米国が安全な資金避難先としての地位を失いつつある ― 2025年04月13日 11:58
【概要】
2025年4月12日、FRANCE 24は、米国債市場における異常な動きについて報じた。通常、経済の不安定期には安全資産とされる米国債が買われる傾向にあるが、今回は逆に売却が進んでおり、専門家らは懸念を示している。
米国債とは、米国政府が財政赤字を補うために発行する債券であり、通常は安定した投資先とされる。しかし、最近では利回りが上昇しているにもかかわらず、買い手が集まっていない。この現象について、米国が安全な資金避難先としての地位を失いつつあるのではないかという見方が一部で浮上している。
ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのファンドマネージャー、ジョージ・チポローニ氏は、米国債市場の安定性が揺らいでいることに言及し、懸念を示した。また、この動きは、消費者ローンや住宅ローンの金利上昇、企業の資金調達コスト増加にも波及し得るとされている。
10年物米国債の利回りは、前週の4.01%から一時4.58%まで上昇し、現在は4.50%前後となっている。通常、株価下落時に米国債が買われて利回りが下がるという市場の基本原理(Econ 101)が通用しない状況に、投資家らは困惑している。
この背景には、トランプ大統領の通商政策や予測困難な発言が投資家の信頼を揺るがせているという見方もある。トランプ氏は、今週の関税一時停止の決定が投資家の反応を受けてのものであることを示唆した。一方で、エバーコアISIのアナリストらは、信頼の回復には一時的な関税撤回だけでは不十分である可能性を指摘している。
米財務長官スコット・ベセント氏は、今回の利回り上昇を、過剰な借り入れを行っていた投資家の「正常なデレバレッジ」と位置付け、数年ごとに起きる事象であると述べた。
過去には、2009年の金融危機などでも米国が問題の発信地であったにもかかわらず、米国債は「流動性」「安定性」「売買の容易さ」から資金避難先として選ばれてきた。今回、そのような傾向が見られない点が注目されている。
他の要因としては、中国が保有米国債を売却している可能性、あるいは一部ヘッジファンドの戦略(ベーシストレード)の失敗による売却などが挙げられているが、確定的な説明はなされていない。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのチーフ・ストラテジスト、マイク・アローン氏は、米国の国際的信頼性の低下も一因と指摘している。
とはいえ、ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのブライアン・レーリング氏は、今後の動向は不確定であり、売りが早期に収束する可能性にも言及した。また、米国債に代わる流動性の高い債券が現時点では存在しないと述べた。
【詳細】
1. 概要:米国債の売却とその影響
2025年4月中旬、投資家が米国債(Treasury bonds)を大量に売却しており、これは通常安全資産と見なされてきた米国への信頼が揺らいでいる可能性を示唆する現象とされている。これにより、米国市場、ひいては経済全体への影響が懸念されている。
2. 米国債の役割と異変の意味
米国債とは、米国政府が発行する借用証書のことであり、国の支出が税収を上回る際の資金調達手段である。通常、世界的な経済不安があるときには、投資家は米国債に資金を避難させる(買いに走る)傾向にあるが、今回はその逆で、金利(利回り)が上昇しているにもかかわらず投資家が米国債を売却している点が注目されている。
3. 金利上昇と市場の動揺
10年物米国債の利回り(市場でのリスクの指標ともなる)が一時4.58%まで上昇した。これは1週間前の4.01%からの急上昇であり、通常は100分の数ポイント(ベーシス・ポイント)単位で動く債券市場としては異例の変動である。
このような利回りの上昇は、債券価格の下落を意味し、住宅ローンや自動車ローンなど、一般消費者の借入コストの上昇にもつながる。
4. 投資家の不安と背景にある要素
複数の市場関係者が、今回の売却は米国の信頼性や安定性に対する不安の表れであると指摘している。背景には以下のような要素があるとされる:
消費者のインフレ期待の悪化
最新の調査によると、米国消費者の間でインフレが今後加速するとの見方が広がっており、これが金利上昇(=債券売り)の一因となっている。
トランプ政権の政策不安
関税政策の変動や、予測不可能な外交・経済対応が、市場の信頼を損ねている可能性があるとされている。トランプ大統領は4月上旬に関税措置を90日間一時停止したが、これは市場安定化を狙ったものであったと報じられている。
米国が「安全資産」としての地位を失いつつあるとの懸念
Penn Mutual Asset Managementのファンドマネージャーであるジョージ・チポローニ氏は、「米国が安全な避難先としての地位を失いつつある」と指摘している。
5. 専門家による見解
いくつかの専門家は、債券市場の急変について明確な原因を断定するのは困難としている。債券市場は本来、株式市場と逆に動く(株が下がると債券は買われる)性質があるが、今回はそれが機能していない。
また、英国の元首相リズ・トラスの退陣(2022年)も、債券市場の反応がきっかけであったことに触れ、債券市場の影響力の大きさが再認識されている。
6. 他の可能性として挙げられる要因
中国による米国債売却説
一部では、中国が米国との対立に対応して米国債を売却している可能性があるとの観測もあるが、実際にはそれが人民元高や輸出競争力の低下を招くため、経済的合理性には乏しいとされている。
ヘッジファンドの“ベーシストレード”失敗
一部のヘッジファンドが、米国債を使ったレバレッジ取引(ベーシストレード)に失敗し、強制的に資産を売却している可能性がある。これにより、債券が大量に市場に流れ、利回り上昇につながったと指摘されている。
7. 政府の対応と発言
財務長官スコット・ベッセントの説明
財務長官は今回の債券売却を「数年に一度起こる正常なレバレッジ解消(deleveraging)」であり、過度に心配する必要はないと述べた。
トランプ大統領の発言
トランプ大統領は、債券市場の一時的な不安は自らの対応で解決したとし、「私はこの手のことに非常に長けている」と自信を示した。また、今回の関税措置の一時停止は、投資家の不安に対応するための判断であったことを認めている。
8. 今後の見通しと不確実性
Wells Fargoのブライアン・レーリング氏は、「今はまだ売却が一時的なものか、根本的な信頼の失墜なのか判断がつかない」としており、債券市場の反応が一時的である可能性も示唆している。
また、「米国債以外に同等の流動性と安全性を持つ債券は存在しない」とも述べており、長期的には再び米国債への信頼が回復する余地があることを示唆している。
【要点】
米国債売却の現象と背景
・米国債が2025年4月に大量に売却され、利回り(10年債で一時4.58%)が急上昇した。
・通常、安全資産とされる米国債が売られるのは異例であり、市場に不安を与えた。
・債券価格の下落は、住宅ローンやその他の借入金利の上昇に波及する。
投資家の不安の主な原因
・インフレ懸念の再燃
消費者のインフレ期待が高まり、金利上昇への圧力が強まっている。
・トランプ前大統領の政策リスク
関税の突然の見直しなど、予測不能な経済政策が不信感を誘発している。
・「安全な避難先」としての米国への信頼低下
一部の投資家は、米国がかつてほど安全な投資先でないと見ている。
市場関係者・専門家の見解
・原因の特定が難しい
通常のパターン(株下落で債券が買われる)が崩れており、明確な説明が困難。
・市場の過剰反応の可能性
一時的な売り圧力であり、長期的なトレンドとは限らないとの見方もある。
・債券市場の影響力の大きさ
過去に英首相が退陣に追い込まれた例もあり、無視できない動きである。
代替的な説明・仮説
・中国による売却説
地政学的緊張により中国が米国債を売却した可能性があるが、輸出面で不利なため合理性は薄い。
・ヘッジファンドの損失拡大
“ベーシストレード”というレバレッジ取引が破綻し、大量売却を引き起こした可能性がある。
政府の対応と発言
・財務長官ベッセントの説明
「数年に一度のレバレッジ解消であり、深刻視する必要はない」と発言。
・トランプ氏の自己評価
「この種の不安定性は自分の対応で解決した」「私はこの分野に強い」と主張。
今後の展望と不確実性
・市場の反応が一時的かどうか不明
信頼低下か、一過性の現象かはまだ判断できない。
・米国債の代替資産が存在しない
安全性と流動性の両面で米国債に代わる資産はないとの意見も。
【参考】
☞ ベーシストレード
「ベーシストレード(basis trade)」とは、債券市場でよく使われる裁定取引(アービトラージ)の一種であり、現物の国債と先物の価格差(ベーシス)を利用して利益を狙う手法である。
1.ベーシストレードの基本的な仕組み
・「ベーシス」=国債先物価格 − 現物国債価格(調整済)
先物と現物の価格に差があるとき、その差を収益機会と見なす。
・戦略内容
(1)利回りの高い現物の国債を買う
(2)同じ満期の先物を空売りする
・価格差が解消される(例:先物が下落・現物が上昇)ときに両方を決済して利益を得る。
・資金効率のためにレバレッジ(借金)をかけて行う
数十倍のレバレッジをかけることもある。
2.なぜこの取引が存在するのか?
・通常、先物価格と現物価格は時間とともに一致(収束)していく性質があるため、
理論上は「確実に利益が得られる取引」として人気。
・特に米国債市場のような流動性が高く、大規模な市場で頻繁に行われる。
3.ベーシストレードのリスク
・相場が理論通りに動かない場合、損失が拡大する
例えば、国債が急落しても先物がそれほど下がらない場合、ポジションが逆ざやになる。
・金利の急騰や政策変更の影響を受けやすい
特に最近のような金利上昇局面では、想定以上の価格変動が起きる。
・レバレッジのせいで損失が一気に膨らむ可能性
損失拡大により、ポジションの強制清算(マージンコール)が起きることもある。
4.現在の米国債市場との関連
・最近の米国債売りが「ベーシストレードの巻き戻し(レバレッジ解消)」によって引き起こされた可能性が指摘されている。
・一部のファンドが大規模なポジションを持っていた場合、損失の連鎖で雪崩的な売却(fire sale)が起きる。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Investors dump US government bonds as faith in America falters FRANCE24 2025.04.12
https://www.france24.com/en/business/20250412-investors-dump-us-government-bonds-faith-america-falters-tariffs-trump?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250412&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
2025年4月12日、FRANCE 24は、米国債市場における異常な動きについて報じた。通常、経済の不安定期には安全資産とされる米国債が買われる傾向にあるが、今回は逆に売却が進んでおり、専門家らは懸念を示している。
米国債とは、米国政府が財政赤字を補うために発行する債券であり、通常は安定した投資先とされる。しかし、最近では利回りが上昇しているにもかかわらず、買い手が集まっていない。この現象について、米国が安全な資金避難先としての地位を失いつつあるのではないかという見方が一部で浮上している。
ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのファンドマネージャー、ジョージ・チポローニ氏は、米国債市場の安定性が揺らいでいることに言及し、懸念を示した。また、この動きは、消費者ローンや住宅ローンの金利上昇、企業の資金調達コスト増加にも波及し得るとされている。
10年物米国債の利回りは、前週の4.01%から一時4.58%まで上昇し、現在は4.50%前後となっている。通常、株価下落時に米国債が買われて利回りが下がるという市場の基本原理(Econ 101)が通用しない状況に、投資家らは困惑している。
この背景には、トランプ大統領の通商政策や予測困難な発言が投資家の信頼を揺るがせているという見方もある。トランプ氏は、今週の関税一時停止の決定が投資家の反応を受けてのものであることを示唆した。一方で、エバーコアISIのアナリストらは、信頼の回復には一時的な関税撤回だけでは不十分である可能性を指摘している。
米財務長官スコット・ベセント氏は、今回の利回り上昇を、過剰な借り入れを行っていた投資家の「正常なデレバレッジ」と位置付け、数年ごとに起きる事象であると述べた。
過去には、2009年の金融危機などでも米国が問題の発信地であったにもかかわらず、米国債は「流動性」「安定性」「売買の容易さ」から資金避難先として選ばれてきた。今回、そのような傾向が見られない点が注目されている。
他の要因としては、中国が保有米国債を売却している可能性、あるいは一部ヘッジファンドの戦略(ベーシストレード)の失敗による売却などが挙げられているが、確定的な説明はなされていない。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのチーフ・ストラテジスト、マイク・アローン氏は、米国の国際的信頼性の低下も一因と指摘している。
とはいえ、ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのブライアン・レーリング氏は、今後の動向は不確定であり、売りが早期に収束する可能性にも言及した。また、米国債に代わる流動性の高い債券が現時点では存在しないと述べた。
【詳細】
1. 概要:米国債の売却とその影響
2025年4月中旬、投資家が米国債(Treasury bonds)を大量に売却しており、これは通常安全資産と見なされてきた米国への信頼が揺らいでいる可能性を示唆する現象とされている。これにより、米国市場、ひいては経済全体への影響が懸念されている。
2. 米国債の役割と異変の意味
米国債とは、米国政府が発行する借用証書のことであり、国の支出が税収を上回る際の資金調達手段である。通常、世界的な経済不安があるときには、投資家は米国債に資金を避難させる(買いに走る)傾向にあるが、今回はその逆で、金利(利回り)が上昇しているにもかかわらず投資家が米国債を売却している点が注目されている。
3. 金利上昇と市場の動揺
10年物米国債の利回り(市場でのリスクの指標ともなる)が一時4.58%まで上昇した。これは1週間前の4.01%からの急上昇であり、通常は100分の数ポイント(ベーシス・ポイント)単位で動く債券市場としては異例の変動である。
このような利回りの上昇は、債券価格の下落を意味し、住宅ローンや自動車ローンなど、一般消費者の借入コストの上昇にもつながる。
4. 投資家の不安と背景にある要素
複数の市場関係者が、今回の売却は米国の信頼性や安定性に対する不安の表れであると指摘している。背景には以下のような要素があるとされる:
消費者のインフレ期待の悪化
最新の調査によると、米国消費者の間でインフレが今後加速するとの見方が広がっており、これが金利上昇(=債券売り)の一因となっている。
トランプ政権の政策不安
関税政策の変動や、予測不可能な外交・経済対応が、市場の信頼を損ねている可能性があるとされている。トランプ大統領は4月上旬に関税措置を90日間一時停止したが、これは市場安定化を狙ったものであったと報じられている。
米国が「安全資産」としての地位を失いつつあるとの懸念
Penn Mutual Asset Managementのファンドマネージャーであるジョージ・チポローニ氏は、「米国が安全な避難先としての地位を失いつつある」と指摘している。
5. 専門家による見解
いくつかの専門家は、債券市場の急変について明確な原因を断定するのは困難としている。債券市場は本来、株式市場と逆に動く(株が下がると債券は買われる)性質があるが、今回はそれが機能していない。
また、英国の元首相リズ・トラスの退陣(2022年)も、債券市場の反応がきっかけであったことに触れ、債券市場の影響力の大きさが再認識されている。
6. 他の可能性として挙げられる要因
中国による米国債売却説
一部では、中国が米国との対立に対応して米国債を売却している可能性があるとの観測もあるが、実際にはそれが人民元高や輸出競争力の低下を招くため、経済的合理性には乏しいとされている。
ヘッジファンドの“ベーシストレード”失敗
一部のヘッジファンドが、米国債を使ったレバレッジ取引(ベーシストレード)に失敗し、強制的に資産を売却している可能性がある。これにより、債券が大量に市場に流れ、利回り上昇につながったと指摘されている。
7. 政府の対応と発言
財務長官スコット・ベッセントの説明
財務長官は今回の債券売却を「数年に一度起こる正常なレバレッジ解消(deleveraging)」であり、過度に心配する必要はないと述べた。
トランプ大統領の発言
トランプ大統領は、債券市場の一時的な不安は自らの対応で解決したとし、「私はこの手のことに非常に長けている」と自信を示した。また、今回の関税措置の一時停止は、投資家の不安に対応するための判断であったことを認めている。
8. 今後の見通しと不確実性
Wells Fargoのブライアン・レーリング氏は、「今はまだ売却が一時的なものか、根本的な信頼の失墜なのか判断がつかない」としており、債券市場の反応が一時的である可能性も示唆している。
また、「米国債以外に同等の流動性と安全性を持つ債券は存在しない」とも述べており、長期的には再び米国債への信頼が回復する余地があることを示唆している。
【要点】
米国債売却の現象と背景
・米国債が2025年4月に大量に売却され、利回り(10年債で一時4.58%)が急上昇した。
・通常、安全資産とされる米国債が売られるのは異例であり、市場に不安を与えた。
・債券価格の下落は、住宅ローンやその他の借入金利の上昇に波及する。
投資家の不安の主な原因
・インフレ懸念の再燃
消費者のインフレ期待が高まり、金利上昇への圧力が強まっている。
・トランプ前大統領の政策リスク
関税の突然の見直しなど、予測不能な経済政策が不信感を誘発している。
・「安全な避難先」としての米国への信頼低下
一部の投資家は、米国がかつてほど安全な投資先でないと見ている。
市場関係者・専門家の見解
・原因の特定が難しい
通常のパターン(株下落で債券が買われる)が崩れており、明確な説明が困難。
・市場の過剰反応の可能性
一時的な売り圧力であり、長期的なトレンドとは限らないとの見方もある。
・債券市場の影響力の大きさ
過去に英首相が退陣に追い込まれた例もあり、無視できない動きである。
代替的な説明・仮説
・中国による売却説
地政学的緊張により中国が米国債を売却した可能性があるが、輸出面で不利なため合理性は薄い。
・ヘッジファンドの損失拡大
“ベーシストレード”というレバレッジ取引が破綻し、大量売却を引き起こした可能性がある。
政府の対応と発言
・財務長官ベッセントの説明
「数年に一度のレバレッジ解消であり、深刻視する必要はない」と発言。
・トランプ氏の自己評価
「この種の不安定性は自分の対応で解決した」「私はこの分野に強い」と主張。
今後の展望と不確実性
・市場の反応が一時的かどうか不明
信頼低下か、一過性の現象かはまだ判断できない。
・米国債の代替資産が存在しない
安全性と流動性の両面で米国債に代わる資産はないとの意見も。
【参考】
☞ ベーシストレード
「ベーシストレード(basis trade)」とは、債券市場でよく使われる裁定取引(アービトラージ)の一種であり、現物の国債と先物の価格差(ベーシス)を利用して利益を狙う手法である。
1.ベーシストレードの基本的な仕組み
・「ベーシス」=国債先物価格 − 現物国債価格(調整済)
先物と現物の価格に差があるとき、その差を収益機会と見なす。
・戦略内容
(1)利回りの高い現物の国債を買う
(2)同じ満期の先物を空売りする
・価格差が解消される(例:先物が下落・現物が上昇)ときに両方を決済して利益を得る。
・資金効率のためにレバレッジ(借金)をかけて行う
数十倍のレバレッジをかけることもある。
2.なぜこの取引が存在するのか?
・通常、先物価格と現物価格は時間とともに一致(収束)していく性質があるため、
理論上は「確実に利益が得られる取引」として人気。
・特に米国債市場のような流動性が高く、大規模な市場で頻繁に行われる。
3.ベーシストレードのリスク
・相場が理論通りに動かない場合、損失が拡大する
例えば、国債が急落しても先物がそれほど下がらない場合、ポジションが逆ざやになる。
・金利の急騰や政策変更の影響を受けやすい
特に最近のような金利上昇局面では、想定以上の価格変動が起きる。
・レバレッジのせいで損失が一気に膨らむ可能性
損失拡大により、ポジションの強制清算(マージンコール)が起きることもある。
4.現在の米国債市場との関連
・最近の米国債売りが「ベーシストレードの巻き戻し(レバレッジ解消)」によって引き起こされた可能性が指摘されている。
・一部のファンドが大規模なポジションを持っていた場合、損失の連鎖で雪崩的な売却(fire sale)が起きる。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Investors dump US government bonds as faith in America falters FRANCE24 2025.04.12
https://www.france24.com/en/business/20250412-investors-dump-us-government-bonds-faith-america-falters-tariffs-trump?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250412&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D