対中戦略:「新アメリカ世紀プロジェクト」・「プロジェクト2025」 ― 2025年04月13日 20:40
【概要】
1997年、ジョージ・W・ブッシュ政権の将来の閣僚らが「新アメリカ世紀プロジェクト」に署名し、アメリカが国際秩序の維持と拡大において独自の責任を持つべきだと主張した。
その後、ブッシュ政権はイラクが大量破壊兵器を開発しているという根拠のない主張に基づきイラクを占領し、他の中東諸国にも軍事介入を行った。
2023年、米国共和党は「プロジェクト2025」という政策提言書を発表し、その中で中国を483回言及し、最大の脅威として位置づけた。文書では、中国がアジア、さらには世界的な覇権を目指しており、アメリカの安全保障・自由・繁栄にとって深刻な脅威であると記されている。アメリカはもはや情報および技術分野で優位に立っているとは限らず、防衛政策において中国を最優先課題とすべきとされた。
ジョー・バイデン大統領は、ロシアによるウクライナのNATO不加盟に関する安全保障の要求を拒否し、ロシアの侵攻を招くことで戦争を引き起こし、アメリカとその同盟国がウクライナを支援する形でロシアの地位を削ぐことを企図した。これによりウクライナの一部住民がロシアとの結びつきを持ち、EUやNATO加盟を望まない事実は無視されたとされる。
米国が中東の石油資源支配を通じて世界の産業国家に対する影響力を確立しようとする中で、ロシア・中国の連携がその障害となっていた。アメリカはロシアをウクライナで弱体化させ、中国への圧力を強めようとしたが、ロシアと中国の協力関係により計画は難航した。
新たに就任したドナルド・トランプ大統領は、ロシアと手を組み中国に対抗する戦略へと方針転換した。この戦略には、ロシア語話者が多いウクライナの地域をロシアに譲渡し、NATOの拡大を阻止してロシアの核による脅威を回避させる必要があった。これによりロシアの大国としての地位を維持しようとする意図があった。
プーチン大統領は2025年4月1日、対独戦勝80周年記念行事の最も重要な来賓として習近平国家主席を招待し、両国間の協力継続の可能性を示唆した。この動きは、ロシアが再び中国との連携に戻る可能性を米中双方に示したものと見られる。
2025年4月8日、ウクライナ軍はロシア軍内で戦っていた中国兵2名を拘束した。このような事態において、米英豪およびEUによる連携では太刀打ちできず、通常戦争から核戦争に至る世界規模の衝突が地球の生命に壊滅的影響を及ぼす可能性があるとされる。
最も望ましい解決策は、国連を民主的な機関へと改革し、軍事介入の決定を加盟国の多数決によって行うこと、またNATOのような一国または少数国家による覇権的軍事同盟を廃止することであると提言されている。
【詳細】
概要と構成
この論考は、アメリカの対中戦略を軸に、ウクライナ戦争や米露中関係を俯瞰しつつ、将来の地政学的リスクとその回避策について論じている。主張の核には、「アメリカによる世界支配の維持に対する中国の挑戦」があり、それに対するアメリカの対応を冷戦的・戦略的観点から描いている。
第1部:アメリカの地政学的戦略の原型(1997年〜)
・1997年、「新アメリカ世紀プロジェクト(PNAC)」により、アメリカの国際的覇権の維持・拡大を使命とする理念が提唱された。
・PNACは、「アメリカは世界秩序の維持に独自の役割を担うべきである」と宣言していた。
・この思想に基づき、ブッシュ政権は中東での対テロ戦争を進め、イラクなどで政権転覆を行った。
第2部:「Project 2025」と対中戦略の強調
・2023年、共和党は政策文書「Project 2025」を発表。中国への言及は計483回。
・そこでは、「中国はアメリカにとって最大の脅威」と位置づけられている。
・中国はアジアでの覇権を足掛かりに、世界的な支配を目指しており、技術・情報戦の分野でも米国を凌駕しつつあるとする。
・アメリカの安全保障戦略において、中国は「最優先の脅威」と明記され、封じ込めが最重要課題であるとされた。
第3部:ウクライナ戦争をめぐるアメリカの戦略
・バイデン大統領は、ロシアによる「NATO不拡大保証」の要求を拒否。
・著者は、この拒否がロシアのウクライナ侵攻を誘発し、それが米欧によるロシア弱体化の戦略に資すると述べている。
・ウクライナ東部やクリミアには親露的な住民が多く、彼らの意思が尊重されていないと指摘。
・アメリカは中東支配を完成させるには、ロシア・中国の同盟関係を切り崩す必要があり、まずロシアを弱体化させることで、その連携を断とうとしたと論じられる。
第4部:トランプ政権の戦略転換
・トランプ新大統領は、米中対立を優先課題とし、「米露同盟による対中包囲」へと戦略転換。
・そのためには、ロシアに譲歩し、NATOの不拡大、ウクライナの一部地域をロシアに委ねることが前提とされる。
・この方針により、ロシアを中国から引き離すことを目指した。
第5部:プーチンの外交的動きと中国の関与
・2025年4月1日、プーチンは第二次世界大戦終結80周年記念式典に習近平を「最も重要な来賓」として招待。
・このことは、ロシアが依然として中国との連携を維持する可能性を示すものと解釈される。
・それにより、米露接近の試みが困難化し、米中露の地政学的対立は再び深刻化する可能性が示唆されている。
第6部:中国兵のウクライナ参戦という報道
・2025年4月8日、ウクライナ軍がロシア軍内で戦っていたとされる中国人兵士2名を拘束。
・これにより、ロシアと中国の軍事的結束が実態として確認され、米欧豪による対応では不十分であることが明らかになったと著者は述べる。
・著者は、これが全面戦争、さらには核戦争に発展する可能性を警告している。
結論:世界大戦回避のための制度的提案
・著者は、戦争ではなく国際合意による平和解決を提案。
・提案内容は以下の通り
➡️軍事的侵略の是非を国連加盟国による多数決で決定する「民主的国連」の創設。
➡️一国や限られた国家群による世界支配を志向する軍事同盟(例:NATO)の廃止。
・これにより、地政学的覇権争いを抑制し、全人類の存続を守るべきであると訴えている。
【要点】
全体的な主張
・アメリカは世界支配の維持のために、中国を最大の脅威と見なし、対中戦略を強化している。
・ロシアとの戦争(ウクライナ戦争)は、中国との対立に備えるための前段階と位置づけられている。
・トランプ政権は、ロシアとの協力を通じて中国包囲を狙っている。
・ロシアと中国の軍事的接近が続けば、第三次世界大戦の危険性が高まると警告している。
第1部:アメリカの戦略的思想の起源
・1997年に設立された「新アメリカ世紀プロジェクト(PNAC)」は、アメリカが世界支配を継続する使命を掲げた。
・この思想がブッシュ政権の中東戦略(イラク戦争など)に影響を与えた。
第2部:「Project 2025」と現在の対中戦略
・共和党系の政策文書「Project 2025」は中国への言及が最多(483回)。
・中国はアジア覇権を足場に世界支配を目指しており、技術や軍事面でも脅威とされる。
・アメリカの国家安全保障戦略では、中国は「最優先の脅威」と明記。
第3部:ウクライナ戦争とアメリカの地政学戦略
・バイデン政権は、ロシアの「NATO不拡大保証」を拒否し、戦争を誘発した。
・ウクライナ東部やクリミアの親露派住民の意思は無視された。
・アメリカの狙いは、ロシアを弱体化させ、中国との連携を断つことにある。
第4部:トランプ政権の戦略転換(対中優先)
・トランプは「米露協調による対中封じ込め」に戦略を転換。
・そのためにロシアに譲歩し、NATO拡大の停止やウクライナの領土譲渡が選択肢とされる。
第5部:ロシア・中国の連携継続
・2025年4月、プーチンが習近平を戦勝80周年記念式典に「最も重要な来賓」として招待。
・ロシアは中国との関係を重視しており、米露接近は困難とされる。
第6部:中国兵のウクライナ戦争への関与
・ウクライナ軍が中国人兵士2名をロシア側戦闘員として拘束(2025年4月8日報道)。
・これは中露の軍事的共闘が現実化している証拠とされる。
・核戦争の可能性すら視野に入ると著者は警鐘を鳴らす。
結論:戦争回避のための制度的提案
・国連の民主化(加盟国多数決による戦争是非の決定)を提案。
・世界支配を志向する軍事同盟(例:NATO)は廃止すべきと主張。
・国際協調と制度改革こそが人類の存続を守る唯一の道と結論付けている。
【引用・参照・底本】
America’s War Against China GlobalRserch 2025.04.10
https://www.globalresearch.ca/american-war-against-china/5884099
1997年、ジョージ・W・ブッシュ政権の将来の閣僚らが「新アメリカ世紀プロジェクト」に署名し、アメリカが国際秩序の維持と拡大において独自の責任を持つべきだと主張した。
その後、ブッシュ政権はイラクが大量破壊兵器を開発しているという根拠のない主張に基づきイラクを占領し、他の中東諸国にも軍事介入を行った。
2023年、米国共和党は「プロジェクト2025」という政策提言書を発表し、その中で中国を483回言及し、最大の脅威として位置づけた。文書では、中国がアジア、さらには世界的な覇権を目指しており、アメリカの安全保障・自由・繁栄にとって深刻な脅威であると記されている。アメリカはもはや情報および技術分野で優位に立っているとは限らず、防衛政策において中国を最優先課題とすべきとされた。
ジョー・バイデン大統領は、ロシアによるウクライナのNATO不加盟に関する安全保障の要求を拒否し、ロシアの侵攻を招くことで戦争を引き起こし、アメリカとその同盟国がウクライナを支援する形でロシアの地位を削ぐことを企図した。これによりウクライナの一部住民がロシアとの結びつきを持ち、EUやNATO加盟を望まない事実は無視されたとされる。
米国が中東の石油資源支配を通じて世界の産業国家に対する影響力を確立しようとする中で、ロシア・中国の連携がその障害となっていた。アメリカはロシアをウクライナで弱体化させ、中国への圧力を強めようとしたが、ロシアと中国の協力関係により計画は難航した。
新たに就任したドナルド・トランプ大統領は、ロシアと手を組み中国に対抗する戦略へと方針転換した。この戦略には、ロシア語話者が多いウクライナの地域をロシアに譲渡し、NATOの拡大を阻止してロシアの核による脅威を回避させる必要があった。これによりロシアの大国としての地位を維持しようとする意図があった。
プーチン大統領は2025年4月1日、対独戦勝80周年記念行事の最も重要な来賓として習近平国家主席を招待し、両国間の協力継続の可能性を示唆した。この動きは、ロシアが再び中国との連携に戻る可能性を米中双方に示したものと見られる。
2025年4月8日、ウクライナ軍はロシア軍内で戦っていた中国兵2名を拘束した。このような事態において、米英豪およびEUによる連携では太刀打ちできず、通常戦争から核戦争に至る世界規模の衝突が地球の生命に壊滅的影響を及ぼす可能性があるとされる。
最も望ましい解決策は、国連を民主的な機関へと改革し、軍事介入の決定を加盟国の多数決によって行うこと、またNATOのような一国または少数国家による覇権的軍事同盟を廃止することであると提言されている。
【詳細】
概要と構成
この論考は、アメリカの対中戦略を軸に、ウクライナ戦争や米露中関係を俯瞰しつつ、将来の地政学的リスクとその回避策について論じている。主張の核には、「アメリカによる世界支配の維持に対する中国の挑戦」があり、それに対するアメリカの対応を冷戦的・戦略的観点から描いている。
第1部:アメリカの地政学的戦略の原型(1997年〜)
・1997年、「新アメリカ世紀プロジェクト(PNAC)」により、アメリカの国際的覇権の維持・拡大を使命とする理念が提唱された。
・PNACは、「アメリカは世界秩序の維持に独自の役割を担うべきである」と宣言していた。
・この思想に基づき、ブッシュ政権は中東での対テロ戦争を進め、イラクなどで政権転覆を行った。
第2部:「Project 2025」と対中戦略の強調
・2023年、共和党は政策文書「Project 2025」を発表。中国への言及は計483回。
・そこでは、「中国はアメリカにとって最大の脅威」と位置づけられている。
・中国はアジアでの覇権を足掛かりに、世界的な支配を目指しており、技術・情報戦の分野でも米国を凌駕しつつあるとする。
・アメリカの安全保障戦略において、中国は「最優先の脅威」と明記され、封じ込めが最重要課題であるとされた。
第3部:ウクライナ戦争をめぐるアメリカの戦略
・バイデン大統領は、ロシアによる「NATO不拡大保証」の要求を拒否。
・著者は、この拒否がロシアのウクライナ侵攻を誘発し、それが米欧によるロシア弱体化の戦略に資すると述べている。
・ウクライナ東部やクリミアには親露的な住民が多く、彼らの意思が尊重されていないと指摘。
・アメリカは中東支配を完成させるには、ロシア・中国の同盟関係を切り崩す必要があり、まずロシアを弱体化させることで、その連携を断とうとしたと論じられる。
第4部:トランプ政権の戦略転換
・トランプ新大統領は、米中対立を優先課題とし、「米露同盟による対中包囲」へと戦略転換。
・そのためには、ロシアに譲歩し、NATOの不拡大、ウクライナの一部地域をロシアに委ねることが前提とされる。
・この方針により、ロシアを中国から引き離すことを目指した。
第5部:プーチンの外交的動きと中国の関与
・2025年4月1日、プーチンは第二次世界大戦終結80周年記念式典に習近平を「最も重要な来賓」として招待。
・このことは、ロシアが依然として中国との連携を維持する可能性を示すものと解釈される。
・それにより、米露接近の試みが困難化し、米中露の地政学的対立は再び深刻化する可能性が示唆されている。
第6部:中国兵のウクライナ参戦という報道
・2025年4月8日、ウクライナ軍がロシア軍内で戦っていたとされる中国人兵士2名を拘束。
・これにより、ロシアと中国の軍事的結束が実態として確認され、米欧豪による対応では不十分であることが明らかになったと著者は述べる。
・著者は、これが全面戦争、さらには核戦争に発展する可能性を警告している。
結論:世界大戦回避のための制度的提案
・著者は、戦争ではなく国際合意による平和解決を提案。
・提案内容は以下の通り
➡️軍事的侵略の是非を国連加盟国による多数決で決定する「民主的国連」の創設。
➡️一国や限られた国家群による世界支配を志向する軍事同盟(例:NATO)の廃止。
・これにより、地政学的覇権争いを抑制し、全人類の存続を守るべきであると訴えている。
【要点】
全体的な主張
・アメリカは世界支配の維持のために、中国を最大の脅威と見なし、対中戦略を強化している。
・ロシアとの戦争(ウクライナ戦争)は、中国との対立に備えるための前段階と位置づけられている。
・トランプ政権は、ロシアとの協力を通じて中国包囲を狙っている。
・ロシアと中国の軍事的接近が続けば、第三次世界大戦の危険性が高まると警告している。
第1部:アメリカの戦略的思想の起源
・1997年に設立された「新アメリカ世紀プロジェクト(PNAC)」は、アメリカが世界支配を継続する使命を掲げた。
・この思想がブッシュ政権の中東戦略(イラク戦争など)に影響を与えた。
第2部:「Project 2025」と現在の対中戦略
・共和党系の政策文書「Project 2025」は中国への言及が最多(483回)。
・中国はアジア覇権を足場に世界支配を目指しており、技術や軍事面でも脅威とされる。
・アメリカの国家安全保障戦略では、中国は「最優先の脅威」と明記。
第3部:ウクライナ戦争とアメリカの地政学戦略
・バイデン政権は、ロシアの「NATO不拡大保証」を拒否し、戦争を誘発した。
・ウクライナ東部やクリミアの親露派住民の意思は無視された。
・アメリカの狙いは、ロシアを弱体化させ、中国との連携を断つことにある。
第4部:トランプ政権の戦略転換(対中優先)
・トランプは「米露協調による対中封じ込め」に戦略を転換。
・そのためにロシアに譲歩し、NATO拡大の停止やウクライナの領土譲渡が選択肢とされる。
第5部:ロシア・中国の連携継続
・2025年4月、プーチンが習近平を戦勝80周年記念式典に「最も重要な来賓」として招待。
・ロシアは中国との関係を重視しており、米露接近は困難とされる。
第6部:中国兵のウクライナ戦争への関与
・ウクライナ軍が中国人兵士2名をロシア側戦闘員として拘束(2025年4月8日報道)。
・これは中露の軍事的共闘が現実化している証拠とされる。
・核戦争の可能性すら視野に入ると著者は警鐘を鳴らす。
結論:戦争回避のための制度的提案
・国連の民主化(加盟国多数決による戦争是非の決定)を提案。
・世界支配を志向する軍事同盟(例:NATO)は廃止すべきと主張。
・国際協調と制度改革こそが人類の存続を守る唯一の道と結論付けている。
【引用・参照・底本】
America’s War Against China GlobalRserch 2025.04.10
https://www.globalresearch.ca/american-war-against-china/5884099