トランプ政権の関税政策:「一歩進んで二歩下がる」状況 ― 2025年04月13日 19:20
【概要】
2025年4月10〜11日にかけて展開されたアメリカの通商政策、特にトランプ大統領による対中・対欧関税措置に関する報道のまとめである。
1. 対中関税の引き上げ
・トランプ大統領は中国からの輸入品に対し追加関税145%という過去最大級の措置を発動。
・これに対し中国も米国製品に対して84%の関税で応酬。
・中国はさらにハリウッド映画の輸入制限も発表、象徴的だが経済的影響は限定的とされる。
✅評価:1930年のスムート・ホーリー法以来最大規模の保護主義的転換と指摘される。グローバルな供給網の分断を招く恐れがある。
2. 対欧関税は一時停止
・トランプ政権は欧州に対する20%関税を90日間停止。
・EUも報復関税を90日間凍結。
・トランプは「EUは賢明だった(very smart)」と評価。
✅評価:中国に対する強硬姿勢と対欧州での交渉余地を分けることで、外交戦略の柔軟性を確保した形。ただし不確実性は残る。
3. 市場の反応と経済的懸念
・米株式市場は10日には歴史的急騰(S&P500で+9.5%)したが、11日には3%以上の下落。
・アジア市場(特に日経平均)は11日朝に5.4%の下落。
・ドルと原油価格も急落、金と円が上昇。
✅評価:市場は依然として関税政策の持続性や実効性に懐疑的。トランプが語る「transition cost(移行期の痛み)」が現実化している。
4. 政策に対する評価と批判
・元財務長官ジャネット・イエレン氏はこれを「経済的自傷行為」と評した
。
・米国債利回りの急上昇が金融不安を招き、トランプに方向転換を促したとの見解。
・自動車労組(UAW)のリーダーは一部の関税を「労働者保護のため有用」と支持する一方で、「政治的ゲームへの利用」には反対。
✅評価:政策の効果や正当性については経済界・労働界の間でも分裂が見られる。
5. 国際的波紋:アルゼンチンと中国の関係
・アルゼンチンは中国との通貨スワップ協定(50億ドル)を延長。
・米国はこの協定を「恐喝(extortion)」と非難。
✅評価:米中の通商戦争は、南米やアジアの新興国を含む地政学的影響にも波及している。
総評
トランプ政権の関税政策は、一時的な金融市場の混乱と中長期的な経済の不確実性を招いており、「一歩進んで二歩下がる」状況にある。
市場は大統領の言う「beautiful thing(美しい結末)」を信じ切れていない。今後90日間での交渉結果が重要な意味を持つが、トランプが再び強硬路線に戻る可能性も排除できない。
【詳細】
1.米中間の関税戦争の激化
トランプ政権は中国からの輸入品に対し追加関税を145%に引き上げた。これは2025年初頭の20%、そして新たに追加された125%の上乗せを合計したもの。
一方、中国は米国製品に84%の関税を課す報復措置を取っており、両国の貿易戦争はさらに激しさを増している。
この急激な関税の上昇は、1930年のスムート・ホーリー関税法以来最大とされ、過去の経済危機の再来を懸念する声も上がっている。
2.米国株式市場と世界市場の混乱
トランプが関税の一時停止(90日間)を発表したことにより、4月9日には米国市場が急騰したが、その後の中国への制裁強化の影響で、以下のような急落が起きた・
・S&P 500:前日の+9.5%から、-3.4%に転落
・ダウ平均:1048ポイント(-2.6%)下落
・ナスダック:-4.3%
・日本のNIKKEI:+9.1%から翌日には-5.4%へ暴落
・原油価格とドル:ともに大きく下落
・金価格と円:安全資産として急騰
これは市場が、トランプの「部分的譲歩」では不十分であると判断し、貿易戦争の長期化を警戒したためである。
3.トランプの「移行コスト(transition cost)」発言
トランプは内閣会議で、「大きな市場回復があったが、移行期には困難がつきものだ」と述べた。これは経済混乱が一時的であるという見解を強調するものであり、最終的には「美しい結果になる」と楽観的な見方を示している。
ただし、この発言は投資家や企業にとっては不透明さを助長しており、明確な経済計画の不足が批判されている。
4 EUとの関係と一時的な緊張緩和
EUはトランプの対欧20%関税の90日停止措置に歩調を合わせ、報復関税の適用を猶予。トランプはこれを「EUは非常に賢明だ」と評価し、対欧関係の改善の余地を残した。
この措置により、欧州市場は安堵感から急騰し、STOXX600(欧州全体指数)が3.7%上昇し、ドイツ・フランス・スペイン・英国など各国市場も2022年以来の急騰を見せた。
5.米国内の労働団体の反応
UAW(全米自動車労働組合)のショーン・フェイン会長は、自動車業界における「一部の関税」を支持。特に中国や他の低コスト国との不公正な競争に対抗する手段としては有効だと述べた。
しかし彼は同時に、移民問題や麻薬(フェンタニル)を口実にした関税適用には反対を表明し、政治的道具としての関税には懸念を示している。
6.アルゼンチンと中国の通貨スワップ延長
アルゼンチンは、50億ドル規模の人民元との通貨スワップ協定を1年間延長。これは同国が外貨準備を維持するための措置だが、米国の政権関係者はこれを「脅迫に等しい」と批判している。
一方でアルゼンチンはIMFから200億ドルの支援融資を得ようとしており、その中で中国との関係深化が地政学的にも注目されている。
7.米財務市場の緊張
前財務長官のジャネット・イエレンは、米国債の金利急騰と売り圧力が金融市場の安定性に影響を与えたと指摘。このプレッシャーがトランプに対して一部関税見直しを促す要因になったと述べている。
米国債市場は世界的な「安全資産」として機能してきたが、関税不安による投資家の信頼喪失は、ドルの地位にも影を落としかねない。
まとめ:情勢の評価
項目 状況
米中関係 事実上の経済冷戦状態。両国とも報復姿勢を強めている。
米欧関係 一時的に緩和。だが90日後の展開次第で再燃の可能性あり。
米国内の支持 労働組合の一部は支持。だが金融・産業界は反発。
市場の反応 株式、通貨、原油など、広範囲にわたる動揺。安全資産が買われている。
トランプの姿勢 一貫して強気だが、部分的に譲歩しており、軟化の兆しも見える。
【要点】
1.米中関税戦争の激化
・トランプ政権が中国からの輸入品に最大145%の関税を課すと発表。
・これは既存の20%に125%を追加したもの。
・中国は報復として米国製品に84%の関税を課す。
・両国の関税合戦は過去数十年で最大規模。
2.世界の金融市場の混乱
・トランプが一部関税の90日間停止を発表し、一時的に株式市場が急騰。
・だが、翌日に中国への追加関税を発表し、株価が急落。
S&P500:+9.5% → -3.4%
ダウ平均:-1048ポイント(-2.6%)
ナスダック:-4.3%
日本の日経平均:+9.1% → -5.4%
原油・ドル:下落
金・円:上昇(安全資産として買われる)
3.トランプの発言とスタンス
・「移行コストは一時的なもの。最終的に素晴らしい結果が得られる」と楽観視。
・経済混乱を一時的な副作用と位置づけ、強硬策を正当化。
4.対EU政策の一時緩和
・トランプはEUに対する関税(20%)を90日間停止。
・EUも報復関税の発動を見送る姿勢を示す。
・欧州市場は好感し、STOXX600が+3.7%上昇。
➡️独・仏・西・英なども軒並み上昇。
5.労働団体の反応(UAWなど)
・UAW会長ショーン・フェイン
➡️対中関税を一部支持(不公正な競争への対抗として)。
➡️だが政治目的の関税(移民や麻薬対策)には反対。
6.中国・アルゼンチンの通貨スワップ延長
・アルゼンチンが人民元との通貨スワップ(約50億ドル)を延長。
・米政府関係者はこれを「脅しに近い」と非難。
・IMFへの支援要請(200億ドル)と同時進行で、米中の影響力が衝突。
7.米国債市場の緊張
・前財務長官イエレンが「米国債の売り圧力が危機的」と警告。
・金利急騰により、金融安定性への懸念が高まる。
・トランプ政権にも一部見直しの圧力がかかる要因に。
【参考】
☞ アルゼンチンが中国と結んだ50億ドル規模の人民元との通貨スワップ協定を1年間延長したことに対して、米国の政権関係者が「脅迫に等しい」と批判した背景には、いくつかの要因が考えられる。
1.米国の地政学的懸念
アルゼンチンの様な経済的に困難な状況にある国々が、中国との通貨スワップ協定を結ぶことは、米国にとっての地政学的な脅威となり得る。中国はこれらの協定を通じて、影響力を拡大し、アメリカの経済的・金融的な影響力に対抗しようとしていると見なされている。米国は、こうした協定が「人民元の国際化」や「ドルの支配力に対する挑戦」を意味すると捉えており、これが脅威と感じられる。
2.アルゼンチンの経済依存
アルゼンチンは経済的に困難な状況にあり、外貨準備を維持するために中国とのスワップ協定を延長している。米国から見れば、このような経済的依存がアルゼンチンを中国に対して「弱い立場」に置かせ、結果として中国の影響力が強まることを懸念する理由である。特に、アルゼンチンは経済危機を抱えながら、中国と締結した協定に依存していることが、米国側から見て「圧力を受けた取引」に見える可能性がある。
3.金融的影響とドルの支配力
アメリカは、世界経済におけるドルの支配力を重視しており、ドル以外の通貨、特に人民元が国際金融システムで重要な役割を果たすことに強い反発を示している。アルゼンチンが人民元とのスワップ協定を延長することは、ドルの影響力を弱めることに繋がりかねないため、米国の政権関係者がこの動きを「脅迫に等しい」と批判する背景にある。
4.中国の戦略的アプローチ
中国は、特に経済危機に瀕している国々に対して、通貨スワップ協定を提案することで経済的な影響力を強化しようとしている。アルゼンチンはその一例であり、米国としては、こうした経済的圧力を通じて中国が他国を従わせようとしていると考え、その戦略に反発を示している。
これらの要因から、アルゼンチンの通貨スワップ延長が米国にとって「脅迫に等しい」と受け止められているのだろう。
☞ アルゼンチンが中国との通貨スワップ協定を通じて人民元を保有し、必要な時にそれをドルと交換するという仕組みである。通貨スワップ協定とは、2国間で一定の通貨を交換する契約であり、アルゼンチンはこの協定を利用して人民元を取得し、経済的に困難な状況下で外貨準備を維持している。
具体的には、アルゼンチンは人民元を手に入れることで、外貨準備の不足を補うことができる。必要な際には、その人民元をドルに交換することで、ドル建ての支払い義務を果たすことができる。このようなスワップ協定により、アルゼンチンは米ドルへの依存度を減らし、人民元を代替的な通貨として利用することが可能となる。
この仕組みは、特に米国からの経済制裁や国際的な金融システムにおけるドルの支配に対抗する手段として有効である。アルゼンチンは、経済危機の中でドルの不足に悩まされており、中国とのスワップ協定はその問題を解決する一つの方法となっている。
そのため、アルゼンチンが元を保持し、必要な時にドルに交換できるこのシステムは、外貨準備の安定を図るための重要な手段として機能しているのである。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Trump warns of 'transition cost' as uncertainty over tariffs lingers FRANCE24 2025.04.11
https://www.france24.com/en/economy/20250410-live-china-s-84-retaliatory-tariffs-take-effect-after-trump-s-tariff-rollback?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250410&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
2025年4月10〜11日にかけて展開されたアメリカの通商政策、特にトランプ大統領による対中・対欧関税措置に関する報道のまとめである。
1. 対中関税の引き上げ
・トランプ大統領は中国からの輸入品に対し追加関税145%という過去最大級の措置を発動。
・これに対し中国も米国製品に対して84%の関税で応酬。
・中国はさらにハリウッド映画の輸入制限も発表、象徴的だが経済的影響は限定的とされる。
✅評価:1930年のスムート・ホーリー法以来最大規模の保護主義的転換と指摘される。グローバルな供給網の分断を招く恐れがある。
2. 対欧関税は一時停止
・トランプ政権は欧州に対する20%関税を90日間停止。
・EUも報復関税を90日間凍結。
・トランプは「EUは賢明だった(very smart)」と評価。
✅評価:中国に対する強硬姿勢と対欧州での交渉余地を分けることで、外交戦略の柔軟性を確保した形。ただし不確実性は残る。
3. 市場の反応と経済的懸念
・米株式市場は10日には歴史的急騰(S&P500で+9.5%)したが、11日には3%以上の下落。
・アジア市場(特に日経平均)は11日朝に5.4%の下落。
・ドルと原油価格も急落、金と円が上昇。
✅評価:市場は依然として関税政策の持続性や実効性に懐疑的。トランプが語る「transition cost(移行期の痛み)」が現実化している。
4. 政策に対する評価と批判
・元財務長官ジャネット・イエレン氏はこれを「経済的自傷行為」と評した
。
・米国債利回りの急上昇が金融不安を招き、トランプに方向転換を促したとの見解。
・自動車労組(UAW)のリーダーは一部の関税を「労働者保護のため有用」と支持する一方で、「政治的ゲームへの利用」には反対。
✅評価:政策の効果や正当性については経済界・労働界の間でも分裂が見られる。
5. 国際的波紋:アルゼンチンと中国の関係
・アルゼンチンは中国との通貨スワップ協定(50億ドル)を延長。
・米国はこの協定を「恐喝(extortion)」と非難。
✅評価:米中の通商戦争は、南米やアジアの新興国を含む地政学的影響にも波及している。
総評
トランプ政権の関税政策は、一時的な金融市場の混乱と中長期的な経済の不確実性を招いており、「一歩進んで二歩下がる」状況にある。
市場は大統領の言う「beautiful thing(美しい結末)」を信じ切れていない。今後90日間での交渉結果が重要な意味を持つが、トランプが再び強硬路線に戻る可能性も排除できない。
【詳細】
1.米中間の関税戦争の激化
トランプ政権は中国からの輸入品に対し追加関税を145%に引き上げた。これは2025年初頭の20%、そして新たに追加された125%の上乗せを合計したもの。
一方、中国は米国製品に84%の関税を課す報復措置を取っており、両国の貿易戦争はさらに激しさを増している。
この急激な関税の上昇は、1930年のスムート・ホーリー関税法以来最大とされ、過去の経済危機の再来を懸念する声も上がっている。
2.米国株式市場と世界市場の混乱
トランプが関税の一時停止(90日間)を発表したことにより、4月9日には米国市場が急騰したが、その後の中国への制裁強化の影響で、以下のような急落が起きた・
・S&P 500:前日の+9.5%から、-3.4%に転落
・ダウ平均:1048ポイント(-2.6%)下落
・ナスダック:-4.3%
・日本のNIKKEI:+9.1%から翌日には-5.4%へ暴落
・原油価格とドル:ともに大きく下落
・金価格と円:安全資産として急騰
これは市場が、トランプの「部分的譲歩」では不十分であると判断し、貿易戦争の長期化を警戒したためである。
3.トランプの「移行コスト(transition cost)」発言
トランプは内閣会議で、「大きな市場回復があったが、移行期には困難がつきものだ」と述べた。これは経済混乱が一時的であるという見解を強調するものであり、最終的には「美しい結果になる」と楽観的な見方を示している。
ただし、この発言は投資家や企業にとっては不透明さを助長しており、明確な経済計画の不足が批判されている。
4 EUとの関係と一時的な緊張緩和
EUはトランプの対欧20%関税の90日停止措置に歩調を合わせ、報復関税の適用を猶予。トランプはこれを「EUは非常に賢明だ」と評価し、対欧関係の改善の余地を残した。
この措置により、欧州市場は安堵感から急騰し、STOXX600(欧州全体指数)が3.7%上昇し、ドイツ・フランス・スペイン・英国など各国市場も2022年以来の急騰を見せた。
5.米国内の労働団体の反応
UAW(全米自動車労働組合)のショーン・フェイン会長は、自動車業界における「一部の関税」を支持。特に中国や他の低コスト国との不公正な競争に対抗する手段としては有効だと述べた。
しかし彼は同時に、移民問題や麻薬(フェンタニル)を口実にした関税適用には反対を表明し、政治的道具としての関税には懸念を示している。
6.アルゼンチンと中国の通貨スワップ延長
アルゼンチンは、50億ドル規模の人民元との通貨スワップ協定を1年間延長。これは同国が外貨準備を維持するための措置だが、米国の政権関係者はこれを「脅迫に等しい」と批判している。
一方でアルゼンチンはIMFから200億ドルの支援融資を得ようとしており、その中で中国との関係深化が地政学的にも注目されている。
7.米財務市場の緊張
前財務長官のジャネット・イエレンは、米国債の金利急騰と売り圧力が金融市場の安定性に影響を与えたと指摘。このプレッシャーがトランプに対して一部関税見直しを促す要因になったと述べている。
米国債市場は世界的な「安全資産」として機能してきたが、関税不安による投資家の信頼喪失は、ドルの地位にも影を落としかねない。
まとめ:情勢の評価
項目 状況
米中関係 事実上の経済冷戦状態。両国とも報復姿勢を強めている。
米欧関係 一時的に緩和。だが90日後の展開次第で再燃の可能性あり。
米国内の支持 労働組合の一部は支持。だが金融・産業界は反発。
市場の反応 株式、通貨、原油など、広範囲にわたる動揺。安全資産が買われている。
トランプの姿勢 一貫して強気だが、部分的に譲歩しており、軟化の兆しも見える。
【要点】
1.米中関税戦争の激化
・トランプ政権が中国からの輸入品に最大145%の関税を課すと発表。
・これは既存の20%に125%を追加したもの。
・中国は報復として米国製品に84%の関税を課す。
・両国の関税合戦は過去数十年で最大規模。
2.世界の金融市場の混乱
・トランプが一部関税の90日間停止を発表し、一時的に株式市場が急騰。
・だが、翌日に中国への追加関税を発表し、株価が急落。
S&P500:+9.5% → -3.4%
ダウ平均:-1048ポイント(-2.6%)
ナスダック:-4.3%
日本の日経平均:+9.1% → -5.4%
原油・ドル:下落
金・円:上昇(安全資産として買われる)
3.トランプの発言とスタンス
・「移行コストは一時的なもの。最終的に素晴らしい結果が得られる」と楽観視。
・経済混乱を一時的な副作用と位置づけ、強硬策を正当化。
4.対EU政策の一時緩和
・トランプはEUに対する関税(20%)を90日間停止。
・EUも報復関税の発動を見送る姿勢を示す。
・欧州市場は好感し、STOXX600が+3.7%上昇。
➡️独・仏・西・英なども軒並み上昇。
5.労働団体の反応(UAWなど)
・UAW会長ショーン・フェイン
➡️対中関税を一部支持(不公正な競争への対抗として)。
➡️だが政治目的の関税(移民や麻薬対策)には反対。
6.中国・アルゼンチンの通貨スワップ延長
・アルゼンチンが人民元との通貨スワップ(約50億ドル)を延長。
・米政府関係者はこれを「脅しに近い」と非難。
・IMFへの支援要請(200億ドル)と同時進行で、米中の影響力が衝突。
7.米国債市場の緊張
・前財務長官イエレンが「米国債の売り圧力が危機的」と警告。
・金利急騰により、金融安定性への懸念が高まる。
・トランプ政権にも一部見直しの圧力がかかる要因に。
【参考】
☞ アルゼンチンが中国と結んだ50億ドル規模の人民元との通貨スワップ協定を1年間延長したことに対して、米国の政権関係者が「脅迫に等しい」と批判した背景には、いくつかの要因が考えられる。
1.米国の地政学的懸念
アルゼンチンの様な経済的に困難な状況にある国々が、中国との通貨スワップ協定を結ぶことは、米国にとっての地政学的な脅威となり得る。中国はこれらの協定を通じて、影響力を拡大し、アメリカの経済的・金融的な影響力に対抗しようとしていると見なされている。米国は、こうした協定が「人民元の国際化」や「ドルの支配力に対する挑戦」を意味すると捉えており、これが脅威と感じられる。
2.アルゼンチンの経済依存
アルゼンチンは経済的に困難な状況にあり、外貨準備を維持するために中国とのスワップ協定を延長している。米国から見れば、このような経済的依存がアルゼンチンを中国に対して「弱い立場」に置かせ、結果として中国の影響力が強まることを懸念する理由である。特に、アルゼンチンは経済危機を抱えながら、中国と締結した協定に依存していることが、米国側から見て「圧力を受けた取引」に見える可能性がある。
3.金融的影響とドルの支配力
アメリカは、世界経済におけるドルの支配力を重視しており、ドル以外の通貨、特に人民元が国際金融システムで重要な役割を果たすことに強い反発を示している。アルゼンチンが人民元とのスワップ協定を延長することは、ドルの影響力を弱めることに繋がりかねないため、米国の政権関係者がこの動きを「脅迫に等しい」と批判する背景にある。
4.中国の戦略的アプローチ
中国は、特に経済危機に瀕している国々に対して、通貨スワップ協定を提案することで経済的な影響力を強化しようとしている。アルゼンチンはその一例であり、米国としては、こうした経済的圧力を通じて中国が他国を従わせようとしていると考え、その戦略に反発を示している。
これらの要因から、アルゼンチンの通貨スワップ延長が米国にとって「脅迫に等しい」と受け止められているのだろう。
☞ アルゼンチンが中国との通貨スワップ協定を通じて人民元を保有し、必要な時にそれをドルと交換するという仕組みである。通貨スワップ協定とは、2国間で一定の通貨を交換する契約であり、アルゼンチンはこの協定を利用して人民元を取得し、経済的に困難な状況下で外貨準備を維持している。
具体的には、アルゼンチンは人民元を手に入れることで、外貨準備の不足を補うことができる。必要な際には、その人民元をドルに交換することで、ドル建ての支払い義務を果たすことができる。このようなスワップ協定により、アルゼンチンは米ドルへの依存度を減らし、人民元を代替的な通貨として利用することが可能となる。
この仕組みは、特に米国からの経済制裁や国際的な金融システムにおけるドルの支配に対抗する手段として有効である。アルゼンチンは、経済危機の中でドルの不足に悩まされており、中国とのスワップ協定はその問題を解決する一つの方法となっている。
そのため、アルゼンチンが元を保持し、必要な時にドルに交換できるこのシステムは、外貨準備の安定を図るための重要な手段として機能しているのである。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Trump warns of 'transition cost' as uncertainty over tariffs lingers FRANCE24 2025.04.11
https://www.france24.com/en/economy/20250410-live-china-s-84-retaliatory-tariffs-take-effect-after-trump-s-tariff-rollback?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250410&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D