

　1.中国の反応

　・米国が中国の半導体産業に対して輸出制限を強化したことに対し、中国の業界団体は「米国製半導体はもはや安全で信頼できない」と声明を発表。
　・一部の米国メディアは、中国が報復措置を取る可能性を懸念。
　・米国の同盟国は、これが「中国・米国貿易戦争2.0」につながることを心配。
　・ホワイトハウスは、中国の「強制的行動」に対応するための「必要な措置」を講じると表明。

　2.米国の抑圧政策

　・米国は長年にわたり、中国の技術発展を抑制する政策を採ってきた(半導体製造機器の輸出制限、他国への圧力、リスト化など)。
　・これらは「露骨な圧力行為」として中国にとっては不正な行動であり、国際的な協力を不安定にさせている。

　3.中国の自己強化と革新

　・外部からの抑圧に対して、中国は「自己依存と自己強化」を掲げ、技術革新を加速。
　・過去の事例(衛星技術、北斗衛星システムなど)からも、中国は外圧に屈することなく独自の技術を発展させてきた。
　・2023年にはR&D支出が3.3兆元を超え、前年比8.4%増加。

　4.技術革新の成果

　・中国は5G、ドローン、リチウム電池、太陽光パネル、超高圧送電などの分野で国際的に重要な地位を築く。
　・外部圧力に影響されることなく、技術開発は進行中。

　5.中国のグローバルな影響力

　・中国は国内の大規模な産業アップグレード、革新人才の蓄積、市場需要に基づいて技術革新をグローバル経済に転換。
　・中国の新技術は、ヨーロッパ、米国、中東、アフリカ、ラテンアメリカなどで歓迎されている。
　・これにより、電気自動車や太陽光発電、5Gネットワークといった分野で貢献。

　6.自己強化の重要性

　・中国の技術的自立は、国内の発展だけでなく、世界中の人々に高品質な公共財を提供することにもつながる。
　・中国の技術発展はグローバル化の時代においてすべての国に利益をもたらす形で進められ、さらなる成功が予測される。

　7.結論

　・米国による抑圧が中国の技術革新に圧力をかけているが、これに対して中国は自己強化を通じて発展を続けている。
　・外部の抑圧的措置があっても、中国の技術発展を止めることはできないという自信が示されている。

【引用・参照・底本】

China’s self-strengthening is the best response to all forms of containment: Global Times editorial GT 2024.12.04
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1324357.shtml

【概要】
　
　2024年12月4日(水)、フィリピンが中国が主張する領海である黄岩島周辺に、沿岸警備隊や公船、漁船を派遣して侵入を試みたという。この行動に対して、中国海警局(CCG)が法令に基づき管理措置を取ったとされる。CCGの報道官であるLiu Dejun氏は、フィリピンの公船「3003」が複数回の厳重な警告を無視し、急旋回と後退を行い、故意に中国海警船「3302」に衝突したと主張している。この事件についてフィリピン側は映像を公開し、中国側を非難する意図があったとされるが、中国側は映像が意図的に編集されたものだと反論している。

　マルコス政権下でフィリピンが米国の支持を受けたと認識し、中国に対して挑発行動を繰り返していると述べている。しかし、実際には米国の支援は口先だけで、具体的な行動が伴っていないと指摘している。また、フィリピンが挑発行為を繰り返しても、それが成功することはなく、中国側が法に則った抑制的で効果的な対応を取っていると評価している。

　さらに、中国は2024年11月10日に黄岩島周辺の領海基線を設定し、同基線を国際連合に提出するなど、南シナ海における主権を主張する取り組みを進めていると述べている。この行動を通じて、中国は南シナ海問題への対応に自信と冷静さを示していると主張している。

　フィリピンの挑発行動は短期的には続く可能性があるが、最終的には失敗に終わると予測している。また、地域内の多くの国々はフィリピンの行動を支持しておらず、米国が地域対立を煽ろうとしていることを認識していると述べている。結果として、フィリピン政府は、地域全体がその行動を支持していない現実や、米国の支援が空虚であることに直面せざるを得なくなると結論づけている。

【詳細】

　この問題の中心は、中国が黄岩島(Scarborough Shoal)周辺を自国の領海と主張しているのに対し、フィリピンがこれに異議を唱え、実効支配を試みている点にある。

　1. 事件の詳細

　2024年12月4日、フィリピン政府は黄岩島周辺海域に沿岸警備隊の船舶、公船、漁船を派遣した。これに対し、中国海警局(CCG)は、「中国領海への侵入」としてフィリピン側に警告を発し、管理措置を講じた。事件では、フィリピンの公船「3003」と中国海警局の船舶「3302」が衝突した。フィリピン側は映像を公開し、中国の対応を非難したが、中国側はこれを「編集された映像」と指摘し、フィリピンが故意に衝突を引き起こしたと主張している。中国側の説明では、フィリピン船は中国からの繰り返しの警告を無視し、不自然な航行を行った後に衝突したとされる。

　2. フィリピンの挑発行為とその背景
　
　フィリピンの挑発行為がマルコス政権下で増加していると述べている。この背景には、フィリピンが米国の支持を受けているという認識があるとされる。フィリピンは次のようなパターンで行動している。

　・警告を無視：中国側の警告を無視して意図的に挑発行為を続ける。
　・衝突を演出：故意に衝突を引き起こし、その映像を国際的な世論工作に利用する。
　・被害者を装う：自国が攻撃されたと主張し、中国を国際社会において非難する。

　一方で、米国の支持は口先だけで実質的な支援に欠けると記事は指摘している。この状況がフィリピンの外交的な孤立を招いていると述べている。

　3. 中国の対応

　中国はフィリピンの行動に対し、「法に則った合理的かつ抑制的な対応」を取っていると主張している。以下の点が挙げられている。

　・法的な措置：2024年11月10日、中国政府は黄岩島周辺の領海基線を定め、国際法に基づいて国連に提出した。この行動は、中国がこの海域を自国領として主張する法的根拠を強化するものとされる。
　・多様な管理手段の導入：海警局による現場対応だけでなく、外交、国際法を駆使した対応を行っている。
　・冷静さと自信のアピール：挑発に過剰反応せず、一貫した方針を維持していることが強調されている。

　4. 地域の反応と影響

　フィリピンの挑発行為が地域内で支持を得ていないと主張している。具体的には以下のような点が挙げられている：

　・他国の立場：多くの地域諸国は、フィリピンの行動を支持せず、米国が地域を分断しようとしていると認識している。
　・平和と発展への願望：地域全体が、米国の干渉ではなく、安定と経済発展を求めているとされる。

　5. フィリピンの未来についての見解

　フィリピンがこのような挑発行為を続けても成功しないと結論付けている。その理由として次の点を挙げている。

　・挑発行為が「一人芝居」に過ぎず、実際の成果を上げていないこと。
　・米国の支援が実質を伴わないため、フィリピンが国際社会で孤立する可能性が高いこと。
　・中国の抑制的かつ効果的な対応によって、フィリピンの挑発行為が結果的に失敗すること。

　総括

　中国が南シナ海問題において法的根拠を重視し、冷静かつ計画的に行動していると評価している。一方で、フィリピンの挑発行為を「無益な一人芝居」として否定的に描き、国際社会や地域内での支持を欠いていると批判している。また、フィリピンが米国への依存を続ける限り、実質的な成果を得ることは難しいとの見方を示している。

【要点】　

　事件の概要

　・2024年12月4日、フィリピンが黄岩島周辺海域に沿岸警備隊、公船、漁船を派遣。
　・中国海警局(CCG)がこれを「中国領海への侵入」として警告し、管理措置を実施。
　・衝突事件発生：フィリピン公船「3003」が中国海警船「3302」に故意に衝突したと中国が主張。
　・フィリピンは映像を公開し、中国側の行動を非難するが、中国は「映像が意図的に編集された」と反論。

　フィリピンの挑発行為と背景

　・フィリピンは米国からの支持を受けていると誤認し、中国に挑発的な行動を繰り返している。
　・挑発の典型的なパターン

　　⇨ 中国側の警告を無視。
　　⇨ 故意に衝突を演出し映像を利用して国際社会で被害者を装う。
　　⇨ 結果的に、国際社会での実質的な支持を得られていない。

　・米国の支援は口先だけで実際の行動は乏しく、フィリピンが孤立を深める要因となっている。

　中国の対応

　・法的措置：黄岩島周辺の領海基線を設定し、国際法に基づき国連に提出。
　・冷静な対応：挑発に過剰反応せず、一貫した抑制的で効果的な方針を維持。
　・多様な手段：海上管理に加え、国際法や外交を駆使して主権を主張。

　地域内の反応

　・地域諸国の立場：フィリピンの挑発行為を支持しない国が多い。
　・米国の役割：地域の分断を煽り、中国を牽制する意図が見え隠れする。
　・地域の希望：平和と経済発展を重視し、対立を望まない国が多数。

　結論と見解

　・フィリピンの挑発行為は「無益な一人芝居」に過ぎない。
　・挑発行為を繰り返しても成功する見込みはない。
　・米国からの支援に実質的な成果が伴わず、フィリピンは孤立を深める。
　・中国は法と外交を駆使し、主権を守る自信と冷静さを示している。

【引用・参照・底本】

The Philippines’ self-directed South China Sea drama tiresome GT 2024.12.05
https://www.globaltimes.cn/page/202412/1324365.shtml