ゼレンスキーが選挙を操作する2025年04月01日 16:59

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【概要】

 アンドリュー・コリブコ氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領が再選を目指して出馬する場合、選挙で有利になる可能性のある戦略を持っているかもしれないと報じた。

 ゼレンスキー大統領は、選挙戦を意図的に短期間に設定し、夏の中頃に終了させることを考えている可能性がある。これにより、対立候補に十分な時間を与えず、有利な状況を作り出す狙いがあるという。この戦略は、ゼレンスキーがトランプ氏やプーチン氏に対して、自らの政権を維持するために必要だと感じていることに起因しているとされている。

 ゼレンスキーが再選を果たすために使う可能性のある手段として、ウクライナ軍の死亡者数が選挙人名簿に反映されていないことが指摘されている。ウクライナ政府は今年初めに約46,000人の兵士が亡くなったと発表したが、ロシア側はその数が10倍以上に達していると報じている。この数字の差異を踏まえると、ウクライナ政府が発表している公式な死亡者数は実際の数値に比べて大きく誤っている可能性が高いとされている。

 ウクライナ政府は、この死亡者数を公開し、選挙人名簿を更新することを避けている可能性がある。もし名簿が更新されれば、ゼレンスキーは再選を目指すために不正を働くことが難しくなるかもしれない。ゼレンスキー政権は、兵士の死亡者数を公表すれば士気が低下し、過去の虚偽の発表が明らかになるため、この数を隠し続ける必要があるという。

 また、ゼレンスキーが選挙を操作するためには、ウクライナ国内の腐敗した機関を利用してこの問題を隠し通すことが考えられる。選挙に関する不正行為を暴露する人物は、ウクライナの国家安全保障局(SBU)により逮捕される可能性が高いとされており、これが実行されるならば、ウクライナはすでに警察国家のような状態であることが指摘されている。

 アメリカ合衆国は、ウクライナの兵士の死亡者数に関する正式な推計を公開し、選挙人名簿をその実際の数字に基づいて更新することを選挙結果の承認の条件とすることが、ゼレンスキーにとって重要な問題になる可能性がある。これにより、ゼレンスキーはアメリカと対立するか、あるいは国内での信頼を失うかの選択を迫られることになる。

 選挙人名簿を適切に更新するには時間がかかる可能性があり、アメリカがこの過程を監督し、選挙不正のリスクを減らすことを求める場合、ゼレンスキーが計画しているよりも長い選挙戦となり、対立候補に有利に働くことが予想される。
 
【詳細】

 アンドリュー・コリブコ氏の報告によると、ウクライナのゼレンスキー大統領が再選を目指して出馬する場合、選挙を短期間で行うことで対立候補に不利な状況を作り出す可能性があるとされている。具体的には、ゼレンスキーは選挙キャンペーンを意図的に短縮し、夏の中頃には終了させることを計画しているかもしれないという。この戦略は、ゼレンスキーがトランプ氏やプーチン氏、あるいはその両者が自分を権力から排除しようとする懸念を抱いていることに関連していると考えられている。

 ゼレンスキーが再選を目指すために採る可能性のある手段として、ウクライナ軍の死亡者数が選挙人名簿に反映されていないことが指摘されている。ウクライナ政府は今年初めに約46,000人の兵士が亡くなったと発表したが、ロシア側の報告では、ウクライナ側の死者数はその10倍以上に達しているとされている。この大きな差異を踏まえると、ウクライナ政府が発表した死亡者数は実際の数に比べて大きく誤っており、もし死亡者数が選挙人名簿に反映されるならば、ゼレンスキーは選挙戦で不利になる可能性があるというだ。

 ウクライナ政府は、この事実を公開し、選挙人名簿を適切に更新することを避けている可能性がある。ウクライナの死亡者数が選挙人名簿に反映されると、ゼレンスキーは自らの再選を目指すために不正を働くことが難しくなるかもしれない。ゼレンスキー政府は、兵士の死亡者数を公表することで士気の低下や過去の虚偽の発表が暴露されることを避けるため、この問題を隠し続ける必要があるという立場にあるとされている。

 さらに、ゼレンスキーが選挙を操作するためには、ウクライナ国内の腐敗した機関を利用して選挙人名簿の不正を隠し通す可能性がある。もし選挙に関する不正行為を暴露しようとする人物が現れた場合、ウクライナの国家安全保障局(SBU)は「国家安全保障」の名目でその人物を逮捕する可能性が高いとされている。これにより、ウクライナは既に警察国家のような体制にあるという指摘がなされている。

 アメリカ合衆国は、ウクライナの兵士の死亡者数に関する正式な推計を公開し、選挙人名簿をその実際の数字に基づいて更新することを選挙結果の承認の条件として求めることができるとされています。これにより、ゼレンスキーはアメリカの要求に応じるか、あるいはアメリカと対立して選挙の過程を不正と見なされることを選ばなければならないという選択肢を迫られることになる。もしアメリカがこのプロセスを監督し、選挙不正のリスクを減らすために介入すれば、ゼレンスキーが計画している短期間の選挙キャンペーンが長期化し、その結果、対立候補にとって有利な状況が生まれる可能性があるとされている。

 最終的に、ゼレンスキーが再選を果たすためには、選挙における不正を隠蔽し、またアメリカや国際社会との対立を避ける必要があるという、複雑な政治的な選択を迫られることになる。このような状況は、ゼレンスキーの政権運営やウクライナの政治情勢に大きな影響を与えることが予想される。
  
【要点】 

 1.ゼレンスキーの再選戦略

 ・ゼレンスキーは選挙戦を短期間に設定し、夏の中頃に終了させることを計画している可能性がある。

 ・これにより、対立候補に十分な時間を与えず、選挙戦を有利に進める意図がある。

 2.ウクライナ軍の死亡者数

 ・ウクライナ政府は、今年初めに兵士約46,000人が死亡したと発表。

 ・しかし、ロシア側はその数が10倍以上に達していると報告。

 ・この差異により、ウクライナの実際の死者数は公式発表より大きい可能性がある。

 3.選挙人名簿の問題

 ・死亡者数が選挙人名簿に反映されていない場合、ゼレンスキーが再選するために不正を働く余地がある。

 ・もし名簿を更新すれば、ゼレンスキーは不正をしづらくなるため、死亡者数の公表を避けている可能性が高い。

 4.国内機関の腐敗と不正の隠蔽

 ・ゼレンスキー政権は、ウクライナ国内の腐敗した機関を利用して選挙人名簿の不正を隠蔽することが考えられる。

 ・不正行為を暴露しようとする人物は、国家安全保障局(SBU)により逮捕される可能性が高い。

 5.アメリカの介入

 ・アメリカはウクライナの兵士の死亡者数に関する公式推計を公開し、選挙人名簿の更新を選挙結果承認の条件にすることができる。

 ・ゼレンスキーは、アメリカと対立するか、選挙人名簿の更新に従うことで信頼を失うリスクを抱える。

 6.選挙の延長と対立候補への有利な影響

 ・アメリカが選挙人名簿の更新を監督すると、選挙戦が長引き、ゼレンスキーの短期的な選挙戦略に対立候補が有利になる可能性がある。

 7.ゼレンスキーの選択肢

 ・ゼレンスキーは、選挙における不正を隠蔽するか、アメリカの要求に従って選挙結果の信頼性を損なうかの選択を迫られる。

【引用・参照・底本】

Zelensky Might Have An Ace Up His Sleeve If He Decides To Run Again Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.31
https://korybko.substack.com/p/zelensky-might-have-an-ace-up-his?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=160244882&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

ソマリアのモハムード大統領の提案2025年04月01日 17:34

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【概要】

 ソマリアのハサン・シェイク・モハムード大統領がアメリカに対して、アデン湾の双用途施設(港湾と空港)に関して「排他的運用管理権」を提供したという報道を扱っている。しかし、問題はこれらの施設がソマリアのものではなく、ソマリランドとプントランドに所在していることである。ソマリランドは1991年に独立を再宣言し、プントランドは昨年、中央政府の憲法改正に抗議して連邦制度から離脱している。

コリブコは、モハムード大統領がトランプに対してアメリカのアドバイザーと援助を維持するよう訴えた後、この提案を行ったことを指摘している。また、アメリカがイエメンでフーシ派に対する戦略的爆撃キャンペーンを開始したことや、ソマリアでのISISへの爆撃、アル・シャバーブに対する支援といったアメリカの軍事行動とも関連がある。アメリカの情報機関がフーシ派とアル・シャバーブが連携しているという見解を示していることも触れているが、それが事実かどうかは不明であり、この情報はアメリカの地域戦略に影響を与えている。

コリブコはさらに、「プロジェクト2025」と呼ばれる、トランプ政権下の未来の計画がソマリランドをアメリカの地域的な軍事的利益のために認めるべきだと主張している点にも言及している。最近の噂では、アメリカとイスラエルがガザ地区の住民をソマリランドに移住させる計画を検討していたことがあるが、ソマリランドの外交使節団の開設が前提となっている。

 モハムード大統領がアメリカに対して急いで提案をした背景には、アメリカがソマリランドを認める可能性や、アメリカがソマリアからの撤退や援助の削減を行うことへの懸念があると考えられる。また、アメリカがソマリランドやプントランドとの間で軍事拠点を確保する代わりに、ジブチにあるアメリカの基地を維持し、中国の影響に対抗する可能性も示唆されている。

 結論として、ソマリアは実質的にはソマリランドとプントランドに対して軍事基地を提供する権限を持っておらず、これらの地域はソマリア政府の統治下にない。国際社会はソマリランドとプントランドをソマリアの一部として認めているが、アメリカが地域戦略を再調整する場合、これらの地域の状況が変わる可能性もあると考えられている。
 
【詳細】

 ソマリアのハサン・シェイク・モハムード(HSM)大統領がアメリカに対して、アデン湾にある双用途施設(港湾と空港)について「排他的運用管理権」を提供したという提案が紹介されている。この提案の背景には、いくつかの複雑な政治的、地域的な要素が絡んでいる。

 ソマリランドとプントランドの現状

 まず重要なのは、提案されている施設がソマリア本土ではなく、ソマリランドとプントランドという2つの地域に所在している点である。これらの地域は、ソマリアの中央政府とは異なる政治的立場を取っている。

 ・ソマリランド: ソマリランドは1991年にソマリアからの独立を再宣言したが、国際的には独立国家として認められていない。しかし、事実上は独自の政府、軍、警察を持ち、独立した政策を実行している。

 ・プントランド: プントランドは1998年に自治を宣言し、ソマリアの連邦制の中で独自の立場を確立しているが、ソマリア政府とは距離を置いている。特に、昨年にはソマリア政府の憲法改正に反対し、連邦制度から脱退した。

 したがって、モハムード大統領がアメリカにこれらの地域の施設を「提供する」としても、これらの地域がソマリア政府の直接的な支配下にないため、法的・政治的な問題が発生する。ソマリランドとプントランドがそれぞれ独自の政治的立場を取っている以上、ソマリア政府がこれらの地域の軍事施設を他国に提供することは、現実的には不可能に近い。

 モハムード大統領の提案とその背景

 モハムード大統領の提案が行われた背景には、いくつかの要因が考えられる。

 1.アメリカとの関係強化: モハムード大統領は、アメリカとの軍事的・経済的な関係を強化する必要性を感じている。彼はトランプ前大統領に対して、アメリカのアドバイザーと援助の維持を求める手紙を送った後、この提案を行った。この提案は、アメリカとの関係を維持するための一つの手段として位置付けられる。

 2.アメリカの地域戦略: アメリカはソマリアやその周辺地域における戦略的な利益を重視している。特に、アメリカはアル・シャバーブなどの過激派グループに対抗するためにソマリアでの軍事活動を行っており、アデン湾の戦略的な位置はアメリカの関心を集めている。モハムード大統領は、アメリカの支援を得るために、これらの重要な施設を提供しようとした可能性がある。

 3.ソマリランドとプントランドの独立性: さらに、モハムード大統領は、アメリカがソマリランドとプントランドを独立した地域として認めることを恐れている可能性がある。アメリカがこれらの地域の独立を認めることは、ソマリア政府の権限を弱めることにつながり、ソマリランドとプントランドの国際的な地位を強化することになるため、モハムード大統領にとってはそれを避けたいという意図があるかもしれない。

 アメリカの立場と戦略

 アメリカは、この提案に対してどのように反応するのかが重要な点である。アメリカの立場としては、ソマリランドとプントランドを公式に認めることは難しいだろう。アメリカはこれらの地域をソマリアの一部として認めているため、これらの地域の軍事施設に対する「排他的運用管理権」を得ることは、ソマリアの主権を侵害することになりかねない。

 また、アメリカはジブチに大きな軍事基地を持っており、この基地を維持することが地域戦略の中心である。もしアメリカがソマリランドやプントランドに新たな基地を設けることを決定すれば、それはジブチにおけるアメリカの影響力を弱めることになるかもしれない。そのため、アメリカがどのような選択をするかは、ジブチや中国の影響をどう扱うかに依存している。

 ソマリランドとプントランドの今後

 「プロジェクト2025」と呼ばれる計画に言及し、これがトランプ政権の再来の戦略である可能性を指摘している。この計画では、アメリカがソマリランドを戦略的に重要な地域として認めるべきだという意見が含まれている。このような動きが現実となれば、ソマリランドとプントランドの独立性はさらに強化され、ソマリアの中央政府の影響力が減少することになる。

 さらに、コリブコは、アメリカとイスラエルがガザ地区の住民をソマリランドに移住させるという噂も紹介しており、これがソマリランドの地政学的な重要性をさらに高める可能性があることを示唆している。しかし、これについては、ソマリランドが外交使節団の開設を前提としていることから、現段階では実現には至っていない。

 結論

 モハムード大統領の提案は、ソマリランドとプントランドがソマリア政府の直接的な支配下にない現状を無視したものであり、これらの地域がアメリカに軍事施設を提供する権限を持っていないことは明白である。アメリカがどのようにこの提案に応じるかは、アメリカの地域戦略、特に中国やジブチとの関係をどう扱うかに大きく依存している。ソマリア政府がこれらの地域の主権を確保するためには、ソマリランドとプントランドとの関係を調整する必要があるが、これがうまくいくかどうかは不透明である。
  
【要点】 

 1.モハムード大統領の提案

 ・ソマリアのハサン・シェイク・モハムード大統領がアメリカに、アデン湾にある双用途施設(港湾・空港)に対して「排他的運用管理権」を提供する意向を示した。

 2.ソマリランドとプントランドの現状

 ・ソマリランドは1991年にソマリアからの独立を再宣言し、事実上独立した国家として機能しているが、国際的に独立が認められていない。

 ・プントランドは1998年に自治を宣言し、ソマリアの連邦制から一定の距離を置いている。

 ・モハムード大統領の提案は、これらの地域がソマリアの政府の支配下にないため、実行が困難である。

 3.モハムード大統領の目的

 ・アメリカとの軍事的・経済的関係を強化するため、アメリカの支援を得ようとした可能性がある。

 ・ソマリランドとプントランドの独立を認められることを恐れ、アメリカとの関係を維持したいと考えている。

 4.アメリカの立場

 ・アメリカは、ソマリランドとプントランドをソマリアの一部として認めており、これらの地域の独立を正式に認めることはないだろう。

 ・ソマリランドやプントランドへの軍事拠点設置は、ジブチにあるアメリカの軍事基地に影響を与える可能性があるため、アメリカの戦略には慎重な対応が求められる。

 5.プロジェクト2025

 ・「プロジェクト2025」はトランプ政権の再来を示唆する計画であり、その中でアメリカがソマリランドを戦略的に認めるべきだとする意見が含まれている。

 6.ソマリランドとプントランドの地政学的役割

 ・ソマリランドとプントランドが今後、ソマリア政府との関係を調整し、独立性を強化する可能性がある。

 ・ガザ地区の住民移住に関する噂もあり、ソマリランドの地政学的な重要性が増している。

 7.結論

 ・ソマリア政府はソマリランドとプントランドの軍事施設に対する権限を持っていないため、モハムード大統領の提案は現実的ではない。

 ・アメリカがこの提案にどう対応するかは、ジブチや中国との関係をどのように扱うかに依存している。

【引用・参照・底本】

Berbera’s & Bosaso's Dual-Use Facilities Aren’t Somalia’s To Give To The US Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.31
https://korybko.substack.com/p/berberas-and-bosasos-dual-use-facilities?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=160235741&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

バングラデシュの暫定指導者ムハンマド・ユヌスの発言2025年04月01日 19:21

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【概要】

 バングラデシュの暫定指導者ムハンマド・ユヌスが最近の中国訪問中に行った発言をめぐる議論について述べている。特に、彼がインド北東部を「陸に閉ざされた国」と表現し、それを中国経済の一部として統合する可能性について言及したことが注目されている。これに対する解釈は二つに分かれる。

 第一の解釈は、ユヌスの発言が単なる誤りであり、意図的な敵対行為ではないとするものである。この見方によれば、彼の発言はバングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊(BCIM)の復活を示唆している可能性がある。かつてこの回廊は中国の「一帯一路」構想の一環として計画されていたが、インドはパキスタン支配下のカシミールを通過する中国・パキスタン経済回廊(CPEC)への抗議として、この構想から事実上撤退した経緯がある。ユヌスの発言をこの文脈で捉えれば、バングラデシュは北東インドを通じて中国と世界をつなぐ貿易のハブとしての役割を果たそうとしていることになる。この場合、「海への唯一の門戸」という発言は、インドに対する脅威ではなく、貿易促進のための構想と見ることができる。

 第二の解釈は、ユヌスの発言がバングラデシュの敵対的意図を示しているとするものである。彼が北東インドを「国」と呼んだのは単なる言い間違いではなく、バングラデシュが過去に支援していたインド指定の分離独立派武装勢力を再び受け入れる可能性を示唆していると考えられる。この場合、中国やパキスタンの支援を受けた「ハイブリッド戦争」の一環として、バングラデシュがインド北東部の不安定化を狙っている可能性がある。さらに、バングラデシュ暫定政権はインドを洪水の原因と非難し、国内のヒンドゥー教徒を弾圧しており、新たな米国家情報長官トゥルシー・ギャバードの批判を招いている。また、一部のバングラデシュ当局者は北東インドを自国領とするかのような地図を公表し、パキスタンとの軍事・外交関係の復活を進めている。このような状況を踏まえると、インドがバングラデシュの意図を疑うのは妥当である。

 このため、インドはバングラデシュとの国境警備を強化し、対バングラデシュ政策の見直しを進める可能性が高い。また、北東インドの経済発展を加速させることで、外部勢力による地域の不安定化を防ぐことも考えられる。結果として、インドはバングラデシュを「友好国」としてではなく、「警戒すべき隣国」として扱う方向にシフトする可能性がある。
 
【詳細】

 バングラデシュの暫定指導者ムハンマド・ユヌスの発言とその影響

 バングラデシュの暫定指導者であるムハンマド・ユヌスが、中国訪問中にインドの北東部について言及した発言が波紋を呼んでいる。彼の発言は、インドの安全保障や地域の地政学に影響を与える可能性があるため、慎重に分析する必要がある。

 ユヌスは、中国での会談中に次のように発言した。

 「インドの東部にある七つの州、通称『セブン・シスターズ』は、陸に閉ざされた国(landlocked country)であり、インド洋へのアクセスがない。我々バングラデシュだけが、この地域にとって海への唯一の門戸である。このことは大きな可能性をもたらす。これらの地域を中国経済の一部とし、モノを生産し、輸送し、市場に供給することができる。」

 この発言がインド国内で物議を醸している理由は、以下の二点である。

 1.インド北東部を「陸に閉ざされた国」と表現したこと

 2.中国経済への統合を示唆したこと

 これをどう解釈するかによって、インドの対応が変わることになる。

 第一の解釈:経済協力の視点

 ユヌスの発言を前向きに解釈すれば、これはバングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊(BCIM)の復活を示唆したものと考えられる。BCIM経済回廊は、「一帯一路」構想の一環として、中国・バングラデシュ・インド・ミャンマーを結ぶ貿易ルートとして計画されたが、インドが撤退したことで事実上停止している。

 この解釈に基づけば、ユヌスはバングラデシュがインド北東部の発展に貢献できると考えていることになる。彼の発言は、

 ・インド北東部とバングラデシュを経由した貿易ルートの活性化

 ・バングラデシュの港を利用した経済発展の促進

 ・中国市場との結びつきの強化を意図したものと解釈できる。

 また、バングラデシュはインド北東部との経済的なつながりを強めることで、自国の経済成長と地域の発展を同時に実現しようとしている可能性がある。このシナリオでは、バングラデシュはインドのパートナーとして協力関係を構築しようとしていることになる。

 しかし、インドはBCIM経済回廊に対して慎重な立場を取っており、中国との経済的結びつきが強まりすぎることを警戒している。そのため、インド政府はユヌスの発言をそのまま好意的に受け取るとは限らない。

 第二の解釈:ハイブリッド戦争と安全保障の脅威

 一方で、ユヌスの発言をより懐疑的に捉える立場もある。彼が「インド北東部を陸に閉ざされた国」と表現したことは、単なる言い間違いではなく、インドからの分離独立を意識したものではないかという見方も存在する。

 この解釈の背景には、以下の要素がある。

 1. バングラデシュの政権交代と対インド関係の変化

 ・2024年の政権交代により、インドと協力関係にあったシェイク・ハシナ政権が崩壊し、新たにイスラム主義的で反インド的な勢力が権力を掌握した。

 ・暫定政権はインドを洪水の原因と非難し、国内のヒンドゥー教徒を弾圧している。

 ・政権内部の一部メンバーが、インドの北東部をバングラデシュ領とみなす地図をオンラインで公開した。

 2. インド北東部の分離独立運動との関係

 バングラデシュは過去にインドの分離独立勢力を支援していた歴史がある。特に、アッサムやトリプラ州の反政府勢力がバングラデシュ国内に拠点を持っていたことはよく知られている。ユヌス政権がこのような勢力を再び支援する可能性があるとすれば、インドの安全保障上の大きな懸念となる。

 さらに、パキスタンや中国がこれに関与する可能性も指摘されている。

 ・パキスタンは長年、インド北東部の不安定化を画策してきた

 ・中国はインドとの競争関係を強めており、バングラデシュを戦略的に利用する可能性がある

 このシナリオでは、バングラデシュが「ハイブリッド戦争」を通じてインドに圧力をかける可能性がある。つまり、

 (1)インド北東部の反政府勢力への支援を再開する

 (2)インドとの経済協力を拒否し、中国との連携を強める

 (3)戦略的にインドを牽制し、政治的譲歩を引き出そうとする

 こうした行動が実際に行われるかどうかは不明だが、インド政府がこの可能性を警戒するのは自然である。

 インドの対応策

 ユヌスの発言を受けて、インドは次のような対応を取る可能性がある。

 (1)国境警備の強化

 ・バングラデシュとの国境沿いの監視体制を強化し、不法な活動を防ぐ。

 (2)北東部の経済発展の加速

 ・中国やバングラデシュの影響を抑えるため、インド政府が積極的な投資を行い、地域の経済を活性化させる。

 (3)バングラデシュとの関係の再評価

 ・友好国としての関係を見直し、「警戒すべき隣国」としての扱いに変更する可能性がある。

(4)外交的圧力の強化

 ・国際社会に対して、バングラデシュの新政権の動きを問題視するよう働きかける。

 このように、ユヌスの発言は単なる経済的な提案に留まらず、インドにとっての安全保障上の課題ともなりうる。今後、バングラデシュの行動次第では、インドとの関係が大きく変化する可能性がある。
  
【要点】 

 バングラデシュのムハンマド・ユヌスの発言とその影響

 発言の内容

 ・ユヌスは中国訪問中に、インド北東部(セブン・シスターズ)を「陸に閉ざされた国」と表現。

 ・「バングラデシュが唯一の海への門戸であり、中国経済と統合できる」と発言。

 問題視される点

 ・インド北東部を「陸に閉ざされた国」と表現 → インドの主権を軽視する発言と受け取られる可能性。

 ・中国経済との統合を示唆 → インドの安全保障と経済政策に影響を与える可能性。

 解釈①:経済協力の視点

 ・BCIM経済回廊(バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊)の復活を示唆。

 ・バングラデシュの港を利用し、インド北東部と中国市場を結ぶ貿易ルートを構築。

 ・バングラデシュがインド北東部の発展に貢献する可能性。

 ・インドは中国主導の経済協力に慎重なため、警戒する可能性が高い。

 解釈②:ハイブリッド戦争と安全保障の脅威

 (1)バングラデシュ新政権は反インド的な立場を強めている。

 ・2024年の政権交代後、インドを洪水の原因と非難。

 ・国内のヒンドゥー教徒を弾圧。

 ・インド北東部をバングラデシュ領とみなす地図を公開する動き。

 (2)インド北東部の分離独立運動との関係。

 ・過去にバングラデシュがインドの反政府勢力を支援した歴史あり。

 ・パキスタンや中国が関与する可能性も指摘される。

 (3)中国との戦略的連携。

 ・バングラデシュが中国の影響を受け、インドを牽制する可能性。

 ・ハイブリッド戦争(経済・外交・安全保障面での圧力)を仕掛ける可能性。

 インドの対応策

 1.国境警備の強化 → バングラデシュ国境沿いの監視を強化。

 2.北東部の経済発展を加速 → 中国やバングラデシュの影響を抑えるため、インフラ投資を増加。

 3.バングラデシュとの関係を再評価 → 友好国としての立場を見直し、警戒を強める可能性。

 4.外交的圧力の強化 → 国際社会にバングラデシュ新政権の問題を提起。

 結論

 ・ユヌスの発言は経済協力とも安全保障上の脅威とも解釈できる。

 ・インドは警戒を強め、経済・安全保障の両面で対応を強化する可能性が高い。

【引用・参照・底本】

Does Bangladesh Have Regional Integration Or Hybrid War Plans For Northeast India? Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.01
https://korybko.substack.com/p/does-bangladesh-have-regional-integration?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=160322430&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

トランプの「心理的な期限」2025年04月01日 19:40

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【桃源寸評】

 間抜けな奴だ。<虻蜂取らず>の上、更に選曲を長引かせるか。結果、

"心理的な弱み"を握られるか。

 折衝能力に欠けるか。交渉事には相手を尊敬することや、更に忍耐力も必要なのだ。

 手下の揉め事を一喝するような訳にはいかないのだ。

 国際社会に既にゼレンスキーと大恥をかいたではないか。

【寸評 完】

【概要】

 ドナルド・トランプ大統領は、NBCニュースのインタビューにおいて、ウクライナ紛争に関してロシアとの合意に至らなかった場合、ロシア産原油に対して25~50%の関税を課す可能性を示唆した。この措置は、ロシアから石油を購入する国が米国市場へのアクセスを制限されることを意味し、いわゆる「二次制裁」に相当する。

 この発言は、トランプ氏が以前、ベネズエラ産原油に対して示唆した措置と類似している。彼は、ベネズエラから石油やガスを購入する国々に対し、米国との貿易において25%の関税を課すと述べていた。ロシアに適用された場合、中国やインドが影響を受ける可能性があり、特に中国はすでに米国と貿易戦争を繰り広げているため、さらなる対立を招く恐れがある。インドについては、米国の圧力に対してより影響を受けやすいとされる。

 2025年2月には、元ウクライナ・ロシア担当米国特使のキース・ケロッグ氏が、ロシアへの制裁強化が中国やインドに影響を与え、それによってロシアをウクライナ戦争に関する合意に導く可能性があると指摘していた。この分析に基づけば、インドはロシアに対して和平交渉を促す立場に回る可能性がある一方、中国は米国の制裁を拒否し、ロシアとの関係を維持する可能性がある。

 さらに、トランプ氏は「心理的な期限」が存在すると述べており、ロシア側が交渉を引き延ばしていると判断した場合、より強硬な対応を取る可能性を示唆した。この発言の前日には、彼はフィンランドのアレクサンダー・スタッブ大統領と7時間にわたりゴルフを共にしており、スタッブ大統領は「米国、そしておそらくトランプ大統領も、ロシアに対して忍耐を失いつつある」との見解を示していた。

 これらの発言は、トランプ氏がロシアに対して経済制裁を外交手段として活用する可能性が高いことを示しており、早ければ近いうちにロシア側が何らかの決断を迫られる展開となる可能性がある。プーチン大統領が妥協するか、それとも対立をエスカレートさせるか、今後の展開が注目される。
 
【詳細】

 ドナルド・トランプ前大統領が発表したロシアに対する制裁強化の可能性は、ウクライナ紛争における交渉の行方に大きな影響を与えると考えられる。トランプ氏は、NBCニュースのインタビューにおいて「もしロシアと合意に至らず、それがロシアの責任だと判断した場合、ロシア産原油に対する二次制裁を発動する可能性がある」と述べた。具体的には、ロシアから石油を購入する国々が、米国との取引において25%から50%の追加関税を課される可能性がある。

 二次制裁の影響

 二次制裁は、米国が直接的に制裁対象とする国だけでなく、間接的にその国と取引を行う第三国にも圧力をかける手法である。これにより、ロシア産原油を輸入する国々に対して、米国市場へのアクセス制限や関税引き上げを通じて制裁を実施することが可能となる。この措置が発動されれば、特にロシア産原油の主要輸入国である中国とインドに対して大きな影響を与えることが予想される。

 ・中国への影響

 中国は現在、ロシア産原油の最大の輸入国であり、ウクライナ戦争以降、ロシア産エネルギーの重要な買い手となっている。前トランプ政権時代から米中貿易戦争が続いているため、中国はすでに米国との経済関係において厳しい状況にある。仮にトランプ氏がロシア産原油に対する二次制裁を発動した場合、中国がこの圧力に屈する可能性は低く、むしろ米国の制裁を公然と拒否し、ロシアとの経済協力を継続する可能性がある。結果として、ロシア経済は中国への依存度をさらに高めることになり、プーチン大統領がこれまで避けようとしていた「対中従属」のリスクが現実化することになる。

 ・インドへの影響

 インドはロシア産原油の第2位の輸入国であり、戦争が始まって以降、割安な価格でロシア産原油を購入してきた。しかし、インドは米国との経済・安全保障関係を重視しており、ロシアとの貿易関係を維持するために米国の制裁に違反することは難しい。これまで米国は、インドのロシア産原油輸入についてある程度の黙認姿勢を取ってきたが、もしトランプ政権が厳格な二次制裁を発動すれば、インドはロシアとの取引を見直す可能性がある。その場合、インドがロシアに対してウクライナ問題の解決を促す圧力を強めることも考えられる。

 トランプ政権の制裁戦略

 トランプ氏は以前から経済制裁を外交手段として積極的に活用してきた。彼の発言によれば、ウクライナ戦争の停戦交渉においても「ロシアが交渉を引き延ばしている」と判断した場合、制裁の発動を決断する可能性がある。この方針は、元ウクライナ・ロシア担当米国特使キース・ケロッグ氏が2月に指摘したものと一致する。ケロッグ氏は、トランプ政権が中国とインドに対する経済的圧力を通じて、ロシアを交渉の場に引きずり出す戦略をとる可能性があると述べていた。

 トランプ氏は今回の発言の中で「心理的な期限」という言葉を用いており、ウクライナ戦争に関する交渉の進展が見られない場合、ロシアに対する圧力を強化する意向を示唆している。この「心理的な期限」が具体的にどのような期間を指すのかは明らかではないが、トランプ氏が比較的早い段階で交渉の成果を求めていることは明らかである。

 フィンランド大統領との会談

 トランプ氏の対ロシア政策に関する動向は、フィンランドのアレクサンダー・スタッブ大統領との会談とも関連している。3月31日、トランプ氏はフィンランド大統領と約7時間にわたりゴルフを共にした。スタッブ大統領はその後、「トランプ氏はロシアに対する忍耐を失いつつある」との見解を示しており、これがトランプ氏の発言内容と一致していることが注目される。

 フィンランドは2023年にNATOに加盟し、ロシアとの関係が急速に悪化している。スタッブ大統領がトランプ氏と長時間会談を行ったことは、NATO加盟国としてのフィンランドの立場を強化すると同時に、トランプ氏のロシア政策に一定の影響を与えた可能性がある。

 今後の展開

 今回のトランプ氏の発言により、ロシアは二つの選択肢を迫られる可能性がある。

 1.妥協してウクライナ戦争に関する合意を模索する

 ・インドなどの主要貿易相手国からの圧力が強まった場合、ロシアは交渉の席につかざるを得なくなる可能性がある。

 ・特にインドがロシアからの原油輸入を制限するような動きが出れば、ロシア経済に深刻な影響を及ぼす可能性がある。

 2.対立をエスカレートさせる

 ・中国との貿易関係を強化し、米国の制裁に対抗する可能性がある。

 ・軍事的にも戦闘を拡大し、戦場で有利な状況を作ることで交渉における立場を強化しようとする可能性も考えられる。

 この「決断の時」は、トランプ氏の言う「心理的な期限」によって、予想よりも早く到来する可能性がある。ロシアがどのように対応するかは、ウクライナ戦争の行方を左右する重要な要素となる。
  
【要点】 

 トランプ氏の対ロシア制裁強化の可能性について

 1. トランプ氏の発言内容

 ・ロシアと合意に至らなかった場合、ロシア産原油に対する二次制裁を発動すると発言。

 ・ロシア産原油を購入する国々に対し、米国との取引で25~50%の関税を課す可能性を示唆。

 ・「心理的な期限」を設定し、短期間で交渉結果を求める姿勢を強調。

 2. 二次制裁の影響

 (1)中国への影響

 ・ロシア産原油の最大輸入国であり、制裁を無視する可能性が高い。

 ・ロシアの「対中従属」が加速し、経済・エネルギー政策に影響を与える。

 (2)インドへの影響

 ・ロシア産原油の第2位の輸入国であり、米国との関係を重視している。

 ・二次制裁を受けるとロシアからの輸入を抑制し、ロシアへの圧力を強める可能性がある。

 3. トランプ政権の制裁戦略

 ・経済制裁を交渉の手段として積極活用する方針。

 ・ロシアが交渉を引き延ばした場合、即座に制裁を発動する可能性。

 ・中国・インドへの経済的圧力を通じてロシアの妥協を引き出す戦略を示唆。

 4. フィンランド大統領との会談

 ・3月31日、フィンランドのスタッブ大統領と7時間にわたり会談。

 ・スタッブ大統領は「トランプ氏はロシアに対する忍耐を失いつつある」と指摘。

 ・NATO加盟国としてのフィンランドの立場が、トランプ氏のロシア政策に影響を与えた可能性。

 5. 今後の展開とロシアの選択肢

 (1)妥協してウクライナ戦争に関する合意を模索

 ・インドなどの主要貿易相手国からの圧力が強まる可能性。

 ・ロシア経済が制裁の影響を受け、交渉に前向きになる可能性。

 (2)対立をエスカレートさせる

 ・中国との経済協力をさらに強化し、米国の制裁に対抗する可能性。

 ・戦場で有利な状況を作り、交渉の立場を強化しようとする可能性。

 6. まとめ

 ・トランプ氏の二次制裁発言は、ロシア経済と外交に大きな影響を与える可能性。

 ・特に中国・インドの動向が鍵となり、ロシアの対応次第で戦争の行方が左右される。

 ・「心理的な期限」により、交渉の決着が予想より早まる可能性がある。

【引用・参照・底本】

Trump’s Latest Sanctions Threat Against Russia Suggests That He’s Getting Impatient For A Deal Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.01
https://korybko.substack.com/p/trumps-latest-sanctions-threat-against?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=160319309&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

YJ-21ミサイルの役割と実戦的な意義2025年04月01日 20:19

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【概要】

 中国人民解放軍(PLA)東部戦区が2025年4月1日に台湾周辺で実施した合同軍事演習において、H-6K爆撃機がYJ-21空中発射弾道ミサイルを搭載して飛行した。PLA東部戦区の報道官である施毅上級大佐によると、この演習には陸軍、海軍、空軍、ロケット軍が参加し、台湾島周辺の複数方向から接近する形で行われた。

 PLA東部戦区が公開した映像では、Type 054Aフリゲート、DF-15弾道ミサイル、H-6K爆撃機、Y-20輸送機などの先進的な装備が演習に参加していることが確認された。H-6K爆撃機は、2022年の中国航空ショーで初めて公開されたYJ-21ミサイルを搭載して飛行した。

 軍事専門家によると、YJ-21ミサイルの演習参加は実戦的な訓練の高度化を示すものであり、台湾独立を主張する勢力に対する抑止力として重要な意義を持つ。このミサイルは長射程、高速、高精度、強力な防御突破能力、高い破壊力を備えており、実戦環境での運用を想定した演習で使用されることは、PLAの即応態勢の強化を示している。

 また、軍事専門家のZhang Junshe氏によると、YJ-21ミサイルは極超音速での防御突破能力を有し、制海・制空・制陸のほか、重要地域や戦略的航路の封鎖にも有効である。現代戦では、陸海空のみならず、電磁波領域やサイバー空間の支配も戦略的に重要とされており、そのためには陸上攻撃、電磁戦、高価値目標(指揮中枢やネットワーク拠点など)の破壊が不可欠であると述べている。

 さらに、YJ-21はマッハ6を超える速度に達するため、台湾の防空システムでは迎撃が困難であり、世界的に見ても効果的な迎撃手段を持つ勢力はほとんど存在しないと指摘されている。
 
【詳細】

 2025年4月1日、PLA東部戦区は台湾周辺で実施した合同軍事演習において、H-6K爆撃機がYJ-21空中発射弾道ミサイルを搭載して演習に参加した。この演習は、PLAの陸軍、海軍、空軍、ロケット軍が協力して行われ、台湾島の周囲から複数の方向で接近する形で実施された。演習の目的は、戦闘準備を整えるとともに、特に台湾周辺の戦略的状況に対して強力な抑止力を発揮することにある。

 YJ-21ミサイルの特性と意義

 YJ-21ミサイルは、2022年の中国航空ショーで初めて公開された空中発射型の弾道ミサイルであり、H-6K爆撃機に搭載されて実際に発射される姿が映像として公開された。このミサイルは、長距離を高速で移動し、高精度で目標を攻撃できる能力を持っており、その破壊力は非常に強力である。特に、ミサイルの防御突破能力は高く、現代戦においては非常に有効な武器とされている。

 YJ-21の一番の特徴は、その極超音速能力であり、ミサイルはマッハ6(音速の6倍)を超える速度で飛行する。これにより、従来の防空システムやミサイル防衛システムでは迎撃が非常に難しくなる。実際、台湾やその他の国々の現行の防空システムでは、このような高速ミサイルに対する十分な迎撃能力がないとされており、これがYJ-21を極めて重要な戦力にしている。

 役割と実戦的な意義

 YJ-21ミサイルが今回の演習に参加したことには、非常に高い実戦性がある。軍事専門家のZhang Junshe氏は、このミサイルの参加が、PLA東部戦区の演習が実際の戦闘を想定したものであり、即応態勢が整っていることを示すものであると指摘している。特に、台湾周辺での軍事的な対立において、YJ-21のような高度なミサイル技術は、台湾の独立を主張する勢力に対して強力な抑止力となる。

 現代戦では、従来の制海、制空、制陸だけでなく、電磁波領域やサイバー空間なども支配することが戦略的に重要となる。YJ-21は、これらの支配を支援するための重要な手段となり得る。例えば、重要な海上交通路や航空路を封鎖するために使用されたり、敵の指揮中枢や通信ネットワークなどの高価値目標を破壊するために使われる可能性がある。

 台湾独立勢力に対する抑止力

 軍事専門家によると、YJ-21はその高速性と精度により、台湾独立を主張する勢力に対する有力な武器となり、現行の台湾防空システムでは対処できないとされている。台湾の防空ミサイルシステムや迎撃能力は、YJ-21のような極超音速ミサイルには対応しきれないため、台湾独立勢力がこのミサイルに対抗する方法はほとんどないと考えられている。この点は、PLAの戦略が、台湾周辺での戦闘の際に中国が持つ圧倒的な軍事的優位性を示すものである。

 他の先進的な装備と演習

 今回の演習では、YJ-21のほかにも、Type 054Aフリゲート、DF-15弾道ミサイル、Y-20輸送機など、PLAの先進的な装備が参加した。これらの装備は、台湾周辺での多方向からの攻撃能力を強化し、PLAの戦力が迅速かつ効率的に展開できることを示している。特にDF-15弾道ミサイルは、地上目標への高精度攻撃が可能であり、軍事的な圧力をさらに強化するものとなっている。

 結論

 YJ-21ミサイルの演習参加は、PLA東部戦区が台湾周辺での実戦的な準備を進めていることを示しており、台湾独立勢力に対する強力な抑止力を持つことを強調している。このような先進的な兵器の投入は、台湾問題における中国の戦略的優位性を高め、台湾周辺の緊張をさらに高める可能性がある。
  
【要点】 

 1.演習の実施: 2025年4月1日、PLA東部戦区は台湾周辺で合同軍事演習を実施。陸軍、海軍、空軍、ロケット軍が参加し、台湾島の周囲から複数方向で接近する形で行われた。

 2.参加した装備

 ・H-6K爆撃機: YJ-21空中発射弾道ミサイルを搭載。

 ・Type 054Aフリゲート: 海上での支配力を強化。

 ・DF-15弾道ミサイル: 地上目標への精密攻撃能力。

 ・Y-20輸送機: 迅速な部隊展開を支援。

 3.YJ-21ミサイル

 ・極超音速: マッハ6以上の速度で飛行、従来の防空システムでは迎撃が困難。

 ・高精度: 長距離での精密攻撃が可能。

 ・防御突破能力: 高速で防空網を突破し、破壊力が強力。

 4.実戦的な訓練: YJ-21の演習参加は実戦を想定したもので、PLAの即応態勢を強化する目的がある。

 5.現代戦の支配: YJ-21は、制海・制空・制陸だけでなく、電磁波領域やサイバー空間の支配を助ける武器としても重要。

 6.台湾独立勢力に対する抑止力

 ・台湾独立を主張する勢力に対し、YJ-21の防御突破能力が圧倒的であり、現在の台湾の防空システムでは対応が困難。

 ・世界的に見ても、YJ-21に対する効果的な迎撃能力を持つ国はほとんどない。

 7.中国の戦略的優位性: YJ-21やその他の先進装備は、台湾周辺での中国の軍事的優位性を高め、台湾問題での抑止力を強化する要素となっている。

【引用・参照・底本】

YJ-21 missile deployed in PLA's joint drills around Taiwan; secessionists have no way to deal with it: expert GT 2025.04.01
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331324.shtml