トランプの政策:従来型の帝国主義の更新版 ― 2025年04月13日 13:10
【概要】
トランプが反帝国主義者であるという見方を否定し、「帝国の継続」としての彼の政策を取り上げている。以下はその主な内容である。
中東政策
・トランプ政権は、イランが中東での紛争を助長し、核計画を継続し、「テロリストの代理勢力」を支援しているとして、イラン産原油を購入する者に対して制裁を強化している。
・こうした言説は、オバマ政権やバイデン政権時代の表現と類似しており、対イラン政策において連続性があるとされる。
・トランプは、フーシ派をイランの代理と位置付け、紅海・アデン湾での攻撃に対し、イエメンの首都サヌアを空爆。これにより多数の死傷者が出たと報告されている。
・イエメンでの米軍の軍事行動は、2002年のブッシュ政権によるドローン攻撃に始まり、オバマ政権下(2009–2016年)で159回以上のドローン攻撃、トランプ政権初年(2017年)には127回の攻撃が行われた。
・トランプによる初期の軍事行動には、2017年の特殊部隊による襲撃があり、子供9人が死亡したと記されている。
・フーシ派の蜂起は、2004年に始まり、アメリカの介入がその一因であるとする見解が引用されている。
シリア政策
・トランプはシリアからの米軍撤退を表明したが、記事執筆時点では実現しておらず、かつての発言「石油を守るために駐留している」と矛盾していると指摘されている。
北極圏とカナダ
・北極圏にはアメリカを含むNATO諸国とロシアの領土が含まれており、米国はロシア・中国の影響拡大を警戒。
・アラスカのクリア宇宙軍基地では米・カナダの兵員がミサイル監視を行っている。
・カナダは「ファイブ・アイズ」加盟国であり、米国と共に世界的な情報収集に関与している。
・2023年、バイデン政権はカナダと宇宙協力覚書を締結。これにより米国の「宇宙での行動の自由」を推進。
・トランプはカナダを「第51番目の州」と呼び、関税を使って圧力をかけているとされる。
・同年、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンは防衛協力協定を米国と締結し、計36の軍事施設への米軍アクセスを提供。
・氷床の融解によって資源や航路の確保をめぐる競争が活発化しており、米国は「戦略的競争の場」として北極を重要視している。
グリーンランドとディエゴ・ガルシア
・トランプは第1期中にグリーンランド購入を提案し、現在は武力による確保も排除していない。
・グリーンランドには、米国のピトゥフィク宇宙基地があり、衛星通信の中継拠点となっている。
・米軍はインド洋のディエゴ・ガルシア島を使用しており、そこから中東・中央アジアへの爆撃やテロ容疑者の拘束が行われている。島は1960年代に英政府がチャゴス諸島民を追放して設立された軍事拠点である。
結論
・トランプ政権はベラルーシやハンガリーとの外交関係を再構築しつつあり、これを経済協力に繋げようとしている。
・トランプ系メディア企業は、ボルソナロ元大統領をめぐる訴訟でブラジルの司法に圧力をかけているとされる。
・トランプがガザの占領やイランへの空爆を示唆する一方、米軍は核兵器搭載可能なB-2爆撃機をチャゴス諸島の基地に配備していると報じられている。
【詳細】
ドナルド・トランプが「反帝国主義者」であるとする一部の主張に対し、その実態は帝国主義的政策の継続または強化であるとする実例を、多地域にわたって挙げている。特に中東、シリア、北極圏、そしてカナダとの関係を取り上げ、米国の軍事的・経済的影響力の維持と拡張が続いていることを論じている。
中東における政策
イランへの制裁
トランプ政権は、イランの石油を購入する者への制裁を強化した。その理由として「イランが中東の紛争を煽り、核計画を継続し、テロ代理勢力を支援している」としている。この表現は、オバマ政権時代の2010年やバイデン政権の発言とほぼ同様であり、政権が変わってもイランに対する基本的な認識と対応が継続されている。
イエメンのフーシ派攻撃
トランプ政権は、紅海やアデン湾でのフーシ派による船舶攻撃に対し、空爆によって報復。イエメンの首都サヌアを爆撃し、多数の死傷者が出たとされる。この記事では、これを「帝国的連続性」の一例と位置づけている。
米国は2002年にブッシュ政権下でドローンによるイエメン空爆を開始。オバマ政権下では少なくとも159回の空爆が行われた。2017年には、トランプ政権のもとで127回の空爆があったとされている。特に2017年の特殊部隊による作戦では、13歳未満の子ども9人が死亡したとされる。
フーシ派の反乱(2004年に開始)は、米国の軍事行動への反発も一因とされている。
シリアにおける占領と石油利権
トランプは米軍2,000人の撤退を表明しているが、実際には撤退が行われておらず、過去には「石油を確保するために米軍が駐留する」と明言していた。この記事では、米国がシリアを占領しているという認識のもと、「動機の正直さは評価できる」とも示されている。
北極圏における戦略的支配
北極圏の構成国とNATOの存在
北極圏には、アラスカ(米国)、カナダ、フィンランド、グリーンランド(デンマーク領)、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、ロシアが含まれる。その大半がNATO加盟国であり、米国の影響力が強い地域である。
アラスカとカナダ
アラスカには、ICBM監視を行う「クリア宇宙軍基地」があり、カナダ軍人も勤務している。カナダは「ファイブ・アイズ」と呼ばれる米国主導の国際監視ネットワークの一角である。2023年には宇宙協力に関する覚書を米加両国が締結し、米国の宇宙空間での「行動の自由」を支援する体制が強化された。
トランプは、関税政策を武器にしつつ、カナダを「51番目の州」と呼び、併合をほのめかす発言をしている。
北欧諸国およびグリーンランド
2023年には、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンが米国と個別の防衛協力協定を締結。合計36の新たな基地へのアクセスが米軍に認められた。同年、核搭載可能なB-2爆撃機がアイスランドのケフラヴィーク空軍基地に着陸した。
グリーンランドには、米国の「ピトゥフィク宇宙基地」が存在し、極軌道衛星との通信を1日10〜12回行っている。この基地は、米軍の「全領域支配(Full Spectrum Dominance)」戦略の一環として機能している。
北極の資源と戦略的価値
気候変動により氷床や永久凍土が融解し、石油・ガス・鉱物資源の探査や航路の利用が可能になっている。このため、米国は北極圏を「戦略的競争の場」と見なし、ロシアや中国による資源開発を阻止しようとしている。
ベラルーシ、ハンガリー、ブラジルとの関係
トランプ政権下で、米国は「ヨーロッパ最後の独裁国家」とされるベラルーシとの外交関係を再構築し、ハンガリーとも経済協力に向けた関係改善を進めている。また、トランプのメディア会社が、ブラジルの元大統領ジャイール・ボルソナロを擁護するような目的で、同国の判事を提訴している。
ディエゴ・ガルシアと「帝国の縮図」
米国はインド洋のディエゴ・ガルシア島に基地を持ち、中東・中央アジアへの空爆や、テロ容疑者の拘束・拷問などに用いている。1960年代、イギリスがこの島の住民(チャゴス人)を追放し、米軍基地の建設を可能にした。現在もチャゴス人たちは平和的に権利回復を求めて闘っている。
結論
トランプが「永遠の戦争」に反対しているという主張は、過去の事例から見て成立しない。むしろ、前政権からの帝国主義政策が継続されており、世界各地における軍事的・経済的支配の形を変えながら展開しているというのが、提示された事実の集積である。
【要点】
中東地域における政策
(1)イラン制裁の継続強化
・トランプ政権はイランの石油を購入する第三国に対しても制裁を実施。
・理由は「イランが中東の紛争を煽り、核開発を継続し、テロ代理勢力を支援している」とされた。
・この主張は、オバマ政権およびバイデン政権の見解とほぼ同様である。
(2)イエメン空爆の継続
・フーシ派が紅海やアデン湾で商船を攻撃したことを理由に、米軍は空爆で報復。
・イエメンの首都サヌアを爆撃し、民間人死傷者が出た。
・米国によるイエメン空爆は2002年に始まり、オバマ政権時代には159回、トランプ政権下では2017年だけで127回に達した。
・2017年の特殊部隊による地上作戦では子供9人を含む死者が出た。
・フーシ派の反乱の原因の一部は、米国の空爆にあるとされる。
シリアにおける軍事占領と資源支配
(1)軍撤退発言と実態の乖離
・トランプはシリアから米軍2,000人の撤退を発表したが、実際には撤退されなかった。
・石油利権のための駐留であることを明言し、「我々は石油を確保した」と語った。
・シリアにおける米軍の行動は、帝国的支配の継続例である。
北極圏における支配拡大
(1)北極圏のNATO化と米軍基地拡大
・北極圏8か国中7か国がNATOと米軍と連携。
・フィンランド、スウェーデン、ノルウェーは2023年に米国と軍事協定を締結し、合計36の基地へのアクセスを米軍に許可。
・アイスランドにはB-2戦略爆撃機が着陸。米軍の活動領域が北極全域に広がる。
(2)アラスカとカナダの連携強化
・アラスカの宇宙軍基地にはICBM探知機能があり、カナダ軍人も勤務。
・カナダはファイブ・アイズの一員として、情報共有・宇宙軍事連携を実施。
・2023年に宇宙協力覚書を締結し、米国の宇宙での自由な行動を支援。
・トランプはカナダを「51番目の州」と揶揄し、併合を暗示する発言も行った。
(3)グリーンランドの戦略的重要性
・米国はグリーンランドにあるピトゥフィク宇宙基地を使用。
・この基地は極軌道衛星との通信を担い、グローバルな軍事支配戦略(全領域支配)に貢献。
・トランプはグリーンランド買収を持ちかけた経緯がある。
(4)気候変動と資源競争
・氷床・永久凍土の融解により、北極の資源開発と新航路の利用が可能に。
・米国はこの地域を「戦略的競争の場」と定義し、ロシア・中国の進出阻止を狙う。
その他の国々との関係
・ベラルーシとの関係修復
米国は長年制裁対象であったベラルーシとの外交関係を再構築。
・ハンガリーとの接近
ハンガリーと経済的・軍事的な関係を強化。
・ブラジルへの影響力行使
トランプのメディア会社がブラジルの裁判官を提訴し、ジャイール・ボルソナロ擁護を試みた。
ディエゴ・ガルシア:帝国の縮図
・戦略的軍事基地の歴史と役割
⇨ ディエゴ・ガルシア島は英国がチャゴス人を追放して建設した米軍基地である。
⇨ 中東・中央アジアへの空爆、囚人の移送・拘束・拷問に使用された。
⇨ 現地住民は今なお平和的に権利回復を求めて活動中。
結論
・トランプは「永遠の戦争」を終わらせると主張したが、実際には軍事的・経済的影響力の拡大を継続。
・その政策は、単なる「反グローバリズム」や「孤立主義」ではなく、むしろ従来型の帝国主義の更新版であると解釈され得る。
・米国の支配戦略は、表現や手段を変えながらも世界規模で展開されている。
【引用・参照・底本】
Trump’s Anti-Imperial Imperialism COUNTERPUNCH 2025.04.06
https://www.counterpunch.org/2025/04/06/trumps-anti-imperial-imperialism/
トランプが反帝国主義者であるという見方を否定し、「帝国の継続」としての彼の政策を取り上げている。以下はその主な内容である。
中東政策
・トランプ政権は、イランが中東での紛争を助長し、核計画を継続し、「テロリストの代理勢力」を支援しているとして、イラン産原油を購入する者に対して制裁を強化している。
・こうした言説は、オバマ政権やバイデン政権時代の表現と類似しており、対イラン政策において連続性があるとされる。
・トランプは、フーシ派をイランの代理と位置付け、紅海・アデン湾での攻撃に対し、イエメンの首都サヌアを空爆。これにより多数の死傷者が出たと報告されている。
・イエメンでの米軍の軍事行動は、2002年のブッシュ政権によるドローン攻撃に始まり、オバマ政権下(2009–2016年)で159回以上のドローン攻撃、トランプ政権初年(2017年)には127回の攻撃が行われた。
・トランプによる初期の軍事行動には、2017年の特殊部隊による襲撃があり、子供9人が死亡したと記されている。
・フーシ派の蜂起は、2004年に始まり、アメリカの介入がその一因であるとする見解が引用されている。
シリア政策
・トランプはシリアからの米軍撤退を表明したが、記事執筆時点では実現しておらず、かつての発言「石油を守るために駐留している」と矛盾していると指摘されている。
北極圏とカナダ
・北極圏にはアメリカを含むNATO諸国とロシアの領土が含まれており、米国はロシア・中国の影響拡大を警戒。
・アラスカのクリア宇宙軍基地では米・カナダの兵員がミサイル監視を行っている。
・カナダは「ファイブ・アイズ」加盟国であり、米国と共に世界的な情報収集に関与している。
・2023年、バイデン政権はカナダと宇宙協力覚書を締結。これにより米国の「宇宙での行動の自由」を推進。
・トランプはカナダを「第51番目の州」と呼び、関税を使って圧力をかけているとされる。
・同年、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンは防衛協力協定を米国と締結し、計36の軍事施設への米軍アクセスを提供。
・氷床の融解によって資源や航路の確保をめぐる競争が活発化しており、米国は「戦略的競争の場」として北極を重要視している。
グリーンランドとディエゴ・ガルシア
・トランプは第1期中にグリーンランド購入を提案し、現在は武力による確保も排除していない。
・グリーンランドには、米国のピトゥフィク宇宙基地があり、衛星通信の中継拠点となっている。
・米軍はインド洋のディエゴ・ガルシア島を使用しており、そこから中東・中央アジアへの爆撃やテロ容疑者の拘束が行われている。島は1960年代に英政府がチャゴス諸島民を追放して設立された軍事拠点である。
結論
・トランプ政権はベラルーシやハンガリーとの外交関係を再構築しつつあり、これを経済協力に繋げようとしている。
・トランプ系メディア企業は、ボルソナロ元大統領をめぐる訴訟でブラジルの司法に圧力をかけているとされる。
・トランプがガザの占領やイランへの空爆を示唆する一方、米軍は核兵器搭載可能なB-2爆撃機をチャゴス諸島の基地に配備していると報じられている。
【詳細】
ドナルド・トランプが「反帝国主義者」であるとする一部の主張に対し、その実態は帝国主義的政策の継続または強化であるとする実例を、多地域にわたって挙げている。特に中東、シリア、北極圏、そしてカナダとの関係を取り上げ、米国の軍事的・経済的影響力の維持と拡張が続いていることを論じている。
中東における政策
イランへの制裁
トランプ政権は、イランの石油を購入する者への制裁を強化した。その理由として「イランが中東の紛争を煽り、核計画を継続し、テロ代理勢力を支援している」としている。この表現は、オバマ政権時代の2010年やバイデン政権の発言とほぼ同様であり、政権が変わってもイランに対する基本的な認識と対応が継続されている。
イエメンのフーシ派攻撃
トランプ政権は、紅海やアデン湾でのフーシ派による船舶攻撃に対し、空爆によって報復。イエメンの首都サヌアを爆撃し、多数の死傷者が出たとされる。この記事では、これを「帝国的連続性」の一例と位置づけている。
米国は2002年にブッシュ政権下でドローンによるイエメン空爆を開始。オバマ政権下では少なくとも159回の空爆が行われた。2017年には、トランプ政権のもとで127回の空爆があったとされている。特に2017年の特殊部隊による作戦では、13歳未満の子ども9人が死亡したとされる。
フーシ派の反乱(2004年に開始)は、米国の軍事行動への反発も一因とされている。
シリアにおける占領と石油利権
トランプは米軍2,000人の撤退を表明しているが、実際には撤退が行われておらず、過去には「石油を確保するために米軍が駐留する」と明言していた。この記事では、米国がシリアを占領しているという認識のもと、「動機の正直さは評価できる」とも示されている。
北極圏における戦略的支配
北極圏の構成国とNATOの存在
北極圏には、アラスカ(米国)、カナダ、フィンランド、グリーンランド(デンマーク領)、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、ロシアが含まれる。その大半がNATO加盟国であり、米国の影響力が強い地域である。
アラスカとカナダ
アラスカには、ICBM監視を行う「クリア宇宙軍基地」があり、カナダ軍人も勤務している。カナダは「ファイブ・アイズ」と呼ばれる米国主導の国際監視ネットワークの一角である。2023年には宇宙協力に関する覚書を米加両国が締結し、米国の宇宙空間での「行動の自由」を支援する体制が強化された。
トランプは、関税政策を武器にしつつ、カナダを「51番目の州」と呼び、併合をほのめかす発言をしている。
北欧諸国およびグリーンランド
2023年には、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンが米国と個別の防衛協力協定を締結。合計36の新たな基地へのアクセスが米軍に認められた。同年、核搭載可能なB-2爆撃機がアイスランドのケフラヴィーク空軍基地に着陸した。
グリーンランドには、米国の「ピトゥフィク宇宙基地」が存在し、極軌道衛星との通信を1日10〜12回行っている。この基地は、米軍の「全領域支配(Full Spectrum Dominance)」戦略の一環として機能している。
北極の資源と戦略的価値
気候変動により氷床や永久凍土が融解し、石油・ガス・鉱物資源の探査や航路の利用が可能になっている。このため、米国は北極圏を「戦略的競争の場」と見なし、ロシアや中国による資源開発を阻止しようとしている。
ベラルーシ、ハンガリー、ブラジルとの関係
トランプ政権下で、米国は「ヨーロッパ最後の独裁国家」とされるベラルーシとの外交関係を再構築し、ハンガリーとも経済協力に向けた関係改善を進めている。また、トランプのメディア会社が、ブラジルの元大統領ジャイール・ボルソナロを擁護するような目的で、同国の判事を提訴している。
ディエゴ・ガルシアと「帝国の縮図」
米国はインド洋のディエゴ・ガルシア島に基地を持ち、中東・中央アジアへの空爆や、テロ容疑者の拘束・拷問などに用いている。1960年代、イギリスがこの島の住民(チャゴス人)を追放し、米軍基地の建設を可能にした。現在もチャゴス人たちは平和的に権利回復を求めて闘っている。
結論
トランプが「永遠の戦争」に反対しているという主張は、過去の事例から見て成立しない。むしろ、前政権からの帝国主義政策が継続されており、世界各地における軍事的・経済的支配の形を変えながら展開しているというのが、提示された事実の集積である。
【要点】
中東地域における政策
(1)イラン制裁の継続強化
・トランプ政権はイランの石油を購入する第三国に対しても制裁を実施。
・理由は「イランが中東の紛争を煽り、核開発を継続し、テロ代理勢力を支援している」とされた。
・この主張は、オバマ政権およびバイデン政権の見解とほぼ同様である。
(2)イエメン空爆の継続
・フーシ派が紅海やアデン湾で商船を攻撃したことを理由に、米軍は空爆で報復。
・イエメンの首都サヌアを爆撃し、民間人死傷者が出た。
・米国によるイエメン空爆は2002年に始まり、オバマ政権時代には159回、トランプ政権下では2017年だけで127回に達した。
・2017年の特殊部隊による地上作戦では子供9人を含む死者が出た。
・フーシ派の反乱の原因の一部は、米国の空爆にあるとされる。
シリアにおける軍事占領と資源支配
(1)軍撤退発言と実態の乖離
・トランプはシリアから米軍2,000人の撤退を発表したが、実際には撤退されなかった。
・石油利権のための駐留であることを明言し、「我々は石油を確保した」と語った。
・シリアにおける米軍の行動は、帝国的支配の継続例である。
北極圏における支配拡大
(1)北極圏のNATO化と米軍基地拡大
・北極圏8か国中7か国がNATOと米軍と連携。
・フィンランド、スウェーデン、ノルウェーは2023年に米国と軍事協定を締結し、合計36の基地へのアクセスを米軍に許可。
・アイスランドにはB-2戦略爆撃機が着陸。米軍の活動領域が北極全域に広がる。
(2)アラスカとカナダの連携強化
・アラスカの宇宙軍基地にはICBM探知機能があり、カナダ軍人も勤務。
・カナダはファイブ・アイズの一員として、情報共有・宇宙軍事連携を実施。
・2023年に宇宙協力覚書を締結し、米国の宇宙での自由な行動を支援。
・トランプはカナダを「51番目の州」と揶揄し、併合を暗示する発言も行った。
(3)グリーンランドの戦略的重要性
・米国はグリーンランドにあるピトゥフィク宇宙基地を使用。
・この基地は極軌道衛星との通信を担い、グローバルな軍事支配戦略(全領域支配)に貢献。
・トランプはグリーンランド買収を持ちかけた経緯がある。
(4)気候変動と資源競争
・氷床・永久凍土の融解により、北極の資源開発と新航路の利用が可能に。
・米国はこの地域を「戦略的競争の場」と定義し、ロシア・中国の進出阻止を狙う。
その他の国々との関係
・ベラルーシとの関係修復
米国は長年制裁対象であったベラルーシとの外交関係を再構築。
・ハンガリーとの接近
ハンガリーと経済的・軍事的な関係を強化。
・ブラジルへの影響力行使
トランプのメディア会社がブラジルの裁判官を提訴し、ジャイール・ボルソナロ擁護を試みた。
ディエゴ・ガルシア:帝国の縮図
・戦略的軍事基地の歴史と役割
⇨ ディエゴ・ガルシア島は英国がチャゴス人を追放して建設した米軍基地である。
⇨ 中東・中央アジアへの空爆、囚人の移送・拘束・拷問に使用された。
⇨ 現地住民は今なお平和的に権利回復を求めて活動中。
結論
・トランプは「永遠の戦争」を終わらせると主張したが、実際には軍事的・経済的影響力の拡大を継続。
・その政策は、単なる「反グローバリズム」や「孤立主義」ではなく、むしろ従来型の帝国主義の更新版であると解釈され得る。
・米国の支配戦略は、表現や手段を変えながらも世界規模で展開されている。
【引用・参照・底本】
Trump’s Anti-Imperial Imperialism COUNTERPUNCH 2025.04.06
https://www.counterpunch.org/2025/04/06/trumps-anti-imperial-imperialism/