AIM-260A JATM(Joint Advanced Tactical Missile)2025年03月12日 11:09

Ainovaで作成
【概要】

 AIM-260A JATM(Joint Advanced Tactical Missile)は、アメリカ空軍が開発中の次世代空対空ミサイルであり、長射程、先進的な誘導技術、ステルス戦闘機との適合性を特徴としている。このミサイルはAIM-120 AMRAAMの後継として位置付けられ、特に中国の航空戦力の発展を考慮した設計となっている。

 AIM-260Aの特性と運用計画

 AIM-260Aは、AIM-120と同程度のサイズながらも、より長射程を実現するための先進的な推進システムと複数の誘導技術を備えているとされる。公開されている情報は限られているが、地上レーダーや衛星からの誘導を受ける能力を持つと推測される。

 射程に関しては公式な発表がないものの、AIM-120D-3(最大射程約190km)を超える性能を持つと考えられている。設計上、ロケットモーターがAIM-120より長く、これにより速度と射程の向上が期待される。

 AIM-260AはF-22やF-35といったステルス戦闘機、および将来的な無人戦闘機(CCA: Collaborative Combat Aircraft)への搭載が想定されており、米軍はこれにより長射程の脅威への対応能力を強化する方針である。しかし、実際の配備時期については未確定であり、現在も試験段階にあるとされる。

 中国の長距離空対空ミサイルと電子戦対策

 AIM-260Aの開発は、中国人民解放軍空軍(PLAAF)の最新空対空ミサイルの登場を背景としている。特にJ-16戦闘機に搭載されるPL-17は、早期警戒管制機(AWACS)や空中給油機などの高価値目標を遠距離から迎撃することを目的としたBVR(Beyond Visual Range)ミサイルである。

 PL-17は、PL-15よりも大型で、デュアルパルスロケットモーター、推力偏向制御(TVC)、マッハ4を超える速度を備えている。誘導方式にはアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーと双方向データリンクを組み合わせており、電子妨害対策も強化されている。

 さらに、中国は超音速空対空ミサイルの開発も進めており、一部のミサイルはマッハ9に達するとされる。これらの兵器はB-21レイダーなどの米国のステルス爆撃機への対抗手段として想定されており、高温耐性と固体燃料パルスエンジンを用いた変則飛行軌道が特徴とされる。

 また、人民解放軍は電子戦(EW)能力の向上にも注力しており、Y-9DZやJ-16Dなどの電子戦機を配備している。これらの機体は先進的な電子妨害ポッドと電子支援対策(ESM)を搭載し、敵のミサイル誘導やレーダー運用を妨害する能力を持つ。AIM-260Aのような長距離ミサイルへの対抗策として、中国は電子戦能力を強化し、空中戦の主導権を確保しようとしている。

 米中のステルス戦闘機の比較

 米国のF-22およびF-35は高いステルス性と先進的な電子戦能力を有するが、中国のJ-20も長距離作戦能力を備えた戦闘機として評価されている。J-20はWS-15エンジンにより超音速巡航(スーパークルーズ)を可能にし、大型の内部燃料タンクと高度なアビオニクスを組み合わせることで、長時間の作戦行動が可能とされる。

 一方、J-20のステルス性能はF-22やF-35に比べて劣るとされるものの、作戦半径はF-22やF-35のほぼ2倍に達するとされ、特に太平洋戦域における作戦では有利となる可能性がある。

 台湾海峡での空中戦シナリオと米軍の課題

 台湾有事において、F-22やF-35の運用は中国の航空戦力に対抗する上で重要視されている。F-22は日本の嘉手納基地から展開可能であり、F-35Bは短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機能を活かして太平洋の小規模な島嶼基地から運用される。また、F-35Cは空母からの発艦が可能であり、柔軟な運用が期待される。

 しかし、米空軍の戦闘機部隊の即応率は低下している。2024年にはF-22の即応率が52%から40.19%に低下し、F-35Aも51.4%にとどまっている。F-15EやF-15Dの即応率は改善したものの、F-22やF-35の維持・運用の難しさが明らかになっている。

 また、戦闘機の数そのものも減少傾向にある。かつて湾岸戦争(1991年)の際には米空軍は134個戦闘機飛行隊を有していたが、現在では55個飛行隊にまで縮小されている。さらに、中国は年間約100機のJ-20を生産しているとされる一方で、F-22は187機で生産終了しており、数の上での劣勢が拡大している。

 米軍の将来戦略

 このような状況を踏まえ、米軍は無人機の活用を進める方針である。特に低コストのオフ・ザ・シェルフ(既製品)無人機を投入し、戦闘機不足を補う計画が進められている。

 また、AIM-260Aのような長射程ミサイルの開発を強化し、少数の戦闘機でも優勢を維持できるような戦術の確立が求められている。米軍は、電子戦、ステルス、精密誘導兵器の組み合わせにより、戦力の不足を技術で補う戦略を推進している。

 結論

 AIM-260Aは米空軍の空対空戦闘能力を大幅に強化する可能性を持つが、その実戦配備時期や戦闘機部隊の即応率の低下が課題となっている。一方で、中国は長距離ミサイルの開発を進めるとともに、電子戦技術を駆使して米軍の優位性を低減しようとしている。今後の航空戦力の動向は、台湾海峡を含むインド太平洋地域の軍事バランスに大きな影響を与えると考えられる。

【詳細】 

 AIM-260A JATMと米中の航空戦力競争

 米空軍の新型空対空ミサイルAIM-260A Joint Advanced Tactical Missile(JATM)は、従来のAIM-120 AMRAAMを置き換える次世代兵器として開発が進められている。このミサイルは長射程、高速飛行、複数の誘導技術の統合、ステルス機との適合性を備えており、中国の航空戦力の台頭に対応するための重要な装備とされている。

 AIM-260A JATMの特性と開発状況

 1. 射程と速度

 AIM-260Aの詳細な性能は非公開だが、最新のAIM-120D-3が約190kmの射程を持つことから、それを上回る可能性が高い。ミサイルのデザインは空気抵抗を抑えた形状を採用し、推進システムも強化されているため、長距離交戦能力の向上が期待されている。

 2. 誘導技術

 JATMはマルチモード誘導技術を備え、地上レーダー、衛星、他の航空機からの情報を受信して目標を追跡できるとされる。これにより、電子妨害(EW)への耐性を向上させると同時に、より高い命中精度を実現する。

 3. ステルス機との適合

 AIM-260AはF-22、F-35といったステルス戦闘機に搭載される予定であり、将来的には**無人戦闘機(Collaborative Combat Aircraft, CCA)**にも統合される可能性がある。これにより、遠距離からの迎撃能力が強化される。

 4. 運用開始時期

 AIM-260Aは現在試験段階にあるが、実際の運用開始時期は明らかになっていない。

 中国の空対空ミサイル開発

 中国も長距離空対空ミサイルの開発を進めており、特にPL-17がAIM-260Aのライバルと見られている。

 1. PL-17の特徴

 PL-17は大型の空対空ミサイルで、特にAWACS(早期警戒機)や空中給油機などの**高価値目標(HVA, High-Value Assets)**の無力化を目的としている。

 ・デュアルパルスロケットモーター:二段階推進により長射程化
 ・推力偏向制御(TVC):高い機動性を確保
 ・AESAレーダー誘導:電子妨害耐性を向上
 ・双方向データリンク:目標のリアルタイム追尾を強化

 2. 超音速・極超音速ミサイル

 さらに、中国はマッハ9に達する極超音速空対空ミサイルを開発中であり、これによりB-21レイダーのようなステルス爆撃機への対抗力を強化している。

 電子戦(EW)による対抗策

 米軍のAIM-260Aや中国のPL-17などのBVR(Beyond Visual Range, 目視外射程)ミサイルの脅威に対し、電子戦(EW)の重要性が増している。

 1. 中国の電子戦能力

 中国のY-9DZ電子戦機、J-16D電子戦戦闘機は、敵のレーダーや誘導システムを妨害する能力を備えている。これらの機体は高度なジャミングポッドや電子支援対策(ESM)を搭載し、敵のBVR攻撃を無効化することを目的としている。

 2. 米軍の対応

 米軍も電子戦対策を進めており、特にEA-18Gグラウラーや新型のEWシステムを用いて対抗している。

 米中戦闘機の比較

 1. ステルス性能

 米国のF-22、F-35は高度なステルス性を備えているのに対し、中国のJ-20のステルス性はそれより劣るとされる。ただし、J-20は改良型WS-15エンジンを搭載し、非アフターバーナー超音速巡航が可能になりつつある。

 2. 作戦範囲

 J-20の戦闘行動半径はF-22やF-35の約2倍とされており、特に太平洋戦域において持続的な作戦が可能である点が強みとされる。

 米軍の航空戦力の課題

 1. 低下する戦闘機稼働率

 米空軍の戦闘機の稼働率は低下しており、2024年には以下のような状況になっている。

 ・F-22:52% → 40.19%
 ・F-35A:51.4%(横ばい)
 ・F-15E:33% → 52.9%
 ・F-15EX(新型):83.13%

 特にF-22の稼働率低下が顕著であり、部品不足や維持費の増大が要因とされる。

 2. 戦闘機の不足

 米空軍は2024年時点で55個戦闘機飛行隊を保有しているが、これは湾岸戦争(1991年)の134個飛行隊から大幅に減少している。

 一方で、中国は年間100機のJ-20を生産しており、米国のF-22(187機固定)の戦力と比較して大きな差がある。

 3. F-35の調達削減

 F-35プログラムは2兆ドルものコスト増、ソフトウェア問題、サイバー脆弱性、保守費用の増加などにより調達が削減されている。この結果、米軍の航空戦力維持が困難になりつつある。

 米軍の対策

 1. 無人戦闘機の導入

 米軍は安価な無人戦闘機(Off-the-Shelf UAVs)**の導入を検討しており、これにより数的劣勢を補う計画を進めている。

 2. 太平洋戦域での戦略展開

 F-22の嘉手納基地(日本)からの運用、F-35Bの短距離離着陸能力による前線拠点からの作戦展開、F-35Cの空母運用を組み合わせ、中国の軍事行動を牽制する。

 結論

 AIM-260A JATMは米軍の空対空戦闘能力を強化するが、中国もPL-17や極超音速ミサイル、電子戦能力を駆使して対抗しつつある。米軍は戦闘機の数的不足や稼働率の低下に直面しており、無人機の導入や戦略的運用によって優位を確保しようとしている。

【要点】

 AIM-260A JATMと米中の航空戦力競争

 AIM-260A JATMの特性と開発状況

 1.射程と速度

 ・AIM-120D-3(約190km)を上回る長射程を持つ可能性が高い。
 ・空気抵抗を抑えた形状と強化された推進システムを採用。

 2.誘導技術

 ・マルチモード誘導(地上レーダー、衛星、航空機からの情報連携)。
 ・電子妨害(EW)耐性の強化。

 3.ステルス機との適合

 ・F-22、F-35への搭載を前提。
 ・無人戦闘機(CCA)との統合も想定。

 4.運用開始時期

 ・現在試験段階、詳細な導入時期は非公開。

 中国の空対空ミサイル開発(PL-17など)

 1.PL-17の特徴

 ・大型の長距離空対空ミサイル。
 ・AWACS(早期警戒機)、空中給油機(HVA)の無力化を目的とする。
 ・デュアルパルスロケットモーターによる長射程化。
 ・AESAレーダー誘導、推力偏向制御(TVC)を採用。

 2.超音速・極超音速ミサイル

 ・中国はマッハ9に達する極超音速空対空ミサイルを開発中。
 ・ステルス爆撃機(B-21レイダー)への対抗を想定。
 
 電子戦(EW)による対抗策

 1.中国の電子戦能力

 ・Y-9DZ電子戦機、J-16D電子戦機による妨害。
 ・高度なジャミングポッドや電子支援対策(ESM)を搭載。

 2.米軍の対応

 ・EA-18Gグラウラーなどで対抗。
 ・F-35の電子戦システム強化を進める。

 米中戦闘機の比較

 1.ステルス性能

 ・F-22、F-35の方がJ-20より優れているとされる。
 ・J-20はWS-15エンジン搭載により非アフターバーナー超音速巡航が可能。

 2.作戦範囲

 ・J-20の戦闘行動半径はF-22やF-35の約2倍。
 ・太平洋戦域での持続的な作戦能力を強化。

 米軍の航空戦力の課題

 1.戦闘機の稼働率低下

 ・F-22の稼働率:52% → 40.19%
 ・F-35Aの稼働率:51.4%(横ばい)
 ・F-15Eの稼働率:33% → 52.9%
 ・F-15EXの稼働率:83.13%

 2.戦闘機の数的不足

 ・1991年:134個戦闘機飛行隊 → 2024年:55個戦闘機飛行隊
 ・中国は年間100機のJ-20を生産。
 ・米空軍の戦力維持が困難になりつつある。

 3.F-35の調達削減

 ・2兆ドルのコスト増、ソフトウェア問題、サイバー脆弱性が影響。

 米軍の対策

 1.無人戦闘機(CCA)の導入

 ・安価な無人機(Off-the-Shelf UAVs)の導入を検討。
 ・人員・コストの負担軽減を狙う。

 2.太平洋戦域での戦略展開

 ・F-22の嘉手納基地(日本)からの運用。
 ・F-35Bの前線拠点展開、F-35Cの空母運用による対抗。

 結論

 ・AIM-260A JATMは米軍の空対空戦闘能力を強化するが、中国もPL-17や極超音速ミサイル、電子戦能力を駆使して対抗。
 ・米軍は戦闘機の数的不足や稼働率低下に直面しており、無人機導入や戦略的運用で優位を確保しようとしている。

【引用・参照・底本】

New US missile aims to pierce China’s rising air power ASIA TIMES 2025.03.01
https://asiatimes.com/2025/03/new-us-missile-aims-to-pierce-chinas-rising-air-power/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=847ee35c7d-WEEKLY_09_03_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-847ee35c7d-16242795&mc_cid=847ee35c7d&mc_eid=69a7d1ef3c

「首を絞める縄」を締めると警告2025年03月12日 12:44

Microsoft Designerで作成
【概要】

 中国軍は9日、台湾の独立運動が激化すれば「首を絞める縄」を締めると警告した。これは、中国が台湾を自国の領土の一部と見なし、分離主義と位置付けていることに基づく発言である。陸軍報道官のWu Qian氏は、中国最大の政治会議である「両会」の期間中にこの発言を行った。

 国営通信社の新華社によると、Wu氏は「『台湾独立』分裂勢力が横行すればするほど、その首に巻きつく縄はより締まり、頭上の剣はより鋭くなる」と述べた。また、「人民解放軍は分裂主義に対抗し、統一を促進する行動の主体である」と強調した。

 さらにWu氏は「崖の端まで馬を走らせたが、背後にはまだ陸地がある。誤った道を進み続ければ行き止まりに至る」と警告した。

 台湾の頼清徳総統は、台湾が法的な独立を追求する意図はないと繰り返し表明しているが、2017年に自身を「実務的な台湾独立工作者」と表現したことから、中国政府は彼を「強硬な分裂主義者」と見なしている。

 Wu氏の発言は、中国の「両会」期間中に行われたものであり、これに先立ち中国政府は2025年の国防予算を前年比7.2%増加させると発表している。これは中国軍の急速な近代化の一環として位置付けられている。

【詳細】 

 中国軍の台湾への警告と背景

 中国軍は2025年3月9日、台湾の独立運動が激化すれば「首を絞める縄」を締めると警告した。この発言は、中国が台湾を自国の領土の一部とみなし、分離主義を許容しないとの立場を明確に示したものである。中国人民解放軍(PLA)の報道官であるWu Qian氏は、中国最大の政治会議「両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)」の期間中に記者会見を開き、台湾に対する強硬な姿勢を改めて表明した。

 Wu Qian報道官の発言

 新華社通信の報道によると、Wu Qian氏は次のように発言した。

 「『台湾独立』分裂勢力が横行すればするほど、その首に巻きつく縄はより締まり、頭上の剣はより鋭くなる」
 
 「人民解放軍は分裂主義に対抗し、統一を促進する行動の主体である」
「崖の端まで馬を走らせたが、背後にはまだ陸地がある。誤った道を進み続ければ行き止まりに至る」

 これらの発言は、台湾の独立運動に対する警告として発せられたものであり、軍事的圧力を高める可能性を示唆している。

 中国の台湾政策と軍事的圧力

 中国政府は、台湾を「不可分の領土」と位置付けており、台湾が独立に向かうことを「分裂行為」とみなしている。特に、蔡英文政権下では、台湾が国際的な場での発言力を強める動きを見せ、中国との関係が悪化した。頼清徳(Lai Ching-te)総統も「法的な独立を追求する意図はない」と発言しているが、過去に自らを「実務的な台湾独立工作者」と称したことがあるため、中国政府は彼を「強硬な分裂主義者」とみなしている。

 中国は過去数年にわたり、台湾周辺での軍事演習を頻繁に実施し、航空機や艦艇を派遣することで圧力を強めてきた。2022年8月には、当時の米国下院議長ナンシー・ペロシ氏が台湾を訪問したことに反発し、中国軍は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。2023年4月には、台湾の蔡英文総統(当時)が米国訪問後に中国が「連合演習」を行い、台湾封鎖を想定した演習を実施した。

 2025年の国防予算増額と軍備拡張

 Wu Qian氏の発言は、中国の「両会」期間中に行われたものであり、これに先立ち中国政府は2025年の国防予算を前年比7.2%増加させると発表している。これは中国軍の急速な近代化の一環であり、台湾有事を想定した軍備拡張とも関連があるとみられる。

 中国の国防費は2020年以降、毎年6%から7%前後の増加を続けており、特に海軍と空軍の強化に重点が置かれている。中国は新型空母「福建」の試験運用を開始しており、台湾周辺での海上戦力を強化している。また、極超音速ミサイルやドローン技術の開発にも力を入れており、台湾やその支援国に対する抑止力を高めている。

 台湾側の反応と国際的影響

 台湾政府は、独立を正式に宣言する考えはないと繰り返し表明しているが、中国側の圧力に対抗するために米国や日本、その他の民主主義国との関係を強化している。米国は台湾関係法に基づき台湾への武器供与を続けており、2023年にはF-16V戦闘機や各種ミサイルの供与を決定している。

 また、日本も台湾有事を安全保障上の重要課題と位置付けており、2023年12月には沖縄周辺での自衛隊の防衛態勢を強化する方針を示した。中国の軍事的圧力が高まる中で、台湾海峡の緊張は今後も続くとみられる。

【要点】

 中国軍の台湾への警告と背景

 1. 事件の概要

 ・2025年3月9日、中国人民解放軍(PLA)のWu Qian報道官が台湾の独立運動に関する警告を発表。
 ・「両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)」の期間中に記者会見を実施。
 ・「台湾独立」勢力が活発化すれば、「首を絞める縄を締める」と発言。

 2. Wu Qian報道官の発言(新華社通信より)

 ・「台湾独立勢力が横行するほど、その首に巻きつく縄は締まり、頭上の剣は鋭くなる」
 ・「人民解放軍は分裂主義に対抗し、統一を促進する行動の主体である」
 ・「崖の端まで馬を走らせたが、背後にはまだ陸地がある。誤った道を進み続ければ行き止まりに至る」

 3. 中国の台湾政策と軍事的圧力

 ・中国は台湾を「不可分の領土」とし、独立を「分裂行為」とみなす。
 ・頼清徳総統は「法的独立を求めない」と発言するも、中国は彼を「強硬な分裂主義者」と認識。
 ・中国軍は過去数年にわたり、台湾周辺で大規模な軍事演習を頻繁に実施。
 ・2022年のペロシ米下院議長訪台後、大規模演習を展開。
 ・2023年4月、蔡英文総統(当時)の米国訪問後に「連合演習」を実施。

 4. 2025年の国防予算増額と軍備拡張

 ・2025年の国防予算は前年比7.2%増加。
 ・海軍・空軍を中心に軍備拡張を継続。
 ・空母「福建」の試験運用を開始し、海上戦力を強化。
 ・極超音速ミサイルやドローン技術の開発を加速。

 5. 台湾側の反応と国際的影響

 ・台湾政府は「独立を正式に宣言する考えはない」と表明。
 ・米国は台湾関係法に基づき、F-16V戦闘機やミサイル供与を継続。
 ・日本は台湾有事を重要課題とし、沖縄周辺の防衛強化を決定。
 ・台湾海峡の緊張は今後も継続する見通し。

【引用・参照・底本】

China's military says it will tighten 'noose' around Taiwan if independence movement escalates FRNCE24 2025.03.09
https://www.france24.com/en/asia-pacific/20250309-china-s-military-says-it-will-tighten-noose-around-taiwan-if-independence-movement-escalates?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250309&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

岩屋毅外相が太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務総長と会談2025年03月12日 13:14

Microsoft Designerで作成
【概要】

 日本の外務省は月曜日、日本が太平洋諸島諸国との対話の枠組みを構築し、気候変動対策として300万ドルを提供することを発表した。これは、日本の岩屋毅外相が太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務総長であるバロン・デヴァヴェシ・ワカ氏と会談したことを受けたものである。

 日本政府の公式声明には中国に関する言及はないが、日本の読売新聞は会談前の時点で、今回の取り組みが中国の影響力拡大に対抗する目的であるとする記事を3本掲載した。

 専門家は、読売新聞の報道について、中国を対立する相手として描くことは日本の一部メディアの慣習的な思考の表れであり、適切ではないとの見解を示している。また、中国は常に他国との協力に対して開かれた包括的な姿勢を取っていると指摘している。

 日本外務省によれば、岩屋外相は外務省の招待により訪日したワカ氏と月曜日の午前中に会談を行った。

 会談において、岩屋外相は日本が気候変動対策の一環として「太平洋レジリエンス基金(PRF)」に300万ドルを拠出する決定を伝えた。さらに、日本とPIF事務局の間で高級実務者対話を開始し、協力関係を強化することで合意した。

 日本政府の公式発表では中国に関する直接的な言及はなかったが、読売新聞は土曜日と日曜日に計3本の記事を掲載し、日本のPIF事務局との対話枠組みの設立は、中国の太平洋諸島諸国における影響力拡大に対抗するためのものであると報じた。

 読売新聞の日曜日の記事では、中国が大規模なインフラ開発支援を通じて地域における影響力を高めていると指摘した。また、土曜日の記事では、2022年にソロモン諸島が中国と安全保障協定を締結し、中国軍の駐留を可能にする内容であると報じた。この協定は、日本にとって安全保障上の懸念を引き起こす要因となっていると述べている。

 中国国際問題研究院の研究員であるXiang Haoyu氏は、米国の戦略的縮小を背景に、日本は経済的手段を活用して南太平洋地域における地政学的影響力を拡大しようとしていると指摘する。その主な目的は、中国の影響力を抑制することであると述べている。

 Xiang氏は、読売新聞がこの問題をセンセーショナルに取り上げたことは、日本の一部メディアが地政学的なゼロサム思考やブロック対立の視点を持っていることを示していると指摘している。また、米国の国際援助の削減が日本の危機感を高め、ワシントンの後退による空白を埋めようとする動きを加速させているとの見解を示している。

 さらにXiang氏は、読売新聞の中国軍駐留に関する主張は根拠がないとし、中国とソロモン諸島の安全保障協定は公開されており、その内容や範囲は明確であると述べた。この協定は特定の第三国を対象としたものではなく、地域の安全保障に対する脅威にはならないと説明している。

 東中国師範大学アジア太平洋研究センターの執行理事であるChen Hong氏は、読売新聞の中国に関する報道は偏った視点に基づいていると指摘している。

 陳氏によれば、中国は南太平洋地域外の国々との協力にも常に開かれた姿勢を取っており、地域の経済発展や人々の生活向上に貢献することを目指していると述べている。

【詳細】 

 日本政府の発表内容と背景

 日本の外務省は、岩屋毅外相が太平洋諸島フォーラム(PIF)のバロン・デヴァヴェシ・ワカ事務総長と会談し、日本が「太平洋レジリエンス基金(PRF)」に300万ドルを拠出する決定を発表したと明らかにした。

 この支援の目的は、気候変動による影響を受けやすい太平洋諸島諸国の気候変動対策を支援することである。PRFは、太平洋諸島諸国が自然災害や環境変化に対処できる能力を強化するために設立された基金であり、日本はこれを通じて地域の安定と持続可能な発展を促進しようとしている。

 さらに、日本とPIF事務局の間で高級実務者対話を立ち上げることで合意し、定期的な協議を通じて地域の課題に協力して取り組む方針を確認した。

 日本政府の公式発表では、中国に関する言及は一切なかった。しかし、日本の読売新聞は、この取り組みが中国の影響力拡大を抑制する狙いを持つものであるとする記事を複数掲載した。

 読売新聞の報道内容

 読売新聞は、3月9日(日)と3月8日(土)に、日本政府の動きを「中国の影響力拡大に対抗するための措置」とする記事を3本掲載した。その内容は以下のようなものである。

 1.中国の影響力拡大の懸念

 ・読売新聞は、近年中国が太平洋諸島諸国で大規模なインフラ支援を進めていると指摘し、特に道路、港湾、空港の建設プロジェクトを通じて経済的・政治的影響力を拡大していると報じた。
 ・また、中国の国有企業が現地での経済プロジェクトを推進する一方で、債務負担の増加が問題視されているとした。

 2.ソロモン諸島の安全保障協定と日本の懸念

 ・2022年にソロモン諸島が中国と安全保障協定を締結したことに関して、読売新聞は「中国軍の駐留が可能になる可能性がある」と指摘した。
 ・同協定が締結された際、日本やオーストラリア、米国は懸念を示しており、日本政府関係者も「地域の安定に影響を与える可能性がある」としていると報じた。

 3.日本の対応と戦略

 ・読売新聞によれば、日本政府は米国の国際援助削減に伴い、南太平洋地域での影響力を高める必要があると認識している。
 ・日本の外務省関係者は、今回のPIFとの対話枠組みの設立は、中国の動きに対抗する一環であると非公式に認めているとした。

 中国側の専門家の見解

 読売新聞の報道に対し、中国の専門家は「中国を対立構造の中で描くことは誤った思考である」と批判している。

 1. Xiang Haoyu氏(中国国際問題研究院)

 ・「日本の一部メディアは、地政学的なゼロサム思考に基づいて報道している」と指摘。
 ・「米国が国際援助を縮小したことで、日本がその空白を埋めようとしているが、中国の正当な外交や経済協力を対抗措置のように描くのは不適切である」と述べた。
 ・また、「ソロモン諸島の安全保障協定に関する報道は誤解を招くものであり、中国軍の駐留についての主張は根拠がない」と主張した。

 2. Chen Hong氏(東中国師範大学アジア太平洋研究センター)

 ・「中国は南太平洋諸国に対して、開かれた協力関係を推進しており、経済発展と人々の生活向上を目指している」と述べた。
 ・「中国の支援は透明性があり、地域の発展に寄与するものであり、日本の一部メディアが対立の構図で描くのは偏った見方である」と指摘した。

 総括

 今回の日本政府の発表は、太平洋諸島諸国との協力強化を目的としたものであり、公式声明には中国を牽制する意図は示されていない。しかし、日本の読売新聞は、中国の影響力拡大を警戒する視点から、日本の動きを「対抗措置」とする記事を掲載した。

 中国側の専門家は、日本の一部メディアの報道姿勢を批判し、中国の協力は開かれたものであり、対立を煽る報道は誤った認識を助長すると指摘している。

 今後、日本が太平洋諸島諸国との協力をどのように進めていくのか、また、地域における中国の影響力の変化がどのように報じられるのかが注目される。

【要点】

 日本政府の発表内容

 ・日本の外務省は、太平洋レジリエンス基金(PRF)に300万ドルを拠出すると発表。
 ・気候変動対策支援を目的とし、太平洋諸島諸国のレジリエンス(回復力)向上を支援。
 ・PIF(太平洋諸島フォーラム)との高級実務者対話を新設し、定期的な協議を実施。
 ・公式声明では中国への言及なし。

 読売新聞の報道内容

 1. 中国の影響力拡大を警戒

 ・中国は太平洋諸国でインフラ支援を推進(道路・港湾・空港建設)。
 ・経済的・政治的影響力が拡大しており、債務負担の増加が懸念される。

 2. ソロモン諸島の安全保障協定

 ・2022年、ソロモン諸島が中国と安全保障協定を締結。
 ・中国軍の駐留の可能性が指摘され、日本・米・豪が懸念。

 3. 日本の対応と戦略

 ・米国の国際援助縮小に伴い、日本は影響力拡大を狙う。
 ・日本の外務省関係者は「中国の動きに対抗する一環」と非公式に認める。

 中国側専門家の見解

 ・1. Xiang Haoyu氏(中国国際問題研究院)

 ・「日本メディアはゼロサム思考で報道している」と批判。
 ・「中国の協力は正当な外交であり、日本の対抗措置と描くのは不適切。」
 ・「ソロモン諸島の安全保障協定に関する誤解がある。」

 2. Chen Hong氏(東中国師範大学)

 ・「中国は開かれた協力を推進し、地域発展に貢献している。」
 ・「日本の一部メディアは対立を煽っている。」

 総括

 ・日本政府の公式発表には中国牽制の意図は明示されていない。
 ・読売新聞は、日本の動きを「中国の影響力拡大への対抗策」と報道。
 ・中国側は「対立構図で描くのは誤り」と批判。
 ・今後、日本の太平洋政策と中国の影響力の変化に注目。

【引用・参照・底本】

Japanese media’s portrayal of China’s co-op with Pacific Islands shows erroneous mindset: expert GT 2025.03.10
https://www.globaltimes.cn/page/202503/1329848.shtml

岩屋外務大臣とワンガ太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長との会談 日本外務省 2025(R7).03.10
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01867.html

ワンガ・太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長の訪日 外務省 2025.03.06
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01846.html

岩屋外相とPIF事務局長との会談2025年03月12日 13:50

Microsoft Designerで作成
【概要】

 岩屋外務大臣とワンガ太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長との会談

 令和7年3月10日午前11時20分から約30分間、岩屋毅外務大臣は、閣僚級招へいのスキームで訪日中のバロン・ディバベシ・ワンガ太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長(Hon. Mr. Baron Devavesi Waqa, Secretary General, Pacific Islands Forum)と会談を行った。その概要は以下のとおりである。

 冒頭、岩屋外務大臣は、PIF事務局の役割が地域の平和、安定、繁栄にとって極めて重要であることを強調し、ワンガ事務局長と連携を強化しつつ、共に地域の課題に対応していきたい旨を述べた。これに対し、ワンガ事務局長は、日本による太平洋島嶼国地域への協力に対して、日本政府及び日本国民への謝意を示すとともに、今後とも日本との連携を強化していきたいとの考えを表明した。

 また、岩屋外務大臣は、太平洋島嶼国の強靱化がインド太平洋地域の安定の鍵であるとの認識の下、太平洋島嶼国にとって「存続に関わる唯一最大の脅威」である気候変動への対応として、日本が「太平洋強靱化ファシリティ(PRF)」に3百万米ドルの拠出を決定したことを伝達した。その上で、この拠出が昨年7月の第10回太平洋・島サミット(PALM10)のコミットメントが着実に履行されていることの好例であると説明した。これに対し、ワンガ事務局長は、日本によるPRFへの拠出を、太平洋島嶼国が直面する気候変動危機への日本の真剣な取組の証左として高く評価した。

 さらに、岩屋外務大臣は、日本が太平洋島嶼国地域の一体性及びそれを体現するPIFの「2050年戦略」を強力に支持していることを伝達した。両者は、日本と太平洋島嶼国地域との協力関係をより強固なものとするため、日本とPIF事務局との間で意思疎通を緊密化するための高級事務レベルの対話を立ち上げることを確認した。

 また、ALPS処理水の海洋放出について、岩屋外務大臣は、安全性が確保されていることを説明するとともに、本年、国際原子力機関(IAEA)を通じて太平洋島嶼国を対象としたモニタリング能力構築支援を実施予定であることを伝達した。また、今後も科学的根拠に基づき透明性をもって対応し、安心感を高めていく方針を説明した。これに対し、ワンガ事務局長から、日本の取組に対する理解が示された。

 このほか、両者は地域情勢についても意見交換を行った。

【詳細】 

 岩屋外務大臣とワンガ太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長との会談の詳細

 1. 会談の概要

 令和7年3月10日、午前11時20分から約30分間、岩屋毅外務大臣は、訪日中のバロン・ディバベシ・ワンガ太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長(Hon. Mr. Baron Devavesi Waqa)との会談を行った。この会談は、PIF事務局長が日本を訪問する際の閣僚級招へいの一環として実施された。

 2. 会談の内容

 ・冒頭の発言

 岩屋外務大臣は、太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務局の役割が地域の平和、安定、繁栄にとって極めて重要であり、特に日本としては、PIFとの連携を強化し、共に地域の課題に取り組んでいきたいという意向を示した。岩屋大臣は、PIFが掲げる目標に対して日本が果たすべき役割の重要性を強調し、両者が共に協力しあって地域の問題に取り組むことを表明した。

 これに対し、ワンガ事務局長は、日本による太平洋島嶼国地域への協力について感謝の意を表し、今後も日本との連携を一層強化していくべきだとの考えを示した。ワンガ事務局長は、日本と太平洋諸島諸国の関係がこれまでの努力により非常に良好であることを認め、今後の協力の重要性を再確認した。

 ・気候変動対策と強靱化

 岩屋外務大臣は、太平洋島嶼国の強靱化(レジリエンス強化)がインド太平洋地域の安定にとって極めて重要な要素であると述べた。特に、太平洋島嶼国が直面する「存続に関わる唯一最大の脅威」として気候変動を挙げ、日本がその対策に取り組んでいることを説明した。

 日本は、太平洋強靱化ファシリティ(PRF)への3百万米ドルの拠出を決定しており、この措置が昨年7月の第10回太平洋・島サミット(PALM10)でのコミットメントを着実に実行に移している一例であることを伝えた。岩屋大臣は、これが日本の真剣な気候変動対策の一環であることを強調した。

 ワンガ事務局長は、この日本の拠出を非常に高く評価し、特に太平洋島嶼国が直面する気候変動の危機に対する日本の真摯な取り組みを強く支持した。また、PRFに対する日本の拠出が、太平洋諸国にとって非常に価値あるものであると認識し、感謝の意を表した。

 ・PIF「2050年戦略」の支持

 岩屋大臣は、日本が太平洋島嶼国地域の一体性と、それを体現するPIFの「2050年戦略」を強力に支持していることを確認した。PIFの「2050年戦略」は、太平洋地域の未来に関する重要なビジョンであり、日本としてはこの戦略が実現するための支援を惜しまないという立場を改めて表明した。

両者は、さらに日本とPIF事務局の間で意思疎通を密にするため、定期的な高級事務レベルの対話を立ち上げることを確認した。これにより、両者の協力関係をさらに強化し、太平洋島嶼国地域における重要な課題に対して迅速かつ効果的に対応できる体制を作ることを目指した。

 ・ALPS処理水の海洋放出に関する説明

 会談では、ALPS処理水の海洋放出についても言及された。岩屋外務大臣は、この放出が安全性を確保した上で行われることを説明し、国際原子力機関(IAEA)を通じて、太平洋島嶼国に対してモニタリング能力構築の支援を実施予定であることを伝達した。日本はこの問題に関して、科学的根拠に基づき透明性をもって対応し、太平洋島嶼国の安心感を高めていくことを約束した。

 ワンガ事務局長は、日本の取組に理解を示し、太平洋諸国に対する日本の説明と対応を評価した。ALPS処理水の海洋放出に関しては、科学的な証拠に基づいた対応が重要であるとの認識を共有した。

 ・地域情勢についての意見交換

 両者は、地域情勢についても意見交換を行った。特に、太平洋諸島国に影響を与える経済的、環境的、政治的な問題について協議し、今後の協力の方向性について意見を交換した。

 3. 結論

 会談の結果、岩屋外務大臣とワンガ事務局長は、今後の日本と太平洋島嶼国地域との協力強化に向けて、具体的なステップを踏むことを確認した。また、両者は、日本とPIF事務局との間での高級事務レベルの対話を立ち上げることで、協力関係をより一層深化させることに合意した。

【要点】

 1.会談日時と参加者

 ・令和7年3月10日、午前11時20分から約30分間
 ・岩屋毅外務大臣とバロン・ディバベシ・ワンガ太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長

 2.会談の主な内容

 (1)PIF事務局の役割

 ・岩屋大臣は、PIF事務局の役割が地域の平和、安定、繁栄に重要であり、連携強化の意向を表明。
 ・ワンガ事務局長は、日本による協力に感謝し、今後も連携強化を希望。

 (2)気候変動対策

 ・岩屋大臣は、太平洋島嶼国にとって気候変動が最大の脅威であり、日本は「太平洋強靱化ファシリティ(PRF)」に3百万米ドルを拠出。
 ・ワンガ事務局長は、日本の真摯な取り組みを高く評価。

 (3)PIF「2050年戦略」の支持

 ・岩屋大臣は、日本がPIFの「2050年戦略」を強力に支持していることを表明。
 ・両者は、意思疎通を密にするため、高級事務レベルの対話を立ち上げることを確認。

 (4)ALPS処理水の海洋放出

 ・岩屋大臣は、ALPS処理水の海洋放出の安全性と、IAEAを通じたモニタリング能力構築支援を伝達。
 ・ワンガ事務局長は、日本の取組に理解を示し評価。

 (5)地域情勢についての意見交換

 ・両者は、太平洋諸島国の経済的、環境的、政治的な課題に関する意見交換を実施。

 3.結論

 日本と太平洋島嶼国地域の協力を強化するため、高級事務レベルの対話を立ち上げ、協力関係を一層深化させることを確認。

【引用・参照・底本】

岩屋外務大臣とワンガ太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長との会談 外務省 2025.03.10
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01867.html

ワンガ・太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局長の訪日 外務省 2025.03.06
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_01846.html

太平洋諸島フォーラム(PIF)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/pif/index.html

太平洋島嶼国と対話枠組み創設へ…政府、中国の巨額援助に対抗 読売新聞 2025.03.08
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20250308-OYT1T50105/

島嶼国に4億1700万円 政府拠出へ 気候変動など対話枠組み 読売新聞 2025.03.09
https://www.yomiuri.co.jp/shimen/20250308-OYT9T50187/

気候変動など対策費、島嶼国に4億1700万円拠出へ…影響力強める中国の6倍 読売新聞 2025.03.09
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20250308-OYT1T50219/

越水桃源ブログ 岩屋毅外相が太平洋諸島フォーラム(PIF)の事務総長と会談
https://koshimizu-tougen.asablo.jp/blog/2025/03/12/9760506

ウクライナ:トランプ政権が提案した30日間の停戦案を支持2025年03月12日 14:06

Microsoft Designerで作成
【桃源寸評】

 此の停戦案は所謂、米国とウクライナの喧嘩別れの"示談"の結果であり、冷たく言えば、ロシアは当事者となっていない…、無関係なのだ。 

【寸評 完】

【概要】

 ウクライナは、トランプ政権が提案した30日間の停戦案を支持することを表明した。この発表は、サウジアラビアのジェッダで行われた会談に続くもので、アメリカはウクライナへの軍事支援を再開し、情報共有の中断を解除することを決定した。これにより、停戦交渉に新たな進展が見られたが、停戦実現のためにはロシアの承認が必要であり、ロシア側からの公式なコメントはなかった。

 会談後、アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は、「今やロシア側に戦争を終わらせる責任がある」と述べ、ロシアが停戦を受け入れるかどうかに注目が集まっている。ウクライナは、ロシアが同様の行動を取ることを条件に、即時の停戦を受け入れる意向を示した。しかし、ロシアのプーチン大統領は、停戦を受け入れる条件としてウクライナのNATO加盟拒否などを求める可能性があり、無条件の停戦を受け入れる公算は低いと見られている。

 また、ウクライナとアメリカは、ウクライナの石油、天然ガス、鉱物資源開発に関する協定を速やかに締結することに合意した。この協定はウクライナの経済を拡大し、長期的な繁栄と安全を保障することを目的としている。

 会談では、人道支援活動や捕虜交換についても話し合われ、両国はウクライナ人民の勇気を称賛し、今こそ持続的な平和への第一歩を踏み出すべきだと認識を一致させた。

 ジェッダでの会談には、アメリカのルビオ国務長官とマイケル・ウォルツ国家安全保障担当補佐官が参加し、ウクライナ側はウラジーミル・ゼレンスキー大統領のチーフ・オブ・スタッフであるアンドリー・エルマク氏やアンドリー・シビハ外相、ルステム・ウメロフ国防相が出席した。ウクライナは、停戦に先立ち、セキュリティ保証を求めていたが、最終的な合意内容にはその保証についての言及はなかった。

【詳細】 

 ウクライナは、トランプ政権が提案した30日間の停戦案を受け入れる意向を示した。この決定は、サウジアラビアのジェッダで行われた会談後に発表されたもので、会談においてアメリカはウクライナへの軍事支援を再開し、情報共有の一時的中断を解除することを決定した。この進展により、停戦交渉は新たな局面を迎え、実現に向けた動きが加速することが期待されている。

 停戦案に関する共同声明では、ウクライナはロシアが同様に停戦を受け入れることを前提として、即時の30日間の停戦を支持する意向を示したとされている。また、アメリカは「ロシアの相互的な対応が平和実現の鍵である」と述べ、停戦が成立するためにはロシアの協力が必要であることを強調した。しかし、ロシアからの公式なコメントはなかった。ロシア政府は、この提案に関して何も発表していない。

 アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は、会談後に「今、ロシアに圧力をかけて戦争を終わらせる番だ」と述べ、停戦が実現するかどうかはロシアの対応にかかっていると強調した。「ボールは今ロシア側にある」という表現で、停戦交渉がロシアの意思に委ねられていることを示唆した。

 一方、ロシアのプーチン大統領は、過去に停戦を受け入れる条件としてウクライナのNATO加盟拒否を強く要求する姿勢を見せており、無条件の停戦に同意する可能性は低いと見られている。プーチン大統領は、12月の年次記者会見で「停戦はウクライナ軍に休息や再訓練の機会を与えるだけだ。我々が求めているのは停戦ではなく、長期的で持続可能な平和だ」と述べており、停戦よりも平和の確立を優先する考えを示した。

 また、会談での重要な合意事項として、ウクライナとアメリカはウクライナの石油、天然ガス、鉱物資源の開発に関する契約を早急に締結することを確認した。この契約は、ウクライナの経済を拡大し、将来的な繁栄と安全を保障することを目的としており、アメリカはウクライナの経済支援にも積極的な姿勢を示している。この協定は、以前のホワイトハウスでの対立後に中断されていたが、再び進展を見せることとなった。

 さらに、ウクライナとアメリカは、停戦中の人道支援活動や捕虜交換に関する具体的な取り決めも行った。声明の中では、両国がウクライナ国民の勇敢な防衛を称賛し、今こそ持続的な平和に向けたプロセスを始めるべきだという共通の認識を示した。

 会談には、アメリカのルビオ国務長官とウォルツ国家安全保障担当補佐官が参加し、ウクライナ側はゼレンスキー大統領のチーフ・オブ・スタッフであるアンドリー・エルマク氏や外務大臣のアンドリー・シビハ氏、国防大臣のルステム・ウメロフ氏などが出席した。ウクライナは、停戦の条件としてセキュリティ保証を求めていたが、発表された共同声明にはその具体的な取り決めについての言及はなかった。しかし、ウォルツ補佐官は「長期的な安全保障と繁栄のためにどのような保証が必要かについても詳細に話し合われた」と述べ、停戦に向けた議論は広範囲にわたって行われたことがうかがえる。

 この停戦案が実現するかどうかは、最終的にはロシアの対応にかかっているが、ウクライナとしては、アメリカが軍事支援と情報共有を再開したことにより、停戦を受け入れる準備が整ったと考えている。

【要点】

 ・ウクライナの意向: ウクライナは、アメリカの提案する30日間の停戦案を受け入れる意向を示した。
 ・会談の背景: サウジアラビアのジェッダで行われた会談後に発表された。アメリカはウクライナへの軍事支援を再開し、情報共有の中断を解除する決定を下した。
 ・停戦案の内容: ウクライナはロシアが同様に停戦を受け入れる前提で、即時の30日間停戦を支持すると表明。
 ・アメリカの立場: アメリカは「ロシアの対応が平和実現の鍵」とし、停戦の実現にはロシアの協力が必要だと強調した。
 ・ロシアの反応: ロシアからは公式なコメントはなく、プーチン大統領は過去にウクライナのNATO加盟拒否を条件に停戦を提案していた。
 ・プーチンの発言: プーチン大統領は、停戦ではなく「持続可能な平和」を求める立場を示している。
 ・経済協力の合意: ウクライナとアメリカは、ウクライナの資源開発契約を早急に結ぶことを確認した。
 ・人道支援・捕虜交換: 停戦中の人道支援活動や捕虜交換に関する取り決めも行われた。
 ・会談参加者: アメリカ側にはルビオ国務長官、ウォルツ補佐官が、ウクライナ側にはゼレンスキー大統領のスタッフ、外務大臣、国防大臣などが参加。
 ・ウクライナの安全保障要求: ウクライナは停戦の条件としてセキュリティ保証を求めたが、声明にはその詳細はなかった。

【引用・参照・底本】

Ukraine Supports 30-Day Cease-Fire as U.S. Says It Will Resume Military Aid The new York Times 2025.03.11
https://www.nytimes.com/2025/03/11/world/europe/ukraine-us-saudi-cease-fire-talks.html