研究内容を事実上政治的・イデオロギー的理由で排除 ― 2025年04月13日 11:45
【概要】
トランプ政権下で米国国立衛生研究所(NIH)が突然多くの暴力予防関連研究への資金提供を打ち切ったことに焦点を当てている。特に、LGBTQ+や有色人種の若者など、社会的に周縁化されたコミュニティを対象とする研究が多数停止された。これは、トランプ大統領が推進する多様性・公平性・包括性(DEI)プログラムの排除方針と連動している。
主張と視点
・命に関わる研究が犠牲になっている:研究者たちは、研究の中断によりレイプ、暴力、自殺が増えると警告しており、特に若者、特にLGBTQ+層が深刻な影響を受けるとする。
・科学的根拠の軽視:研究打ち切りの通知には、科学的に不正確な記述があり、これが研究者やその協力コミュニティとの信頼関係を壊している。
・資金削減は「節約」にならない:暴力の予防は長期的には医療費や刑事司法コストを削減するため、研究停止はむしろ税金の無駄であるとされる。
・政治的・イデオロギー的な干渉:研究の中止は、科学的判断ではなく、政治的・文化戦争的な価値観によって行われており、「気に入らないテーマ」を排除する行動とみなされている。
注目点
・研究の性質:多くは実験室内で完結するものではなく、実際の地域社会や当事者とのフィールドワークに基づく臨床的研究であるため、その中断は当該コミュニティに直接的な実害をもたらす。
・訴訟の動き:ACLU(アメリカ自由人権協会)などがNIHに対して訴訟を提起し始めており、今後法廷闘争に発展する可能性が高い。
・研究者の反応:資金や職員が失われても「声」は失われないとして、研究者たちは抵抗を続ける姿勢を示している。
考察
この事態は、公共政策と科学研究の交差点における政治的介入の典型例である。トランプ政権が掲げる保守的イデオロギーに反する研究が「無効化」されることで、弱い立場にある人々への社会的支援が制度的に断たれることになる。さらに、科学研究の自由と透明性という根本的な原則にも挑戦する動きであり、米国の学術環境に深刻な影響を与えている。
【詳細】
ドナルド・トランプ政権が再び始動した2025年、国家衛生研究所(NIH)による研究助成金の一方的な打ち切りが、特に暴力予防やマイノリティ支援を目的とする公衆衛生研究に深刻な影響を与えている実態を報じたものである。以下に、内容を項目ごとに詳しく説明する。
(1)何が起こったのか
・トランプ政権下のNIHは、すでに進行中だった数百件の研究プロジェクトの助成金を突然打ち切った。
・対象は、LGBTQ+、アジア系アメリカ人、黒人やヒスパニック系の若者、性的暴力の被害者など脆弱なコミュニティに焦点を当てた研究。
・NIH側は打ち切り理由として「もはや機関の優先事項に合致しない」という曖昧な説明をしている。
(2)影響を受けた研究内容の例
・アジア系アメリカ人家庭における銃暴力の予防研究(Tsu-Yin Wu)
⇨ アジア系の銃保有率増加に伴うリスクの科学的調査。
⇨ 自殺、家庭内暴力、事故などへの影響を明らかにし、予防策を開発しようとしていた。
・LGBTQ+若者への支援プログラム(Katie Edwards, Heather Littleton, Jessamyn Moxie)
⇨ デートDV、薬物乱用、自殺を予防するためのピア・メンタリングや介入モデルの開発。
⇨ 研究途中での打ち切りは、臨床的にも倫理的にも深刻な問題とされている。
(3)打ち切りの政治的背景
・トランプ政権はDEI(多様性・公平性・包摂)関連の政策や予算に強く反対している。
・NIHの打ち切り通知には「ジェンダー・アイデンティティに基づく研究は科学的でない」「生物学的現実を無視している」などの政治的・イデオロギー的文言が含まれている。
・実際の研究内容と無関係な決めつけも含まれており、研究者側は異議申し立てを行っているが、その手続きも不透明。
(4)研究者とコミュニティへの影響
・研究者の職員解雇やキャリアの危機に直面。
・コミュニティとの信頼関係や実施中の臨床試験への深刻な影響。
・特にLGBTQ+や有色人種の若者など、元々制度的に支援の乏しい層にとって、今回の研究は重要なセーフティネットだった。
(5)批判と法的対応
・研究者、大学、医療機関はこれを「政治的な粛清」と非難。
・4月4日には全米16州の司法長官がNIHを提訴。
・アメリカ自由人権協会(ACLU)も集団訴訟を起こし、表現・学問の自由の侵害として争っている。
(6)研究者の声と決意
・「最も脆弱な若者たちが命を落とす可能性がある」(Katie Edwards)
・「研究を止めても、声を奪うことはできない。これは正義ではない」(Edwards)
・「信頼を損ない、将来の研究協力を拒否する人が増える」(Littleton)
(7)全体としての意味
この一連の助成金打ち切りは、単に研究の中断にとどまらず、アメリカ社会の科学的・倫理的基盤の揺らぎを示している。特定の人種・ジェンダー・性的指向に基づく研究を「無駄」あるいは「非科学的」と断じる政権の姿勢は、公衆衛生の公平性と学問の自由に対する重大な脅威といえる。
【要点】
1. 助成金の打ち切り内容
・トランプ政権下のNIHが、進行中の複数の研究に対する助成金を突然打ち切り。
・対象は、LGBTQ+、アジア系、黒人、ヒスパニック系の若者や、性的暴力の被害者などを支援する研究。
・NIHの説明は「機関の優先事項に合致しない」という抽象的理由。
2. 打ち切られた研究の具体例
・アジア系家庭の銃暴力予防研究(Tsu-Yin Wu)
➡️アジア系社会における銃による自殺・事故・家庭内暴力リスクの分析。
・LGBTQ+若者への支援介入研究(Edwards, Littleton, Moxie)
➡️精神健康支援やデートDVの予防を目的とした介入プログラムの開発。
・➡️先住民の若者向け研究(Lisa Wexler)
自殺予防の実践研究。過去に高い効果を挙げていた。
3. 打ち切りの政治的背景
・トランプ政権は、DEI(多様性・公平性・包摂)政策に反対。
・NIHは研究に対して「ジェンダー・アイデンティティに基づく調査は非科学的」との見解を示す。
・研究内容を事実上政治的・イデオロギー的理由で排除。
4. 研究現場への影響
・助成金の中断により、研究者やスタッフが解雇や再配置の危機に。
・研究対象コミュニティとの信頼関係が損なわれる。
・実施中の介入や臨床試験が中断・放棄される恐れ。
5. 批判と法的対応
・大学や研究者から「政治的検閲」「科学への介入」との非難が噴出。
・2025年4月、全米16州の司法長官がNIHを提訴。
・ACLUが原告団と共に憲法上の表現・学問の自由侵害として集団訴訟を提起。
6. 研究者のコメント
・「脆弱な若者が命を落とす可能性がある」(Katie Edwards)
・「研究を止めても、声は奪えない」(Edwards)
・「信頼を失い、将来の研究協力にも影響」(Littleton)
7. 社会的意味合い
・政治的介入による助成金停止は、科学的中立性の破壊。
・研究と公衆衛生政策の分離が困難になり、社会的弱者への支援が後退。
・米国内での学問の自由の後退と差別的政策の正当化につながる恐れ。
【引用・参照・底本】
“Youth Are Going to Die Because of This”: Trump Defunds Violence Prevention truthout 2025.04.12
https://truthout.org/articles/youth-are-going-to-die-because-of-this-trump-defunds-violence-prevention/?utm_source=Truthout&utm_campaign=4d7d2e2492-EMAIL_CAMPAIGN_2025_04_12_05_07&utm_medium=email&utm_term=0_bbb541a1db-4d7d2e2492-653696056
トランプ政権下で米国国立衛生研究所(NIH)が突然多くの暴力予防関連研究への資金提供を打ち切ったことに焦点を当てている。特に、LGBTQ+や有色人種の若者など、社会的に周縁化されたコミュニティを対象とする研究が多数停止された。これは、トランプ大統領が推進する多様性・公平性・包括性(DEI)プログラムの排除方針と連動している。
主張と視点
・命に関わる研究が犠牲になっている:研究者たちは、研究の中断によりレイプ、暴力、自殺が増えると警告しており、特に若者、特にLGBTQ+層が深刻な影響を受けるとする。
・科学的根拠の軽視:研究打ち切りの通知には、科学的に不正確な記述があり、これが研究者やその協力コミュニティとの信頼関係を壊している。
・資金削減は「節約」にならない:暴力の予防は長期的には医療費や刑事司法コストを削減するため、研究停止はむしろ税金の無駄であるとされる。
・政治的・イデオロギー的な干渉:研究の中止は、科学的判断ではなく、政治的・文化戦争的な価値観によって行われており、「気に入らないテーマ」を排除する行動とみなされている。
注目点
・研究の性質:多くは実験室内で完結するものではなく、実際の地域社会や当事者とのフィールドワークに基づく臨床的研究であるため、その中断は当該コミュニティに直接的な実害をもたらす。
・訴訟の動き:ACLU(アメリカ自由人権協会)などがNIHに対して訴訟を提起し始めており、今後法廷闘争に発展する可能性が高い。
・研究者の反応:資金や職員が失われても「声」は失われないとして、研究者たちは抵抗を続ける姿勢を示している。
考察
この事態は、公共政策と科学研究の交差点における政治的介入の典型例である。トランプ政権が掲げる保守的イデオロギーに反する研究が「無効化」されることで、弱い立場にある人々への社会的支援が制度的に断たれることになる。さらに、科学研究の自由と透明性という根本的な原則にも挑戦する動きであり、米国の学術環境に深刻な影響を与えている。
【詳細】
ドナルド・トランプ政権が再び始動した2025年、国家衛生研究所(NIH)による研究助成金の一方的な打ち切りが、特に暴力予防やマイノリティ支援を目的とする公衆衛生研究に深刻な影響を与えている実態を報じたものである。以下に、内容を項目ごとに詳しく説明する。
(1)何が起こったのか
・トランプ政権下のNIHは、すでに進行中だった数百件の研究プロジェクトの助成金を突然打ち切った。
・対象は、LGBTQ+、アジア系アメリカ人、黒人やヒスパニック系の若者、性的暴力の被害者など脆弱なコミュニティに焦点を当てた研究。
・NIH側は打ち切り理由として「もはや機関の優先事項に合致しない」という曖昧な説明をしている。
(2)影響を受けた研究内容の例
・アジア系アメリカ人家庭における銃暴力の予防研究(Tsu-Yin Wu)
⇨ アジア系の銃保有率増加に伴うリスクの科学的調査。
⇨ 自殺、家庭内暴力、事故などへの影響を明らかにし、予防策を開発しようとしていた。
・LGBTQ+若者への支援プログラム(Katie Edwards, Heather Littleton, Jessamyn Moxie)
⇨ デートDV、薬物乱用、自殺を予防するためのピア・メンタリングや介入モデルの開発。
⇨ 研究途中での打ち切りは、臨床的にも倫理的にも深刻な問題とされている。
(3)打ち切りの政治的背景
・トランプ政権はDEI(多様性・公平性・包摂)関連の政策や予算に強く反対している。
・NIHの打ち切り通知には「ジェンダー・アイデンティティに基づく研究は科学的でない」「生物学的現実を無視している」などの政治的・イデオロギー的文言が含まれている。
・実際の研究内容と無関係な決めつけも含まれており、研究者側は異議申し立てを行っているが、その手続きも不透明。
(4)研究者とコミュニティへの影響
・研究者の職員解雇やキャリアの危機に直面。
・コミュニティとの信頼関係や実施中の臨床試験への深刻な影響。
・特にLGBTQ+や有色人種の若者など、元々制度的に支援の乏しい層にとって、今回の研究は重要なセーフティネットだった。
(5)批判と法的対応
・研究者、大学、医療機関はこれを「政治的な粛清」と非難。
・4月4日には全米16州の司法長官がNIHを提訴。
・アメリカ自由人権協会(ACLU)も集団訴訟を起こし、表現・学問の自由の侵害として争っている。
(6)研究者の声と決意
・「最も脆弱な若者たちが命を落とす可能性がある」(Katie Edwards)
・「研究を止めても、声を奪うことはできない。これは正義ではない」(Edwards)
・「信頼を損ない、将来の研究協力を拒否する人が増える」(Littleton)
(7)全体としての意味
この一連の助成金打ち切りは、単に研究の中断にとどまらず、アメリカ社会の科学的・倫理的基盤の揺らぎを示している。特定の人種・ジェンダー・性的指向に基づく研究を「無駄」あるいは「非科学的」と断じる政権の姿勢は、公衆衛生の公平性と学問の自由に対する重大な脅威といえる。
【要点】
1. 助成金の打ち切り内容
・トランプ政権下のNIHが、進行中の複数の研究に対する助成金を突然打ち切り。
・対象は、LGBTQ+、アジア系、黒人、ヒスパニック系の若者や、性的暴力の被害者などを支援する研究。
・NIHの説明は「機関の優先事項に合致しない」という抽象的理由。
2. 打ち切られた研究の具体例
・アジア系家庭の銃暴力予防研究(Tsu-Yin Wu)
➡️アジア系社会における銃による自殺・事故・家庭内暴力リスクの分析。
・LGBTQ+若者への支援介入研究(Edwards, Littleton, Moxie)
➡️精神健康支援やデートDVの予防を目的とした介入プログラムの開発。
・➡️先住民の若者向け研究(Lisa Wexler)
自殺予防の実践研究。過去に高い効果を挙げていた。
3. 打ち切りの政治的背景
・トランプ政権は、DEI(多様性・公平性・包摂)政策に反対。
・NIHは研究に対して「ジェンダー・アイデンティティに基づく調査は非科学的」との見解を示す。
・研究内容を事実上政治的・イデオロギー的理由で排除。
4. 研究現場への影響
・助成金の中断により、研究者やスタッフが解雇や再配置の危機に。
・研究対象コミュニティとの信頼関係が損なわれる。
・実施中の介入や臨床試験が中断・放棄される恐れ。
5. 批判と法的対応
・大学や研究者から「政治的検閲」「科学への介入」との非難が噴出。
・2025年4月、全米16州の司法長官がNIHを提訴。
・ACLUが原告団と共に憲法上の表現・学問の自由侵害として集団訴訟を提起。
6. 研究者のコメント
・「脆弱な若者が命を落とす可能性がある」(Katie Edwards)
・「研究を止めても、声は奪えない」(Edwards)
・「信頼を失い、将来の研究協力にも影響」(Littleton)
7. 社会的意味合い
・政治的介入による助成金停止は、科学的中立性の破壊。
・研究と公衆衛生政策の分離が困難になり、社会的弱者への支援が後退。
・米国内での学問の自由の後退と差別的政策の正当化につながる恐れ。
【引用・参照・底本】
“Youth Are Going to Die Because of This”: Trump Defunds Violence Prevention truthout 2025.04.12
https://truthout.org/articles/youth-are-going-to-die-because-of-this-trump-defunds-violence-prevention/?utm_source=Truthout&utm_campaign=4d7d2e2492-EMAIL_CAMPAIGN_2025_04_12_05_07&utm_medium=email&utm_term=0_bbb541a1db-4d7d2e2492-653696056