EU・中国との外交関係50周年:「貿易および投資協力の深化」 ― 2025年03月28日 08:49
【概要】
欧州連合(EU)は、中国との外交関係50周年を迎えるにあたり、「貿易および投資協力の深化」に意欲を示している。これは、EUのマロシュ・シェフチョビッチ(Maros Sefcovic)通商担当委員が3月27日、北京で中国の何立峰(He Lifeng)副首相と会談した際に述べたものであり、中国国営通信の新華社が報じた。
この会談は、シェフチョビッチ氏の2日間にわたる訪中の初日に行われ、両者は釣魚台迎賓館で会食した。欧州委員会はこの会談に関する公式声明を発表していない。
同日、シェフチョビッチ氏は中国税関総署の孫梅君(Sun Meijun)署長と会談し、その後、EU中国商工会議所(EU Chamber of Commerce in China)が主催する欧州企業との交流イベントに出席した。
このイベントにおいて、シェフチョビッチ氏は、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長が今年複数の演説で示してきた方針を強調した。フォン・デア・ライエン委員長はこれまで中国に対して厳しい姿勢を取ってきたが、最近の演説では、EUが中国との貿易関係を拡大し、新たな合意の可能性を模索できることを示唆する表現を用いている。
これらの発言は、米国のドナルド・トランプ大統領の2期目を見据え、EUが選択肢を持っていることを示す意図があるとされる。また、EU筋によれば、これと同時に中国側に対し、ブリュッセルが「信頼に足る提案」に対して前向きであることを伝える目的もあるという。
【詳細】
欧州連合(EU)は、中国との外交関係50周年を迎えるにあたり、「貿易および投資協力の深化」を目指している。これは、EUのマロシュ・シェフチョビッチ(Maros Sefcovic)通商担当委員が3月27日、北京で中国の何立峰(He Lifeng)副首相と会談した際に述べたものであり、中国国営通信の新華社が報じた。
会談の詳細と背景
シェフチョビッチ氏の訪中は2日間の日程で行われ、その初日に何立峰副首相と会談した。両者は、北京の釣魚台迎賓館で会食をともにし、貿易や投資に関する協力関係の深化について意見を交わした。
EU側はこの会談の内容について公式声明を発表していないが、中国側の報道によれば、EUは中国との経済関係を強化し、協力を深める意向を示したとされる。
シェフチョビッチ氏は、何立峰氏との会談に先立ち、中国税関総署の孫梅君(Sun Meijun)署長とも会談を行い、貿易手続きや関税に関する協力について議論した。その後、EU中国商工会議所(EU Chamber of Commerce in China)が主催する欧州企業との交流イベントに参加した。
EUの対中政策の変化
この訪問の背景には、EUの対中政策の変化がある。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長は、これまで中国に対して厳しい姿勢を取っていたが、今年に入ってからの複数の演説において、対話や協力の可能性に言及するようになった。
フォン・デア・ライエン委員長は2023年に「デリスキング(リスク低減)」という方針を掲げ、中国依存を減らしつつも完全に関係を断つ「デカップリング(切り離し)」は避けるという姿勢を示していた。しかし、2024年以降は、さらに柔軟な対応を示唆する発言が増えている。
シェフチョビッチ氏も、今回の訪問でその流れを引き継ぎ、EUが中国との貿易や投資の拡大に前向きであることを強調したとみられる。
米国との関係とEUの戦略
このようなEUの姿勢の変化には、米国の影響もある。EUはこれまで、中国に対して厳しい姿勢を取る米国と足並みをそろえる場面が多かった。しかし、ドナルド・トランプ氏が再び米大統領に就任し、EUは独自の選択肢を模索している。
EU筋によれば、フォン・デア・ライエン委員長の最近の発言やシェフチョビッチ氏の訪中には、米国に対して「EUは独自の外交・経済政策を持ち、中国との関係を柔軟に調整できる」というメッセージを送る意図もあるという。
また、これは中国に対しても「EUは協力に前向きであるため、信頼できる提案を持ちかけるべきだ」というシグナルを送る狙いがあるとされる。
今後の展望
シェフチョビッチ氏の訪中は、中国とEUの経済関係が新たな局面に入る可能性を示している。EUは中国に対して「公平な競争環境の確保」や「市場アクセスの改善」を求めているが、一方で中国市場の重要性を認識し、対話を重視する姿勢に転じつつある。
今後、EUと中国の間で新たな貿易協定の締結や、投資に関する協議の進展が見込まれる可能性がある。ただし、EU域内では中国への警戒感も根強く、一部の加盟国は経済的な依存度を高めることに慎重な立場を取っているため、今後の交渉の行方は不透明な部分もある。
【要点】
EUと中国の貿易協力深化に関する概要
1. 訪中の概要
・EUのマロシュ・シェフチョビッチ通商担当委員が3月27日に北京を訪問。
・2日間の訪問の初日に中国の何立峰副首相と会談。
・釣魚台迎賓館で会食し、貿易・投資協力の深化について議論。
・中国税関総署の孫梅君署長とも会談し、貿易手続きや関税に関する協力を協議。
・EU中国商工会議所(EU Chamber of Commerce in China)主催の欧州企業との交流イベントにも出席。
2. EUの対中政策の変化
・欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はこれまで対中強硬姿勢を取っていたが、最近の演説では協力拡大の可能性に言及。
・2023年は「デリスキング(リスク低減)」を掲げていたが、2024年以降はさらに柔軟な対応へシフト。
・シェフチョビッチ氏も今回の訪中で、EUが中国との貿易・投資拡大に前向きであることを強調。
3. 米国との関係とEUの戦略
・EUはこれまで米国と足並みをそろえ、中国に対して厳しい立場を取ることが多かった。
・しかし、ドナルド・トランプ氏の米大統領再選で、EUは独自の選択肢を模索。
・フォン・デア・ライエン委員長の最近の発言やシェフチョビッチ氏の訪中は、米国に対し「EUは独自の外交・経済政策を持つ」と示す狙いがあるとされる。
・また、中国に対しても「EUは協力に前向きなので、信頼できる提案を行うべき」とのシグナルを送る意図もある。
4. 今後の展望
・EUは中国に対し、公平な競争環境の確保や市場アクセスの改善を求める方針。
・今後、新たな貿易協定の締結や投資協議の進展が期待される。
・ただし、EU域内には中国への警戒感も根強く、一部加盟国は経済的な依存度を高めることに慎重な姿勢を取っている。
・そのため、EUと中国の交渉の行方には不透明な要素も残る。
【引用・参照・底本】
EU trade commissioner says bloc seeks to deepen cooperation with China scmp 2025.03.28
https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3304180/eu-trade-commissioner-says-bloc-seeks-deepen-cooperation-china?module=top_story&pgtype=homepage
欧州連合(EU)は、中国との外交関係50周年を迎えるにあたり、「貿易および投資協力の深化」に意欲を示している。これは、EUのマロシュ・シェフチョビッチ(Maros Sefcovic)通商担当委員が3月27日、北京で中国の何立峰(He Lifeng)副首相と会談した際に述べたものであり、中国国営通信の新華社が報じた。
この会談は、シェフチョビッチ氏の2日間にわたる訪中の初日に行われ、両者は釣魚台迎賓館で会食した。欧州委員会はこの会談に関する公式声明を発表していない。
同日、シェフチョビッチ氏は中国税関総署の孫梅君(Sun Meijun)署長と会談し、その後、EU中国商工会議所(EU Chamber of Commerce in China)が主催する欧州企業との交流イベントに出席した。
このイベントにおいて、シェフチョビッチ氏は、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長が今年複数の演説で示してきた方針を強調した。フォン・デア・ライエン委員長はこれまで中国に対して厳しい姿勢を取ってきたが、最近の演説では、EUが中国との貿易関係を拡大し、新たな合意の可能性を模索できることを示唆する表現を用いている。
これらの発言は、米国のドナルド・トランプ大統領の2期目を見据え、EUが選択肢を持っていることを示す意図があるとされる。また、EU筋によれば、これと同時に中国側に対し、ブリュッセルが「信頼に足る提案」に対して前向きであることを伝える目的もあるという。
【詳細】
欧州連合(EU)は、中国との外交関係50周年を迎えるにあたり、「貿易および投資協力の深化」を目指している。これは、EUのマロシュ・シェフチョビッチ(Maros Sefcovic)通商担当委員が3月27日、北京で中国の何立峰(He Lifeng)副首相と会談した際に述べたものであり、中国国営通信の新華社が報じた。
会談の詳細と背景
シェフチョビッチ氏の訪中は2日間の日程で行われ、その初日に何立峰副首相と会談した。両者は、北京の釣魚台迎賓館で会食をともにし、貿易や投資に関する協力関係の深化について意見を交わした。
EU側はこの会談の内容について公式声明を発表していないが、中国側の報道によれば、EUは中国との経済関係を強化し、協力を深める意向を示したとされる。
シェフチョビッチ氏は、何立峰氏との会談に先立ち、中国税関総署の孫梅君(Sun Meijun)署長とも会談を行い、貿易手続きや関税に関する協力について議論した。その後、EU中国商工会議所(EU Chamber of Commerce in China)が主催する欧州企業との交流イベントに参加した。
EUの対中政策の変化
この訪問の背景には、EUの対中政策の変化がある。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長は、これまで中国に対して厳しい姿勢を取っていたが、今年に入ってからの複数の演説において、対話や協力の可能性に言及するようになった。
フォン・デア・ライエン委員長は2023年に「デリスキング(リスク低減)」という方針を掲げ、中国依存を減らしつつも完全に関係を断つ「デカップリング(切り離し)」は避けるという姿勢を示していた。しかし、2024年以降は、さらに柔軟な対応を示唆する発言が増えている。
シェフチョビッチ氏も、今回の訪問でその流れを引き継ぎ、EUが中国との貿易や投資の拡大に前向きであることを強調したとみられる。
米国との関係とEUの戦略
このようなEUの姿勢の変化には、米国の影響もある。EUはこれまで、中国に対して厳しい姿勢を取る米国と足並みをそろえる場面が多かった。しかし、ドナルド・トランプ氏が再び米大統領に就任し、EUは独自の選択肢を模索している。
EU筋によれば、フォン・デア・ライエン委員長の最近の発言やシェフチョビッチ氏の訪中には、米国に対して「EUは独自の外交・経済政策を持ち、中国との関係を柔軟に調整できる」というメッセージを送る意図もあるという。
また、これは中国に対しても「EUは協力に前向きであるため、信頼できる提案を持ちかけるべきだ」というシグナルを送る狙いがあるとされる。
今後の展望
シェフチョビッチ氏の訪中は、中国とEUの経済関係が新たな局面に入る可能性を示している。EUは中国に対して「公平な競争環境の確保」や「市場アクセスの改善」を求めているが、一方で中国市場の重要性を認識し、対話を重視する姿勢に転じつつある。
今後、EUと中国の間で新たな貿易協定の締結や、投資に関する協議の進展が見込まれる可能性がある。ただし、EU域内では中国への警戒感も根強く、一部の加盟国は経済的な依存度を高めることに慎重な立場を取っているため、今後の交渉の行方は不透明な部分もある。
【要点】
EUと中国の貿易協力深化に関する概要
1. 訪中の概要
・EUのマロシュ・シェフチョビッチ通商担当委員が3月27日に北京を訪問。
・2日間の訪問の初日に中国の何立峰副首相と会談。
・釣魚台迎賓館で会食し、貿易・投資協力の深化について議論。
・中国税関総署の孫梅君署長とも会談し、貿易手続きや関税に関する協力を協議。
・EU中国商工会議所(EU Chamber of Commerce in China)主催の欧州企業との交流イベントにも出席。
2. EUの対中政策の変化
・欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はこれまで対中強硬姿勢を取っていたが、最近の演説では協力拡大の可能性に言及。
・2023年は「デリスキング(リスク低減)」を掲げていたが、2024年以降はさらに柔軟な対応へシフト。
・シェフチョビッチ氏も今回の訪中で、EUが中国との貿易・投資拡大に前向きであることを強調。
3. 米国との関係とEUの戦略
・EUはこれまで米国と足並みをそろえ、中国に対して厳しい立場を取ることが多かった。
・しかし、ドナルド・トランプ氏の米大統領再選で、EUは独自の選択肢を模索。
・フォン・デア・ライエン委員長の最近の発言やシェフチョビッチ氏の訪中は、米国に対し「EUは独自の外交・経済政策を持つ」と示す狙いがあるとされる。
・また、中国に対しても「EUは協力に前向きなので、信頼できる提案を行うべき」とのシグナルを送る意図もある。
4. 今後の展望
・EUは中国に対し、公平な競争環境の確保や市場アクセスの改善を求める方針。
・今後、新たな貿易協定の締結や投資協議の進展が期待される。
・ただし、EU域内には中国への警戒感も根強く、一部加盟国は経済的な依存度を高めることに慎重な姿勢を取っている。
・そのため、EUと中国の交渉の行方には不透明な要素も残る。
【引用・参照・底本】
EU trade commissioner says bloc seeks to deepen cooperation with China scmp 2025.03.28
https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3304180/eu-trade-commissioner-says-bloc-seeks-deepen-cooperation-china?module=top_story&pgtype=homepage

